説明

グラスラン

【課題】チャンネル部材が省略された自動車用ドアの窓枠に組み付けられるグラスランにおいて、モールリップの口開きおよび波打ちを防止する。
【解決手段】チャンネル部材が省略された自動車用ドア1の窓枠5に組み付けられるグラスラン7の両側壁8,9と底壁10とを、容易に撓み変形可能な湾曲壁20,21に加え、容易に破断または剥離可能な脆弱接続部22,23によってもそれぞれ接続する。そして、窓枠5に組み付けた状態で底壁10がドアガラスGによって押し上げられると、両脆弱接続部22,23が破断または剥離することにより、両湾曲壁20,21の撓み変形をもって底壁10が両側壁8,9とは独立して上方に変位し、両モールリップ12,13の位置ずれを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用ドアの窓枠の内周に沿って配設されるグラスランに関し、特に、グラスランを嵌合保持するいわゆるチャンネル部材を有さない窓枠に組み付けられるグラスランに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に記載されているように、自動車用ドアの軽量化や製造工程の簡略化のため、グラスランを嵌合保持するチャンネル部材を省略した自動車用ドアの窓枠に対してグラスランを組み付けた構造が知られている。
【0003】
特許文献1に記載の自動車用ドアは、窓枠であるドアフレームをドア本体と一体にプレス成形したいわゆるパネルドアであって、内板と外板とで構成されている。ドアフレーム内には上述したようにグラスラン取り付け用のチャンネル部材が設けられておらず、内板の端縁からなる車内側フランジと外板の端縁からなる車外側フランジとが互いに略対向するように形成されているとともに、当該ドアフレームのうち車体前後方向に沿った上辺部の所定位置には、そのドアフレームの内底面に固定されてドアガラスの閉時にそのドアガラスを受け止めるストッパ部材が設けられている。
【0004】
一方、特許文献1に記載のグラスランは、断面略コの字状の本体部を中心として形成されたものであって、その本体部の車内側および車外側の側壁の先端には、グラスランの内方に向けて突出する車内側および車外側のシールリップと、上記側壁の外側面に沿うように本体部の外側に向けて突出する車内側および車外側のモールリップとがそれぞれ形成されている。そして、このグラスランは、本体部の両側壁と両モールリップとの間にドアフレーム側の車内側フランジと車外側フランジをそれぞれ差し込むようにしてドアフレームに組み付けられ、当該グラスランのうちドアフレーム側の上辺部に組み付けられるグラスラン上辺部の一部が上記ストッパ部材によってバックアップされることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−85373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようにしてドアフレームに組み付けられたグラスランにおいては、ドアガラスの閉時に上記グラスラン上辺部のうち本体部の底壁がドアガラスによって上方に押し上げられることになるが、このとき、上記グラスラン上辺部のうち上記ストッパ部材によってバックアップされている部分では上記底壁の上方への変位が規制されるものの、上記グラスラン上辺部のうち上記ストッパ部材によってバックアップされていない部分では、上記底壁が上方に変位し、これと同時に上記両側壁も上方に変位してしまうことになる。これにより、車外側のモールリップの基端部が上記車外側フランジの先端に当接するとともに、その当接状態から上記両側壁がさらに上方へ変位することにより、車外側のモールリップが上記車外側フランジから離間する方向に回動していわゆる口開き状態となり、美観または見栄えを悪化させるばかりでなく、水の侵入や風切り音の発生を引き起こす虞もある。また、上記ストッパ部材によってバックアップされている部分とそうでない部分とで車外側のモールリップのドアフレームに対する相対位置が変化し、いわゆる波打ちが発生する虞がある。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、ドアガラスの閉時にそのドアガラスによってグラスランの底壁が押し上げられた際に、その力が底壁から両側壁に伝わりにくくすることにより、特に車外側のモールリップの口開きおよび波打ちを防止することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、車外側および車内側の側壁を底壁によって接続することで断面略コの字状に形成されたグラスラン本体と、上記両側壁の先端からグラスラン本体の内側に向けてそれぞれ斜めに突出する車外側および車内側のシールリップと、上記両側壁の先端からそれら両側壁の外側面に沿ってそれぞれ突出し、上記両側壁との間にそれぞれ嵌合溝を形成する車外側および車内側のモールリップと、を備えていて、自動車用ドアの窓枠に形成された車内側フランジと車外側フランジとを上記両嵌合溝に挿入することで窓枠に組み付けられるグラスランであることを前提としている。
【0009】
その上で、上記底壁は、断面略U字状をなすように湾曲した車外側および車内側の変形容易部と、窓枠に組み付けた状態で上記底壁の内底面が押圧されたときに、上記車外側フランジが上記嵌合溝に底付きして上記車外側のモールリップが口開き動作するよりも前に接続状態が解除されるように設定した車外側および車内側の脆弱接続部と、によって上記両側壁にそれぞれ接続されていて、窓枠に組み付けた状態で上記底壁の内底面が押圧され、上記両脆弱接続部による上記底壁と上記両側壁との接続状態が解除されたときに、上記両変形容易部の撓み変形によって上記底壁が当該底壁に直交する方向で変位可能となることを特徴としている。
【0010】
具体的には例えば請求項2に記載の発明のように、上記両変形容易部は、上記グラスラン本体の外側に向けて突出するように形成され、上記両側壁の基端と上記底壁とをそれぞれ接続している一方、上記両脆弱接続部は、上記両側壁の内側面と上記底壁の幅方向両端部とをそれぞれ接続しているものとする。
【0011】
つまり、請求項1に記載の発明は、窓枠に組み付けた状態で上記底壁がドアガラスによって押し上げられたときに、その力を上記両変形容易部の撓み変形によって吸収するようにしたものであるが、上記底壁と上記両側壁とを単に上記両変形容易部によって接続したのみでは、上記底壁が上記両側壁に対して容易に相対変位可能になるが故に、グラスランの成形時および組付作業時にそのグラスランが当該グラスラン自体の剛性によって正規の断面形状を維持できなくなってしまい、それらの作業が非常に煩雑になる虞がある。そこで、グラスランの成形性および組付作業性を考慮し、上記両変形容易部に加えて上記両脆弱接続部によっても上記底壁と上記両側壁とを接続している。
【0012】
したがって、請求項1に記載の発明では、窓枠に組み付けた状態で上記底壁がドアガラスによって押し上げられると、上記車外側フランジが上記嵌合溝に底付きして上記車外側のモールリップが口開き動作するよりも前に、上記両脆弱接続部による上記底壁と上記両側壁との接続状態が解除されることになる。そして、このように上記両脆弱接続部による上記底壁と上記両側壁との接続状態が解除された後に、上記底壁がドアガラスによって押し上げられても、その変位は上記両変形容易部の撓み変形によって吸収され、上記両側壁に伝達されにくくなる。換言すれば、ドアガラスの閉止力が上記底壁から上記両側壁に伝わりにくくなる。
【0013】
また、請求項3に記載の発明は、窓枠に組み付けた状態で上記底壁の内底面が押圧されたときに、その押圧方向で上記車外側のモールリップが上記車外側フランジに対して位置ずれするよりも前に、上記両脆弱接続部による上記底壁と上記両側壁との接続状態が解除されるように設定されていることを特徴としている。つまり、この請求項3に記載の発明では、上記両脆弱接続部による上記底壁と上記両側壁との接続状態がより小さい力で解除されるようになるから、ドアガラスの閉止力が上記両側壁により伝わりにくくなる。
【0014】
さらに、グラスランの成形性および組付作業性をより向上させる上では、請求項4に記載の発明のように、上記両側壁のうち上記両変形容易部および上記両脆弱接続部に対する接続部よりも先端側となる位置に、グラスラン本体の長手方向に沿って伸びる切欠溝によって薄肉となった薄肉部がそれぞれ形成されているとともに、上記両側壁は、上記窓枠に組み付けられていない自由状態において、上記両シールリップ同士を離間させるべく、上記薄肉部を屈曲部として互いに離間する方向にそれぞれ屈曲していて、上記薄肉部を中心として上記両側壁の先端をそれぞれ互いに接近する方向に回動させ、上記両シールリップを寄せ集めた状態で上記窓枠に組み付けられるようになっていることが好ましい。
【0015】
その上で、窓枠に対するグラスランの組付状態をより安定したものとする上では、請求項5に記載の発明のように、上記両切欠溝が上記両側壁の内側面にそれぞれ形成されていて、それら両切欠溝のそれぞれの両側壁面同士が窓枠に組み付けた状態で互いに当接するようになっていることが好ましい。
【0016】
また、上記両モールリップの位置ずれをより効果的に防止する上では、請求項6に記載の発明のように、上記両側壁および上記両変形容易部のうち少なくとも一方を発泡材料によって形成することにより、ドアガラスの閉止力を上記両モールリップに対してさらに伝わりにくくすることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、窓枠に組み付けられた状態でドアガラスによって上記底壁が押し上げられた際に、その力が上記底壁から上記両側壁に伝わりにくくなることから、特に上記車外側のモールリップの口開きおよび波打ちを防止することができる。
【0018】
その上で、請求項4に記載の発明によれば、上記両シールリップを離間させた状態でグラスランを成形した後に、それらの両シールリップを寄せ集めつつ窓枠に組み付けることができるようになるため、グラスランの成形性および組付作業性が飛躍的に向上する。
【0019】
さらに、請求項5に記載の発明によれば、窓枠に組み付けた状態で上記両切欠溝のそれぞれの両側面同士が互いに当接することにより、上記両側壁の薄肉部を中心としたさらなる屈曲が抑制されるようになるため、窓枠に対するグラスランの組付状態が安定したものとなるメリットがある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施の形態として本発明に係るグラスランが組み付けられた自動車用ドアを示す図。
【図2】図1のA−A線に沿った断面図。
【図3】図1のB−B線に沿った断面図。
【図4】図2,3に示すグラスランの自由状態を示す図。
【図5】図3に示す脆弱接続部が破断または剥離した状態を示す図。
【図6】本発明の第2の実施の形態を示す図であって、図1のB−B線に相当する部位の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1〜5は本発明の好適な第1の実施の形態を示す図であって、そのうち図1は本発明に係るグラスランが組み付けられた自動車用ドアを示す図、図2は図1のA−A線に沿った断面図、図3は図1のB−B線に沿った断面図である。
【0022】
図1〜3に示すように、自動車用ドア1は、予めプレス加工されたインナーパネル2とアウターパネル3の外周縁を例えばヘミング加工により互いに接合することで、ドア本体4と側面視略アーチ状の窓枠5とが一体に形成されたいわゆるパネルドアであって、その自動車用ドア1のうち窓枠5の内周側に形成された窓開口部1aが昇降式のドアガラスGによって開閉されるようになっている。
【0023】
窓枠5は、インナーパネル2の内周端縁からなる車内側フランジ2aと、アウターパネル3の内周端縁からなり、車内側フランジ2aに車幅方向で所定の間隔をもって対向する車外側フランジ3aと、を備えていて、それらの両フランジ2a,3a間にグラスラン7が組み付けられている。また、窓枠5は、その両フランジ2a,3a間にグラスラン組付用のチャンネル部材が設けられていない、いわゆるチャンネルレス構造のものであって、当該窓枠5のうち車体前後方向に沿った上辺部5aには、その上辺部5aの長手方向両端部となる位置にストッパ部材6,6がそれぞれ設けられ、窓開口部1aの全閉時に両ストッパ部材6,6が後述するグラスラン7の底壁10を介してドアガラスGの上端縁を受け止めることにより、そのドアガラスGの上昇停止位置を規制するようになっている。両ストッパ部材6,6としてより具体的には、例えばばね鋼板に代表されるような弾性を有する金属板を折曲加工し、窓枠5の内面に弾性係合するように構成するとよい。
【0024】
図1に示すように、グラスラン7は、窓枠5の上辺部5aに組み付けられるグラスラン上辺部7aと、窓枠5のうち上下方向に延びる前後の縦辺部5b,5cにそれぞれ組み付けられる前後のグラスラン縦辺部7b,7cと、を備えていて、両グラスラン縦辺部7b,7cのそれぞれの上端部とグラスラン上辺部7aの長手方向両端部とを側面視略L字状のコーナー型成形部7d,7eによって接続することにより、一本の連続した長尺状のものとして形成されている。なお、グラスラン上辺部7aおよび両グラスラン縦辺部7b,7cは、EPDMに代表されるようなゴム材料、または熱可塑性エラストマーであるTPOに代表されるような樹脂材料から構成されたものであって、周知の押出成形法によって成形されている。また、両コーナー型成形部7d,7eは、グラスラン上辺部7aおよび両グラスラン縦辺部7b,7cと同種の材料から構成されたものであって、周知のように図示外の金型によって型成形されている。
【0025】
グラスラン上辺部7aは、図2,3に示すように、車外側および車内側の両側壁8,9の基端同士を底壁10をもって接続した断面略コの字状のグラスラン本体11を中心として構成されている。グラスラン本体11の開口端、すなわち両側壁8,9のそれぞれの先端には、両側壁8,9の外側面に沿って折り返しつつ延びる車外側および車内側のモールリップ12,13がそれぞれ突設され、両側壁8,9と両モールリップ12,13との間には車外側および車内側の嵌合溝14,15がそれぞれ形成されている。そして、両嵌合溝14,15に両フランジ2a,3aが底付きしないように挿入されているとともに、両側壁8,9の外側面からそれぞれ突出する車外側および車内側の保持リップ16,17が両フランジ2a,3aの内壁面に弾接または係止されることで、グラスラン本体11の抜け止めが施されている。
【0026】
グラスラン本体11の開口端縁、すなわち両側壁8,9の先端には、車外側および車内側のシールリップ18,19がグラスラン本体11の内側に向けてそれぞれ斜めに突出形成されている。そして、図2,3に仮想線で示すように、窓開口部1aの全閉時には、両シールリップ18,19がドアガラスGの表裏両面にそれぞれ弾接することにより、車室内外がシールされることになる。
【0027】
グラスラン本体11の底壁10は、容易に撓み変形可能な変形容易部として当該底壁10および両側壁8,9よりも薄肉に形成された車外側および車内側の湾曲壁20,21を介し、両側壁8,9にそれぞれ接続されている。両湾曲壁20,21は、グラスラン本体11の幅方向外側に向けて斜め上方に突出する断面略U字状に湾曲していて、その湾曲方向の一端が両側壁8,9の基端にそれぞれ接続されている一方、他端が底壁10の外底面の幅方向両端部にそれぞれ接続されている。
【0028】
また、底壁10と両側壁8,9とを両湾曲壁20,21によって接続したのみでは、両湾曲壁20,21が容易に撓み変形可能になっているがために、窓枠5に組み付けられていない自由状態でグラスラン本体11がそれ自体の剛性をもって正規の断面形状を維持できなくなってしまう虞がある。そのため、窓枠5に組み付ける前の自由状態においては、図4に示すように、底壁10の幅方向両端部が車外側および車内側の脆弱接続部22,23によって両側壁8,9の内側面にそれぞれ接続または接合されている。これにより、底壁10の両側壁8,9に対する相対変位が規制されている。
【0029】
両脆弱接続部22,23では、窓枠5への組み付け後にドアガラスGの閉止力をもって容易に破断または剥離可能な程度に底壁10と両側壁8,9とが脆弱に接続または接合されている。具体的には、窓枠5にグラスラン上辺部7aを組み付けた図3に示す状態で底壁10の内底面が押圧されたときに、両側壁8,9と両モールリップ12,13が両フランジ2a,3aに対して位置ずれするよりも前に両脆弱接続部22,23が破断または剥離するように設定されている。
【0030】
また、両脆弱接続部22,23は、押出成形用の図示外の口金から押し出された直後の不完全冷却状態において、底壁10の幅方向両端部と両側壁8,9の内側面とを圧接または密着させることで形成することができる。あるいは、押出成形用の図示外の口金に、底壁10を成形するための孔部と両側壁8,9を成形するための孔部とをそれぞれ繋ぐ一対の薄いスリットを形成し、それらの両スリットによって形成される薄肉部を両脆弱接続部22,23とすることもできる。
【0031】
さらに、図4に示すように、グラスラン本体11は、両シールリップ18,19同士を離間させた状態で押出成形されたものであって、図4に示す自由状態では図2,3に示す窓枠5組付状態と比較して断面略ハの字状に拡開した形状を呈している。具体的には、グラスラン本体11の両側壁8,9のうち両脆弱接続部22,23よりも先端側となる位置に、それら両側壁8,9の内側面をグラスラン本体11の長手方向に沿って切り欠いた切欠溝24,25がそれぞれ形成され、その切欠溝24,25によって薄肉となった薄肉部26,27を屈曲部として両側壁8,9が互いに離間する方向に屈曲している。
【0032】
そして、グラスラン上辺部7aは、図2,3に示すように、薄肉部26,27を中心として両側壁8,9の先端を互いに接近する方向に回動させ、両シールリップ18,19を寄せ集めるように窄めた状態で窓枠5に組み付けられている。さらに、この組付状態では、両切欠溝25,26のそれぞれの両側面同士が互いに当接し、それら両切欠溝25,26がそれぞれ閉口している。これにより、薄肉部26,27を中心とした両側壁8,9先端のさらなる回動が規制されている。
【0033】
したがって、以上のように構成したグラスラン7では、図3に示すように、窓枠5に組み付けられた直後の状態においては、底壁10と両側壁8,9とが両湾曲壁20,21に加えて両脆弱接続部22,23によってもそれぞれ接続されていて、その状態で底壁10がドアガラスGによって押し上げられたときに、両脆弱接続部22,23が図5に示すように破断または剥離し、両脆弱接続部22,23による底壁10と両側壁8,9との接続状態が解除されることになる。
【0034】
より具体的に説明すると、窓開口部1aの全閉時には、ドアガラスGの上端縁がグラスラン上辺部7aの底壁10を介してストッパ部材6に受け止められることにより、ドアガラスGの最上昇位置が規制されることは上述したとおりであるが、このときグラスラン上辺部7aの底壁10がドアガラスGとストッパ部材6との間に挟まれるかたちとなるため、当該底壁10は、図2に仮想線で示すように、経時に伴っていわゆるへたりを生じ、その底壁10の潰れ変形量が経時に伴って大きくなる。そして、底壁10にいわゆるへたりが発生すると、窓開口部1aを全閉すべく上昇動作するドアガラスGが、底壁10にへたりが発生していない図2に実線で示す初期状態よりも上方の位置で停止することになる。
【0035】
一方、グラスラン上辺部7aのうちストッパ部材6によってバックアップされていない部分では、上述したように底壁10にへたりが発生すると、図3に仮想線で示すように、窓開口部1aの全閉時に上述した底壁10の潰れ変形の分だけ底壁10の内底面がドアガラスGの上端縁によって押し上げられ、これと同時に両側壁8,9および両モールリップ12,13が両脆弱接続部22,23を介して上方に引っ張られることになるが、この張力によって両脆弱接続部22,23が破断または剥離して当該脆弱接続部22,23を介した底壁10と両側壁8,9との接続状態が解除される。これにより、底壁10が両湾曲壁20,21の撓み変形によって当該底壁10に面直角な方向で変位可能な状態となる。
【0036】
その結果、図5に示すように、ドアガラスGに押し上げられた底壁10が両側壁8,9とは独立してドアガラスGの上昇方向に平行移動することになる。つまり、窓開口部1aの全閉時に両側壁8,9と両モールリップ12,13とが両フランジ2a,3aに対して位置ずれすることはない。
【0037】
したがって、本実施の形態によれば、グラスラン上辺部7aのうちストッパ部材6によってバックアップされていない部分において、底壁10の内底面がドアガラスGに押し上げられても、その力が底壁10から両側壁8,9に極めて伝わりにくいものとなり、両モールリップ12,13の口開きの発生を防止するできるほか、グラスラン上辺部7aのうちストッパ部材6によってバックアップされている部分とそうでない部分とで両モールリップ12,13の窓枠5に対する相対位置が変化するいわゆる波打ちの発生を防止できる。その結果、窓枠5周りの美観または見栄えの悪化を抑制できる上、水の侵入や風切り音の発生を防止することができる。
【0038】
また、グラスラン上辺部7aの成形時および組付作業時においては、底壁10と両側壁8,9とが両脆弱接続部22,23を介して接続され、底壁10の両側壁8,9に対する相対変位が規制されていることから、グラスラン上辺部7aの成形性および組付作業性を飛躍的に向上させることができる。
【0039】
さらに、グラスラン上辺部7aは、両側壁8,9が薄肉部26,27を屈曲部として互いに離間する方向に屈曲することで両シールリップ18,19同士が離間した状態に押出成形され、薄肉部26,27を中心として両側壁8,9の先端を互いに接近する方向に回動させることで、窓枠5に対して正規の組付姿勢をもって容易に組み付けられるようになっていることから、グラスラン上辺部7aの成形性および組付作業性がさらに向上する。
【0040】
その上、窓枠5に組み付けた状態においては、両切欠溝25,26のそれぞれの両側面同士が互いに当接することにより、薄肉部26,27を中心とした両側壁8,9先端のさらなる回動が規制されるようになるから、グラスラン上辺部7aの窓枠5に対する組付状態がより安定したものとなる。
【0041】
図6は本発明の第2の実施の形態を示す図であって、図1のB−B線に相当する部分の断面図である。なお、図6では、上述した第1の実施の形態と共通または相当する部分に同一の符号を付してある。
【0042】
図6に示す第2の実施の形態は、グラスラン上辺部7aの両側壁28,29および両湾曲壁30,31を、グラスラン上辺部7aの他の部位よりも軟質な材料をもって形成したものであって、他の部分は上述した第1の実施の形態と同様である。具体的には、グラスラン上辺部7aの両側壁28,29および両湾曲壁30,31が、EPDMに代表されるようなゴム材料、または熱可塑性エラストマーであるTPOに代表されるような樹脂材料を発泡させてなる発泡材料から構成されている一方、グラスラン上辺部7aの他の部位が、グラスラン上辺部7aの両側壁28,29および両湾曲壁30,31と同種の材料からなる非発泡材料をもって構成されている。
【0043】
したがって、第2の実施の形態によれば、上述した第1の実施の形態と同様の効果が得られるのは勿論のこと、グラスラン上辺部7aの両側壁28,29および両湾曲壁30,31が、グラスラン上辺部7aの他の部位よりも軟質な材料をもって形成されているため、ドアガラスGが底壁10の内底面を押し上げる力が両モールリップ12,13に対してさらに伝わりにくくなり、それら両モールリップ12,13の波打ちまたは口開きによる美観または見栄えの悪化をより効果的に抑制できるようになる。
【0044】
なお、上述した各実施の形態では、自動車のフロントドアに組み付けられるグラスランに本発明を適用した例を示したが、本発明は自動車のリアドアに組み付けられるグラスランにも同様に適用可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0045】
1…自動車用ドア
2a…車内側フランジ
3a…車外側フランジ
5…窓枠
7…グラスラン
8…車外側の側壁
9…車内側の側壁
10…底壁
11…グラスラン本体
12…車外側のモールリップ
13…車内側のモールリップ
14…車外側の嵌合溝
15…車内側の嵌合溝
18…車外側のシールリップ
19…車内側のシールリップ
20…車外側の湾曲壁(車外側の変形容易部)
21…車内側の湾曲壁(車内側の変形容易部)
22…車外側の脆弱接続部
23…車内側の脆弱接続部
24…車外側の切欠溝
25…車内側の切欠溝
26…車外側の薄肉部
27…車内側の薄肉部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車外側および車内側の側壁を底壁によって接続することで断面略コの字状に形成されたグラスラン本体と、上記両側壁の先端からグラスラン本体の内側に向けてそれぞれ斜めに突出する車外側および車内側のシールリップと、上記両側壁の先端からそれら両側壁の外側面に沿ってそれぞれ突出し、上記両側壁との間にそれぞれ嵌合溝を形成する車外側および車内側のモールリップと、を備えていて、自動車用ドアの窓枠に形成された車内側フランジと車外側フランジとを上記両嵌合溝に挿入することで窓枠に組み付けられるグラスランにおいて、
上記底壁は、断面略U字状をなすように湾曲した車外側および車内側の変形容易部と、窓枠に組み付けた状態で上記底壁の内底面が押圧されたときに、上記車外側フランジが上記嵌合溝に底付きして上記車外側のモールリップが口開き動作するよりも前に接続状態が解除されるように設定した車外側および車内側の脆弱接続部と、によって上記両側壁にそれぞれ接続されていて、
窓枠に組み付けた状態で上記底壁の内底面が押圧され、上記両脆弱接続部による上記底壁と上記両側壁との接続状態が解除されたときに、上記両変形容易部の撓み変形によって上記底壁が当該底壁に直交する方向で変位可能となることを特徴とするグラスラン。
【請求項2】
上記両変形容易部は、上記グラスラン本体の外側に向けて突出するように形成され、上記両側壁の基端と上記底壁とをそれぞれ接続している一方、
上記両脆弱接続部は、上記両側壁の内側面と上記底壁の幅方向両端部とをそれぞれ接続していることを特徴とする請求項1に記載のグラスラン。
【請求項3】
上記両脆弱接続部は、窓枠に組み付けた状態で上記底壁の内底面が押圧されたときに、その押圧方向で上記車外側のモールリップが上記車外側フランジに対して位置ずれするよりも前に、上記底壁と上記両側壁との接続状態が解除されるように設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載のグラスラン。
【請求項4】
上記両側壁のうち上記両変形容易部および上記両脆弱接続部に対する接続部よりも先端側となる位置に、グラスラン本体の長手方向に沿って伸びる切欠溝によって薄肉となった薄肉部がそれぞれ形成されているとともに、
上記両側壁は、上記窓枠に組み付けられていない自由状態において、上記両シールリップ同士を離間させるべく、上記薄肉部を屈曲部として互いに離間する方向にそれぞれ屈曲していて、
上記薄肉部を中心として上記両側壁の先端をそれぞれ互いに接近する方向に回動させ、上記両シールリップを寄せ集めた状態で上記窓枠に組み付けられるようになっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のグラスラン。
【請求項5】
上記両切欠溝は上記両側壁の内側面にそれぞれ形成されていて、それら両切欠溝のそれぞれの両側壁面同士が窓枠に組み付けた状態で互いに当接するようになっていることを特徴とする請求項4に記載のグラスラン。
【請求項6】
上記両側壁および上記両変形容易部のうち少なくとも一方が発泡材料によって形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のグラスラン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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