説明

グラフィックス構造体

【課題】内外照いずれの場合も鮮明な画像を提供でき、また、内外照時の色濃度差が少ない上、さらに屋外での使用時にも水の侵入跡がつかず、更に、内外照時の色濃度差が少ない上、さらにISO5660−1コーンカロリーメーター試験で不燃性であり、防火地域での設置が可能なグラフィックス構造体を提供する。
【解決手段】レセプター層102、前記レセプター層102に印刷を施すことにより作成した印刷層104、及びアクリル系白色粘着剤からなるアクリル系白色粘着剤層106をこの順で含み、前記アクリル系白色粘着剤が、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー、前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、8〜150質量部の白色顔料、及び芳香族ビニルモノマーを含まないアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーを含むグラフィックス構造体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフィックス構造体に関する。詳しくは、レセプター層、印刷層、及びアクリル系粘着剤と白色顔料を含むアクリル系白色粘着剤層をこの順で積層したグラフィックス構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
内照看板用照明ユニット上にグラフィックスフィルム等をとり付けた種々の製品が上市され、各種広告、案内表示、社名表示等として使用されている。これら、一般に内照看板と呼ばれる製品は、内照看板用照明ユニットの照明を点灯(内照)して使用する、あるいは内照看板用照明ユニットの照明を点灯せず、自然光を含む他の照明を点灯(外照)して使用する場合がある。内照を使用した場合と外照を使用した場合に、グラフィックスの色濃度に差が生じる場合があり、この色濃度差のない製品が望まれている。
【0003】
特許文献1には、離型性担体に積層されたアクリル系樹脂フィルムからなる印刷基材(A)と、前記アクリル系樹脂フィルムに印刷を施して形成される印刷面に一面を積層し他面を被着体に積層するための、白色顔料が分散された粘着剤層を本質的構成材料とする粘着基材(B)とを備え、粘着剤層が形態保持性を有するとともにその両面もしくは片面に離型性フィルムが積層されてなることを特徴とする印刷用記録材料が記載されている。かかる印刷用記録材料は、耐擦傷性、耐候性等の耐久性が良好で、焼却廃棄が容易なマーキングフィルムとして好適に用いられるものである。
【0004】
特許文献2には、離型性フィルムに積層された光散乱性微粒子が分散してなる全光線透過率が10〜40%の粘着剤層に、無機粒子と吸油性もしくは吸水性結着剤とが含有されたインク受容層フィルムが積層されてなることを特徴とするインクジェットプリンター用記録材料が記載されている。かかるインクジェットプリンター用記録材料は、受容層の基材層が削減されて安価で、かつ、内照式電飾用として優れた発色性を示すものである。
【0005】
上記内照看板等の製品が野外に設置される場合は、かかる製品が耐水性を有することが求められる。さらに、これら内照看板等の製品を防火地域内に設置する場合、かかる製品が不燃性であることが求められる。そのため、内照時と外照時とで色濃度差のない製品に加えて、さらに耐水性あるいは不燃性を兼ね備えた製品が求められている。
【0006】
【特許文献1】特開2002−366040号公報
【特許文献2】特開2002−103800号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー、及びアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマー、及び比較的高含量の白色顔料を含み、内照時、外照時の色濃度差が少なく、内外照いずれの場合も鮮明な画像を提供できるグラフィックス構造体を提供することを目的とする。
【0008】
また本発明は、内外照時の色濃度差が少ない上、さらに屋外での使用時にも水の侵入跡がつかないグラフィックス構造体を提供することを目的とする。
【0009】
更に本発明は、内外照時の色濃度差が少ない上、さらにISO5660−1コーンカロリーメーター試験で不燃性であり、防火地域での設置が可能なグラフィックス構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち本発明は、レセプター層、前記レセプター層に印刷を施すことにより作成した印刷層、及びアクリル系白色粘着剤からなるアクリル系白色粘着剤層をこの順で含み、前記アクリル系白色粘着剤が、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー、前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、8〜150質量部の白色顔料、及び芳香族ビニルモノマーを含まないアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーを含むグラフィックス構造体を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のグラフィックス構造体は、内外照時いずれにおいてもグラフィックスの色濃度差が少ない画像を提供することができる。さらに本発明のグラフィックス構造体を含むグラフィックス構造体は内外照時いずれにおいてもグラフィックスの色濃度差が少ない画像を提供できる他、耐水性に優れ屋外での使用に適した看板等のグラフィックス製品、またはISO5660−1コーンカロリーメーター試験で不燃性であり、防火地域への適用が可能な看板等のグラフィックス製品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のグラフィックス構造体は、レセプター層、前記レセプター層に印刷を施すことにより作成した印刷層、及びアクリル系白色粘着剤からなるアクリル系白色粘着剤層をこの順で含むものである。
【0013】
前記アクリル系白色粘着剤は、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー、白色顔料、及び芳香族ビニルモノマーを含まないアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーを含み、白色顔料の含量は、前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、8〜150質量部である。
【0014】
また、前記アクリル系白色粘着剤は、全光線透過率を13%〜50%とすることができる。また、前記レセプター層の外側表面(印刷層の逆側面)に透明保護層を積層することもできる。
【0015】
全光線透過率は、JIS K 7105 のプラスチックの光学的特性試験法5.5項の「光線透過率及び全光線反射率の測定法A」に準じ、例えば日本電色工業株式会社製「SZ−Σ90」により測定することができる。
【0016】
本明細書において、
「(メタ)アクリル」とは、「アクリルまたはメタクリル」を意味する、
「カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー」を、「カルボキシル基含有ポリマー」ということがある、及び
「芳香族ビニルモノマーを含まないアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマー」を、「アミノ基含有ポリマー」ということがある。
【0017】
本発明のレセプター層は、各種印刷のレセプターとして従来から使用されている公知の樹脂組成物からなる層である。このような樹脂組成物は熱可塑性樹脂であればよく、その表面に施す印刷方法や使用するインクに応じて適宜選択可能である。例えばアクリル系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、またはポリスチレン系樹脂を挙げることができる。前記レセプター層は、これらの樹脂を所望の厚さで、基材や剥離材等に塗布・乾燥して形成することができる。
【0018】
前記レセプター層の厚さは特に限定されないが、例えば、約1μm〜約80μmとすることができる。この厚さは、グラフィックス構造体の使用態様や、レセプター層に施す印刷の種類に合わせて適宜調整することができる。
【0019】
本発明の印刷層は、有機溶剤系インク、あるいはUVインク等を用いた各種インクジェット印刷、または静電印刷等によって前記レセプター層に施されるものである。
【0020】
本発明のアクリル系白色粘着剤層は、アクリル系白色粘着剤を含む。
【0021】
前記アクリル系白色粘着剤は、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー、前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、約8質量部〜約150質量部の白色顔料、及び芳香族ビニルモノマーを含まないアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーを含む。また、前記アクリル系白色粘着剤は、(i)カルボキシル基含有(メタ)アクリル系粘着ポリマー、及び(ii)前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、約8質量部〜約150質量部の白色顔料、及び芳香族ビニルモノマーを含まないアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーからなる着色剤を含んでいても良い。
【0022】
前記着色剤を含むことにより、すなわち、あらかじめ白色顔料をポリマーに分散させることにより、より多くの白色顔料を粘着剤中に安定に分散させることができる。
【0023】
さらに、本発明のアクリル系白色粘着剤は、架橋剤を含んでも良い。
【0024】
前記アクリル系白色粘着剤は、カルボキシル基を含有するモノマーを構成成分として重合したポリマーであるカルボキシル基含有ポリマーと、アミノ基を含有するモノマーを構成成分として重合したポリマーであるアミノ基含有ポリマーとを混合することにより、粘着剤中の白色顔料の分散性を向上し、粘着剤中に白色顔料を安定に保持することができる。そのため、より多くの顔料を含む白色粘着剤を提供することができる。そして当該白色粘着剤を本発明のグラフィックス構造体のアクリル系白色粘着剤層として使用することにより、耐水性に優れ、内照時と外照時のグラフィックスの色濃度差が少ない画像を提供することが可能となる。と同時に、より多くの顔料を含む白色粘着剤により、白色粘着剤層の厚さが比較的薄くても、十分な隠蔽性を発揮する。そのため、白色フィルムと透明粘着剤層を使用する場合に比べて、厚さが薄い白色粘着剤であっても、前者の場合と同等の隠蔽性を示すことが可能となる。
【0025】
カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー
前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、モノエチレン性不飽和モノマーを主成分とするポリマーであって、その一部にカルボキシル基を含有するモノエチレン性不飽和モノマー(カルボキシル基含有モノエチレン性不飽和モノマー)を含有するものである。前記モノエチレン性不飽和モノマーは、ポリマーの主成分となるものであって、一般には式CH2=CR1COOR2(式中、R1は水素又はメチル基であり、R2は直鎖、環状又は分岐状のアルキル基やフェニル基、アルコキシアルキル基、フェノキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、環状エーテル基である)で表される。このようなモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、またはドデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;フェノキシエチル(メタ)アクリレート等のフェノキシアルキル(メタ)アクリレート;メトキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシブチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等の環状エーテル含有(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。必要に応じ、1種又は2種以上のモノエチレン性不飽和モノマーを使用することができる。
【0026】
前記カルボキシル基含有モノエチレン性不飽和モノマーとして、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸;イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸、マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸;ω−カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート、β−カルボキシエチルアクリレート、または2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸等を挙げることができる。
【0027】
前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、例えば前記モノエチレン性不飽和モノマーを80〜99.5質量部と、前記カルボキシル基含有モノエチレン性不飽和モノマーを0.5〜20質量部の割合で共重合することにより得られる。あるいは、前記モノエチレン性不飽和モノマーを90〜99質量部、前記カルボキシル基含有モノエチレン性不飽和モノマーを1〜10質量部とすることもできる。
【0028】
前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーの質量平均分子量は特に限定されないが、例えば、約100,000〜約2,000,000、あるいは約300,000〜約1,000,000とすることができる。
【0029】
前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、前記アクリル系白色粘着剤の主成分として用いることができ、その配合量は、前記アクリル系白色粘着剤全体を100質量部とした場合に、約35質量部〜約80質量部とすることができる。
【0030】
芳香族ビニルモノマーを含まないアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマー
前記芳香族ビニルモノマーを含まないアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーとは、モノエチレン性不飽和モノマーを主成分とするポリマーであって、その一部にアミノ基含有不飽和モノマーを含有し、かつ芳香族ビニルモノマーをポリマーの構成成分として含まないものである。かかるモノエチレン性不飽和モノマーは、前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーの場合と同様であり、前記芳香族ビニルモノマーは、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルアントラキノン、芳香族アミンの(メタ)アクリルアミド、または水酸基含有芳香族化合物の(メタ)アクリレート等を含む。前記芳香族アミンとしてはアニリン、ベンジルアミン、ナフチルアミン、アミノアントラセン、アミノアントラキノン又はこれらの誘導体が挙げられる。また前記水酸基含有芳香族化合物は前記芳香族アミンに対応する水酸基含有化合物が挙げられる。前記アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーを得る方法として、モノエチレン性不飽和モノマーとアミノ基を含有する不飽和モノマーとを共重合することが挙げられる。
【0031】
前記アミノ基含有不飽和モノマーとしては、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート(DMAEA)、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)などのジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DMAPAA)、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドなどのジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド;N,N−ジメチルアミノエチルビニルエーテル、N,N−ジエチルアミノエチルビニルエーテルなどのジアルキルアミノアルキルビニルエーテル;またはこれらの混合物を挙げることができる。
【0032】
前記アミノ基含有ポリマーは、例えば前記モノエチレン性不飽和モノマーを約80〜約99.5質量部と、前記アミノ基含有不飽和モノマーを約0.5〜約20質量部の割合で共重合することにより得られる。あるいは、前記モノエチレン性不飽和モノマーを約90〜約99質量部、前記アミノ基含有不飽和モノマーを約1〜約10質量部とすることもできる。
【0033】
前記アミノ基含有ポリマーの質量平均分子量は特に限定されないが、例えば、約1,000〜約500,000、約5,000〜約200,000、または約10,000〜約100,000とすることができる。
【0034】
前記アミノ基含有ポリマーは、前記アクリル系白色粘着剤全体を100質量部とした場合に、約5質量部〜約20質量部とすることができる。また、前記アクリル系白色粘着剤が着色剤を含有する場合は、当該着色剤の一成分として用いることができる。
【0035】
これらポリマーの共重合は、ラジカル重合により行なうことができる。この場合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、あるいは塊状重合等の公知の重合方法を用いることができる。開始剤としては過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、ビス(4−ターシャリーブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートのような有機過酸化物や、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、4,4’−アゾビスー4−シアノバレリアン酸、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、アゾビス2,4−ジメチルバレロニトリル(AVN)等のアゾ系重合開始剤が用いられる。この開始剤の使用量としては、モノマー混合物100質量部あたり、約0.05質量部〜約5質量部とすることができる。
【0036】
白色顔料
前記白色顔料として、従来公知の白色顔料、例えば、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、硫化亜鉛、または酸化チタン(二酸化チタン)を挙げることができる。また、添加剤としてタルク、カオリン、炭酸カルシウムを含んでもよい。これら白色顔料は単体で、あるいは二種以上を混合して用いることができる。また、これらの白色顔料はいずれの形態でもよく、あるいは従来公知の方法によって各種の分散処理が施されたものであってもよい。
【0037】
前記白色顔料は、前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、約8質量部〜約150質量部、約8質量部〜約60質量部、約15質量部〜約60質量部、または約25質量部〜約60質量部とすることができる。
【0038】
また、本発明のアクリル系白色粘着剤層の全光線透過率が13%〜50%となるように、白色顔料の含量を調整することも可能である。かかる白色顔料または全光線透過率の範囲において、十分な隠蔽性を得ることができる。そのため比較的薄い層であっても高い隠蔽性を発揮でき、不燃性基準にみあうグラフィックス構造体を提供することが可能となる。さらに、かかる範囲において、支持層(フィルム)とアクリル系白色粘着剤層との密着性を得ることができ、水の層間への侵入を防ぐことができる。
【0039】
本明細書において、着色剤中の、芳香族ビニルモノマーを含まないアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーを「着色剤のポリマー」と記載することがある。また、本発明のアクリル系白色粘着剤の主成分として用い、着色剤に由来しないポリマーを、「粘着剤のポリマー」と記載することがある。
【0040】
前記着色剤のポリマーは、長期安定性維持の観点から、前記粘着剤のポリマーと相溶することが好ましい。
【0041】
前記着色剤は、前記白色顔料と前記着色剤のポリマーとを、従来公知の方法で混合することにより得られる。例えば、ペイントシェイカー、サンドグラインドミル、ボールミル、アトライターミル、または三本ロールミル等を用いて混合することにより得られる。このとき、必要に応じて、水系あるいは有機系の溶媒を加えることもできる。
【0042】
前記着色剤は、調製直後はもちろん、調製後長時間(例えば、約1ヶ月程度)経過後も、調製直後と同様、顔料粒子が凝集せず、かつ良好に分散した状態を維持することができる。このことは、例えば、サンドグラインドミル、ボールミル、アトライターミル、または三本ロールミル等の比較的混合力の強い機器を用いて調製した場合のみならず、ペイントシェイカー等の比較的混合力の弱い機器のみを用いて調製した場合も同様である。さらに、この比較的混合力の弱い機器を用いる場合、比較的短時間(例えば、約10分程度)の混合により、調製直後及び長時間経過後に、顔料粒子が凝集せず、かつ良好に分散した着色剤を得ることができる。
【0043】
架橋剤
前記アクリル系白色粘着剤は、架橋剤を含んでも良い。かかる架橋剤として、例えば、ビスアミド系架橋剤(例えば、1,1’−イソフタロイル−ビス(2−メチルアジリジン))、アジリジン系架橋剤(例えば、日本触媒製ケミタイトPZ33、アビシア製NeoCryl CX−100)、カルボジイミド系架橋剤(例えば、日清紡製カルボジライトV−03,V−05,V−07)、エポキシ系架橋剤(例えば綜研化学製E−AX,E−5XM,E5C)、イソシアネート系架橋剤(例えば、日本ポリウレタン製コロネートL、コロネートHK、バイエル社製デスモジュールH、デスモジュールW、デスモジュールI)、エポキシ系架橋剤(例えば綜研化学製E−AX、E−5XM、E5C)、イソシアネート系架橋剤(例えば、日本ポリウレタン製コロネートL、コロネートHK、バイエル社製デスモジュールH、デスモジュールW、デスモジュールI)等を用いることができる。
【0044】
前記架橋剤の添加量は、カルボキシル基を含有するポリマー中のカルボキシル基、あるいはアミノ基を含有するポリマー中のアミノ基に対して0.01から0.5当量とすることができる。
【0045】
前記アクリル系白色粘着剤は、前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー、前記白色顔料、及び前記芳香族ビニルモノマーを含まないアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーを、従来公知の方法によって混合することにより得られる。
【0046】
例えば、各成分をほぼ同時に混合容器に入れ、ペイントシェイカー、サンドグラインドミル、ボールミル、アトライターミル、または三本ロールミル等を用いて混合することにより得られる。この際、必要に応じて、前記架橋剤、または公知の水系あるいは有機系の溶媒を使用することができる。あるいは、前記白色顔料を水系あるいは有機系の溶媒に混合してから、他の成分と混合することもできる。また、前記アクリル系白色粘着剤が着色剤を含有する場合、前記カルボキシル基含有アクリル系ポリマー及び前記着色剤とを従来公知の方法で混合することにより得られる。
【0047】
本発明において、前記アクリル系白色粘着剤の厚さは特に限定されない。例えば、約5μm〜約100μmとすることができる。
【0048】
本発明において、前記印刷層の外側表面に透明保護層を積層することができる。透明保護層は、前記レセプター層の基材となり、グラフィックス構造体の画像を遮ることなく表面を保護するものである。このような透明保護層として、上記役割を満たす透明度及び強度を有する透明フィルム、あるいは透明樹脂を前記レセプター表面に塗布して乾燥した樹脂層を使用することができる。
【0049】
前記透明フィルムとしては、例えばPET等のポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、アクリル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、またはフッ素系ポリマーからなるフィルムを使用することができる。また前記透明樹脂としては、例えばポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、アクリル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、またはフッ素系ポリマー等の樹脂を使用することができる。
【0050】
前記透明保護層の厚さは、グラフィックス構造体の使用態様により適宜選択することができ限定されない。例えば、約5μm〜約300μmとすることができる。
【0051】
本発明の1つの好ましい態様として、前記透明保護層、前記レセプター層、前記印刷層、及び前記アクリル系白色粘着剤層の積層体に、さらに支持層を積層したグラフィックス構造体を挙げることができる。
【0052】
前記支持層としては、例えば樹脂フィルムを使用することができる。具体的には、例えばPET等のポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、アクリル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、またはフッ素系ポリマーからなるフィルムを使用することができる。
【0053】
前記支持層の厚さは、グラフィックス構造体の使用態様により適宜選択することができ限定されない。例えば、約20μm〜約300μmとすることができる。
【0054】
本態様において、アクリル系白色粘着剤中の白色顔料は、前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、約15質量部〜約60質量部、または約25質量部〜約60質量部とすることが好ましい。
【0055】
かかる態様のグラフィックス構造体においては、特に、有機溶剤系インクまたはUV系インクによるインクジェット印刷により、レセプター層表面に印刷層を形成することにより、内外照時の色濃度差が少なく、かつ耐水性に優れたグラフィックス構造体とすることができる。
【0056】
また、本態様のグラフィックス構造体は、従来公知の方法を適宜選択することにより製造することができる。以下に本態様の構造体の製造法の一例を示す。
【0057】
まず前記透明保護層に、アクリル系樹脂を塗布乾燥してレセプター層を形成する。続いて、得られたレセプター層に溶剤系インクジェットプリンターにより印刷を施して印刷層を形成する。アクリル系白色粘着剤を有機系の溶媒に溶解した溶液を、ナイフコートあるいはバーコータ等によりライナー上に塗布して乾燥しアクリル系白色粘着剤層を得る。得られたアクリル系白色粘着剤層に前記支持層をドライラミネートなどにより積層してライナーを剥離する。アクリル系白色粘着剤の作成方法は上述のとおりである。つづいて、レセプター層に形成した印刷層表面に、得られたアクリル系白色粘着剤層を貼り合わせて本発明のグラフィックス構造体が得られる。前記透明保護層は、取扱性向上のための透明保護フィルムが設けられていても良い。この透明保護フィルムは、グラフィックス構造体使用時に剥離する。
【0058】
本発明の他の1つの好ましい態様として、前記透明保護層、前記レセプター層、前記印刷層、及び前記アクリル系白色粘着剤層の積層体に、さらに第二の印刷層、レセプターフィルム層、及び粘着剤層をこの順で積層したグラフィックス構造体を挙げることができる。
【0059】
前記第二の印刷層は、前記印刷層と同様の層である。
【0060】
前記レセプターフィルム層は、各種印刷のレセプターとして従来から使用されている公知の樹脂組成物からなるフィルム層でありフィルム自体がレセプター機能を有するものである。このような樹脂組成物は熱可塑性樹脂であればよく、その表面に施す印刷方法や使用するインクに応じて適宜選択可能である。例えばアクリル系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、またはポリスチレン系樹脂を挙げることができる。あるいは前記レセプターフィルム層として、前記レセプター層と透明フィルムからなる基材との積層体を使用することもできる。
【0061】
本態様においては、不燃性の観点からグラフィックス構造体の総厚を薄くすることが好ましい。かかる観点から、本態様においては、前記レセプターフィルム層は、フィルム自体がレセプター機能を有するものであることが好ましい。
【0062】
本態様では、前記印刷層及び前記第二の印刷層は、静電印刷による印刷層であることが好ましい。さらに、グラフィックス構造体の総厚が、約130μm以下、約80μm〜約130μm、または約90μm〜約110μmである場合、この態様のグラフィックス構造体の粘着剤層の外側面に、内照用柔軟性基材(例えば、住友スリーエム社製Panagraphicsシリーズ)を設けたグラフィックス構造体とした場合に、ISO5660−1コーンカロリーメーター試験による不燃基準を満たすことに寄与する。前記内照用柔軟性基材は、ISO5660−1コーンカロリーメーター試験で不燃性であることが、グラフィックス構造体全体の不燃性のために好ましい。
【0063】
この場合、前記内照用柔軟性基材以外の各層の厚さは、前記内照用柔軟性基材以外の層の総厚が130μm以下となる範囲で適宜選択することができる。各層の厚さは特に限定されないが、例えば、前記アクリル系白色粘着剤層は約5μm〜約40μm、前記レセプター層は約1μm〜約30μm、前記透明保護層は約5μm〜約40μm、前記レセプターフィルム層は約5μm〜約20μm、及び前記粘着剤層は約5μm〜約40μmとすることができる。
【0064】
本態様において、前記アクリル系白色粘着剤中の白色顔料は、前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、約8質量部〜約150質量部、約8質量部〜約60質量部、または約25質量部〜約60質量部とすることが好ましい。かかる範囲とすることにより、前記アクリル系白色粘着剤層の厚さを薄くすることに寄与する。
【0065】
本態様のグラフィックス構造体は、従来公知の方法を適宜選択することにより製造することができる。以下に本態様のグラフィックス構造体の製造法の一例を示す。
BSPC層の作成(BSPC層=透明保護層+レセプター層+印刷層)
静電印刷プリンタでトランスファーメディアに転写用デジタル画像を形成する。続いて、透明保護層にレセプター層となる樹脂溶液を塗布、乾燥してレセプター層を形成する。得られたレセプター層の透明樹脂層と逆側の面に、ヒートラミネーターにより上記の転写用デジタル画像を熱転写し、透明保護層、レセプター層、及び印刷層の積層体であるBSPC層を得ることができる。
【0066】
レセプターフィルム層の作成
前記アクリル系白色粘着剤の成分として使用したアミノ基含有ポリマーに、例えばアクリル酸を含む粘着ポリマーを添加しミキサー攪拌してポリマー溶液を得る。剥離処理ポリエステルフィルムに前記ポリマー溶液をナイフコートにより塗布し、乾燥してレセプターフィルム層を得る。
【0067】
粘着剤層の作成
従来公知の粘着ポリマー(例えばアクリル系粘着ポリマー)に架橋剤を適量添加し、得られた粘着剤組成物を、ナイフコートにより紙ベース両面ポリエチレンラミネート剥離紙上に塗布、乾燥、架橋し粘着剤層を得る。
印刷レセプターフィルム層の作成(第二印刷層+レセプターフィルム層+粘着剤層)
前記レセプターフィルム層に前記粘着剤層をドライラミネートする。静電印刷プリンタでトランスファーメディアに転写用デジタル画像を形成し、ヒートラミネーターを用いて、粘着剤層を積層したレセプターフィルム層の粘着剤層と逆側の面に画像を熱転写することで印刷レセプターフィルム層を得る。
グラフィックス構造体の作成
得られたBSPC層、アクリル系白色粘着剤層、そして印刷レセプターフィルム層を順次ドライラミネートしてグラフィックス構造体を得ることができる。
【0068】
さらに内照用柔軟性基材を積層する場合は、前記印刷レセプターフィルム層の粘着剤層に内照用柔軟性基をドライラミネートして積層してグラフィックス構造体を得ることができる。
【0069】
本発明のグラフィックス構造体は、屋内外の車両、建築物(壁、柱)、交通標識、包装材料、または看板等に貼付して使用できる。あるいは、内照看板表面に取り付けることにより、内照グラフィックスまたは内外照グラフィックスとして使用することができる。
【0070】
本明細書においては、以下の略称を使用することがある。
BA :ブチルアクリレ−ト
2EHA :2−エチルへキシルアクリレート
AN :アクリロニトリル
AA :アクリル酸
MMA :メチルメタクリレート
BMA :ブチルメタクリルレート
DMAEMA :ジメチルアミノエチルメタクリレート
PET :ポリエチレンテレフタレート
【実施例】
【0071】
カルボキシル基含有ポリマーの製造
BA、2EHA、AN、及びAAを、組成比(質量比)=58:36:2:4で、酢酸エチル溶液中で共重合した。得られたポリマーの分子量(Mw)は50万、Tgは−53℃、固形分は30%であった。
【0072】
アミノ基含有ポリマーの製造
MMA、BMA、及びDMAEMAを、組成比(質量比)=60:34:6で、酢酸エチル溶液中で共重合した。得られたポリマーの分子量(Mw)は8万、Tgは66℃、固形分は40%であった。
【0073】
白色顔料
酸化チタン(DuPont製TiPureR960)を用いた。
【0074】
実施例1
BSPC層の作成(透明保護層+レセプター層+印刷層)
一方の面に表面保護フィルムを有する厚さ50μmのPETフィルム(透明保護層)の他方の面に、アクリルウレタン系樹脂からなる約25μmのレセプター層を塗布して得られた積層体のレセプター層に、インクジェットプリンター(ミマキエンジニアリング製JV3)を用いて、有機溶剤系インク(ミマキ製SS2インク)によるCMTKカラーバーを印刷して印刷層を形成し、BSPC層を作成した。作画条件は、720X720dpi、片方向印刷、及びノーマルドットであった。
【0075】
アクリル系白色粘着剤層の作成
アミノ基含有ポリマーが10質量部、酸化チタンが50質量部、MIBKを40質量部添加し、ミキサー(株式会社シンキー製ARE250)で10分間攪拌してプレミックス溶液を得た。次に、カルボキシル基含有ポリマーが100質量部に対して酸化チタンが50質量部、アミノ基含有ポリマーが10質量部になるようにプレミックス溶液を混合しアクリル系白色粘着剤溶液を準備した。得られたアクリル系白色粘着剤溶液に、カルボキシル基含有ポリマーが100質量部に対して1,1’−イソフタロイル−ビス(2−メチルアジリジン)を0.2質量部添加し、ナイフコートにより紙ベース両面ポリエチレンラミネート剥離紙上に塗布し、90℃で5分間加熱し、乾燥及び架橋してアクリル系白色粘着剤層を形成した。乾燥後の粘着剤層の厚さは30μmであった。
【0076】
グラフィックス構造体の作成
続いて、得られたアクリル系白色粘着剤層に、支持層として厚さ100μmのPETフィルム(東洋紡製A-4100)をドライラミネートにより積層した後、アクリル系白色粘着剤層の剥離紙を除去した。アクリル系粘着剤が露出した面に上記BSPC層の印刷層を、ドライラミネートにより積層した後、BSPC層の表面保護フィルムを剥がしてグラフィックス構造体サンプルを得た。
【0077】
実施例2及び参考例1
実施例2では、アミノ基含有ポリマーを6質量部及び酸化チタンを30質量部とし、参考例1では、アミノ基含有ポリマーを2質量部及び酸化チタンを10質量部とした以外は実施例1と同様にしてグラフィックス構造体サンプルを得た。
【0078】
比較例1〜2
酸化チタンの含量を、100質量部(比較例1)、120質量部(比較例2)とした以外は実施例1と同様にしてグラフィックス構造体サンプルを得た。
【0079】
比較例3
厚さ100μmのPETフィルムにウレタン系水性インクレセプター層を積層した市販の水性インクジェットメディア(住友スリーエム社製IJ4317N)の、インクレセプター層に、アクリル系粘着剤とPETフィルムを積層して水性インクジェットメディアサンプルとした。
【0080】
実施例3
BSPC層の作成(BSPC1層=透明保護層+レセプター層+印刷層)
静電印刷プリンタ(住友スリーエム社製スコッチリプリントSP2000システム)でトランスファーメディア(住友スリーエム社製トライデント)に転写用デジタル画像を形成した。続いて、透明保護層としてポリフッ化ビニリデンをベースとした厚さ20μmのアロイ化フィルム(電気化学工業株式会社製デンカDXフィルム(R))を準備し、これにレセプター層となるアクリル系樹脂溶液(ロームアンドハース社製アクリロイドB−44 トルエン溶液中固形分29%)を乾燥時の厚さ3μmとなるように塗布、100℃で2分間乾燥した。得られたレセプター層の透明樹脂層と逆側の面に、ヒートラミネーター(住友スリーエム社製オルカIII)により画像を熱転写し、透明保護層、レセプター層、及び第一印刷層の積層体であるBSPC1層を得た。オルカIIIの設定条件は、上部ロール温度135℃、下部ロール温度50℃、ロールスピード80m/minutes、圧力60psiであった。
【0081】
アクリル系白色粘着剤層の作成
固形分換算でアミノ基含有ポリマーが10質量部、酸化チタンが50質量部に対してMIBKを25質量部添加しミキサー(株式会社シンキー製ARE250)で10分間攪拌しプレミックス溶液を得た。さらに、固形分換算でカルボキシル基含有ポリマー100質量部に対して酸化チタンが8質量部になるようにカルボキシル基含有ポリマーとプレミックス溶液を混合し白色粘着剤組成物溶液を準備した。固形分換算で得られた白色粘着剤組成物溶液にカルボキシル基含有ポリマーが100質量部に対して架橋剤1,1’−イソフタロイル−ビス(2−メチルアジリジン)を0.22質量部添加し、ナイフコートにより紙ベース両面ポリエチレンラミネート剥離紙上に乾燥後の厚さが30μmになるように塗布した。90℃×5分間加熱し乾燥及び架橋した。紙ベース両面ポリエチレンラミネート剥離紙とドライラミネートしてアクリル系白色粘着剤層を得た。
【0082】
レセプターフィルム層の作成
固形分換算で前記アミノ基含有ポリマー100質量部、及び粘着ポリマー1(BA:AA=94:6(質量比)、固形分33%、質量平均分子量76万)58.2質量部を添加しミキサー(株式会社シンキー製ARE250)で10分間攪拌し、ポリマー溶液を得た。厚さ50μmの剥離処理ポリエステルフィルムに前記ポリマー溶液をナイフコートにより塗布し、95℃で3分間及び155℃で2分間乾燥し20μm厚さのレセプターフィルム層を得た。
【0083】
粘着剤層の作成
次に粘着ポリマー2(2MBA:AA=90:10(質量比)、固形分40%、質量平均分子量40万)が固形分換算で100質量部に対して架橋剤1,1’−イソフタロイル−ビス(2−メチルアジリジン)を0.17質量部添加した。得られた粘着剤組成物を、ナイフコートにより紙ベース両面ポリエチレンラミネート剥離紙上に乾燥後の厚さが30μmになるように塗布、90℃×5分間加熱し乾燥及び架橋し粘着剤層を得た。
印刷レセプターフィルム層の作成(第二印刷層+レセプターフィルム層+粘着剤層)
前記レセプターフィルム層に前記粘着剤層をドライラミネートした。静電印刷プリンタ(住友スリーエム社製スコッチリプリントSP2000システム)でトランスファーメディア(住友スリーエム社製トライデント)に転写用デジタル画像を形成し、ヒートラミネーター(住友スリーエム社製オルカIII)により、粘着剤層を積層したレセプターフィルム層の粘着剤層と逆側の面に画像を熱転写することで印刷レセプターフィルム層を得た。オルカIIIの設定条件は、上部ロール温度135℃、下部ロール温度50℃、ロールスピード80m/minutes、圧力60psiであった。
【0084】
グラフィックス構造体の作成
上記で得られたBSPC1層、アクリル系白色粘着剤層、そして印刷レセプターフィルム層を順次ドライラミネートし、さらに印刷レセプターフィルム層の粘着剤層に厚さ0.33mmの不燃性内照用柔軟性基材(住友スリーエム社製Papanagraphics745NF)をドライラミネートして積層し、グラフィックス構造体サンプルとした。
【0085】
BSPC層、アクリル系白色粘着剤層、レセプターフィルム層、粘着剤層、及びこれらの積層体であるグラフィックス構造体の厚さを表2に示す。以下実施例4〜7、比較例4〜9についても同様である。
【0086】
実施例4
アクリル系白色粘着剤中の酸化チタンが60質量部になるように粘着剤とプレミックス溶液を混合して白色粘着剤組成物溶液を準備した以外は、実施例3と同様にしてグラフィックス構造体サンプルを得た。
【0087】
実施例5
BSPC1層をBSPC2層(下記参照)に変更した以外は、実施例3と同様にしてグラフィックス構造体サンプルを得た。
BSPC層の作成(BSPC2層=透明保護層+レセプター層+第一印刷層)
前記アミノ基含有ポリマーが固形分換算で100量部、前記粘着ポリマー1が58.2質量部を添加しミキサー(株式会社シンキー製ARE250)で10分間攪拌しポリマー溶液を得た。厚さ50μmの剥離処理ポリエステルフィルム(PETフィルム)に得られたポリマー溶液をナイフコートにより塗布し、95℃で3分間及び155℃で2分間乾燥及び架橋し20μm厚さのレセプター層を得た。アクリルポリオール樹脂(住友バイエルウレタン製デスモフェンA365)とポリヘキサメチレンジイソシネート(住友バイエルウレタン製スミジュールN3300)をNCO/OH当量比=1.0となるように混合し透明保護層樹脂溶液を得た。前記レセプター層に、得られた樹脂溶液をナイフコートにより塗布し、85℃で1.5時間乾燥及び架橋し3μm厚さの透明保護層を形成した。
【0088】
前記PETフィルム、レセプター層、及び透明保護層の積層体から、PETフィルムを剥離し、露出したレセプター層の面に静電印刷プリンタ(住友スリーエム社製スコッチリプリントSP2000システム)でトランスファーメディア(住友スリーエム社製トライデント)に転写用デジタル画像を形成し、ヒートラミネーター(住友スリーエム社製オルカIII)により画像を熱転写して、透明保護層、レセプター層、及び第一印刷層の積層体であるBSPC2層を得た。オルカIIIの設定条件は、上部ロール温度135℃、下部ロール温度50℃、ロールスピード80m/minutes、圧力60psiであった。
【0089】
実施例6
アクリル系白色粘着剤層の酸化チタンが13質量部になるように粘着剤とプレミックス溶液を混合し白色粘着剤組成物溶液を準備した以外は、実施例3と同様にグラフィックス構造体サンプルを得た。
【0090】
実施例7
BSPC2層のレセプター層の厚みを30μmに変更し、アクリル系白色粘着剤層の酸化チタンが13質量部になるように粘着剤とプレミックス溶液を混合し白色粘着剤組成物溶液を準備した。また、レセプターフィルム層のレセプター厚みを10μmに変更した以外は、実施例5と同様にグラフィックス構造体サンプルを得た。
【0091】
比較例4
BSPC2層のレセプター層の厚みを10μmに変更し、アクリル系白色粘着剤層の酸化チタンが13質量部になるように粘着剤とプレミックス溶液を混合し白色粘着剤組成物溶液を準備しアクリル系白色粘着剤層得た以外は、実施例5と同様にしてグラフィックス構造体サンプルを得た。
【0092】
比較例5
アクリル系白色粘着剤層の酸化チタンが80質量部になるように粘着剤とプレミックス溶液を混合し白色粘着剤組成物溶液を準備しアクリル系白色粘着剤層を得た以外は、実施例3と同様にグラフィックス構造体サンプルを得た。
【0093】
比較例6
アクリル系白色粘着剤層の酸化チタンが40質量部になるように粘着剤とプレミックス溶液を混合し白色粘着剤組成物溶液を準備し、厚みを15μmに変更した以外は、実施例3と同様にグラフィックス構造体サンプルを得た。
【0094】
比較例7
粘着剤層を15μmに変更した以外は、実施例6と同様にグラフィックス構造体サンプルを得た。
【0095】
比較例8
アクリル系白色粘着剤の酸化チタンを未添加として透明粘着剤とした以外は、実施例6と同様にグラフィックス構造体サンプルを得た。
【0096】
比較例9
BSPC1層をBSPC2層に変更し、BSPC2層のフィルム層厚みを47μmに変更し、レセプターフィルム層のレセプター厚みを30μmに変更した以外は、実施例6と同様にグラフィックス構造体サンプルを得た。
【0097】
比較例10
レセプターコート付き乳白色ポリ塩化ビニル樹脂フィルム(住友スリーエム製レセプターフィルム8628、粘着剤層付厚さ80μm)に静電印刷プリンタ(住友スリーエム社製スコッチリリントSP2000システム)でトランスファーメディア(住友スリーエム社製トライデント)に転写用デジタル画像を形成し、ヒートラミネーター(住友スリーエム社製オルカIII)により画像を熱転写することで印刷乳白フィルム層を得た。さらに、レセプターコート付き透明ポリ塩化ビニル樹脂フィルム(住友スリーエム製レセプターフィルム8626、粘着剤層付80μm)に、前記と同様に静電印刷プリンタ(住友スリーエム社製スコッチプリントSP2000システム)を使用し、画像を熱転写することで印刷透明フィルム層を得た。オルカIIIの設定条件は、上部ロール温度135℃、下部ロール温度50℃、ロールスピード80m/minutes、圧力60psiであった。続いて、表面透明保護層として30μmフィルム層と30μmの粘着剤層よりなるオーバーラミネートフィルム(住友スリーエム社製SP4114)の粘着剤層と前記印刷乳白フィルム層の印刷面を積層し、前記印刷乳白フィルム層の粘着剤層と前記印刷透明フィルム層の印刷面を積層して構造体を得た。得られた構造体の厚さは220μmであった。
【0098】
さらに、得られた構造体の印刷透明フィルム層の粘着剤層に、厚さ0.33mmの不燃性内照用柔軟性基材(住友スリーエム社製Papanagraphics745NF)をドライラミネートしてグラフィックス構造体サンプルとした。
【0099】
全光線透過率の測定
実施例1〜7、比較例1、2、4〜10、及び参考例1で作成したアクリル系白色粘着層及び透明粘着剤をそれぞれ50μmポリエチレンレテフタートフィルム(帝人デュポンフィルム社製テイジン(R)テトロン(R)フィルム)で両面ドラミラミネートし測定サンプルとした。透過率は、カラーメーター(日本電色社製Σ90)を用いて測定した。全光線透過率は次式で与えられる。
(全光線透過率)=(平行透過率)+(拡散透過率)
結果を表1及び表4に示す。
【0100】
内照・外照テスト
実施例1〜7、比較例4〜10、及び参考例1で作成したグラフィックス構造体サンプルをそれぞれ透明アクリル板(三菱レイヨン社製アクリライトEX001)に貼り付けテストサンプルとした。内部に蛍光灯を配置したライトボックス(アイグラフィックス社製、EYE light box)上にサンプルを置き、蛍光灯を点灯した状態で印刷画像が鮮明に確認できる場合は、内照仕様をGoodとした。また、蛍光灯を未点灯にした状態で印刷画像が鮮明に確認できる場合は、外照仕様Goodとした。逆に、画像が薄くぼやけた場合は、Poorと判断した。結果を表1及び表3に示す。
【0101】
耐水性の測定
実施例1〜2、及び参考例1で作成したグラフィックス構造体サンプル、及び比較例3の水性インクジェットメディアサンプルをそれぞれ水中に浸漬させ、室温で24時間放置後、端部からの水の浸入跡を確認した。1mm以下の浸入跡をGoodとし、1mm以上の浸入をPoorとした。結果を表1に示す。
【0102】
層間密着性テスト
実施例3〜7、比較例4〜10のグラフィックス構造体サンプルをそれぞれ60mm×40mmサイズにカットし、アルミ板上に、Panagraphics745NFがアルミ板側になるようにして両面テープ(住友スリーエム製VHB)を用いて固定し、サンプルとした。サンプルをメタル促進耐候性試験機(ダイプラウインテス社製KW−R5TP)に設置し、200時間経過後取出し、サンプル表面にカッター刃で碁盤目状の切れ目を入れ、テープ(ニチバン製セロハン(登録商標)テープ)を貼り付け圧着後、90度方向に高速で剥離する。その後、サンプル表面を目視にて観察し、フィルム層の剥がれがなければGood、剥がれが確認されればPoorと判断した。結果を表3に示す。
【0103】
不燃性テスト
実施例3〜7、比較例4〜10のグラフィックス構造体サンプルをカットして100mm角のサンプルを準備し、ISO5660−1コーンカロリーメーター試験に準拠してテストした。判定は、加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m以下、さらに最高発熱速度が10秒以上継続して200kW/mを超えなかった場合は不燃性Passと判断した。一方、どちらかの基準をクリアできなかった場合はNotPassと判断した。結果を表3に示す。
【0104】
印刷性テスト
静電印刷プリンタ(住友スリーエム社製スコッチリプリントSP2000システム)でトランスファーメディア(住友スリーエム社製トライデント)に転写用デジタル画像(CMYKカラーバー)を形成した。続いて、実施例3〜7、比較例4〜9のレセプターフィルムサンプル、及び比較例10のレセプターコート付きポリ塩化ビニル樹脂フィルムサンプルに、それぞれヒートラミネーター(住友スリーエム社製オルカIII)により上記画像を熱転写した。オルカIIIの設定条件は、上部ロール温度135℃、下部ロール温度50℃、ロールスピード80m/minutes、圧力60psiとした。転写後のトライデント上にトナーがほとんど残らない場合は、印刷性Goodと判断した。一方、多くのトナーがトライデント上に残った場合はPoorと判断した。結果を表3に示す。
【0105】
【表1】

【0106】
【表2】

【0107】
【表3】

【0108】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の1つの好ましい態様を示すグラフィックス構造体の断面図である。
【図2】本発明の他の1つの好ましい態様を示すグラフィックス構造体の断面図である。
【符号の説明】
【0110】
100、200 グラフィックス構造体
102、202 レセプター層
104、204 印刷層
106、206 アクリル系白色粘着剤層
108、208 透明保護層
110 支持層
210 第二の印刷層
212 レセプターフィルム層
214 粘着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レセプター層、前記レセプター層に印刷を施すことにより作成した印刷層、及びアクリル系白色粘着剤からなるアクリル系白色粘着剤層をこの順で含み、
前記アクリル系白色粘着剤が、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー、前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して8〜150質量部の白色顔料、及び芳香族ビニルモノマーを含まないアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーを含むグラフィックス構造体。
【請求項2】
前記アクリル系白色粘着剤層の全光線透過率が13%〜50%である請求項1に記載のグラフィックス構造体。
【請求項3】
さらに、前記レセプター層の外側表面に透明保護層を有する請求項1または2に記載のグラフィックス構造体。
【請求項4】
前記アクリル系白色粘着剤が、前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、15質量部〜60質量部の白色顔料を含む請求1〜3のいずれか一項に記載のグラフィックス構造体。
【請求項5】
前記印刷層が、有機溶剤系インクまたはUVインクを含む請求項項1〜4のいずれか一項に記載のグラフィックス構造体。
【請求項6】
さらに、前記アクリル系白色粘着剤層の外側表面に支持層を有する請求項1〜5のいずれか一項に記載のグラフィックス構造体。
【請求項7】
前記白色顔料が酸化チタンである請求項1〜6のいずれか一項に記載のグラフィックス構造体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のグラフィックス構造体を含む内照グラフィックス構造体。
【請求項9】
前記アクリル系白色粘着剤が、前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、8質量部〜60質量部の白色顔料を含む請求項1〜3のいずれか一項に記載のグラフィックス構造体。
【請求項10】
前記印刷層が、静電印刷による層である請求項1〜3または9に記載のグラフィックス構造体。
【請求項11】
さらに、前記アクリル系白色粘着剤層の外側表面に、第二の印刷層、及びレセプターフィルム層をこの順で有する請求項1〜3または9〜10のいずれか一項に記載のグラフィックス構造体。
【請求項12】
さらに、前記レセプターフィルム層の外側表面に、粘着剤層を有する請求項11に記載のグラフィックス構造体。
【請求項13】
全体の厚さが130μm以下である請求項1〜3または9〜12のいずれか一項に記載のグラフィックス構造体。
【請求項14】
前記白色顔料が酸化チタンである請求項1〜3または9〜13のいずれか一項に記載のグラフィックス構造体。
【請求項15】
請求項1〜3または9〜13のいずれか一項に記載のグラフィックス構造体を含み、ISO5660−1コーンカロリーメーター試験で不燃性であるグラフィックス構造体。
【請求項16】
さらに内照用柔軟性基材を含む請求項15に記載のグラフィックス構造体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−282471(P2009−282471A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−137235(P2008−137235)
【出願日】平成20年5月26日(2008.5.26)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】