説明

クローポール型永久磁石モータ

【課題】
本発明は、モータ性能を向上させつつ、軸方向へさらなる薄型化を行うことができるプリント配線基板一体型のクローポール型永久磁石モータを提供することにある。
【解決手段】
コイルエンドの存在しないクローポール型永久磁石モータ1の固定子4の軸方向端面に、電子部品52を含む駆動回路を備えたプリント配線基板5と、モータ取付板6とが密着するように構成する。これにより、基板一体型永久磁石モータにおいて、さらなる薄型化が達成され、プリント配線基板5上の電子部品52の放熱効果が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クローポール型永久磁石モータに関する。
【背景技術】
【0002】
電磁鋼板を積層して形成した固定子鉄心のティースにコイルを巻きつけることで構成した固定子と、回転子鉄心の外周部に永久磁石を等間隔に設置して構成した回転子からなる永久磁石モータにおいて、駆動回路を備えたプリント配線基板との一体構造は、例えば特許文献1などで既に知られている。
【0003】
【特許文献1】特開平10−108434号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
駆動回路を備えたプリント配線基板と永久磁石モータの一体構造は、プリント配線基板を含めたモータの小型化に寄与する。しかしながら、上記の特許文献1に記載されているようなモータ構造の場合、電磁鋼板を積層して形成した固定子鉄心のティースにコイルを巻きつけることで構成された固定子を備えているため、必然的にコイルエンド部が形成される。コイルエンド部は、モータの軸長が増加する要因となり、プリント配線基板と永久磁石モータを一体に構成したとしても、軸方向への薄型化に障害となる。
【0005】
そこで、本発明は、プリント配線基板一体型の永久磁石モータにおいて、モータ性能を向上させつつ、軸方向へさらなる薄型化を達成することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
プリント配線基板一体型の永久磁石モータにおいて、永久磁石モータとしてクローポール型永久磁石モータを用い、このクローポール型永久磁石モータの軸方向端面に、駆動回路を備えたプリント配線基板と、モータ取付板とを密着して配置する構造にする。
【発明の効果】
【0007】
このようにクローポール型永久磁石モータの軸方向端面に、駆動回路を備えたプリント配線基板と、モータ取付板とを密着して配置する構造を採用することで、モータ性能を向上させつつ、従来の構成よりもさらに薄型であるプリント配線基板一体型のクローポール型永久磁石モータを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下図面を用いて実施例を説明する。
【実施例1】
【0009】
以下、本発明によるプリント配線基板一体型のクローポール型永久磁石モータ9の一実施の形態について述べる。実施例1として、単相の外転型のクローポール型永久磁石モータ1を挙げる。クローポール型永久磁石モータ1は、大きくは、図1に示すように、回転軸2に構成した回転子3と、この回転子3に対し径方向の空隙を介して同心状に設置された固定子4とで構成される。図1には示していないが、固定子4は軸受ホルダ8に支持され、この軸受ホルダ8には軸方向に間隔をもって軸受7a,7bが配置され、これら軸受7a,7bは前記回転軸2を回転自在に支持する。
【0010】
前記回転子3は、図1,図3が示すように、カップ状に形成された回転子鉄心31と、その内周部に複数配置された永久磁石極32と、前記回転子鉄心31に固着された軸方向に延在する回転軸2とで構成される。
【0011】
また前記固定子4は、固定子鉄心41と、固定子鉄心41に巻き掛けられた環状コイル42とで構成され、前記固定子鉄心41は、図2が示すように、第1固定子鉄心41aと第2固定子鉄心42bから構成され、前記環状コイル42は、図3のように、これら第1固定子鉄心41aと第2固定子鉄心42bに挟まれている。
【0012】
これら第1固定子鉄心41aと第2固定子鉄心41bは、軸方向に延在して軸受ホルダ8に支持される内周鉄心部46と、この内周鉄心部46から外径側に延在する径方向鉄心部45と、この径方向鉄心部45から前記内周鉄心部46と同方向に延在する爪磁極43とを有し、前記爪磁極43は前記回転子3と空隙を介し対向する爪磁極面44を有している。このように構成された固定子鉄心41a,42bを、前記環状コイル42を挟み込むようにして互いの爪磁極43が噛み合うように接近させることで、固定子鉄心41を構成している。
【0013】
これら第1固定子鉄心41aと第2固定子鉄心42bは、磁気特性に優れた珪素鋼板を積層することによって形成することが望ましいが、爪磁極43の形成が難しい場合には、SPCC等の圧延鋼板を折り曲げ加工して形成することができる。しかしがなら、折り曲げ成形の際に発生する残留応力によって磁気特性の更なる低下を招くことで効率の悪いモータになる課題と、折り曲げ加工によって爪磁極43を形成した場合、回転子3に対する真円度にばらつきのある爪磁極面44となりやすい課題がある。これに対し、磁性粉末を成形金型の成形パンチによって圧縮成形することで、これらの課題を一掃することができる、第1固定子鉄心41aと第2固定子鉄心42bを得ることができる。
【0014】
以上のようにすることで、コイルエンドの存在しない単相の外転型のクローポール型永久磁石モータ1が構成される。多相のクローポール型永久磁石モータの場合、上記のような構成のクローポール型永久磁石モータ1を周方向に所定の角度だけずらしながら軸方向に配置すればよく、例えば、3つの固定子4を周方向に電気角で120度、すなわち機械角で120/p(極対数)ずつ周方向にずらしながら配置すれば、3相のクローポール型モータが得られる。以下に述べる実施の形態において、単相のクローポール型永久磁石モータを扱うが、任意の相数の多相クローポール型永久磁石モータであってもよい。また以下の実施例で、外転型モータについて扱うが、内転型モータであってもよい。
【0015】
図4に第1の実施例の駆動回路を含むプリント配線基板一体型のクローポール型永久磁石モータ9の断面図を示す。軸受ホルダ8の円形内周面には、軸方向に間隔をもって2個の軸受7a,7bが支持されており、これら軸受7a,7bに回転自在に回転軸2が支持され、この回転軸2とカップ状に形成された回転子鉄心31とが固着され、軸受ホルダ8の外周部には、固定子4と、この固定子4の軸方向端面に密着して配置された電子部品
52を含む駆動回路を備えたプリント配線基板5と、このプリント配線基板5に密着して配置されたモータ取付板6とが固定されることで、プリント配線基板一体型のクローポール型永久磁石モータ9が構成される。ここで、クローポール型永久磁石モータ1には、コイルエンドが存在しないため、固定子4の軸方向端面にプリント配線基板5を密着させることは容易である。
【0016】
また、プリント配線基板5のモータ取付板6側には駆動回路用の電子部品52が搭載され、モータ取付板6に設けられた凹部61にプリント配線基板5上の電子部品52が収納される。また、プリント配線基板5上の配線パターンは、プリント配線基板5内部に実装されている。このような構成により、プリント配線基板5とモータ取付板6とが、密着する構成が可能となる。
【0017】
このように固定子4の軸方向端部とプリント配線基板5が密着し、さらにプリント配線基板5とモータ取付板6が密着するように構成することで、従来に比べて、軸方向に薄いプリント配線基板一体型のクローポール型永久磁石モータを得ることができる。
【0018】
さらに、プリント配線基板5上に配置される駆動回路用の電子部品52から発せられる熱は、プリント配線基板5に密着された熱伝導性のよい固定子鉄心41とモータ取付板6の両面に伝わり、空気中に放熱される。これにより、電子部品52の熱損失による温度上昇が抑制され、プリント配線基板5へ電子部品52の高密度実装が可能となり、プリント配線基板5の小型化が可能となる。そのため、モータ取付板6は熱伝導性のよい金属で製作されることが望ましい。例えばアルミ等が考えられる。また、高熱伝導樹脂を使用してもよい。
【0019】
また、モータ取付板6に磁性材を用いることで、モータ取付板6は磁気シールドの役割を兼ねることが可能である。これにより、外部に磁場が漏れることを防ぎ、外部の計測器,電気機器等への影響を最小限にすることができる。
【0020】
また、プリント配線基板5と固定子4の周方向の位置関係を固定されるために、プリント配線基板5のモータ側には、図5のように凸部53が設けられている。モータをモータ取付板6側から見た様子を表している図6と比較して明らかなように、第1固定子鉄心
41aの軸方向端部と、第2固定子鉄心42bに属する爪磁極43の間に存在する空隙
9Gに嵌合するように前記凸部53は形成されている。また、磁極位置を検出する磁電変換素子としてのホール素子51は、第1固定子鉄心41aに属する爪磁極43と第2固定子鉄心42bに属する爪磁極43の間に配置され、図5のようにプリント配線基板5のモータ側に搭載される。
【0021】
このように、プリント配線基板5に設けられた凸部53が固定子4と嵌合され、周方向に固定されることで、プリント配線基板5は、固定子鉄心4に対する位置決め機能を有することになり、それゆえ、ホール素子51が固定子4の爪磁極43に対して適切な位置に配置をすることを極めて簡単に行うことが可能となる。これにより、ホール素子51は、回転子3の磁極位置を検出してモータ駆動信号を適切に生成することが可能となる。特許文献1では、プリント配線基板5の位置決めをするために、特許文献1の図2に示されているプリント配線基板を周方向に固定するためのスペーサを用いているが、本実施例はそのような部品を必要としないため、コストの増加がない利点を有する。
【0022】
また、本実施例では、プリント配線基板5上の配線パターンを、基板内部に実装しているが、プリント配線基板5上の配線パターンが、基板表面に実装される場合は、配線パターンと密着する固定子4もしくは、モータ取付板6に絶縁を施すなどすればよい。
【実施例2】
【0023】
図7に本発明によるプリント配線基板一体型のクローポール型永久磁石モータ9の第2の実施例を示す。クローポール型永久磁石モータ1の構成は第1の実施例と同一であり、軸受ホルダ8の円形内周面には、軸方向に間隔をもって2個の軸受7a,7bが支持されており、これら軸受7a,7bに回転自在に回転軸2が支持され、この回転軸2にカップ状に形成された回転子鉄心31が固着され、軸受ホルダ8の外周部には、固定子4と、この固定子4の軸方向端面に密着して配置された電子部品52を含む駆動回路を備えたプリント配線基板5と、このプリント配線基板5に密着して配置されたモータ取付板6とが固定されることでプリント配線基板一体型のクローポール型永久磁石モータ9が構成される。
【0024】
ここで、第1固定子鉄心41aの径方向鉄心部45に凹部61bが形成されており、プリント配線基板5上の駆動回路用の電子部品52が、モータ側に配置されることで前記凹部61bに収納され、これによりプリント配線基板5は固定子4の軸方向端面と密着して配置することが可能となる。
【0025】
このように構成することで、固定子鉄心41はプリント配線基板5と密着して配置され、さらにプリント配線基板5はモータ取付板6と密着して配置され、これにより従来に比べてモータとプリント配線基板の一体構造における軸方向の厚みを薄くすることができる。
【0026】
ここで、固定子鉄心41を構成する第1固定子鉄心41aは磁性粉末を圧縮成形することにより形成されるため、第1固定子鉄心41aにおける径方向鉄心部45に凹部61bを設けることは、圧縮成形をする際に行えばよい。これは、第1の実施例においてモータ取付板6に凹部61を設けるよりも、容易である。
【0027】
さらに、実施例1と同様に、プリント配線基板5上に配置される駆動回路用の電子部品52から発せられる熱は、プリント配線基板5に密着された熱伝導性のよい固定子鉄心
41とモータ取付板6の両面に伝わり、空気中に放熱される。これにより、電子部品52の熱損失による温度上昇が抑制され、プリント配線基板5へ電子部品52の高密度実装が可能となり、モータ特性が改善される。
【0028】
また、実施例1のようにプリント配線基板5が固定子鉄心41と嵌合されるように凸部をもって形成され、これにより固定子鉄心41とプリント配線基板5が周方向に固定するように構成することで、ホール素子51が爪磁極43に対して適切な位置に配置されるような位置決めを可能にしてもよい。
【0029】
ところで、以上の説明した各実施の形態においては、クローポール型永久磁石モータ1の固定子鉄心41の軸方向端面に、プリント配線基板5が密着して配置され、このプリント配線基板5にモータ取付板6が密着して配置される構造であったが、これらの軸方向の位置関係は任意である。すなわち、クローポール型永久磁石モータ1の固定子鉄心41の軸方向端面に、モータ取付板6が密着して配置され、このモータ取付板6にプリント配線基板5が密着するような構造でも本発明の効果が得られる。
【0030】
また、これまで説明した実施の形態において、回転子3の極数は4極であったが、任意の偶数の極数にしても、本発明の効果が得られるのはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明によるクローポール型永久磁石モータの構成を示す分解斜視図。
【図2】図1の固定子の構成を示す分解斜視図。
【図3】図1の構成を示す分解斜視図。
【図4】本発明によるプリント配線基板一体型のクローポール型永久磁石モータの第1の実施例の構成を示す断面図。
【図5】図4のプリント配線基板をクローポール型永久磁石モータ側から見た概略図。
【図6】図1を回転軸方向から見た概略図にホール素子の位置を付加した図。
【図7】本発明によるクローポール型永久磁石モータの第2の実施例の構成を示す図4相当図。
【符号の説明】
【0032】
1 クローポール型永久磁石モータ
2 回転軸
3 回転子
4 固定子
5 プリント配線基板
6 モータ取付板
7a 軸受a
7b 軸受b
8 軸受ホルダ
9 プリント配線基板一体型のクローポール型永久磁石モータ
31 回転子鉄心
32 永久磁石
41 固定子鉄心
41a 第1固定子鉄心
41b 第2固定子鉄心
42 コイル
43 爪磁極
44 爪磁極面
45 径方向鉄心部
46 凹部
51 ホール素子
52 電子部品
53 凸部
61 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状コイルを挟みこむ爪磁極を有する固定子鉄心により構成された固定子と、この固定子と微小隙間を介して対向する回転子鉄心に複数のN極とS極からなる永久磁石を周方向に配置して構成した回転子とを備えたクローポール型永久磁石モータにおいて、前記固定子鉄心の軸方向端面に駆動回路を備えたプリント配線基板が密着されて構成されることを特徴とするクローポール型永久磁石モータ。
【請求項2】
環状コイルを挟みこむ爪磁極を有する固定子鉄心により構成された固定子と、この固定子の外周面に微小隙間を介して対向する回転子鉄心に複数のN極とS極からなる永久磁石を周方向に配置して構成した回転子とを備えたクローポール型永久磁石モータにおいて、前記固定子鉄心の軸方向端面に駆動回路を備えたプリント配線基板が密着されて構成されることを特徴とするクローポール型永久磁石モータ。
【請求項3】
環状コイルを挟みこむ爪磁極を有する固定子鉄心により構成された固定子と、この固定子の内周面に微小隙間を介して対向する回転子鉄心に複数のN極とS極からなる永久磁石を周方向に配置して構成した回転子とを備えたクローポール型永久磁石モータにおいて、前記固定子鉄心の軸方向端面に駆動回路を備えたプリント配線基板が密着されて構成されることを特徴とするクローポール型永久磁石モータ。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかにおいて、
前記プリント配線基板にモータ取付板が密着して配置されることを特徴とするクローポール型永久磁石モータ。
【請求項5】
請求項4において、
前記モータ取付板には、前記プリント配線基板上に配置された電子部品を収めることを可能とすべく凹部が形成されていることを特徴とするクローポール型永久磁石モータ。
【請求項6】
請求項4において、
前記モータ取付板は、高熱伝導の材料で構成されていることを特徴とするクローポール型永久磁石モータ。
【請求項7】
請求項4において、
前記モータ取付板は、磁性材料で構成されていることを特徴とするクローポール型永久磁石モータ。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れかにおいて、
前記固定子の軸方向端面には、前記プリント配線基板上に配置された電子部品を収めることを可能とすべく凹部が形成されていることを特徴とするクローポール型永久磁石モータ。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れかにおいて、
前記プリント配線基板には、前記固定子の軸方向端面に嵌合することを可能とすべく凸部が形成され、プリント配線基板のモータ側の面に回転位置センサが配置されることを特徴とするクローポール型永久磁石モータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−148420(P2008−148420A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−331298(P2006−331298)
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【出願人】(502129933)株式会社日立産機システム (1,140)
【出願人】(000233572)日立粉末冶金株式会社 (272)
【出願人】(000228730)日本サーボ株式会社 (276)
【Fターム(参考)】