説明

グランドアンカー緊張力検知システム

【課題】 緊張線材の緊張力検知に必要なコストや労力を低減することができるグランドアンカー緊張力検知システムを得る。
【解決手段】 緊張線材23の緊張力を受圧するアンカープレート33に、前記アンカープレート33の曲げ歪み量を検出する歪みセンサ41を装備するとともに、前記歪みセンサ41と電気的に接続されて、前記歪みセンサ41の検出する曲げ歪み量から前記緊張線材23の緊張力低下を算出する緊張力モニター装置とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレストレストコンクリートにおける緊張力付与や傾斜地の土留め等に使用するグランドアンカーの、緊張線材に働いている緊張力を監視するためのグランドアンカー緊張力検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
図19は、プレストレストコンクリートにおける緊張力付与や傾斜地の土留め等に使用されるグランドアンカーの一般構造を示したものである。
図示のグランドアンカー10において、符号1は地表法面等に造成されるコンクリート部材で、符号2はコンクリート部材1の表面に設置されるアンカープレート2である。これらのコンクリート部材1及びアンカープレート2には略同軸に挿通穴が貫通形成され、それらの挿通穴には、樹脂製のシース4内に収容した緊張線材6が挿通されている。
【0003】
図19には示していないが、緊張線材6の基端は、コンクリート部材1の下方の地中の安定地盤に埋設されたアンカー体に固定されている。また、コンクリート部材1及びアンカープレート2の挿通穴から地上側に導出された緊張線材6の先端部にはアンカーヘッド8が固定されている。
このアンカーヘッド8は、緊張線材6の先端部をジャッキ等によって牽引して、緊張状態にされた緊張線材6に固定され、緊張線材6を介して作用する緊張力によって、アンカープレート2に押圧固定されている。
なお、図19の符号9は、アンカーヘッド8が取り付けられた緊張線材6の先端部に被嵌装着されるオイルキャップ9で、布設した緊張線材6の腐食等を防止する役割を果たす。
【0004】
このようなグランドアンカー10においては、緊張線材6に付与された緊張力が経年変化によって緩み、それによって、緊張線材6による当初の支持強度が低下する虞がある。そこで、定期的に緊張線材6の緊張力を点検する必要がある。
従来、設置したグランドアンカー10における緊張線材6の緊張力を検出するグランドアンカー緊張力検知方法としては、次の2つの方法が知られている。
一つは、点検時にオイルキャップ9を取り外し、露出する緊張線材6の先端部に、グランドアンカー10の設置時に使用した緊張ジャッキを接続して、その緊張ジャッキによって、残存している緊張力を測定する方法である。
他の一つは、図20に示す方法である。これは、上記のグランドアンカー10におけるアンカープレート2とアンカーヘッド8との間に油圧式或いは電気式のロードセル12を組み込んで、点検時には、ロードセル12に測定回路を接続して、規定圧でロードセル12を作動させた時のロードセル12の出力値によって、緊張線材6の緊張力低下を検出するものである(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2002−257654号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、緊張ジャッキを使用するグランドアンカー緊張力検知方法の場合は、緊張ジャッキが重機で、点検時の現場への搬入に多大な労力がかかるという問題が生じた。
【0007】
一方、油圧式或いは電気式のロードセル12を使用するグランドアンカー緊張力検知方法の場合は、油圧式或いは電気式のロードセル12自体が高価な上、さらに、点検時に、ロードセル12からの出力信号を測定するための高価な測定回路も必要となるため、緊張線材6の緊張力検知に必要なコストが高額になるという問題が生じた。
また、油圧式或いは電気式のロードセル12を組み付けるには、アンカープレート2とアンカーヘッド8との間にロードセル12の高さ寸法hに相当する隙間を確保しなければならないが、この高さ寸法hが結構大きいため、既存のグランドアンカー10に後からロードセル12を追加装備する隙間を形成することが困難で、予めロードセル12を組み込んで設置したグランドアンカー以外には利用できないという問題が生じた。
【0008】
また、たとえ上記隙間が確保できたとしても、既存のグランドアンカー10では、緊張線材6の先端部における余長が短いために、緊張ジャッキ等で緊張線材6を牽引して、隙間を形成することが困難であった。
【0009】
本発明は上記課題を解消することを目的とし、グランドアンカーにおける緊張線材の緊張力検知に必要なコストや労力を低減することができ、また、予め対処していなかった既設のグランドアンカーに対しても緊張力検知を実施することが可能なグランドアンカー緊張力検知システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は下記構成により達成される。
(1) 緊張線材の緊張力を受圧するアンカープレートに歪みセンサを装備し、前記歪みセンサが検出する前記アンカープレートの曲げ歪み量から前記緊張線材の緊張状態を検出することを特徴とするグランドアンカー緊張力検知システム。
【0011】
(2) 上記(1)において、前記アンカープレートの歪みセンサと電気的な接続・切り離しが自在で、電気的に接続した状態で、前記歪みセンサが出力する曲げ歪み量を表示すると共に記憶媒体に記憶させる緊張力モニター装置を具備したことを特徴とするグランドアンカー緊張力検知システム。
【0012】
(3) 上記(2)において、前記記憶媒体を前記アンカープレートに装備したことを特徴とするグランドアンカー緊張力検知システム。
【0013】
(4) 上記(2)又は(3)において、前記記憶媒体に予め記憶された曲げ歪み量と、前記歪みセンサにより検知された曲げ歪み量とを比較して、前記緊張線材における緊張力低下の有無を検出することを特徴とするグランドアンカー緊張力検知システム。
【0014】
(5) 上記(3)又は(4)において、前記アンカープレートに装備された前記歪みセンサ及び前記記憶媒体と、前記緊張力モニター装置とが、無線通信によって接続されることを特徴とするグランドアンカー緊張力検知システム。
【0015】
(6) 上記(1)乃至(5)のいずれか一つにおいて、前記緊張線材の緊張力が作用する前記アンカープレート上の受圧域を、地表法面等に造成されるコンクリート部材から浮かすスペーサを備えたことを特徴とするグランドアンカー緊張力検知システム。
【0016】
(7) 上記(1)乃至(6)のいずれか一つにおいて、少なくとも前記緊張線材が係止したアンカーヘッドを、地表法面等に造成されるコンクリート部材から浮かすために、前記アンカーヘッド上に被せられるラムチェアと、前記ラムチェア内に配置され前記アンカーヘッドを把持可能なアタッチメントとを付属し、前記ラムチェアに結合して油圧により前記アタッチメントが把持した前記アンカーヘッドを前記ラムチェアの反力によって吊揚げるセンターホールジャッキを適用可能にしたことを特徴とするグランドアンカー緊張力検知システム。
【発明の効果】
【0017】
上記(1)に記載のグランドアンカー緊張力検知システムでは、緊張線材の緊張力測定のために装備するセンサは、従来の大型な油圧式或いは電気式のロードセルや重機である緊張ジャッキと比較して、小型軽量で、しかも安価な歪みセンサである。また、歪みセンサの出力信号は、微弱な電気信号で、その出力信号を処理する緊張力モニター装置も、油圧式或いは電気式のロードセルを作動させる測定回路と比較して、例えば携帯型パソコン(ノートパソコン)等を利用した小型軽量で、且つ安価な設備で済む。
従って、グランドアンカーにおける緊張線材の緊張力検知に必要なコストや労力を低減することができる。
また、本発明のアンカープレートは油圧式或いは電気式のロードセルと比較して厚さ(高さ)寸法が小さいため、既設のグランドアンカーにおける緊張線材の先端を緊張ジャッキ等で牽引して、アンカーヘッドがアンカープレートから僅かに浮かした状態にすることで、既設のアンカープレートとの交換が比較的簡単にできる。
従って、既設のグランドアンカーに対しても緊張線材の緊張力検知を実施することが可能で、汎用性が高い。
【0018】
上記(2)に記載のグランドアンカー緊張力検知システムでは、緊張力モニター装置は、アンカープレートに装備される歪みセンサに対して、据え置きではなく、必要時(緊張力の測定時)にのみコネクタ等を介して電気的に接続されるもので、単一の緊張力モニター装置を、多数のグランドアンカーに共用させることができて、緊張力モニター装置の装備数を低減させることができるため、緊張力検知に必要な設備費を大幅に節約することができる。
【0019】
上記(3)に記載のグランドアンカー緊張力検知システムでは、アンカープレートに装備した記憶媒体に、当初に緊張線材に設定した基準の緊張力とその時に歪みセンサが検出したアンカープレートの曲げ歪み量等のデータを記憶させることができ、上記(4)に記載のように、点検時に歪みセンサが検知した曲げ歪み量を記憶媒体の当初の曲げ歪み量と比較することで、緊張線材における緊張力低下の有無を容易に検知できる。
【0020】
上記(5)に記載のグランドアンカー緊張力検知システムは、アンカープレートに装備した記憶媒体及び歪みセンサと緊張力モニター装置との間の電気的な接続を、RFID(Radio Frequency Identification)等によって無線化することで、緊張力の点検時等に、緊張力モニター装置をアンカープレートにコネクタ接続するような手間を省くことができるため、緊張力の点検作業を迅速・円滑化することができる。
【0021】
上記(6)に記載のグランドアンカー緊張力検知システムでは、アンカープレート及び、このアンカープレートが当接するコンクリート部材のそれぞれの挿通穴径が一致するような場合でも、アンカープレートに作用する緊張線材の緊張力で、アンカープレートが確実に曲げ歪みを発生するようになり、緊張線材における緊張力低下の有無を確実に検知することができる。
【0022】
上記(7)に記載のグランドアンカー緊張力検知システムでは、緊張線材が係止したアンカーヘッドを把持して吊揚げるセンターホールジャッキを適用可能にしているので、既設のグランドアンカーにおいて緊張線材の先端部の余長が短くても、アタッチメントによって把持されたアンカーヘッドを吊揚げて、アンカープレートとコンクリート部材との間に隙間を形成するので、本発明のアンカープレートを介挿させることがてきる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明に係るグランドアンカー緊張力検知システムの好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
図1乃至図5は本発明に係るグランドアンカー緊張力検知システムの一実施の形態を示したもので、図1は本発明に係るグランドアンカー緊張力検知システムに適用されるグランドアンカーの縦断面図、図2は図1に示したグランドアンカー緊張力検知システムのブロック図、図3は図1に示したアンカープレートの底面図、図4は図3に示したアンカープレートの側面図、図5は図2に示したアンカープレートに緊張力モニター装置を接続した形態の説明図である。
【0025】
この一実施の形態のグランドアンカー緊張力検知システム100は、プレストレストコンクリートにおける緊張力付与や傾斜地の土留め等に使用したグランドアンカー21の緊張線材23に働いている緊張力を監視する。
【0026】
グランドアンカー21は、地中の安定地盤25に埋設されるアンカー体27と、地盤25の上方の地表法面29に造成されるコンクリート部材31と、このコンクリート部材31の表面に設置されるアンカープレート33と、基端がアンカー体27に固定されると共に先端がコンクリート部材31及びアンカープレート33に貫通形成された挿通穴31a,33aを挿通して地上側に導出される緊張線材23と、緊張ジャッキ等による牽引により緊張させた緊張線材23の先端側に固定されると共に緊張線材23に付与される緊張力でアンカープレート33に押圧固定されるアンカーヘッド35と、アンカーヘッド35に固定された緊張線材23の先端部に被嵌装着されるオイルキャップ36とを備えている。
【0027】
アンカー体27は、セメント系グラウト材の注入によって所定の大きさ、形状に造成される。緊張線材23は、所定の弾性特性を有する樹脂製のシース37に挿通した形態で布設されている。
緊張線材23とアンカーヘッド35との固定は、緊張線材23を挿通するためにアンカーヘッド35に形成された線材挿通穴に、テーパ管状の楔39を打ち込むことによって行われている。
【0028】
本実施の形態のグランドアンカー緊張力検知システム100は、図1及び図2に示すように、後述する歪みセンサ41及び記憶媒体43が固定装備されたアンカープレート33と、これらの歪みセンサ41及び記憶媒体43に対し、アンカープレート33上に装備した接続用コネクタ44を介して、電気的に接続・切り離しが自在になされた緊張力モニター装置45とで構成される。
【0029】
歪みセンサ41は、防錆処理鋼板によって形成されたアンカープレート33に埋め込まれて、アンカープレート33に発生する曲げ歪みを電気信号に変換して出力するもので、図3及び図4に示すように、アンカープレート33の裏面に形成されたセンサ装着用の凹み47に固定装備されている。この歪みセンサ41には、市販の歪みゲージを使用することもできる。
アンカープレート33には、歪みセンサ41として、通常にアンカープレート33の曲げ歪み量を測定するための第1の歪みセンサ41aと、外気温の変動に対して測定値を温度補正するための第2の歪みセンサ(温度補正センサ)41bとが装備されている。
【0030】
記憶媒体43は、データの書き換えが可能な記憶素子で、例えばEPROM等が使用される。この記憶媒体43も、アンカープレート33の裏面に形成された記憶素子装着用の凹み49に貼着・固定されている。
【0031】
以上の第1及び第2の歪みセンサ41a,41b,記憶媒体43等は、外気や湿気等による汚損を防止するために、高度な耐候性(防水性)を付与しておく必要があり、本実施の形態の場合は、図4に示すように、各凹み47,49にこれらのセンサ等を装着した後、その周囲に防水性樹脂をポッティングして埋めたり、更に、各凹み47,49の開口部を覆う防水蓋を装備するなどの防水処置51が施される。
【0032】
接続用コネクタ44は、アンカープレート33の表面側に取り付けられた防水コネクタで、図5に示すように、緊張力モニター装置45の接続ケーブル46が接続される。
この接続用コネクタ44と歪みセンサ41との間、又は接続用コネクタ44と記憶媒体43との間は、アンカープレート33内に穿設されたケーブル通路に挿通した通信ケーブル53により接続されている。
【0033】
緊張力モニター装置45は、図2に示したように、歪みセンサ41の出力信号を読み取る平衡回路や受信信号を増幅する増幅回路を有した歪みセンサ作動回路61と、この歪みセンサ作動回路61が出力するアナログ信号をデジタル信号に変換して出力するA/D変換回路62と、A/D変換回路62の出力信号からアンカープレート33の曲げ歪み量を算出し、記憶媒体43へのデータ読み出し/書き込み処理等を行う演算処理回路(MPU)63と、この演算処理回路63の算出したデータ等を画面表示する液晶ディスプレイを有した表示回路65と、演算処理回路63による処理内容等を設定するキーボード等の入力操作回路66と、入力操作回路66からの入力データや演算処理回路63による処理データを記憶する記憶媒体68とを備えた構成である。
【0034】
本実施の形態の場合、記憶媒体68としては、市販のメモリカードであるCF(コンパクトフラッシュ)メモリを使用することを想定しているが、その他のメモリを利用する形態に変更しても良い。
このような緊張力モニター装置45には、例えば市販のノート型パソコンまたは更に小型のモバイル型コンピュータを流用することもできる。
【0035】
グランドアンカー21の設置時に、緊張力モニター装置45を接続用コネクタ44に接続して、図6に示すように、緊張線材23に基準の緊張力を付与した時に、歪みセンサ41が出力する電圧を測定し、その測定値を当初のセット電圧として、記憶媒体43に記憶させておく。なお、記憶媒体43に記憶させる電圧は、基準の緊張力に対応するものだけには限らない。
図7に示すように、基準の設定緊張力に到達する途中の緊張力1,2,3について、それぞれ歪みセンサ41の出力値を測定して、記憶媒体43に記憶させておくことによって、緊張線材23に付与される緊張力とアンカープレート33に発生する曲げ歪みとの相関を記録して、後の点検時の参考データにすることができる。
【0036】
本実施の形態の緊張力モニター装置45は、点検時、接続用コネクタ44に接続されると、図8に示すように、予めグランドアンカー21の設置時に記憶媒体43に記憶させたアンカープレート33の曲げ歪み量を読み込み、この読み込んだ曲げ歪み量と、点検時に歪みセンサ41により検知された曲げ歪み量とを比較して、それぞれの歪み量の差から緊張線材23における緊張力低下の有無を検出(判定)する。
【0037】
以上に説明した一実施の形態のグランドアンカー緊張力検知システム100では、緊張線材23の緊張力測定のためにグランドアンカー21側に装備するセンサは、従来の大型な油圧式或いは電気式のロードセルや重機である緊張ジャッキと比較して、小型軽量で、しかも安価な歪みセンサ41である。また、歪みセンサ41の出力信号は、微弱な電気信号で、その出力信号を処理する緊張力モニター装置45も、油圧式或いは電気式のロードセルを作動させる測定回路と比較して、例えば携帯型パソコン(ノートパソコン)等を利用した小型軽量で、且つ安価な設備で済む。
従って、グランドアンカー21における緊張線材23の緊張力検知に必要なコストや労力を低減することができる。
【0038】
また、予め対処していなかった既設のグランドアンカー(例えば、図19に示したグランドアンカー10)で緊張力測定が必要となった場合、既設のグランドアンカーにおけるアンカープレートを、本発明でのアンカープレート33に交換すれば良い。
そして、本発明におけるアンカープレート33は、油圧式或いは電気式のロードセルと比較して厚さ(高さ)寸法が小さいため、緊張線材6の先端を緊張ジャッキ等で牽引してアンカーヘッド8を僅かに浮かした状態にすることで、既設のアンカープレートから本発明におけるアンカープレート33への交換が比較的簡単にできる。
従って、図19に示した既設のグランドアンカーに対しても緊張線材6の緊張力検知を実施することが可能で、汎用性が高い。
【0039】
また、上記実施の形態に示したグランドアンカー緊張力検知システム100では、緊張力モニター装置45は、アンカープレート33に装備される歪みセンサ41に対して、据え置きではなく、必要時(緊張力の測定時)にのみコネクタ等を介して歪みセンサ41に電気的に接続されるもので、単一の緊張力モニター装置45を、多数のグランドアンカー21に共用させることができて、緊張力モニター装置45の装備数を低減させることができるため、緊張力検知に必要な設備費を大幅に節約することができる。
【0040】
また、上記実施の形態に示したグランドアンカー緊張力検知システム100では、前述したようにアンカープレート33に装備した記憶媒体43に、当初に緊張線材23に設定した基準の緊張力とその時の歪みセンサ41が検出した歪み量等のデータとを記憶させておき、点検時に歪みセンサ41から検知した歪み量と記憶媒体43に記憶させていた当初の歪み量とを比較することで、緊張線材23における緊張力低下の有無を容易かつ短時間に検知できる。
【0041】
なお、図9及び図10に示すように、アンカープレート33における挿通穴33aの大きさが、コンクリート部材31における挿通穴31aの大きさに略等しい場合、アンカーヘッド35を介してアンカープレート33に緊張力が作用しても、アンカープレート33に作用する緊張力がそのままコンクリート部材31に受けられてしまって、アンカープレート33に本来の曲げ歪みが発生し難い。
そこで、本発明では、このような場合には、図11及び図12に示すように、アンカーヘッド35から緊張力が作用するアンカープレート33上の受圧域をコンクリート部材31から浮かすスペーサ71を用意している。
このスペーサ71を使用することで、アンカープレート33及びコンクリート部材31のそれぞれの挿通穴31a,33a径が一致するような場合でも、緊張線材23の緊張力を受圧するアンカープレート33が確実に曲げ歪みを発生するようになり、緊張線材23における緊張力低下の有無を確実に検知することができる。
【0042】
また、上記実施の形態で示したアンカープレート33は、新規にグランドアンカー21を設置する時に使用するものであった。
これに対し、図13に示すアンカープレート73は、図14に示す既設のグランドアンカー10のアンカープレート2と交換して、既設のグランドアンカー10においても緊張力低下の有無を検出可能にするものである。
このアンカープレート73は、緊張線材6を挿通するための挿通穴73aが、U字状の切り欠き形状に形成されたもので、それ以外の構成は、図3に示したアンカープレート33と同様である。従って、同様の部品等には、同番号を付して、説明を省略する。
【0043】
挿通穴73aをU字状の切り欠き形状にしたアンカープレート73は、図15に示すように、既設のグランドアンカー10において、緊張線材6の先端部を緊張ジャッキ等によって牽引して、アンカープレート2とアンカーヘッド8との間に形成した僅かな隙間74にアンカープレート73を挿入することで、図1に示したグランドアンカー21の場合と同様に、緊張力モニター装置45を接続して、緊張力低下の有無を測定することが可能になる。
【0044】
なお、アンカープレート73を挿入する位置は、既設のアンカープレート2とアンカーヘッド8との間に限らない。
例えば、図16に示すように、既設のアンカープレート2とコンクリート部材1との間に挿入するようにしても良い。
【0045】
しかし、既設のグランドアンカー10においては、緊張線材6の先端部の余長が短いために、緊張線材6の先端部を緊張ジャッキ等で牽引してアンカーヘッド8を僅かに浮かし、本発明のアンカープレート73を介挿させることが難しい。
そこで、上記実施の形態に示したグランドアンカー緊張力検知システム100では、下記構成のセンターホールジャッキを適用可能にしている。
【0046】
このセンターホールジャッキ80は、図17に示すように、緊張線材6が係止したアンカーヘッド8を直接吊揚げできるもので、オイルキャップ(図1の符号36参照)を取り外して露出したアンカーヘッド8上に被せてコンクリート部材1の表面に設置されるラムチェア81と、このラムチェア81内に配置されるとともに、アンカーヘッド8を把持可能にしたヨーク状のアタッチメント82とを付属し、ラムチェア81の上面に結合したジャッキ部84でアタッチメント82に接続した線材83を牽引する。なお、ジャッキ部84には油圧ポンプ85が接続されている。
【0047】
上記構成によるセンターホールジャッキ80は、油圧ポンプ85を作動して、ジャッキ部84がアタッチメント82に接続した線材83を牽引すると、コンクリート部材1の表面を圧接するラムチェア81の反力によって、アタッチメント82が把持したアンカーヘッド8及びアンカープレート2をコンクリート部材1から浮かして吊揚げる。
係る状態で、ラムチェア81の下端に形成された開口部81aより、本発明のアンカープレート73を挿入することで、図1に示したグランドアンカー21の場合と同様、緊張力モニター装置45を接続して、既設のグランドアンカー10における緊張力低下の有無を測定することが可能になる。
【0048】
以上述べたように、センターホールジャッキ80は、緊張線材6に代わって、緊張線材6を係止するアンカーヘッド8を直接把持しているので、緊張線材6の先端部の余長が短い既設のグランドアンカー10にも適用可能で、本発明のアンカープレート73を介挿できる。
【0049】
上記の実施の形態では、既設のグランドアンカー10におけるセンターホールジャッキ80の使用例について述べたが、センターホールジャッキ80は、このような場合に限らず、緊張線材23の先端部に充分な余長が確保されている場合でも使用可能である。
【0050】
なお、既設のグランドアンカー10に装着し易いセンサ付きアンカープレートの形状は、図13に示した形状に限らない。
図18は、既設のグランドアンカー10に後から挿入して装着するためのアンカープレート76で、この場合には、アンカープレート76が二つの半割れ部品76A,76Bに2分割されていて、それぞれの挿通穴76aが、半円弧状になっている。本発明に係るアンカープレートは、このような2分割構造であっても良い。
【0051】
また、上記の各実施の形態では、緊張力モニター装置45と、歪みセンサ41及び記憶媒体43との電気的接続は、コネクタ付きケーブルによる有線接続であった。
しかし、アンカープレート33に装備した接続用コネクタ44の代わりに、アンカープレート33に、例えばICタグを装備してRFID(Radio Frequency Identification)を使用することで、歪みセンサと緊張力モニター装置45との接続を無線化することができる。
そして、アンカープレートに装備された歪みセンサと緊張力モニター装置45との接続を無線化した場合には、緊張力の点検時等に、緊張力モニター装置45をコネクタ接続するような手間を省くことができるため、緊張力の点検作業を迅速、且つ、円滑化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施の形態に係るグランドアンカー緊張力検知システムに適用されるグランドアンカーの縦断面図である。
【図2】グランドアンカー緊張力検知システムのブロック図である。
【図3】アンカープレートの底面図である。
【図4】図3に示したアンカープレートの側面図である。
【図5】アンカープレートに緊張力モニター装置を接続した形態の説明図である。
【図6】記憶媒体に記憶させる設定緊張力の説明図である。
【図7】記憶媒体に記憶させる設定緊張力の別の設定方法の説明図である。
【図8】緊張線材における緊張力低下の判定方法の説明図である。
【図9】アンカープレート及びコンクリート部材の挿通穴径が一致する場合の構造を示す縦断面図である。
【図10】図9に示したアンカープレート及びコンクリート部材の拡大図である。
【図11】グランドアンカーのスペーサを追加装備した構成を示す縦断面図である。
【図12】図11に示したアンカープレートの要部拡大図である。
【図13】本発明に係るアンカープレートの他の実施の形態の底面図である。
【図14】既設のアンカープレートの縦断面図である。
【図15】既設のアンカープレートに、図13のアンカープレートを組み込む方法の説明図である。
【図16】既設のアンカープレートに、図13に示したアンカープレートを組み込む別の方法の説明図である。
【図17】既設のグランドアンカーに適用可能な、センターホールジャッキの縦断面図である。
【図18】本発明に係るアンカープレートの更に他の実施の形態の底面図である。
【図19】従来のグランドアンカーの構成を示す縦断面図である。
【図20】従来のグランドアンカー緊張力検知方法を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0053】
21 グランドアンカー
23 緊張線材
33、73、76 アンカープレート
35 アンカーヘッド
36 オイルキャップ
41 歪みセンサ
43、68 記憶媒体
44 接続用コネクタ(防水コネクタ)
45 緊張力モニター装置
46 接続ケーブル
47、49 凹み
51 防水処置
53 通信ケーブル
71 スペーサ
73a、76a 挿通穴
100 グランドアンカー緊張力検知システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緊張線材の緊張力を受圧するアンカープレートに歪みセンサを装備し、前記歪みセンサが検出する前記アンカープレートの曲げ歪み量から前記緊張線材の緊張状態を検出することを特徴とするグランドアンカー緊張力検知システム。
【請求項2】
前記アンカープレートの歪みセンサと電気的な接続・切り離しが自在で、電気的に接続した状態で、前記歪みセンサが出力する曲げ歪み量を表示すると共に記憶媒体に記憶させる緊張力モニター装置を具備したことを特徴とする請求項1に記載のグランドアンカー緊張力検知システム。
【請求項3】
前記記憶媒体を前記アンカープレートに装備したことを特徴とする請求項2に記載のグランドアンカー緊張力検知システム。
【請求項4】
前記記憶媒体に予め記憶された曲げ歪み量と、前記歪みセンサにより検知された曲げ歪み量とを比較して、前記緊張線材における緊張力低下の有無を検出することを特徴とする請求項2又は3に記載のグランドアンカー緊張力検知システム。
【請求項5】
前記アンカープレートに装備された前記歪みセンサ及び前記記憶媒体と、前記緊張力モニター装置とが、無線通信によって接続されることを特徴とする請求項3又は4に記載のグランドアンカー緊張力検知システム。
【請求項6】
前記緊張線材の緊張力が作用する前記アンカープレート上の受圧域を、地表法面等に造成されるコンクリート部材から浮かすスペーサを備えたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のグランドアンカー緊張力検知システム。
【請求項7】
少なくとも前記緊張線材が係止したアンカーヘッドを、地表法面等に造成されるコンクリート部材から浮かすために、
前記アンカーヘッド上に被せられるラムチェアと、
前記ラムチェア内に配置され前記アンカーヘッドを把持可能なアタッチメントとを付属し、
前記ラムチェアに結合して油圧により前記アタッチメントが把持した前記アンカーヘッドを前記ラムチェアの反力によって吊揚げるセンターホールジャッキを適用可能にしたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のグランドアンカー緊張力検知システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2006−162511(P2006−162511A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−356805(P2004−356805)
【出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.コンパクトフラッシュ
【出願人】(000000516)曙ブレーキ工業株式会社 (621)
【出願人】(591135082)日本道路公団 (8)
【Fターム(参考)】