説明

グラウト組成物、グラウトモルタル及びグラウト工法

【課題】流動性が良好で、ブリーディングや硬化収縮が無く、乾燥収縮によるひび割れ抵抗性が高いグラウト組成物、グラウトモルタル及びグラウト工法を提供する。
【解決手段】セメント、膨張材、収縮低減剤、溶融紡糸した玄武岩繊維、減水剤、発泡剤、及び骨材を含有するグラウト組成物であり、溶融紡糸した玄武岩繊維がポルトランドセメントと膨張材の合計100部に対して0.1〜10部である(1)のグラウト組成物、(3)さらに、デキストリンを含有してなる(1)又は(2)のグラウト組成物、(4)(1)〜(3)のいずれかグラウト組成物と水を混合してなるグラウトモルタル、(5)(4)のグラウトモルタルを用いたグラウト工法、である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に、土木・建築業界において使用されるグラウト組成物、グラウトモルタル及びグラウト工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セメント系グラウト材料としては、膨張物質と減水剤を主成分とするものが提案されている(特許文献1、特許文献2)。これらの材料は、いずれも作業性や充填性に優れ、グラウト工事を円滑に行う材料であった。
最近では、グラウト材料に要求される性能は益々高まり、その要求物性としては、(1)無収縮であること、(2)流動性が良好でその保持性が優れること、(3)ブリーディングや材料分離が無いこと、(4)水和熱による温度ひび割れが無いことなどが挙げられる。さらに、グラウト材料は、コンクリート構造物の補修・補強工事における断面修復や断面の増し打ち部に使用されることが多くなる傾向にあり、(5)乾燥収縮の低減によるひび割れ防止も求められるようになった。
【0003】
しかしながら、従来のグラウト材料は、上記(1)〜(4)については要求を満たすものの、(5)の乾燥収縮の低減によるひび割れ防止については、性能を充分に満足していないのが現状である。
また、充填箇所によっては、さらなる高流動化が要求される場合もあり、この場合、特に高温下では著しく泡が発生することがあった。多量に泡が発生するとコンクリートとの付着がとれなくなるだけではなく、材料分離を起こす可能性があり、コンクリートとの間に間隙が生じることが考えられ、施工上の課題となっている(非特許文献1)。
【特許文献1】特開2003−171162号公報
【特許文献2】特開2001−329263号公報
【非特許文献1】「高強度グラウト材の充填性に関する実験研究」、日本建築学会大会学術講演梗概集、No.1313、pp.625、1995年8月
【0004】
材料自体に初期ひび割れ抵抗性を持たせる方法としては、短繊維を混入する方法が開示されている(非特許文献2)。また、溶融した玄武岩繊維の製造方法も開示されている(特許文献3)。
【非特許文献2】浜田敏祐、末森寿志、斉藤忠、平居孝之:ビニロン短繊維によるコンクリートのプラスチック収縮ひび割れ抑制に関する実験的研究、コンクリート工学年次論文集、vol.22、No.2、pp.319−324、2000
【特許文献3】特表平09―500080号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、流動性が良好でブリーディングや硬化収縮が無く、乾燥収縮によるひび割れ抵抗性が高く、さらに、水和熱による温度ひび割れが抑制され、材料分離が無く(泡の発生の無い)という効果を奏するグラウト組成物、グラウトモルタル及びグラウト工法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、(1)セメント、膨張材、収縮低減剤、溶融紡糸した玄武岩繊維、減水剤、発泡剤、及び骨材を含有するグラウト組成物、(2)溶融紡糸した玄武岩繊維がセメントと膨張材の合計100部に対して0.1〜10部である(1)のグラウト組成物、(3)さらに、デキストリンを含有してなる(1)又は(2)のグラウト組成物、(4)(1)〜(3)のいずれかグラウト組成物と水を混合してなるグラウトモルタル、(5)(4)のグラウトモルタルを用いたグラウト工法、である。
【発明の効果】
【0007】
本発明のグラウト組成物を使用したグラウトモルタルは、流動性が良好でブリーディングや硬化収縮が無く、乾燥収縮によるひび割れ抵抗性が高く、さらに、水和熱による温度ひび割れが抑制され、材料分離が無く(泡の発生の無い)という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本発明における部や%は、特に規定しない限り質量基準で示す。
【0009】
本発明で使用するセメントは、特に限定されるものではないが、普通、早強、超早強、低熱、及び中庸熱等の各種ポルトランドセメント、これらポルトランドセメントに、高炉スラグ、フライアッシュ、シリカ、又は石灰石粉末等を混合した各種混合セメント、並びに、廃棄物利用型セメント、いわゆるエコセメント等が挙げられる。
【0010】
本発明で使用する膨張材は、特に限定されるものではなく、一般に使用されているカルシウムサルホアルミネート系膨張材、カルシウムアルミノフェライト系膨張材、及び生石灰系膨張材等のいずれも使用可能である。
膨張材の使用量は、セメント100部に対して、2〜20部が好ましく、4〜15部がより好ましい。2部未満では収縮低減効果が小さい場合があり、20部を超えても収縮低減効果の向上が期待できない。
【0011】
本発明で使用する収縮低減剤は、硬化後のグラウトモルタルの乾燥収縮を抑制し、ひび割れの発生を抑制するもので、構成する収縮低減成分としては、RO(AO)nH(ただし、Rは炭素数4〜6のアルキル基、Aは炭素数2〜3の一種又は二種以上のアルキレン基、nは1〜10の整数)で示される低級アルコールのアルキレンオキサイド付加物を主体としたものや、一般式X(AO)nR)m(ただし、Xは2〜8個の水素基を有する化合物の残基、AOは炭素数2〜18のオキシアルキレン基、Rは水素原子、炭素数1〜18の炭化水素基、又は炭素数2〜18のアシル基、nは30〜1000、mは2〜8)で示され、そのオキシアルキレン基の60モル%以上はオキシエチレン基であるポリオキシアルキレン誘導体等を使用することが可能である。
収縮低減剤の使用量は、セメント100部に対して、1〜6部が好ましく、2〜5部がより好ましい。1部未満では乾燥収縮低減効果が小さい場合があり、6部を超えると強度発現性が低下する場合がある。
【0012】
本発明で使用する溶融紡糸した玄武岩繊維(以下、玄武岩繊維という)は、天然の玄武岩を原料とし、高温で溶融紡糸した非晶質の人造好物繊維である。その特徴として、有機繊維に比べ耐熱性に優れ、ガラス繊維やロックウールに比べ耐薬品性に優れ、密度が2.8g/cm程度であることから、ドライモルタルと同程度であり、均一混合性に優れるという特徴がある。
玄武岩繊維の繊維径は、2〜50μmが好ましく、7〜20μmがより好ましい。2μmより小さいと、安定的に製造することが困難であり、50μmを超えると初期ひび割れ低減効果が低下する場合がある。
玄武岩繊維の繊維長は、2〜15mmが好ましく、5〜10mmがより好ましい。2mmより小さいと初期ひび割れ低減効果が小さく、15mmを超えるとドライモルタルに混合したときの分散性が悪くなる場合がある。
玄武岩繊維は、繊維が単独にほぐれた単繊維状態(繊維径としては、0.1mm以上となる)ではなく、サイジング剤等で繊維径50μm以下の単繊維を束状にした収束状態のものを使用することが好ましい。適度に接着力のある収束状にすることで、ドライモルタルと混合したときに簡単にほぐれて均一な混合が可能となる。
本発明で使用する玄武岩繊維の使用量は、セメントと膨張材の合計100部に対して、0.1〜10部が好ましく、0.3〜5部がより好ましい。0.1部未満では、初期ひび割れ低減効果が期待できず、10質量部を超えると均一な混合ができなくなる場合がある。
【0013】
本発明で使用する減水剤は、特に限定されるものではないが、セメントに対する分散作用や空気連行作用を有し、流動性改善や強度増進するものであり、具体的には、ポリアルキルアリルスルホン酸塩の縮合物、ナフタレンスルホン酸塩の縮合物、リグニンスルホン酸塩の縮合物、メラミンスルホン酸塩の縮合物、及びポリカルボン酸塩の縮合物等が挙げられる。これらの減水剤は、液状あるいは粉末状で使用可能であるが、あらかじめ他の材料とプレミックスできる粉末状で使用することが効果的であり、本発明ではこれらのうちの一種又は二種以上を使用する。
減水剤(固形分)の使用量は、セメント100部に対して、0.05〜3部が好ましい。0.05部未満では所定の流動性が得られず、3部を超えると材料分離の発生や圧縮強度が低下する場合がある。
【0014】
本発明で使用する発泡剤は、特に限定されるものではないが、グラウトモルタルの初期膨張性を得るため、水と混練後に、気体を発生する物質であり、この作用によりグラウトモルタルの沈下現象を防止し、構造物との一体化を図る目的で使用される。その具体例としては、例えば、金属粉末や過酸化物質等が挙げられる。なかでもアルミニウム粉末が好ましいが、アルミニウム粉末の表面は酸化されやすく酸化皮膜で覆われると反応性が低下するため、植物油、鉱物油、又はステアリン酸等で表面処理したアルミニウム粉末が好ましい。
発泡剤の使用量は、セメント100部に対して、0.0001〜0.003部が好ましい。0.0001部未満では膨張量が極めて少なくなる場合があり、0.003部を超えると膨張量が大きく強度が低下する場合がある。
【0015】
本発明で使用する骨材は、特に限定されるものではないが、通常使用されている川砂、海砂、砕砂、及び珪砂等が使用可能であり、プレミックス製品として使用する際にはそれらの乾燥砂が好ましく、その最大粒径は5.0mm以下であることが好ましい。
骨材の使用量は、セメントと膨張材の合計100部に対して、90〜250部が好ましい。90部未満では収縮量が多くなる場合があり、250部を超えると強度や流動性が低下する場合がある。
【0016】
本発明では、部材断面の大きい箇所へ多量のグラウトを行う際に発生する水和熱を抑制する目的でデキストリンを使用することが好ましい。
本発明で使用するデキストリンは、デンプンを酸と共に加熱分解して得られる可溶性デンプンを総称するものであり、別名ばい焼デンプンとも呼ばれている。特に、冷水可溶分5〜55%のものが好ましく、10〜50%のものがより好ましい。冷水可溶分が10%未満では充分な水和熱抑制効果が得られない場合があり、55%を超えると強度発現性が低下する場合がある。
本発明で言う冷水可溶分とは、デキストリンが温度21℃の蒸留水に溶解した量を意味するものであり、具体的には、デキストリン10gを200mlのフラスコに入れ、温度21℃の蒸留水150mlを加えて1時間後にろ別し、そのろ液を蒸留乾固して得られたデキストリンを供試デキストリンに対する割合で示したものである。
デキストリンの使用量は、セメント100部に対して、0.05〜1.5部が好ましく、0.1〜1.0部がより好ましい。0.05部未満では充分な水和熱抑制効果が発揮できない場合があり、1.5部を超えると強度発現性が低下する場合がある。
【0017】
本発明で使用する水は、特に限定されるものではないが、セメントと膨張材の合計100部に対して、30〜55部が好ましく、35〜50部がより好ましい。この範囲外では、流動性の低下、材料分離の発生、強度発現性の低下等が起き易くなる場合がある。
【0018】
本発明では、消泡剤、増粘剤、防錆剤、防凍剤、セメント急硬材、及び凝結調整剤のうちの一種又は二種以上を、また、高分子エマルジョン、ポゾラン微粉末、ベントナイトなどの粘土鉱物、及びハイドロタルサイトなどのアニオン交換体等のうちの一種又は二種以上を、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲で使用することが可能である。
【0019】
本発明では、各材料の混合方法は特に限定されるものではなく、それぞれの材料を施工時に混合してもよく、また、あらかじめその一部あるいは全部を混合しておいてもよい。
【0020】
混合装置としては、既存のいかなる装置も使用可能であり、例えば、傾胴ミキサ、オムニミキサ、ヘンシェルミキサ、V型ミキサ、及びナウターミキサ等が使用可能である。
【0021】
本発明のグラウトモルタルは、あらかじめグラウト組成物を構成する成分の全部を混合し、現場で水を加えて練り混ぜるだけで使用可能なプレミックスタイプで使用することが好ましいが、構成成分の一部あるいは全部を使用現場で混合して調製することも可能である。
【0022】
本発明のグラウトモルタルを使用した施工方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、コンクリートの表面にプライマー処理の後、型枠を設置し、型枠内に本発明のグラウトモルタルを充填し、硬化させる方法等が挙げられる。
本発明のグラウトモルタルは、従来のグラウト材料の用途に使用できるが、特に、部材断面の大きい箇所へ多量のグラウトが可能である。
【0023】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0024】
セメント100部に対して、表1に示す量の膨張材、収縮低減剤3部、減水剤1.5部、及び発泡剤0.0016部、さらに、セメントと膨張材の合計100部に対して、玄武岩繊維0.5部、骨材180部と水43部を添加して、高速ハンドミキサを用い練り混ぜしグラウトモルタルを作製し、その流動性、ブリーディング率、長さ変化率、体積膨張率、及び圧縮強度を測定した。結果を表1に併記する。
【0025】
<使用材料>
セメント:普通ポルトランドセメント、比重3.15、市販品
膨張材:カルシウムサルホアルミネート系膨張材、比重2.83、市販品
収縮低減剤:粉末収縮低減剤、市販品
玄武岩繊維:繊維径10μm、繊維長6mm、収束タイプ、カナエ社製、商品名「バサルトファイバー」
減水剤:ナフタレンスルホン酸塩系減水剤、市販品
発泡剤:アルミニウム粉末、市販品
骨材:新潟県青海産石灰石砕砂、最大粒径4mm、比重2.62
【0026】
<測定方法>
流動性:土木学会標準示方書(JSCE−F541−1999)「充てんモルタルの流動性試験方法」に準じてJ14漏斗流下値を測定
ブリーディング率:土木学会標準示方書(JSCE―F542−1999)「充てんモルタルのブリーディング率および膨張率試験方法」に準じてブリーディング率を測定
長さ変化率:日本道路公団試験方法(JHS 416 1999)「断面修復材の品質規格試験方法」に準じて、グラウトモルタルを、20℃、80%RHの恒温恒湿室で型枠に打設し、2日脱型後、20℃、50%RHの気中養生として測定
体積膨張率:土木学会標準示方書(JSCE―F542−1999)「充てんモルタルのブリーディング率および膨張率試験方法」に準じて、グラウトモルタルを、20℃、80%RHの恒温恒湿室で型枠に打設し、打設後1日に測定
圧縮強度:土木学会標準示方書(JSCE−G541−1999)「充てんモルタルの圧縮強度試験方法」に準じて、グラウトモルタルを、20℃、80%RHの恒温恒湿室で型枠に打設し、1日後からの養生を20℃水中養生として、材齢28日の圧縮強度を測定
【0027】
【表1】

【0028】
表1から、本発明のグラウトモルタルは、流動性が高く、ブリーディングや硬化収縮が無く、乾燥収縮が少なく、強度発現が高いことが分かる。
【実施例2】
【0029】
セメント100部に対して、膨張材10部、表2に示す量の収縮低減剤、減水剤1.5部、及び発泡物質0.0016部、セメントと膨張材の合計100部に対して、玄武岩繊維0.5部、骨材180部と水43部を添加したこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表2に併記する。
【0030】
【表2】

【0031】
表2から、本発明のグラウトモルタルは、流動性が高く、ブリーディングや硬化収縮が無く、乾燥収縮が少なく、強度発現が高いことが分かる。
【実施例3】
【0032】
セメント100部に対して、膨張材10部、収縮低減剤3部、減水剤1.5部、及び発泡物質0.0016部、セメントと膨張材の合計100部に対して、表3に示す量の玄武岩繊維、骨材180部と水43部を添加してグラウトモルタルを作製し、ひび割れ抵抗性の評価を行ったこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表3に併記する。
【0033】
<評価方法>
ひび割れ抵抗性:日本工業規格JIS A 1132「コンクリートの強度試験用供試体の作り方」記載の直径10cm×高さ20cmの円柱鋼製型枠に外径6cm、内径5.2cmの鋼製円筒管を中心にセットし、円柱鋼製型枠と鋼製円筒管の間隙に調整したグラウトモルタルを流し込み、翌日に脱型後20℃、50%RHの気中養生でひび割れ発生の観察を行った。材齢91日後の観察時にひび割れ発生がないものを良、材齢28日後の観察時にひび割れ発生があるものを可、材齢7日後の観察時にひび割れ発生があるものを不可として評価した。
【0034】
【表3】

【0035】
表3から、本発明のグラウトモルタルは、流動性が高く、ブリーディングや硬化収縮が無く、乾燥収縮が少なく、強度発現が高いことが分かる。さらに、ひび割れ抵抗性が高いことが分かる。
【実施例4】
【0036】
セメント100部に対して、膨張材10部、収縮低減剤3部、表4に示す量の減水剤、及び発泡物質0.0016部、セメントと膨張材の合計100部に対して、玄武岩繊維0.5部、骨材180部と水43部を添加し、材料分離を評価したこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表4に併記する。
【0037】
材料分離:直径9cm×高さ10cmの円筒状の塩ビ製管に練り混ぜたグラウト組成物を充填し表面を平滑にする。次に、塩ビ管を引き抜いたときのモルタルの円状の広がりを観察し、その広がりの外周付近が、砂分が少なくほとんどがペースト分となっている場合は材料分離が有ると判断し、砂分とペースト分が均一にある場合は材料分離が無いと判断した。
【0038】
【表4】

【0039】
表4から、本発明のグラウトモルタルは、流動性が高く、ブリーディングが少なく、硬化収縮が無く、乾燥収縮が少なく、強度発現が高いことが分かる。さらに、材料分離性に優れることが分かる。
【実施例5】
【0040】
セメント100部に対して、膨張材10部、収縮低減剤3部、減水剤1.5部、及び表5に示す量の発泡物質、セメントと膨張材の合計100部に対して、玄武岩繊維0.5部、骨材180部と水43部を添加したこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表5に併記する。
【0041】
【表5】

【0042】
表5から、本発明のグラウトモルタルは、流動性が高く、ブリーディングや硬化収縮が無く、乾燥収縮が少なく、強度発現が高いことが分かる。
【実施例6】
【0043】
セメント100部に対して、膨張材10部、収縮低減剤3部、減水剤1.5部、及び発泡剤0.0016部、セメントと膨張材の合計100部に対して、玄武岩繊維0.5部、表6に示す量の骨材と水43部を添加したこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表6に併記する。
【0044】
【表6】

【0045】
表6から、本発明のグラウトモルタルは、流動性が高く、ブリーディングや硬化収縮が無く、乾燥収縮が少なく、強度発現が高いことが分かる。
【実施例7】
【0046】
セメント100部に対して、膨張材10部、収縮低減剤3部、減水剤1.5部、及び発泡物質0.0016部、セメントと膨張材の合計100部に対して、玄武岩繊維0.5部、骨材180部、表7に示す種類と量のデキストリン、及び水温30℃の水43部を添加し、断熱温度上昇量を測定したこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表7に併記する。
【0047】
<使用材料>
デキストリンA:冷水可溶分5%
デキストリンB:冷水可溶分10%
デキストリンC:冷水可溶分30%
デキストリンD:冷水可溶分50%
デキストリンE:冷水可溶分65%
【0048】
<測定方法>
断熱温度上昇量:試料容量0.01mの断熱ポットを小型の変温室に入れ、モルタル温度と変温室の温度が常に同じになるように制御する東京理工社製の断熱温度上昇量測定装置を用いて測定した。
【0049】
【表7】

【0050】
表7から、本発明のグラウトモルタルは、流動性が高く、ブリーディングや硬化収縮が無く、乾燥収縮が少なく、強度発現が高いことが分かる。さらに、デキストリンの添加により水和熱による発熱量が低減されることが分かる。
【実施例8】
【0051】
セメント100部に対して、膨張材10部、収縮低減剤3部、減水剤1.5部、及び発泡物質0.0016部、セメントと膨張材の合計100部に対して、玄武岩繊維0.5部、骨材180部と表8に示す量の水を添加したこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表8に併記する。
【0052】
【表8】

【0053】
表8から、本発明のグラウトモルタルは、流動性が高く、ブリーディングや硬化収縮が無く、乾燥収縮が少なく、強度発現が高いことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明のグラウト組成物を使用したグラウトモルタルは、流動性が良好でブリーディングや硬化収縮が無く、乾燥収縮によるひび割れ抵抗性が高く、さらに、水和熱による温度ひび割れが抑制され、材料分離が無く(泡の発生の無い)という効果を奏する。そのため、建築構造物の一般工事から補修工事の広範囲の用途に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント、膨張材、収縮低減剤、溶融紡糸した玄武岩繊維、減水剤、発泡剤、及び骨材を含有するグラウト組成物。
【請求項2】
溶融紡糸した玄武岩繊維がセメントと膨張材の合計100部に対して0.1〜10部である請求項1に記載のグラウト組成物。
【請求項3】
さらに、デキストリンを含有してなる請求項1又は2に記載のグラウト組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のグラウト組成物と水を混合してなるグラウトモルタル。
【請求項5】
請求項4に記載のグラウトモルタルを用いたグラウト工法。

【公開番号】特開2008−120612(P2008−120612A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−303930(P2006−303930)
【出願日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】