説明

クロロゲン酸含有飲料

【課題】
血圧降下作用等の生理効果を有し、味が良好でかつ保存安定性の良好なクロロゲン酸含有飲料を得ること。
【解決手段】
次の成分(a)、(b)及び(c):
(a)イソクロロゲン酸類を含むクロロゲン酸類混合物を、0.1〜5重量%、
(b)マンノースを主体としたオリゴ糖類を、成分(a)に対して2重量倍以上かつ飲料 中に0.2〜20重量%、及び
(c)水を、30〜99.7重量%(但し、前記重量%は飲料の重量を基準とした割合である)
を含有する飲料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血圧降下作用等の生理効果を有し、味が良好でかつ保存安定性の良好なクロロゲン酸含有飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
狭心症、心筋梗塞、心不全などの心疾患あるいは脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血などの脳血管疾患は、高血圧と深い関係があるといわれている。高血圧の対策としては、利尿薬、交感神経抑制薬、血管拡張薬などの血圧降下医薬品が挙げられ、これらは主として重症高血圧患者に適用される。それに対して、食事療法、運動療法、飲酒・喫煙の制限などの生活習慣改善を目的とした一般療法の重要性が認識されている。なかでも食習慣の改善は重要であり、従来から食品由来の血圧降下作用を有する有効成分の分離・同定が数多くなされている。
【0003】
一方、植物由来のクロロゲン酸類は、古くより抗酸化作用が知られている(特許文献1、特許文献2)。近年クロロゲン酸やカテキンなど植物中の生理学的有効作用が注目され、食品・飲料への利用が検討されている。最近になって、クロロゲン酸類には優れた血圧降下作用があることが知られるようになった(特許文献3、特許文献4)。こうしたクロロゲン酸類の生理的効果を享受するには、一定期間、習慣的に一日10〜5000mgの摂取が必要であった。
【特許文献1】特公昭59−001465
【特許文献2】特公昭61−30549
【特許文献3】特開2002−53464
【特許文献4】特開2002−87977
【特許文献5】特開2001−149041
【特許文献6】特開2001−070385
【特許文献7】特開2001−07410
【特許文献8】特開2001−073598
【特許文献9】特開2001−117796
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
クロロゲン酸類は、一般に苦味や収斂性のともなった特有の味を有することから、飲食品、特に飲料に配合した場合、苦味や渋味の原因となるという問題があった。特に、イソクロロゲン酸は、金属のような収斂味のある後味(コーヒー焙煎の化学と技術、中林敏郎ら、弘学出版、1995年)として残り、この味の悪さは、嗜好飲料として毎日飲用することへの障害となっていた。また味に影響を与えない程度の微量の含量では血圧降下作用が期待できなかった。従って、本発明の目的は、血圧降下作用を有するクロロゲン酸類を高濃度含有し、毎日飲用できかつ風味が良好な飲料を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明者らは、生コーヒー豆やマテ茶などの植物から抽出して得られるクロロゲン酸含有抽出物の飲料利用とその風味への作用に関して、鋭意検討・研究を進めてきた。その結果、クロロゲン酸類に対してマンノースを主体としたオリゴ糖を一定量の配合することで渋味や苦味が抑えられ、すっきりした後味の飲みやすい飲料が得られることを見出した。
【0006】
すなわち本発明は、次の成分(a)、(b)及び(c):
(a)イソクロロゲン酸類を含むクロロゲン酸類混合物を、0.1〜5重量%、
(b)マンノースを主体としたオリゴ糖類を、成分(a)に対して2重量倍以上かつ飲料中に0.2〜20重量%、及び
(c)水を、30〜99.7重量%(但し、前記重量%は飲料の重量を基準とした割合である)
を含有する飲料を提供するものである。
【0007】
本発明の飲料に用いられるクロロゲン酸類混合物(成分(a))には、イソクロロゲン酸、ネオクロロゲン酸、クリプトクロロゲン酸などのクロロゲン酸類及びそれらの誘導体が含まれる。ここで、クロロゲン酸は、キナ酸の5位の水酸基にカフェ酸がエステル結合した5−カフェオイルキナ酸であり、クリプトクロロゲン酸は、キナ酸の4位の水酸基にカフェ酸がエステル結合した4−カフェオイルキナ酸であり、ネオクロロゲン酸は、キナ酸の3位の水酸基にカフェ酸がエステル結合した3−カフェオイルキナ酸である。イソクロロゲン酸は、キナ酸の3位、4位及び5位の水酸基のうちの2つの水酸基にカフェ酸がエステル結合したジカフェオイルキナ酸(例えば3,4−ジカフェオイルキナ酸、3,5−ジカフェオイルキナ酸、4,5−ジカフェオイルキナ酸)である。その他のクロロゲン酸類としては、キナ酸の3位、4位及び5位の水酸基のうちの1つの水酸基にフェルラ酸がエステル結合したフェルリルキナ酸(例えば、5−フェルリルキナ酸)、キナ酸の3位、4位及び5位の水酸基のうちの2つの水酸基にカフェ酸とフェルラ酸がエステル結合したフェルリルカフェオイルキナ酸(例えば3−フェルリル−4−カフェオイルキナ酸)などである。また、イソクロロゲン酸類、クロロゲン酸類等の誘導体としては、塩、糖エステル等の生理学的に許容されるものが挙げられる。このうち、イソクロロゲン酸類、クロロゲン酸類等の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が挙げられる。
【0008】
成分(a)中のイソクロロゲン酸類含有重量比率は5〜33重量%であることが好ましい。
成分(a)としては、植物抽出物が好ましく、単一植物又は複数種の植物の混合物のいずれかから抽出することができる。利用できる植物として例えば、苦丁茶、マテ茶、アオハダ、クロガネモチ、タラヨウ、生コーヒー豆、南天の葉があり、野菜では例えば、バジル、ヨモギ、フキノトウ、ナス、シソ、ヒマワリ、ヨモギ、サツマイモ等がある。特にアカネ科コーヒー(アラビカ種、ロブスタ種)の種子である生コーヒー豆より、L−アスコルビン酸、クエン酸含有水溶液又は熱水又は含エタノール水溶液で抽出したクロロゲン酸類混合物(成分(a))が好ましい。
【0009】
本発明飲料中の成分(a)の含有量は、飲料の重量を基準として0.1〜5.0重量%、好ましくは0.1〜2.0重量%である。0.1重量%未満では十分な生理的効果が得られず、5.0重量%を超えると成分(a)による渋味が後味として強く認められる場合がある。
【0010】
本発明飲料に用いられるマンノースを主体としたオリゴ糖類(成分(b))とは、単糖であるマンノースを主たる構成要素とするオリゴ糖類を意味する。ここで「オリゴ糖類」なる語は、一般に単糖類と多糖類との間に位し、一定の少数量の単糖類分子のグリコシル結合からなる物質を指す。すなわち、結合している単糖の数が比較的少ないポリマーのことである。オリゴ糖「類」という場合、構成単糖の数が種々のオリゴ糖が複数含まれる組成物であることを意味する。そしてマンノースを主体としたオリゴ糖「類」という場合は、構成単糖の種類や数が種々のオリゴ糖が複数含まれる組成物を指す。本明細書において「マンノオリゴ糖類」の語は、「マンノースを主体としたオリゴ糖類」の語と同様の意味において用いられる。本明細書において「マンノースを主体としたオリゴ糖類」とは、具体的にはマンノースを主体とした単糖類が1〜10分子結合したオリゴ糖類を意味し、具体的にはマンノースとグルコースおよびガラクトースのような単糖類の少なくとも1種とが1〜10分子結合したマンノースを主体としたオリゴ糖類を意味する。また本明細書において「マンノースを主体とした」という場合、オリゴ糖類中のマンノース残基の構成割合が70重量%以上であることを指し、特に80重量%以上であることが好ましい。
【0011】
マンノースを主体としたオリゴ糖類は、マンナンを加水分解することにより製造することができる。ここで原料のマンナンは、たとえばココナッツ椰子から得られるコプラミール、フーク、南アフリカ産椰子科植物HuacraPalm、ツクネイモマンナン、ヤマイモマンナンより抽出することにより得ることができる。このように得たマンナンを、酸加水分解、高温加熱加水分解、酵素加水分解、微生物発酵の中から選ばれる1種または2種以上の方法で処理し、好ましくは活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂処理、イオン交換膜処理等の方法で精製して、糖混合物を得ることができる。さらに、本発明の成分(a)であるマンナンを主体としたオリゴ糖類は、コンニャクイモ、ユリ、スイセン、ヒガンバナ等に含まれるグルコマンナン、ローカストビーンガム、グアーガム等に含まれるガラクトマンナンを酸加水分解、高温加熱加水分解、酵素加水分解、微生物発酵の中から選ばれる1種または2種以上の方法で処理し、活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂処理、イオン交換膜処理等の方法で分離精製し構成糖としてマンノースの比率を高めることにより製造したものであってもよい。
【0012】
本明細書において単に「マンナン」という場合は、d−マンノースのみを構成単位とする多糖であるマンナンの他、マンノースとガラクトースまたはグルコースとを構成単位とした多糖であるガラクトマンナン、グルコマンナンも広義に含むものとする。なお、d−マンノースとは、アルドヘキソースであり、d−グルコース中のカルボキシル基に隣接する炭素に結合している水酸基の立体配置が逆になっているものである。
【0013】
本発明の成分(a)は、コーヒー生豆または焙煎したコーヒー豆を酸加水分解、高温加熱加水分解、酵素加水分解、微生物発酵の中から選ばれる1種または2種以上の方法で処理し、活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂処理、イオン交換膜処理等の方法で精製することによって得ることができる。あるいは、使用済みコーヒー残渣を、酸加水分解、高温加熱加水分解、酵素加水分解、微生物発酵の中から選ばれる1種または2種以上の方法で可溶化処理した水溶液を活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂処理、イオン交換膜処理等の方法で精製することによって得ることも可能である(前記特許文献5−9)。
【0014】
一般に、焙煎粉砕コーヒーを商業用の抽出器にて高温高圧下で抽出すると、その際に焙煎コーヒーに含まれるガラクトマンナンの側鎖であるガラクトースやアラビノガラクタンが加水分解によって可溶化する。従って、コーヒー抽出残渣には、多糖類としてマンナン、セルロース、アラビノガラクトースなどが含まれる。セルロースは分解されにくく残渣として残っているが、セルロースを分解せずにマンナンを特異的に加水分解する条件を適宜選択することにより、マンノースを主体とするオリゴ糖類が得られる。
【0015】
特にコーヒー抽出残渣を分解する方法としては、酸および/または高温により加水分解する方法、酵素により分解する方法、微生物発酵により分解する方法が挙げられるが、これに限定されない。酸および/または高温により加水分解する方法としては特開昭61−96947号、特開平2−200147号等に開示されている。商業用のコーヒー多段式抽出系において出てくる使用済みコーヒー残渣を反応容器中において酸触媒を添加して加水分解することもできるし、酸触媒を添加せずに高温で短時間処理して加水分解することによっても得ることができる。管形栓流反応器を使用するのが便利であるが比較的高温で短時間の反応を行わせるのに向いているものならば、いかなる反応器を使用しても良好な結果が得られる。反応時間と反応温度を調節し、可溶化して加水分解させることによって重合度(DP)10〜40のマンナンをDP1〜10のマンノオリゴ糖に分解し、その後コーヒー残渣と分離してマンノオリゴ糖類を得ることができる。
【0016】
コーヒー抽出残渣を酵素により分解する方法としては、例えばコーヒー抽出残渣を水性媒体に懸濁させ、ここへ例えば市販のセルラーゼおよびヘミセルラーゼ等を加えて撹拌しながら懸濁させればよい。酵素の量、作用させる温度およびその他の条件としては、通常の酵素反応に用いられる量、温度、条件であれば特に問題はなく、使用する酵素の最適作用量、温度、条件およびその他の要因によって適宜選択すればよい。
【0017】
上記の方法によって得られたマンノースを主体とする単糖類が1〜10分子結合したオリゴ糖類を含有する組成物を含む反応液は、上記の通り必要に応じて精製を行う。精製法としては、骨炭、活性炭、炭酸飽充法、吸着樹脂、マグネシア法等で脱色を行い、イオン交換樹脂、イオン交換膜、電気透析等で脱塩、脱酸を行う。精製法の組み合わせおよび精製条件としては、マンノースが1〜10分子結合したマンノオリゴ糖類を含む反応液中の色素、塩、および酸等の量およびその他の要因に応じて適宜選択すればよい。コーヒー抽出残渣を酸および/または熱により加水分解しオリゴ糖類を高純度に含むように調製した組成物を、例えば液体コーヒー、インスタントコーヒー等の飲料にそのまま添加して使用することもできるが、必要に応じて上記の方法により精製処理をしたものを添加した方がコーヒー本来の味、香りのより豊かな飲料を提供することができる。
【0018】
なお、本明細書においてコーヒー抽出残渣とは、大気中で焙煎粉砕コーヒーを抽出処理した後の、いわゆるコーヒー抽出粕のことである。本発明において使用されるコーヒー抽出残渣は、通常の液体コーヒーあるいはインスタントコーヒー製造工程において抽出されたものであれば、常圧下、加圧下抽出であろうと、またいかなる起源、製法のコーヒー抽出残渣であっても使用することができる。
【0019】
コーヒー抽出残渣の加水分解物にはグルコース、マンノース、アラビノースなどの単糖類とマンノオリゴ糖、セロオリゴ糖などが確認されている。それゆえ、通常、このオリゴ糖類には、ブドウ糖、ガラクトース、アラビノース、セロオリゴ糖などが一部含まれているが、飲料の呈味の改善には十分な効果を発揮できる。
【0020】
本明細書おいて糖単量体の繰り返し結合数を重合度とよび、DP(Degree of Polymerization)で表わす。
「オリゴ糖」は、上述の通り単糖の数が比較的少ない糖重合体を意味するが、とくに、本明細書においては、単糖の数が10以下である重合体をさす。本明細書ではマンノース(単糖)は、便宜上DP1のオリゴ糖とするが、厳密にいうとオリゴ糖は2以上の単糖からなるものをさす。すなわち、学術的観点からは、重合度1(DP1)の糖は単糖であって、オリゴ糖ではない。しかし、本発明に用いるオリゴ糖類中には、単糖が含まれる場合があるので、本明細書においてはこのような場合であっても総称して「オリゴ糖類」と呼ぶものとする。すなわち、「マンノースを主体としたオリゴ糖類」と言う場合には、この糖組成物中には重合度1の単糖も含まれている場合があると理解されたい。
【0021】
「重合度」または「DP」は、オリゴ糖を構成している単糖の数を意味する。従って、たとえばマンノースが4つの単糖から構成されているマンノオリゴ糖の重合度は4であるのでDP4と記載する。
【0022】
オリゴ糖組成のうち、DP1としてはマンノース等、DP2としてはマンノビオース等、DP3としてはマンノトリオース等、DP4としてはマンノテトラオース等、DP5としてはマンノペンタオース等、DP6としてはマンノヘキサオース等、DP7としてはマンノヘプタオース等があり、これらの結合様式はβ−1,4結合であると推定される。
【0023】
マンノースを主体としたオリゴ糖類中のマンノース含有割合(DP1比率)が高まることにより甘味が増すが、50%前後になると、マンノースに特有な苦味が強くなる傾向にあり、甘味料としての用途が限定されてくる傾向に見られた。マンノースを20%前後に調整したものに関しては、ほのかな甘味と共に後味のすっきり感があり、呈味改善効果が認められる。
【0024】
次に、本発明飲料中の成分(b)の含有量は、成分(a)に対して2重量倍以上、特に好ましくは2〜4重量倍である。また、成分(b)の含有量は飲料の重量を基準として0.2〜20重量%、特に好ましくは0.2〜5重量%である。成分(b)の含有量が成分(a)の2重量倍未満、又は飲料中に0.2重量%未満では、成分(b)による渋味、後味の改善効果が得られず、20重量%を超えるとかえって特有の苦味が強くなりすぎ好ましくない。
【0025】
本発明飲料には水(成分(c))を飲料の重量を基準として30〜99.7重量%、好ましくは70〜98.5重量%、より好ましくは85〜98.5重量%含有する。水の含有量が30重量%未満では、味が濃厚すぎて好ましくなく、配合する上でも溶け難くなり好ましくない。
【0026】
本発明の飲料の形態としては、例えばコーヒー、紅茶、緑茶、果汁又は野菜汁添加のジュース飲料、炭酸入り清涼飲料、果汁等の添加のない清涼飲料等が挙げられる。
本発明の飲料のpHは、生理効果を有する成分(a)の保存安定性の点から3〜7、特に5〜6が好ましい。また炭酸飲料とする場合のpHは3〜4が好ましい。本発明飲料のpHの調整は重曹又は有機食用酸の添加によって行われる。使用可能な食用有機酸としてはクエン酸、フマル酸、アジピン酸、酢酸又はそれらの混合物が挙げられる。これらの酸はそれらの非解離形でも各々の塩としても存在することができる。
【0027】
本発明の飲料には、成分(a)、(b)及び(c)の他に甘味料、香料成分、乳成分、乳化剤、エマルション安定剤等を配合することができる。ここで甘味料としては、ショ糖、グルコース、フルクトース、キシロース、果糖ブドウ糖液、糖アルコール等の糖分、無カロリー甘味料等が挙げられる。これらの甘味料は、糖度(Brix)が0.1〜10、特に3〜10となるように配合するのが好ましい。Brixが20を超えると、甘すぎて飲みにくい。香料成分としては、フルーツフレーバー、植物フレーバー及びそれらの混合物から選択される天然又は人工フレーバーが挙げられる。乳成分を使用する場合は、生乳、牛乳、全粉乳、脱脂粉乳、生クリーム、濃縮乳、脱脂乳、部分脱脂乳、錬乳等が用いられる。乳化剤及びエマルション安定剤の例としては、ガム、ペクチン類、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、微結晶セルロース、レシチン類、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等が好ましい。
【0028】
本発明の飲料は、例えば成分(a)、(b)、(c)及びその他の成分を混合し、容器に充填し、殺菌して容器詰め飲料とすることができる。ここで容器としては、金属缶、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)ボトル、紙パック、チューブパック、ビン等が挙げられる。殺菌手段は、金属缶のように容器に充填後、加熱殺菌できる場合にあっては食品衛生法に定められた殺菌条件で行われる。PETボトル、紙容器のようにレトルト殺菌できないものについては、あらかじめ食品衛生法に定められた条件と同等の殺菌条件、例えばプレート式熱交換器で高温短時間のUHT殺菌後、一定の温度迄冷却して容器に充填する容器詰め飲料として採用される。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、血圧降下作用等の生理効果を有し、味が良好でかつ保存安定性の良好なクロロゲン酸含有飲料が得られる。
(実施例)
【0030】
以下に実施例により本発明を具体的に説明するが、本実施例により本発明が限定されるものと解するべきではない。
まず、クロロゲン酸類及びマンノースを主体としたオリゴ糖の分析について、以下説明する。
(i)クロロゲン酸類の分析法
ODS−2逆相カラムを用い、溶離液A(0.05M酢酸 3体積%アセトニトリル水溶液)と溶離液B(0.05M酢酸 100体積%アセトニトリル溶液)にてグラジエントをかけて溶出する。標準品とリテンションタイムを比較し同定する。エリア値より5位のカフェオイルキナ酸を標準物質としてクロロゲン酸類の重量%を求める。
(ii)マンノースを主体としたオリゴ糖分析法
分析試料の液を塩酸による脱脂・脱蛋白後、ダイオネックス糖分析用カラムを用い、高速液体クロマトグラフィー法により示差屈折計を用いて検出・定量する。定性はマンノースおよびDP2〜6のオリゴ糖の標準品(日本バイオコン株式会社)の混合物を用い、保持時間より行う。
【実施例1】
【0031】
各成分の調製
(1)成分(a)は、市販されている生コーヒー豆エキス-P(オリザ油化株式会社)を使用した。ここで抽出物エキス中のクロロゲン酸類含有量は、上記クロロゲン酸類の分析法にしたがって測定した結果45重量%であり、内イソクロロゲン酸の含量は11重量%であった。1%濃度で水に溶解したときの味は、やや苦味が感じられると同時に、後味に収斂味のある渋味が強く感じられた。
(2)成分(b)は、以下の方法によって製造した。
【0032】
コーヒー抽出残渣を反応器に送りやすくするために、まず粉砕して粒径を約1mmにした。次いで、総固形分濃度が約14重量%の、水と粉砕物からなるスラリーを調製し4mの熱栓流反応器内において熱処理した。滞留時間8分に対応する速度で高圧蒸気とともに栓流反応器にポンプ輸送し、6.35mmφオリフィスを用いて約220℃に維持した。その後、大気圧下に噴出することによって、反応を急止した。できたスラリーを濾過して、不溶性固形分から可溶性固形分を含む液を分離した。この可溶性固形分含有液を活性炭、吸着樹脂で脱色し、さらにイオン交換樹脂で脱塩した後、濃縮、乾燥してマンノースを主体とする単糖類が1〜10分子結合したオリゴ糖類を含有する組成物を14%の収率で得た。
【0033】
このようにして得られたオリゴ糖類を含有する組成物のコーヒーオリゴ糖中の成分は表1に示す割合であった。これを1%水溶液として官能評価を実施した結果、苦味がかすかに感じられるもののスッキリとした後味の甘味が感じられた。
【0034】
【表1】

【0035】
オリゴ糖のDP1としてはマンノース等、DP2としてはマンノビオース等、DP3としてはマンノトリオース等、DP4としてはマンノテトラオース等、DP5としてはマンノペンタオース等、DP6としてはマンノヘキサオース等、DP7以上として、DP7としてはマンノヘプタオース等、DP8としてはマンノオクタオース等、DP9としてはマンノノナオース等、DP10としてはマンノデカオース等で、結合様式はβ−1,4グリコシド結合であると推定される。
(3)市販のレギュラーコーヒー(味の素ゼネラルフーヅ(株)、商品名:MAXIMスペシャルブレンド)を用いて、粉砕焙煎コーヒー豆8gに対して沸騰したお湯160mlを用いて抽出コーヒー豆抽出液約100ml(Brix1.2%)を得、上記成分(a)及び成分(b)を加え、表2に記載の濃度(重量%)となるように調整した。習熟したパネル8人を選んで味の官能評価を行った。なお、表2中の評価の点数は、下記の基準で採点(0〜4点)した各パネルの平均点である。
(採点基準)渋味、異味のいずれかを非常に強く感じる:4点、渋味、異味のいずれかを強く感じる:3点、渋味、異味のいずれかを感じる:2点、渋味、異味のいずれかをかすかに感じる:1点、渋味、異味を全く感じない:0点
表2から明らかなように、成分(b)が成分(a)に対して、2重量倍未満では成分(a)の収斂味や渋味が強い。また2重量以上4重量倍以下であれば、量の増加とともに成分(a)の渋味、収斂味が抑えられる。一方、成分(b)が20重量%を超える場合は、味が苦くなりすぎることが分かった。また、オリゴ糖の代わりに砂糖を2重量倍添加しても甘味が強くなるだけで渋味を抑える効果は認められなかった。
【0036】
【表2】

【実施例2】
【0037】
焙煎コーヒー豆10kgをバスケット型抽出容器に入れ、大気圧下で熱水を80kg/hrで供給し、抽出後直ちに冷却し、ボール型遠心分離機(ウエストファリア社製、SA−20)で不溶性固形分を除去し、固形分濃度10.4%の、抽出した、焙煎コーヒー豆抽出液を得た。これを用いて表3記載の調合でコーヒー飲料を調製し、250mlスチール缶容器に充填し、密閉後レトルト殺菌(110℃、3分)した。
【実施例3】
【0038】
実施例2と同様にして、固形分濃度10.4%の、抽出した、焙煎コーヒー豆抽出液を得、これを用いて表3記載の調合でミルク入りコーヒー飲料(ミルクは、明治乳業(株)、商品名:明治のおいしい牛乳を使用)を調製した。この飲料を250mlスチール缶容器に充填し、密閉後レトルト殺菌(120℃、10分)した。
【実施例4】
【0039】
紅茶葉(BBLジャパン社製)を使用し、この茶葉5gに対して300mLの沸騰した水で抽出することにより得た紅茶抽出液(固形分濃度0.3%)を用いて表3記載の調合で紅茶飲料を調製し、実施例2と同様に充填・殺菌した。
【実施例5】
【0040】
レモン果汁(生レモンの搾り汁)を使用して、表3記載の調合でレモン果汁飲料を調製し、実施例2と同様に充填・殺菌した。
【比較実施例2−5】
【0041】
比較例として、本発明の成分(b)のオリゴ糖類を添加しないこと以外は上記実施例2−5と同じ調合で飲料を調製した。実施例と同様にして官能評価を行ない評点づけした。この結果、表3から明らかな様に、オリゴ糖を添加使用した本発明飲料は、いずれも渋味・後味が大きく改善され、風味が良好であり、かつ、おりの発生もなく安定であった。
【0042】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(a)、(b)及び(c):
(a)イソクロロゲン酸類を含むクロロゲン酸類混合物を、0.1〜5重量%、
(b)マンノースを主体としたオリゴ糖類を、成分(a)に対して2重量倍以上かつ飲料 中に0.2〜20重量%、及び
(c)水を、30〜99.7重量%(但し、前記重量%は飲料の重量を基準とした割合である)
を含有する飲料。
【請求項2】
成分(a)及び(b)がコーヒー豆由来である請求項1記載の飲料。

【公開番号】特開2006−42624(P2006−42624A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−225087(P2004−225087)
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【出願人】(000243766)味の素ゼネラルフーヅ株式会社 (17)
【Fターム(参考)】