説明

グリース組成物

【課題】高温環境下でも軸受潤滑寿命が長く、且つ耐はく離性に優れた自動車電装用又は補機用転がり軸受に封入されるグリース組成物を提供すること。
【解決手段】基油として、アルキルジフェニルエーテル油を必須成分とし、
増ちょう剤として、下記式(1)で示されるジウレア化合物、及び
耐はく離添加剤として、有機スルホン酸塩系錆止め剤および耐荷重添加剤、
を含有することを特徴とする自動車電装用又は自動車補機用転がり軸受用グリース組成物。


(式中、Rはジフェニルメタン基を示す。RおよびR3は、同一でも異なっていてもよく、炭素数6〜12の芳香族系炭化水素基を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車電装用又は自動車補機用転がり軸受に使用されるグリース組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の小型軽量化や居住空間拡大の要望により、エンジンルーム空間の減少が求められており、それに伴ってオルタネータやテンションプーリなどの電装・補機部品も小型軽量化が図られている。また静粛性のため、エンジンルームが密閉化され、使用環境が高温になることから、高温に耐え得るグリースが必要になっている。
また、プーリの小径化、伝達トルクの増大、ベルト耐久性向上のため、1980年代半ばころから従来のVベルトからポリVベルトが採用されるようになったが、その頃から転がり軸受の転走面に、白色組織変化を伴った特異な早期異常はく離が発生し問題となっている。
このように電装・補機部品の軸受には、高温耐久性と、耐水素脆性はく離性の両性能を有したグリースが求められるようになった。
【0003】
転がり軸受用グリースとしては、安価な鉱油としたリチウム石けんグリースやジウレアグリース、また合成油を基油としたリチウム石けんグリースやジウレアグリース等が使用されている。自動車電装・補機用転がり軸受に使用されるグリースでは、特に高温耐久性の観点から、合成油のジウレアグリースが使用されることが多い。
特許文献1では、50質量%を超える量のエーテル系合成油を含む基油に、必須成分として下記一般式:
2−NHCONH−R1−NHCONH−R3
(式中、R1は炭素数6〜15の2価の芳香族炭化水素基を示し、R2およびR3は同一若しくは異なる基であって、シクロヘキシル基、炭素数7〜12のシクロヘキシル誘導体基または炭素数8〜20のアルキル基を示す。)で表わされるジウレア化合物の少なくとも1種からなり、かつシクロヘキシル基またはその誘導体基の含有率[{(シクロヘキシル基またはその誘導体基の数)/(シクロヘキシル基またはその誘導体基の数+アルキル基の数)}×100]が50〜100%であるゲル化剤を含有させたことを特徴とするグリースが提案されている。
また特許文献2では、次の一般式:
1 NHCONHR2 NHCONHR3
(式中のR1 およびR3 はオクタデシル基を必須成分とし、さらにオクチル基、ドデシル基のうちのいずれか1種類、又は両方をも含む基、R2 は炭素数6〜15の2価の炭化水素基を示し、かつ、R1 およびR3 の基に占めるオクタデシル基、オクチル基、ドデシル基のうち、オクタデシル基の割合がモル比率で20〜80モル%である)で表されるウレア化合物を増ちょう剤として、これを基油である潤滑油中に3〜15重量%配合したことを特徴とするウレアグリースが提案されている。
しかし、シクロヘキシルアミンやアルキルアミンをモノアミンとしたウレアグリースは、芳香族アミンをモノアミンとしたウレアグリースと比較して、高温耐久性の観点から好ましいものではない。
【0004】
自動車の電装・補機転がり軸受の分野では、従来から水素脆化が問題となっており、使用するグリースの性質を改善することにより対処している。例えば、摩耗により生じる新生面の触媒作用を抑制するために、グリース中に不動態化酸化剤を添加し、金属表面を酸化して表面の触媒活性を抑制し、潤滑剤の分解による水素発生を抑制することが提案されている(例えば、特許文献3)。また、潤滑剤の分解による水素発生を抑制するために、グリースの基油としてフェニルエーテル系合成油を使用することが提案されている(例えば、特許文献4)。トライボロジー金属材料や各種部材さらに水が侵入しやすい部位に使用される軸受に封入されるグリースとして、水素を吸収するアゾ化合物を添加することが提案されている(例えば、特許文献5)。水の浸入を受けても水素脆性によるはく離を起こすことが無く、長寿命の転がり軸受用として、基油にフッ素化ポリマー油、増ちょう剤にポリテトラフルオロエチレン、及び導電性物質を添加したグリース組成物が提案されている(例えば、特許文献6)。
しかし、いずれも水素が発生した後の作用、つまり、金属内部への水素侵入を防止する手段ではなく、水素脆性に対応できる手段ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2979274号公報
【特許文献2】特開平1−268793号公報
【特許文献3】特開平3−210394号公報
【特許文献4】特開平3−250094号公報
【特許文献5】特開2002−130301号公報
【特許文献6】特開2002−250351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、高温環境下でも軸受潤滑寿命が長く、且つ耐水素脆性はく離性に優れた自動車電装用又は補機用転がり軸受に封入されるグリース組成物を提供することである。
本発明の別の課題は、前記グリース組成物を封入した転がり軸受を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記高温環境下での軸受潤滑寿命および耐水素脆性はく離性の課題に対し、適切な基油、増ちょう剤および添加剤を選定することで、これを改善した。すなわち、本発明により以下のグリース組成物を提供する。
1.基油として、アルキルジフェニルエーテル油を必須成分とし、
増ちょう剤として、下記式(1)で示されるジウレア化合物、及び
耐はく離添加剤として、有機スルホン酸塩系錆止め剤および耐荷重添加剤、
を含有することを特徴とする自動車電装用又は自動車補機用転がり軸受用グリース組成物。
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、R2はジフェニルメタン基を示す。R1およびR3は、同一でも異なっていてもよく、炭素数6〜12の芳香族系炭化水素基を示す。)
2.有機スルホン酸塩系錆止め剤が下記式(2)で示される前記1項記載の転がり軸受用グリース組成物。
[R4-SO3]nM ・・・式(2)
(式中、R4はアルキル基、アルケニル基、アルキルナフチル基、ジアルキルナフチル基、アルキルフェニル基又は石油高沸点留分残基を表す。前記アルキルまたはアルケニルは、直鎖または分岐であり、炭素数は2〜22である。Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、亜鉛、またはアンモニウムイオンを表す。nはMの価数を表す。)
3.有機スルホン酸塩系錆止め剤が、亜鉛塩及びカルシウム塩からなる群から選ばれる少なくとも一種である、前記1又は2項記載のグリース組成物。
4.耐荷重添加剤が、チオカルバミン酸塩、チオリン酸塩、ナフテン酸塩、カルボン酸塩、および有機リン酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種である前記1〜3のいずれか1項記載のグリース組成物。
5.耐荷重添加剤が、チオカルバミン酸塩及びチオリン酸塩からなる群から選ばれる少なくとも一種である、前記1〜4のいずれか1項記載のグリース組成物。
6.さらに、酸化防止剤として、アミン系酸化防止剤およびフェノール系酸化防止剤を含有する前記1〜5のいずれか1項記載のグリース組成物。
7.前記1〜6のいずれか1項記載のグリース組成物を封入した自動車電装用又は補機用転がり軸受。
【発明の効果】
【0010】
本発明のグリース組成物は、高温環境下でも軸受潤滑寿命が長く、且つ耐水素脆性はく離性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔増ちょう剤〕
増ちょう剤としては、下記式(1)で表されるジウレア化合物を用いる:
【0012】
【化2】

【0013】
式中、R2はジフェニルメタン基を示す。R1およびR3は、同一でも異なっていてもよく、炭素数6〜12の芳香族系炭化水素基を示す。R1およびR3の具体例としては、アニリン、ベンジルアミン、トルイジン、クロロアニリンなどがあげられる。このうち、トルイジンが好ましい。
式(1)の増ちょう剤を基油に含ませることにより、高温下でも耐熱性に優れるグリースが得られる。
前記増ちょう剤は、例えばモノアミンをジイソシアネートと10〜150℃で反応させることにより得られるが、その反応方法に特に制限は無く、公知の方法により実施することができる。この際に揮発性の溶媒を使用してもよいが、基油を溶媒として使用するとそのまま本発明の組成物に配合することができる。具体的に使用できるジイソシアネートとしては、例えば、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネートが挙げられる。
本発明の組成物中の前記増ちょう剤の量は、耐漏洩性の観点から、10〜30質量%であるのが好ましく、15〜25質量%であるのがより好ましい。
なお、グリースに使用される増ちょう剤としては、一般的に、LiやNa等を含む金属石けん類、ベントン、シリカゲル、ジウレア化合物、ポリテトラフルオロエチレンに代表されるフッ素系増ちょう剤等の非石けん類等も使用できるとされているが、金属石けん類、ベントン、シリカゲルは、耐熱性、すなわち高温下での軸受潤滑寿命を満足するものではない。またフッ素系増ちょう剤は、耐熱性は満足するものの非常に高価であり、汎用性に欠ける。
【0014】
〔基油〕
基油は、高温下で耐熱性に優れるアルキルジフェニルエーテル油を必須成分とする。アルキル基は、分岐でも直鎖でもよいが、直鎖が好ましい。アルキル基の炭素数は10〜20が好ましく、12〜14が好ましい。アルキルジフェニルエーテル油は、一種単独を用いることもできるし、二種以上を併用することもできる。
アルキルジフェニルエーテル油と他の基油とを併用する場合、その基油の種類は特に限定されない。例えば、ジエステル、ポリオールエステルに代表されるエステル系合成油、ポリαオレフィン、ポリブデンに代表される合成炭化水素油、シリコーン系合成油、フッ素系合成油等を使用することができる。
アルキルジフェニルエーテル油と他の基油とを併用する場合、基油中のアルキルジフェニルエーテル油の含有量は特に限定しないが、耐熱性の観点から、好ましくは基油の全質量を基準にして50質量%以上を含有させることが好ましい。
40℃における基油の動粘度は特に限定しないが、30〜300mm2/sであるのが好ましい。より好ましくは50〜200mm2/s、さらに好ましくは50〜150mm2/sである。40℃における基油の動粘度が300mm2/sより高いと、低温流動性が満足できなくなる。40℃における基油の動粘度が30mm2/sより低いと、蒸発してしまい、耐熱性が好ましくない。
【0015】
〔添加剤〕
本発明のグリース組成物は、耐はく離添加剤として、有機スルホン酸塩系錆止め剤および耐荷重添加剤を必須成分として含有する。これらを併用することにより、厳しい潤滑条件下でもはく離寿命の向上が可能となる。
有機スルホン酸塩系錆止め剤としては、下記式(2)で示される化合物を好適に使用することができる:
[R4-SO3]nM ・・・式(2)
式中、R4はアルキル基、アルケニル基、アルキルナフチル基、ジアルキルナフチル基、アルキルフェニル基又は石油高沸点留分残基を表す。前記アルキルまたはアルケニルは、直鎖または分岐であり、炭素数は2〜22である。R4としては、アルキル基の炭素数が好ましくは6〜18、より好ましくは8〜12、特に好ましくは9であるジアルキルナフチル基が好ましい。
Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、亜鉛、またはアンモニウムイオンを表す。アルカリ土類金属及び亜鉛が好ましい。アルカリ土類金属としてはカルシウムが好ましい。
nはMの価数を表す。
【0016】
有機スルホン酸塩系錆止め剤が、亜鉛塩及びカルシウム塩からなる群から選ばれる少なくとも一種であるのが好ましい。有機スルホン酸塩系錆止め剤が、ジノニルナフタレンスルホン酸亜鉛塩及び/又はジノニルナフタレンスルホン酸カルシウム塩であるのが特に好ましい。
本発明のグリース組成物中の有機スルホン酸塩系錆止め剤の量は、0.1〜10質量%であるのが好ましく、0.2〜5質量%であるのがより好ましい。
【0017】
耐荷重添加剤としては、ジアルキルジチオカルバミン酸亜鉛塩(ZnDTP)等のチオカルバミン酸塩;ジアルキルジチオリン酸亜鉛塩等のチオリン酸塩;ナフテン酸亜鉛やナフテン酸カルシウム等のナフテン酸塩;アルキルカルボン酸亜鉛等のカルボン酸塩;およびトリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフォロチオネート等の有機リン酸エステル等を使用することができる。
耐荷重添加剤が、チオカルバミン酸塩、チオリン酸塩、ナフテン酸塩、カルボン酸塩、および有機リン酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種であるのが好ましく、チオカルバミン酸塩及びチオリン酸塩からなる群から選ばれる少なくとも一種であるのがより好ましい。
耐荷重添加剤は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、亜鉛塩、またはアンモニウム塩であり得る。亜鉛塩が好ましい。
耐荷重添加剤としては、チオカルバミン酸亜鉛塩、チオリン酸亜鉛塩が特に好ましく、ジアルキルジチオカルバミン酸亜鉛塩、ジアルキルジチオリン酸亜鉛塩が最も好ましい。
本発明の組成物中の耐荷重添加剤の含有量は、0.1〜10質量%であるのが好ましく、0.2〜5質量%であるのがより好ましい。
本発明の組成物中の耐はく離添加剤の量は、0.1〜10質量%であるのが好ましく、0.2〜8質量%であるのがより好ましい。
【0018】
本発明のグリース組成物はまた、必要に応じてあらゆる添加剤を含むことができる。例として、アミン系、フェノール系等の酸化防止剤が挙げられる。特に一次酸化防止剤であるアミン系、フェノール系酸化防止剤が好ましい。広温度範囲で使用するためには、これらを単独で用いるよりも、併用する方がより好ましい。アミン系酸化防止剤の添加量は、本発明のグリース組成物の全質量を基準として、0.1〜5質量%であるのが好ましく、0.5〜4質量%であるのがより好ましい。フェノール系酸化防止剤の添加量も同様に、0.1〜5質量%であるのが好ましく、0.5〜4質量%であるのがより好ましい。アミン系とフェノール系を併用する場合の総添加量は、0.5〜6質量%であるのが好ましく、1〜5質量%であるのがより好ましい。
またその他の添加剤の例としては、アミン系、フェノール系以外の酸化防止剤、例えばキノリン系等;亜硝酸ソーダなどの無機不働態化剤;アミン系、カルボン酸塩等の前記有機スルホン酸系錆止め剤以外の錆止め剤;ベンゾトリアゾール等の金属腐食防止剤;脂肪酸、脂肪酸エステル、リン酸エステル等の油性剤、前記耐荷重添加剤以外のリン系、硫黄系、有機金属系等の耐摩耗剤や極圧剤;酸化金属塩、二硫化モリブデン等の固体潤滑剤などが挙げられる。これら任意の添加剤の量は、本発明のグリース組成物の全質量を基準として、通常0.5〜5質量%である。
【0019】
本発明の組成物の混和ちょう度は、適宜調整できるが、好ましくは200〜400、より好ましくは250〜350である。
本発明グリース組成物の用途である自動車電装又は自動車補機用転がり軸受としては、オルタネータ、カーエアコン用電磁クラッチ、中間プーリ、アイドラプーリ、テンションプーリ等の転がり軸受が挙げられる。
【実施例】
【0020】
<実施例>
試験グリースの調整
下記基油中で、ジフェニルメタンジイソシアネート1モル、モノアミン(シクロヘキシルアミン、オクチルアミン、p-トルイジン)を反応させて昇温、冷却後、ベースグリースを得た。ベースグリースに下記添加剤と基油を加え、3本ロールミル後、混和ちょう度が350になるように実施例1〜6及び比較例1〜8のグリース組成物を得た。
【0021】
〔基油〕
○アルキルジフェニルエーテル油
・C12〜C14アルキルジフェニルエーテル油:40℃の動粘度=97mm2/s
○ポリオールエステル油
・ジペンタエリスリトールエステル油:40℃の動粘度=76.9mm2/s
○合成炭化水素油
・ポリα-オレフィン油:40℃の動粘度=68.0mm2/s
【0022】
〔耐はく離添加剤〕
<錆止め剤>
○Znスルホネート
・ジノニルナフタレンスルホン酸Zn塩
○Caスルホネート
・ジノニルナフタレンスルホン酸Ca塩
<耐荷重添加剤>
○ZnDTP
・ジアルキルジチオリン酸Zn
○ZnDTC
・ジアルキルジチオカルバミン酸Zn
<酸化防止剤>
○アミン系酸化防止剤
・アルキルジフェニルアミン
○フェノール系酸化防止剤
・ヒンダードフェノール
【0023】
<試験方法>
(1)軸受潤滑寿命試験(ASTM D3336準拠)
本試験は、高温下での軸受潤滑寿命を評価する内輪回転の試験である。下記の条件で転がり軸受を運転し、モータが過電流(4アンペア)を生じるまで、または軸受温度が+15℃上昇するまでの時間を潤滑寿命とした。結果を表1及び表2に示す。
軸受形式:6204金属シール
試験温度:180℃
回転数 :10000rpm
試験荷重:アキシャル荷重66.7N ラジアル荷重66.7N
【0024】
(2)転がり4球試験
試験方法の概略
φ15mmの軸受用鋼球を3個用意し、内径40mm、高さ14mmの容器内に配置し、試験グリースを約20gを充填する。この3個の鋼球の上にφ5/8インチの軸受用鋼球1個を接触させる。荷重を掛け4時間回転させて慣らし運転を行なった後、試験部に水素ガスを導入する。所定の回転数で回転させると、下側の3個の鋼球は自転しながら公転する。これを鋼球面にはく離が生じるまで連続回転させる。寿命は、はく離が生じた時点の上鋼球の下鋼球に対する接触回数とする。なお、はく離は、最も面圧の高い球−球間に生じる。
試験グリースとして、実施例及び比較例のグリース組成物を用い、上記試験を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0025】
試験条件
試験鋼球: φ5/8in軸受用鋼球(回転球)、φ15mm軸受用鋼球(従動球)
試験荷重: 100kgf(4.1GPa)
回転速度: 1500rpm
水素導入量: 15mL/分
水素純度: 99.99%
試験部気圧: 0.96気圧(減圧排気のため)
試験繰り返し数: 5 (平均寿命:n=5の平均)
【0026】
評価
軸受潤滑寿命試験 400時間以上・・・○(合格)
400時間未満・・・×(不合格)
転がり4球試験試験 20×106回以上・・・○(合格)
20×106回未満・・・×(不合格)
【0027】
総合評価
軸受潤滑寿命試験、転がり4球試験 いずれも合格・・・○(合格)
軸受潤滑寿命試験、転がり4球試験 どちらか1つが不合格・・・×(不合格)
【0028】
【表1】

【0029】
【表2】

【0030】
増ちょう剤が芳香族ジウレア(ジフェニルメタンジイソシアネートとp−トルイジンからなる)であり、基油がアルキルジフェニルエーテル油を含み、所定の添加剤を含む実施例1〜6のグリース組成物は、軸受潤滑寿命および転がり4球試験のいずれも合格である。
一方、いずれかが含まれていない比較例1〜8のグリース組成物は、軸受潤滑寿命および転がり4球試験のいずれかが不合格である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基油として、アルキルジフェニルエーテル油を必須成分とし、
増ちょう剤として、下記式(1)で示されるジウレア化合物、及び
耐はく離添加剤として、有機スルホン酸塩系錆止め剤および耐荷重添加剤、
を含有することを特徴とする自動車電装用又は自動車補機用転がり軸受用グリース組成物。
【化1】


(式中、R2はジフェニルメタン基を示す。R1およびR3は、同一でも異なっていてもよく、炭素数6〜12の芳香族系炭化水素基を示す。)
【請求項2】
有機スルホン酸塩系錆止め剤が下記式(2)で示される請求項1記載の転がり軸受用グリース組成物。
[R4-SO3]nM ・・・式(2)
(式中、R4はアルキル基、アルケニル基、アルキルナフチル基、ジアルキルナフチル基、アルキルフェニル基又は石油高沸点留分残基を表す。前記アルキルまたはアルケニルは、直鎖または分岐であり、炭素数は2〜22である。Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、亜鉛、またはアンモニウムイオンを表す。nはMの価数を表す。)
【請求項3】
有機スルホン酸塩系錆止め剤が、亜鉛塩及びカルシウム塩からなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項1又は2記載のグリース組成物。
【請求項4】
耐荷重添加剤が、チオカルバミン酸塩、チオリン酸塩、ナフテン酸塩、カルボン酸塩、および有機リン酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか1項記載のグリース組成物。
【請求項5】
耐荷重添加剤が、チオカルバミン酸塩及びチオリン酸塩からなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項1〜4のいずれか1項記載のグリース組成物。
【請求項6】
さらに、酸化防止剤として、アミン系酸化防止剤およびフェノール系酸化防止剤を含有する請求項1〜5のいずれか1項記載のグリース組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項記載のグリース組成物を封入した自動車電装用又は補機用転がり軸受。

【公開番号】特開2012−193298(P2012−193298A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59086(P2011−59086)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000162423)協同油脂株式会社 (165)
【Fターム(参考)】