説明

クロロプレンラテックス及びその製造法

【課題】 耐熱強度とコンタクト性とのバランスを良好で、かつ、保管における安定性が良好なクロロプレンラテックス及びその製造法を提供する。
【解決手段】 アニオン型乳化剤及び/又はノニオン型乳化剤、並びにカルボキシル基を含むクロロプレン共重合体を含有し、該共重合体のゲル分が0重量%より大きく2重量%未満であるクロロプレンラテックス、その製造法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱強度とコンタクト性のバランスが良好であるクロロプレンラテックス及びその製造法並びにそれを用いた接着剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
接着剤には、初期強度、耐熱強度、耐水強度等の接着強度が要求される。工場等のラインでは高温にて加熱乾燥された状態で貼り合わされるため、貼り合せの直後に剥がれないよう高温における初期耐熱強度が要求される。一方、現場等では常温乾燥にて貼り合せを行うことが多く、塗布後に貼り合せるまでの時間もまちまちであることから作業幅が広く、良好なコンタクト性が要求される。
【0003】
クロロプレンゴム等をベースとした溶剤系接着剤は、その良好な作業性や接着物性から各種用途に用いられてきた。しかし、使用される有機溶剤は地球環境や作業者の健康に悪影響を与え、時には作業場の火災等を引き起こす危険性を有している。そのため、脱溶剤の要求が高まっている。
【0004】
脱溶剤化の手法の一つとして、ラテックス系接着剤による代替が考えられている。
【0005】
クロロプレンラテックスとしては各種のものが知られている(例えば、特許文献1〜特許文献5、および非特許文献1)。
【0006】
しかし、特許文献1,2に示されるように、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子を用いた場合、その保護コロイド性から優れたラテックスの安定性を示す一方で、期待される接着物性が得られず、特に耐水性が低くなる。
【0007】
また、特許文献3,4に示されるように、クロロプレンゴムを高分子量化し、ゲル分を含有させることで耐熱強度を発現できるが、高分子量のポリマーは保管中にゲル分が増加し易く、粘着保持時間が短くなるなど接着剤のコンタクト性を阻害してしまう。
【0008】
さらに、特許文献5,非特許文献1に示されるように、良好なコンタクト性を有するラテックスとしてゲル分を含まないクロロプレンラテックスが知られているが、この方法で物性を向上させる場合にはゲル分が生じないよう分子量を低く抑えるため、特に強度が不足する可能性がある。
【0009】
【特許文献1】特開平6−287360号公報
【特許文献2】特開平11−335491号公報
【特許文献3】特開平9−324213号公報
【特許文献4】特開平9−324214号公報
【特許文献5】特開平9−31429号公報
【非特許文献1】JETI Vol.44 No.12(88頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はこの問題点に鑑みてなされたものであり、耐熱接着強度とコンタクト性とのバランスを良好で、かつ、保管における安定性が良好なクロロプレンラテックス及びその製造法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者はこのような背景の下、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、ポリマーが特定のゲル分を有すれば、接着物性のバランスおよび保管における安定性が良好であることを見出し本発明を完成させるに至った。即ち、本発明は、アニオン型乳化剤及び/又はノニオン型乳化剤、並びにカルボキシル基を含むクロロプレン共重合体を含有し、該共重合体のゲル分が0重量%より大きく2重量%未満であることを特徴とするクロロプレンラテックスである。
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0013】
本発明のクロロプレンラテックスは、アニオン型乳化剤及び/又はノニオン型乳化剤を含有するものである。
【0014】
アニオン型乳化剤としては、例えば、スルホン酸のアルカリ金属塩を有するもの、硫酸エステルのアルカリ金属塩を有するもの等が挙げられ、ノニオン型乳化剤としては、例えば、ポリビニルアルコールのような水溶性高分子や、ポリオキシエチレン構造を有する乳化剤等が挙げられる。これらのうち、ラテックスの安定性および接着物性からスルホン酸のアルカリ金属塩を有するアニオン型乳化剤が好ましい。
【0015】
スルホン酸のアルカリ金属塩を有するアニオン系乳化剤は、一般的に乳化重合に用いるものであれば特に限定するものではなく、例えば、デカンスルホン酸のアルカリ金属塩,ラウリルスルホン酸のアルカリ金属塩,ステアリルスルホン酸のアルカリ金属塩などの炭素数が10〜20のアルカンスルホン酸のアルカリ金属塩、ラウリルベンゼンスルホン酸のアルカリ金属塩,ステアリルベンゼンスルホン酸のアルカリ金属塩などの炭素数が10〜20のアルキルベンゼンスルホン酸のアルカリ金属塩、ラウリルジフェニルエーテルジスルホン酸のアルカリ金属塩,ステアリルジフェニルエーテルジスルホン酸のアルカリ金属塩などの炭素数が10〜20のアルキルジフェニルエーテルスルホン酸のアルカリ金属塩、ブチルナフタレンスルホン酸のアルカリ金属塩,ラウリルナフタレンスルホン酸のアルカリ金属塩などの炭素数が4〜20のアルキルナフタレンスルホン酸のアルカリ金属塩などがあげられる。アルカリ金属塩としてはリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウムなどがあげられる。これらのうち、ラテックスの安定性と接着物性のバランスから、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムが好ましい。
【0016】
これらの乳化剤の含有量は特に限定するものではないが、ラテックスの安定性や、接着物性とのバランスから、ラテックス100重量部に対して1.5〜3.5重量部が好ましい。
【0017】
本発明のクロロプレンラテックスは、カルボキシル基を有するクロロプレン共重合体を含有するものである。
【0018】
カルボキシル基を有するクロロプレン共重合体は、2−クロロ−1,3−ブタジエンであるクロロプレンとカルボキシル基を含有する単量体の共重合体、又はクロロプレンとカルボキシル基を含有する単量体とその他のクロロプレンと共重合可能な単量体の共重合体である。
【0019】
カルボキシル基を含有する単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸、シトラコン酸、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸等があげられるが、なかでも接着剤とした際の接着強度が高いためメタクリル酸が好ましい。クロロプレンと共重合可能な単量体としては、例えば、2,3−ジクロロ−1,3ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、スチレン、アクリロニトリル、メチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、グリセリンモノメタクリレート等があげられる。
【0020】
本発明のクロロプレンラテックスは、カルボキシル基を含むクロロプレン共重合体のゲル分が0重量%より大きく2重量%未満である。ゲル分が0重量%であると、耐熱強度が低下するおそれがあり、2重量%以上であると、コンタクト性が低下する。これらのバランスを維持するため、0.1〜1.5重量%が好ましい。
【0021】
本発明のクロロプレンラテックスは、クロロプレン単量体又はクロロプレン単量体とクロロプレンと共重合可能なその他の単量体と、カルボキシル基を含有する単量体をラジカル乳化重合し、重合転化率95%以下で重合を停止することで製造することができる。重合方法としては、例えば、上記の単量体、乳化剤、重合開始剤、連鎖移動剤、その他安定剤等を乳化し、所定温度にて重合を行い、重合転化率95%以下で重合停止剤を添加し、重合を停止することがあげられる。
【0022】
重合開始剤としては、公知のフリーラジカル性物質、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過酸化物、過酸化水素、ターシャリーブチルヒドロパーオキサイド等の無機又は有機過酸化物等を用いることができる。また、これらは単独又は還元性物質、例えば、チオ硫酸塩、チオ亜硫酸塩、ハイドロサルファイト、有機アミン等との併用レドックス系で用いても良い。
【0023】
連鎖移動剤としては、例えば、アルキルメルカプタン、ハロゲン炭化水素、アルキルキサントゲンジスルフィド、硫黄等の分子量調節剤等があげられ、これらのうち、臭気及び作業性の面からn−ドデシルメルカプタンが好ましい。連鎖移動剤の使用量は特に限定するものではないが、ゲル分調整のため、クロロプレン単量体100重量部に対し、0.1〜0.3重量部が好ましい。
【0024】
安定剤としては、例えば、ペンタンスルホン酸のアルカリ金属塩、オクタンスルホン酸のアルカリ金属塩など炭素数8以下のアルキル鎖を有する脂肪族スルホン酸のアルカリ金属塩、及びこれらを有する化合物、ベンゼンスルホン酸のアルカリ金属塩、トルエンスルホン酸のアルカリ金族塩、ブチルナフタレンスルホン酸のアルカリ金属塩、スチレンスルホン酸塩などの芳香族スルホン酸のアルカリ金属塩、及びこれら芳香族スルホン酸塩を有する化合物(ナフタレンスルホン酸のアルカリ金属塩とホルマリンの縮合物など)、ラウリル硫酸のアルカリ金属塩などのアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸のアルカリ金属塩などのポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルアルカリ金属塩、不飽和結合を有するスルホン酸のアルカリ金属塩とそれと共重合可能な単量体との各種共重合体等があげられる。ここに、不飽和結合を有するスルホン酸のアルカリ金属塩としては、例えば、ビニルスルホン酸のアルカリ金属塩、アリルスルホン酸のアルカリ金属塩、メタリルスルホン酸のアルカリ金属塩、イソプレンスルホン酸のアルカリ金属塩、スチレンスルホン酸のアルカリ金属塩等があげられ、それと共重合可能な単量体としてはアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、メチルメタクリレート等があげられる。アルカリ金属塩としてはリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等があげられる。これらは、1種類でも良く、2種類以上含んでいても良い。なかでも重合時のラテックス安定性の面からナフタレンスルホン酸とホルムアルデヒドの縮合物、又はスチレンスルホン酸塩とメタクリル酸の共重合体が好ましい。安定剤の含有量は特に限定するものではない。
【0025】
重合温度は特に限定するものではないが、一般的に10〜50℃の範囲で行なう。
【0026】
本発明の製造法では、重合転化率が95%以下で重合を停止することが必要である。重合転化率が95%を超えても重合を継続すると、ゲル分のコントロールが困難である。
【0027】
重合停止剤としては、通常用いられる停止剤であれば特に限定するものでなく、例えば、フェノチアジン、2,6−t−ブチル−4−メチルフェノール、ヒドロキシルアミン等が使用できる。
【0028】
また、ラテックスの安定性を更に良好にするため、重合中、重合終了後に上記の乳化剤のうち1種類以上を添加しても良い。
【0029】
本発明のクロロプレンラテックスの製造法においては、30〜70℃の温度で熟成をかけることもできる。熟成方法は特に限定するものではなく、反応が終了したクロロプレンラテックス、及び/又は単量体除去後のラテックスに対して、静置又は攪拌しながら熱履歴を与えれば良い。熟成をかけることで、ゲル分を調整することができる。
【0030】
また、本発明のクロロプレンラテックスは、2種類以上のラテックスを混合しても製造することもできる。混合は、カルボキシル基を含むクロロプレン共重合体のゲル分が0重量%以上のラテックスと、当該ゲル分が20重量%以下のクロロプレンラテックスを10:90〜90:10の比で混合しクロロプレン共重合体のゲル分が0重量%より大きく2重量%未満となるよう調整する。
【0031】
本発明のクロロプレンラテックスは、単独でも接着剤として使用可能であるが、以下に掲げる粘着付与樹脂、架橋剤、増粘剤等を含有した接着剤組成物とすることでさらに接着物性が向上する。
【0032】
粘着付与樹脂としては特に限定するものではなく、例えば、フェノール系樹脂、テルペン系樹脂、ロジン誘導体樹脂、石油系炭化水素等があげられ、例えば、重合ロジン、ロジン変性樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジンエステル、アルキルフェノール樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール、水添ロジン、水添ロジンのペンタエリスリトールエステル、石油樹脂、クマロン樹脂等が使用される。
【0033】
架橋剤としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、エポキシ樹脂、ポリアジリジン化合物、ポリオキサゾリン化合物等、クロロプレンラテックスに均一に混合できる多官能性化合物であれば何ら制限はなく使用できる、また、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛等の金属酸化物を用いてイオン架橋による強度向上が可能である。
【0034】
クロロプレンラテックスを主成分とする接着剤の粘度は、各種増粘剤、例えば、ポリアルキレンオキサイド、ポリビニルアルコール、疎水化セルロース、会合型ノニオン界面活性剤等の水溶性ポリマー、及びカルボキシル基含有ポリマーから構成されるアルカリ可溶型の増粘剤、ヘクトライト等のシリケート化合物等の配合により所望の粘度に調整できる。
【0035】
クロロプレンラテックスを含有する接着剤組成物は、その他必要に応じて、例えば、老化防止剤、防腐剤、凍結防止剤、造膜助剤、可塑剤、クレー、pH調節剤等の添加剤を含有したものでも良い。
【発明の効果】
【0036】
本発明のクロロプレンラテックスは、上記の通りすることにより、耐熱接着強度とコンタクト性のバランスが良好で、良好な物性を長期間維持できるものであり、その結果、これを含有する接着剤組成物は安定して良好な接着物性を示すものである。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0038】
なお、実施例及び比較例における保管期間は、10℃、1年に相当する促進条件として、50℃における3日間の保管とした。また、ゲル分、ポリマーの溶液粘度、接着剤配合物の常温剥離強度、耐熱剥離強度は以下の方法で測定した。
【0039】
<ゲル分測定>
ラテックスを流延乾燥してゴムフィルムを作製し、そのゴムを重量換算で0.6%の濃度となるようにトルエンに浸漬、マグネットスターラにて遮光状態で24時間混合・溶解した後、200メッシュの金網にてろ過、トルエンにて洗浄後、残渣を110℃で1時間乾燥し、その重量と溶解したゴムの重量の比をゲル分とした。
【0040】
<耐熱接着強度>
9号帆布2枚(約150mm×60mm)それぞれの片面に下塗りとして刷毛で接着剤組成物を約250g/m塗布し、80℃で5分乾燥後、再度刷毛で接着剤組成物を110g/m塗布、80℃で5分乾燥後に冷却を行うことで被着体を作製した。その被着体に配合した接着剤組成物を刷毛で110g/m塗布し、80℃にて5分間乾燥した後にハンドローラーを用いて圧着した。それを、150mm×25mmのサイズに切り出したものを測定用の試験片とした。23℃にて1週間養生した試験片を、80℃の雰囲気下にて5分間状態調整を実施した後に、テンシロン型引っ張り試験機を用いて80℃の雰囲気下にて100mm/minの剥離速度で180°方向の引っ張りにて耐熱強度の測定を行った。
【0041】
<常温初期接着強度>
9号帆布2枚(約150mm×60mm)それぞれの片面に下塗りとして刷毛で接着剤組成物を約250g/m塗布し、80℃で5分乾燥後、再度刷毛で接着剤組成物を110g/m塗布、80℃で5分乾燥後に冷却を行うことで被着体を作製した。それに、接着剤組成物を刷毛で110g/m塗布した後23℃の室温にて1時間乾燥し、ハンドローラーを用いて圧着。150mm×25mmのサイズに切り出したものを測定用の試験片とした。接着強度の測定はテンシロン型引っ張り試験機を用いて23℃の雰囲気下にて100mm/minの剥離速度で180°方向の引っ張りにて行った。測定は圧着してから2分後に実施した。
【0042】
実施例1
表1で示した割合のクロロプレン、メタクリル酸、n−ドデシルメルカプタン、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム(商品名:ペレックスSS−H、花王(株)製)、ナフタレンスルホン酸ナトリウムとホルムアルデヒドの縮合物(商品名:デモールN、花王(株))、ハイドロサルファイトナトリウム、及び純水を攪拌機付き10Lオートクレーブ中40℃で重合を行った。重合は窒素雰囲気下で0.35重量%の過硫酸カリウム水溶液を連続的に滴下して行い、重合転化率が90%となった時点で重合停止剤として2,6−ターシャリーブチル−4−メチルフェノール0.05重量部を添加し重合を停止した。その後、減圧下で未反応単量体の除去及び濃縮によりラテックスの固形分を55%に調整し、ラテックスAを得た。ラテックスのゲル分は0.2重量%であった。
【0043】
【表1】

そのラテックスを室温(25℃)で6ヶ月保管し、保管後のゲル分を測定した。また、保管前後のラテックスそれぞれに対し、樹脂エマルジョン、金属酸化物、増粘剤を配合して接着剤組成物を作製し、その配合安定性、接着強度を測定した。配合を表2に、結果を表3に示す。表3の結果より、保管の前後共にラテックスのゲル分の変化は少なく、接着強度は安定して良好な値であった。
【0044】
【表2】

【0045】
【表3】

実施例2
ラテックスAをギヤオーブンにて50℃で3日間熟成を実施し、ゲル分が1.6%のラテックスBを得た。その後、実施例1に従ってラテックスの安定性および接着物性の評価を行った。結果を表3に合わせて示す。表3の結果より、保管の前後共にラテックスのゲル分の変化は少なく、接着強度は安定して良好な値であった。
【0046】
実施例3
重合温度を10℃に変更し、重合転化率を93%とした以外は実施例1に従って重合を行い、減圧下で未反応単量体の除去及び濃縮によりラテックスの固形分を55%に調整し、ラテックスCを得た。ラテックスのゲル分は0.4重量%であった。
【0047】
その後、実施例1に従ってラテックスの安定性および接着物性の評価を行った。結果を表3に合わせて示す。表3の結果より、保管の前後共にラテックスのゲル分の変化は少なく、接着強度は安定して良好な値であった。
【0048】
実施例4
ラテックスCをギヤオーブンにて50℃で3日間熟成を実施し、ゲル分が1.4%のラテックスDを得た。その後、実施例1に従ってラテックスの安定性および接着物性の評価を行った。結果を表3に合わせて示す。表3の結果より、保管の前後共にラテックスのゲル分の変化は少なく、接着強度は安定して良好な値であった。
【0049】
実施例5
単量体として更に2,3−ジクロロブタジエンを使用し、10℃で重合を行った以外は実施例1に従って重合を行い、減圧下で未反応単量体の除去及び濃縮によりラテックスの固形分を55%に調整し、ゲル分が0.7重量%のラテックスEを得た。
【0050】
その後、実施例1に従ってラテックスの安定性および接着物性の評価を行った。結果を表3に合わせて示す。表3の結果より、保管の前後共にラテックスのゲル分の変化は少なく、接着強度は安定して良好な値であった。
【0051】
実施例6
ラテックスAとラテックスEを50:50で混合し、ゲル分が0.6重量%のラテックスを得た。その後、実施例1に従ってラテックスの安定性および接着物性の評価を行った。結果を表3に合わせて示す。表3の結果より、保管の前後共にラテックスのゲル分の変化は少なく、接着強度は安定して良好な値であった。
【0052】
実施例7
n−ドデシルメルカプタン量を表1に示した割合に変更した以外は実施例1に従って重合を行い、減圧下で未反応単量体の除去及び濃縮によりラテックスの固形分を55%に調整しゲル分が0重量%のラテックスFを得た。更に、ラテックスFとラテックスBを20:80で混合し、ゲル分が1.2重量%のラテックスを作成し、実施例1に従ってラテックスの安定性および接着物性の評価を行った。結果を表3に合わせて示す。表3の結果より、保管の前後共にラテックスのゲル分の変化は少なく、接着強度は安定して良好な値であった。
【0053】
比較例1
ラテックスFについて実施例1に従ってラテックスの安定性および接着物性の評価を行った。結果を表4に示す。表4の結果より、保管の前後共にラテックスのゲル分は0重量%であり、耐熱接着強度が低かった。
【0054】
【表4】

比較例2
表1で示した割合にn−ドデシルメルカプタンを変更した以外は、実施例1に従って重合を行い、減圧下で未反応単量体の除去及び濃縮によりラテックスの固形分を55%に調整した後、ギヤオーブンにて50℃で3日間熟成を実施し、ゲル分が10重量%のラテックスGを得た。
【0055】
その後、実施例1に従ってラテックスの安定性および接着物性の評価を行った。結果を表4に合わせて示す。表4の結果より、保管後はラテックスのゲル分が26重量%に増加し、常温初期接着強度が低かった。
【0056】
比較例3
表1で示した割合にn−ドデシルメルカプタンを変更し、重合転化率を98%に変更した以外は、実施例1に従って重合を行い、減圧下で未反応単量体の除去及び濃縮によりラテックスの固形分を55%に調整し、ラテックスHを得た。ラテックスのゲル分は9重量%であった。
【0057】
その後、実施例1に従ってラテックスの安定性および接着物性の評価を行った。結果を表4に合わせて示す。表4の結果より、保管後はラテックスのゲル分が32重量%に増加し、常温初期接着強度が低かった。
【0058】
比較例4
表1で示した割合にn−ドデシルメルカプタンを変更し、重合転化率を98%に変更した以外は、実施例1に従って重合を行い、減圧下で未反応単量体の除去及び濃縮によりラテックスの固形分を55%に調整し、ラテックスIおよびラテックスJを得た。ラテックスのゲル分はそれぞれ0重量%、60重量%であった。更に、ラテックスIとラテックスJを80:20で混合し、ゲル分12重量%のラテックスを得た。
【0059】
その後、実施例1に従ってラテックスの安定性および接着物性の評価を行った。結果を表4に合わせて示す。表4の結果より、保管後はラテックスのゲル分が34重量%に増加し、常温初期接着強度が低かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アニオン型乳化剤及び/又はノニオン型乳化剤、並びにカルボキシル基を含むクロロプレン共重合体を含有し、該共重合体のゲル分が0重量%より大きく2重量%未満であることを特徴とするクロロプレンラテックス。
【請求項2】
アニオン型乳化剤がスルホン酸のアルカリ金属塩を有するアニオン系乳化剤であることを特徴とする請求項1に記載のクロロプレンラテックス。
【請求項3】
アニオン型乳化剤がアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のクロロプレンラテックス。
【請求項4】
クロロプレン単量体又はクロロプレン単量体とクロロプレンと共重合可能なその他の単量体と、カルボキシル基を含有する単量体、連鎖移動剤を用いて重合し、重合転化率95%以下で重合を停止して、クロロプレン共重合体のゲル分が0重量%より大きく2重量%未満のクロロプレンラテックスを得ることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかの項に記載のクロロプレンラテックスの製造法。
【請求項5】
クロロプレン単量体又はクロロプレン単量体とクロロプレンと共重合可能なその他の単量体と、カルボキシル基を含有する単量体、連鎖移動剤を用いて重合し、重合転化率95%以下で重合を停止して、クロロプレン共重合体のゲル分が0重量%より大きく2重量%未満のクロロプレンラテックスを得て、その後、30〜70℃で熟成することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかの項に記載のクロロプレンラテックスの製造法。
【請求項6】
カルボキシル基を含むクロロプレン共重合体のゲル分が0重量%以上のラテックスと、当該ゲル分が20重量%以下のクロロプレンラテックスを10:90〜90:10の比で混合しクロロプレン共重合体のゲル分が0重量%より大きく2重量%未満のクロロプレンラテックスを得ることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかの項に記載のクロロプレンラテックスの製造法。
【請求項7】
請求項1〜請求項3のいずれかの項に記載のクロロプレンラテックスを含有することを特徴とする接着剤組成物。

【公開番号】特開2010−106072(P2010−106072A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−277319(P2008−277319)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】