説明

グリーンシート

【課題】スラリーの乾燥温度を高めても揮発し難く、グリーンシートに柔軟性を確実に付与することができ、しかも近年の環境的要請を満たす可塑剤を使用したグリーンシートを提供する。
【解決手段】ガラス粉末と、セラミック粉末と、樹脂バインダーと、可塑剤とを含むグリーンシートにおいて、(1)厚みが100〜400μmであり、(2)可塑剤の沸点が160℃以上であり、(3)可塑剤がアルコール類化合物、テルペン類化合物、グリコール類化合物、ケトン類化合物のいずれかであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Ag、Cu等の低融点金属を配線材料とする積層配線基板等に好適なグリーンシートに関し、特に携帯電話のアンテナ部材、発光ダイオード(LED)のリフレクター等に好適な厚膜のグリーンシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、LSI等の半導体素子を実装するために、アルミナ系セラミック粉末を用いたグリーンシートが用いられてきた。しかし、アルミナ系セラミック粉末は、焼成温度が高いため、同時焼成が可能な配線材料として、高融点金属であるW、Mo等を用いる必要があり、導通抵抗が10〜20mΩ/□(mΩ/mm)と高くなる問題があった。導通抵抗が低いAg、Cu等の金属は低融点であるため、これらの金属を配線材料として用いるには、低温で同時焼成可能な基板材料が必要となる。この要求を満たすものとして、低融点のガラス粉末を含むグリーンシートを用いた積層配線基板が開発されて、実用に供されている。
【0003】
このような多層配線基板は、必要に応じて、グリーンシートにビアホールを形成した後、メタライズペーストで配線印刷を施し、積層、脱樹脂バインダーした後、1000℃以下で焼成することで作製される。
【0004】
一般的に、グリーンシートは、ガラス粉末と、セラミック粉末と、樹脂バインダーと、溶剤と、可塑剤とを含むスラリーを、ドクターブレード法でPETフィルム上に均一に塗布した後、連続乾燥し、更に低温、具体的には70℃未満で溶剤を揮発させることで作製される。そして、このようにして作製されるグリーンシートは、厚みが100μm未満になるように調整されることが多い。
【0005】
厚みが100μm未満のグリーンシートは、低粘度のスラリー、例えば粘度が1Pa・s程度のスラリーを用いても、良好に成形することができる。この場合、低温、且つ短時間で溶剤を揮発させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−52117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
携帯電話のアンテナ部材、LEDのリフレクター等の用途では、厚み100〜400μmのグリーンシートが使用されることがある。このグリーンシートを成形するためには、高粘度のスラリー、例えば粘度が10Pa・s程度のスラリーを用いる必要がある。しかし、高粘度のスラリーを用いると、溶剤が揮発し難くなり、グリーンシートの生産性が低下しやすくなる。この不具合を解消するためには、スラリーの乾燥温度を高めて、溶剤の揮発を促進させる必要があるが、スラリーの乾燥温度を高めると、可塑剤が揮発しやすくなり、グリーンシートの柔軟性が低下しやすくなる。
【0008】
また、従来から可塑剤として使用されているフタル酸エステル類、特にブチルベンジルフタレートは、スラリーの乾燥温度を高めても、揮発し難く、可塑剤としての機能を発揮することができる。しかし、フタル酸エステル類は、欧州のREACH規制の対象物質であり、その環境的影響が懸念される。
【0009】
そこで、本発明は、スラリーの乾燥温度を高めても揮発し難く、グリーンシートに柔軟性を確実に付与することができ、しかも近年の環境的要請を満たす可塑剤を創案することにより、厚み100〜400μmのグリーンシートの生産性を高めることを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、鋭意検討の結果、高沸点のアルコール類化合物、テルペン類化合物、グリコール類化合物、ケトン類化合物のいずれかを可塑剤に用いると、上記技術的課題を解決できることを見出し、本発明として、提案するものである。すなわち、本発明のグリーンシートは、ガラス粉末と、セラミック粉末と、樹脂バインダーと、可塑剤とを含むグリーンシートにおいて、(1)厚みが100〜400μmであり、(2)可塑剤の沸点が160℃以上であり、(3)可塑剤がアルコール類化合物、テルペン類化合物、グリコール類化合物、ケトン類化合物のいずれかであることを特徴とする。ここで、「ガラス粉末」には、焼成すると、ガラスに結晶が析出する結晶性ガラス粉末等が含まれる。
【0011】
本発明のグリーンシートは、厚みが100〜400μmである。このようにすれば、厚膜のグリーンシートを使用する用途、例えば携帯電話のアンテナ部材、LEDのリフレクター等の用途に的確に対応することができる。
【0012】
本発明のグリーンシートは、可塑剤の沸点が160℃以上である。このようにすれば、スラリーの乾燥温度を高めても、可塑剤が揮発し難くなり、グリーンシートの生産性を高めることができる。
【0013】
本発明のグリーンシートは、可塑剤がアルコール類化合物、テルペン類化合物、グリコール類化合物、ケトン類化合物のいずれかである。このようにすれば、グリーンシートに柔軟性を付与できるとともに、近年の環境的要請を満たすことができる。
【0014】
第二に、本発明のグリーンシートは、可塑剤がテキサノールまたはターピネオールであることを特徴とする。テキサノールとターピネオールは、スラリーの乾燥温度を高めても揮発し難く、グリーンシートに柔軟性を確実に付与することができ、しかも支持フィルムからの剥離強度が小さく、支持フィルムからグリーンシートを剥離させやすい効果を有する。
【0015】
第三に、本発明のグリーンシートは、可塑剤の含有量が0.5〜10質量%であることを特徴とする。
【0016】
第四に、本発明のグリーンシートは、ガラス粉末が、SiO−Al−B系ガラス、SiO−CaO−MgO系ガラス、SiO−Al−CaO系ガラス、SiO−TiO−Nd系ガラス、SiO−B−RO−TiO系ガラス(ROはアルカリ金属酸化物)のいずれかであることを特徴とする。ここで、「〜系ガラス」とは、明示の成分の合量が50モル%以上、好ましくは65モル%以上のガラスを指す。
【0017】
第五に、本発明のグリーンシートは、ガラス粉末とセラミック粉末の混合割合が質量比で40:60〜75:25であることを特徴とする。このようにすれば、焼結体の緻密性を維持した上で、基板強度を高めることができる。
【0018】
第六に、本発明のグリーンシートは、セラミック粉末がアルミナ粉末であることを特徴とする。このようにすれば、焼結体の緻密性を維持した上で、焼結体の強度を顕著に高めることができる。また、このようにすれば、アルミナ粉末が安価であるため、グリーンシートの材料コストを低廉化することができる。
【0019】
第七に、本発明のグリーンシートは、樹脂バインダーがアクリル樹脂であることを特徴とする。このようにすれば、低温で樹脂バインダーを分解揮発させることができ、焼結体にカーボン等が残存し難くなるとともに、スラリーの粘度特性を容易に調整することができる。なお、焼結体中のカーボン残渣が多いと、焼結体の気孔率が上昇し、焼結体の基板強度が低下しやすくなる。
【0020】
第八に、本発明のグリーンシートは、実質的にPbOを含有しないことを特徴とする。このようにすれば、近年の環境的要請を満たすことができる。ここで、「実質的にPbOを含有しない」とは、グリーンシート中のPbO含有量が1000ppm(質量)以下の場合を指す。
【0021】
第九に、本発明のグリーンシートは、携帯電話またはLEDに用いることを特徴とする。
【0022】
第十に、本発明の焼結体は、上記のグリーンシートを焼成してなることを特徴とする。
【0023】
第十一に、本発明の焼結体は、ムライト、アノーサイト、ディオプサイト、チタン酸ネオジウム、ルチルのいずれかが析出していることを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明のグリーンシートは、厚みが100〜400μmであり、好ましくは120〜380μm、より好ましくは150〜350μmである。厚みが100μm未満であると、携帯電話のアンテナ部材、LEDのリフレクター等の用途に対応し難くなる。一方、厚みが400μmより大きいと、グリーンシートを積層した場合に、積層体が厚くなり過ぎて、モジュールの小型化等の要請に対応し難くなる。
【0025】
本発明のグリーンシートは、ガラス粉末と、セラミック粉末と、樹脂バインダーと、可塑剤とを含む。ガラス粉末は、融剤として機能し、1000℃以下の温度で焼結を可能にする成分であるとともに、焼結体に所望の特性(低誘電率等)を付与し得る成分である。セラミック粉末は、焼結体の強度を高める成分である。樹脂バインダーは、ガラス粉末とセラミック粉末を結合させる成分であり、またグリーンシートの強度を高める成分である。可塑剤は、グリーンシートに柔軟性を付与する成分である。なお、本発明のグリーンシートは、必要に応じて、顔料等を含有してもよい。
【0026】
本発明に係るガラス粉末は、焼成後に結晶が析出する性質を有することが好ましい。このようにすれば、焼結体の強度を高めることができ、更には焼結体に所望の物性(低誘電率等)を付与することができる。
【0027】
本発明のグリーンシートにおいて、ガラス粉末は、SiO−Al−B系ガラス、SiO−CaO−MgO系ガラス、SiO−Al−CaO系ガラス、SiO−TiO−Nd系ガラス、SiO−B−RO−TiO系ガラスのいずれかであることが好ましい。その理由は、1000℃以下の焼成により、SiO−Al−B系ガラスはムライト、SiO−CaO−MgO系ガラスはディオプサイト、SiO−Al−CaO系ガラスはアノーサイト、SiO−TiO−Nd系ガラスはチタン酸ネオジウム、SiO−B−RO−TiO系ガラスはルチルの結晶が析出しやすいため、焼結体の強度を高めやすく、しかも析出結晶に起因する後述の効果を享受しやすいからである。
【0028】
本発明のグリーンシートにおいて、セラミック粉末は、アルミナ、ムライト、フォルステライト、クリストバライト、石英、ジルコニア、ジルコン、アルミネイトスピネル、コーディエライト等の酸化物系セラミック粉末、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素等の非酸化物系セラミック粉末の一種または二種以上が使用可能である。特に、アルミナは、強度とコストの観点で好適である。
【0029】
本発明のグリーンシートにおいて、ガラス粉末とセラミック粉末の混合割合は質量比で40:60〜75:25が好ましい。セラミック粉末が少な過ぎると、基板強度が低下しやすくなる。一方、セラミック粉末が多過ぎると、緻密な焼結体を得難くなる。
【0030】
本発明のグリーンシートにおいて、樹脂バインダーの含有量は1〜30質量%、好ましくは5〜15質量%である。樹脂バインダーの含有量が1質量%より少ないと、グリーンシートの強度が低下しやすくなる。一方、樹脂バインダーの含有量が30質量%より多いと、グリーンシートの焼成時に炭素が残留しやすくなり、また焼結体の気孔率が上昇しやすくなるとともに、焼結体の厚みがばらつきやすくなる。
【0031】
本発明のグリーンシートにおいて、樹脂バインダーは、熱分解性が良好である限り、種々の樹脂バインダーを用いることができるが、その中でもアクリル樹脂が好ましい。アクリル樹脂は、粘度特性および熱分解性が良好であり、低温で脱樹脂バインダーすることができる。アクリル樹脂として、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル等のメタクリル酸エステル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ジメチルアミノ等の官能基を有する単量体の一種または二種以上を重合したものを使用することができる。
【0032】
本発明のグリーンシートにおいて、樹脂バインダーのガラス転移点は80℃以下、50℃以下、特に35℃以下が好ましい。樹脂バインダーのガラス転移点が80℃より高いと、ガラス粉末とセラミック粉末の結合力が低下し、グリーンシートにビアホールを形成する際に、グリーンシートにクラックが発生しやすくなる。
【0033】
本発明のグリーンシートにおいて、可塑剤の沸点は160℃以上であり、180℃以上、200℃以上、210℃以上、特に240〜400℃が好ましい。可塑剤の沸点が160℃より低いと、溶剤の揮発を促進するために、スラリーの乾燥温度を高めると、可塑剤が揮発しやすくなり、グリーンシートの柔軟性が低下しやすくなる。
【0034】
本発明のグリーンシートにおいて、可塑剤の含有量は0.5〜10質量%、1〜5質量%、特に1.2〜3質量%が好ましい。可塑剤の含有量が0.5質量%より少ないと、グリーンシートの柔軟性が低下しやすくなる。一方、可塑剤の含有量が10質量%より多いと、グリーンシート内に可塑剤の偏析が生じやすくなり、グリーンシートの分散性が低下しやすくなる。
【0035】
本発明のグリーンシートにおいて、可塑剤はアルコール類化合物、テルペン類化合物、グリコール類化合物、ケトン類化合物のいずれかである。アルコール類化合物としては、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、テキサノール(2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート)、ノナノール、デカノール、オクタノール、ヘプタノール、ヘキサノール等を例示することができ、特にテキサノールが柔軟性、揮発性、剥離性の観点で好ましい。テルペン類化合物としては、ターピネオール(α−ターピネオール)、ジヒドロターピネオール等を例示することができ、特にターピネオールが柔軟性、揮発性、剥離性の観点で好ましい。グリコール類化合物としては、エチルカルビトール、ブタンジオール、2−ブトキシエタノール等を例示することができる。ケトン類化合物としては、ジアセトンアルコール等を例示することができる。
【0036】
グリーンシートを作製する過程で、原料をスラリー化するための成分として、溶剤が添加される。溶剤として、トルエン、メチルエチルケトン、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、メチルイソブチルケトン等が使用可能であり、これらを単独あるいは混合して使用することができる。
【0037】
ドクターブレード法でグリーンシートを作製する場合、スラリー粘度は10〜50Pa・s、10〜30Pa・s、特に15〜20Pa・sが好ましい。スラリー粘度が10Pa・sより低いと、厚みが100〜400μmのグリーンシートを成形し難くなる。一方、スラリー粘度が50Pa・sより高いと、スラリーの流動性が低下し、グリーンシートにムラ・スジ等の外観不良が発生しやすくなる。なお、樹脂バインダー、可塑剤、溶剤の含有量を適宜調整すれば、スラリー粘度を調整することができる。
【0038】
本発明のグリーンシートは、携帯電話のアンテナ部材に用いることが好ましい。本発明のグリーンシートは、低融点金属と同時焼成可能であり、またビアホールを形成しやすく、基板強度を高めることができる。さらに、焼結体に特定の結晶を析出させれば、所望の物性(高周波領域における低誘電損失等)を付与することができる。なお、本発明のグリーンシートは、携帯電話の高周波回路を構成するアンテナスイッチ、フィルタ、方向性結合器、高周波増幅器等を複合一体化した積層配線基板等にも好適である。
【0039】
本発明のグリーンシートは、LEDのリフレクターに用いることが好ましい。本発明のグリーンシートは、低融点金属と同時焼成可能であり、またビアホールを形成しやすく、LEDのチップと熱膨張係数を整合させやすい。さらに、焼結体にルチルを析出させれば、LEDから放射される光を集光しやすくなる。なお、本発明のグリーンシートは、LEDの支持基材等にも好適である。
【0040】
本発明の焼結体は、上記グリーンシートを焼成してなることを特徴とする。本発明の焼結体の技術的特徴(好適な態様、数値範囲等)は、本発明のグリーンシートの説明の欄で既に説明されているため、ここでは、便宜上、その説明を省略する。
【0041】
本発明の焼結体は、ムライト、アノーサイト、ディオプサイト、チタン酸ネオジウム、ルチルのいずれかが析出していることが好ましい。ムライトを析出させると、低誘電率、低誘電損失の焼結体を得やすくなる。アノーサイトを析出させると、低誘電率、低誘電損失の焼結体を得やすくなる。ディオプサイトを析出させると、低誘電率、低誘電損失の焼結体を得やすくなる。チタン酸ネオジウムを析出させると、高誘電率、低誘電損失の焼結体を得やすくなる。ルチルを析出させると、高屈折率、高強度および0.1GHz以上の高周波領域において共振周波数の温度係数がゼロに近い焼結体を得やすくなる。
【0042】
グリーンシートを用いて、積層配線基板を作製する方法を説明する。まずグリーンシートを所定寸法に切断した上で、機械的加工等により、グリーンシートにビアホールを形成する。さらに、低融点の配線材料(具体的にはAg導体やCu導体)を含むメタライズペーストをグリーンシートの表面およびビアホールに配線印刷する。最後に、複数枚のグリーンシートを積層し、熱圧着によって一体化した後、これを焼成し、積層配線基板を作製する。グリーンシートとメタライズペーストを同時焼成するために、焼成温度は800〜1000℃、特に800〜950℃が望ましい。また、Ag導体を使用する場合は空気中で焼成し、Cu導体を使用する場合は窒素中で焼成することが望ましい。
【実施例】
【0043】
以下、実施例に基づいて本発明を説明する。
【0044】
まず表1に示すガラス組成となるようにガラス原料を調合し、白金坩堝に入れて1400℃〜1550℃で3時間溶融した後、水冷ローラーを用いてフィルム状に成形した。次に、ガラスフィルムをボールミルで粗粉砕した後、純水を加えて湿式粉砕することにより、ガラス粉末(平均粒径3μm)を得た。さらに、アルミナ粉末(平均粒径2μm)を表中に示した比率で添加し、混合して混合粉末試料とした。
【0045】
【表1】

【0046】
表2は、本発明の実施例(試料No.1〜4)および比較例(試料No.5)を示している。なお、試料No.5は従来例を示すものである。
【0047】
【表2】

【0048】
表中に示す混合粉末試料と、樹脂バインダー(アクリル樹脂)と、溶剤(メチルエチルケトン)と、表中に示す可塑剤とを混合し、所定のスラリーを調製した。次に、ドクターブレード法等により、得られたスラリーを支持フィルム(PETフィルム)に塗布した後、80℃で乾燥して溶剤を揮発させ、200μmのグリーンシートを成形した。得られたグリーンシートにつき、伸び、切断性、剥離性、収縮率、構造欠陥および反りを評価した。
【0049】
伸びは、グリーンシートを□50mmに切断した後、グリーンシートの相対する側端部を基点にして、グリーンシートを20%延伸させた時、グリーンシートにクラックが生じたものを「○」、クラックが生じなかったものを「×」として評価した。
【0050】
切断性は、グリーンシートを□50mmに切断した後、顕微鏡を用いて切断面を観察し、切断面に欠け等が発生しなかったものを「○」、切断面に欠け等が発生したものを「×」として評価した。
【0051】
剥離性は、支持フィルムからグリーンシートを剥離させる際に、グリーンシートに破れ等が発生しなかったものを「○」、グリーンシートに破れ等が発生したものを「×」として評価した。
【0052】
収縮率は、900℃3時間でグリーンシートを焼成し、□50mmの焼結体を作製することで評価し、具体的には焼成前後におけるX方向の収縮率、Y方向の収縮率を測定し、(X+Y)/2で算出される値で評価した。
【0053】
構造欠陥は、900℃3時間でグリーンシートを焼成し、□50mmの焼結体を作製することで評価し、具体的には顕微鏡を用いて、焼結体を観察し、バリ等が存在していなかったものを「○」、バリ等が存在していたものを「×」として評価した。
【0054】
反りは、900℃3時間でグリーンシートを焼成し、□50mmの焼結体を作製することで評価し、具体的には焼結体が変形していなかったものを「○」、焼結体が変形していたものを「×」として評価した。
【0055】
表2から明らかなように、試料No.1〜4は、伸び、切断性、剥離性、収縮率、構造欠陥および反りの評価が良好であった。一方、試料No.5は、可塑剤として、ブチルベンジルフタレートを用いているため、近年の環境的要請を満たすことができない。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明のグリーンシートは、積層コンデンサ、積層インダクタ、積層モジュール基板等の積層配線基板に好適であり、特に携帯電話のアンテナ部材、LEDのリフレクター等に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス粉末と、セラミック粉末と、樹脂バインダーと、可塑剤とを含むグリーンシートにおいて、
(1)厚みが100〜400μmであり、
(2)可塑剤の沸点が160℃以上であり、
(3)可塑剤がアルコール類化合物、テルペン類化合物、グリコール類化合物、ケトン類化合物のいずれかであることを特徴とするグリーンシート。
【請求項2】
可塑剤がテキサノールまたはターピネオールであることを特徴とする請求項1に記載のグリーンシート。
【請求項3】
可塑剤の含有量が0.5〜10質量%であることを特徴とする請求項1または2に記載のグリーンシート。
【請求項4】
ガラス粉末が、SiO−Al−B系ガラス、SiO−CaO−MgO系ガラス、SiO−Al−CaO系ガラス、SiO−TiO−Nd系ガラス、SiO−B−RO−TiO系ガラス(ROはアルカリ金属酸化物)のいずれかであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のグリーンシート。
【請求項5】
ガラス粉末とセラミック粉末の混合割合が質量比で40:60〜75:25であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のグリーンシート。
【請求項6】
セラミック粉末がアルミナ粉末であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のグリーンシート。
【請求項7】
樹脂バインダーがアクリル樹脂であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のグリーンシート。
【請求項8】
実質的にPbOを含有しないことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のグリーンシート。
【請求項9】
携帯電話または発光ダイオードに用いることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のグリーンシート。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載のグリーンシートを焼成してなることを特徴とする焼結体。
【請求項11】
ムライト、アノーサイト、ディオプサイト、チタン酸ネオジウム、ルチルのいずれかが析出していることを特徴とする請求項10に記載の焼結体。

【公開番号】特開2011−46551(P2011−46551A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−194980(P2009−194980)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】