グリカン結合タンパク質およびグリカンの医学的有用性
本発明は、薬剤としての、特に、蠕虫感染または免疫疾患を治療および/または予防するための、グリカン結合ポリペプチドおよびグリカンの使用に関する。さらに、本発明は、単離されたグリカンおよび/またはグリカン結合ポリペプチドを含む、対応する医薬組成物、食品および動物飼料を対象とする。さらに、本発明は、抗蠕虫炭水化物結合ポリペプチドを同定するため、蠕虫のグリカンおよびグリカンにより媒介される毒性に関与する遺伝子標的を同定するため、グリカンにより媒介される毒性に感受性のある蠕虫を同定するため、ならびに抗蠕虫および抗アレルギー物質を同定するための方法を教示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤としての、特に、蠕虫感染または免疫疾患を治療および/または予防するための、グリカン結合ポリペプチドおよびグリカンの使用に関する。さらに、本発明は、単離されたグリカンおよび/またはグリカン結合ポリペプチドを含む、対応する医薬組成物、食品および動物飼料を対象とする。さらに、本発明は、抗蠕虫炭水化物結合ポリペプチドを同定するため、蠕虫のグリカンおよびグリカンにより媒介される毒性に関与する遺伝子標的を同定するため、グリカンにより媒介される毒性に感受性のある蠕虫を同定するため、ならびに抗蠕虫および抗アレルギー物質を同定するための方法を教示する。
【背景技術】
【0002】
寄生虫または蠕虫は、それらの宿主内で生き、生きた細胞を餌とする真核生物寄生体である。それらは条虫、吸虫および線虫に分類される。蠕虫により媒介される典型的疾患は、回虫症、メジナ虫症、象皮症、鉤虫症、リンパ管フィラリア症、糸状虫症、住血吸虫症および鞭虫症である。「回虫」または「線虫」は、最も多様な偽体腔動物門であり、あらゆる動物のうち最も多様なものの1つである。線虫種は識別が難しいが、80,000を超えるものが記載されており、そのうち15,000を超えるものが寄生性である。回虫種の総数は500,000を超えるものと推計されている。線虫は淡水、海水および陸上環境に遍在している。それらのほとんどは細菌および真菌の捕食者である。寄生形態には、植物、動物およびまたヒトの病原体も含む。
【0003】
カエノラブディティス・エレガンス(Caenorhabditis elegans)(C.エレガンス)はモデル線虫であり、無体節、虫状、左右対称であり、角皮、4つの主要な表皮帯(epidermal cords)および体液で満たされた偽体腔を有する。野生では、C.エレガンスは、植物質の腐食時に増える細菌を餌とする。生物の糖生物学は盛んに研究されている(非特許文献1;非特許文献2に総説)。特に、C.エレガンスのN−グリコシル化パターンは十分に特性決定され、最近、非特許文献3に総説された。線虫(および軟体動物)のN−グリカンの特徴的な修飾として、非特許文献4は、N−グリカンコアのN−結合GlcNAc残基におけるD−ガラクトピラノシル−β−1,4−L−フコピラノシル−α−1,6−D−GlcNAc(Gal−Fuc)エピトープを単離し、構造的に特徴付けた。
【0004】
捕食者、寄生体および病原体に対するレクチンに基づく防護系は自然界で広く用いられている。レクチンは、標的生物に対するそれらの毒性によって直接的エフェクターとして、または他のエフェクター分子もしくはエフェクター細胞のために標的生物を標識することによってオプソニンとして防護機能を果たす。前者の機構は草食動物に対する植物レクチンに一般的であり、後者の機構は病原体に対する動物レクチンに一般的である。最近、細菌および真菌に対する直接的エフェクターとして働く動物レクチンのいくつかの例が報告された(非特許文献5;非特許文献6)。
【0005】
真菌は、特異性および折りたたみの異なる多数のレクチンを含む(非特許文献7)。これらのレクチンの多くは生殖器官である子実体で特異的に産生され、分泌のための従来のシグナル配列を欠く。これらの子実体レクチンの生理的な役割はまだ明らかでない。個々の遺伝子またはmRNAが不活性である場合には子実体表現型が無いことは、発生におけるこれらのレクチンの内因的役割に反論を投げかけている(非特許文献8;非特許文献9)。いくつかの生物(昆虫、線虫、アメーバー)および真菌を餌とする近縁種に対するこれら種々のレクチンの毒性は、子実体レクチンが捕食者および寄生体からの真菌の防護に役割を持つ可能性があることを示唆している(非特許文献10;非特許文献11)。
【0006】
線虫および植物はN−グリカンコアのN−結合GlcNAc残基にα−1,3−フコシル化を共通に持つ。このグリコエピトープは花粉の主要なアレルゲンの1つである(非特許文献12)。第一世界の人々は、今日の衛生基準にあっては、線虫を含む蠕虫に曝されることが減ったというのが花粉および他の種のアレルギーを有する人の数が増えている理由の1つであると推測される(「衛生仮説」)。患者に比較的害の無い寄生性線虫を一時的に感染させることによるこのようなアレルギーの治療における最近の成功はこの仮説を裏付けるが、他の理由も持つ可能性がある(非特許文献13)。いくつかの寄生性蠕虫では、Fuc−α−1,3−GlcNAcエピトープもN−グリカンアンテナに存在し、宿主の免疫抑制に関連づけられている(非特許文献14)。
【0007】
特許文献1は、単糖β−チベロースが少なくとも1つのさらなる糖類と結合して、少なくとも1つのβ−チベロース末端残基を有するオリゴ糖を形成したものを、旋毛虫(Trichinella spiralis)感染を検出する診断目的で、末端β−チベロースを認識する抗体に該オリゴ糖を提示するための担体と結合させて含む、診断試薬の使用を教示している。この筆者らはまた、「β−チベロースが旋毛虫寄生体において産生されるという知見に基づく治療薬」を極めて概略的に企図している。
【0008】
特許文献2および特許文献3(双方ともL.H. Semprevioによる)には、1個の脂質基、1個以上のフコース基、フコース1個当たり3〜5個のガラクトサミン基、フコース1個当たり2〜4個のグルコサミン基、フコース1個当たり1〜2個のガラクトース基、フコース1個当たり1〜2個のグルコース基、フコース1個当たり1〜2個のラムノース基およびフコース1個当たり1〜3個のマンノース基を含む真核生物表面リポグリカンから得られたオリゴ糖に結合された担体基を含む、マンソン住血吸虫(Schistosoma mansoni)、肝蛭(Fasciola hepatica)、条虫類(cestoidean)、原虫病原体および潜在的病原性線虫に対する防護ワクチンが記載されている。線虫に関する概念実証は記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,707,817号
【特許文献2】米国特許出願第2002/0160021 A1号
【特許文献3】米国特許第7,063,848 B2号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Berninsone, Wormbook, 1−22, 2006
【非特許文献2】Schachter, Curr. Opin. Struct. Biol., 14:607, 2004
【非特許文献3】Paschinger et al. (Carbohydrate Res., 343:2041, 2008)
【非特許文献4】Hannemann et al. (Glycobiology, 16:874, 2006)
【非特許文献5】Cash et al., Science, 313:1126, 2006
【非特許文献6】Kohatsu et al., J. Immunol., 177:4718, 2006
【非特許文献7】Goldstein and Winter, Mushroom lectins, in: Comprehensive Glycoscience: From Chemistry to Systems biology, Elsevier Ltd. 2007
【非特許文献8】Nowrousian et al., BMC Microbiology, 5:64, 2005
【非特許文献9】Walti et al., Eukaryot. Cell, 5:732−744, 2006
【非特許文献10】Trigueros et al., BBA, 1621:292−298, 2003
【非特許文献11】Zhao et al., Environ. Toxicol. Pharmacol., 28:265−268, 2009
【非特許文献12】Wicklein et al., Biol. Chem. 385:397, 2004
【非特許文献13】Reddy and Fried, Parasitol. Rev., 104:217, 2009
【非特許文献14】van Die and Cummings, Glycobiology, 20:2, 2010
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、蠕虫感染、特に、線虫感染および/または免疫疾患を治療および/または予防するための新たな手段を提供することである。さらに、本発明の目的は、蠕虫感染、特に、線虫感染および/または免疫疾患を治療および/または予防するための機能的食品および動物飼料を提供することである。さらに、蠕虫、特に、線虫において毒性媒介標的を同定する、および抗蠕虫および抗アレルギー物質を同定する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
驚くことに、グリカン結合ポリペプチドが、薬剤として、好ましくは、蠕虫感染、特に、線虫感染および/または免疫疾患を治療および/または予防するために使用可能であることが見出された。
【0013】
よって、第1の態様において、上記の目的が、グリカン結合ポリペプチドの薬剤としての使用、すなわち、薬剤を製造するためのその使用によって解決される。
【0014】
本明細書においてグリカンとは、単糖構成ブロックの結合、置換、修飾または属性に関してホモまたはヘテロな組成の単糖、オリゴ糖または多糖を指す。本来、グリカンは、結合および複合成分の種類、例えば、ポリペプチドまたは脂質によってN−グリカン、O−グリカンまたはリポグリカンに分類される。
【0015】
本明細書において複合糖質とは、グリカンと、例えば、タンパク質、脂質、他の任意の分子種およびまた細胞から選択される担体分子との酵素的(in vitroまたはin vivo)または化学的に生産された複合体を指す。細胞グリカン複合体は好ましくは細胞表面に提示される。複合糖質の典型的な実施形態は、グリカンと、担体タンパク質、例えば、不活化細菌毒素またはキーホールリンペット・ヘモシアニン(KLH)、それらのリポ多糖(LPS)またはリポオリゴ糖(LOS)の一部として特異的グリカンを展示する遺伝子組み換え大腸菌(Escherichia coli)株またはネズミチフス菌(Salmo-nella typhimurium)株との化学複合体である。
【0016】
従って、本発明によるグリカン結合ポリペプチドは、少なくとも1つのグリカンと特異的に結合する、アミノ酸結合およびペプチド結合に基づく任意の化合物である。この用語は、オリゴペプチド、ならびにポリペプチドおよびオリゴペプチドの化学誘導体、例えば1以上のアミノ酸類似体を含むオリゴ/ポリペプチド、ならびにオリゴ/ポリペプチドとアミノ酸以外に基づく化学部分との複合体を包含する。この用語の範囲は、グリカン結合が本質的にペプチド成分により媒介されなければならないという必要性によって制限される。グリカン結合ポリペプチドの典型的な実施形態は、レクチン、抗体、抗体のフラグメントまたは機能的誘導体および抗体様結合タンパク質である。
【0017】
好ましい実施形態では、本発明による医学的使用のためのグリカン結合ポリペプチドはN−グリカン結合ポリペプチドから選択される。
【0018】
より好ましい実施形態では、医学的使用のためのN−グリカン結合ポリペプチドは、ガラクトシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,4含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,4−L−フコピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,4−L−フコピラノシル−α−1,6−GlcNAc含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、GnGnF6Gal含有および/またはMMF6Gal含有オリゴ糖および複合糖質と結合する。このようなN−グリカン結合ポリペプチドの例はレクチンCGL2であり、以下にさらに詳細に記載する。
【0019】
より好ましい実施形態では、医学的使用のためのN−グリカン結合ポリペプチドは、フコシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、L−フコピラノシル−α−1,3含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、L−フコピラノシル−α−1,3−GlcNAc含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、GnGnF3含有および/またはMMF3含有オリゴ糖および複合糖質と結合する。このようなN−グリカン結合ポリペプチドの例はレクチンRedAであり、以下にさらに詳細に記載する。
【0020】
さらなる好ましい実施形態では、医学的使用のためのグリカン結合ポリペプチドは、O−グリカン結合ポリペプチドから選択される。
【0021】
より好ましい実施形態では、医学的使用のためのO−グリカン結合ポリペプチドは、ガラクトシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,3含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル−O−Ser/Thr化合物と結合する。このようなO−グリカン結合ポリペプチドの例はレクチンXCLおよびTAP1であり、双方とも以下にさらに詳細に記載する。
【0022】
さらなる好ましい実施形態では、医学的使用のためのグリカン結合ポリペプチドは、リポグリカン結合ポリペプチドから選択される。
【0023】
より好ましい実施形態では、医学的使用のためのリポグリカン結合ポリペプチドは、ガラクトシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−α−1,3含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−α−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−α−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル−β−1,4−N−アセチル−D−グルコサミノ−ピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質と結合する。このようなリポグリカン結合ポリペプチドの例はMOA凝集素であり、以下にさらに詳細に記載する。
【0024】
驚くことに、蠕虫グリカン、特に、線虫グリカンは、蠕虫感染および/または免疫疾患を治療および/または予防するため医学的有用性を有するグリカン結合ポリペプチドの標的として特によく適していることが見出され、実験的に実証された。
【0025】
よって、好ましい実施形態では、本発明による医学的使用のためのグリカン結合ポリペプチドは、好ましくは、毛様線虫科(Trichostrongylidae)、好ましくは、捻転胃虫(Haemonchus contortus)、蛇状毛様線虫(Trichostrongylus colubriformis)、テラドルサジア・サークムシンクタ(Teladorsagia circumcincta)、クーペリア・オンコフォラ(Cooperia oncophora)、ネマトディルス・バッタス(Nematodirus battus)、オステルタジア・レプトスピアリアス(Ostertagia leptospiarias)、大口腸線虫(Chabertia ovina)、ブタ腸結節虫(Oesophagostomum dentatum)、ならびに線虫種の旋毛虫(Trichinella spiralis)、鞭虫(Trichuris trichuria)、住血線虫(Angiostrongylus vasorum)、イヌ鉤虫(Ancylostoma caninum)、ズビニ鉤虫(Ancylostoma duodenale)、セイロン鉤虫(Ancylostoma ceylanicum)、アメリカ鉤虫(Necator americanus)、肺虫種(Dictyocaulus spp.)、回虫(Ascaris lumbricoides)、ブタ回虫(Ascaris suum)、バンクロフト糸状虫(Wuchereria bancrofti)、マレー糸状虫(Brugia malayi)、ロア糸状虫(Loa loa)、蟯虫(Enterobius vermicularis)、イヌ糸状虫(Dirofilaria immitis)、回旋糸状虫(Onchocerca volvulus)および糞線虫(Strongyloides stercoralis)から選択される線虫によって産生される少なくとも1つの線虫グリカンと結合することを特徴とする。
【0026】
グリカン結合ポリペプチドの上記定義に関して、医学的使用のためのポリペプチドは、好ましくは、レクチン、抗体、レクチンおよび抗体のフラグメントまたは機能的誘導体、ならびに抗体様結合タンパク質からなる群から選択される。
【0027】
本明細書において「レクチン」とは、炭水化物に対して特異的結合親和性を有する、アミノ酸結合およびペプチド結合に基づく任意の化合物を包含する。一般に、「レクチン」とは、特異的な炭水化物結合を特徴とする、自然界に見られる非抗体ポリペプチドに関する。「レクチン」とは、その機能的フラグメントおよび誘導体を含み、これらの用語は以下に抗体に関して用いられる同じ用語と同様に定義される。
【0028】
さらに、一態様において本発明は、上記で定義される医学的使用のための、グリカンと特異的に結合する抗体、その機能的フラグメントおよび機能的誘導体に関する。これらは、標的グリカン抗原が利用可能となれば、ハイブリドーマ技術(Kohler and Milstein, Nature 256, 495−497, 1975)、抗体ファージディスプレー(Winter et al., Annu. Rev. Immunol. 12, 433−455, 1994)、リボソームディスプレー(Schaffitzel et al., J. Immunol. Methods, 231, 119−135, 1999)および反復コロニーフィルタースクリーニング(Giovannoni et al., Nucleic Acids Res. 29, E27, 2001)によって慣用することができる。抗体を機能的産物へと断片化するための典型的なプロテアーゼは周知である。他の断片化技術は、得られたフラグメントが特異的高親和性と、好ましくはマイクロモル〜ピコモルの範囲の解離定数を有する限り、同様に使用可能である。グリカン結合抗体の例としては、「抗ペルオキシダーゼウサギ抗血清のIgG画分(IgG fraction of anti−Peroxidase’ rabbit antiserum)」(カタログ番号200−4138、Rockland Inc., 米国)および「ウサギで生産された抗ペルオキシダーゼ抗体」(カタログ番号P7899、Sigma−Aldrich Co., 米国)がある。
【0029】
グリカン結合適用に極めて便利な抗体フラグメントは、重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインがポリペプチドリンカーによって連結されている一本鎖Fvフラグメントである。本発明によるグリカンと結合させるための他の抗体フラグメントとしては、Fabフラグメント、Fab2フラグメント、ミニ抗体(小免疫タンパク質(small immune proteins)とも呼ばれる)、タンデムscFv−scFv融合物、ならびに好適なドメインとの(例えば、免疫グロブリンのFc部分との)scFv融合物が挙げられる。ある種の抗体形式に関する総説としては、Holliger P, Hudson PJ. (Nat. Biotechnol., 23:1126−36, 2005)を参照。
【0030】
本発明で用いるための抗体の「機能的誘導体」とは、誘導体がその元の抗原と実質的に同じ結合親和性を有し、好ましくは、マイクロモル、ナノモルまたはピコモルの範囲の解離定数を有する限り、そのアミノ酸配列が、例えば、アミノ酸残基の付加、置換および/または欠失によって化学的もしくは遺伝的に修飾され、かつ/またはその原子および/もしくは機能的化学基の少なくとも1つが、例えば、付加、欠失、再配列、酸化、還元などによって化学的に修飾されている、抗体またはそのフラグメントを含むものとする。
【0031】
好ましい実施形態では、本発明で用いるための抗体、そのフラグメントまたは機能的誘導体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、CDRグラフト抗体、Fv−フラグメント、Fab−フラグメントおよびFab2−フラグメントからなる群から選択されるものである。
【0032】
抗体様結合タンパク質の総説としては、Binz et al. on engineering binding proteins from non−immunoglobulin domains in Nature Biotechnology, 23:1257−1268, 2005を参照。「アプタマー」とは、高親和性を有するポリペプチドと結合する核酸を表す。アプタマーは、SELEX(例えば、Jayasena, Clin. Chem., 45:1628−1650, 1999; Klug and Famulok, M. Mol. Biol. Rep., 20:97−107, 1994;米国特許第5,582,981号参照)などの選択方法によって、種々の一本鎖RNA分子の大きなプールから単離することができる。アプタマーはまた、例えば、L−リボヌクレオチドとして、それらの鏡像形態で合成および選択することもできる(Nolte et al., Nat. Biotechnol., 14:1116−1119, 1996; Klussmann et al., Nat. Biotechnol., 14:1112−1115, 1996)。このようにして単離された形態には、天然に存在するリボヌクレアーゼによっては消化されず、従ってより大きな安定性を持つという利点がある。
【0033】
別の抗体様結合タンパク質および従来の抗体の代替が、いわゆる「タンパク質スキャフォールド」、例えば、リポカリンに基づくアンチカリンである(Beste et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 米国, 96:1898−1903, 1999)。リポカリンの、例えば、レチノール結合タンパク質またはビリン結合タンパク質の天然リガンド結合部位は、例えば、「コンビナトリアルタンパク質デザイン」アプローチを用いることにより、それらが選択されたハプテンと結合するように変化させることができる(Skerra, Biochem. Biophys. Acta, 1482:337−350, 2000)。他のタンパク質スキャフォールドについても、抗体の代わりとなることが知られている(Skerra, J. Mol. Recognit, 13:167−287, 2000)(Hey, Trends in Biotechnology, 23:514−522, 2005; EP 1892248 A1/「fynomers」)。
【0034】
要するに、抗体様結合タンパク質とは、標的、好ましくは、医学的使用のためのグリカンを特異的に認識する、上記のタンパク質由来の抗体代替物、例えばアフィリン、アプタマーおよびフィノマー(fynomers)を含むものとする。
【0035】
さらなる態様は、医学的使用に関して上記で定義されたグリカンと結合するモノクローナル抗体を発現するハイブリドーマ細胞株に関する。
【0036】
驚くことに、多価グリカン結合ポリペプチドには、例えば、蠕虫疾患、好ましくは、線虫疾患および免疫疾患を治療および/または予防するための薬剤において有効成分として用いる場合、対応する一価ポリペプチドよりも蠕虫に対する毒性が強いなどの利点があることが判明した。特定の理論に縛られるものではないが、現在のところ、多価結合は表面露出グリカンの架橋をもたらし、これがエンドサイトーシスによるグリカン結合ポリペプチドの取り込みを誘発し、かつ/またはシグナルカスケードの活性化をもたらすものと推測される。レクチンにより媒介される細胞毒性はレクチンの多価性に依存していることがすでに実証されている(Yang et al., J. Mol. Biol., 387:694−705, 2009)。多価グリカン結合ポリペプチド上の結合部位は、同じグリカンを対象とすることもできるし、違うグリカンを対象とすることもできる。後者のタイプの多価グリカン結合ポリペプチドの例がXCLであり、以下にさらに詳細に記載する。
【0037】
上記のために、本発明の好ましい実施形態は、上記で定義された、好ましくは、少なくとも2つ以上、より好ましくは3つ以上、最も好ましくは4つ以上のグリカンと結合するための結合部分を有する多価グリカン結合ポリペプチドの医学的使用を対象とする。
【0038】
特許請求される医学的有用性は、いくつかのレクチン、特に、真菌レクチンに関して実証された。最も好ましい実施形態では、本発明は、真菌レクチン、好ましくは、ウシグソヒトヨタケ(Coprinopsis cinerea)、キッコウアワタケ(Xerocomus chrysenteron)、シバフタケ(Marasmius oreades)、ヒイロチャワンタケ(Aleuria aurantia)またはソルダリア・マクロスポラ(Sordaria macrospora)由来のレクチン、より好ましくは、CGL1、CGL2、RedA(CCL2)、CCL1、XCL、MOA、AALおよびTAP1から選択されるレクチンからなる群から好ましく選択されるレクチンの医学的使用を対象とする。
【0039】
ウシグソヒトヨタケ由来のガレクチンCGL1およびCGL2(Genbank AAF34731およびAAF34732)は、保存された炭水化物結合ドメインを有するβ−ガラクトシド結合レクチンである(Leffler et al., Glycoconj. J., 19:433, 2004)。動物ガレクチンはおそらく、損傷および病原体に関連する分子パターンの認識によって動物の先天免疫に二重の役割を持っている(Sato et al., Immunol Rev., 230:172, 2009)。真菌ガレクチンは、スエヒロタケ(Schizophyllum commune)とともに、この生物群のモデルとして研究に慣用されている2つの真正担子菌のうちの1つであるウシグソヒトヨタケ(inky cap mushroom)に関して最初に報告された。ウシグソヒトヨタケゲノムは最近配列決定されたが、2つのイソガレクチンCGL1とCGL2、およびガレクチン関連タンパク質CGL3(Genbank ABD64675)をコードしている。これらのタンパク質は子実体形成中に高レベルに誘導される(Boulianne et al., Microbiology, 1841−1853, 2000)。CGL1およびCGL2のmRNAを同時にサイレントにしても、子実体形成に明白な欠陥は現れなかった(Walti et al., Eukaryot Cell, 5:732−744, 2006)。CGL1とCGL2は双方とも、単一の食餌源としてレクチン発現大腸菌細胞を用いた毒性アッセイにおいて、C.エレガンスに対して高い毒性を示すが、CGL3はそうではない(下記実施例、図1および2を参照)。順遺伝学スクリーンを用い、利用可能なC.エレガンスのグリコシル化突然変異体を調べたところ、C.エレガンスにおいてCGL2によって認識される標的グリカンは、N−グリカンコアのAsn結合GlcNAc残基上のGal−β−1,4−Fuc−α−1,6として同定された(図3〜7、下表1)。CGL2はまた、寄生性線虫である捻転胃虫の細菌接触段階にも毒性が強いが、CGL3はそうではない(下記実施例、図12参照)。
【0040】
レクチンRedA(CCL2)(Genbank ACD88750)は、ウシグソヒトヨタケ子実体抽出物から、固定化された、植物糖タンパク質であるセイヨウワサビ・ペルオキシダーゼ(HRP)を用いたアフィニティークロマトグラフィーによって単離された(Walti et al., 未発表)。その後の分析では、それは、子実体形成中に強く誘導され、植物N−グリカンコア上のFuc−α−1,3−GlcNAcと特異的に結合する細胞質タンパク質であることが示された(図11参照)。RedA(CCL2)はC.エレガンス(図1参照)および捻転胃虫(図12参照)に対して毒性がある。利用可能なC.エレガンスのグリコシル化突然変異体を調べたところ、この線虫毒性がN−グリカンコアのN−結合GlcNAc残基上のFuc−α−1,3に依存していることが明らかになった(図8、表1参照)。同じ生物からのイソレクチンCCL1(Genbank HQ267703)も分析したところ、本質的に、グリカン結合および毒性に関してRedAと同じ特性が示された(データは示されていない)。
【0041】
レクチンAAL(Genbank BAA00451)は、子嚢菌ヒイロチャワンタケ由来のβ−プロペラレクチンである。このタンパク質は、各サブユニット上にα−1,2結合かα−1,3結合のいずれかで末端フコースに対する5つの結合部位を含むホモ二量体である(Wimmerova et al, J. Biol. Chem., 278:-27059, 2003)。他の子嚢菌由来のオーソログは、末端フコース残基の結合に関する指向性に若干の違いがある(Matsumura et al, Anal. Biochem., 386:217, 2009)。AAL発現大腸菌の摂食は、C.エレガンス(図1)および捻転胃虫(図12参照)に対して毒性がある。利用可能なC.エレガンスのグリコシル化突然変異体を調べたところ、この線虫毒性がGDP−フコース生合成に依存していることが明らかになった(図10、表1)。
【0042】
凝集素MOA(Genbank AAL47680)は、推定触媒ドメイン(同時に二量体化ドメインでもある)を有する真正担子菌シバフタケに由来するホモ二量体レクチンである(Grahn et al., J. Mol. Biol., 390:457, 2009)。レクチンドメインはリシンB−フォールド(ricinB fold)を採用し、異種移植エピトープGal−α−1,3−Galに対する3つの結合部位を含む。このエピトープは、数種のC.エレガンスグリコスフィンゴ脂質(Griffitts et al, Science, 307:922, 2005のD種)に見られる。レクチンは、レクチンドメインの炭水化物結合特異性が若干異なる他の真菌類にもホモログを有する(Tateno et al, Biochem. J., 382:667, 2004)。MOA発現大腸菌の摂食は、C.エレガンス(図1参照)および捻転胃虫(図12参照)に対して毒性がある。C.エレガンスのグリコシル化突然変異体を調べたところ、この線虫毒性が、線虫毒性バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)結晶性毒素CRY5Bによって認識されるものとは異なる特異的グリコスフィンゴ脂質種の生合成に依存していることが明らかになった(Griffitts et al, Science, 307:922, 2005;図9、表1参照)。Gal−α−1,3−GalNAc特異的抗体は、最近、捻転胃虫からのヒツジの保護に関連付けられた(van Stijn et al, Int. J. Parasitol., 40:215, 2010)。
【0043】
キッコウアワタケ由来のレクチンXCL(Genbank AAL73235)およびソルダリア・マクロスポラ由来のレクチンTAP1(Gen-bank CAH03681)は、多くの真菌およびまた下等植物にオーソログを有する二重特異性レクチンである(Peumans et al., Plant Physiol., 144:637, 2007)。XCLはホモ四量体であり、各サブユニットにGal−β−1,3−GalNAc/GalNAcに対する結合部位1つとGlcNAcに対する結合部位を1つ有する可能性がある(Birck et al., J. Mol. Biol., 344:1409, 2004; Leo-nidas et al., J. Mol. Biol., 368:1145, 2007)。前者のグリコエピトープはC.エレガンスおよびまた哺乳類のO−グリカンで見られる。XCLは殺虫活性を有する(Trigueros et al., BBA, 1621:292, 2003)。XCLおよびTAP1は双方とも、C.エレガンス(図1参照)および捻転胃虫(図12参照)に給餌すると強い線虫毒性を示す。
【0044】
本発明のグリカン結合ポリペプチド、例えばレクチン(図1および12参照)およびグリカン結合抗体(図13参照)は、毒性アッセイにおいて蠕虫、特に、線虫に対して毒性を示した。
【0045】
患者に比較的無害な寄生性線虫を一時的に感染させることによるアレルギー治療の最近の成功は、免疫疾患を治療および/または予防するための線虫成分の有用性を実証した(Reddy and Fried, Parasitol. Rev., 104:217, 2009)。本発明によれば、積極的免疫調節を担う成分となるのは蠕虫、好ましくは、線虫のグリカンである。
【0046】
よって、好ましい実施形態では、上記のグリカン結合ポリペプチドが蠕虫感染、好ましくは、線虫感染だけではなく免疫疾患を治療および/または予防するためにも医学的有用性を有することを特許請求する。
【0047】
より好ましくは、前記蠕虫感染、好ましくは、線虫感染は、毛様線虫科、好ましくは、捻転胃虫、蛇状毛様線虫、テラドルサジア・サークムシンクタ、クーペリア・オンコフォラ、ネマトディルス・バッタス、オステルタジア・レプトスピアリアス、大口腸線虫、ブタ腸結節虫、ならびに線虫種の旋毛虫、鞭虫、住血線虫、イヌ鉤虫、ズビニ鉤虫、セイロン鉤虫、アメリカ鉤虫、肺虫種、回虫、ブタ回虫、バンクロフト糸状虫、マレー糸状虫、ロア糸状虫、蟯虫、イヌ糸状虫、回旋糸状虫および糞線虫から選択される蠕虫によって起こる感染である。
【0048】
また、より好ましくは、本発明によるグリカン結合ポリペプチドの投与によって治療および/または予防される免疫疾患は、アレルギー、好ましくは、植物およびダニに対するアレルギー、および自己免疫疾患、好ましくは、クローン病からなる群から選択される。
【0049】
上述のように、特に、抗体は、特許請求される医学的有用性を有するグリカン結合ポリペプチドとして機能し得る。これらの抗体は、治療を受ける脊椎動物においてin vivoで生成され得る。
【0050】
これに関し、本発明のさらなる態様は、薬剤としての、グリカン、好ましい実施形態では、N−グリカン、好ましくは、ガラクトシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、ガラクト−ピラノシル−β−1,4含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,4−L−フコピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,4−L−フコピラノシル−α−1,6−GlcNAc含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、GnGnF6Gal含有および/またはMMF6Gal含有オリゴ糖および複合糖質からなる群から選択されるN−グリカンの使用に関する。
【0051】
さらに好ましい実施形態では、N−グリカンは、フコシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、L−フコピラノシル−α−1,3含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、L−フコピラノシル−α−1,3−GlcNAc含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、GnGnF3含有および/またはMMF3含有オリゴ糖および複合糖質からなる群から選択される。
【0052】
別の好ましい実施形態では、本発明は、薬剤としての、ガラクトシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,3含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル−O−Ser/Thr化合物からなる群から選択されるO−グリカンの使用に関する。
【0053】
さらなる好ましい実施形態では、本発明は、薬剤としての、ガラクトシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−α−1,3含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−α−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−α−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル−β−1,4−N−アセチル−D−グルコサミノ−ピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質から好ましく選択されるリポグリカンに関する。
【0054】
医学的有用性に関して、上記グリカンは処置された動物またはヒトにおいてグリカン特異的抗体に基づく免疫応答を惹起するように処方されるべきである。例えば、グリカン特異的抗体の免疫原性は免疫アジュバントとの結合またはその同時処方によって達成することができる。あるいは、グリカンは、グリカンを提示する不活化細胞もしくは生細胞内もしくは細胞上、好ましくは、細胞表面上に、またはそのホモジネートの形態で、または免疫増強細胞との混合物中で提示させることができる。本発明を実施するためには、これらのグリカンは、細菌細胞、好ましくは、腸内細菌、より好ましくは、大腸菌またはネズミチフス菌によって提示される、好ましくはその表面に展示されることが好ましい。
【0055】
これらのグリカンはグリカン特異的抗体の免疫原性が生じるように処方されるので、それらは、結果として生じる抗体によっても、上記グリカン結合ポリペプチドに関して特許請求されるものと同じ医学的効果を惹起する。従って、本発明はまた、蠕虫感染、好ましくは、線虫感染または免疫疾患を治療および/または予防するための上記グリカンの使用に関する。
【0056】
本発明のグリカンによる治療または予防に好ましい蠕虫感染、好ましくは、線虫感染は、グリカン結合ポリペプチドに関して上記で挙げたものと同じである。
【0057】
本発明のグリカンによる治療または予防に好ましい免疫疾患は、アレルギー、好ましくは、植物およびダニに対するアレルギー、および自己免疫疾患、好ましくは、クローン病からなる群から選択される。
【0058】
さらなる態様において、本発明は、少なくとも1つのグリカン結合ポリペプチド、好ましくは、N−グリカン、好ましくは、ガラクトシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、ガラクト−ピラノシル−β−1,4含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,4−L−フコピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,4−L−フコピラノシル−α−1,6−GlcNAc含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、GnGnF6Gal含有および/またはMMF6Gal含有オリゴ糖および複合糖質からなる群から選択されるN−グリカンと結合するものを含む医薬組成物に関する。
【0059】
さらなる好ましい実施形態では、本発明は、少なくとも1つのN−グリカン結合ポリペプチド、好ましくは、フコシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、L−フコピラノシル−α−1,3含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、L−フコピラノシル−α−1,3−GlcNAc含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、GnGnF3含有および/またはMMF3含有オリゴ糖および複合糖質と結合するものを含む医薬組成物に関する。
【0060】
好ましい実施形態では、本発明は、少なくとも1つのO−グリカン結合ポリペプチド、好ましくは、ガラクトシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,3含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル−O−Ser/Thr化合物と結合するものを含む医薬組成物に関する。
【0061】
別の好ましい実施形態では、本発明は、ガラクトシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−α−1,3含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−α−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−α−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル−β−1,4−N−アセチル−D−グルコサミノ−ピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質から好ましく選択される少なくとも1つのリポグリカンを含む医薬組成物に関する。
【0062】
さらに、グリカン結合ポリペプチドは、毛様線虫科、好ましくは、捻転胃虫、蛇状毛様線虫、テラドルサジア・サークムシンクタ、クーペリア・オンコフォラ、ネマトディルス・バッタス、オステルタジア・レプトスピアリアス、大口腸線虫、ブタ腸結節虫、ならびに線虫種の旋毛虫、鞭虫、住血線虫、イヌ鉤虫、ズビニ鉤虫、セイロン鉤虫、アメリカ鉤虫、肺虫種、回虫、ブタ回虫、バンクロフト糸状虫、マレー糸状虫、ロア糸状虫、蟯虫、イヌ糸状虫、回旋糸状虫および糞線虫から選択される線虫によって産生される少なくとも1つの線虫グリカンと結合することが好ましい。
【0063】
より好ましくは、本医薬組成物のグリカン結合ポリペプチドは、レクチン、抗体、抗体のフラグメントまたは機能的誘導体および抗体様結合タンパク質からなる群から選択される。
【0064】
より好ましくは、本医薬組成物のグリカン結合ポリペプチドは多価であり、従って、少なくとも2つ以上、好ましくは3つ以上、より好ましくは4つ以上のグリカンと結合する。
【0065】
最も好ましくは、本医薬組成物のグリカン結合ポリペプチドは、真菌レクチン、好ましくは、ウシグソヒトヨタケ、キッコウアワタケ、シバフタケ、ヒイロチャワンタケまたはソルダリア・マクロスポラ由来のレクチン、より好ましくは、レクチンCGL1、CGL2、RedA(CCL2)、CCL1、XCL、MOA、AALまたはTAP1の群から好ましく選択されるレクチンである。
【0066】
医薬組成物の場合、グリカン結合ポリペプチド(polypepides)が細菌細胞、好ましくは、腸内細菌、より好ましくは、ヒト腸内細菌細胞、最も好ましくは、大腸菌またはネズミチフス菌の表面に展示されることが好ましい。
【0067】
本発明のさらなる態様は、ガラクトシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、ガラクト−ピラノシル−β−1,4含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,4−L−フコピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,4−L−フコピラノシル−α−1,6−GlcNAc含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、GnGnF6Gal含有および/またはMMF6Gal含有オリゴ糖および複合糖質からなるN−グリカン群から好ましく選択されるN−グリカンを含む医薬組成物に関する。
【0068】
好ましい実施形態では、N−グリカンは、フコシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、L−フコピラノシル−α−1,3含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、L−フコピラノシル−α−1,3−GlcNAc含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、GnGnF3含有および/またはMMF3含有オリゴ糖および複合糖質から選択される。
【0069】
さらなる好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物は、ガラクトシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,3含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル−O−Ser/Thr化合物からなるO−グリカン群から好ましく選択されるO−グリカンを含む。
【0070】
さらなる好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物は、ガラクトシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−α−1,3含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−α−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−α−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル−β−1,4−N−アセチル−D−グルコサミノ−ピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質から好ましく選択されるリポグリカンを含む。
【0071】
好ましくは、該ポリペプチド結合または脂質結合グリカンは、毛様線虫科、好ましくは、捻転胃虫、蛇状毛様線虫、テラドルサジア・サークムシンクタ、クーペリア・オンコフォラ、ネマトディルス・バッタス、オステルタジア・レプトスピアリアス、大口腸線虫、ブタ腸結節虫、ならびに線虫種の旋毛虫、鞭虫、住血線虫、イヌ鉤虫、ズビニ鉤虫、セイロン鉤虫、アメリカ鉤虫、肺虫種、回虫、ブタ回虫、バンクロフト糸状虫、マレー糸状虫、ロア糸状虫、蟯虫、イヌ糸状虫、回旋糸状虫および糞線虫から選択される線虫によって産生されるものである。
【0072】
本発明の医薬組成物では、該ポリペプチド結合または脂質結合グリカンは、好ましくは、細菌細胞、好ましくは、腸内細菌、より好ましくは、ヒトまたは家畜腸内細菌細胞、最も好ましくは、大腸菌またはネズミチフス菌の表面に展示される。
【0073】
本発明のさらなる態様は、単離されたグリカン、複合糖質および/またはグリカン結合ポリペプチド、好ましくは、N−グリカン、O−グリカンおよび/またはリポグリカン、好ましくは、N−グリカン、O−グリカンおよび/またはリポグリカンを含む複合糖質、好ましくは、N−グリカン、O−グリカンおよび/またはリポグリカン結合ポリペプチド、より好ましくは、上記の治療的および/または予防的医学的効果、特に、抗蠕虫効果および免疫刺激または抑制効果を提供するための上記のグリカン、複合糖質およびグリカン結合ポリペプチドを含む食品または動物飼料に関する。好ましくは、本発明は、上記で定義されたような単離されたグリカン、複合糖質および/またはグリカン結合ポリペプチドと生理学上許容される賦形剤および/または栄養素、好ましくは、腸内細菌、より好ましくは、ヒトまたは家畜腸内細菌細胞、最も好ましくは、大腸菌またはネズミチフス菌とを含む、ヒトまたは動物、好ましくは、家畜用の食品または飼料に関する。例えば、このような食品または飼料は、ヒトまたは家畜のそれぞれにおいて蠕虫の定着を大幅に減らし、かつ/または蠕虫関連抗原に対する免疫系を刺激もしくは抑制する。
【0074】
さらなる態様において、本発明は、グリカン結合ポリペプチドにより媒介される毒性に感受性のある蠕虫を同定する方法に関する。
【0075】
好ましい実施形態では、本発明は、グリカン結合ポリペプチドと結合した際に毒性を媒介する少なくとも1つのグリカンを含む蠕虫、好ましくは、線虫を同定する方法であって、
(a)少なくとも1つのグリカン結合ポリペプチド、好ましくは、真菌、細菌および/または植物グリカン結合タンパク質(いわゆるレクチン)、および任意選択の蠕虫食餌細胞、好ましくは、腸内細菌、より好ましくは、大腸菌、好ましくは、該少なくとも1つのグリカン結合ポリペプチドを含む蠕虫食餌細胞を準備すること;
(b)(a)の少なくとも1つのグリカン結合ポリペプチドおよび任意選択の蠕虫食餌細胞と、対象とする蠕虫細胞または蠕虫、好ましくは、線虫細胞または線虫とを、(i)グリカン結合ポリペプチドが蠕虫細胞に結合することを可能とし、かつ/または(ii)蠕虫細胞または蠕虫に任意選択の食餌細胞を摂食させることを可能とする条件下で接触させること;および
(c)死滅した蠕虫細胞または蠕虫を同定すること
を含む方法を対象とする。
【0076】
ステップa)の少なくとも1つのグリカン結合ポリペプチドを、任意選択の蠕虫食餌細胞の一部として、好ましくは、腸内細菌食餌細胞の一部として、より好ましくは、大腸菌、最も好ましくは、蠕虫食餌細胞、例えば、細胞質において活性型でグリカン結合ポリペプチドを発現する大腸菌の一部として提供することが最も好ましい。
【0077】
ステップ(a)において、少なくとも1つのグリカン結合ポリペプチドは、特異的炭水化物結合を示す、天然起源または人工起源の任意のポリペプチド、例えば、天然に存在するレクチンまたはその機能的フラグメントおよび/または誘導体、抗体および/またはその機能的フラグメントもしくは誘導体、抗体様結合タンパク質であり得る。好ましくは、2以上の、好ましくは、多数のグリカン結合ポリペプチドの混合物が炭水化物の結合の機会を増やすために提供される。
【0078】
本明細書および特許請求の範囲を通じて用いられる「特異的結合」とは、多くのまたはほとんどの炭水化物および/または非炭水化物化合物と非特異的に結合する化合物を排除するものとする。
【0079】
この任意選択の蠕虫食餌細胞の存在は、ステップ(b)において、蠕虫による単離されたグリカン結合ポリペプチドの摂取を助け、従って、グリカン結合ポリペプチドと蠕虫細胞との結合を助ける。当然のことながら、グリカン結合ポリペプチドがすでに任意選択の食餌細胞、好ましくは、その細胞質の一部をなしている場合には、ポリペプチドの摂取は極めて効率的である。蠕虫食餌細胞の好ましいタイプは、用いる蠕虫のタイプによって異なる。より好ましくは、それは腸内細菌、最も好ましくは、大腸菌である。蠕虫に食餌細胞を摂食させることを可能にする条件は、用いる蠕虫のタイプによって異なる。蠕虫が食餌細胞を摂食する限り、当業者に公知の従来のいずれの設定を行ってもよい。
【0080】
死滅した蠕虫細胞または蠕虫を同定すれば、それはそのまま、グリカン結合ポリペプチドと蠕虫細胞との結合が死に至らせたことを示す。言い換えれば、蠕虫細胞または蠕虫の死滅により、死滅した蠕虫が、それがグリカン結合ポリペプチドと結合した際に毒性を媒介する少なくとも1つのグリカンを含むことが確認される。(i)毒性を媒介する少なくとも1つのグリカンを有する蠕虫と、(ii)少なくとも1つの対応する毒性グリカン結合ポリペプチドからなる、同定された系はさらに、アッセイ前に毒性グリカン結合ポリペプチドおよび/またはその炭水化物特異性が未知である場合には、
(d)任意選択により、(a)の少なくとも1つの毒性グリカン結合ポリペプチドを同定するため、および/または
(e)任意選択により、少なくとも1つの毒性グリカン結合ポリペプチドと結合した際に毒性を媒介する少なくとも1つのグリカンを同定するため
に使用することができる。
【0081】
(i)毒性を媒介する少なくとも1つのグリカンを有する蠕虫と、(ii)少なくとも1つの対応する毒性グリカン結合ポリペプチドからなる系が、例えば上記の方法によってひと度同定されれば、この系をグリカンにより媒介される毒性に関与する蠕虫遺伝子を同定するために使用することができる。
【0082】
従って、好ましい実施形態では、本発明は、グリカン結合タンパク質と結合した際にグリカンにより媒介される毒性に関与する蠕虫遺伝子標的、好ましくは、線虫遺伝子標的、好ましくは、蠕虫グリカンおよび複合糖質の生合成に関与する酵素をコードする遺伝子標的を同定するさらなる方法であって、
(a)グリカン特異性を有するグリカン結合ポリペプチドと結合した際に毒性を媒介する特異的グリカンを産生する、ランダム突然変異および/または標的突然変異を有する蠕虫細胞または蠕虫、および任意選択の野生型蠕虫細胞または蠕虫を準備すること;
(b)(a)の蠕虫細胞または蠕虫と、該グリカン特異性を有する少なくとも1つのグリカン結合ポリペプチドとを、任意選択により、蠕虫食餌細胞、好ましくは、腸内細菌、より好ましくは、大腸菌、好ましくは、該少なくとも1つのグリカン結合ポリペプチドを含む蠕虫食餌細胞の存在下で接触させること;および
(c)(b)におけるグリカン結合ポリペプチドの接触から生き残る(a)の蠕虫細胞または蠕虫における突然変異遺伝子を同定すること
を含む方法に関する。
【0083】
ステップb)の少なくとも1つのグリカン結合ポリペプチドを、任意選択の蠕虫食餌細胞の一部として、好ましくは、腸内細菌食餌細胞の一部として、より好ましくは、大腸菌、最も好ましくは、蠕虫食餌細胞、例えば、細胞質において活性型でグリカン結合ポリペプチドを発現する大腸菌の一部として提供することが最も好ましい。
【0084】
蠕虫細胞または蠕虫の突然変異体は、従来技術または以下の実施例に記載されている通りにランダム突然変異誘発または標的突然変異誘発によって作出することができる。これらの突然変異のいくつかはグリカンにより媒介される毒性に関与する遺伝子に影響を及ぼすという合理的な機会がある。任意選択により、比較により変異型蠕虫における変化をより良く同定するために参照蠕虫細胞または蠕虫もまた提供することができる。ステップ(b)において、ランダム突然変異および/または標的突然変異を有する蠕虫細胞/蠕虫および任意選択の野生型蠕虫細胞/蠕虫を、それらの蠕虫のグリカン特異性を有する少なくとも1つのグリカン結合ポリペプチドと接触させる。任意選択により、グリカン結合ポリペプチドの摂取を助ける、従って、グリカン結合ポリペプチドと蠕虫細胞との結合を助けるために、食餌細胞、好ましくは、腸内細菌、より好ましくは、大腸菌が存在する。グリカン結合ポリペプチドによるグリカン媒介性の毒性に関与する蠕虫遺伝子の突然変異は変異型蠕虫の生存をもたらし得るが、残りの変異型蠕虫または野生型参照蠕虫はグリカン結合ポリペプチドの毒性作用のために死滅する。単離された生存蠕虫と野生型ゲノムを遺伝的に比較する手段によって、細胞の生存をもたらす突然変異遺伝子を同定することができる。
【0085】
グリカンにより媒介される毒性に関与する遺伝子は、抗蠕虫化合物の潜在的標的として極めて適切である。従って、野生型蠕虫におけるその構造、その発現の調節およびその産物の機能を決定することは重要である。
【0086】
同定された遺伝子産物の機能から、毒性を媒介するグリカンを同定することができる。より好ましい実施形態では、本発明の毒性媒介遺伝子標的を同定する上記の方法は、毒性関連グリカンを同定するステップ(d)、好ましくは、
(d.i)ステップ(c)の突然変異遺伝子と、特徴的な遺伝子、好ましくは、グリカン生合成に関与する酵素をコードする遺伝子、より好ましくは、蠕虫のグリカン生合成に関与する酵素をコードする遺伝子とを比較するステップ;
(d.ii)(c)で同定された突然変異体のN−グライコーム、O−グライコームまたはリポグライコームと、野生型蠕虫のグライコームとを、好ましくは、個々の複合糖質の生化学的単離とクロマトグラフィーおよび質量分析によるそれらの分析によって比較するステップ;
(d.iii)ステップ(c)の遺伝子を異種系、例えば、昆虫細胞、好ましくは、SF9細胞において発現させ、その遺伝子産物の生化学的活性をin vitroにおいてアッセイするステップ
の1以上を包含するステップ(d)をさらに含む。
【0087】
毒性媒介グリカンがひと度同定されれば、本発明により抗蠕虫化合物の同定が可能となる。これに関し、本発明はまた、抗蠕虫物質、好ましくは、抗線虫物質を同定する方法であって、
(a)グリカンにより媒介される毒性に関与することが知られているグリカンを準備すること;
(b)(a)のグリカンと対象物質とを接触させること;
(c)(a)のグリカンと結合する対象物質を潜在的抗蠕虫物質、好ましくは、潜在的抗線虫物質として同定すること
を含む方法を対象とする。
【0088】
ステップ(a)のグリカンは、好ましくは、細胞、好ましくは、細胞表面の一部を形成する。組換え生産および任意選択の表面ディスプレーは、多くの炭水化物構造に対する慣例の選択肢である。グリカンディスプレーに適した細胞としては、細菌、好ましくは、腸内細菌、より好ましくは、大腸菌またはネズミチフス菌、または酵母、好ましくは、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)が含まれる。
【0089】
グリカンが細胞の一部をなし、グリカンが内因的に産生される場合、対象とする物質の取り込みを可能とするために増孔剤および/または食餌細胞を加えることが好ましい。
【0090】
最も好ましい実施形態では、本方法は、グリカンにより媒介される毒性に関与することが知られている単離されたグリカンを用いる。例えば、グリカンは多数の個々のウェルを有するスクリーニングプレートに結合させることができる。対象物質によるグリカンの結合は、例えばELISAアッセイなどの従来の手段によって判定することができる。対象物質の結合は、グリカン特異性を有する抗体またはレクチンとの結合を遮断することができ、このレクチンまたは抗体は従来のマーカー物質を含むことができる。抗体またはレクチンの結合の欠如または結合の減少は、対象物質による干渉を示す。
【0091】
要するに、本発明は、(i)グリカン結合ポリペプチドによる結合の際に毒性を媒介する少なくとも1つのグリカンを有する蠕虫を同定することを可能とする方法、(ii)毒性を媒介するグリカンの同定をもたらす、従前に同定された蠕虫/グリカン系を用いて、グリカンにより媒介される毒性に関与する蠕虫遺伝子標的を同定する方法、および(iii)抗蠕虫物質、好ましくは、抗線虫物質を同定するスクリーニング方法を提供する。
【0092】
さらなる態様において、本発明は、蠕虫感染、好ましくは線虫感染および/または免疫疾患を治療および/または予防する方法であって、本発明のグリカン、グリカン結合ポリペプチド、医薬組成物、食品または飼料をそれを必要とするヒトまたは動物に生理学上有効な量で投与することを含む方法に関する。
【0093】
治療的および/または予防的使用に関して、本発明の医薬組成物は、従来の任意の投与形で従来の任意の方法で投与することができる。投与経路としては、限定されるものではないが、静脈内、筋肉内、皮下、鼻腔内、滑液嚢内、注入、舌下、経皮、経口(例えば、錠剤、経管栄養)、局所または吸入が挙げられる。好ましい投与様式は、経口、静脈内および鼻腔内であり、経口および鼻腔内が最も好ましい。
【0094】
本発明のグリカンおよびグリカン結合ポリペプチドは単独で、または医学上有効な化合物の安定性および/または免疫原性を増強し、それらを含有する医薬組成物の投与を容易にし、溶解または分散の増大をもたらし、波及性の活性を増大させ、例えば、医学上有効な化合物を産生する細胞などの細胞が含まれる場合には、他の有効成分を含む補助療法などを提供するアジュバントと組み合わせて投与してもよい。
【0095】
これまでのところ、寄生性蠕虫の組換え消化性プロテアーゼによる動物の免疫誘導は、糞便中の卵総数および動物の虫体数の減少については部分的な成功を見た(例えば、Reszka et al, Exp. Parasitol., 117:208, 2007; Loukas et al, PLoS Medicine, 2:e295, 2005参照)。しかしながら、これらの治験は数種の天然消化管プロテアーゼによる免疫誘導によって達成される保護の程度に達しなかった(Pearson et al, Biol. Chem., 391:901, 2010に総説)。この違いは一つには、これらの組換えタンパク質における線虫特異的グリコシル化の欠如によるものであると推測される。
【0096】
寄生性蠕虫の組換えまたは天然消化性プロテアーゼ、好ましくは、動物寄生性線虫の消化管プロテアーゼ、より好ましくは、捻転胃虫のアミノペプチダーゼH11またはイヌ鉤虫のアスパラギン酸プロテアーゼAPR−1は、上述の、または本発明の方法によって同定されたグリカンまたはグリカン結合ポリペプチドと組み合わせることができる。好ましくは、消化性プロテアーゼ、より好ましくは、寄生性蠕虫の組換え消化性プロテアーゼを、例えば、異種発現系、好ましくは、線虫グリコシルトランスフェラーゼを過剰発現する昆虫細胞、より好ましくは、C.エレガンス由来のGALT−1またはFUT−1を過剰発現するSF9細胞(SF9細胞におけるGALT−1の機能的発現は従前に実証されている:PCT50086)を使用することにより、N−グリカン、より好ましくは、MMF6GalまたはMMF3と組み合わせる。前記消化性プロテアーゼおよびグリカンエピトープおよび/またはグリカン結合ポリペプチドを組み合わせたこのような組成物は、有効な薬剤、好ましくは、ワクチン、特に、寄生性蠕虫に対するものを提供する。
【0097】
よって、好ましい実施形態では、本発明はまた、(i)グリカン結合ポリペプチドおよび/またはグリカンを、組換えまたは天然消化性プロテアーゼ、好ましくは、寄生性蠕虫の組換え消化性プロテアーゼ(その機能的フラグメントおよび機能的誘導体、すなわち、元のプロテアーゼ活性の少なくとも一部をなお含むフラグメントおよび誘導体を含む)とともに含む、組成物、好ましくは、医薬組成物、食品および/または動物飼料を対象とし、ならびに(ii)好ましくは蠕虫感染を治療および/または予防するための、これらの組成物、食品および飼料の対応する使用を対象とする。
【0098】
いくつかの市販の糖タンパク質は、天然の状態で、グリカンにより媒介される線虫毒性に関与するとして本発明によって同定されたグリカンのいくつかを展示する。同時にこれらの糖タンパク質は免疫原性が高いことが知られている。これらのタンパク質には、N−グリカンがそのコア上にGal−β−1,4−Fuc−α−1,6エピトープを(Wuhrer et al, Biochem. J., 378:625, 2004)、そして、そのアンテナ上にFuc−α−1,3−GlcNAcエピトープを有する(Geyer et al, J. Biol. Chem., 280:40731, 2005)キーホールリンペット・ヘモシアニン(KLH)、ならびにN−グリカンがそのコア上にFuc−α−1,3−GlcNAcエピトープを有する(Wuhrer et al, BBA, 1723:229, 2005)セイヨウワサビ・ペルオキシダーゼ(HRP)が含まれる。天然の状態で、グリカンにより媒介される線虫毒性に関与するとして本明細書によって同定されたグリカンのいくつかもまた展示する、さらなる市販の糖タンパク質としては、ブロメライン、タチナタマメ・マンノシダーゼ、ハリエニシダ(Ulex europaeus)凝集素(UEA)、ミツバチ・ホスホリパーゼA2ならびにアメリカカブトガニ(Limulus polyphemus)などの軟体動物のヘモシアニンがある。上記のものは全て、本発明の種々の態様および実施形態に関して有用性を有するN−グリカンを少なくとも含む。特に、これらの糖タンパク質は、寄生性蠕虫に対する免疫誘導のため、より好ましくは、寄生性線虫に対する家畜の免疫誘導のため、最も好ましくは、捻転胃虫に対するヒツジの免疫誘導のための医学的用途を有する。
【0099】
よって、好ましい実施形態では、本発明は、(i)好ましくは蠕虫感染、好ましくは、寄生性蠕虫感染を治療および/または予防するための薬剤を製造するための、KLH、HRP、ブロメライン、タチナタマメ・マンノシダーゼ、ハリエニシダ凝集素(UEA)、ミツバチ・ホスホリパーゼA2およびアメリカカブトガニなどの軟体動物のヘモシアニン、これらの機能的フラグメントまたは機能的誘導体、すなわち、上記で同定されたグリコエピトープの少なくとも1つをなお含むフラグメントおよび誘導体の使用、ならびに(ii)これらを含む対応する組成物、好ましくは、医薬組成物、食品および/または動物飼料に関する。
【0100】
本明細書に記載のグリカンおよびグリカン結合ポリペプチドの医薬投与形は、当業者に公知の薬学上許容される担体および/またはアジュバントを含む。これらの担体およびアジュバントとしては、例えば、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、バッファー物質、水、塩、電解質、セルロースに基づく物質、ゼラチン、水、ワセリン(pretrolatum)、動物油もしくは植物油、鉱油もしくは合成油、生理食塩水、デキストロースまたは他の糖類、およびエチレングリコール、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなどのグリコール化合物、抗酸化剤、乳酸塩などが挙げられる。好ましい投与形としては、錠剤、カプセル剤、溶液、懸濁液、エマルション、再構成可能な粉末および経皮パッチが挙げられる。投与形の製造方法は周知であり、例えば、H. C. Ansel and N. G. Popovish, Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, 5th ed., Lea and Febiger (1990)および特に、Pastoret et al., Veterinary Vaccinology, Elsevier March 1999を参照。用量レベルおよび要件は当技術分野でよく認識されており、当業者ならば、特定の患者に適した利用可能な方法および技術から選択することができる。当業者が認識しているように、特定の因子に応じて、より低用量または高用量が必要な場合もある。例えば、具体的な用量および治療計画は、患者(ヒトまたは動物)の健康状態、患者の障害またはそれに対する素因の重篤度および経過、ならびに治療に当たる医師または獣医の判断などの因子によって異なる。
【0101】
以下、本発明を具体的図面および実験的実施形態を参照しつつ説明するが、これらの図面および実施形態は、添付の特許請求の範囲に示されている本発明の範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】C.エレガンスに対する種々の真菌レクチンの毒性を示す棒グラフである。C.エレガンス野生型(N2)およびpmk−1変異型の線虫を、試験手順に記載のように、レクチン発現細菌上でL1期からL4期への発達に関して分析した。y座標は、X座標のレクチンを発現する細菌の存在下でL4期に達した線虫の割合である。分析した真菌レクチンには、ウシグソヒトヨタケ・ガレクチンCGL1(Genbank AAF34731)およびCGL2(Genbank AAF34732)、ガレクチン関連レクチンCGL3(Genbank ABD64675)およびレクチンRedA(CCL2)(Genbank ACD88750)、キッコウアワタケ・レクチンXCL(Genbank AAL73235)およびソルダリア・マクロスポラ由来のそのオーソログTAP1(Genbank CAH03681)、ヒイロチャワンタケ・レクチンAAL(Genbank BAA00451)およびシバフタケ凝集素MOA(Genbank AAL47680)を含んだ。
【図2A】C.エレガンスに対するウシグソヒトヨタケ・ガレクチンCGL2の用量依存的および炭水化物結合依存的毒性を示す。全ての実験で、野生型CGL2または炭水化物結合欠損変異型CGL2-(W72G)のいずれかを発現する大腸菌BL21(DE3)細胞、または対照形質転換体をC.エレガンス野生株N2に与えた。 Aは、CGL2によるC.エレガンス発達の阻害を示す。C.エレガンスL1期幼虫を上記の細菌叢に載せるか(パネル左)、または液体培養にて漸増濃度の精製CGL2と等量のエンプティーベクター含有BL21(DE3)とともに与え(パネル右)、およびそれぞれ72時間および96時間までにL4期まで発達した割合を評価した。柱はそれぞれ6回および12回の独立した実験の平均値を表す。エラーバーは標準偏差を示す。
【図2B】C.エレガンスに対するウシグソヒトヨタケ・ガレクチンCGL2の用量依存的および炭水化物結合依存的毒性を示す。全ての実験で、野生型CGL2または炭水化物結合欠損変異型CGL2-(W72G)のいずれかを発現する大腸菌BL21(DE3)細胞、または対照形質転換体をC.エレガンス野生株N2に与えた。Bは、レクチンCGL2によるC.エレガンスの繁殖の阻害を示す。C.エレガンス成虫(雌雄同体)に上記の細胞を与え、雌雄同体1個体当たりの後代総数を評価した。各データ点について、雌雄同体8〜10個体の同腹子の平均をとった。標準偏差を示す。野生型CGL2上の後代で、孵化後96時間以内に成虫まで発達したものは無かった。
【図2C】C.エレガンスに対するウシグソヒトヨタケ・ガレクチンCGL2の用量依存的および炭水化物結合依存的毒性を示す。全ての実験で、野生型CGL2または炭水化物結合欠損変異型CGL2-(W72G)のいずれかを発現する大腸菌BL21(DE3)細胞、または対照形質転換体をC.エレガンス野生株N2に与えた。Cは、CGL2がC.エレガンスの腸に損傷を与えることを示す。C.エレガンスL4期幼虫にCGL2発現細胞(パネルd〜f)および対照大腸菌BL21(DE3)細胞(パネルa〜c)を与え、24時間後に実体顕微鏡(パネルa、d)、および微分干渉(DIC)顕微鏡(パネルb、e)、および透過型電子顕微鏡(TEM)(パネルc、f)で観察した。パネルcおよびfのサイズバーは200nmである。
【図3A】CGL2耐性C.エレガンス突然変異体に関する順遺伝学スクリーンの結果と用いた手順のフローチャートを示す。 Aは、p38 MAPK経路に欠陥があるpmk−1、sek−1およびnsy−1変異線虫のCGL2感受性試験のグラフである。示された遺伝子型のL4期幼虫10個体をCGL2発現大腸菌BL21(DE3)細胞叢に載せた。これらのプレートを、示された時点で線虫が生存しているかどうか確認した。データ点は独立した10回の試験の平均値を表す。エラーバーは標準偏差を示す。
【図3B】CGL2耐性C.エレガンス突然変異体に関する順遺伝学スクリーンの結果と用いた手順のフローチャートを示す。 Bは、CGL2高感受性pmk−1(km25)バックグラウンドに、Mos1トランスポゾンアレイoxEx229およびMos1トランスポゼースアレイfrEx113を有する線虫を作出するための、Mos1挿入突然変異誘発の作業の流れを示す。
【図3C】Cは、単離および構築されたC.エレガンス突然変異体の、CGL2により媒介される毒性に対する耐性を示す。示された遺伝子型のC.エレガンス突然変異体を、上記で概略を示したように、L1期からL4期への発達に関して分析した。遺伝子付記(op)およびヒストグラムの上の括弧は、Mos1スクリーンにおいて単離された突然変異体を示す。他の突然変異体は交雑によって構築した。
【図3D】Dは、CGL2耐性突然変異体におけるMos1要素の挿入部位を示す。Mos1要素の上の矢印は、突然変異体ライゼートのiPCR産物を配列決定するために用いたMos1プライマーoJL115の配向を示す。太字はC.エレガンスのゲノム配列を示し、その後にMos1配列が続く。遺伝子モデルはWormBase Release WS202から採用したものである。bre−1(op509)突然変異体は、翻訳開始コドンの184bp上流に位置する、C53B4.7a1の5’−UTRにMos1挿入を有する。ger−1(op499)突然変異体は、翻訳開始コドンの50bp下流に位置する、R01H2.5の第1エキソンにMos1挿入を有する。gly−13(op507)突然変異体は、B0416.6の第1エキソンに隣接する保存されたスプライシング供与部位にMos1挿入を有する。fut−8(op498)突然変異体は、C10F3.6の第8エキソンにMos1挿入を有する。M03F8.4(op497)突然変異体は、M03F8.4の第2エキソンにMos1挿入を有する。
【図4】種々のC.エレガンスグリコシル化突然変異体のCGL2感受性を示すグラフである。X座標に示された遺伝子型のC.エレガンス突然変異体を、下記の試験手順に記載されるように、CGL2発現大腸菌上でL1期からL4期への発達に関して分析した。種々のC.エレガンス遺伝子によりコードされているグリコシル化プロセスについては下記の表1を参照。
【図5】C.エレガンスにおいてCGL2により認識されるグリコエピトープのin situ局在を示す4枚の写真である。C.エレガンスCGL2感受性pmk−1(km25)およびCGL2耐性pmk−1(km25);fut−8(op498)虫にTAMRAで標識したCGL2を与え、微分干渉(DIC)顕微鏡および赤色蛍光(RF)顕微鏡で観察した。
【図6A】CGL2耐性C.エレガンス二重突然変異体pmk−1;fut−8(op498)(上の出力)およびpmk−1(km25);M03F8.4(op497)(中央の出力)および同質遺伝子型CGL2高感受性単一突然変異株pmk−1(km25)(下の出力)におけるN−グライコームの比較分析を示す。 AおよびBは、放出された蛍光標識N−グリカンのHPLC実験の蛍光曲線を示す。酵素的放出(ここでは、PNGアーゼF耐性であるが、PNGアーゼA感受性のグライコーム画分を示す)および蛍光標識の際には、N−グリカンを順相HPLCによって分離し、質量分析によって分析した(A)。
【図6B】CGL2耐性C.エレガンス二重突然変異体pmk−1;fut−8(op498)(上の出力)およびpmk−1(km25);M03F8.4(op497)(中央の出力)および同質遺伝子型CGL2高感受性単一突然変異株pmk−1(km25)(下の出力)におけるN−グライコームの比較分析を示す。放出された蛍光標識N−グリカンのHPLC実験の蛍光曲線を示す。保持時間の類似した画分(例えば、点線の四角)はさらに逆相HPLCによって分離し、得られた純粋なグリカンを質量分析(MS)により、また、選択された画分についてはMS/MSにより分析した(B)。
【図6C】Cは、選択された単離ピークの構造的特性決定の結果を示す。pmk−1株には見られるが、2つの二重突然変異株には見られないピークAを、β−1,4−ガラクトシダーゼ(β−1,4−Galアーゼ)およびα−フコシダーゼ(α−Fucアーゼ)で処理した。反応生成物を逆相HPLCとMSおよびMS/MSによって分析した。一番下のHPLC出力は、グリカン標品をグルコース単位(GU)で表す。単糖は記号:Man(濃いグレーの丸)、Gal(薄いグレーの丸)、GlcNAc(四角)、Fuc(三角)、Hex(白丸)で表す。
【図7】等温滴定熱量測定法によって測定された、ウシグソヒトヨタケ・ガレクチンCGL2と化学合成Gal−β−1,4−Fuc−α−1,6−GlcNAc−β−O−C5H10−NH2とのin vitro結合のグラフを示す。未加工データを上のパネルに示す。Microcalソフトウエアを用いてこのデータを変換すると滴定曲線(下のパネル)が得られ、この曲線から解離定数(Kd=86.9±3.2×10−6M)および結合のエントロピー(TΔS=−3.31kcal/mol)を算出した。
【図8】種々のC.エレガンスグリコシル化突然変異体のRedA(CCL2)感受性を示す棒グラフである。示された遺伝子型のC.エレガンス突然変異体を、下記の試験手順に記載されるように、RedA発現大腸菌上でL1期からL4期への発達に関して分析した。まだ分析されていない突然変異体はn.d.として示す。種々のC.エレガンス遺伝子によりコードされているグリコシル化プロセスについては下記の表1を参照。
【図9】種々のC.エレガンスグリコシル化突然変異体のMOA感受性試験を示す棒グラフである。示された遺伝子型のC.エレガンス突然変異体を、下記の試験手順に記載されるように、MOA発現大腸菌上でL1期からL4期への発達に関して分析した。まだ分析されていない突然変異体はn.d.として示す。種々のC.エレガンス遺伝子によりコードされているグリコシル化プロセスについては下記の表1を参照。
【図10】種々のC.エレガンスグリコシル化突然変異体のAAL感受性を示す棒グラフである。示された遺伝子型のC.エレガンス突然変異体を、下記の試験手順に記載されるように、AAL発現大腸菌上でL1期からL4期への発達に関して分析した。種々のC.エレガンス遺伝子によりコードされているグリコシル化プロセスについては下記の表1を参照。
【図11】新たに特性決定された真菌レクチンウシグソヒトヨタケRedA(CCL2)およびS.マクロスポラTAP1ならびに従前に特性決定されているキッコウアワタケ・レクチンXCLの炭水化物結合特異性を示す2つのグラフに関する。組換えタンパク質を蛍光標識し、米国糖鎖コンソーシアム(Consortium of Functional Glycomics)(CFG)によって、グリカンアレイとの結合に関して分析した。
【図12】捻転胃虫に対する種々の真菌レクチンの毒性を示す棒グラフである。線虫を、試験手順に記載されているように、レクチン発現細菌上でL1期からL3期への発達に関して分析した。y座標は、X座標のレクチンを発現する細菌の存在下でL3期に達した線虫の割合である。分析した真菌レクチンには、ウシグソヒトヨタケ・ガレクチンCGL2(Genbank AAF34732)、ガレクチン関連レクチンCGL3(Genbank ABD64675)、レクチンRedA(CCL2)(Genbank ACD88750)、キッコウアワタケ・レクチンXCL(Genbank AAL73235)およびソルダリア・マクロスポラ由来のそのオーソログTAP1(Genbank CAH03681)、ヒイロチャワンタケ・レクチンAAL(Genbank BAA00451)およびシバフタケ凝集素MOA(Genbank AAL47680)を含んだ。
【図13】ウサギ抗ペルオキシダーゼ抗血清の市販のIgG画分(カタログ番号200−4138、Rockland Inc.,米国;抗HRP)および精製RedA(CCL2)の、捻転胃虫幼虫のL1期からL3期への発達に対する影響を示す棒グラフである。この抗体およびレクチンは、セイヨウワサビ・ペルオキシダーゼ(HRP)ならびに線虫糖タンパク質のN−グリカンに存在する同じエピトープFuc−α−1,3−GlcNAcと結合し、2つの異なる濃度で試験した。1mg/ml濃度の非グリカン結合ウサギIgGを対照として用いた。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0103】
以下の実施例では、(i)グリカン結合ポリペプチドと結合した際に毒性を媒介する少なくとも1つのグリカンを有する蠕虫を同定することを可能とする本発明の方法、(ii)毒性を媒介するグリカンの同定をもたらす、従前に同定された蠕虫/グリカン系を用いて、グリカンにより媒介される毒性に関与する蠕虫遺伝子標的を同定する方法、および(iii)抗蠕虫物質、好ましくは、抗線虫物質を同定するスクリーニング方法を記載する。
【0104】
さらに、これらの実施例では、毒性を媒介するグリコエピトープ/グリカン/-複合糖質が同定されたモデル線虫C.エレガンスに対して毒性がある真菌レクチンの同定を記載する。これらの医学的に有用なレクチンは、
(i)C.エレガンスN−グリカンコアのAsn結合GlcNAc上のGal−β−1,6−Fuc−α−1,6と結合するウシグソヒトヨタケ由来のCGL2(図1〜7参照)、
(ii)C.エレガンスN−グリカンコアのAsn結合GlcNAc上のFuc−α−1,3と結合するウシグソヒトヨタケ由来のRedA(CCL2)(図8および11)、
(iii)線虫グリコスフィンゴ脂質上のGal−α−1,3−GalNAc−β−x,yと結合するシバフタケ由来のMOA(図9参照)、
(iv)おそらく線虫O−グリカン上のGal−β−1,3−GalNAcと結合する、それぞれキッコウアワタケおよびソルダリア・マクロスポラ由来のXCLおよびTAP1(グリカンアレイデータ[図11]参照)、
(v)まだ同定されていない線虫複合糖質上の末端Fucと結合するヒイロチャワンタケ由来のAAL(図10参照)
である。
【0105】
一般的試験手順
株および培養条件
大腸菌株DH5αおよびBL21(DE3)をそれぞれプラスミドのクローニングおよび増幅と、タンパク質の細菌発現に用いた。大腸菌をSambrook, J., and Russell, D. W. (2001) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3 ed., Cold Spring Harbor Laboratoryに記載されている標準培地で培養した。カエノラブディティス・エレガンス株は線虫増殖培地(NGM)で維持し、Stiernagle, T. (2006) WormBook, 1−11に記載されているように大腸菌株OP50を与えた。Bristol単離株N2を野生株として用いた。pmk−1(km25)、bre−1(ye4)、bre−2(ye31)、bre−3(ye26)、bre−4(ye27)、bre−5(ye17)、fut−1(ok892)、fut−2(gk360)、fut−2(ok509)、fut−3(gk103)、fut−4(gk111)、fut−5(ok242)、fut−6(ok475)、fut−8(ok2558)、gly−2(qa703)、gly−12(is47)、dpy−6(e14);gly−13(ok712)、gly−14(id48)、gly−20(ok826)株はミネソタ大学(米国)のGenetics Center(CGC)から入手した。2つの染色体外構築物frEx113[hsp::Mosトランスポゼース;Pcol12::DsRed]およびoxEx229[Mos1;Pmyo−2::gfp]を有する株は、Jonathan Ewbankから厚意により提供されたものである。Mos1により媒介される突然変異誘発のために、本発明者らは、pmk−1(km25);frEx113株およびpmk−1(km25);oxEx229株を作出した。Mos1により媒介される突然変異誘発およびその後の他殖から得られた株は、pmk−1(km25);M03F8.4(op497)、pmk−1(km25);fut−8(op498)、pmk−1(km25);ger−1(op499)、pmk−1(km25);gly−13(op507)およびpmk−1(km25);bre−1(op509)であった。
【0106】
クローニングおよび発現
真菌レクチンの細菌発現のためのプラスミドは、cDNAまたは利用可能なプラスミドから個々のオープンリーディングフレームを増幅させ、得られたフラグメントを、導入された制限部位を用いてpET24a(Invitrogen)に連結することによって構築した。液体培養におけるCGL2およびCGL2(W72G)の発現は、CGL3に関してWalti, M. A. et al. (2008) J. Mol. Biol. 379, 146−159に記載されている通りに行った。C.エレガンスのバイオアッセイについては、個々のBL21(DE3)形質転換体の一晩培養物300μlを、1mMイソプロピル−β−D−チオガラクトシド(IPTG)および50μg/mlカナマイシンを含有するNGMプレートに拡げ、23℃で一晩インキュベートした後に線虫を加えた。レクチンの発現は、導入されたBL21(DE3)形質転換体の全細胞抽出物を、クーマシーブルー染色SDSポリアクリルアミドゲルで分離すること、および利用できるのであれば特異的抗血清を用いて免疫ブロットを行うことによって確認した(データは示されていない)。
【0107】
CGL2の精製および標識
細菌細胞ペレットを、1mMフッ化フェニルメチルスルホニルを含有する氷冷リン酸緩衝生理食塩水(PBS)[30mMリン酸ナトリウムpH7.3、150mM NaCl]に再懸濁させ、フレンチプレスを用いて破砕した。細胞残渣を12000gで15分および27000gで30分の2回の連続する遠心分離工程で除去した。上清をラクトシル−セファロースとともに4℃で1時間インキュベートし、CGL2を最終的に、室温で、200mMラクトースを含有するPBSで溶出した。PBSで平衡化したセファロース6 10/300GL(GE Healthcare)でのサイズ排除クロマトグラフィー後に、該タンパク質を含有する画分をプールし、分子量カットオフが10kDaのAmicon Ultra−4遠心分離フィルターデバイス(Millipore)を用いて濃縮した。タンパク質濃度は、280nmでの吸光度を測定し、光路長1cmで280nmでの吸光度1単位に対して1.25mg/ml−1の関係を仮定することにより計算した。精製CGL2とテトラメチルローダミン(TAMRA)(Molecular Probes)の結合はWalser, P. J. et al. (2005) Fungal Genet Biol 42, 293−305に記載されている通りに行った。
【0108】
C.エレガンス光学顕微鏡観察
一般的な線虫の取扱いでは、Leica MZ12.5実体顕微鏡を用いた。ダブルアレイを持つ線虫(pmk−1(km25);oxEx229;frEx113)を選択するためには、適当なフィルターセット(DsRedフィルターとGFPフィルター)を備えたLeica MZ16FA実体顕微鏡を用いた。Nikon Coolpix 990デジタルカメラで写真を撮影した。
【0109】
DICおよび蛍光顕微鏡観察では、線虫を、M9(Sambrook & Russel, 2001)中の2%アガロースパッド上に置き、レバミゾール(3〜5mM)(Sigma)で麻酔し、カバーガラスをかけ、DIC(Nomarski)光学系を備えたLeica DM−RAまたはZeiss Axiovert 200顕微鏡、およびTAMRAの検出のためのDsRedフィルターセットを備えた標準的な落射蛍光で観察した。浜松ORCA−ERカメラで写真を撮影した。画像はOpenLabソフトウエアを用いて偽着色した。
【0110】
CGL2−リガンドのin situ局在では、L4期のC.エレガンスを、S培地(Sulston & Hodgkin, 1988)、エンプティーKanR−ベクターを担持するBL21(DE3)大腸菌、カナマイシンおよびクロラムフェニコール各30μg/ml、ならびにTAMRA標識CGL2 100μg/mlを含むウェルに入れた。24時間後、線虫を標準的なOP50プレートに移し、その2時間後にTAMRA蛍光をスクリーニングした。
【0111】
C.エレガンスの電子顕微鏡観察
電子顕微鏡観察では、線虫を記載されている2段階の化学的固定(Hall, 1995)によって処理した。サンプルの固定および薄層切片化は、the Center for Microscopy and Image Analysis (チューリッヒ大学,スイス連邦)にてGarry Barmettlerにより、厚意によって行われた。これらのサンプルを、サイドマウントデジタルカメラ(Gatan)を備えたPhilips CM100透過型電子顕微鏡を用いて観察した。
【0112】
実施例1−C.エレガンス毒性アッセイ
プレートアッセイ
C.エレガンスに対する野生型および変異型CGL2の毒性を調べるためにプレートアッセイを考案した。NGMプレートに、上記のように、野生型CGL2かまたは変異型CGL2(W72G)のいずれかを発現する大腸菌BL21(DE3)を播種した。対照として、プレートにベクターpET24aを含む大腸菌BL21(DE3)を播種した。これらのプレートを23℃で一晩インキュベートし、種々の毒性アッセイのために、同調したC.エレガンス集団を載せた(Barrows, B. D. et al. (2006) Methods Enzymol 417, 340−358参照)。
【0113】
表現型分析
C.エレガンスに対するCGL2の毒性作用の表現型分析のため、L4期の線虫をプレートに載せ、23℃で24時間後に観察した。
【0114】
発達アッセイ
C.エレガンス発達に対するCGL2の作用に関する定量的データは、示された遺伝子型の、新たに孵化したL1期幼虫50〜100個体をプレートに置くことによって得た。72時間後、L4期に達した線虫の割合を求めた。
【0115】
同腹子数アッセイ
C.エレガンスの繁殖に対するCGL2の作用は、個々のL4期野生型雌雄同体をプレートに採取することによってアッセイした。その後、その母虫が子孫を産むのを止めるか、または死に至るまで、毎日、母虫を新しいプレートに移した。翌日に前日のプレートの後代を計数した。種々のプレートからの後代数を足して最終的な同腹子数とした。
【0116】
実施例2−CGL2最小阻害濃度(MIC)の決定
MICを、50%を超える個体が液体培養中で96時間以内に第4期幼虫(L4)に達することができない毒素濃度と定義した。L1期C.エレガンス野生型線虫20個体を、S培地(Sulston & Hodgkin (1988) Methods. in The nematode Caenorhabditis (Wood, W. B. ed.), Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York. pp 587−606参照)、KanR遺伝子を有するエンプティーベクターpET24aを含む食餌源としての大腸菌BL21、カナマイシンおよびクロラムフェニコール(各30μg/ml)、ならびに示された濃度の精製CGL2タンパク質を含むウェルに入れた。96時間後、線虫をNGMプレートに移し、L4期に達した線虫の数を求めた。
【0117】
実施例3−高感受性試験
示された遺伝子型のL4期C.エレガンス10個体をCGL2プレートに移した。24時間おきに、これらのプレートの生存個体を確認した。線虫は、ワームピックで触っても反応しなかった場合に死滅と見なした。
【0118】
実施例4−Mos1挿入突然変異誘発を用いたCGL2耐性C.エレガンス突然変異体のスクリーニング
Mos1挿入突然変異誘発は基本的にBoulin and Bessereau(2007) Nat. Protoc. 2, 1276−1287に公開されている通りに行った。染色体外アレイfrEx113(熱ショックプロモーターの制御下にMos1トランスポゼースを有する)およびoxEx229(基質Mos1トランスポゾンの多重コピーを有する)を用いた。この2つの染色体外構築物をCGL2高感受性pmk−1(km25)線虫と交雑させ、スクリーニングのための2つの始原株pmk−1(km25);frEx113およびpmk−1(km25);oEx229を作出した。二重アレイを有する個体を作出するために、pmk−1(km25);oxEx229雄とL4 pmk−1(km25);frEx113雌雄同体とを交雑させた。咽頭におけるGFP(Pmyo−2::gfp、oxEx229に含まれる)と体腔細胞におけるDsRed(Pcol12::DsRed、frEx113に含まれる)を同時に発現することで認識される二重アレイを含む後代をおよそ6世代、繁殖させた後、それらに熱ショックを施した。1回の突然変異誘発につき数百の二重トランスジェニック個体に33℃1時間、20℃1時間、および33℃1時間の熱ショックを施し、その後、20℃で一晩回復させた。P0を90mm NGMプレートに分配し、熱ショック12〜40時間後に卵を回収した。その後、P0を取り出した。3日後、妊娠個体F1をM9バッファーで洗浄してプレート成分を除去し、Stiernagle, T. (2006) WormBook, 1−11に記載されているように、F2卵を分離した。同調したF2 L1個体の集団を、CGL2発現大腸菌BL21(DE3)を含む30枚のプレートに分配した。3〜7日後、これらのプレートを、成虫に達したCGL2耐性個体に関してスクリーニングした。冗長なMos1挿入を避けるため、耐性個体を含む各プレートは個別処理とした。候補線虫をCGL2発現大腸菌上で繁殖させ、耐性表現型を確認した。耐性が確認されれば、染色体外Mos1担持アレイを欠損した突然変異体と2〜6回他殖させた後、Mos1要素の存在をアッセイし、挿入部位の位置決定を試みた。Mos1要素をまだ含んでいた突然変異体について、本発明者らは、Boulin and Bessereau (2007) Nat. Protoc. 2, 1276−1287に公開されているように、線虫ライゼートに対する逆PCRによって挿入部位を決定した。
【0119】
合計およそ500,000のハプロイドゲノムがスクリーニングされた。転位効率は50%と評価された。合計14個体のCGL2耐性線虫が単離された。そのうち、pmk−1(km25);M03F8.4(op497)、pmk−1(km25);fut−8(op498)、ger−1(op499);pmk−1(km25)、pmk−1(km25);gly−13(op507)およびpmk−1(km25);bre−1(op509)の5個体のみがMos1トランスポゾン挿入を含んでいた。
【0120】
実施例5−C.エレガンスのN−グリカンの単離
C.エレガンス株pmk−1(km25)、pmk−1(km25);M03F8.4(op497)およびpmk−1(km25);fut−8(op498)を、室温で5日間、大腸菌OP50とともに液体培養で増殖させ、その後、30%(w/v)スクロース勾配遠心分離(Stiernagle, T. (2006) WormBook, 1−11参照)によって細菌および残渣から分離した。N−グリカンの調製は、Poltl et al. (2007) Febs. J. 274, 714−726に従前に記載されているように、コアα1,3−フコシル化グリカンを他のコアフコシル化グリカンから分離するために、ペプチド−N−グリカナーゼ(PNGアーゼ)F、次いで、PNGアーゼAを用い、部分的に精製されたグリコペプチドからグリカンを酵素的に遊離させることによって行った。要するに、およそ3gの線虫(湿重)をボイルした後に摩砕した。この抽出物を5%(v/v)のギ酸を含むように調整し、3mgのペプシン(Sigma)とともに37℃で一晩インキュベートした。15,000gで15分遠心分離した後、上清を、2%酢酸で平衡化した15ml Dowex AG WX2に適用した。グリコペプチドを酢酸アンモニウム(0.6M、pH6)で溶出させた。オルシノール陽性画分をプールし、一晩凍結乾燥した。次に、セファデックスG25カラムに適用することでこれらのサンプルを脱塩し、1%酢酸で溶出させた。オルシノール陽性画分を再びプールし、凍結乾燥した。これらのサンプルを250μlの水に溶かした。95℃で5分間熱処理をして残留しているペプシンを不活化した後、サンプルをプールし、その後、250μlの炭酸アンモニウムバッファーpH8および3UのPNGアーゼF(Roche)を加え、37℃で一晩インキュベートした。次に、これらのサンプルを400μlの10%酢酸で酸性化し、5ml Dowex AG WX2に適用した。保持されなかった遊離グリカンは凍結乾燥し、次の蛍光標識のために乾燥させ、一方、保持されたオルシノール陽性画分は、酢酸アンモニウム(0.6M、pH6)で溶出させ、上記のように脱塩し、酢酸アンモニウムバッファー(50mM、pH5)に溶かし、37℃で一晩、PNGアーゼA(0.6mU)で処理した。再び、これらのサンプルを400μlの10%酢酸で酸性化し、5ml Dowex AG WX2に適用した。保持されなかった遊離グリカンを凍結乾燥し、また、次の蛍光標識のために乾燥させた。
【0121】
実施例6−C.エレガンスN−グリカンの標識および構造分析
N−グリカンの蛍光標識は、2−アミノ−ピリジン(PA)を用い、従前に記載されている通りに行った。PNGアーゼAまたはFのいずれかによって遊離され、ピリジルアミノ化されたグリカンの完全なN−グライコームを、室温にて、島津HPLCシステム(Class−VPソフトウエア(V6.13SP2)を用い、パーソナルコンピューターによって制御される、SCL−10Aコントローラー、2基のLC10APポンプおよびRF−10AXL蛍光検出器からなる)および蛍光検出(310または320nmで励起、380または400nmで発光を検出)を用いる2D−HPLCによって分画した。N−グリカンは、順相HPLC(Tosoh TSKゲルアミド−80、4.6×250mm、5μm;流速1ml/分、溶出:71.3%MeCN無勾配で5分、71.3%から61.8%MeCNの勾配で10分、61.8%MeCN無勾配で25分、61.8%から54.2%MeCNで15分、ギ酸アンモニウム(10mM、pH7)をバッファーとして使用)にて最初に分画された。これらの画分を凍結乾燥し、逆相HPLC(Hypersil ODS C−18;4×250mm、5μm;流速1.5ml/分、30分にわたって0〜30%MeOHの勾配、ギ酸アンモニウム(0.1M、pH4)をバッファーとして使用)にてさらに分画した。HPLCクロマトグラムを、オープンソースプログラムPLOT(Wesemann and Thijsseによるバージョン0.997)を用いて可視化した。各画分に対し、Bruker Ultraflex TOF/TOFを、マトリックスとしての2,5−ジヒドロキシ安息香酸とともに用いて、モノアイソトピックMALDI−TOF MSを行った。一般に、フコース含有N−グリカンを含む全ての画分に対してMS/MSを行い、それらの組成を明らかにした。ペプチド標品混合物(Bruker)を外部較正に用いた。MSデータは、BrukerソフトウエアおよびmMass V2.4ソフトウエアパッケージを用いて分析した(Strohalm, M. et al., M. (2008) Rapid Commun Mass Spectrom 22, 905−908参照)。
【0122】
選択された単離N−グリカンに関して、ニホンコウジカビ(Aspergillus oryzae)β1,4−ガラクトシダーゼ(27mU、50mMクエン酸ナトリウム、pH4.5)(Gutternigg, M. et al. (2007) J. Biol. Chem. 282, 2785−27840参照)で37℃にて2日間処理することにより末端β−ガラクトシドの存在を調べるか、またはウシ腎臓α−フコシダーゼ(Sigma、15mU、50mM酢酸アンモニウム、pH5)の使用によって末端α−フコシドの存在を調べた。次に、消化産物に関して、変化した構造的特徴をRP−HPLC(上記参照)およびMALDI−TOF MSによって分析した。
【0123】
実施例7−等温滴定熱量測定(ITC)法
試験は、精製CGL2(TBS中300μM)を用い、25℃でVP−ITC等温滴定熱量測定計(Microcal,マサチューセッツ州,米国)にて行った。Gal−β−1,4−Fuc−α−1,6−GlcNAc−β−O−C5H10−NH2をTBS中に、1H−NMRによる純度評価値に基づいて補正した1.6mMの濃度で溶かした(およそ50〜60%)。このリガンドを、タンパク質溶液を含有するセル中へ、2μl 1回の注入の後、6μl 48回の注入によって滴定した。注入は全て、270rpmで攪拌しながら、3分間隔で行った。試験データを、Microcalによって供給されているMCS−ORIGINソフトウエアを用い、理論的滴定曲線に当てはめた。1タンパク質モノマーにつき1リガンド結合部位のモデルを用い、結合部位の数(N=0.977±0.004)、会合定数(Ka=1.15±0.044×104M−1)およびエンタルピー変化(ΔH=−8.85±0.1kcal/mol)を得た。
【0124】
実施例8−捻転胃虫毒性アッセイ
上述の寄生性線虫に対する毒性を、96ウェル細胞培養プレートを用いた液体アッセイで評価した。捻転胃虫の卵を感染したヒツジの糞便から分離し、カナマイシン(50μg/ml)およびアムホテリシンB(2.5μg/ml)を含む水−寒天プレート上で孵化させた。およそ30固体のL1幼虫を回収し、各ウェルの総容量150μlの0.1×Earls溶液中に移した。食餌源として、レクチン発現大腸菌BL21(DE3)細胞かまたは大腸菌OP50のいずれか(OD600=1)を、種々の濃度の精製抗体またはレクチンと組み合わせて加えた。プレートを暗所、28℃でインキュベートし、L3期へ発達した幼虫のパーセンテージを7日後に求めた。
表1:C.エレガンスグリコシル化突然変異体の比較。コードされている酵素の機能はwww.wormbase.org.から引用した。
【0125】
【表1】
【0126】
本発明を好ましい実施形態および実施例を強調して記載してきたが、当業者には、好ましい実施形態の変形が使用可能であること、本発明が本明細書に具体的に記載されたもの以外の方法でも実施可能であることが意図されることが自明であろう。さらに、以上の実施例は単に例示のために含められているものであり、いずれの点からも本発明の範囲を限定するものとみなされるべきでない。よって、本発明は添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨および範囲内に包含されるあらゆる改変を含む。
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤としての、特に、蠕虫感染または免疫疾患を治療および/または予防するための、グリカン結合ポリペプチドおよびグリカンの使用に関する。さらに、本発明は、単離されたグリカンおよび/またはグリカン結合ポリペプチドを含む、対応する医薬組成物、食品および動物飼料を対象とする。さらに、本発明は、抗蠕虫炭水化物結合ポリペプチドを同定するため、蠕虫のグリカンおよびグリカンにより媒介される毒性に関与する遺伝子標的を同定するため、グリカンにより媒介される毒性に感受性のある蠕虫を同定するため、ならびに抗蠕虫および抗アレルギー物質を同定するための方法を教示する。
【背景技術】
【0002】
寄生虫または蠕虫は、それらの宿主内で生き、生きた細胞を餌とする真核生物寄生体である。それらは条虫、吸虫および線虫に分類される。蠕虫により媒介される典型的疾患は、回虫症、メジナ虫症、象皮症、鉤虫症、リンパ管フィラリア症、糸状虫症、住血吸虫症および鞭虫症である。「回虫」または「線虫」は、最も多様な偽体腔動物門であり、あらゆる動物のうち最も多様なものの1つである。線虫種は識別が難しいが、80,000を超えるものが記載されており、そのうち15,000を超えるものが寄生性である。回虫種の総数は500,000を超えるものと推計されている。線虫は淡水、海水および陸上環境に遍在している。それらのほとんどは細菌および真菌の捕食者である。寄生形態には、植物、動物およびまたヒトの病原体も含む。
【0003】
カエノラブディティス・エレガンス(Caenorhabditis elegans)(C.エレガンス)はモデル線虫であり、無体節、虫状、左右対称であり、角皮、4つの主要な表皮帯(epidermal cords)および体液で満たされた偽体腔を有する。野生では、C.エレガンスは、植物質の腐食時に増える細菌を餌とする。生物の糖生物学は盛んに研究されている(非特許文献1;非特許文献2に総説)。特に、C.エレガンスのN−グリコシル化パターンは十分に特性決定され、最近、非特許文献3に総説された。線虫(および軟体動物)のN−グリカンの特徴的な修飾として、非特許文献4は、N−グリカンコアのN−結合GlcNAc残基におけるD−ガラクトピラノシル−β−1,4−L−フコピラノシル−α−1,6−D−GlcNAc(Gal−Fuc)エピトープを単離し、構造的に特徴付けた。
【0004】
捕食者、寄生体および病原体に対するレクチンに基づく防護系は自然界で広く用いられている。レクチンは、標的生物に対するそれらの毒性によって直接的エフェクターとして、または他のエフェクター分子もしくはエフェクター細胞のために標的生物を標識することによってオプソニンとして防護機能を果たす。前者の機構は草食動物に対する植物レクチンに一般的であり、後者の機構は病原体に対する動物レクチンに一般的である。最近、細菌および真菌に対する直接的エフェクターとして働く動物レクチンのいくつかの例が報告された(非特許文献5;非特許文献6)。
【0005】
真菌は、特異性および折りたたみの異なる多数のレクチンを含む(非特許文献7)。これらのレクチンの多くは生殖器官である子実体で特異的に産生され、分泌のための従来のシグナル配列を欠く。これらの子実体レクチンの生理的な役割はまだ明らかでない。個々の遺伝子またはmRNAが不活性である場合には子実体表現型が無いことは、発生におけるこれらのレクチンの内因的役割に反論を投げかけている(非特許文献8;非特許文献9)。いくつかの生物(昆虫、線虫、アメーバー)および真菌を餌とする近縁種に対するこれら種々のレクチンの毒性は、子実体レクチンが捕食者および寄生体からの真菌の防護に役割を持つ可能性があることを示唆している(非特許文献10;非特許文献11)。
【0006】
線虫および植物はN−グリカンコアのN−結合GlcNAc残基にα−1,3−フコシル化を共通に持つ。このグリコエピトープは花粉の主要なアレルゲンの1つである(非特許文献12)。第一世界の人々は、今日の衛生基準にあっては、線虫を含む蠕虫に曝されることが減ったというのが花粉および他の種のアレルギーを有する人の数が増えている理由の1つであると推測される(「衛生仮説」)。患者に比較的害の無い寄生性線虫を一時的に感染させることによるこのようなアレルギーの治療における最近の成功はこの仮説を裏付けるが、他の理由も持つ可能性がある(非特許文献13)。いくつかの寄生性蠕虫では、Fuc−α−1,3−GlcNAcエピトープもN−グリカンアンテナに存在し、宿主の免疫抑制に関連づけられている(非特許文献14)。
【0007】
特許文献1は、単糖β−チベロースが少なくとも1つのさらなる糖類と結合して、少なくとも1つのβ−チベロース末端残基を有するオリゴ糖を形成したものを、旋毛虫(Trichinella spiralis)感染を検出する診断目的で、末端β−チベロースを認識する抗体に該オリゴ糖を提示するための担体と結合させて含む、診断試薬の使用を教示している。この筆者らはまた、「β−チベロースが旋毛虫寄生体において産生されるという知見に基づく治療薬」を極めて概略的に企図している。
【0008】
特許文献2および特許文献3(双方ともL.H. Semprevioによる)には、1個の脂質基、1個以上のフコース基、フコース1個当たり3〜5個のガラクトサミン基、フコース1個当たり2〜4個のグルコサミン基、フコース1個当たり1〜2個のガラクトース基、フコース1個当たり1〜2個のグルコース基、フコース1個当たり1〜2個のラムノース基およびフコース1個当たり1〜3個のマンノース基を含む真核生物表面リポグリカンから得られたオリゴ糖に結合された担体基を含む、マンソン住血吸虫(Schistosoma mansoni)、肝蛭(Fasciola hepatica)、条虫類(cestoidean)、原虫病原体および潜在的病原性線虫に対する防護ワクチンが記載されている。線虫に関する概念実証は記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,707,817号
【特許文献2】米国特許出願第2002/0160021 A1号
【特許文献3】米国特許第7,063,848 B2号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Berninsone, Wormbook, 1−22, 2006
【非特許文献2】Schachter, Curr. Opin. Struct. Biol., 14:607, 2004
【非特許文献3】Paschinger et al. (Carbohydrate Res., 343:2041, 2008)
【非特許文献4】Hannemann et al. (Glycobiology, 16:874, 2006)
【非特許文献5】Cash et al., Science, 313:1126, 2006
【非特許文献6】Kohatsu et al., J. Immunol., 177:4718, 2006
【非特許文献7】Goldstein and Winter, Mushroom lectins, in: Comprehensive Glycoscience: From Chemistry to Systems biology, Elsevier Ltd. 2007
【非特許文献8】Nowrousian et al., BMC Microbiology, 5:64, 2005
【非特許文献9】Walti et al., Eukaryot. Cell, 5:732−744, 2006
【非特許文献10】Trigueros et al., BBA, 1621:292−298, 2003
【非特許文献11】Zhao et al., Environ. Toxicol. Pharmacol., 28:265−268, 2009
【非特許文献12】Wicklein et al., Biol. Chem. 385:397, 2004
【非特許文献13】Reddy and Fried, Parasitol. Rev., 104:217, 2009
【非特許文献14】van Die and Cummings, Glycobiology, 20:2, 2010
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、蠕虫感染、特に、線虫感染および/または免疫疾患を治療および/または予防するための新たな手段を提供することである。さらに、本発明の目的は、蠕虫感染、特に、線虫感染および/または免疫疾患を治療および/または予防するための機能的食品および動物飼料を提供することである。さらに、蠕虫、特に、線虫において毒性媒介標的を同定する、および抗蠕虫および抗アレルギー物質を同定する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
驚くことに、グリカン結合ポリペプチドが、薬剤として、好ましくは、蠕虫感染、特に、線虫感染および/または免疫疾患を治療および/または予防するために使用可能であることが見出された。
【0013】
よって、第1の態様において、上記の目的が、グリカン結合ポリペプチドの薬剤としての使用、すなわち、薬剤を製造するためのその使用によって解決される。
【0014】
本明細書においてグリカンとは、単糖構成ブロックの結合、置換、修飾または属性に関してホモまたはヘテロな組成の単糖、オリゴ糖または多糖を指す。本来、グリカンは、結合および複合成分の種類、例えば、ポリペプチドまたは脂質によってN−グリカン、O−グリカンまたはリポグリカンに分類される。
【0015】
本明細書において複合糖質とは、グリカンと、例えば、タンパク質、脂質、他の任意の分子種およびまた細胞から選択される担体分子との酵素的(in vitroまたはin vivo)または化学的に生産された複合体を指す。細胞グリカン複合体は好ましくは細胞表面に提示される。複合糖質の典型的な実施形態は、グリカンと、担体タンパク質、例えば、不活化細菌毒素またはキーホールリンペット・ヘモシアニン(KLH)、それらのリポ多糖(LPS)またはリポオリゴ糖(LOS)の一部として特異的グリカンを展示する遺伝子組み換え大腸菌(Escherichia coli)株またはネズミチフス菌(Salmo-nella typhimurium)株との化学複合体である。
【0016】
従って、本発明によるグリカン結合ポリペプチドは、少なくとも1つのグリカンと特異的に結合する、アミノ酸結合およびペプチド結合に基づく任意の化合物である。この用語は、オリゴペプチド、ならびにポリペプチドおよびオリゴペプチドの化学誘導体、例えば1以上のアミノ酸類似体を含むオリゴ/ポリペプチド、ならびにオリゴ/ポリペプチドとアミノ酸以外に基づく化学部分との複合体を包含する。この用語の範囲は、グリカン結合が本質的にペプチド成分により媒介されなければならないという必要性によって制限される。グリカン結合ポリペプチドの典型的な実施形態は、レクチン、抗体、抗体のフラグメントまたは機能的誘導体および抗体様結合タンパク質である。
【0017】
好ましい実施形態では、本発明による医学的使用のためのグリカン結合ポリペプチドはN−グリカン結合ポリペプチドから選択される。
【0018】
より好ましい実施形態では、医学的使用のためのN−グリカン結合ポリペプチドは、ガラクトシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,4含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,4−L−フコピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,4−L−フコピラノシル−α−1,6−GlcNAc含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、GnGnF6Gal含有および/またはMMF6Gal含有オリゴ糖および複合糖質と結合する。このようなN−グリカン結合ポリペプチドの例はレクチンCGL2であり、以下にさらに詳細に記載する。
【0019】
より好ましい実施形態では、医学的使用のためのN−グリカン結合ポリペプチドは、フコシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、L−フコピラノシル−α−1,3含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、L−フコピラノシル−α−1,3−GlcNAc含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、GnGnF3含有および/またはMMF3含有オリゴ糖および複合糖質と結合する。このようなN−グリカン結合ポリペプチドの例はレクチンRedAであり、以下にさらに詳細に記載する。
【0020】
さらなる好ましい実施形態では、医学的使用のためのグリカン結合ポリペプチドは、O−グリカン結合ポリペプチドから選択される。
【0021】
より好ましい実施形態では、医学的使用のためのO−グリカン結合ポリペプチドは、ガラクトシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,3含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル−O−Ser/Thr化合物と結合する。このようなO−グリカン結合ポリペプチドの例はレクチンXCLおよびTAP1であり、双方とも以下にさらに詳細に記載する。
【0022】
さらなる好ましい実施形態では、医学的使用のためのグリカン結合ポリペプチドは、リポグリカン結合ポリペプチドから選択される。
【0023】
より好ましい実施形態では、医学的使用のためのリポグリカン結合ポリペプチドは、ガラクトシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−α−1,3含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−α−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−α−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル−β−1,4−N−アセチル−D−グルコサミノ−ピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質と結合する。このようなリポグリカン結合ポリペプチドの例はMOA凝集素であり、以下にさらに詳細に記載する。
【0024】
驚くことに、蠕虫グリカン、特に、線虫グリカンは、蠕虫感染および/または免疫疾患を治療および/または予防するため医学的有用性を有するグリカン結合ポリペプチドの標的として特によく適していることが見出され、実験的に実証された。
【0025】
よって、好ましい実施形態では、本発明による医学的使用のためのグリカン結合ポリペプチドは、好ましくは、毛様線虫科(Trichostrongylidae)、好ましくは、捻転胃虫(Haemonchus contortus)、蛇状毛様線虫(Trichostrongylus colubriformis)、テラドルサジア・サークムシンクタ(Teladorsagia circumcincta)、クーペリア・オンコフォラ(Cooperia oncophora)、ネマトディルス・バッタス(Nematodirus battus)、オステルタジア・レプトスピアリアス(Ostertagia leptospiarias)、大口腸線虫(Chabertia ovina)、ブタ腸結節虫(Oesophagostomum dentatum)、ならびに線虫種の旋毛虫(Trichinella spiralis)、鞭虫(Trichuris trichuria)、住血線虫(Angiostrongylus vasorum)、イヌ鉤虫(Ancylostoma caninum)、ズビニ鉤虫(Ancylostoma duodenale)、セイロン鉤虫(Ancylostoma ceylanicum)、アメリカ鉤虫(Necator americanus)、肺虫種(Dictyocaulus spp.)、回虫(Ascaris lumbricoides)、ブタ回虫(Ascaris suum)、バンクロフト糸状虫(Wuchereria bancrofti)、マレー糸状虫(Brugia malayi)、ロア糸状虫(Loa loa)、蟯虫(Enterobius vermicularis)、イヌ糸状虫(Dirofilaria immitis)、回旋糸状虫(Onchocerca volvulus)および糞線虫(Strongyloides stercoralis)から選択される線虫によって産生される少なくとも1つの線虫グリカンと結合することを特徴とする。
【0026】
グリカン結合ポリペプチドの上記定義に関して、医学的使用のためのポリペプチドは、好ましくは、レクチン、抗体、レクチンおよび抗体のフラグメントまたは機能的誘導体、ならびに抗体様結合タンパク質からなる群から選択される。
【0027】
本明細書において「レクチン」とは、炭水化物に対して特異的結合親和性を有する、アミノ酸結合およびペプチド結合に基づく任意の化合物を包含する。一般に、「レクチン」とは、特異的な炭水化物結合を特徴とする、自然界に見られる非抗体ポリペプチドに関する。「レクチン」とは、その機能的フラグメントおよび誘導体を含み、これらの用語は以下に抗体に関して用いられる同じ用語と同様に定義される。
【0028】
さらに、一態様において本発明は、上記で定義される医学的使用のための、グリカンと特異的に結合する抗体、その機能的フラグメントおよび機能的誘導体に関する。これらは、標的グリカン抗原が利用可能となれば、ハイブリドーマ技術(Kohler and Milstein, Nature 256, 495−497, 1975)、抗体ファージディスプレー(Winter et al., Annu. Rev. Immunol. 12, 433−455, 1994)、リボソームディスプレー(Schaffitzel et al., J. Immunol. Methods, 231, 119−135, 1999)および反復コロニーフィルタースクリーニング(Giovannoni et al., Nucleic Acids Res. 29, E27, 2001)によって慣用することができる。抗体を機能的産物へと断片化するための典型的なプロテアーゼは周知である。他の断片化技術は、得られたフラグメントが特異的高親和性と、好ましくはマイクロモル〜ピコモルの範囲の解離定数を有する限り、同様に使用可能である。グリカン結合抗体の例としては、「抗ペルオキシダーゼウサギ抗血清のIgG画分(IgG fraction of anti−Peroxidase’ rabbit antiserum)」(カタログ番号200−4138、Rockland Inc., 米国)および「ウサギで生産された抗ペルオキシダーゼ抗体」(カタログ番号P7899、Sigma−Aldrich Co., 米国)がある。
【0029】
グリカン結合適用に極めて便利な抗体フラグメントは、重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインがポリペプチドリンカーによって連結されている一本鎖Fvフラグメントである。本発明によるグリカンと結合させるための他の抗体フラグメントとしては、Fabフラグメント、Fab2フラグメント、ミニ抗体(小免疫タンパク質(small immune proteins)とも呼ばれる)、タンデムscFv−scFv融合物、ならびに好適なドメインとの(例えば、免疫グロブリンのFc部分との)scFv融合物が挙げられる。ある種の抗体形式に関する総説としては、Holliger P, Hudson PJ. (Nat. Biotechnol., 23:1126−36, 2005)を参照。
【0030】
本発明で用いるための抗体の「機能的誘導体」とは、誘導体がその元の抗原と実質的に同じ結合親和性を有し、好ましくは、マイクロモル、ナノモルまたはピコモルの範囲の解離定数を有する限り、そのアミノ酸配列が、例えば、アミノ酸残基の付加、置換および/または欠失によって化学的もしくは遺伝的に修飾され、かつ/またはその原子および/もしくは機能的化学基の少なくとも1つが、例えば、付加、欠失、再配列、酸化、還元などによって化学的に修飾されている、抗体またはそのフラグメントを含むものとする。
【0031】
好ましい実施形態では、本発明で用いるための抗体、そのフラグメントまたは機能的誘導体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、CDRグラフト抗体、Fv−フラグメント、Fab−フラグメントおよびFab2−フラグメントからなる群から選択されるものである。
【0032】
抗体様結合タンパク質の総説としては、Binz et al. on engineering binding proteins from non−immunoglobulin domains in Nature Biotechnology, 23:1257−1268, 2005を参照。「アプタマー」とは、高親和性を有するポリペプチドと結合する核酸を表す。アプタマーは、SELEX(例えば、Jayasena, Clin. Chem., 45:1628−1650, 1999; Klug and Famulok, M. Mol. Biol. Rep., 20:97−107, 1994;米国特許第5,582,981号参照)などの選択方法によって、種々の一本鎖RNA分子の大きなプールから単離することができる。アプタマーはまた、例えば、L−リボヌクレオチドとして、それらの鏡像形態で合成および選択することもできる(Nolte et al., Nat. Biotechnol., 14:1116−1119, 1996; Klussmann et al., Nat. Biotechnol., 14:1112−1115, 1996)。このようにして単離された形態には、天然に存在するリボヌクレアーゼによっては消化されず、従ってより大きな安定性を持つという利点がある。
【0033】
別の抗体様結合タンパク質および従来の抗体の代替が、いわゆる「タンパク質スキャフォールド」、例えば、リポカリンに基づくアンチカリンである(Beste et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 米国, 96:1898−1903, 1999)。リポカリンの、例えば、レチノール結合タンパク質またはビリン結合タンパク質の天然リガンド結合部位は、例えば、「コンビナトリアルタンパク質デザイン」アプローチを用いることにより、それらが選択されたハプテンと結合するように変化させることができる(Skerra, Biochem. Biophys. Acta, 1482:337−350, 2000)。他のタンパク質スキャフォールドについても、抗体の代わりとなることが知られている(Skerra, J. Mol. Recognit, 13:167−287, 2000)(Hey, Trends in Biotechnology, 23:514−522, 2005; EP 1892248 A1/「fynomers」)。
【0034】
要するに、抗体様結合タンパク質とは、標的、好ましくは、医学的使用のためのグリカンを特異的に認識する、上記のタンパク質由来の抗体代替物、例えばアフィリン、アプタマーおよびフィノマー(fynomers)を含むものとする。
【0035】
さらなる態様は、医学的使用に関して上記で定義されたグリカンと結合するモノクローナル抗体を発現するハイブリドーマ細胞株に関する。
【0036】
驚くことに、多価グリカン結合ポリペプチドには、例えば、蠕虫疾患、好ましくは、線虫疾患および免疫疾患を治療および/または予防するための薬剤において有効成分として用いる場合、対応する一価ポリペプチドよりも蠕虫に対する毒性が強いなどの利点があることが判明した。特定の理論に縛られるものではないが、現在のところ、多価結合は表面露出グリカンの架橋をもたらし、これがエンドサイトーシスによるグリカン結合ポリペプチドの取り込みを誘発し、かつ/またはシグナルカスケードの活性化をもたらすものと推測される。レクチンにより媒介される細胞毒性はレクチンの多価性に依存していることがすでに実証されている(Yang et al., J. Mol. Biol., 387:694−705, 2009)。多価グリカン結合ポリペプチド上の結合部位は、同じグリカンを対象とすることもできるし、違うグリカンを対象とすることもできる。後者のタイプの多価グリカン結合ポリペプチドの例がXCLであり、以下にさらに詳細に記載する。
【0037】
上記のために、本発明の好ましい実施形態は、上記で定義された、好ましくは、少なくとも2つ以上、より好ましくは3つ以上、最も好ましくは4つ以上のグリカンと結合するための結合部分を有する多価グリカン結合ポリペプチドの医学的使用を対象とする。
【0038】
特許請求される医学的有用性は、いくつかのレクチン、特に、真菌レクチンに関して実証された。最も好ましい実施形態では、本発明は、真菌レクチン、好ましくは、ウシグソヒトヨタケ(Coprinopsis cinerea)、キッコウアワタケ(Xerocomus chrysenteron)、シバフタケ(Marasmius oreades)、ヒイロチャワンタケ(Aleuria aurantia)またはソルダリア・マクロスポラ(Sordaria macrospora)由来のレクチン、より好ましくは、CGL1、CGL2、RedA(CCL2)、CCL1、XCL、MOA、AALおよびTAP1から選択されるレクチンからなる群から好ましく選択されるレクチンの医学的使用を対象とする。
【0039】
ウシグソヒトヨタケ由来のガレクチンCGL1およびCGL2(Genbank AAF34731およびAAF34732)は、保存された炭水化物結合ドメインを有するβ−ガラクトシド結合レクチンである(Leffler et al., Glycoconj. J., 19:433, 2004)。動物ガレクチンはおそらく、損傷および病原体に関連する分子パターンの認識によって動物の先天免疫に二重の役割を持っている(Sato et al., Immunol Rev., 230:172, 2009)。真菌ガレクチンは、スエヒロタケ(Schizophyllum commune)とともに、この生物群のモデルとして研究に慣用されている2つの真正担子菌のうちの1つであるウシグソヒトヨタケ(inky cap mushroom)に関して最初に報告された。ウシグソヒトヨタケゲノムは最近配列決定されたが、2つのイソガレクチンCGL1とCGL2、およびガレクチン関連タンパク質CGL3(Genbank ABD64675)をコードしている。これらのタンパク質は子実体形成中に高レベルに誘導される(Boulianne et al., Microbiology, 1841−1853, 2000)。CGL1およびCGL2のmRNAを同時にサイレントにしても、子実体形成に明白な欠陥は現れなかった(Walti et al., Eukaryot Cell, 5:732−744, 2006)。CGL1とCGL2は双方とも、単一の食餌源としてレクチン発現大腸菌細胞を用いた毒性アッセイにおいて、C.エレガンスに対して高い毒性を示すが、CGL3はそうではない(下記実施例、図1および2を参照)。順遺伝学スクリーンを用い、利用可能なC.エレガンスのグリコシル化突然変異体を調べたところ、C.エレガンスにおいてCGL2によって認識される標的グリカンは、N−グリカンコアのAsn結合GlcNAc残基上のGal−β−1,4−Fuc−α−1,6として同定された(図3〜7、下表1)。CGL2はまた、寄生性線虫である捻転胃虫の細菌接触段階にも毒性が強いが、CGL3はそうではない(下記実施例、図12参照)。
【0040】
レクチンRedA(CCL2)(Genbank ACD88750)は、ウシグソヒトヨタケ子実体抽出物から、固定化された、植物糖タンパク質であるセイヨウワサビ・ペルオキシダーゼ(HRP)を用いたアフィニティークロマトグラフィーによって単離された(Walti et al., 未発表)。その後の分析では、それは、子実体形成中に強く誘導され、植物N−グリカンコア上のFuc−α−1,3−GlcNAcと特異的に結合する細胞質タンパク質であることが示された(図11参照)。RedA(CCL2)はC.エレガンス(図1参照)および捻転胃虫(図12参照)に対して毒性がある。利用可能なC.エレガンスのグリコシル化突然変異体を調べたところ、この線虫毒性がN−グリカンコアのN−結合GlcNAc残基上のFuc−α−1,3に依存していることが明らかになった(図8、表1参照)。同じ生物からのイソレクチンCCL1(Genbank HQ267703)も分析したところ、本質的に、グリカン結合および毒性に関してRedAと同じ特性が示された(データは示されていない)。
【0041】
レクチンAAL(Genbank BAA00451)は、子嚢菌ヒイロチャワンタケ由来のβ−プロペラレクチンである。このタンパク質は、各サブユニット上にα−1,2結合かα−1,3結合のいずれかで末端フコースに対する5つの結合部位を含むホモ二量体である(Wimmerova et al, J. Biol. Chem., 278:-27059, 2003)。他の子嚢菌由来のオーソログは、末端フコース残基の結合に関する指向性に若干の違いがある(Matsumura et al, Anal. Biochem., 386:217, 2009)。AAL発現大腸菌の摂食は、C.エレガンス(図1)および捻転胃虫(図12参照)に対して毒性がある。利用可能なC.エレガンスのグリコシル化突然変異体を調べたところ、この線虫毒性がGDP−フコース生合成に依存していることが明らかになった(図10、表1)。
【0042】
凝集素MOA(Genbank AAL47680)は、推定触媒ドメイン(同時に二量体化ドメインでもある)を有する真正担子菌シバフタケに由来するホモ二量体レクチンである(Grahn et al., J. Mol. Biol., 390:457, 2009)。レクチンドメインはリシンB−フォールド(ricinB fold)を採用し、異種移植エピトープGal−α−1,3−Galに対する3つの結合部位を含む。このエピトープは、数種のC.エレガンスグリコスフィンゴ脂質(Griffitts et al, Science, 307:922, 2005のD種)に見られる。レクチンは、レクチンドメインの炭水化物結合特異性が若干異なる他の真菌類にもホモログを有する(Tateno et al, Biochem. J., 382:667, 2004)。MOA発現大腸菌の摂食は、C.エレガンス(図1参照)および捻転胃虫(図12参照)に対して毒性がある。C.エレガンスのグリコシル化突然変異体を調べたところ、この線虫毒性が、線虫毒性バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)結晶性毒素CRY5Bによって認識されるものとは異なる特異的グリコスフィンゴ脂質種の生合成に依存していることが明らかになった(Griffitts et al, Science, 307:922, 2005;図9、表1参照)。Gal−α−1,3−GalNAc特異的抗体は、最近、捻転胃虫からのヒツジの保護に関連付けられた(van Stijn et al, Int. J. Parasitol., 40:215, 2010)。
【0043】
キッコウアワタケ由来のレクチンXCL(Genbank AAL73235)およびソルダリア・マクロスポラ由来のレクチンTAP1(Gen-bank CAH03681)は、多くの真菌およびまた下等植物にオーソログを有する二重特異性レクチンである(Peumans et al., Plant Physiol., 144:637, 2007)。XCLはホモ四量体であり、各サブユニットにGal−β−1,3−GalNAc/GalNAcに対する結合部位1つとGlcNAcに対する結合部位を1つ有する可能性がある(Birck et al., J. Mol. Biol., 344:1409, 2004; Leo-nidas et al., J. Mol. Biol., 368:1145, 2007)。前者のグリコエピトープはC.エレガンスおよびまた哺乳類のO−グリカンで見られる。XCLは殺虫活性を有する(Trigueros et al., BBA, 1621:292, 2003)。XCLおよびTAP1は双方とも、C.エレガンス(図1参照)および捻転胃虫(図12参照)に給餌すると強い線虫毒性を示す。
【0044】
本発明のグリカン結合ポリペプチド、例えばレクチン(図1および12参照)およびグリカン結合抗体(図13参照)は、毒性アッセイにおいて蠕虫、特に、線虫に対して毒性を示した。
【0045】
患者に比較的無害な寄生性線虫を一時的に感染させることによるアレルギー治療の最近の成功は、免疫疾患を治療および/または予防するための線虫成分の有用性を実証した(Reddy and Fried, Parasitol. Rev., 104:217, 2009)。本発明によれば、積極的免疫調節を担う成分となるのは蠕虫、好ましくは、線虫のグリカンである。
【0046】
よって、好ましい実施形態では、上記のグリカン結合ポリペプチドが蠕虫感染、好ましくは、線虫感染だけではなく免疫疾患を治療および/または予防するためにも医学的有用性を有することを特許請求する。
【0047】
より好ましくは、前記蠕虫感染、好ましくは、線虫感染は、毛様線虫科、好ましくは、捻転胃虫、蛇状毛様線虫、テラドルサジア・サークムシンクタ、クーペリア・オンコフォラ、ネマトディルス・バッタス、オステルタジア・レプトスピアリアス、大口腸線虫、ブタ腸結節虫、ならびに線虫種の旋毛虫、鞭虫、住血線虫、イヌ鉤虫、ズビニ鉤虫、セイロン鉤虫、アメリカ鉤虫、肺虫種、回虫、ブタ回虫、バンクロフト糸状虫、マレー糸状虫、ロア糸状虫、蟯虫、イヌ糸状虫、回旋糸状虫および糞線虫から選択される蠕虫によって起こる感染である。
【0048】
また、より好ましくは、本発明によるグリカン結合ポリペプチドの投与によって治療および/または予防される免疫疾患は、アレルギー、好ましくは、植物およびダニに対するアレルギー、および自己免疫疾患、好ましくは、クローン病からなる群から選択される。
【0049】
上述のように、特に、抗体は、特許請求される医学的有用性を有するグリカン結合ポリペプチドとして機能し得る。これらの抗体は、治療を受ける脊椎動物においてin vivoで生成され得る。
【0050】
これに関し、本発明のさらなる態様は、薬剤としての、グリカン、好ましい実施形態では、N−グリカン、好ましくは、ガラクトシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、ガラクト−ピラノシル−β−1,4含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,4−L−フコピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,4−L−フコピラノシル−α−1,6−GlcNAc含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、GnGnF6Gal含有および/またはMMF6Gal含有オリゴ糖および複合糖質からなる群から選択されるN−グリカンの使用に関する。
【0051】
さらに好ましい実施形態では、N−グリカンは、フコシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、L−フコピラノシル−α−1,3含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、L−フコピラノシル−α−1,3−GlcNAc含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、GnGnF3含有および/またはMMF3含有オリゴ糖および複合糖質からなる群から選択される。
【0052】
別の好ましい実施形態では、本発明は、薬剤としての、ガラクトシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,3含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル−O−Ser/Thr化合物からなる群から選択されるO−グリカンの使用に関する。
【0053】
さらなる好ましい実施形態では、本発明は、薬剤としての、ガラクトシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−α−1,3含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−α−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−α−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル−β−1,4−N−アセチル−D−グルコサミノ−ピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質から好ましく選択されるリポグリカンに関する。
【0054】
医学的有用性に関して、上記グリカンは処置された動物またはヒトにおいてグリカン特異的抗体に基づく免疫応答を惹起するように処方されるべきである。例えば、グリカン特異的抗体の免疫原性は免疫アジュバントとの結合またはその同時処方によって達成することができる。あるいは、グリカンは、グリカンを提示する不活化細胞もしくは生細胞内もしくは細胞上、好ましくは、細胞表面上に、またはそのホモジネートの形態で、または免疫増強細胞との混合物中で提示させることができる。本発明を実施するためには、これらのグリカンは、細菌細胞、好ましくは、腸内細菌、より好ましくは、大腸菌またはネズミチフス菌によって提示される、好ましくはその表面に展示されることが好ましい。
【0055】
これらのグリカンはグリカン特異的抗体の免疫原性が生じるように処方されるので、それらは、結果として生じる抗体によっても、上記グリカン結合ポリペプチドに関して特許請求されるものと同じ医学的効果を惹起する。従って、本発明はまた、蠕虫感染、好ましくは、線虫感染または免疫疾患を治療および/または予防するための上記グリカンの使用に関する。
【0056】
本発明のグリカンによる治療または予防に好ましい蠕虫感染、好ましくは、線虫感染は、グリカン結合ポリペプチドに関して上記で挙げたものと同じである。
【0057】
本発明のグリカンによる治療または予防に好ましい免疫疾患は、アレルギー、好ましくは、植物およびダニに対するアレルギー、および自己免疫疾患、好ましくは、クローン病からなる群から選択される。
【0058】
さらなる態様において、本発明は、少なくとも1つのグリカン結合ポリペプチド、好ましくは、N−グリカン、好ましくは、ガラクトシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、ガラクト−ピラノシル−β−1,4含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,4−L−フコピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,4−L−フコピラノシル−α−1,6−GlcNAc含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、GnGnF6Gal含有および/またはMMF6Gal含有オリゴ糖および複合糖質からなる群から選択されるN−グリカンと結合するものを含む医薬組成物に関する。
【0059】
さらなる好ましい実施形態では、本発明は、少なくとも1つのN−グリカン結合ポリペプチド、好ましくは、フコシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、L−フコピラノシル−α−1,3含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、L−フコピラノシル−α−1,3−GlcNAc含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、GnGnF3含有および/またはMMF3含有オリゴ糖および複合糖質と結合するものを含む医薬組成物に関する。
【0060】
好ましい実施形態では、本発明は、少なくとも1つのO−グリカン結合ポリペプチド、好ましくは、ガラクトシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,3含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル−O−Ser/Thr化合物と結合するものを含む医薬組成物に関する。
【0061】
別の好ましい実施形態では、本発明は、ガラクトシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−α−1,3含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−α−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−α−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル−β−1,4−N−アセチル−D−グルコサミノ−ピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質から好ましく選択される少なくとも1つのリポグリカンを含む医薬組成物に関する。
【0062】
さらに、グリカン結合ポリペプチドは、毛様線虫科、好ましくは、捻転胃虫、蛇状毛様線虫、テラドルサジア・サークムシンクタ、クーペリア・オンコフォラ、ネマトディルス・バッタス、オステルタジア・レプトスピアリアス、大口腸線虫、ブタ腸結節虫、ならびに線虫種の旋毛虫、鞭虫、住血線虫、イヌ鉤虫、ズビニ鉤虫、セイロン鉤虫、アメリカ鉤虫、肺虫種、回虫、ブタ回虫、バンクロフト糸状虫、マレー糸状虫、ロア糸状虫、蟯虫、イヌ糸状虫、回旋糸状虫および糞線虫から選択される線虫によって産生される少なくとも1つの線虫グリカンと結合することが好ましい。
【0063】
より好ましくは、本医薬組成物のグリカン結合ポリペプチドは、レクチン、抗体、抗体のフラグメントまたは機能的誘導体および抗体様結合タンパク質からなる群から選択される。
【0064】
より好ましくは、本医薬組成物のグリカン結合ポリペプチドは多価であり、従って、少なくとも2つ以上、好ましくは3つ以上、より好ましくは4つ以上のグリカンと結合する。
【0065】
最も好ましくは、本医薬組成物のグリカン結合ポリペプチドは、真菌レクチン、好ましくは、ウシグソヒトヨタケ、キッコウアワタケ、シバフタケ、ヒイロチャワンタケまたはソルダリア・マクロスポラ由来のレクチン、より好ましくは、レクチンCGL1、CGL2、RedA(CCL2)、CCL1、XCL、MOA、AALまたはTAP1の群から好ましく選択されるレクチンである。
【0066】
医薬組成物の場合、グリカン結合ポリペプチド(polypepides)が細菌細胞、好ましくは、腸内細菌、より好ましくは、ヒト腸内細菌細胞、最も好ましくは、大腸菌またはネズミチフス菌の表面に展示されることが好ましい。
【0067】
本発明のさらなる態様は、ガラクトシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、ガラクト−ピラノシル−β−1,4含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,4−L−フコピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,4−L−フコピラノシル−α−1,6−GlcNAc含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、GnGnF6Gal含有および/またはMMF6Gal含有オリゴ糖および複合糖質からなるN−グリカン群から好ましく選択されるN−グリカンを含む医薬組成物に関する。
【0068】
好ましい実施形態では、N−グリカンは、フコシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、L−フコピラノシル−α−1,3含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、L−フコピラノシル−α−1,3−GlcNAc含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、GnGnF3含有および/またはMMF3含有オリゴ糖および複合糖質から選択される。
【0069】
さらなる好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物は、ガラクトシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,3含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル−O−Ser/Thr化合物からなるO−グリカン群から好ましく選択されるO−グリカンを含む。
【0070】
さらなる好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物は、ガラクトシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−α−1,3含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−α−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−α−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル−β−1,4−N−アセチル−D−グルコサミノ−ピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質から好ましく選択されるリポグリカンを含む。
【0071】
好ましくは、該ポリペプチド結合または脂質結合グリカンは、毛様線虫科、好ましくは、捻転胃虫、蛇状毛様線虫、テラドルサジア・サークムシンクタ、クーペリア・オンコフォラ、ネマトディルス・バッタス、オステルタジア・レプトスピアリアス、大口腸線虫、ブタ腸結節虫、ならびに線虫種の旋毛虫、鞭虫、住血線虫、イヌ鉤虫、ズビニ鉤虫、セイロン鉤虫、アメリカ鉤虫、肺虫種、回虫、ブタ回虫、バンクロフト糸状虫、マレー糸状虫、ロア糸状虫、蟯虫、イヌ糸状虫、回旋糸状虫および糞線虫から選択される線虫によって産生されるものである。
【0072】
本発明の医薬組成物では、該ポリペプチド結合または脂質結合グリカンは、好ましくは、細菌細胞、好ましくは、腸内細菌、より好ましくは、ヒトまたは家畜腸内細菌細胞、最も好ましくは、大腸菌またはネズミチフス菌の表面に展示される。
【0073】
本発明のさらなる態様は、単離されたグリカン、複合糖質および/またはグリカン結合ポリペプチド、好ましくは、N−グリカン、O−グリカンおよび/またはリポグリカン、好ましくは、N−グリカン、O−グリカンおよび/またはリポグリカンを含む複合糖質、好ましくは、N−グリカン、O−グリカンおよび/またはリポグリカン結合ポリペプチド、より好ましくは、上記の治療的および/または予防的医学的効果、特に、抗蠕虫効果および免疫刺激または抑制効果を提供するための上記のグリカン、複合糖質およびグリカン結合ポリペプチドを含む食品または動物飼料に関する。好ましくは、本発明は、上記で定義されたような単離されたグリカン、複合糖質および/またはグリカン結合ポリペプチドと生理学上許容される賦形剤および/または栄養素、好ましくは、腸内細菌、より好ましくは、ヒトまたは家畜腸内細菌細胞、最も好ましくは、大腸菌またはネズミチフス菌とを含む、ヒトまたは動物、好ましくは、家畜用の食品または飼料に関する。例えば、このような食品または飼料は、ヒトまたは家畜のそれぞれにおいて蠕虫の定着を大幅に減らし、かつ/または蠕虫関連抗原に対する免疫系を刺激もしくは抑制する。
【0074】
さらなる態様において、本発明は、グリカン結合ポリペプチドにより媒介される毒性に感受性のある蠕虫を同定する方法に関する。
【0075】
好ましい実施形態では、本発明は、グリカン結合ポリペプチドと結合した際に毒性を媒介する少なくとも1つのグリカンを含む蠕虫、好ましくは、線虫を同定する方法であって、
(a)少なくとも1つのグリカン結合ポリペプチド、好ましくは、真菌、細菌および/または植物グリカン結合タンパク質(いわゆるレクチン)、および任意選択の蠕虫食餌細胞、好ましくは、腸内細菌、より好ましくは、大腸菌、好ましくは、該少なくとも1つのグリカン結合ポリペプチドを含む蠕虫食餌細胞を準備すること;
(b)(a)の少なくとも1つのグリカン結合ポリペプチドおよび任意選択の蠕虫食餌細胞と、対象とする蠕虫細胞または蠕虫、好ましくは、線虫細胞または線虫とを、(i)グリカン結合ポリペプチドが蠕虫細胞に結合することを可能とし、かつ/または(ii)蠕虫細胞または蠕虫に任意選択の食餌細胞を摂食させることを可能とする条件下で接触させること;および
(c)死滅した蠕虫細胞または蠕虫を同定すること
を含む方法を対象とする。
【0076】
ステップa)の少なくとも1つのグリカン結合ポリペプチドを、任意選択の蠕虫食餌細胞の一部として、好ましくは、腸内細菌食餌細胞の一部として、より好ましくは、大腸菌、最も好ましくは、蠕虫食餌細胞、例えば、細胞質において活性型でグリカン結合ポリペプチドを発現する大腸菌の一部として提供することが最も好ましい。
【0077】
ステップ(a)において、少なくとも1つのグリカン結合ポリペプチドは、特異的炭水化物結合を示す、天然起源または人工起源の任意のポリペプチド、例えば、天然に存在するレクチンまたはその機能的フラグメントおよび/または誘導体、抗体および/またはその機能的フラグメントもしくは誘導体、抗体様結合タンパク質であり得る。好ましくは、2以上の、好ましくは、多数のグリカン結合ポリペプチドの混合物が炭水化物の結合の機会を増やすために提供される。
【0078】
本明細書および特許請求の範囲を通じて用いられる「特異的結合」とは、多くのまたはほとんどの炭水化物および/または非炭水化物化合物と非特異的に結合する化合物を排除するものとする。
【0079】
この任意選択の蠕虫食餌細胞の存在は、ステップ(b)において、蠕虫による単離されたグリカン結合ポリペプチドの摂取を助け、従って、グリカン結合ポリペプチドと蠕虫細胞との結合を助ける。当然のことながら、グリカン結合ポリペプチドがすでに任意選択の食餌細胞、好ましくは、その細胞質の一部をなしている場合には、ポリペプチドの摂取は極めて効率的である。蠕虫食餌細胞の好ましいタイプは、用いる蠕虫のタイプによって異なる。より好ましくは、それは腸内細菌、最も好ましくは、大腸菌である。蠕虫に食餌細胞を摂食させることを可能にする条件は、用いる蠕虫のタイプによって異なる。蠕虫が食餌細胞を摂食する限り、当業者に公知の従来のいずれの設定を行ってもよい。
【0080】
死滅した蠕虫細胞または蠕虫を同定すれば、それはそのまま、グリカン結合ポリペプチドと蠕虫細胞との結合が死に至らせたことを示す。言い換えれば、蠕虫細胞または蠕虫の死滅により、死滅した蠕虫が、それがグリカン結合ポリペプチドと結合した際に毒性を媒介する少なくとも1つのグリカンを含むことが確認される。(i)毒性を媒介する少なくとも1つのグリカンを有する蠕虫と、(ii)少なくとも1つの対応する毒性グリカン結合ポリペプチドからなる、同定された系はさらに、アッセイ前に毒性グリカン結合ポリペプチドおよび/またはその炭水化物特異性が未知である場合には、
(d)任意選択により、(a)の少なくとも1つの毒性グリカン結合ポリペプチドを同定するため、および/または
(e)任意選択により、少なくとも1つの毒性グリカン結合ポリペプチドと結合した際に毒性を媒介する少なくとも1つのグリカンを同定するため
に使用することができる。
【0081】
(i)毒性を媒介する少なくとも1つのグリカンを有する蠕虫と、(ii)少なくとも1つの対応する毒性グリカン結合ポリペプチドからなる系が、例えば上記の方法によってひと度同定されれば、この系をグリカンにより媒介される毒性に関与する蠕虫遺伝子を同定するために使用することができる。
【0082】
従って、好ましい実施形態では、本発明は、グリカン結合タンパク質と結合した際にグリカンにより媒介される毒性に関与する蠕虫遺伝子標的、好ましくは、線虫遺伝子標的、好ましくは、蠕虫グリカンおよび複合糖質の生合成に関与する酵素をコードする遺伝子標的を同定するさらなる方法であって、
(a)グリカン特異性を有するグリカン結合ポリペプチドと結合した際に毒性を媒介する特異的グリカンを産生する、ランダム突然変異および/または標的突然変異を有する蠕虫細胞または蠕虫、および任意選択の野生型蠕虫細胞または蠕虫を準備すること;
(b)(a)の蠕虫細胞または蠕虫と、該グリカン特異性を有する少なくとも1つのグリカン結合ポリペプチドとを、任意選択により、蠕虫食餌細胞、好ましくは、腸内細菌、より好ましくは、大腸菌、好ましくは、該少なくとも1つのグリカン結合ポリペプチドを含む蠕虫食餌細胞の存在下で接触させること;および
(c)(b)におけるグリカン結合ポリペプチドの接触から生き残る(a)の蠕虫細胞または蠕虫における突然変異遺伝子を同定すること
を含む方法に関する。
【0083】
ステップb)の少なくとも1つのグリカン結合ポリペプチドを、任意選択の蠕虫食餌細胞の一部として、好ましくは、腸内細菌食餌細胞の一部として、より好ましくは、大腸菌、最も好ましくは、蠕虫食餌細胞、例えば、細胞質において活性型でグリカン結合ポリペプチドを発現する大腸菌の一部として提供することが最も好ましい。
【0084】
蠕虫細胞または蠕虫の突然変異体は、従来技術または以下の実施例に記載されている通りにランダム突然変異誘発または標的突然変異誘発によって作出することができる。これらの突然変異のいくつかはグリカンにより媒介される毒性に関与する遺伝子に影響を及ぼすという合理的な機会がある。任意選択により、比較により変異型蠕虫における変化をより良く同定するために参照蠕虫細胞または蠕虫もまた提供することができる。ステップ(b)において、ランダム突然変異および/または標的突然変異を有する蠕虫細胞/蠕虫および任意選択の野生型蠕虫細胞/蠕虫を、それらの蠕虫のグリカン特異性を有する少なくとも1つのグリカン結合ポリペプチドと接触させる。任意選択により、グリカン結合ポリペプチドの摂取を助ける、従って、グリカン結合ポリペプチドと蠕虫細胞との結合を助けるために、食餌細胞、好ましくは、腸内細菌、より好ましくは、大腸菌が存在する。グリカン結合ポリペプチドによるグリカン媒介性の毒性に関与する蠕虫遺伝子の突然変異は変異型蠕虫の生存をもたらし得るが、残りの変異型蠕虫または野生型参照蠕虫はグリカン結合ポリペプチドの毒性作用のために死滅する。単離された生存蠕虫と野生型ゲノムを遺伝的に比較する手段によって、細胞の生存をもたらす突然変異遺伝子を同定することができる。
【0085】
グリカンにより媒介される毒性に関与する遺伝子は、抗蠕虫化合物の潜在的標的として極めて適切である。従って、野生型蠕虫におけるその構造、その発現の調節およびその産物の機能を決定することは重要である。
【0086】
同定された遺伝子産物の機能から、毒性を媒介するグリカンを同定することができる。より好ましい実施形態では、本発明の毒性媒介遺伝子標的を同定する上記の方法は、毒性関連グリカンを同定するステップ(d)、好ましくは、
(d.i)ステップ(c)の突然変異遺伝子と、特徴的な遺伝子、好ましくは、グリカン生合成に関与する酵素をコードする遺伝子、より好ましくは、蠕虫のグリカン生合成に関与する酵素をコードする遺伝子とを比較するステップ;
(d.ii)(c)で同定された突然変異体のN−グライコーム、O−グライコームまたはリポグライコームと、野生型蠕虫のグライコームとを、好ましくは、個々の複合糖質の生化学的単離とクロマトグラフィーおよび質量分析によるそれらの分析によって比較するステップ;
(d.iii)ステップ(c)の遺伝子を異種系、例えば、昆虫細胞、好ましくは、SF9細胞において発現させ、その遺伝子産物の生化学的活性をin vitroにおいてアッセイするステップ
の1以上を包含するステップ(d)をさらに含む。
【0087】
毒性媒介グリカンがひと度同定されれば、本発明により抗蠕虫化合物の同定が可能となる。これに関し、本発明はまた、抗蠕虫物質、好ましくは、抗線虫物質を同定する方法であって、
(a)グリカンにより媒介される毒性に関与することが知られているグリカンを準備すること;
(b)(a)のグリカンと対象物質とを接触させること;
(c)(a)のグリカンと結合する対象物質を潜在的抗蠕虫物質、好ましくは、潜在的抗線虫物質として同定すること
を含む方法を対象とする。
【0088】
ステップ(a)のグリカンは、好ましくは、細胞、好ましくは、細胞表面の一部を形成する。組換え生産および任意選択の表面ディスプレーは、多くの炭水化物構造に対する慣例の選択肢である。グリカンディスプレーに適した細胞としては、細菌、好ましくは、腸内細菌、より好ましくは、大腸菌またはネズミチフス菌、または酵母、好ましくは、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)が含まれる。
【0089】
グリカンが細胞の一部をなし、グリカンが内因的に産生される場合、対象とする物質の取り込みを可能とするために増孔剤および/または食餌細胞を加えることが好ましい。
【0090】
最も好ましい実施形態では、本方法は、グリカンにより媒介される毒性に関与することが知られている単離されたグリカンを用いる。例えば、グリカンは多数の個々のウェルを有するスクリーニングプレートに結合させることができる。対象物質によるグリカンの結合は、例えばELISAアッセイなどの従来の手段によって判定することができる。対象物質の結合は、グリカン特異性を有する抗体またはレクチンとの結合を遮断することができ、このレクチンまたは抗体は従来のマーカー物質を含むことができる。抗体またはレクチンの結合の欠如または結合の減少は、対象物質による干渉を示す。
【0091】
要するに、本発明は、(i)グリカン結合ポリペプチドによる結合の際に毒性を媒介する少なくとも1つのグリカンを有する蠕虫を同定することを可能とする方法、(ii)毒性を媒介するグリカンの同定をもたらす、従前に同定された蠕虫/グリカン系を用いて、グリカンにより媒介される毒性に関与する蠕虫遺伝子標的を同定する方法、および(iii)抗蠕虫物質、好ましくは、抗線虫物質を同定するスクリーニング方法を提供する。
【0092】
さらなる態様において、本発明は、蠕虫感染、好ましくは線虫感染および/または免疫疾患を治療および/または予防する方法であって、本発明のグリカン、グリカン結合ポリペプチド、医薬組成物、食品または飼料をそれを必要とするヒトまたは動物に生理学上有効な量で投与することを含む方法に関する。
【0093】
治療的および/または予防的使用に関して、本発明の医薬組成物は、従来の任意の投与形で従来の任意の方法で投与することができる。投与経路としては、限定されるものではないが、静脈内、筋肉内、皮下、鼻腔内、滑液嚢内、注入、舌下、経皮、経口(例えば、錠剤、経管栄養)、局所または吸入が挙げられる。好ましい投与様式は、経口、静脈内および鼻腔内であり、経口および鼻腔内が最も好ましい。
【0094】
本発明のグリカンおよびグリカン結合ポリペプチドは単独で、または医学上有効な化合物の安定性および/または免疫原性を増強し、それらを含有する医薬組成物の投与を容易にし、溶解または分散の増大をもたらし、波及性の活性を増大させ、例えば、医学上有効な化合物を産生する細胞などの細胞が含まれる場合には、他の有効成分を含む補助療法などを提供するアジュバントと組み合わせて投与してもよい。
【0095】
これまでのところ、寄生性蠕虫の組換え消化性プロテアーゼによる動物の免疫誘導は、糞便中の卵総数および動物の虫体数の減少については部分的な成功を見た(例えば、Reszka et al, Exp. Parasitol., 117:208, 2007; Loukas et al, PLoS Medicine, 2:e295, 2005参照)。しかしながら、これらの治験は数種の天然消化管プロテアーゼによる免疫誘導によって達成される保護の程度に達しなかった(Pearson et al, Biol. Chem., 391:901, 2010に総説)。この違いは一つには、これらの組換えタンパク質における線虫特異的グリコシル化の欠如によるものであると推測される。
【0096】
寄生性蠕虫の組換えまたは天然消化性プロテアーゼ、好ましくは、動物寄生性線虫の消化管プロテアーゼ、より好ましくは、捻転胃虫のアミノペプチダーゼH11またはイヌ鉤虫のアスパラギン酸プロテアーゼAPR−1は、上述の、または本発明の方法によって同定されたグリカンまたはグリカン結合ポリペプチドと組み合わせることができる。好ましくは、消化性プロテアーゼ、より好ましくは、寄生性蠕虫の組換え消化性プロテアーゼを、例えば、異種発現系、好ましくは、線虫グリコシルトランスフェラーゼを過剰発現する昆虫細胞、より好ましくは、C.エレガンス由来のGALT−1またはFUT−1を過剰発現するSF9細胞(SF9細胞におけるGALT−1の機能的発現は従前に実証されている:PCT50086)を使用することにより、N−グリカン、より好ましくは、MMF6GalまたはMMF3と組み合わせる。前記消化性プロテアーゼおよびグリカンエピトープおよび/またはグリカン結合ポリペプチドを組み合わせたこのような組成物は、有効な薬剤、好ましくは、ワクチン、特に、寄生性蠕虫に対するものを提供する。
【0097】
よって、好ましい実施形態では、本発明はまた、(i)グリカン結合ポリペプチドおよび/またはグリカンを、組換えまたは天然消化性プロテアーゼ、好ましくは、寄生性蠕虫の組換え消化性プロテアーゼ(その機能的フラグメントおよび機能的誘導体、すなわち、元のプロテアーゼ活性の少なくとも一部をなお含むフラグメントおよび誘導体を含む)とともに含む、組成物、好ましくは、医薬組成物、食品および/または動物飼料を対象とし、ならびに(ii)好ましくは蠕虫感染を治療および/または予防するための、これらの組成物、食品および飼料の対応する使用を対象とする。
【0098】
いくつかの市販の糖タンパク質は、天然の状態で、グリカンにより媒介される線虫毒性に関与するとして本発明によって同定されたグリカンのいくつかを展示する。同時にこれらの糖タンパク質は免疫原性が高いことが知られている。これらのタンパク質には、N−グリカンがそのコア上にGal−β−1,4−Fuc−α−1,6エピトープを(Wuhrer et al, Biochem. J., 378:625, 2004)、そして、そのアンテナ上にFuc−α−1,3−GlcNAcエピトープを有する(Geyer et al, J. Biol. Chem., 280:40731, 2005)キーホールリンペット・ヘモシアニン(KLH)、ならびにN−グリカンがそのコア上にFuc−α−1,3−GlcNAcエピトープを有する(Wuhrer et al, BBA, 1723:229, 2005)セイヨウワサビ・ペルオキシダーゼ(HRP)が含まれる。天然の状態で、グリカンにより媒介される線虫毒性に関与するとして本明細書によって同定されたグリカンのいくつかもまた展示する、さらなる市販の糖タンパク質としては、ブロメライン、タチナタマメ・マンノシダーゼ、ハリエニシダ(Ulex europaeus)凝集素(UEA)、ミツバチ・ホスホリパーゼA2ならびにアメリカカブトガニ(Limulus polyphemus)などの軟体動物のヘモシアニンがある。上記のものは全て、本発明の種々の態様および実施形態に関して有用性を有するN−グリカンを少なくとも含む。特に、これらの糖タンパク質は、寄生性蠕虫に対する免疫誘導のため、より好ましくは、寄生性線虫に対する家畜の免疫誘導のため、最も好ましくは、捻転胃虫に対するヒツジの免疫誘導のための医学的用途を有する。
【0099】
よって、好ましい実施形態では、本発明は、(i)好ましくは蠕虫感染、好ましくは、寄生性蠕虫感染を治療および/または予防するための薬剤を製造するための、KLH、HRP、ブロメライン、タチナタマメ・マンノシダーゼ、ハリエニシダ凝集素(UEA)、ミツバチ・ホスホリパーゼA2およびアメリカカブトガニなどの軟体動物のヘモシアニン、これらの機能的フラグメントまたは機能的誘導体、すなわち、上記で同定されたグリコエピトープの少なくとも1つをなお含むフラグメントおよび誘導体の使用、ならびに(ii)これらを含む対応する組成物、好ましくは、医薬組成物、食品および/または動物飼料に関する。
【0100】
本明細書に記載のグリカンおよびグリカン結合ポリペプチドの医薬投与形は、当業者に公知の薬学上許容される担体および/またはアジュバントを含む。これらの担体およびアジュバントとしては、例えば、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、バッファー物質、水、塩、電解質、セルロースに基づく物質、ゼラチン、水、ワセリン(pretrolatum)、動物油もしくは植物油、鉱油もしくは合成油、生理食塩水、デキストロースまたは他の糖類、およびエチレングリコール、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなどのグリコール化合物、抗酸化剤、乳酸塩などが挙げられる。好ましい投与形としては、錠剤、カプセル剤、溶液、懸濁液、エマルション、再構成可能な粉末および経皮パッチが挙げられる。投与形の製造方法は周知であり、例えば、H. C. Ansel and N. G. Popovish, Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, 5th ed., Lea and Febiger (1990)および特に、Pastoret et al., Veterinary Vaccinology, Elsevier March 1999を参照。用量レベルおよび要件は当技術分野でよく認識されており、当業者ならば、特定の患者に適した利用可能な方法および技術から選択することができる。当業者が認識しているように、特定の因子に応じて、より低用量または高用量が必要な場合もある。例えば、具体的な用量および治療計画は、患者(ヒトまたは動物)の健康状態、患者の障害またはそれに対する素因の重篤度および経過、ならびに治療に当たる医師または獣医の判断などの因子によって異なる。
【0101】
以下、本発明を具体的図面および実験的実施形態を参照しつつ説明するが、これらの図面および実施形態は、添付の特許請求の範囲に示されている本発明の範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】C.エレガンスに対する種々の真菌レクチンの毒性を示す棒グラフである。C.エレガンス野生型(N2)およびpmk−1変異型の線虫を、試験手順に記載のように、レクチン発現細菌上でL1期からL4期への発達に関して分析した。y座標は、X座標のレクチンを発現する細菌の存在下でL4期に達した線虫の割合である。分析した真菌レクチンには、ウシグソヒトヨタケ・ガレクチンCGL1(Genbank AAF34731)およびCGL2(Genbank AAF34732)、ガレクチン関連レクチンCGL3(Genbank ABD64675)およびレクチンRedA(CCL2)(Genbank ACD88750)、キッコウアワタケ・レクチンXCL(Genbank AAL73235)およびソルダリア・マクロスポラ由来のそのオーソログTAP1(Genbank CAH03681)、ヒイロチャワンタケ・レクチンAAL(Genbank BAA00451)およびシバフタケ凝集素MOA(Genbank AAL47680)を含んだ。
【図2A】C.エレガンスに対するウシグソヒトヨタケ・ガレクチンCGL2の用量依存的および炭水化物結合依存的毒性を示す。全ての実験で、野生型CGL2または炭水化物結合欠損変異型CGL2-(W72G)のいずれかを発現する大腸菌BL21(DE3)細胞、または対照形質転換体をC.エレガンス野生株N2に与えた。 Aは、CGL2によるC.エレガンス発達の阻害を示す。C.エレガンスL1期幼虫を上記の細菌叢に載せるか(パネル左)、または液体培養にて漸増濃度の精製CGL2と等量のエンプティーベクター含有BL21(DE3)とともに与え(パネル右)、およびそれぞれ72時間および96時間までにL4期まで発達した割合を評価した。柱はそれぞれ6回および12回の独立した実験の平均値を表す。エラーバーは標準偏差を示す。
【図2B】C.エレガンスに対するウシグソヒトヨタケ・ガレクチンCGL2の用量依存的および炭水化物結合依存的毒性を示す。全ての実験で、野生型CGL2または炭水化物結合欠損変異型CGL2-(W72G)のいずれかを発現する大腸菌BL21(DE3)細胞、または対照形質転換体をC.エレガンス野生株N2に与えた。Bは、レクチンCGL2によるC.エレガンスの繁殖の阻害を示す。C.エレガンス成虫(雌雄同体)に上記の細胞を与え、雌雄同体1個体当たりの後代総数を評価した。各データ点について、雌雄同体8〜10個体の同腹子の平均をとった。標準偏差を示す。野生型CGL2上の後代で、孵化後96時間以内に成虫まで発達したものは無かった。
【図2C】C.エレガンスに対するウシグソヒトヨタケ・ガレクチンCGL2の用量依存的および炭水化物結合依存的毒性を示す。全ての実験で、野生型CGL2または炭水化物結合欠損変異型CGL2-(W72G)のいずれかを発現する大腸菌BL21(DE3)細胞、または対照形質転換体をC.エレガンス野生株N2に与えた。Cは、CGL2がC.エレガンスの腸に損傷を与えることを示す。C.エレガンスL4期幼虫にCGL2発現細胞(パネルd〜f)および対照大腸菌BL21(DE3)細胞(パネルa〜c)を与え、24時間後に実体顕微鏡(パネルa、d)、および微分干渉(DIC)顕微鏡(パネルb、e)、および透過型電子顕微鏡(TEM)(パネルc、f)で観察した。パネルcおよびfのサイズバーは200nmである。
【図3A】CGL2耐性C.エレガンス突然変異体に関する順遺伝学スクリーンの結果と用いた手順のフローチャートを示す。 Aは、p38 MAPK経路に欠陥があるpmk−1、sek−1およびnsy−1変異線虫のCGL2感受性試験のグラフである。示された遺伝子型のL4期幼虫10個体をCGL2発現大腸菌BL21(DE3)細胞叢に載せた。これらのプレートを、示された時点で線虫が生存しているかどうか確認した。データ点は独立した10回の試験の平均値を表す。エラーバーは標準偏差を示す。
【図3B】CGL2耐性C.エレガンス突然変異体に関する順遺伝学スクリーンの結果と用いた手順のフローチャートを示す。 Bは、CGL2高感受性pmk−1(km25)バックグラウンドに、Mos1トランスポゾンアレイoxEx229およびMos1トランスポゼースアレイfrEx113を有する線虫を作出するための、Mos1挿入突然変異誘発の作業の流れを示す。
【図3C】Cは、単離および構築されたC.エレガンス突然変異体の、CGL2により媒介される毒性に対する耐性を示す。示された遺伝子型のC.エレガンス突然変異体を、上記で概略を示したように、L1期からL4期への発達に関して分析した。遺伝子付記(op)およびヒストグラムの上の括弧は、Mos1スクリーンにおいて単離された突然変異体を示す。他の突然変異体は交雑によって構築した。
【図3D】Dは、CGL2耐性突然変異体におけるMos1要素の挿入部位を示す。Mos1要素の上の矢印は、突然変異体ライゼートのiPCR産物を配列決定するために用いたMos1プライマーoJL115の配向を示す。太字はC.エレガンスのゲノム配列を示し、その後にMos1配列が続く。遺伝子モデルはWormBase Release WS202から採用したものである。bre−1(op509)突然変異体は、翻訳開始コドンの184bp上流に位置する、C53B4.7a1の5’−UTRにMos1挿入を有する。ger−1(op499)突然変異体は、翻訳開始コドンの50bp下流に位置する、R01H2.5の第1エキソンにMos1挿入を有する。gly−13(op507)突然変異体は、B0416.6の第1エキソンに隣接する保存されたスプライシング供与部位にMos1挿入を有する。fut−8(op498)突然変異体は、C10F3.6の第8エキソンにMos1挿入を有する。M03F8.4(op497)突然変異体は、M03F8.4の第2エキソンにMos1挿入を有する。
【図4】種々のC.エレガンスグリコシル化突然変異体のCGL2感受性を示すグラフである。X座標に示された遺伝子型のC.エレガンス突然変異体を、下記の試験手順に記載されるように、CGL2発現大腸菌上でL1期からL4期への発達に関して分析した。種々のC.エレガンス遺伝子によりコードされているグリコシル化プロセスについては下記の表1を参照。
【図5】C.エレガンスにおいてCGL2により認識されるグリコエピトープのin situ局在を示す4枚の写真である。C.エレガンスCGL2感受性pmk−1(km25)およびCGL2耐性pmk−1(km25);fut−8(op498)虫にTAMRAで標識したCGL2を与え、微分干渉(DIC)顕微鏡および赤色蛍光(RF)顕微鏡で観察した。
【図6A】CGL2耐性C.エレガンス二重突然変異体pmk−1;fut−8(op498)(上の出力)およびpmk−1(km25);M03F8.4(op497)(中央の出力)および同質遺伝子型CGL2高感受性単一突然変異株pmk−1(km25)(下の出力)におけるN−グライコームの比較分析を示す。 AおよびBは、放出された蛍光標識N−グリカンのHPLC実験の蛍光曲線を示す。酵素的放出(ここでは、PNGアーゼF耐性であるが、PNGアーゼA感受性のグライコーム画分を示す)および蛍光標識の際には、N−グリカンを順相HPLCによって分離し、質量分析によって分析した(A)。
【図6B】CGL2耐性C.エレガンス二重突然変異体pmk−1;fut−8(op498)(上の出力)およびpmk−1(km25);M03F8.4(op497)(中央の出力)および同質遺伝子型CGL2高感受性単一突然変異株pmk−1(km25)(下の出力)におけるN−グライコームの比較分析を示す。放出された蛍光標識N−グリカンのHPLC実験の蛍光曲線を示す。保持時間の類似した画分(例えば、点線の四角)はさらに逆相HPLCによって分離し、得られた純粋なグリカンを質量分析(MS)により、また、選択された画分についてはMS/MSにより分析した(B)。
【図6C】Cは、選択された単離ピークの構造的特性決定の結果を示す。pmk−1株には見られるが、2つの二重突然変異株には見られないピークAを、β−1,4−ガラクトシダーゼ(β−1,4−Galアーゼ)およびα−フコシダーゼ(α−Fucアーゼ)で処理した。反応生成物を逆相HPLCとMSおよびMS/MSによって分析した。一番下のHPLC出力は、グリカン標品をグルコース単位(GU)で表す。単糖は記号:Man(濃いグレーの丸)、Gal(薄いグレーの丸)、GlcNAc(四角)、Fuc(三角)、Hex(白丸)で表す。
【図7】等温滴定熱量測定法によって測定された、ウシグソヒトヨタケ・ガレクチンCGL2と化学合成Gal−β−1,4−Fuc−α−1,6−GlcNAc−β−O−C5H10−NH2とのin vitro結合のグラフを示す。未加工データを上のパネルに示す。Microcalソフトウエアを用いてこのデータを変換すると滴定曲線(下のパネル)が得られ、この曲線から解離定数(Kd=86.9±3.2×10−6M)および結合のエントロピー(TΔS=−3.31kcal/mol)を算出した。
【図8】種々のC.エレガンスグリコシル化突然変異体のRedA(CCL2)感受性を示す棒グラフである。示された遺伝子型のC.エレガンス突然変異体を、下記の試験手順に記載されるように、RedA発現大腸菌上でL1期からL4期への発達に関して分析した。まだ分析されていない突然変異体はn.d.として示す。種々のC.エレガンス遺伝子によりコードされているグリコシル化プロセスについては下記の表1を参照。
【図9】種々のC.エレガンスグリコシル化突然変異体のMOA感受性試験を示す棒グラフである。示された遺伝子型のC.エレガンス突然変異体を、下記の試験手順に記載されるように、MOA発現大腸菌上でL1期からL4期への発達に関して分析した。まだ分析されていない突然変異体はn.d.として示す。種々のC.エレガンス遺伝子によりコードされているグリコシル化プロセスについては下記の表1を参照。
【図10】種々のC.エレガンスグリコシル化突然変異体のAAL感受性を示す棒グラフである。示された遺伝子型のC.エレガンス突然変異体を、下記の試験手順に記載されるように、AAL発現大腸菌上でL1期からL4期への発達に関して分析した。種々のC.エレガンス遺伝子によりコードされているグリコシル化プロセスについては下記の表1を参照。
【図11】新たに特性決定された真菌レクチンウシグソヒトヨタケRedA(CCL2)およびS.マクロスポラTAP1ならびに従前に特性決定されているキッコウアワタケ・レクチンXCLの炭水化物結合特異性を示す2つのグラフに関する。組換えタンパク質を蛍光標識し、米国糖鎖コンソーシアム(Consortium of Functional Glycomics)(CFG)によって、グリカンアレイとの結合に関して分析した。
【図12】捻転胃虫に対する種々の真菌レクチンの毒性を示す棒グラフである。線虫を、試験手順に記載されているように、レクチン発現細菌上でL1期からL3期への発達に関して分析した。y座標は、X座標のレクチンを発現する細菌の存在下でL3期に達した線虫の割合である。分析した真菌レクチンには、ウシグソヒトヨタケ・ガレクチンCGL2(Genbank AAF34732)、ガレクチン関連レクチンCGL3(Genbank ABD64675)、レクチンRedA(CCL2)(Genbank ACD88750)、キッコウアワタケ・レクチンXCL(Genbank AAL73235)およびソルダリア・マクロスポラ由来のそのオーソログTAP1(Genbank CAH03681)、ヒイロチャワンタケ・レクチンAAL(Genbank BAA00451)およびシバフタケ凝集素MOA(Genbank AAL47680)を含んだ。
【図13】ウサギ抗ペルオキシダーゼ抗血清の市販のIgG画分(カタログ番号200−4138、Rockland Inc.,米国;抗HRP)および精製RedA(CCL2)の、捻転胃虫幼虫のL1期からL3期への発達に対する影響を示す棒グラフである。この抗体およびレクチンは、セイヨウワサビ・ペルオキシダーゼ(HRP)ならびに線虫糖タンパク質のN−グリカンに存在する同じエピトープFuc−α−1,3−GlcNAcと結合し、2つの異なる濃度で試験した。1mg/ml濃度の非グリカン結合ウサギIgGを対照として用いた。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0103】
以下の実施例では、(i)グリカン結合ポリペプチドと結合した際に毒性を媒介する少なくとも1つのグリカンを有する蠕虫を同定することを可能とする本発明の方法、(ii)毒性を媒介するグリカンの同定をもたらす、従前に同定された蠕虫/グリカン系を用いて、グリカンにより媒介される毒性に関与する蠕虫遺伝子標的を同定する方法、および(iii)抗蠕虫物質、好ましくは、抗線虫物質を同定するスクリーニング方法を記載する。
【0104】
さらに、これらの実施例では、毒性を媒介するグリコエピトープ/グリカン/-複合糖質が同定されたモデル線虫C.エレガンスに対して毒性がある真菌レクチンの同定を記載する。これらの医学的に有用なレクチンは、
(i)C.エレガンスN−グリカンコアのAsn結合GlcNAc上のGal−β−1,6−Fuc−α−1,6と結合するウシグソヒトヨタケ由来のCGL2(図1〜7参照)、
(ii)C.エレガンスN−グリカンコアのAsn結合GlcNAc上のFuc−α−1,3と結合するウシグソヒトヨタケ由来のRedA(CCL2)(図8および11)、
(iii)線虫グリコスフィンゴ脂質上のGal−α−1,3−GalNAc−β−x,yと結合するシバフタケ由来のMOA(図9参照)、
(iv)おそらく線虫O−グリカン上のGal−β−1,3−GalNAcと結合する、それぞれキッコウアワタケおよびソルダリア・マクロスポラ由来のXCLおよびTAP1(グリカンアレイデータ[図11]参照)、
(v)まだ同定されていない線虫複合糖質上の末端Fucと結合するヒイロチャワンタケ由来のAAL(図10参照)
である。
【0105】
一般的試験手順
株および培養条件
大腸菌株DH5αおよびBL21(DE3)をそれぞれプラスミドのクローニングおよび増幅と、タンパク質の細菌発現に用いた。大腸菌をSambrook, J., and Russell, D. W. (2001) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3 ed., Cold Spring Harbor Laboratoryに記載されている標準培地で培養した。カエノラブディティス・エレガンス株は線虫増殖培地(NGM)で維持し、Stiernagle, T. (2006) WormBook, 1−11に記載されているように大腸菌株OP50を与えた。Bristol単離株N2を野生株として用いた。pmk−1(km25)、bre−1(ye4)、bre−2(ye31)、bre−3(ye26)、bre−4(ye27)、bre−5(ye17)、fut−1(ok892)、fut−2(gk360)、fut−2(ok509)、fut−3(gk103)、fut−4(gk111)、fut−5(ok242)、fut−6(ok475)、fut−8(ok2558)、gly−2(qa703)、gly−12(is47)、dpy−6(e14);gly−13(ok712)、gly−14(id48)、gly−20(ok826)株はミネソタ大学(米国)のGenetics Center(CGC)から入手した。2つの染色体外構築物frEx113[hsp::Mosトランスポゼース;Pcol12::DsRed]およびoxEx229[Mos1;Pmyo−2::gfp]を有する株は、Jonathan Ewbankから厚意により提供されたものである。Mos1により媒介される突然変異誘発のために、本発明者らは、pmk−1(km25);frEx113株およびpmk−1(km25);oxEx229株を作出した。Mos1により媒介される突然変異誘発およびその後の他殖から得られた株は、pmk−1(km25);M03F8.4(op497)、pmk−1(km25);fut−8(op498)、pmk−1(km25);ger−1(op499)、pmk−1(km25);gly−13(op507)およびpmk−1(km25);bre−1(op509)であった。
【0106】
クローニングおよび発現
真菌レクチンの細菌発現のためのプラスミドは、cDNAまたは利用可能なプラスミドから個々のオープンリーディングフレームを増幅させ、得られたフラグメントを、導入された制限部位を用いてpET24a(Invitrogen)に連結することによって構築した。液体培養におけるCGL2およびCGL2(W72G)の発現は、CGL3に関してWalti, M. A. et al. (2008) J. Mol. Biol. 379, 146−159に記載されている通りに行った。C.エレガンスのバイオアッセイについては、個々のBL21(DE3)形質転換体の一晩培養物300μlを、1mMイソプロピル−β−D−チオガラクトシド(IPTG)および50μg/mlカナマイシンを含有するNGMプレートに拡げ、23℃で一晩インキュベートした後に線虫を加えた。レクチンの発現は、導入されたBL21(DE3)形質転換体の全細胞抽出物を、クーマシーブルー染色SDSポリアクリルアミドゲルで分離すること、および利用できるのであれば特異的抗血清を用いて免疫ブロットを行うことによって確認した(データは示されていない)。
【0107】
CGL2の精製および標識
細菌細胞ペレットを、1mMフッ化フェニルメチルスルホニルを含有する氷冷リン酸緩衝生理食塩水(PBS)[30mMリン酸ナトリウムpH7.3、150mM NaCl]に再懸濁させ、フレンチプレスを用いて破砕した。細胞残渣を12000gで15分および27000gで30分の2回の連続する遠心分離工程で除去した。上清をラクトシル−セファロースとともに4℃で1時間インキュベートし、CGL2を最終的に、室温で、200mMラクトースを含有するPBSで溶出した。PBSで平衡化したセファロース6 10/300GL(GE Healthcare)でのサイズ排除クロマトグラフィー後に、該タンパク質を含有する画分をプールし、分子量カットオフが10kDaのAmicon Ultra−4遠心分離フィルターデバイス(Millipore)を用いて濃縮した。タンパク質濃度は、280nmでの吸光度を測定し、光路長1cmで280nmでの吸光度1単位に対して1.25mg/ml−1の関係を仮定することにより計算した。精製CGL2とテトラメチルローダミン(TAMRA)(Molecular Probes)の結合はWalser, P. J. et al. (2005) Fungal Genet Biol 42, 293−305に記載されている通りに行った。
【0108】
C.エレガンス光学顕微鏡観察
一般的な線虫の取扱いでは、Leica MZ12.5実体顕微鏡を用いた。ダブルアレイを持つ線虫(pmk−1(km25);oxEx229;frEx113)を選択するためには、適当なフィルターセット(DsRedフィルターとGFPフィルター)を備えたLeica MZ16FA実体顕微鏡を用いた。Nikon Coolpix 990デジタルカメラで写真を撮影した。
【0109】
DICおよび蛍光顕微鏡観察では、線虫を、M9(Sambrook & Russel, 2001)中の2%アガロースパッド上に置き、レバミゾール(3〜5mM)(Sigma)で麻酔し、カバーガラスをかけ、DIC(Nomarski)光学系を備えたLeica DM−RAまたはZeiss Axiovert 200顕微鏡、およびTAMRAの検出のためのDsRedフィルターセットを備えた標準的な落射蛍光で観察した。浜松ORCA−ERカメラで写真を撮影した。画像はOpenLabソフトウエアを用いて偽着色した。
【0110】
CGL2−リガンドのin situ局在では、L4期のC.エレガンスを、S培地(Sulston & Hodgkin, 1988)、エンプティーKanR−ベクターを担持するBL21(DE3)大腸菌、カナマイシンおよびクロラムフェニコール各30μg/ml、ならびにTAMRA標識CGL2 100μg/mlを含むウェルに入れた。24時間後、線虫を標準的なOP50プレートに移し、その2時間後にTAMRA蛍光をスクリーニングした。
【0111】
C.エレガンスの電子顕微鏡観察
電子顕微鏡観察では、線虫を記載されている2段階の化学的固定(Hall, 1995)によって処理した。サンプルの固定および薄層切片化は、the Center for Microscopy and Image Analysis (チューリッヒ大学,スイス連邦)にてGarry Barmettlerにより、厚意によって行われた。これらのサンプルを、サイドマウントデジタルカメラ(Gatan)を備えたPhilips CM100透過型電子顕微鏡を用いて観察した。
【0112】
実施例1−C.エレガンス毒性アッセイ
プレートアッセイ
C.エレガンスに対する野生型および変異型CGL2の毒性を調べるためにプレートアッセイを考案した。NGMプレートに、上記のように、野生型CGL2かまたは変異型CGL2(W72G)のいずれかを発現する大腸菌BL21(DE3)を播種した。対照として、プレートにベクターpET24aを含む大腸菌BL21(DE3)を播種した。これらのプレートを23℃で一晩インキュベートし、種々の毒性アッセイのために、同調したC.エレガンス集団を載せた(Barrows, B. D. et al. (2006) Methods Enzymol 417, 340−358参照)。
【0113】
表現型分析
C.エレガンスに対するCGL2の毒性作用の表現型分析のため、L4期の線虫をプレートに載せ、23℃で24時間後に観察した。
【0114】
発達アッセイ
C.エレガンス発達に対するCGL2の作用に関する定量的データは、示された遺伝子型の、新たに孵化したL1期幼虫50〜100個体をプレートに置くことによって得た。72時間後、L4期に達した線虫の割合を求めた。
【0115】
同腹子数アッセイ
C.エレガンスの繁殖に対するCGL2の作用は、個々のL4期野生型雌雄同体をプレートに採取することによってアッセイした。その後、その母虫が子孫を産むのを止めるか、または死に至るまで、毎日、母虫を新しいプレートに移した。翌日に前日のプレートの後代を計数した。種々のプレートからの後代数を足して最終的な同腹子数とした。
【0116】
実施例2−CGL2最小阻害濃度(MIC)の決定
MICを、50%を超える個体が液体培養中で96時間以内に第4期幼虫(L4)に達することができない毒素濃度と定義した。L1期C.エレガンス野生型線虫20個体を、S培地(Sulston & Hodgkin (1988) Methods. in The nematode Caenorhabditis (Wood, W. B. ed.), Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York. pp 587−606参照)、KanR遺伝子を有するエンプティーベクターpET24aを含む食餌源としての大腸菌BL21、カナマイシンおよびクロラムフェニコール(各30μg/ml)、ならびに示された濃度の精製CGL2タンパク質を含むウェルに入れた。96時間後、線虫をNGMプレートに移し、L4期に達した線虫の数を求めた。
【0117】
実施例3−高感受性試験
示された遺伝子型のL4期C.エレガンス10個体をCGL2プレートに移した。24時間おきに、これらのプレートの生存個体を確認した。線虫は、ワームピックで触っても反応しなかった場合に死滅と見なした。
【0118】
実施例4−Mos1挿入突然変異誘発を用いたCGL2耐性C.エレガンス突然変異体のスクリーニング
Mos1挿入突然変異誘発は基本的にBoulin and Bessereau(2007) Nat. Protoc. 2, 1276−1287に公開されている通りに行った。染色体外アレイfrEx113(熱ショックプロモーターの制御下にMos1トランスポゼースを有する)およびoxEx229(基質Mos1トランスポゾンの多重コピーを有する)を用いた。この2つの染色体外構築物をCGL2高感受性pmk−1(km25)線虫と交雑させ、スクリーニングのための2つの始原株pmk−1(km25);frEx113およびpmk−1(km25);oEx229を作出した。二重アレイを有する個体を作出するために、pmk−1(km25);oxEx229雄とL4 pmk−1(km25);frEx113雌雄同体とを交雑させた。咽頭におけるGFP(Pmyo−2::gfp、oxEx229に含まれる)と体腔細胞におけるDsRed(Pcol12::DsRed、frEx113に含まれる)を同時に発現することで認識される二重アレイを含む後代をおよそ6世代、繁殖させた後、それらに熱ショックを施した。1回の突然変異誘発につき数百の二重トランスジェニック個体に33℃1時間、20℃1時間、および33℃1時間の熱ショックを施し、その後、20℃で一晩回復させた。P0を90mm NGMプレートに分配し、熱ショック12〜40時間後に卵を回収した。その後、P0を取り出した。3日後、妊娠個体F1をM9バッファーで洗浄してプレート成分を除去し、Stiernagle, T. (2006) WormBook, 1−11に記載されているように、F2卵を分離した。同調したF2 L1個体の集団を、CGL2発現大腸菌BL21(DE3)を含む30枚のプレートに分配した。3〜7日後、これらのプレートを、成虫に達したCGL2耐性個体に関してスクリーニングした。冗長なMos1挿入を避けるため、耐性個体を含む各プレートは個別処理とした。候補線虫をCGL2発現大腸菌上で繁殖させ、耐性表現型を確認した。耐性が確認されれば、染色体外Mos1担持アレイを欠損した突然変異体と2〜6回他殖させた後、Mos1要素の存在をアッセイし、挿入部位の位置決定を試みた。Mos1要素をまだ含んでいた突然変異体について、本発明者らは、Boulin and Bessereau (2007) Nat. Protoc. 2, 1276−1287に公開されているように、線虫ライゼートに対する逆PCRによって挿入部位を決定した。
【0119】
合計およそ500,000のハプロイドゲノムがスクリーニングされた。転位効率は50%と評価された。合計14個体のCGL2耐性線虫が単離された。そのうち、pmk−1(km25);M03F8.4(op497)、pmk−1(km25);fut−8(op498)、ger−1(op499);pmk−1(km25)、pmk−1(km25);gly−13(op507)およびpmk−1(km25);bre−1(op509)の5個体のみがMos1トランスポゾン挿入を含んでいた。
【0120】
実施例5−C.エレガンスのN−グリカンの単離
C.エレガンス株pmk−1(km25)、pmk−1(km25);M03F8.4(op497)およびpmk−1(km25);fut−8(op498)を、室温で5日間、大腸菌OP50とともに液体培養で増殖させ、その後、30%(w/v)スクロース勾配遠心分離(Stiernagle, T. (2006) WormBook, 1−11参照)によって細菌および残渣から分離した。N−グリカンの調製は、Poltl et al. (2007) Febs. J. 274, 714−726に従前に記載されているように、コアα1,3−フコシル化グリカンを他のコアフコシル化グリカンから分離するために、ペプチド−N−グリカナーゼ(PNGアーゼ)F、次いで、PNGアーゼAを用い、部分的に精製されたグリコペプチドからグリカンを酵素的に遊離させることによって行った。要するに、およそ3gの線虫(湿重)をボイルした後に摩砕した。この抽出物を5%(v/v)のギ酸を含むように調整し、3mgのペプシン(Sigma)とともに37℃で一晩インキュベートした。15,000gで15分遠心分離した後、上清を、2%酢酸で平衡化した15ml Dowex AG WX2に適用した。グリコペプチドを酢酸アンモニウム(0.6M、pH6)で溶出させた。オルシノール陽性画分をプールし、一晩凍結乾燥した。次に、セファデックスG25カラムに適用することでこれらのサンプルを脱塩し、1%酢酸で溶出させた。オルシノール陽性画分を再びプールし、凍結乾燥した。これらのサンプルを250μlの水に溶かした。95℃で5分間熱処理をして残留しているペプシンを不活化した後、サンプルをプールし、その後、250μlの炭酸アンモニウムバッファーpH8および3UのPNGアーゼF(Roche)を加え、37℃で一晩インキュベートした。次に、これらのサンプルを400μlの10%酢酸で酸性化し、5ml Dowex AG WX2に適用した。保持されなかった遊離グリカンは凍結乾燥し、次の蛍光標識のために乾燥させ、一方、保持されたオルシノール陽性画分は、酢酸アンモニウム(0.6M、pH6)で溶出させ、上記のように脱塩し、酢酸アンモニウムバッファー(50mM、pH5)に溶かし、37℃で一晩、PNGアーゼA(0.6mU)で処理した。再び、これらのサンプルを400μlの10%酢酸で酸性化し、5ml Dowex AG WX2に適用した。保持されなかった遊離グリカンを凍結乾燥し、また、次の蛍光標識のために乾燥させた。
【0121】
実施例6−C.エレガンスN−グリカンの標識および構造分析
N−グリカンの蛍光標識は、2−アミノ−ピリジン(PA)を用い、従前に記載されている通りに行った。PNGアーゼAまたはFのいずれかによって遊離され、ピリジルアミノ化されたグリカンの完全なN−グライコームを、室温にて、島津HPLCシステム(Class−VPソフトウエア(V6.13SP2)を用い、パーソナルコンピューターによって制御される、SCL−10Aコントローラー、2基のLC10APポンプおよびRF−10AXL蛍光検出器からなる)および蛍光検出(310または320nmで励起、380または400nmで発光を検出)を用いる2D−HPLCによって分画した。N−グリカンは、順相HPLC(Tosoh TSKゲルアミド−80、4.6×250mm、5μm;流速1ml/分、溶出:71.3%MeCN無勾配で5分、71.3%から61.8%MeCNの勾配で10分、61.8%MeCN無勾配で25分、61.8%から54.2%MeCNで15分、ギ酸アンモニウム(10mM、pH7)をバッファーとして使用)にて最初に分画された。これらの画分を凍結乾燥し、逆相HPLC(Hypersil ODS C−18;4×250mm、5μm;流速1.5ml/分、30分にわたって0〜30%MeOHの勾配、ギ酸アンモニウム(0.1M、pH4)をバッファーとして使用)にてさらに分画した。HPLCクロマトグラムを、オープンソースプログラムPLOT(Wesemann and Thijsseによるバージョン0.997)を用いて可視化した。各画分に対し、Bruker Ultraflex TOF/TOFを、マトリックスとしての2,5−ジヒドロキシ安息香酸とともに用いて、モノアイソトピックMALDI−TOF MSを行った。一般に、フコース含有N−グリカンを含む全ての画分に対してMS/MSを行い、それらの組成を明らかにした。ペプチド標品混合物(Bruker)を外部較正に用いた。MSデータは、BrukerソフトウエアおよびmMass V2.4ソフトウエアパッケージを用いて分析した(Strohalm, M. et al., M. (2008) Rapid Commun Mass Spectrom 22, 905−908参照)。
【0122】
選択された単離N−グリカンに関して、ニホンコウジカビ(Aspergillus oryzae)β1,4−ガラクトシダーゼ(27mU、50mMクエン酸ナトリウム、pH4.5)(Gutternigg, M. et al. (2007) J. Biol. Chem. 282, 2785−27840参照)で37℃にて2日間処理することにより末端β−ガラクトシドの存在を調べるか、またはウシ腎臓α−フコシダーゼ(Sigma、15mU、50mM酢酸アンモニウム、pH5)の使用によって末端α−フコシドの存在を調べた。次に、消化産物に関して、変化した構造的特徴をRP−HPLC(上記参照)およびMALDI−TOF MSによって分析した。
【0123】
実施例7−等温滴定熱量測定(ITC)法
試験は、精製CGL2(TBS中300μM)を用い、25℃でVP−ITC等温滴定熱量測定計(Microcal,マサチューセッツ州,米国)にて行った。Gal−β−1,4−Fuc−α−1,6−GlcNAc−β−O−C5H10−NH2をTBS中に、1H−NMRによる純度評価値に基づいて補正した1.6mMの濃度で溶かした(およそ50〜60%)。このリガンドを、タンパク質溶液を含有するセル中へ、2μl 1回の注入の後、6μl 48回の注入によって滴定した。注入は全て、270rpmで攪拌しながら、3分間隔で行った。試験データを、Microcalによって供給されているMCS−ORIGINソフトウエアを用い、理論的滴定曲線に当てはめた。1タンパク質モノマーにつき1リガンド結合部位のモデルを用い、結合部位の数(N=0.977±0.004)、会合定数(Ka=1.15±0.044×104M−1)およびエンタルピー変化(ΔH=−8.85±0.1kcal/mol)を得た。
【0124】
実施例8−捻転胃虫毒性アッセイ
上述の寄生性線虫に対する毒性を、96ウェル細胞培養プレートを用いた液体アッセイで評価した。捻転胃虫の卵を感染したヒツジの糞便から分離し、カナマイシン(50μg/ml)およびアムホテリシンB(2.5μg/ml)を含む水−寒天プレート上で孵化させた。およそ30固体のL1幼虫を回収し、各ウェルの総容量150μlの0.1×Earls溶液中に移した。食餌源として、レクチン発現大腸菌BL21(DE3)細胞かまたは大腸菌OP50のいずれか(OD600=1)を、種々の濃度の精製抗体またはレクチンと組み合わせて加えた。プレートを暗所、28℃でインキュベートし、L3期へ発達した幼虫のパーセンテージを7日後に求めた。
表1:C.エレガンスグリコシル化突然変異体の比較。コードされている酵素の機能はwww.wormbase.org.から引用した。
【0125】
【表1】
【0126】
本発明を好ましい実施形態および実施例を強調して記載してきたが、当業者には、好ましい実施形態の変形が使用可能であること、本発明が本明細書に具体的に記載されたもの以外の方法でも実施可能であることが意図されることが自明であろう。さらに、以上の実施例は単に例示のために含められているものであり、いずれの点からも本発明の範囲を限定するものとみなされるべきでない。よって、本発明は添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨および範囲内に包含されるあらゆる改変を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤としてのグリカン結合ポリペプチドの使用。
【請求項2】
グリカン結合ポリペプチドがN−グリカン結合ポリペプチドから選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
N−グリカン結合ポリペプチドが、ガラクトシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、ガラクト−ピラノシル−β−1,4含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,4−L−フコピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,4−L−フコピラノシル−α−1,6−GlcNAc含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、GnGnF6Gal含有および/またはMMF6Gal含有オリゴ糖および複合糖質と結合する、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
N−グリカン結合ポリペプチドが、フコシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、L−フコピラノシル−α−1,3含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、L−フコピラノシル−α−1,3−GlcNAc含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、GnGnF3含有および/またはMMF3含有オリゴ糖および複合糖質と結合する、請求項2に記載の使用。
【請求項5】
グリカン結合ポリペプチドがO−グリカン結合ポリペプチドから選択され、O−グリカン結合ポリペプチドがガラクトシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,3含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル−O−Ser/Thr化合物と結合する、請求項1に記載の使用。
【請求項6】
グリカン結合ポリペプチドが、リポグリカン結合ポリペプチド、好ましくは、ガラクトシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−α−1,3含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−α−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−α−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル−β−1,4−N−アセチル−D−グルコサミノ−ピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質と結合するものから選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項7】
ポリペプチドが、好ましくは、毛様線虫科(Trichostrongylidae)、好ましくは、捻転胃虫(Haemonchus contortus)、蛇状毛様線虫(Trichostrongylus colubriformis)、テラドルサジア・サークムシンクタ(Teladorsagia circumcincta)、クーペリア・オンコフォラ(Cooperia oncophora)、ネマトディルス・バッタス(Nematodirus battus)、オステルタジア・レプトスピアリアス(Ostertagia leptospiarias)、大口腸線虫(Chabertia ovina)、ブタ腸結節虫(Oesophagostomum dentatum)、ならびに線虫種の旋毛虫(Trichinella spiralis)、鞭虫(Trichuris trichuria)、住血線虫(Angiostrongylus vasorum)、イヌ鉤虫(Ancylostoma caninum)、ズビニ鉤虫(Ancylostoma duodenale)、セイロン鉤虫(Ancylostoma ceylanicum)、アメリカ鉤虫(Necator americanus)、肺虫種(Dictyocaulus spp.)、回虫(Ascaris lumbricoides)、ブタ回虫(Ascaris suum)、バンクロフト糸状虫(Wuchereria bancrofti)、マレー糸状虫(Brugia malayi)、ロア糸状虫(Loa loa)、蟯虫(Enterobius vermicularis)、イヌ糸状虫(Dirofilaria immitis)、回旋糸状虫(Onchocerca volvulus)および糞線虫(Strongyloides stercoralis)から選択される線虫により産生される少なくとも1つの線虫グリカンと結合する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
ポリペプチドがレクチン、抗体、抗体のフラグメントまたは機能的誘導体および抗体様結合タンパク質からなる群から選択される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
ポリペプチドが多価であり、従って少なくとも2つ以上のグリカンと結合する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
レクチンが真菌レクチン、好ましくは、ウシグソヒトヨタケ(Coprinopsis cinerea)、キッコウアワタケ(Xerocomus chrysenteron)、シバフタケ(Marasmius oreades)、ヒイロチャワンタケ(Aleuria aurantia)またはソルダリア・マクロスポラ(Sordaria macrospora)由来のレクチン、より好ましくは、CGL1、CGL2、RedA(CCL2)、CCL1、XCL、MOA、AALおよびTAP1からなる群から選択されるレクチンの群から選択される、請求項8または9に記載の使用。
【請求項11】
蠕虫感染、好ましくは線虫感染または免疫疾患を治療および/または予防するための、請求項1〜10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
蠕虫感染、好ましくは線虫感染が、毛様線虫科、好ましくは、捻転胃虫、蛇状毛様線虫、テラドルサジア・サークムシンクタ、クーペリア・オンコフォラ、ネマトディルス・バッタス、オステルタジア・レプトスピアリアス、大口腸線虫、ブタ腸結節虫、ならびに線虫種の旋毛虫、鞭虫、住血線虫、イヌ鉤虫、ズビニ鉤虫、セイロン鉤虫、アメリカ鉤虫、肺虫種、回虫、ブタ回虫、バンクロフト糸状虫、マレー糸状虫、ロア糸状虫、蟯虫、イヌ糸状虫、回旋糸状虫および糞線虫から選択される蠕虫によって起こる、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
免疫疾患がアレルギー、好ましくは植物およびダニに対するアレルギー、および自己免疫疾患、好ましくはクローン病からなる群から選択される、請求項11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
薬剤としての、ガラクトシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、ガラクト−ピラノシル−β−1,4含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,4−L−フコピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,4−L−フコピラノシル−α−1,6−GlcNAc含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、GnGnF6Gal含有および/またはMMF6Gal含有オリゴ糖および複合糖質からなる群から好ましく選択されるN−グリカンの使用。
【請求項15】
フコシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、L−フコピラノシル−α−1,3含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、L−フコピラノシル−α−1,3−GlcNAc含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、GnGnF3含有および/またはMMF3含有オリゴ糖および複合糖質からなる群から好ましく選択される、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
薬剤としての、ガラクトシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,3含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル−O−Ser/Thr化合物から好ましく選択される、O−グリカンの使用。
【請求項17】
薬剤としての、ガラクトシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−α−1,3含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−α−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−α−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル−β−1,4−N−アセチル−D−グルコサミノ−ピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質から好ましく選択される、リポグリカンの使用。
【請求項18】
(i)グリカンが細菌細胞、好ましくは、腸内細菌、より好ましくは、大腸菌(Escherichia coli)またはネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)の表面に展示されるか、または(ii)グリカンが、キーホールリンペット・ヘモシアニン(KLH)、セイヨウワサビ・ペルオキシダーゼ(HRP)、ブロメライン、タチナタマメ・マンノシダーゼ、ハリエニシダ(Ulex europaeus)凝集素(UEA)、ミツバチ・ホスホリパーゼA2およびアメリカカブトガニ(Limulus polyphemus)などの軟体動物のヘモシアニン、これらのいずれかの機能的フラグメントまたは機能的誘導体からなる群から好ましく選択される糖タンパク質の一部である、請求項14〜17のいずれか一項に記載の使用。
【請求項19】
蠕虫感染、好ましくは線虫感染または免疫疾患を治療および/または予防するための請求項14〜の18いずれか一項に記載の使用。
【請求項20】
蠕虫感染、好ましくは、線虫感染が、毛様線虫科、好ましくは、捻転胃虫、蛇状毛様線虫、テラドルサジア・サークムシンクタ、クーペリア・オンコフォラ、ネマトディルス・バッタス、オステルタジア・レプトスピアリアス、大口腸線虫、ブタ腸結節虫、ならびに線虫種の旋毛虫、鞭虫、住血線虫、イヌ鉤虫、ズビニ鉤虫、セイロン鉤虫、アメリカ鉤虫、肺虫種、回虫、ブタ回虫、バンクロフト糸状虫、マレー糸状虫、ロア糸状虫、蟯虫、イヌ糸状虫、回旋糸状虫および糞線虫から選択される蠕虫によって起こる感染である、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
免疫疾患がアレルギー、好ましくは植物およびダニに対するアレルギー、および自己免疫疾患、好ましくはクローン病からなる群から選択される、請求項19に記載の使用。
【請求項22】
少なくとも1つのグリカン結合ポリペプチドを含む、医薬組成物。
【請求項23】
グリカン結合ポリペプチドがN−グリカン、好ましくは、ガラクトシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、ガラクト−ピラノシル−β−1,4含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,4−L−フコピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,4−L−フコピラノシル−α−1,6−GlcNAc含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、GnGnF6Gal含有および/またはMMF6Gal含有オリゴ糖および複合糖質と結合する、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
グリカン結合ポリペプチドが、フコシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、L−フコピラノシル−α−1,3含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、L−フコピラノシル−α−1,3−GlcNAc含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、GnGnF3含有および/またはMMF3含有オリゴ糖および複合糖質からなる群から選択されるN−グリカンと結合する、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
グリカン結合ポリペプチドが、ガラクトシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,3含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル−O−Ser/Thr化合物からなるO−グリカンの群から好ましく選択されるO−グリカンと結合する、請求項22に記載の組成物。
【請求項26】
グリカン結合ポリペプチドが、リポグリカン、好ましくは、ガラクトシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−α−1,3含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−α−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−α−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル−β−1,4−N−アセチル−D−グルコサミノ−ピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質と結合する、請求項22に記載の組成物。
【請求項27】
グリカン結合ポリペプチドが、毛様線虫科、好ましくは、捻転胃虫、蛇状毛様線虫、テラドルサジア・サークムシンクタ、クーペリア・オンコフォラ、ネマトディルス・バッタス、オステルタジア・レプトスピアリアス、大口腸線虫、ブタ腸結節虫、ならびに線虫種の旋毛虫、鞭虫、住血線虫、イヌ鉤虫、ズビニ鉤虫、セイロン鉤虫、アメリカ鉤虫、肺虫種、回虫、ブタ回虫、バンクロフト糸状虫、マレー糸状虫、ロア糸状虫、蟯虫、イヌ糸状虫、回旋糸状虫および糞線虫から選択される線虫によって産生される少なくとも1つの線虫グリカンと結合する、請求項22〜26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
ポリペプチドがレクチン、抗体、抗体のフラグメントまたは機能的誘導体および抗体様結合タンパク質からなる群から選択される、請求項22〜27のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
ポリペプチドが多価であり、従って少なくとも2つ以上のグリカンと結合する、請求項22〜28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
ポリペプチドが、真菌レクチン、好ましくは、ウシグソヒトヨタケ、キッコウアワタケ、シバフタケ、ヒイロチャワンタケまたはソルダリア・マクロスポラ由来のレクチン、より好ましくは、レクチンCGL1、CGL2、RedA(CCL2)、CCL1、XCL、MOA、AALおよびTAP1の群から選択されるレクチンである、請求項22〜29のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項31】
グリカン結合ポリペプチド(glycan−binding polypepides)が細菌細胞、好ましくは、腸内細菌、より好ましくは、ヒト腸内細菌細胞、最も好ましくは、大腸菌またはネズミチフス菌の表面に提示される、請求項22〜30のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項32】
好ましくは、ガラクトシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、ガラクト−ピラノシル−β−1,4含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,4−L−フコピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,4−L−フコピラノシル−α−1,6−GlcNAc含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、GnGnF6Gal含有および/またはMMF6Gal含有オリゴ糖および複合糖質から選択されるN−グリカンを含む、薬組成物。
【請求項33】
グリカンがフコシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、L−フコピラノシル−α−1,3含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、L−フコピラノシル−α−1,3−GlcNAc含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、GnGnF3含有および/またはMMF3含有オリゴ糖および複合糖質から選択される、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
O−グリカン、好ましくは、ガラクトシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,3含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル−O−Ser/Thr化合物を含む、医薬組成物。
【請求項35】
リポグリカン、好ましくは、ガラクトシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−α−1,3含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−α−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−α−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル−β−1,4−N−アセチル−D−グルコサミノ−ピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質を含む、医薬組成物。
【請求項36】
グリカンまたはリポグリカンが、毛様線虫科、好ましくは、捻転胃虫、蛇状毛様線虫、テラドルサジア・サークムシンクタ、クーペリア・オンコフォラ、ネマトディルス・バッタス、オステルタジア・レプトスピアリアス、大口腸線虫、ブタ腸結節虫、ならびに線虫種の旋毛虫、鞭虫、住血線虫、イヌ鉤虫、ズビニ鉤虫、セイロン鉤虫、アメリカ鉤虫、肺虫種、回虫、ブタ回虫、バンクロフト糸状虫、マレー糸状虫、ロア糸状虫、蟯虫、イヌ糸状虫、回旋糸状虫および糞線虫から選択される線虫によって産生されるものである、請求項32〜35のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項37】
(i)グリカンが細菌細胞、好ましくは、腸内細菌、より好ましくは、大腸菌またはネズミチフス菌の表面に展示されるか、または(ii)グリカンが、好ましくは、キーホールリンペット・ヘモシアニン(KLH)、セイヨウワサビ・ペルオキシダーゼ(HRP)、ブロメライン、タチナタマメ・マンノシダーゼ、ハリエニシダ凝集素(UEA)、ミツバチ・ホスホリパーゼA2およびアメリカカブトガニなどの軟体動物のヘモシアニン、これらのいずれかの機能的フラグメントまたは機能的誘導体からなる群から選択される糖タンパク質の一部である、請求項32〜36のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項38】
単離されたグリカン、複合糖質および/またはグリカン結合ポリペプチドを含む、食品。
【請求項39】
単離されたグリカン、複合糖質および/またはグリカン結合ポリペプチドを含む、動物飼料。
【請求項40】
寄生性蠕虫の組換えまたは天然消化性プロテアーゼ(その機能的フラグメントおよび機能的誘導体を含む)を含む、請求項22〜37のいずれか一項に記載の組成物、請求項38に記載の食品、または請求項39に記載の動物飼料。
【請求項41】
グリカン結合ポリペプチドと結合した際に毒性を媒介する少なくとも1つのグリカンを含む蠕虫、好ましくは、線虫を同定する方法であって、
(a)少なくとも1つのグリカン結合ポリペプチド、好ましくは、真菌、細菌および/または植物グリカン結合タンパク質、および任意選択の蠕虫食餌細胞、好ましくは、腸内細菌、より好ましくは、大腸菌、最も好ましくは、該少なくとも1つのグリカン結合ポリペプチドを含む蠕虫食餌細胞を準備すること;
(b)(a)の少なくとも1つのグリカン結合ポリペプチドおよび任意選択の蠕虫食餌細胞と、対象とする蠕虫細胞または蠕虫、好ましくは、線虫細胞または線虫とを、(i)グリカン結合ポリペプチドが蠕虫細胞に結合することを可能とし、かつ/または(ii)蠕虫細胞または蠕虫に任意選択の食餌細胞を摂食させることを可能とする条件下で接触させること;および
(c)死滅した蠕虫細胞または蠕虫を同定すること;
(d)任意選択により、(a)の少なくとも1つの毒性グリカン結合ポリペプチドを同定すること;
(e)任意選択により、少なくとも1つの毒性グリカン結合ポリペプチドと結合した際に毒性を媒介する少なくとも1つのグリカンを同定すること
を含む、方法。
【請求項42】
ステップa)の少なくとも1つのグリカン結合ポリペプチドが蠕虫食餌細胞、好ましくは、大腸菌によって、より好ましくは、細胞質において活性型で発現される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
グリカン結合タンパク質と結合した際のグリカンにより媒介される毒性に関与する蠕虫遺伝子標的、好ましくは、線虫遺伝子標的、好ましくは、蠕虫グリカンおよび複合糖質の生合成に関与する酵素をコードする遺伝子標的を同定する方法であって、
(a)グリカン特異性を有するグリカン結合ポリペプチドと結合した際に毒性を媒介する特異的グリカンを産生する、ランダム突然変異および/または標的突然変異を有する蠕虫細胞または蠕虫、および任意選択の野生型蠕虫細胞または蠕虫を準備すること;
(b)(a)の蠕虫細胞または蠕虫と、該グリカン特異性を有する少なくとも1つのグリカン結合ポリペプチドとを、任意選択により、蠕虫食餌細胞、好ましくは、腸内細菌、より好ましくは、大腸菌、好ましくは、該少なくとも1つのグリカン結合ポリペプチドを含む蠕虫食餌細胞の存在下で接触させること;および
(c)(b)におけるグリカン結合ポリペプチドの接触から生き残る(a)の蠕虫細胞または蠕虫における突然変異遺伝子を同定すること
を含む、方法。
【請求項44】
ステップb)の少なくとも1つのグリカン結合ポリペプチドが蠕虫食餌細胞、好ましくは、大腸菌によって、より好ましくは、細胞質において活性型で発現される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
請求項42に記載の毒性を媒介する遺伝子標的を同定する方法であって、毒性関連グリカンを同定する、好ましくは、
(d.i)ステップ(c)の突然変異遺伝子と、特徴的な遺伝子、好ましくは、グリカン生合成に関与する酵素をコードする遺伝子、より好ましくは、蠕虫のグリカン生合成に関与する酵素をコードする遺伝子とを比較するステップ;
(d.ii)(c)で同定された突然変異体のN−グライコーム、O−グライコームまたはリポグライコームと、野生型蠕虫のグライコームとを、好ましくは、個々の複合糖質の生化学的単離とクロマトグラフィーおよび質量分析によるそれらの分析によって比較するステップ;
(d.iii)ステップ(c)の遺伝子を異種系、例えば、昆虫細胞、好ましくは、SF9細胞において発現させ、その遺伝子産物の生化学的活性をin vitroにおいてアッセイするステップ
の1以上を包含するステップ(d)をさらに含む、方法。
【請求項46】
抗蠕虫物質、好ましくは、抗線虫物質を同定する方法であって、
(a)グリカンにより媒介される毒性に関与することが知られているグリカンを準備すること;
(b)(a)のグリカンと対象物質とを接触させること;
(c)(a)のグリカンと結合する対象物質を潜在的抗蠕虫物質、好ましくは、潜在的抗線虫物質として同定すること
を含む、方法。
【請求項47】
(a)のグリカンが細胞、好ましくは、細胞表面の一部を形成する、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
(a)のグリカンを含む細胞への対象物質の取り込みが増孔剤および/または該細胞に対する食餌細胞によって補助される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
グリカンが単離される、請求項46に記載の方法。
【請求項1】
薬剤としてのグリカン結合ポリペプチドの使用。
【請求項2】
グリカン結合ポリペプチドがN−グリカン結合ポリペプチドから選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
N−グリカン結合ポリペプチドが、ガラクトシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、ガラクト−ピラノシル−β−1,4含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,4−L−フコピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,4−L−フコピラノシル−α−1,6−GlcNAc含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、GnGnF6Gal含有および/またはMMF6Gal含有オリゴ糖および複合糖質と結合する、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
N−グリカン結合ポリペプチドが、フコシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、L−フコピラノシル−α−1,3含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、L−フコピラノシル−α−1,3−GlcNAc含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、GnGnF3含有および/またはMMF3含有オリゴ糖および複合糖質と結合する、請求項2に記載の使用。
【請求項5】
グリカン結合ポリペプチドがO−グリカン結合ポリペプチドから選択され、O−グリカン結合ポリペプチドがガラクトシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,3含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル−O−Ser/Thr化合物と結合する、請求項1に記載の使用。
【請求項6】
グリカン結合ポリペプチドが、リポグリカン結合ポリペプチド、好ましくは、ガラクトシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−α−1,3含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−α−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−α−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル−β−1,4−N−アセチル−D−グルコサミノ−ピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質と結合するものから選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項7】
ポリペプチドが、好ましくは、毛様線虫科(Trichostrongylidae)、好ましくは、捻転胃虫(Haemonchus contortus)、蛇状毛様線虫(Trichostrongylus colubriformis)、テラドルサジア・サークムシンクタ(Teladorsagia circumcincta)、クーペリア・オンコフォラ(Cooperia oncophora)、ネマトディルス・バッタス(Nematodirus battus)、オステルタジア・レプトスピアリアス(Ostertagia leptospiarias)、大口腸線虫(Chabertia ovina)、ブタ腸結節虫(Oesophagostomum dentatum)、ならびに線虫種の旋毛虫(Trichinella spiralis)、鞭虫(Trichuris trichuria)、住血線虫(Angiostrongylus vasorum)、イヌ鉤虫(Ancylostoma caninum)、ズビニ鉤虫(Ancylostoma duodenale)、セイロン鉤虫(Ancylostoma ceylanicum)、アメリカ鉤虫(Necator americanus)、肺虫種(Dictyocaulus spp.)、回虫(Ascaris lumbricoides)、ブタ回虫(Ascaris suum)、バンクロフト糸状虫(Wuchereria bancrofti)、マレー糸状虫(Brugia malayi)、ロア糸状虫(Loa loa)、蟯虫(Enterobius vermicularis)、イヌ糸状虫(Dirofilaria immitis)、回旋糸状虫(Onchocerca volvulus)および糞線虫(Strongyloides stercoralis)から選択される線虫により産生される少なくとも1つの線虫グリカンと結合する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
ポリペプチドがレクチン、抗体、抗体のフラグメントまたは機能的誘導体および抗体様結合タンパク質からなる群から選択される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
ポリペプチドが多価であり、従って少なくとも2つ以上のグリカンと結合する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
レクチンが真菌レクチン、好ましくは、ウシグソヒトヨタケ(Coprinopsis cinerea)、キッコウアワタケ(Xerocomus chrysenteron)、シバフタケ(Marasmius oreades)、ヒイロチャワンタケ(Aleuria aurantia)またはソルダリア・マクロスポラ(Sordaria macrospora)由来のレクチン、より好ましくは、CGL1、CGL2、RedA(CCL2)、CCL1、XCL、MOA、AALおよびTAP1からなる群から選択されるレクチンの群から選択される、請求項8または9に記載の使用。
【請求項11】
蠕虫感染、好ましくは線虫感染または免疫疾患を治療および/または予防するための、請求項1〜10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
蠕虫感染、好ましくは線虫感染が、毛様線虫科、好ましくは、捻転胃虫、蛇状毛様線虫、テラドルサジア・サークムシンクタ、クーペリア・オンコフォラ、ネマトディルス・バッタス、オステルタジア・レプトスピアリアス、大口腸線虫、ブタ腸結節虫、ならびに線虫種の旋毛虫、鞭虫、住血線虫、イヌ鉤虫、ズビニ鉤虫、セイロン鉤虫、アメリカ鉤虫、肺虫種、回虫、ブタ回虫、バンクロフト糸状虫、マレー糸状虫、ロア糸状虫、蟯虫、イヌ糸状虫、回旋糸状虫および糞線虫から選択される蠕虫によって起こる、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
免疫疾患がアレルギー、好ましくは植物およびダニに対するアレルギー、および自己免疫疾患、好ましくはクローン病からなる群から選択される、請求項11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
薬剤としての、ガラクトシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、ガラクト−ピラノシル−β−1,4含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,4−L−フコピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,4−L−フコピラノシル−α−1,6−GlcNAc含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、GnGnF6Gal含有および/またはMMF6Gal含有オリゴ糖および複合糖質からなる群から好ましく選択されるN−グリカンの使用。
【請求項15】
フコシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、L−フコピラノシル−α−1,3含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、L−フコピラノシル−α−1,3−GlcNAc含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、GnGnF3含有および/またはMMF3含有オリゴ糖および複合糖質からなる群から好ましく選択される、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
薬剤としての、ガラクトシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,3含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル−O−Ser/Thr化合物から好ましく選択される、O−グリカンの使用。
【請求項17】
薬剤としての、ガラクトシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−α−1,3含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−α−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−α−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル−β−1,4−N−アセチル−D−グルコサミノ−ピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質から好ましく選択される、リポグリカンの使用。
【請求項18】
(i)グリカンが細菌細胞、好ましくは、腸内細菌、より好ましくは、大腸菌(Escherichia coli)またはネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)の表面に展示されるか、または(ii)グリカンが、キーホールリンペット・ヘモシアニン(KLH)、セイヨウワサビ・ペルオキシダーゼ(HRP)、ブロメライン、タチナタマメ・マンノシダーゼ、ハリエニシダ(Ulex europaeus)凝集素(UEA)、ミツバチ・ホスホリパーゼA2およびアメリカカブトガニ(Limulus polyphemus)などの軟体動物のヘモシアニン、これらのいずれかの機能的フラグメントまたは機能的誘導体からなる群から好ましく選択される糖タンパク質の一部である、請求項14〜17のいずれか一項に記載の使用。
【請求項19】
蠕虫感染、好ましくは線虫感染または免疫疾患を治療および/または予防するための請求項14〜の18いずれか一項に記載の使用。
【請求項20】
蠕虫感染、好ましくは、線虫感染が、毛様線虫科、好ましくは、捻転胃虫、蛇状毛様線虫、テラドルサジア・サークムシンクタ、クーペリア・オンコフォラ、ネマトディルス・バッタス、オステルタジア・レプトスピアリアス、大口腸線虫、ブタ腸結節虫、ならびに線虫種の旋毛虫、鞭虫、住血線虫、イヌ鉤虫、ズビニ鉤虫、セイロン鉤虫、アメリカ鉤虫、肺虫種、回虫、ブタ回虫、バンクロフト糸状虫、マレー糸状虫、ロア糸状虫、蟯虫、イヌ糸状虫、回旋糸状虫および糞線虫から選択される蠕虫によって起こる感染である、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
免疫疾患がアレルギー、好ましくは植物およびダニに対するアレルギー、および自己免疫疾患、好ましくはクローン病からなる群から選択される、請求項19に記載の使用。
【請求項22】
少なくとも1つのグリカン結合ポリペプチドを含む、医薬組成物。
【請求項23】
グリカン結合ポリペプチドがN−グリカン、好ましくは、ガラクトシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、ガラクト−ピラノシル−β−1,4含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,4−L−フコピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,4−L−フコピラノシル−α−1,6−GlcNAc含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、GnGnF6Gal含有および/またはMMF6Gal含有オリゴ糖および複合糖質と結合する、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
グリカン結合ポリペプチドが、フコシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、L−フコピラノシル−α−1,3含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、L−フコピラノシル−α−1,3−GlcNAc含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、GnGnF3含有および/またはMMF3含有オリゴ糖および複合糖質からなる群から選択されるN−グリカンと結合する、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
グリカン結合ポリペプチドが、ガラクトシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,3含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル−O−Ser/Thr化合物からなるO−グリカンの群から好ましく選択されるO−グリカンと結合する、請求項22に記載の組成物。
【請求項26】
グリカン結合ポリペプチドが、リポグリカン、好ましくは、ガラクトシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−α−1,3含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−α−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−α−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル−β−1,4−N−アセチル−D−グルコサミノ−ピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質と結合する、請求項22に記載の組成物。
【請求項27】
グリカン結合ポリペプチドが、毛様線虫科、好ましくは、捻転胃虫、蛇状毛様線虫、テラドルサジア・サークムシンクタ、クーペリア・オンコフォラ、ネマトディルス・バッタス、オステルタジア・レプトスピアリアス、大口腸線虫、ブタ腸結節虫、ならびに線虫種の旋毛虫、鞭虫、住血線虫、イヌ鉤虫、ズビニ鉤虫、セイロン鉤虫、アメリカ鉤虫、肺虫種、回虫、ブタ回虫、バンクロフト糸状虫、マレー糸状虫、ロア糸状虫、蟯虫、イヌ糸状虫、回旋糸状虫および糞線虫から選択される線虫によって産生される少なくとも1つの線虫グリカンと結合する、請求項22〜26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
ポリペプチドがレクチン、抗体、抗体のフラグメントまたは機能的誘導体および抗体様結合タンパク質からなる群から選択される、請求項22〜27のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
ポリペプチドが多価であり、従って少なくとも2つ以上のグリカンと結合する、請求項22〜28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
ポリペプチドが、真菌レクチン、好ましくは、ウシグソヒトヨタケ、キッコウアワタケ、シバフタケ、ヒイロチャワンタケまたはソルダリア・マクロスポラ由来のレクチン、より好ましくは、レクチンCGL1、CGL2、RedA(CCL2)、CCL1、XCL、MOA、AALおよびTAP1の群から選択されるレクチンである、請求項22〜29のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項31】
グリカン結合ポリペプチド(glycan−binding polypepides)が細菌細胞、好ましくは、腸内細菌、より好ましくは、ヒト腸内細菌細胞、最も好ましくは、大腸菌またはネズミチフス菌の表面に提示される、請求項22〜30のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項32】
好ましくは、ガラクトシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、ガラクト−ピラノシル−β−1,4含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,4−L−フコピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,4−L−フコピラノシル−α−1,6−GlcNAc含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、GnGnF6Gal含有および/またはMMF6Gal含有オリゴ糖および複合糖質から選択されるN−グリカンを含む、薬組成物。
【請求項33】
グリカンがフコシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、L−フコピラノシル−α−1,3含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、L−フコピラノシル−α−1,3−GlcNAc含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、GnGnF3含有および/またはMMF3含有オリゴ糖および複合糖質から選択される、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
O−グリカン、好ましくは、ガラクトシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,3含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−β−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル−O−Ser/Thr化合物を含む、医薬組成物。
【請求項35】
リポグリカン、好ましくは、ガラクトシド含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−α−1,3含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、より好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−α−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質、最も好ましくは、D−ガラクト−ピラノシル−α−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミノ−ピラノシル−β−1,4−N−アセチル−D−グルコサミノ−ピラノシル含有オリゴ/多糖および/または複合糖質を含む、医薬組成物。
【請求項36】
グリカンまたはリポグリカンが、毛様線虫科、好ましくは、捻転胃虫、蛇状毛様線虫、テラドルサジア・サークムシンクタ、クーペリア・オンコフォラ、ネマトディルス・バッタス、オステルタジア・レプトスピアリアス、大口腸線虫、ブタ腸結節虫、ならびに線虫種の旋毛虫、鞭虫、住血線虫、イヌ鉤虫、ズビニ鉤虫、セイロン鉤虫、アメリカ鉤虫、肺虫種、回虫、ブタ回虫、バンクロフト糸状虫、マレー糸状虫、ロア糸状虫、蟯虫、イヌ糸状虫、回旋糸状虫および糞線虫から選択される線虫によって産生されるものである、請求項32〜35のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項37】
(i)グリカンが細菌細胞、好ましくは、腸内細菌、より好ましくは、大腸菌またはネズミチフス菌の表面に展示されるか、または(ii)グリカンが、好ましくは、キーホールリンペット・ヘモシアニン(KLH)、セイヨウワサビ・ペルオキシダーゼ(HRP)、ブロメライン、タチナタマメ・マンノシダーゼ、ハリエニシダ凝集素(UEA)、ミツバチ・ホスホリパーゼA2およびアメリカカブトガニなどの軟体動物のヘモシアニン、これらのいずれかの機能的フラグメントまたは機能的誘導体からなる群から選択される糖タンパク質の一部である、請求項32〜36のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項38】
単離されたグリカン、複合糖質および/またはグリカン結合ポリペプチドを含む、食品。
【請求項39】
単離されたグリカン、複合糖質および/またはグリカン結合ポリペプチドを含む、動物飼料。
【請求項40】
寄生性蠕虫の組換えまたは天然消化性プロテアーゼ(その機能的フラグメントおよび機能的誘導体を含む)を含む、請求項22〜37のいずれか一項に記載の組成物、請求項38に記載の食品、または請求項39に記載の動物飼料。
【請求項41】
グリカン結合ポリペプチドと結合した際に毒性を媒介する少なくとも1つのグリカンを含む蠕虫、好ましくは、線虫を同定する方法であって、
(a)少なくとも1つのグリカン結合ポリペプチド、好ましくは、真菌、細菌および/または植物グリカン結合タンパク質、および任意選択の蠕虫食餌細胞、好ましくは、腸内細菌、より好ましくは、大腸菌、最も好ましくは、該少なくとも1つのグリカン結合ポリペプチドを含む蠕虫食餌細胞を準備すること;
(b)(a)の少なくとも1つのグリカン結合ポリペプチドおよび任意選択の蠕虫食餌細胞と、対象とする蠕虫細胞または蠕虫、好ましくは、線虫細胞または線虫とを、(i)グリカン結合ポリペプチドが蠕虫細胞に結合することを可能とし、かつ/または(ii)蠕虫細胞または蠕虫に任意選択の食餌細胞を摂食させることを可能とする条件下で接触させること;および
(c)死滅した蠕虫細胞または蠕虫を同定すること;
(d)任意選択により、(a)の少なくとも1つの毒性グリカン結合ポリペプチドを同定すること;
(e)任意選択により、少なくとも1つの毒性グリカン結合ポリペプチドと結合した際に毒性を媒介する少なくとも1つのグリカンを同定すること
を含む、方法。
【請求項42】
ステップa)の少なくとも1つのグリカン結合ポリペプチドが蠕虫食餌細胞、好ましくは、大腸菌によって、より好ましくは、細胞質において活性型で発現される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
グリカン結合タンパク質と結合した際のグリカンにより媒介される毒性に関与する蠕虫遺伝子標的、好ましくは、線虫遺伝子標的、好ましくは、蠕虫グリカンおよび複合糖質の生合成に関与する酵素をコードする遺伝子標的を同定する方法であって、
(a)グリカン特異性を有するグリカン結合ポリペプチドと結合した際に毒性を媒介する特異的グリカンを産生する、ランダム突然変異および/または標的突然変異を有する蠕虫細胞または蠕虫、および任意選択の野生型蠕虫細胞または蠕虫を準備すること;
(b)(a)の蠕虫細胞または蠕虫と、該グリカン特異性を有する少なくとも1つのグリカン結合ポリペプチドとを、任意選択により、蠕虫食餌細胞、好ましくは、腸内細菌、より好ましくは、大腸菌、好ましくは、該少なくとも1つのグリカン結合ポリペプチドを含む蠕虫食餌細胞の存在下で接触させること;および
(c)(b)におけるグリカン結合ポリペプチドの接触から生き残る(a)の蠕虫細胞または蠕虫における突然変異遺伝子を同定すること
を含む、方法。
【請求項44】
ステップb)の少なくとも1つのグリカン結合ポリペプチドが蠕虫食餌細胞、好ましくは、大腸菌によって、より好ましくは、細胞質において活性型で発現される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
請求項42に記載の毒性を媒介する遺伝子標的を同定する方法であって、毒性関連グリカンを同定する、好ましくは、
(d.i)ステップ(c)の突然変異遺伝子と、特徴的な遺伝子、好ましくは、グリカン生合成に関与する酵素をコードする遺伝子、より好ましくは、蠕虫のグリカン生合成に関与する酵素をコードする遺伝子とを比較するステップ;
(d.ii)(c)で同定された突然変異体のN−グライコーム、O−グライコームまたはリポグライコームと、野生型蠕虫のグライコームとを、好ましくは、個々の複合糖質の生化学的単離とクロマトグラフィーおよび質量分析によるそれらの分析によって比較するステップ;
(d.iii)ステップ(c)の遺伝子を異種系、例えば、昆虫細胞、好ましくは、SF9細胞において発現させ、その遺伝子産物の生化学的活性をin vitroにおいてアッセイするステップ
の1以上を包含するステップ(d)をさらに含む、方法。
【請求項46】
抗蠕虫物質、好ましくは、抗線虫物質を同定する方法であって、
(a)グリカンにより媒介される毒性に関与することが知られているグリカンを準備すること;
(b)(a)のグリカンと対象物質とを接触させること;
(c)(a)のグリカンと結合する対象物質を潜在的抗蠕虫物質、好ましくは、潜在的抗線虫物質として同定すること
を含む、方法。
【請求項47】
(a)のグリカンが細胞、好ましくは、細胞表面の一部を形成する、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
(a)のグリカンを含む細胞への対象物質の取り込みが増孔剤および/または該細胞に対する食餌細胞によって補助される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
グリカンが単離される、請求項46に記載の方法。
【図2C】
【図3D】
【図5】
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図3D】
【図5】
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2013−508319(P2013−508319A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534569(P2012−534569)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【国際出願番号】PCT/EP2010/006228
【国際公開番号】WO2011/047794
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(506110634)
【出願人】(512059040)ユニヴァーシティー オブ チューリッヒ (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【国際出願番号】PCT/EP2010/006228
【国際公開番号】WO2011/047794
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(506110634)
【出願人】(512059040)ユニヴァーシティー オブ チューリッヒ (1)
【Fターム(参考)】
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