説明

グリッドワイヤの取付方法

【課題】グリッドワイヤを用いたスコロトロン方式の帯電装置において、グリッドワイヤをシールドケースに所定の張力で容易に張架できるようにする。
【解決手段】シールドケース1の側壁10a,10bの略中間部をそれぞれ外方へ押し広げる。次に、ピン13,13,・・・にグリッドワイヤ3を交互に掛け渡して、シールドケース1の上面開口11にグリッドワイヤ3を張り渡す。その後側壁10a,10bを元の状態に戻し、シールドケース1の上面開口11に掛け渡されたグリッドワイヤ3に張力を加える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はいわゆるスコロトロン方式の帯電装置におけるグリッドワイヤの取付方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタ、ファクシミリなどの画像形成装置において、感光体表面を一様に帯電させる装置として、放電ワイヤに高電圧を印加してコロナ放電を生じさせるものがこれまでから広く用いられている。さらにはコロナ放電分布を一層均一にするために、グリッドを備えたスコロトロン方式の帯電装置が多く用いられている。
【0003】
図7及び図8に、スコロトロン方式の帯電装置の一例を示す。図7に示す帯電装置は、シールドケース1とチャージャケース2を備え、シールドケース1をチャージャケース2に係合してなる。帯電装置の内部には不図示の放電ワイヤが長手方向に張架されている。一方、シールドケース1は、上面開口11を有する細長い略直方体状をしてなり、その両端部には一対のグリッドホルダ12a,12bを備えている。一対のグリッドホルダ12a,12bにはそれぞれ複数のピン(ワイヤ掛け部)13,13,・・・が形成され、これら複数のピン13,13,・・・によって、一本のグリッドワイヤ3がシールドケース1の上面開口11を跨ぐように折り返し張架されている。
【0004】
このグリッドワイヤ3をシールドケース1の上面開口11に張り渡すには、まずグリッドワイヤ3の始端を、一方のグリッドホルダ12bの最端ピンの一つに巻き付け固定する。つぎに、シールドケース1の両端部グリッドホルダ12a,12bのピン13,13,・・・にグリッドワイヤ3を交互に引っ掛けて、シールドケース1の上面開口11に複数本のグリッドワイヤ3を跨ぐように張架する。そして図8に示すように、グリッドワイヤ3の終端をネジ4に巻き付け、グリッドホルダ12aに形成されたネジ穴14にネジ4を螺入してグリッドワイヤ3の端部を固定していた。
【0005】
ところが、グリッドワイヤ3は張力をかけた状態で固定する必要があるため、グリッドワイヤ3を引っ張りながら固定用のネジ4を締めるといった熟練が必要な作業を要していた。
【0006】
そこで例えば特許文献1では、グリッドワイヤを係止したグリッドアンカーを回動させることによってグリッドテンションを調整することが提案されている。
【特許文献1】特開平5−150616号公報
【特許文献2】特開2003−140438号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら提案されたグリッドテンションの調整方法では、部品点数が多くなり又組立作業が煩雑となる。
【0008】
本発明はこのような従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、グリッドワイヤをシールドケースに所定の張力で容易に張架できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、上面開口の細長い略直方体状のシールドケースの両端部に形成された複数のワイヤ掛け部に、前記上面開口を跨ぐようにグリッドワイヤを折り返し張架する方法であって、前記シールドケースの長手側の側壁の略中間部をそれぞれ外方へ押し広げた後、前記ワイヤ掛け部にグリッドワイヤを交互に掛け渡して、シールドケースの上面開口にグリッドワイヤを張り渡し、その後前記長手側の側壁を元の状態に戻し、シールドケースの上面開口に掛け渡されたグリッドワイヤにさらに張力を加えることを特徴とするシールドケースへのグリッドワイヤの取付方法が提供される。
【0010】
ここで、シールドケースを押し広げる作業性とグリッドワイヤにかける張力とのバランスなどの観点から、シールドケースの側壁の押し広げ後の幅を、押し広げる前の幅の1.1〜1.5倍の範囲とするのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の取付方法では、シールドケースの長手側の側壁の略中間部をそれぞれ外方へ押し広げた後、ワイヤ掛け部にグリッドワイヤを交互に掛け渡して、シールドケースの上面開口にグリッドワイヤを張り渡し、その後長手側の側壁を元の状態に戻し、シールドケースの上面開口に掛け渡されたグリッドワイヤに張力を加える、すなわち本発明の取付方法では、シールドケースの側壁の弾性によってグリッドワイヤに張力を加えるので、従来と異なって部品点数を増やすことなく、グリッドワイヤに所定張力をかけられる。これによりグリッドワイヤの取り付け作業性が従来に比べて格段に向上する。
【0012】
また、シールドケースの側壁の押し広げ後の幅を、押し広げる前の幅の1.1〜1.5倍の範囲にすると、シールドケースを押し広げる作業を困難にすることなくグリッドワイヤに所望の張力がかけられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係るグリッドワイヤの取付方法について図に基づいて説明する。なお本発明はこれらの実施形態に何ら限定されるものではない。
【0014】
図1に、まずスコロトロン方式の帯電装置を用いた画像形成装置の概説図を示す。この図の画像形成装置は、いわゆる胴内排紙型画像形成装置である。装置本体Mの上下方向略中央部には、正面側が開口した排紙空間6が形成されている。この排紙空間6の底面には、排出される用紙を載置するためのトレイ87が筺体と一体成形されている。一方、排紙空間6の上側には、原稿を読み取るための読取機構91が内蔵され、排紙空間6の下側には、画像形成機構が内蔵されている。
【0015】
画像形成機構について説明すると、感光体ドラム70は帯電装置Cによってその表面が正又は負に一様に帯電される。後述するように帯電装置Cでは、放電ワイヤに高電圧を印加してコロナ放電を発生させ、感光体ドラム70表面を帯電させると同時に、グリッドワイヤに所定電圧を印加することによって感光体ドラム70表面の帯電ムラを抑えている。
【0016】
他方、原稿載置台90に原稿(不図示)が載置され、その画像データが読取装置91によって読みとられる。読み取られた画像データはレーザスキャナ(露光装置)72によって感光体ドラム70の表面に書き込まれ、感光体ドラム70の表面に静電潜像が形成される。具体的には反転現像方式の場合には画像に相当する部分の帯電が除去され、正規現像方式の場合は背景に相当する部分の帯電が除去されて、それぞれ静電潜像が形成される。次に現像装置73によって感光体ドラム70上の静電潜像をトナーで可視像化する。このときトナーの帯電極性は、反転現像方式の場合には感光体ドラム70の帯電極性と同極性であり、正規現像の場合は感光体ドラム70の帯電極性と逆極性である。
【0017】
一方、給紙カセット81に収納されている用紙Pは、ピックアップローラ82により引き出され、給紙ローラ83とさばきローラ84とで挟持されて搬送路へ送られる。そしてレジストローラ対80によって、感光体ドラム70上のトナー画像が転写部に到達するのにタイミングを合わせて、用紙Pは転写部へ送り出される。転写部では、感光体ドラム70と転写ローラ74との間で用紙Pが挟持されている状態で、トナー帯電極性と逆極性の電荷が転写ローラ74に印加されることにより、感光体ドラム70上のトナー像が用紙P上に移動する。用紙P上に移動せず感光体ドラム70上に残留したトナーはクリーニングローラ75によって除去回収される。一方、トナー像を載置した用紙Pは定着ローラ対85へ搬送される。ここでトナー像は定着ローラ対85によって加熱・加圧されて用紙Pに定着する。そして用紙Pは排出ローラ対86に送られ、トレイ87へ排出される。
【0018】
図2に、図1の画像形成装置で用いられている帯電装置Cの斜視図を示す。この帯電装置Cは、シールドケース1とチャージャケース2を備え、シールドケース1をチャージャケース2に係合してなる。チャージャケース2には放電ワイヤ21が長手方向に張架されている。そして、内底面上には棒状部材231の外周に螺旋に翼部232が形成されたスクリュ23が回動可能に取り付けられており、放電ワイヤ21及びグリッドワイヤ3を清掃する清掃部材22がこのスクリュ23の翼部232に螺接されている。不図示のモータによってスクリュ23が回動することによって清掃部材22が長手方向に移動し、放電ワイヤ21及びグリッドワイヤ3にそれぞれ接触しているフェルトなどからなる清掃具221によって、放電ワイヤ21及びグリッドワイヤ3が清掃される。
【0019】
一方、シールドケース1は、ステンレス鋼などの導電性の材料を細長い略直方体状に成形してなり、その両端部には一対のグリッドホルダ12a,12bを備えている。グリッドホルダ12a,12bにはそれぞれ複数のピン(ワイヤ掛け部)13,13,・・・が形成され、一方のグリッドホルダ12aにはさらに、グリッドワイヤ3の終端を固定するためのネジ4が螺合するネジ穴14が形成されている。そしてこのグリッドホルダ12aの、シールドケース1の上面開口11とネジ穴14との間の側部には突起15が形成されている。この部分の拡大斜視図を図3に示す。
【0020】
図3に示すように突起15は、グリッドホルダ12aの側部に形成された切欠部16から外方へ突出するように形成され、その裏面側には切欠部16の側面に沿って溝部17が形成されている(図6を参照)。なお、この突起15はグリッドホルダ12aと一体成形されている。
【0021】
図4に、このような構造のシールドケース1にグリッドワイヤ3を張り渡す工程図を示す。まずシールドケース1の対向する側壁10a,10bの略中間部をそれぞれ外方へ押し広げる(同図(b))。側壁10a,10bを外方へ押し広げる手段としては特に限定はないが、例えば図5に示すような治具5を用いてもよい。図5に示す治具5は、基台51と、その上に形成されたシールドケース1の側壁間に押し入る押入部52とを備える。基台51と押入部52とは一体成形したものであってもよいし、別体で成形後接合したものであってもよい。押入部52の垂直断面は台形状であって、台形の上辺の長さは、押し広げる前の側壁間距離W1以下とされ、台形の高さは側壁の高さ以下とされている。また、台形の下辺の長さは側壁を押し広げた後の側壁間距離W2となる(図4(b)参照)。
【0022】
この治具5によってシールドケース1の側壁10a,10bを押し広げるときは、シールドケース1の下面開口から治具5を差し入れ、シールドケース1の側壁下端が治具5の基台51上面に当接するまで押し込む。すると、図5(b)に示すように、シールドケース1の側壁10a,10bが治具5によって外側に押し広げられる。押し広げられた側壁間距離は押入部52の下辺の長さW2となる(図4(b)参照)。押し広げ距離の調整は治具5の押入部52の下辺長さを調整することによって行える。側壁押し広げ幅はW2/W1が1.1〜1.5の範囲が好ましい。W2/W1が1.1未満であると、グリッドワイヤ3に十分な張力がかからない。一方W2/W1が1.5を超えると、両側壁を押し広げる作業労力が大きくなるからである。
【0023】
図4(c)に示すように、両側壁が押し広げられたシールドケース1にグリッドワイヤ3を張り渡す。具体的には、一対のグリッドホルダ12a,12bに形成された複数のピン13,13,・・・によって、シールドケース1の上面開口11にグリッドワイヤ3を折り返し張ってゆく。そしてグリッドワイヤ3の終端は、グリッドホルダ12aに形成された突起15に約1周巻き付けた後、ネジ4に巻きつけ、グリッドホルダ12aに形成されたネジ穴14にネジ4を螺入することによって、ネジ4の頭とグリッドホルダ12aの間でグリッドワイヤ3を挟み固定する。
【0024】
図6に示すように、グリッドワイヤ3を突起15に巻きつけると、グリッドワイヤ3と突起15の間及びグリッドワイヤ3同士の摩擦抵抗によってグリッドワイヤ3にかかっている張力が保持される。これにより、ネジ4による固定の際にグリッドワイヤ3を強い力で引っ張っていなくてもグリッドワイヤ3に弛みは生じず、容易にネジ固定できるようになる。
【0025】
グリッドワイヤ3の突起15への巻き付け数に特に限定はない。グリッドワイヤ3の巻き付け数を増やせば、それだけ摩擦抵抗が大きくなりグリッドワイヤ3にかかっている張力が保持されやすくなるが、通常は1周巻きつけるだけで十分である。
【0026】
グリッドホルダ12aに形成する突起15としてはグリッドワイヤ3を巻きつけられる形状であれば特に限定はないが、振動や衝撃によってグリッドワイヤ3が突起15から外れないようにする、また接触面積を大きくして摩擦抵抗を大きくする観点から、図6に示すようなグリッドワイヤ3を巻きつける部分に溝部17を形成したものが望ましい。
【0027】
また突起15の形成位置としては、シールドケース1の上面開口11からネジ穴14までの間であれば特に限定はない。ただし、グリッドホルダ12aの表面から突起15が突き出ていると、他の部材との接触などで折れるおそれがあるので、前述の実施形態のようなグリッドホルダ12aの側部に形成した切欠部16の内部に形成するのが好ましい。
【0028】
もちろん、図8に示したように、グリッドワイヤ3を突起15に巻き付けることなくネジ4で固定しても構わない。また、グリッドワイヤ3の終端の固定方法はネジ固定の他、従来公知の方法を用いることができる。例えば、グリッドホルダに形成された孔に、グリッドワイヤの端部をピンと共に押入する方法であってもよい。
【0029】
次に、図4(d)に示すように、シールドケース1の側壁10a,10bを元の状態に戻す。図5に示す治具5を用いて側壁10a,10bを押し広げた場合には、治具5をシールドケース1から引き抜くことによってシールドケース1の側壁10a,10bはその弾性によって元の状態に戻る。側壁10a,10bが撓んだ状態から直線状態となることによって、シールドケース1の長手方向の長さが長くなる。これによって、シールドケース1の上面開口11に張架されたグリッドワイヤ3にさらに張力が加わり、グリッドワイヤ3の弛みは確実に防止されるようになる。
【0030】
本発明で使用するシールドケース1の材質としては、可撓性を有するものであれば特に限定はなく、例えばステンレス鋼などが好適に使用できる。
【0031】
また本発明で使用するグリッドワイヤ3の材質についても特に限定はないが、放電ワイヤからのコロナ放電によって腐食されにくいものが好ましく、例えばステンレス鋼が例示される。グリッドワイヤの直径としては例えば30〜350μmの範囲が好ましい。またグリッドワイヤ3をシールドケース1の上面開口11に張架するとき、隣接するグリッドワイヤ間の距離は0.5〜1.5mmの範囲が好ましい。前記距離が1.5mmを超えると帯電制御が難しくなり、0.5mmより狭いとグリッドワイヤの取り付け作業が難しくなる。シールドケース1の上面開口11に張架するグリッドワイヤ3の本数は、帯電させる感光体の大きさを考慮しながら上記条件を満足するように適宜決定すればよい。他方、本発明で使用する放電ワイヤとしては、例えばタングステン線に金メッキしたものが例示される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】帯電装置を用いた画像形成装置の一例を示す概説図である。
【図2】スコロトロン方式の帯電装置の一例を示す斜視図である。
【図3】グリッドホルダの拡大斜視図である。
【図4】本発明に係る取付方法の一例を示す工程図である。
【図5】治具による側壁の押し広げの説明図である。
【図6】グリッドワイヤを突起に巻き付けた状態の斜視図である。
【図7】従来のスコロトロン方式の帯電装置の一例を示す斜視図である。
【図8】図8の帯電装置の部分拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0033】
1 シールドケース
2 チャージャケース
3 グリッドワイヤ
4 ネジ(固定部)
5 治具
C 帯電装置
10a,10b 側壁
11 上面開口
12a,12b グリッドホルダ
13 ピン(ワイヤ掛け部)
14 ネジ穴
15 突起
16 切欠部
17 溝部
21 放電ワイヤ
51 基台
52 押入部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面開口の細長い略直方体状のシールドケースの両端部に形成された複数のワイヤ掛け部に、前記上面開口を跨ぐようにグリッドワイヤを折り返し張架する方法であって、
前記シールドケースの長手側の側壁の略中間部をそれぞれ外方へ押し広げた後、前記ワイヤ掛け部にグリッドワイヤを交互に掛け渡して、シールドケースの上面開口にグリッドワイヤを張り渡し、その後前記長手側の側壁を元の状態に戻し、シールドケースの上面開口に掛け渡されたグリッドワイヤにさらに張力を加えることを特徴とするシールドケースへのグリッドワイヤの取付方法。
【請求項2】
側壁の押し広げ後の幅を、押し広げる前の幅の1.1〜1.5倍の範囲とした請求項1記載のグリッドワイヤの取付方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2007−148050(P2007−148050A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−343063(P2005−343063)
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】