説明

グリーンハニカム成形体、グリーンハニカム成形体の製造方法、及び、ハニカム構造体の製造方法

【課題】乾燥時のグリーンハニカム成形体の外周面の変形を抑制できるグリーンハニカム成形体の乾燥方法を提供する。
【解決手段】アルミニウム源、チタニウム源、ケイ素源、バインダ、極性溶媒、及び、疎水性樹脂粒子を含むグリーンハニカム成形体を提供する。アルミニウム源、チタニウム源、ケイ素源、バインダ、極性溶媒、及び、疎水性樹脂粒子を含むグリーンハニカム成形体をマイクロ波により加熱して乾燥させる工程を備える、ハニカム成形体の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はグリーンハニカム成形体、グリーンハニカム成形体の製造方法、及び、ハニカム構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多数の貫通孔を有するセラミクス製の多孔質ハニカム構造体は、セラミクス原料、造孔剤、バインダ、及び、溶媒を含むグリーンハニカム成形体を成形し、乾燥し、焼成することにより製造される。
【0003】
そして、グリーンハニカム成形体の乾燥方法として、マイクロ波及び加熱気体を用いる方法知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−503136号公報
【特許文献2】特開2010−1184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の方法では、乾燥時にグリーンハニカム成形体の外周面が変形することがあった。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、乾燥時の外周面の変形を抑制できるグリーンハニカム成形体、グリーンハニカム成形体の製造方法、及び、ハニカム構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るグリーンハニカム成形体は、アルミニウム源、チタニウム源、ケイ素源、バインダ、極性溶媒、及び、疎水性樹脂粒子を含む。
【0008】
本発明に係るハニカム構造体の製造方法は、アルミニウム源、チタニウム源、ケイ素源、バインダ、極性溶媒、及び、疎水性樹脂粒子を含むグリーンハニカム成形体をマイクロ波により加熱して乾燥させる工程を備える。
【0009】
本発明に係るハニカム構造体の製造方法は、上述の方法と、乾燥した前記グリーンハニカム成形体を焼成する工程と、を備える。
【0010】
ここで、前記疎水性樹脂粒子は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニル、ナイロン6、ナイロン66、ポリアセタール、ポリカーボネート、及び、ポリイミドからなる群から選択される少なくとも一つの粒子であることが好ましい。
【0011】
また、グリーンハニカム成形体は、さらに、マグネシウム源を含むことが好ましい。
【0012】
また、極性溶媒は水であることが好ましい。
【0013】
また、マイクロ波で乾燥する工程では、前記グリーンハニカム成形体の周囲に極性溶媒の蒸気を供給しないことが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、乾燥時のグリーンハニカム成形体の外周面の変形を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態の乾燥対象となるグリーンハニカム成形体の斜視図である。
【図2】図2は、本発明の第1実施形態で用いる装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係るグリーンハニカム成形体、その製造方法、及びこれを用いたハニカム成形体の製造方法の好適な実施形態について、図面を参照して説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0017】
(グリーンハニカム成形体)
本実施形態に係るグリーンハニカム成形体70は、図1に示すように、Z軸方向に延びて両端面70t、70bに開口する多数の貫通孔70aを有する柱体である。グリーンハニカム成形体70の外形形状は特に限定されないが、例えば、円柱、楕円柱、角柱(例えば、正三角柱、正方形柱、正六角柱、正八角柱等の正多角柱や、正多角柱以外の、3角柱、4角柱、6角柱、8角柱等)等である。また、各貫通孔70aの断面形状も特に限定されず、例えば、円形、楕円形、正方形、長方形、三角形、六角形等の多角形等が挙げられる。貫通孔70aには、径の異なるもの、断面形状の異なるものが混在してもよい。
【0018】
グリーンハニカム成形体70のZ軸方向の端面から見た場合の、貫通孔70aの配置の形態も特に限定されず、たとえば、貫通孔70aの中心軸が正方形の頂点にそれぞれ位置するように配置されている正方形配置、貫通孔70aの中心軸が正三角形の頂点に配置される正三角形配置等が挙げられる。
【0019】
貫通孔70aの径も特に限定されず、例えば、断面が正方形の場合、一辺0.8〜2.5mmとすることができる。貫通孔70a同士を隔てる隔壁の厚みは、例えば、0.15〜0.76mmとすることができる。
【0020】
また、グリーンハニカム成形体70の貫通孔70aが延びる方向の長さ(Z方向の全長)は特に限定されないが、例えば、40〜350mmとすることができる。また、グリーンハニカム成形体70の外径も特に限定されないが、例えば、100〜320mmとすることできる。
【0021】
グリーンハニカム成形体70は、後で焼成することにより多孔質セラミクスとなるグリーン(未焼成体)である。セラミクスは、アルミニウム、チタン、及び、ケイ素を含む酸化物すなわち、ケイ素を含むチタン酸アルミニウムであり、さらに、マグネシウム等を含んでもよい。
【0022】
グリーンハニカム成形体70は、セラミクス源、バインダ、極性溶媒、及び、造孔剤としての疎水性樹脂粒子を含み、好ましくは、さらに必要に応じて添加される添加剤を含む。
【0023】
(セラミクス源)
セラミクス源は、アルミニウム源、チタニウム源、及び、ケイ素源を含み、好ましくは,さらに、マグネシウム源を含む。
【0024】
(アルミニウム源)
アルミニウム源は、チタン酸アルミニウム焼成体を構成するアルミニウム成分となる化合物である。アルミニウム源としては、たとえば、アルミナ(酸化アルミニウム)が挙げられる。アルミナの結晶型としては、γ型、δ型、θ型、α型などが挙げられ、不定形(アモルファス)であってもよい。なかでも、α型のアルミナが好ましく用いられる。
【0025】
アルミニウム源は、単独で空気中で焼成することによりアルミナに導かれる化合物であってもよい。かかる化合物としては、たとえばアルミニウム塩、アルミニウムアルコキシド、水酸化アルミニウム、金属アルミニウムなどが挙げられる。
【0026】
アルミニウム塩は、無機酸との無機塩であってもよいし、有機酸との有機塩であってもよい。アルミニウム無機塩として具体的には、たとえば、硝酸アルミニウム、硝酸アンモニウムアルミニウムなどのアルミニウム硝酸塩;炭酸アンモニウムアルミニウムなどのアルミニウム炭酸塩などが挙げられる。アルミニウム有機塩としては、たとえば、蓚酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウムなどが挙げられる。
【0027】
アルミニウムアルコキシドとして具体的には、たとえば、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムエトキシド、アルミニウムsec−ブトキシド、アルミニウムtert−ブトキシドなどが挙げられる。
【0028】
水酸化アルミニウムの結晶型としては、たとえば、ギブサイト型、バイヤライト型、ノロソトランダイト型、ベーマイト型、擬ベーマイト型などが挙げられ、不定形(アモルファス)であってもよい。アモルファスの水酸化アルミニウムとしては、たとえば、アルミニウム塩、アルミニウムアルコキシドなどのような水溶性アルミニウム化合物の水溶液を加水分解して得られるアルミニウム加水分解物も挙げられる。
【0029】
アルミニウム源としては、1種のみが用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0030】
上記のなかでも、アルミニウム源としては、アルミナが好ましく用いられ、より好ましくは、α型のアルミナである。なお、アルミニウム源は、その原料由来あるいは製造工程において不可避的に含まれる微量成分を含有し得る。
【0031】
アルミニウム源の粒径は、特に限定されないが、通常、レーザ回折法により測定される、体積基準の累積百分率50%相当粒子径(D50又は平均粒子径ということがある)が20〜60μmの範囲内である。焼成時の収縮率低減の観点からは、D50が30〜60μmの範囲内であるアルミニウム源を用いることが好ましい。このような粒径分布を有するグリーン成形体を得るため、グリーン成形体にはアルミナゾルやシリカゾルを添加することができる。
【0032】
(チタニウム源)
チタニウム源は、チタン酸アルミニウム焼成体を構成するチタン成分となる化合物であり、かかる化合物としては、たとえば酸化チタンが挙げられる。酸化チタンとしては、たとえば、酸化チタン(IV)、酸化チタン(III)、酸化チタン(II)などが挙げられ、なかでも酸化チタン(IV)が好ましく用いられる。酸化チタン(IV)の結晶型としては、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型などが挙げられ、不定形(アモルファス)であってもよい。より好ましくは、アナターゼ型、ルチル型の酸化チタン(IV)である。
【0033】
チタニウム源は、単独で空気中で焼成することによりチタニア(酸化チタン)に導かれる化合物であってもよい。かかる化合物としては、たとえば、チタニウム塩、チタニウムアルコキシド、水酸化チタニウム、窒化チタン、硫化チタン、チタン金属などが挙げられる。
【0034】
チタニウム塩として具体的には、三塩化チタン、四塩化チタン、硫化チタン(IV)、硫化チタン(VI)、硫酸チタン(IV)などが挙げられる。チタニウムアルコキシドとして具体的には、チタン(IV)エトキシド、チタン(IV)メトキシド、チタン(IV)t−ブトキシド、チタン(IV)イソブトキシド、チタン(IV)n−プロポキシド、チタン(IV)テトライソプロポキシド、および、これらのキレート化物などが挙げられる。
【0035】
チタニウム源としては、1種のみが用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0036】
上記のなかでも、チタニウム源としては、酸化チタンが好ましく用いられ、より好ましくは、酸化チタン(IV)である。なお、チタニウム源は、その原料由来あるいは製造工程において不可避的に含まれる微量成分を含有し得る。
【0037】
チタニウム源の粒径は、特に限定されないが、通常、レーザ回折法により測定される、体積基準の累積百分率50%相当粒子径(D50)が0.5〜25μmの範囲内であるものが用いられ、十分に低い焼成収縮率の達成のためには、D50が1〜20μmの範囲内であるチタニウム源を用いることが好ましい。なお、チタニウム源は、バイモーダルな粒径分布を示すことがあるが、このようなバイモーダルな粒径分布を示すチタニウム源を用いる場合においては、レーザ回折法により測定される粒径分布における、粒径が大きい方のピークの粒径が、好ましくは20〜50μmの範囲内である。
【0038】
レーザ回折法により測定されるチタニウム源のモード径は、特に限定されないが、0.3〜60μmの範囲内であるものを用いることができる。
【0039】
成形体中におけるAl23(アルミナ)換算でのアルミニウム源とTiO2(チタニア)換算でのチタニウム源とのモル比は、35:65〜45:55の範囲内とすることが好ましく、より好ましくは40:60〜45:55の範囲内である。このような範囲内で、チタニウム源をアルミニウム源に対して過剰に用いることにより、焼成時の収縮率を低減させることが可能となる。
【0040】
(ケイ素源)
ケイ素源は、シリコン成分となってチタン酸アルミニウム焼成体に含まれる化合物であり、ケイ素源の併用により、耐熱性がより向上されたチタン酸アルミニウム焼成体を得ることが可能となる。ケイ素源としては、たとえば、二酸化ケイ素、一酸化ケイ素などの酸化ケイ素(シリカ)が挙げられる。
【0041】
ケイ素源は、単独で空気中で焼成することによりシリカに導かれる化合物であってもよい。かかる化合物としては、たとえば、ケイ酸、炭化ケイ素、窒化ケイ素、硫化ケイ素、四塩化ケイ素、酢酸ケイ素、ケイ酸ナトリウム、オルトケイ酸ナトリウム、長石、ガラスフリットなどが挙げられる。なかでも、長石、ガラスフリットなどが好ましく用いられ、工業的に入手が容易であり、組成が安定している点で、ガラスフリットなどがより好ましく用いられる。なお、ガラスフリットとは、ガラスを粉砕して得られるフレークまたは粉末状のガラスをいう。ケイ素源として、長石とガラスフリットとの混合物からなる粉末を用いることもできる。
【0042】
ケイ素源がガラスフリットである場合、得られるチタン酸アルミニウム焼成体の耐熱分解性をより向上させるという観点から、屈伏点が700℃以上のものを用いることが好ましい。ガラスフリットの屈伏点は、熱機械分析装置(TMA:Thermo Mechanical Analyisis)を用いて、低温からガラスフリットの膨張を測定し、膨張が止まり、次に収縮が始まる温度(℃)と定義される。
【0043】
ガラスフリットを構成するガラスには、ケイ酸〔SiO2〕を主成分(全成分中50重量%以上)とする一般的なケイ酸ガラスを用いることができる。ガラスフリットを構成するガラスは、その他の含有成分として、一般的なケイ酸ガラスと同様、アルミナ〔Al23〕、酸化ナトリウム〔Na2O〕、酸化カリウム〔K2O〕、酸化カルシウム〔CaO〕、マグネシア〔MgO〕等を含んでいてもよい。また、ガラスフリットを構成するガラスは、ガラス自体の耐熱水性を向上させるために、ZrO2を含有していてもよい。
【0044】
ケイ素源としては、1種のみが用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。グリーン成形体にシリカゾルを添加してもよい。
【0045】
ケイ素源の粒径は、特に限定されないが、通常、レーザ回折法により測定される、体積基準の累積百分率50%相当粒子径(D50)が0.5〜30μmの範囲内であるものが用いられ、原料混合物の成形体の充填率をより向上させ、機械的強度のより高い焼成体を得るためには、D50が1〜20μmの範囲内であるケイ素源を用いることが好ましい。
【0046】
グリーン成形体がケイ素源を含む場合、グリーン成形体中におけるケイ素源の含有量は、Al23(アルミナ)換算でのアルミニウム源とTiO2(チタニア)換算でのチタニウム源との合計量100重量部に対して、SiO2(シリカ)換算で、通常0.1重量部〜10重量部であり、好ましくは5重量部以下である。また、グリーン成形体中におけるケイ素源の含有量は、グリーン成形体中に含まれるセラミクス源中、2重量%以上5重量%以下とすることがより好ましい。ケイ素源は、その原料由来あるいは製造工程において不可避的に含まれる微量成分を含有し得る。
【0047】
(マグネシウム源)
グリーン成形体は、マグネシウム源を含有していてもよい。グリーン成形体がマグネシウム源を含む場合、得られるチタン酸アルミニウム焼成体は、チタン酸アルミニウムマグネシウム結晶からなる焼成体である。
【0048】
マグネシウム源としては、マグネシア(酸化マグネシウム)のほか、単独で空気中で焼成することによりマグネシアに導かれる化合物が挙げられる。後者の例としては、たとえば、マグネシウム塩、マグネシウムアルコキシド、水酸化マグネシウム、窒化マグネシウム、金属マグネシウムなどが挙げられる。
【0049】
マグネシウム塩として具体的には、塩化マグネシウム、過塩素酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、ピロリン酸マグネシウム、蓚酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、サリチル酸マグネシウム、ミリスチン酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、ジメタクリル酸マグネシウム、安息香酸マグネシウムなどが挙げられる。
【0050】
マグネシウムアルコキシドとして具体的には、マグネシウムメトキシド、マグネシウムエトキシドなどが挙げられる。なお、マグネシウム源は、その原料由来あるいは製造工程において不可避的に含まれる微量成分を含有し得る。
【0051】
マグネシウム源として、マグネシウム源とアルミニウム源とを兼ねた化合物を用いることもできる。このような化合物としては、たとえば、マグネシアスピネル(MgAl24)が挙げられる。なお、マグネシウム源として、マグネシウム源とアルミニウム源とを兼ねた化合物を用いる場合、アルミニウム源のAl23(アルミナ)換算量、および、マグネシウム源とアルミニウム源とを兼ねた化合物に含まれるAl成分のAl23(アルミナ)換算量の合計量と、チタニウム源のTiO2(チタニア)換算量とのモル比が、原料混合物中において上記範囲内となるように調整される。
【0052】
マグネシウム源としては、1種のみが用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0053】
マグネシウム源の粒径は、特に限定されないが、通常、レーザ回折法により測定される、体積基準の累積百分率50%相当粒子径(D50)が0.5〜30μmの範囲内であるものが用いられ、焼成時の収縮率低減の観点からは、D50が3〜20μmの範囲内であるマグネシウム源を用いることが好ましい。
【0054】
グリーン成形体中におけるMgO(マグネシア)換算でのマグネシウム源の含有量は、Al23(アルミナ)換算でのアルミニウム源とTiO2(チタニア)換算でのチタニウム源との合計量に対して、モル比で、0.03〜0.15とすることが好ましく、より好ましくは0.03〜0.12である。マグネシウム源の含有量をこの範囲内に調整することにより、耐熱性がより向上された、大きい細孔径および開気孔率を有するチタン酸アルミニウム焼成体を比較的容易に得ることができる。
【0055】
なお、チタン酸アルミニウム、チタン酸アルミニウムマグネシウム、マグネシアスピネル(MgAl24)などの複合酸化物のように、チタニウム、アルミニウム、ケイ素およびマグネシウムのうち、2つ以上の金属元素を成分とする化合物をセラミクス源として用いることができる。例えば、マグネシアスピネル(MgAl24)はアルミニウム源及びアルミナ源を兼ね、チタン酸アルミニウムはアルミニウム源及びチタニウム源を兼ね、チタン酸アルミニウムマグネシウムはチタニウム源、アルミニウム源およびマグネシウム源を兼ねる。これらを用いる場合、これらの化合物は、それぞれの金属源化合物を混合したものと同じであると考えて、上述の組成比を考えることができる。
【0056】
(バインダ)
バインダとしては、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシルメチルセルロースなどのセルロース類;ポリビニルアルコールなどのアルコール類;リグニンスルホン酸塩等の有機バインダを例示できる。有機バインダの量は、セラミクス源の100重量部に対して、20重量部以下であることが好ましく、より好ましくは15重量部以下、さらに好ましくは6重量部である。また、有機バインダの下限量は、0.1重量部であることが好ましく、より好ましくは3重量部である。
【0057】
(造孔剤)
グリーン成形体は、造孔剤として、疎水性樹脂粒子を含む。疎水性樹脂粒子とは、水等の極性(親水性)溶媒との親和性が低く、極性溶媒をほとんど吸収しない樹脂粒子である。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニル、ナイロン6、ナイロン66、ポリアセタール、ポリカーボネート、及び、ポリイミドの粒子が挙げられる。造孔剤の添加量は、セラミクス源の100重量部に対して、0.5〜40重量部であることが好ましく、より好ましくは1〜25重量部である。
造孔剤の粒径は特に限定されないが、D50が5〜10μmであることが好ましい。
【0058】
他の添加物としては、例えば、潤滑剤、可塑剤、分散剤、極性溶媒が挙げられる。
【0059】
潤滑剤及び可塑剤としては、グリセリンなどのアルコール類;カプリル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、アラキジン酸、オレイン酸、ステアリン酸などの高級脂肪酸;ステアリン酸Alなどのステアリン酸金属塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどが挙げられる。潤滑剤及び可塑剤の添加量は、セラミクス源の100重量部に対して、0〜10重量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜5重量部である。
【0060】
分散剤としては、たとえば、硝酸、塩酸、硫酸などの無機酸;シュウ酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸、乳酸などの有機酸;メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類;ポリカルボン酸アンモニウムなどの界面活性剤などが挙げられる。分散剤の添加量は、セラミクス源の100重量部に対して、0〜20重量部であることが好ましく、より好ましくは2〜8重量部である。
【0061】
極性溶媒としては、たとえば、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノールなどのアルコール類;プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールなどのグリコール類;および水などを用いることができる。なかでも、水が好ましく、不純物が少ない点で、より好ましくはイオン交換水が用いられる。極性溶媒の使用量は、セラミクス源の100重量部に対して、10重量部〜100重量部であることが好ましく、より好ましくは20重量部〜80重量部である。
また、乾燥前の状態における成形体全体の重量に対する極性溶媒の重量は特に限定されないが、10〜30wt%が好ましく、15〜20wt%がより好ましい。
【0062】
このようなグリーンハニカム成形体70は例えば以下のようにして製造することができる。
まず、セラミクス源と、バインダと、造孔剤と、極性溶媒と、必要に応じて添加される添加物を用意する。そして、これらを混練機等により混合して原料混合物を得、得られた原料混合物を隔壁の断面形状に対応する出口開口を有する押出機から押し出し、所望の長さに切ることにより、グリーンハニカム成形体70を得ることができる。
【0063】
続いて、このグリーンハニカム成形体をマイクロ波により加熱して乾燥させる。具体的には、例えば、図2に示すようなマイクロ波炉100を用いて乾燥することができる。
マイクロ波炉100は、グリーンハニカム成形体70をマイクロ波により乾燥させるものであり、主として、容器10と、ターンテーブル30と、モータ32と、容器10内にマイクロ波を供給するマイクロ波源20と、を備える。
【0064】
(容器)
容器10は、マイクロ波を遮蔽する観点から、金属製が好ましい。容器10には、容器10内のガスを外部に排出可能な排出口10bが設けられている。また、容器10には、マイクロ波源20から供給されるマイクロ波を受け入れる導波管10aを有する。
【0065】
(マイクロ波源)
マイクロ波源20は、グリーンハニカム成形体70中を加熱するためのマイクロ波を発生する。マイクロ波の波長は、グリーンハニカム成形体70を加熱できるものであれば特に限定されない。好ましい波長は、895〜940MHz、2400〜2500MHzである。マイクロ波源20は、マイクロ波の出力を、乾燥にしたがって低下させることができるものであることができる。マイクロ波の出力は特に限定されないが、グリーンハニカム成形体1個あたり、例えば、1〜50kWとすることができる。
【0066】
(ターンテーブル及びモータ)
ターンテーブル30は、上面が載置面とされた板であり、モータ32によって垂直Z軸周りを回転可能である。マイクロ波照射時に回転させることにより、加熱ムラを低減できる。
【0067】
本実施形態にかかる乾燥方法では、前述のようにグリーンハニカム成形体70をターンテーブル30上に載置した後、ターンテーブル30を駆動するとともに、マイクロ波源20からマイクロ波を容器10内に供給する。ターンテーブルの回転数は特に限定されないが、3〜60rpmとすることができる。
【0068】
これにより、グリーンハニカム成形体70が加熱され、溶媒が蒸気となってグリーンハニカム成形体70の外に放出される。本実施形態にかかるグリーンハニカム成形体70を用いると、乾燥後のグリーンハニカム成形体の外周面の変形が抑制される。
【0069】
なお、外周面の変形を抑制すべく、マイクロ波の乾燥時に、容器10内にスチーム等の極性溶媒等の蒸気を供給してもよいが、本発明によれば、まわりに極性溶媒を供給しなくても外周面の変形の抑制が十分に可能である。溶媒蒸気を供給しないことにより、乾燥速度を高くできる。
【0070】
この理由の一つとしては、極性溶媒が疎水性樹脂粒子に吸収されにくく、疎水性樹脂粒子が膨潤し難いことが考えられる。
【0071】
マイクロ波による加熱により到達する、成形体70の最終的な乾燥の程度は特に限定されないが、マイクロ波の供給を止める時点で、成形体の乾燥率、すなわち、成形体の乾燥前の極性溶媒質量に対する乾燥により除去された極性溶媒質量の比を80%以上とすることが好ましく、90%以上とすることがより好ましく、95%以上とすることがさらに好ましい。
【0072】
このようにして乾燥したグリーンハニカム成形体70の貫通孔70aの端部を必要に応じて封口し、その後、焼成することにより、セラミクスハニカム構造体が得られる。このようなセラミクスハニカム構造体は、ディーゼルパティキュレートフィルタや、排ガス処理装置の触媒担体として利用可能である。
【0073】
本発明は上記実施形態に限定されず、様々な変形態様が可能である。
【0074】
また、上記第1実施形態では、グリーンハニカム成形体70が、ターンテーブル30上に直接載置されているが、格子状の載置台を介してグリーンハニカム成形体70をターンテーブル30に載置してもよい。これらの載置台は、例えば、焼成済みの、又は、未焼成のセラミクス材料からなることができる。
【実施例】
【0075】
(実施例1)
(グリーンハニカム成形体の製造)
23.05重量部のα−アルミナ粉末、45.32重量部のルチル型チタニア粉末、15.91重量部のマグネシアスピネル粉末、及び、3.52重量部のガラスフリットを混合した。
【0076】
この混合物に、造孔剤としてポリエチレン粒子(住友精化製フローセンUF−1.5N)を12.20重量部、有機バインダとしてメチルセルロース(信越化学工業株式会社、商品名:メトローズSM−4000)5.49重量部及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学工業株式会社、商品名:メトローズ60SH−4000)2.35重量部、可塑剤としてポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブチルエーテル(日油株式会社、商品名:ユニルーブ50MB−72)4.64重量部、ならびに、潤滑剤としてグリセリン0.40重量部を加え、さらに、極性溶媒として水26.40重量部を加えた後、混練機を用いて25℃で混練することにより、坏土(成形用原料混合物)を調製した。ついで、この坏土を押出成形することにより、グリーンハニカム成形体を作製した。グリーンハニカム成形体70は円柱状であり、直径は163mm、長さは270mmとした。貫通孔70aの断面形状は一辺1.43mmの正方形であり、隔壁の厚み0.32mmとなるようにマトリクス状に正方形配置した。
乾燥条件は以下のようにした。マイクロ波の周波数2.45GHz、マイクロ波の出力は、乾燥時間0〜10分まで10kWとした。10分の乾燥で、乾燥率は95%となった。乾燥中に、特に、水蒸気や加熱空気等を容器10内には供給していない。
【0077】
(比較例1)
ハニカム成形体の組成を以下のようにする以外は、実施例1と同様にした。
α−アルミナ粉末を22.49重量部、ルチル型チタニア粉末を44.24重量部、マグネシアスピネル粉末を15.53重量部、ガラスフリットを3.43重量部とした。
造孔剤としてのコーンスターチ(日本コーンスターチ株式会社、商品名Y−3P)を14.30重量部、有機バインダとしてのメチルセルロース(信越化学工業株式会社、商品名:メトローズSM−4000)を5.49重量部及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学工業株式会社、商品名:メトローズ60SH−4000)を2.35重量部、可塑剤としてのポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブチルエーテル(日油株式会社、商品名:ユニルーブ50MB−72)を4.64重量部、潤滑剤としてのグリセリンを0.40重量部、極性溶媒としての水を25.82重量部とした。
【0078】
比較例1のグリーンハニカム成形体に比べて、実施例1のグリーンハニカム成形体の外周面の皺は極めて少なかった。
【符号の説明】
【0079】
10…容器、20…マイクロ波源、70…グリーンハニカム成形体、70a…貫通孔、70d…端面、100…乾燥装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム源、チタニウム源、ケイ素源、バインダ、極性溶媒、及び、疎水性樹脂粒子を含むグリーンハニカム成形体。
【請求項2】
前記疎水性樹脂粒子は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニル、ナイロン6、ナイロン66、ポリアセタール、ポリカーボネート、及び、ポリイミドからなる群から選択される少なくとも一つの粒子である請求項1記載の成形体。
【請求項3】
さらに、マグネシウム源を含む、請求項1又は2記載の成形体。
【請求項4】
前記極性溶媒は水である請求項1〜3のいずれか一項記載の成形体。
【請求項5】
アルミニウム源、チタニウム源、ケイ素源、バインダ、極性溶媒、及び、疎水性樹脂粒子を含むグリーンハニカム成形体をマイクロ波により加熱して乾燥させる工程を備える、グリーンハニカム成形体の製造方法。
【請求項6】
前記疎水性樹脂粒子は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニル、ナイロン6、ナイロン66、ポリアセタール、ポリカーボネート、及び、ポリイミドからなる群から選択される少なくとも一つの粒子である請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記グリーンハニカム成形体は、さらに、マグネシウム源を含む、請求項5又は6記載の方法。
【請求項8】
前記極性溶媒は水である請求項5〜7のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
前記グリーンハニカム成形体の周囲に極性溶媒の蒸気を供給することなく前記グリーンハニカム成形体をマイクロ波により加熱して乾燥させる請求項5〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
請求項5〜9のいずれか一項記載の方法と、
乾燥した前記グリーンハニカム成形体を焼成する工程と、を備えるハニカム構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−91350(P2012−91350A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238872(P2010−238872)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】