説明

グルコース利用を刺激する化合物および使用方法

【課題】グルコース利用を刺激する化合物を提供すること。
【解決手段】本発明は、心筋細胞におけるグルコース酸化速度を刺激する式(I)の新規化合物を提供し、ここで、W、Cyc、p、、X、Z、R、K、R、R、R、R、R、Iおよびnは、式(I)について本明細書中で定義したとおりである。本発明はまた、グルコース酸化を刺激できる化合物を含有する医薬組成物、心筋細胞においてグルコース酸化速度を高める方法、および心筋虚血の治療方法に関する。グルコース酸化を刺激でき、半減期が長く、そして心筋虚血を治療または予防するのに有効であり得る新規種類の化合物を開発し同定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、米国特許出願第10/181,274号の部分継続出願であり、この出願は、35 U.S.C.371に基づいた米国国内出願であり、2002年4月1日に出願されたPCT/IB02/02525(現在、取り下げられた)に基づいており、これらの出願の全開示内容は、本明細書中で参考として援用されている。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、心筋細胞におけるグルコース酸化速度を刺激する新規化合物に関する。本発明はまた、グルコース酸化を刺激できる化合物を含有する医薬組成物、心筋細胞におけるグルコース酸化速度を高める方法、および心筋虚血の治療方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
心筋虚血は、狭心症、急性心筋梗塞の状況、または心臓手術中に起こる一般的な臨床病理である。心筋虚血は、重要な臨床的問題であり、その合併症は、西洋社会における死亡および罹患の主要原因である。
【0004】
虚血中またはその後にグルコース酸化を刺激することは、虚血した心臓に有益であり得ることが報告されている。Br J Pharmacol 128:197−205,1999,Am JPhysiol 275:H1533−41,1998.Biochimica et Biophysica Acta 1225:191−9,1994,Pediatric Research34:735−41,1993,Journal of Biological Chemistry 270:17513−20,1995.Biochimica et Biophysica Acta 1301:67−75,1996,Am J Cardiol 80:11A−16A,1997,Molecular & Cellular Biochemistry 88:175−9,1989,Circ Res 65:378−87,1989,Circ Res 66:546−53,1990,American Journal of Physiology 259:H1079−85,1990,American Journal of Physiology 261:H1053−9,1991,Am J Physiol Heart Circ Physiol 280:H1762−9.,2001,J Am Coll Cardiol 36:1378−85.,2000。
【0005】
収縮している筋肉の高いエネルギー要求を満たすために、心臓は、一定の豊富な自由エネルギー担体、すなわち、アデノシン三リン酸(ATP)の供給を産生しなければならない。このエネルギーは、種々の炭素基質(炭水化物(例えば、グルコース)を含めて)の代謝により、産生される。脂肪酸の代謝は、心臓の他の重要エネルギー源である。
【0006】
心臓におけるグルコース代謝は、2つの重要な経路、すなわち、解糖およびグルコース酸化からなる。
【0007】
虚血(例えば、狭心症、心筋梗塞または心臓手術により生じるもの)中にて、血漿中で脂肪酸が循環するレベルは、劇的に高められ得ることが明らかとなっている。Am Heart J 128:61−7,1994。結果として、虚血および再灌流中にて、心臓は、高いレベルの脂肪酸に晒され、その結果、グルコースの酸化基質としての脂肪酸の優先的な使用が起こる。さらに、主要なATP源としての脂肪酸に対するこの過剰依存は、脂肪酸が誘発する虚血の損傷の原因となっていることが報告されている。この知見は、脂肪酸が誘発する虚血損傷から心臓を保護する試みにおいて、基質の利用をグルコースに切り替えることに向けた多数のアプローチの引き金となっている。J Cardiovasc Pharmacol 31:336−44.,1998,Am Heart J 134:841−55.,1997,Am J Physiol 273:H2170−7.,1997,Cardiovasc Drugs Ther 14:615−23.,2000,Cardiovasc Res 39:381−92.,1998,Am HeartJ 139:S115−9.,2000,Coron Artery Dis 12:S8−11.,2001,Am J Cardiol 82:14K−17K.,1998,Molecular & Cellular Biochemistry 172:137−47,1997,Circulation 95:313−5.,1997,Gen Pharmacol 30:639−45.,1998,Am J Cardiol 82:42K− 49K.,1998,Coron Artery Dis 12:S29−33.,2001,Coron Artery Dis 12:S3−7.,2001,J Nucl Med 38:1515−21.,1997。心筋エネルギー代謝を操作するのに使用される現在のアプローチは、グルコース代謝を直接的または間接的のいずれかで刺激する(すなわち、脂肪酸代謝を阻害する)ことを包含する。
【0008】
高い脂肪酸酸化速度は、グルコースの酸化を著しく低下させるので、グルコース酸化を高める1つのアプローチは、脂肪酸酸化を抑制することである。このことは、虚血中およびその後の両方において有効であることが判明しており、この薬理学的なアプローチは、臨床用途を調べる出発点である。脂肪酸の酸化を抑制する多数の薬物が最近開発されているものの、直接β−酸化阻害剤であるトリメタジジンは、広く使用されている最初の抗狭心症薬であり、これは、エネルギー代謝の最適化に起因できる作用機構を有する。Circulation Research.86:580−8,2000。
【0009】
トリメタジジンは、主に、脂肪酸の酸化を抑制することにより作用して、それにより、心臓でのグルコース酸化を刺激すると報告されている。
【0010】
脂肪酸からグルコース酸化へとエネルギー代謝を切り替えることが報告されている第二の臨床的に有効な薬剤には、ラノラジン(ranolazine)がある。この薬剤は、脂肪酸酸化の抑制に二次的なグルコース酸化を刺激することが報告されている。Circulation 93:135−42.,1996。
【0011】
虚血中およびその後の機械的な機能に対する脂肪酸の有害な効果はまた、グルコース酸化を直接的に高める薬剤により、弱められ得る。虚血に続いてジクロロ酢酸(DCA)を使用することによりグルコース酸化を刺激すると虚血した心臓に有益であり得るという多数の実験的な研究が報告されている。Am Heart J 134:841−55,1997。DCAは、グルコース酸化を刺激するように設計された有効な化合物であるものの、その生体半減期が短い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、グルコース酸化を刺激でき、半減期が長く、そして心筋虚血を治療または予防するのに有効であり得る新規種類の化合物を開発し同定する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の要旨)
本願は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
式(I)により表わされる化合物、またはそれらの薬学的に受容可能な塩、エステルまたはプロドラッグ:
【化1】


式(I)
ここで、
Wは、C〜Cアルキル、ハロゲンまたはアリールである;
Cycは、CまたはCシクロアルキルである;
pは、CycがCシクロアルキルであるとき、0〜3の整数であり、または、pは、CycがCシクロアルキルであるとき、0〜2の整数である;
Yは、O、SまたはNRである;
Xは、O、S、NRまたはCRである;
Rは、H、アルキル、アリールまたは
【化2】


ここで、iは、2〜4の整数である;
Zは、H、アルキル、シクロアルキル、アリールまたは(シクロ)アルキルカルボニルまたは
【化3】


であり、もし、XがNRなら、Rは、
【化4】


である;
は、H、アルキル、アリールまたはOである;
は、H、アルキルまたはアリールである;
およびRは、別個に、H、アルキルまたはアリールである;そして
nは、1〜10の整数である、
化合物。
(項目2)
式(Ia)により表わされる項目1に記載の化合物、またはそれらの薬学的に受容可能な塩、エステルまたはプロドラッグ:
【化5】


式(Ia)
ここで、
Wは、C〜Cアルキル、ハロゲンまたはアリールである;
Cycは、CまたはCシクロアルキルである;
pは、CycがCシクロアルキルであるとき、0〜3の整数であり、または、pは、CycがCシクロアルキルであるとき、0〜2の整数である;
Yは、O、SまたはNRである;
Xは、O、S、NRまたはCRである;
Rは、H、アルキルまたはアリールである;
Zは、H、アルキル、シクロアルキル、アリールまたは(シクロ)アルキルカルボニルである;
は、H、アルキル、アリールまたはOである;
は、H、アルキルまたはアリールである;
およびRは、別個に、H、アルキルまたはアリールである;そして
nは、1〜10の整数である、
化合物。
(項目3)
pが、0である、項目1に記載の化合物。
(項目4)
YがOであり;
Xが、NRまたはOであり;
、R、RおよびRが、Hであり;
nが、1〜4であり;そして
Zが、低級アルキル、シクロアルキルまたはフェニルである、項目3に記載の化合物。
(項目5)
Yが、NRであり;
Xが、Oであり;
、R、RおよびRが、Hであり;
nが、1または2であり;そして
Zが、Hである、項目3に記載の化合物。
(項目6)
前記化合物が、
シクロプロパンカルボン酸、2−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチルエステル;
シクロブタンカルボン酸、2−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチルエステル;
(シクロブタンカルボニル−アミノ)−酢酸;
シクロプロパンカルボン酸、2−(2−ベンジルオキシ−エトキシ)−エチルエステル;
2−(シクロプロパンカルボニル−アミノ)−プロピオン酸;
シクロブタンカルボン酸、2−(2−ベンジルオキシ−エトキシ)−エチルエステル;
シクロブタンカルボン酸、2−(2−ブトキシ−エトキシ)−エチルエステル;
シクロブタンカルボン酸、2−(2−エトキシ−エトキシ)−エチルエステル;
シクロプロパンカルボン酸、2−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−エチルエステル

シクロブタンカルボン酸、2−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−エチルエステル;
シクロプロパンカルボン酸、2−(2−ヘキシルオキシ−エトキシ)−エチルエステル

シクロブタンカルボン酸、2−(2−ヘキシルオキシ−エトキシ)−エチルエステル;
シクロプロパンカルボン酸、2−(2−メトキシ−エトキシ)−エチルエステル;
シクロブタンカルボン酸、2−(2−メトキシ−エトキシ)−エチルエステル;
シクロプロパンカルボン酸、2−エトキシ−エチルエステル;
シクロブタンカルボン酸、2−エトキシ−エチルエステル;
シクロプロパンカルボン酸、2−イソプロポキシ−エチルエステル;
シクロブタンカルボン酸、2−イソプロポキシ−エチルエステル;
シクロプロパンカルボン酸、2−(2−シクロプロパンカルボニルオキシ−エトキシ)−エチルエステル;
シクロプロパンカルボン酸、2−[2−(2−シクロプロパンカルボニルオキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチルエステル;および
シクロブタンカルボン酸、2−[2−(2−シクロブタンカルボニルオキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチルエステルから選択される、項目3に記載の化合物。
(項目7)
式(I)または式(II)により表わされる少なくとも1種の化合物、またはそれらの薬学的に受容可能な塩、エステルまたはプロドラッグと、薬学的に受容可能な担体、希釈剤、賦形剤またはそれらの混合物とを含有する、医薬組成物:
【化6】


式(I)
【化7】


式(II)
ここで、
Wは、C〜Cアルキル、ハロゲンまたはアリールである;
Cycは、CまたはCシクロアルキルである;
pは、CycがCシクロアルキルであるとき、0〜3の整数であり、または、pは、CycがCシクロアルキルであるとき、0〜2である;
Yは、O、SまたはNRである;
Xは、O、S、NRまたはCRである;
Zは、H、アルキル、シクロアルキル、アリールまたは(シクロ)アルキルカルボニルまたは
【化8】


であり、もし、XがNRなら、Rは、
【化9】


である;
Rは、H、アルキル、アリールまたは
【化10】


ここで、iは、2〜4の整数である;
は、H、アルキル、アリールまたはOである;
は、H、アルキルまたはアリールである;
およびRは、別個に、H、アルキルまたはアリールである;そして
nは、1〜10の整数である、
組成物。
(項目8)
前記化合物が、式(I)により表わされ、そして
pが、0であり;
Yが、Oであり;
Xが、NRまたはOであり;
、R、RおよびRが、Hであり;
nが、1〜4であり;そして
Zが、低級アルキル、シクロアルキルまたはフェニルである、項目7に記載の医薬組成物。
(項目9)
前記化合物が、式(I)により表わされ、そして
pが、0であり;
Yが、NRであり;
Xが、Oであり;
、R、RおよびRが、Hであり;
nが、1または2であり;そして
Zが、Hである、項目7に記載の医薬組成物。
(項目10)
前記化合物が、式(II)により表わされ、ここで、pが、0である、項目7に記載の医薬組成物。
(項目11)
前記組成物が、錠剤、丸薬、カプセル剤、水溶液、または無菌懸濁液または溶液の形態である、項目7に記載の医薬組成物。
(項目12)
前記少なくとも1種の化合物が、シクロプロパンカルボン酸;シクロブタンカルボン酸;シクロプロパンカルボン酸、2−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチルエステル;シクロブタンカルボン酸、2−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチルエステル;(シクロブタンカルボニル−アミノ)−酢酸;シクロプロパンカルボン酸、2−(2−ベンジルオキシ−エトキシ)−エチルエステル;2−(シクロプロパンカルボニル−アミノ)−プロピオン酸;シクロブタンカルボン酸、2−(2−ベンジルオキシ−エトキシ)−エチルエステル;シクロブタンカルボン酸、2−(2−ブトキシ−エトキシ)−エチルエステル;シクロブタンカルボン酸、2−(2−エトキシ−エトキシ)−エチルエステル;シクロプロパンカルボン酸、2−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−エチルエステル;シクロブタンカルボン酸、2−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−エチルエステル;シクロプロパンカルボン酸、2−(2−ヘキシルオキシ−エトキシ)−エチルエステル;シクロブタンカルボン酸、2−(2−ヘキシルオキシ−エトキシ)−エチルエステル;シクロプロパンカルボン酸、2−(2−メトキシ−エトキシ)−エチルエステル;シクロブタンカルボン酸、2−(2−メトキシ−エトキシ)−エチルエステル;シクロプロパンカルボン酸、2−エトキシ−エチルエステル;シクロブタンカルボン酸、2−エトキシ−エチルエステル;シクロプロパンカルボン酸、2−イソプロポキシ−エチルエステル;シクロブタンカルボン酸、2−イソプロポキシ−エチルエステル;シクロプロパンカルボン酸、2−(2−シクロプロパンカルボニルオキシ−エトキシ)−エチルエステル;シクロプロパンカルボン酸、2−[2−(2−シクロプロパンカルボニルオキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチルエステル;およびシクロブタンカルボン酸、2−[2−(2−シクロブタンカルボニルオキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチルエステルからなる群から選択される、項目7に記載の医薬組成物。
(項目13)
温血動物の細胞、組織または器官でのグルコースの利用を高める方法であって、該細胞、組織または器官を、式(I)または式(II)により表わされる少なくとも1種の化合物、またはそれらの薬学的に受容可能な塩、エステルまたはプロドラッグのグルコース利用有効量で処理する工程を包含する、方法:
【化11】


式(I)
【化12】


式(II)
ここで、
Wは、C〜Cアルキル、ハロゲンまたはアリールである;
Cycは、CまたはCシクロアルキルである;
pは、CycがCシクロアルキルであるとき、0〜3の整数であり、または、pは、CycがCシクロアルキルであるとき、0〜2の整数である;
Yは、O、SまたはNRである;
Xは、O、S、NRまたはCRである;
Zは、H、アルキル、シクロアルキル、アリールまたは(シクロ)アルキルカルボニルまたは
【化13】


であり、もし、XがNRなら、Rは、
【化14】


である;
Rは、H、アルキル、アリールまたは
【化15】


ここで、iは、2〜4の整数である;
は、H、アルキル、アリールまたはOである;
は、H、アルキルまたはアリールである;
およびRは、別個に、H、アルキルまたはアリールである;そして
nは、1〜10の整数である、
方法。
(項目14)
前記化合物が、式(I)により表わされ、そして
p=0であり;
Yが、Oであり;
Xが、NRまたはOであり;
、R、RおよびRが、Hであり;
nが、1〜4であり;そして
Zが、低級アルキル、シクロアルキルまたはフェニルである、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記化合物が、式(I)により表わされ、そして
p=0であり;
Yが、NRであり;
Xが、Oであり;
、R、RおよびRが、Hであり;
nが、1または2であり;そして
Zが、Hである、項目13に記載の方法。
(項目16)
前記化合物が、式(II)により表わされ、そしてpが、0である、項目13に記載の方法。
(項目17)
前記器官が、心臓である、項目13に記載の方法。
(項目18)
前記細胞が、心筋細胞である、項目13に記載の方法。
(項目19)
前記少なくとも1種の化合物が、シクロプロパンカルボン酸;シクロブタンカルボン酸;シクロプロパンカルボン酸、2−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチルエステル;シクロブタンカルボン酸、2−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチルエステル;(シクロブタンカルボニル−アミノ)−酢酸;シクロプロパンカルボン酸、2−(2−ベンジルオキシ−エトキシ)−エチルエステル;2−(シクロプロパンカルボニル−アミノ)−プロピオン酸;シクロブタンカルボン酸、2−(2−ベンジルオキシ−エトキシ)−エチルエステル;シクロブタンカルボン酸、2−(2−ブトキシ−エトキシ)−エチルエステル;シクロブタンカルボン酸、2−(2−エトキシ−エトキシ)−エチルエステル;シクロプロパンカルボン酸、2−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−エチルエステル;シクロブタンカルボン酸、2−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−エチルエステル;シクロプロパンカルボン酸、2−(2−ヘキシルオキシ−エトキシ)−エチルエステル;シクロブタンカルボン酸、2−(2−ヘキシルオキシ−エトキシ)−エチルエステル;シクロプロパンカルボン酸、2−(2−メトキシ−エトキシ)−エチルエステル;シクロブタンカルボン酸、2−(2−メトキシ−エトキシ)−エチルエステル;シクロプロパンカルボン酸、2−エトキシ−エチルエステル;シクロブタンカルボン酸、2−エトキシ−エチルエステル;シクロプロパンカルボン酸、2−イソプロポキシ−エチルエステル;シクロブタンカルボン酸、2−イソプロポキシ−エチルエステル;シクロプロパンカルボン酸、2−(2−シクロプロパンカルボニルオキシ−エトキシ)−エチルエステル;シクロプロパンカルボン酸、2−[2−(2−シクロプロパンカルボニルオキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチルエステル;およびシクロブタンカルボン酸、2−[2−(2−シクロブタンカルボニルオキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチルエステルからなる群から選択される、項目13に記載の方法。
(項目20)
グルコースの利用を高めることにより治療可能な生理学的状態または障害を治療する方法であって、該方法は、以下の工程を包含する:そのような治療が必要な患者に、式(I)または式(II)により表わされる少なくとも1種の化合物、またはそれらの薬学的に受容可能な塩、エステルまたはプロドラッグを含有する医薬組成物のグルコース利用向上有効量を投与する工程:
【化16】


式(I)
【化17】


式(II)
ここで、
Wは、C〜Cアルキル、ハロゲンまたはアリールである;
Cycは、CまたはCシクロアルキルである;
pは、CycがCシクロアルキルであるとき、0〜3の整数であり、または、pは、CycがCシクロアルキルであるとき、0〜2の整数である;
Yは、O、SまたはNRである;
Xは、O、S、NRまたはCRである;
Zは、H、アルキル、シクロアルキル、アリールまたは(シクロ)アルキルカルボニルまたは
【化18】


であり、もし、XがNRなら、Rは、
【化19】


である;
Rは、H、アルキル、アリールまたは
【化20】


ここで、iは、2〜4の整数である;
は、H、アルキル、アリールまたはOである;
は、H、アルキルまたはアリールである;
およびRは、別個に、H、アルキルまたはアリールである;そして
nは、1〜10の整数である、
方法。
(項目21)
前記状態または障害が、虚血/再灌流傷害、ポスト心筋梗塞、狭心症、心不全、心筋症、末梢血管病、糖尿病および乳酸アシドーシス、または心臓切開手術、バイパス手術または心臓移植に付随した症状または副作用である、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記障害または状態が、虚血/再灌流傷害である、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記化合物が、式(I)により表わされ、そしてpが、0であり;
YがOであり;
Xが、NRまたはOであり;
、R、RおよびRが、Hであり;
nが、1〜4であり;そして
Zが、低級アルキル、シクロアルキルまたはフェニルである、項目20に記載の方法。
(項目24)
前記化合物が、式(I)により表わされ、そしてp=0であり;
Yが、NRであり;
Xが、Oであり;
、R、RおよびRが、Hであり;
nが、1または2であり;そして
Zが、Hである、項目20に記載の方法。
(項目25)
前記化合物が、式(II)により表わされ、そしてpが、0である、項目20に記載の方法。
(項目26)
前記少なくとも1種の化合物が、シクロプロパンカルボン酸;シクロブタンカルボン酸;シクロプロパンカルボン酸、2−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチルエステル;シクロブタンカルボン酸、2−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチルエステル;(シクロブタンカルボニル−アミノ)−酢酸;シクロプロパンカルボン酸、2−(2−ベンジルオキシ−エトキシ)−エチルエステル;2−(シクロプロパンカルボニル−アミノ)−プロピオン酸;シクロブタンカルボン酸、2−(2−ベンジルオキシ−エトキシ)−エチルエステル;シクロブタンカルボン酸、2−(2−ブトキシ−エトキシ)−エチルエステル;シクロブタンカルボン酸、2−(2−エトキシ−エトキシ)−エチルエステル;シクロプロパンカルボン酸、2−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−エチルエステル;シクロブタンカルボン酸、2−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−エチルエステル;シクロプロパンカルボン酸、2−(2−ヘキシルオキシ−エトキシ)−エチルエステル;シクロブタンカルボン酸、2−(2−ヘキシルオキシ−エトキシ)−エチルエステル;シクロプロパンカルボン酸、2−(2−メトキシ−エトキシ)−エチルエステル;シクロブタンカルボン酸、2−(2−メトキシ−エトキシ)−エチルエステル;シクロプロパンカルボン酸、2−エトキシ−エチルエステル;シクロブタンカルボン酸、2−エトキシ−エチルエステル;シクロプロパンカルボン酸、2−イソプロポキシ−エチルエステル;シクロブタンカルボン酸、2−イソプロポキシ−エチルエステル;シクロプロパンカルボン酸、2−(2−シクロプロパンカルボニルオキシ−エトキシ)−エチルエステル;シクロプロパンカルボン酸、2−[2−(2−シクロプロパンカルボニルオキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチルエステル;およびシクロブタンカルボン酸、2−[2−(2−シクロブタンカルボニルオキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチルエステルからなる群から選択される、項目20に記載の方法。
(項目27)
項目7に記載の医薬組成物を含む、キット。
(項目28)
前記キットが、ラベルまたはパッケージ挿入物を含み、該ラベルまたはパッケージ挿入物が、該キットの成分のインビトロ、インビボまたはエキソビボ使用説明書を含む、項目27に記載のキット。
【0014】
1局面では、本発明は、式(I)により表わされる化合物、またはそれらの薬学的に受容可能な塩、エステルまたはプロドラッグに関する:
【0015】
【化21】

【0016】
式(I)
ここで、
Wは、C〜Cアルキル、ハロゲンまたはアリールである;
Cycは、CまたはCシクロアルキルである;
pは、CycがCシクロアルキルであるとき、0〜3の整数であり、また、pは、CycがCシクロアルキルであるとき、0〜2の整数である;
Yは、O、SまたはNRである;
Xは、O、S、NRまたはCRである;
Zは、H、アルキル、シクロアルキル、アリールまたは(シクロ)アルキルカルボニルまたは
【0017】
【化22】

【0018】
であり、もし、XがNRなら、Rは、
【0019】
【化23】

【0020】
である;
Rは、H、アルキル、アリールまたは
【0021】
【化24】

【0022】
ここで、iは、2〜4の整数である;
は、H、アルキル、アリールまたはOである;
は、H、アルキルまたはアリールである;
およびRは、別個に、H、アルキルまたはアリールである;そして
nは、1〜10の整数である。
【0023】
好ましい1代替局面では、本発明は、式(Ia)により表わされる化合物、またはそれらの薬学的に受容可能な塩、エステルまたはプロドラッグである式(I)の新規化合物に関する:
【0024】
【化25】

【0025】
式(Ia)
ここで、
Wは、C〜Cアルキル、ハロゲンまたはアリールである;
Cycは、CまたはCシクロアルキルである;
pは、CycがCシクロアルキルであるとき、0〜3の整数であり、または、pは、CycがCシクロアルキルであるとき、0〜2の整数である;
Yは、O、SまたはNRである;
Xは、O、S、NRまたはCRである;
Zは、H、アルキル、シクロアルキル、アリールまたは(シクロ)アルキルカルボニルである;
Rは、H、アルキルまたはアリールである;
は、H、アルキル、アリールまたはOである;
は、H、アルキルまたはアリールである;
およびRは、別個に、H、アルキルまたはアリールである;そして
nは、1〜10の整数である。
【0026】
1局面によれば、本発明は、さらに、温血動物の心筋細胞または他の種類の細胞、組織または器官(特に、高いグルコース代謝が可能なもの(例えば、心臓および他の筋肉))でのグルコースの利用を高めるか改善する方法に関する。この方法は、細胞、組織または器官を、式(II)で表わされる置換または非置換のシクロプロパンカルボン酸またはシクロブタンカルボン酸または式(I)のシクロプロパンカルボン酸またはシクロブタンカルボン酸誘導体で治療する工程を包含する:
【0027】
【化26】

【0028】
ここで、W、Cycおよびpは、式(I)に関連して定義したとおりである。
【0029】
代替局面によれば、本発明はまた、式(I)の化合物と、適当な医薬担体、希釈剤、賦形剤または充填剤とを含有する医薬組成物に関する。
【0030】
さらに他の局面によれば、本発明は、グルコースの利用を高めることにより治療され得る生理学的状態または障害を治療する方法に関する。1実施態様によれば、このような方法は、そのような治療が必要な患者に、有効量の医薬組成物を投与する工程を包含し、該医薬組成物は、式(II)の置換または非置換のシクロプロパンカルボン酸またはシクロブタンカルボン酸または式(I)のシクロプロパンカルボン酸またはシクロブタンカルボン酸誘導体を含有する。
【0031】
本発明は、さらに、本発明の医薬組成物を含有するキットに関する。
【0032】
本発明の方法は、温血動物被験体(例えば、哺乳動物(ヒト、霊長類など)を含めて)を治療するのに適用される。
【0033】
(定義)
本明細書中で使用する「アルキル」との用語は、直鎖または分枝アルカン鎖を意味し、これは、必要に応じて、例えば、ハロゲン、環状または芳香族置換基で置換され得る。
【0034】
本明細書中で使用する「アリール」または「芳香族」とは、5個〜12個の炭素原子を含有する単環式または二環式の構造、好ましくは、6個の炭素原子を含有する単環式の環を意味する。この環は、必要に応じて、アルキル、アルケニル、ハロゲン、アルコキシまたはハロアルキル置換基で置換され得る。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、対照と比較して、指示濃度のシクロプロパンカルボン酸2−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチルエステル(MM054)で単離し灌流した作動しているラット心臓モデルにおけるグルコース酸化を描写しているグラフである。
【図2】図2は、対照と比較して、指示濃度のシクロブタンカルボン酸2−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチルエステル(MM056)で単離し灌流した作動しているラット心臓モデルにおけるグルコース酸化を描写しているグラフである。
【図3】図3は、対照と比較して、増加濃度のシクロプロパンカルボン酸2−イソプロポキシ−エチルエステル(MM070)で単離し灌流した作動しているラット心臓モデルにおけるグルコース酸化を描写しているグラフである。
【図4】図4は、対照と比較して、増加濃度のシクロプロパンカルボン酸(MM001)で単離し灌流した作動しているラット心臓モデルにおけるグルコース酸化を描写しているグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
(発明の詳細な説明)
1局面によれば、本発明は、シクロプロパンカルボン酸またはシクロブタンカルボン酸の誘導体である新規化合物を提供する。これらの化合物は、心筋細胞および他の種類の細胞において、グルコース酸化刺激活性を示す。本発明の化合物は、式(I)により表わされるか、またはそれらの薬学的に受容可能な塩、エステルまたはプロドラッグである:
【0037】
【化27】

【0038】
式(I)
ここで、
Wは、C〜Cアルキル、ハロゲンまたはアリールである;
Cycは、CまたはCシクロアルキルである;
pは、CycがCシクロアルキルであるとき、0〜3の整数であり、または、pは、CycがCシクロアルキルであるとき、0〜2の整数である;
Yは、O、SまたはNRである;
Xは、O、S、NRまたはCRである;
Zは、H、アルキル、シクロアルキル、アリールまたは(シクロ)アルキルカルボニルまたは
【0039】
【化28】

【0040】
であり、もし、XがNRなら、Rは、
【0041】
【化29】

【0042】
である;
Rは、H、アルキル、アリールまたは
【0043】
【化30】

【0044】
ここで、iは、2〜4の整数である;
は、H、アルキル、アリールまたはOである;
は、H、アルキルまたはアリールである;
およびRは、別個に、H、アルキルまたはアリールである;そして
nは、1〜10の整数である。
【0045】
代替局面によれば、本発明は、本発明の式(I)の新規化合物を提供し、これは、式(Ia)により表わされる化合物か、またはそれらの薬学的に受容可能な塩、エステルまたはプロドラッグである:
【0046】
【化31】

【0047】
式(Ia)
ここで、
Wは、C〜Cアルキル、ハロゲンまたはアリールである;
Cycは、CまたはCシクロアルキルである;
pは、CycがCシクロアルキルであるとき、0〜3の整数であり、または、pは、CycがCシクロアルキルであるとき、0〜2の整数である;
Yは、O、SまたはNRである;
Xは、O、S、NRまたはCRである;
Zは、H、アルキル、シクロアルキル、アリールまたは(シクロ)アルキルカルボニルである;
Rは、H、アルキルまたはアリールである;
は、H、アルキル、またはアリールである;
は、H、アルキル、アリール、またはOである;
およびRは、別個に、H、アルキルまたはアリールである;そして
nは、1〜10の整数である。
【0048】
本発明の特定の化合物は、好都合には、以下の反応スキームに従って、適当な置換または非置換シクロプロパン塩化カルボニルまたはシクロブタン塩化カルボニルから調製され得る:
【0049】
【化32】

【0050】
ここで、W、Cycおよびpは、式(I)に関連して定義したとおりであり、Yは、Oであり、その結果、R’YHは、アルコールであり、そしてR’は、
【0051】
【化33】

【0052】
であり、ここで、R、R、X、Zおよびnは、式(Ia)に関連して定義したとおりである。
【0053】
式(I)の他の化合物は、適当な出発物質を使用して、実施例23で記述されたものと類似の方法により、調製され得る。
【0054】
適当な溶媒には、不活性有機溶媒(例えば、ジクロロメタン)が挙げられ、そして適当な塩基触媒には、トリエチルアミンおよびピリジンが挙げられる。
【0055】
反応条件は、出発物質および所望の最終生成物に依存して、変わり得る。これらの反応条件の最適化は、当業者に明らかである。
【0056】
好ましい化合物は、非置換シクロアルキル環(pは、0である)を有する。
【0057】
好ましい実施態様によれば、Yは、Oであり、そしてXは、NRまたはOであり、nは、1〜4であり、pは、0であり、R、R、RおよびRは、水素であり、そしてZは、低級アルキル、シクロアルキルまたはフェニルである;またはYは、NRであり、そしてXは、Oであり、nは、1または2であり、pは、0であり、R、R、RおよびRは、水素であり、そしてZは、水素である。
【0058】
本発明の化合物は、以下の化合物により、例証される:
シクロプロパンカルボン酸、2−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチルエステル;
シクロブタンカルボン酸、2−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチルエステル;
(シクロブタンカルボニル−アミノ)−酢酸;
シクロプロパンカルボン酸、2−(2−ベンジルオキシ−エトキシ)−エチルエステル;
2−(シクロプロパンカルボニル−アミノ)−プロピオン酸;
シクロブタンカルボン酸、2−(2−ベンジルオキシ−エトキシ)−エチルエステル;
シクロブタンカルボン酸、2−(2−ブトキシ−エトキシ)−エチルエステル;
シクロブタンカルボン酸、2−(2−エトキシ−エトキシ)−エチルエステル;
シクロプロパンカルボン酸、2−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−エチルエステル

シクロブタンカルボン酸、2−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−エチルエステル;
シクロプロパンカルボン酸、2−(2−ヘキシルオキシ−エトキシ)−エチルエステル

シクロブタンカルボン酸、2−(2−ヘキシルオキシ−エトキシ)−エチルエステル;
シクロプロパンカルボン酸、2−(2−メトキシ−エトキシ)−エチルエステル;
シクロブタンカルボン酸、2−(2−メトキシ−エトキシ)−エチルエステル;
シクロプロパンカルボン酸、2−エトキシ−エチルエステル;
シクロブタンカルボン酸、2−エトキシ−エチルエステル;
シクロプロパンカルボン酸、2−イソプロポキシ−エチルエステル;
シクロブタンカルボン酸、2−イソプロポキシ−エチルエステル;
シクロプロパンカルボン酸、2−(2−シクロプロパンカルボニルオキシ−エトキシ)−エチルエステル;
シクロブタンカルボン酸、2−(2−シクロブタンカルボニルオキシ−エトキシ)−エチルエステル;
シクロプロパンカルボン酸、2−[2−(2−シクロプロパンカルボニルオキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチルエステル;および
シクロブタンカルボン酸、2−[2−(2−シクロブタンカルボニルオキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチルエステル。
【0059】
本発明は、さらに、ヒトおよび動物の心筋細胞および他の細胞、組織または器官のグルコース酸化の割合を高め、グルコースの利用を改善する方法を提供する。置換または非置換シクロプロパンカルボン酸およびシクロブタンカルボン酸、式(II)により表わされるシクロプロパンカルボン酸およびシクロブタンカルボン酸、およびシクロプロパンカルボン酸およびシクロブタンカルボン酸誘導体(例えば、シクロプロパンカルボン酸、2−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチルエステルおよびシクロブタンカルボン酸、2−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチルエステル)および式(I)により表わされる他の化合物は、温血動物(ヒトを含めて)の心筋細胞および他の種類の細胞、組織または器官におけるグルコースの利用を高めることができることが発見されている。
【0060】
式IIの化合物は、以下の構造を有する:
【0061】
【化34】

【0062】
式(II)
ここで、
Wは、C〜Cアルキル、ハロゲンまたはアリールである;
Cycは、CまたはCシクロアルキルである;そして
pは、CycがCシクロアルキルであるとき、0〜3の整数であり、または、pは、CycがCシクロアルキルであるとき、0〜2である;
1実施態様によれば、本発明の方法は、動物の細胞、組織または器官を、グルコースの利用を刺激するのに有効な量で、式(I)または式(II)により表わされる少なくとも1種の化合物で治療する工程を包含する。式(I)または式(II)の化合物は、式(I)または(II)の化合物の医薬組成物を動物に投与する通常の手段(例えば、経口投与、注射または注入など)により、該細胞、組織または器官に送達され得る。
【0063】
本発明は、さらに、その活性成分として、式(I)または(II)の少なくとも1種の化合物またはそれらの薬学的に受容可能な塩、エステルまたはプロドラッグを含有する医薬組成物を提供する。式(I)または(II)の1種より多い化合物、それらの種々の混合物および配合を含有する医薬組成物もまた、本発明の範囲内であると見なされる。
【0064】
医薬組成物または処方には、薬学分野で通常使用される組成物および処方が挙げられ、これらは、経口投与、静脈内投与、筋肉内投与、動脈内投与、頭蓋内投与および/または腔内投与に適合する担体および賦形剤を含有し得る。適当な医薬組成物および/または処方は、さらに、コロイド分散系、または脂質処方(例えば、カチオン脂質またはアニオン脂質)、ミセル、マイクロビーズなどを含有し得る。
【0065】
上述のように、本発明の医薬組成物は、薬学的に受容可能および生理学的に受容可能な担体、希釈剤または賦形剤を含有し得る。適当な担体、希釈剤または賦形剤の例には、溶媒(水性または非水性)、溶液、乳濁液、分散媒体、被覆、等張剤および吸収促進剤または吸収遅延剤(これらは、医薬の投与に適合する)、および当該技術分野で公知の他の一般的に使用される担体が挙げられる。
【0066】
医薬組成物には、また、その組成物が体内から急速に分解または排出されるのを保護する担体を含有し得、それゆえ、徐放処方(移植片およびマイクロカプセル化送達システム)を包含し得る。例えば、時間遅延物質(例えば、グルセリルモノステアレートまたはグリセリルステアレート)は、単独で、またはワックスと併用して、使用され得る。
【0067】
医薬組成物は、特定の投与経路と適合するように処方できる。経口投与には、組成物は、賦形剤と併用でき、そして錠剤、丸薬またはカプセル剤(例えば、ゼラチンカプセル)の形態で、使用できる。薬学的に適当な結合剤および/または補助物質は、経口処方で、含有できる。これらの錠剤、丸剤、カプセルなどは、以下の成分のいずれかまたは類似の化合物を含有できる:結合剤(例えば、微結晶セルロース、トラガカントガムまたはゼラチン);賦形剤(例えば、デンプンまたはラクトース);崩壊剤(例えば、アルギン酸、Primogelまたはコーンスターチ);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウムまたはSterotes);グライダント(例えば、コロイド状二酸化ケイ素);あるいは香料または甘味料。
【0068】
非経口投与、皮内投与または皮下投与用の医薬組成物は、以下を含有できる:無菌希釈液(例えば、水、生理食塩水溶液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒);抗菌薬(例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン);酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム);キレート化剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸);緩衝液(酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩)、および等張性調節剤(例えば、塩化ナトリウムまたはブドウ糖)。
【0069】
注射用の医薬組成物には、滅菌注射可能溶液または分散液を即座に調製するための滅菌水溶液(この場合、水溶性である)または分散液および滅菌粉末が挙げられる。静脈内投与に適当な担体には、生理食塩水、静菌水、Cremophor ELTM(BASF,Parsippany,NJ)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。抗菌剤および抗真菌剤には、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸およびチメロサールが挙げられる。これらの組成物には、等張剤(例えば、ショ糖、多価アルコール(例えば、マンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウム))が含有され得る。吸収遅延剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)を含有させると、注射可能組成物の吸収を延長できる。
【0070】
これらの医薬組成物は、投与し易くし投薬の均一性を保つために、単位剤形で包装できる。本明細書中で使用される単位剤形とは、治療する被験体に対する単一の投薬量として適した物理的に別個の単位を意味する;各単位は、医薬担体または賦形剤と共に所望の治療効果を生じるように計算された所定量の活性化合物を含有する。
【0071】
これらの組成物は、所望の結果に適合した任意の経路により、投与できる。それゆえ、投与経路には、経口(例えば、摂取または吸入)、腹腔内、皮内、皮下、静脈内、動脈内、腔内、頭蓋内および非経口が挙げられる。これらの組成物はまた、移植片およびマイクロカプセル送達システムを使用して、投与できる。
【0072】
医薬処方を含めた組成物は、さらに、粒子または高分子基質(例えば、ポリエステル、ポリアミン酸、ヒドロゲル、ポリビニルピロリドン、エチレン−酢酸ビニル、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、硫酸プロタミン、またはラクチド/グリコリド共重合体、ポリラクチド/グリコリド共重合体、またはエチレン−酢酸ビニル共重合体)を含有できる。シクロプロパンカルボン酸、シクロプロパンカルボン酸誘導体およびそれらの修飾された形態は、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースもしくはゼラチン−マイクロカプセル、またはポリ(メタクリル酸メチル)マイクロカプセルを使用することにより、あるいはコロイド状薬剤送達システムで、マイクロカプセルに取り込むことができる。
【0073】
細胞、組織または器官の標的化が望ましい場合、本発明の組成物は、もちろん、注射または注入などにより、その標的細胞、器官または組織まで送達できる。標的化は、本発明の方法を実施する際に、注射または注入により、達成できる。標的化はまた、細胞または細胞型集団に存在している細胞表面タンパク質(例えば、レセプタまたはマトリックスタンパク質)に結合するタンパク質を使用することにより、達成できる。例えば、この送達システムには、細胞、組織または器官の標的化を促進するために、細胞表面タンパク質に結合する抗体または抗体断片(例えば、Fab領域)が含有できる。特定の細胞表面タンパク質に結合するウイルスコートタンパク質は、標的化に使用できる。例えば、公知の細胞表面タンパク質結合特異性を有する天然に生じるまたは合成の(例えば、組換え)レトロウイルスエンベロープタンパク質は、シクロプロパンカルボン酸、シクロプロパンカルボン酸誘導体およびそれらの修飾された形態を標的細胞、組織または器官に細胞質内的に送達するために、リポソームで使用できる。それゆえ、送達ビヒクル(コロイド状送達システムを含めて)は、シクロプロパンカルボン酸、シクロプロパンカルボン酸誘導体およびそれらの修飾された形態の標的化または細胞質内送達を促進するために、タンパク質コートを有するように作製できる。
【0074】
本発明は、さらに、患者の細胞、組織または器官におけるグルコースの利用を高めるか改善することにより治療できる種々の生理学的状態または障害を予防および治療する方法を提供し、該方法は、そのような治療が必要な患者に、有効量の医薬組成物を投与する工程を包含し、該医薬組成物は、式(I)および(II)により表わされる置換または非置換のシクロプロパンカルボン酸、シクロプロパンカルボン酸おおyぼいシクロブタンカルボン酸誘導体化合物を含有する。
【0075】
本発明の方法で治療できる障害または状態には、例えば、虚血/再灌流傷害、ポスト心筋梗塞、狭心症、心不全、心筋症、末梢血管疾患、糖尿病および乳酸アシドーシス、または心臓手術(例えば、開心術、バイパス手術、心臓移植)に付随した症状または副作用が挙げられる。
【0076】
本発明の方法は、単一毎日用量で、式(I)および(II)により表わされる置換または非置換のシクロプロパンカルボン酸、シクロプロパンカルボン酸およびシクロブタンカルボン酸誘導体化合物の有効量を含有する医薬組成物を投与する工程を包含し、あるいは、その全毎日投薬量は、毎日数回に分割した用量で、投与され得る。さらに、これらの医薬組成物は、単回用量として、または一定時間にわたって、投与され得る。
【0077】
本発明の方法で治療できる患者には、全ての公知の種類の哺乳動物が挙げられ、これらには、ヒト以外の霊長類(例えば、サル、テナガザル、チンパンジー、オランウータン、マカク)、コンパニオンアニマル(イヌおよびネコ)、家畜(ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ブタ)、実験動物(マウス、ラット、ウサギ、モルモット)およびヒトが挙げられる。
【0078】
本発明の医薬組成物を利用する投薬レジメンは、種々の要因(例えば、治療する生理学的状態の種類、患者の年齢、体重、性別、治療する状態の重症度、投与経路、および医薬組成物に含有される特定の化合物)に基づいて、選択される。通常の技術を有する医師または獣医師は、特定の生理学的状態を予防または治療する医薬組成物の有効量を容易に決定し処方できる。
【0079】
その毎日用量は、広範囲に変えられ得、そして式(I)および/または式(II)で表わされる置換または非置換のシクロプロパンカルボン酸、シクロプロパンカルボン酸およびシクロブタンカルボン酸誘導体化合物から選択される活性化合物の量が、温血動物における細胞、組織または器官でのグルコースの利用を高め、脂肪酸で誘発される虚血損傷を軽減または防止する所望の効果を達成するのに十分であるようにされ得る。
【0080】
本発明は、式(I)および式(II)で表わされる置換または非置換のシクロプロパンカルボン酸、シクロプロパンカルボン酸誘導体およびそれらの修飾された形態を含むキットを提供し、これらは、医薬処方を含有し、適当なセットに包装される。キットは、典型的には、ラベルまたは包装用インサートを含み、該ラベルまたは包装用インサートは、その中の成分のインビトロ、インビボまたはエキソビボでの使用説明書を含む。
【0081】
「包装材料」との用語は、このキットの成分(例えば、シクロプロパンカルボン酸、シクロプロパンカルボン酸誘導体またはそれらの修飾された形態)を収容する物理的構造物を意味する。この包装材料は、これらの成分を無菌で維持でき、このような目的に通例使用される材料(例えば、紙、波形ファイバー、ガラス、プラスチック、箔、アンプルなど)から作製できる。このラベルまたは包装用インサートは、例えば、本発明の方法を実施するための適当な文書を含むことができる。
【0082】
本発明のキットは、従って、さらに、本発明の方法でキット成分を使用する使用説明書を含み得る。使用説明書には、本明細書中で記述した本発明の方法のいずれかを実施する使用説明書が挙げられる。それゆえ、例えば、キットは、容器、パックまたはディスペンサーにおいて、ヒト被験体に投与する使用説明書と共に、医薬処方中のシクロプロパンカルボン酸、シクロプロパンカルボン酸誘導体またはそれらの修飾された形態を含むキットを含み得る。使用説明書は、さらに、適当な臨床上の指標または起こり得る任意の有害な症状、またはヒトで使用するのに食品医薬品局が要求している任意の追加情報の表示を含み得る。
【0083】
キットは、インビトロ、エキソビボまたはインビボでグルコースの利用を高めるか改善する使用説明書を含み得る。他の実施態様では、キットは、不完全または不十分なグルコースの利用に関連した障害を治療する使用説明書を含む。1局面では、これらの使用説明書は、虚血/再灌流傷害、ポスト心筋梗塞、狭心症、心不全、心筋症、末梢血管疾患、糖尿病または乳酸アシドーシスに罹患しているか罹患するリスクがある被験体を治療する使用説明書を含む。他の局面では、これらの使用説明書は、心臓手術(例えば、開心術、バイパス手術、心臓移植および血管形成術)を受けているか受けるリスクがある被験体を治療する使用説明書を含む。
【0084】
これらの使用説明書は、「印刷物」(例えば、そのキット内の紙もしくは段ボール、またはラベル(これは、このキットもしくは包装材料に貼られているか、またはキットの成分を含むバイアルまたはチューブに付着されている))であり得る。使用説明書は、さらに、コンピューター読み取り可能な媒体(例えば、ディスク(フロッピー(登録商標)ディスクまたはハードディスク)、光学CD(例えば、CD−ROM/RAMまたはDVD−ROM/RAM)、磁気テープ、電気保存媒体(例えば、RAMおよびROM)およびそれらのハイブリッド(例えば、磁気/光学保存媒体)に含まれ得る。
【0085】
キットは、さらに、緩衝剤、防腐剤または安定剤を含有できる。このキットの各成分は、個々の容器に封入でき、それらの種々の容器は全て、単一パッケージ内にあり得る。
【0086】
本発明は、さらに、以下の実施例で例示され、ここで、特に明記しない限り、全ての部、パーセントおよび割合は、当量であり、全ての温度は、℃であり、そして全ての圧力は、大気圧である。
【実施例】
【0087】
(実施例1)
(シクロプロパンカルボン酸、2−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチルエステルの調製)
【0088】
【化35】

【0089】
トリエチレングリコールモノメチルエーテル(1.1当量、5.26mmol、0.84ml)およびトリエチルアミン(1.1当量、5.26mmol、0.73ml)を10mL丸底フラスコに入れ、そしてジクロロメタン(3mL)を加えた。この混合物を0℃まで冷却し、次いで、絶えず攪拌しつつ、その温度を0℃で維持して、滴下様式で、塩化シクロプロパンカルボニル(4.78mmol、0.5g、0.43ml)を加えた。
【0090】
一定時間後、黄色がかった橙色固形物が観察された。0℃で、1時間にわたって、攪拌を継続した。その反応を薄層クロマトグラフィーでモニターし、次いで、飽和塩化アンモニウム溶液でクエンチした。次いで、その混合物を分液漏斗に移し、5%炭酸水素ナトリウム(2×5ml)で洗浄し、1:1の塩酸(2×5ml)で洗浄し、次いで、ブライン(5ml)で洗浄した。そのジクロロメタン層を水層から分離し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、そして真空中で蒸発させて、淡黄色液体として、表題生成物を得た。フラッシュクロマトグラフィーおよび真空蒸留(沸点=144℃、3.0mmHg)で精製すると、無色液体(527.0mg、48%)として、純粋生成物が得られた。
【0091】
得られた化合物を、Hおよび13C NMR、IRおよび質量分析により、特性付けた:
【0092】
【化36】

【0093】
1120Naの計算値;255.11、実測値;255.1。
【0094】
(実施例2)
(シクロブタノイルグリシン(シクロブタンカルボニルアミン)−酢酸の調製)
【0095】
【化37】

【0096】
メチルエステルグリシン塩酸塩(1当量、2.39mmol、300mg)およびピリジン(2当量、4.78mmol、0.39mL)をジクロロメタン(5mL)に懸濁したのに続いて、DMAP(1.5当量、218.5mg)を一度に加えた;その反応混合物を、室温で、30分間攪拌した。30分後、塩化シクロブタンカルボニル(2当量、4.77mmol、0.54mL)をゆっくりと加え、この反応混合物を、室温で、4時間攪拌した。真空中で溶媒を蒸発させ、その残留物を酢酸エチルで抽出した。その酢酸エチル層を乾燥し、そして乾燥状態まで濃縮した。得られた粗製物質をフラッシュクロマトグラフィーで精製して、純粋化合物A(358mg、87%)を得た。
【0097】
AのTHF(6mL)溶液に、室温で、水酸化リチウム(1.1当量、2.3mmol、2.3mL、1M)を加え、その反応混合物を1.5時間攪拌した。次いで、この反応混合物を真空中で濃縮し、そして2N HClでpH=3に酸性化した。次いで、その粗生成物を酢酸エチルで抽出し、そして酢酸エチル/ヘキサン混合物を使用して、再結晶により精製した。再結晶後に得られた生成物をフラッシュクロマトグラフィーでさらに精製し、再度、再結晶して、白色固形物(196mg、59%)として、表題化合物Bを得た。
【0098】
得られた化合物を、Hおよび13CNMR、IRおよび質量分析により、特性付けた:
【0099】
【化38】

【0100】
11NONaの計算値;180.06311、実測値;180.06290。
【0101】
(実施例3)
(シクロブタンカルボン酸、2−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチルエステルの調製)
【0102】
【化39】

【0103】
トリエチレングリコールモノメチルエーテル(1.1当量、4.64mmol、0.74mL)およびトリエチルアミン(1.1当量、4.64mmol、0.65mL)を25mL丸底フラスコに入れ、そしてジクロロメタン(3mL)を加えた。この混合物を0℃まで冷却し、次いで、絶えず攪拌しつつ、その温度を0℃で維持して、滴下様式で、塩化シクロプロパンカルボニル(4.22mmol、0.5g、0.48mL)を加えた(激しい反応)。
【0104】
一定時間後、ピンク色溶液が観察された。適切な攪拌を維持しつつ、追加ジクロロメタン4mlを加えた(その反応混合物は、濃厚になった)。0℃で、1時間にわたって、攪拌を継続した。その反応を薄層クロマトグラフィーでモニターし、次いで、飽和塩化アンモニウム溶液でクエンチした。次いで、その混合物を分液漏斗に移し、5%炭酸水素ナトリウム(2×5mL)で洗浄し、1:1の塩酸(2×5mL)で洗浄し、次いで、ブライン(5mL)で洗浄した。そのジクロロメタン層を水層から分離し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、そして真空中で蒸発させて、淡黄色液体として、表題生成物を得た。この液体をフラッシュクロマトグラフィーおよび真空蒸留(沸点=189℃、3.0mmHg)で精製すると、無色液体(679.6mg、65.34%)として、純粋生成物が得られた。
【0105】
その生成物を、Hおよび13CNMR、IRおよび質量分析により、特性付けた:
【0106】
【化40】

【0107】
1222Naの計算値;269.13、実測値;269.1。
【0108】
(実施例4、6〜14、18および19)
(特定のシクロプロパンカルボン酸およびシクロブタンカルボン酸誘導体を調製する一般手順)
【0109】
【化41】

【0110】
ここで、W、Cycおよびpは、式(I)について定義したとおりであり、そしてYは、R’−YHがアルコールになるように、Oであり、ここで、R’は、以下である:
【0111】
【化42】

【0112】
ここで、R、R、Zおよびnは、式(Ia)と関連して記述されている;トリエチルアミンまたはピリジンを塩基として使用し、また、ジクロロメタンを溶媒として使用する。
【0113】
実施例1および実施例3で記述した手順に従って、適当な出発アルコールおよびシクロアルキルシクロプロパンカルボン酸クロライド物質を使用して(これらの適当な出発アルコールは、トリエチレングリコールモノメチルエーテルに代えて、使用した)、それぞれ、記述したシクロプロパンカルボン酸およびシクロブタンカルボン酸誘導体を調製した(表Iを参照)。調製した化合物である塩化シクロアルキルカルボニルおよびそれらの調製に使用したアルコール出発物質、およびそれらの分子量は、表1で要約する。
【0114】
これらの化合物を、Hおよび13CNMR、IRおよび質量分析により、特性付けた。
【0115】
(実施例5)
(シクロプロパノイルアラニンの調製)
【0116】
【化43】

【0117】
2当量のピリジンに代えて2.5当量のピリジンを使用し、塩化シクロブタンカルボニルに代えて塩化シクロプロパンカルボニルを使用し、そしてメチルエステルグリシン塩酸塩に代えてメチルエステルアラニン塩酸塩を使用したこと以外は、実施例2の手順に従った。
【0118】
精製した化合物B(321mg、87%)を、Hおよび13CNMR、IRおよび質量分析により、特性付けた:
【0119】
【化44】

【0120】
12NOの計算値;158.08117、実測値;158.08123。
【0121】
(実施例15)
(シクロプロパンカルボン酸2−エトキシ−エチルエステルの調製)
【0122】
【化45】

【0123】
2−エトキシ−エタノール(1.1当量、5.26mmol、0.47g、0.51mL)およびピリジン(1.1当量、5.26mmol、0.42g、0.43mL)を25mL丸底フラスコに入れ、そしてジクロロメタン(6mL)を加えた。この混合物を0℃まで冷却し、次いで、絶えず攪拌しつつ、その温度を0℃で維持して、滴下様式で、塩化シクロプロパンカルボニル(4.78mmol、0.5g、0.43mL)を加えた。
【0124】
一定時間後、橙黄色溶液が観察された。0℃で、1時間にわたって、攪拌を継続した。その反応を薄層クロマトグラフィーでモニターし、次いで、飽和塩化アンモニウム溶液でクエンチした。次いで、その混合物を分液漏斗に移し、5%炭酸水素ナトリウム(2×5mL)で洗浄し、1:1の塩酸(2×5mL)で洗浄し、次いで、ブライン(5mL)で洗浄した。そのジクロロメタン層を水層から分離し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、そして真空中で蒸発させて、淡黄色がかった橙色液体として、表題生成物を得た。フラッシュクロマトグラフィーおよび真空蒸留(沸点=43℃、2.8mmHg)で精製すると、無色液体(515.8mg、55.4%)として、純粋生成物が得られた。
【0125】
特性付けは、NMR(Hおよび13C)、IRおよび質量分析で行った:
【0126】
【化46】

【0127】
(実施例16)
(シクロブタンカルボン酸2−エトキシ−エチルエステルの調製)
【0128】
【化47】

【0129】
2−エトキシ−エタノール(1.1当量、4.64mmol、0.42g、0.45mL)およびトリエチルアミン(1.1当量、4.64mmol、0.47g、0.65mL)を25mL丸底フラスコに入れ、そしてジクロロメタン(6mL)を加えた。この混合物を0℃まで冷却し、次いで、絶えず攪拌しつつ、その温度を0℃で維持して、滴下様式で、塩化シクロブタンカルボニル(4.22mmol、0.5g、0.48mL)を加えた。
【0130】
一定時間後、橙黄色溶液が観察された。0℃で、1時間にわたって、攪拌を継続した。その反応を薄層クロマトグラフィーでモニターし、次いで、飽和塩化アンモニウム溶液でクエンチした。次いで、その混合物を分液漏斗に移し、5%炭酸水素ナトリウム(2×5mL)で洗浄し、1:1の塩酸(2×5mL)で洗浄し、次いで、ブライン(5mL)で洗浄した。そのジクロロメタン層を水層から分離し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、そして真空中で蒸発させて、淡黄色液体として、表題生成物を得た。フラッシュクロマトグラフィーおよび真空蒸留(沸点=48℃、2.8mmHg)で精製すると、無色液体(421.3mg、57.7%)として、純粋生成物が得られた。
【0131】
特性付けは、NMR(Hおよび13C)、IRおよび質量分析で行った:
【0132】
【化48】

【0133】
(実施例17)
(シクロプロパンカルボン酸2−イソプロポキシエチルエーテルの調製)
【0134】
【化49】

【0135】
2−イソプロポキシ−エタノール(1.1当量、5.26mmol、0.55g、0.61mL)およびピリジン(1.1当量、5.26mmol、0.42g、0.43mL)を25mL丸底フラスコに入れ、そしてジクロロメタン(6mL)を加えた。この混合物を0℃まで冷却し、次いで、絶えず攪拌しつつ、その温度を0℃で維持して、滴下様式で、塩化シクロプロパンカルボニル(4.78mmol、0.5g、0.43mL)を加えた。
【0136】
一定時間後、橙黄色溶液が観察された。適切な攪拌を維持しつつ、追加ジクロロメタン2mlを加えた(その反応混合物は、濃厚になる)。0℃で、1時間にわたって、攪拌を継続した。その反応を薄層クロマトグラフィーでモニターし、次いで、飽和塩化アンモニウム溶液でクエンチした。次いで、その混合物を分液漏斗に移し、5%炭酸水素ナトリウム(2×5mL)で洗浄し、1:1の塩酸(2×5mL)で洗浄し、次いで、ブライン(5mL)で洗浄した。そのジクロロメタン層を水層から分離し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、そして真空中で蒸発させて、淡黄色がかった橙色液体として、表題生成物を得た。フラッシュクロマトグラフィーおよび真空蒸留(沸点=33℃、2.9mmHg)で精製すると、無色液体(630.2mg、76.40%)として、純粋生成物が得られた。
【0137】
得られた化合物の特性付けは、Hおよび13CNMR、IRおよび質量分析で行った:
【0138】
【化50】

【0139】
(実施例20)
(シクロブタンカルボン酸、2−(2−シクロブタンカルボニルオキシ−エトキシ)
−エチルエステルの調製)
【0140】
【化51】

【0141】
ジエチレングリコール(0.5当量、1mmol、0.11g)およびピリジン(2.2当量、2.2mmol、0.174g、0.18mL)を10mL丸底フラスコに入れ、そしてジクロロメタン(4mL)を加えた。この混合物を0℃まで冷却し、次いで、絶えず攪拌しつつ、その温度を0℃で維持して、滴下様式で、塩化シクロブタンカルボニル(2.0mmol、0.24g、0.23mL)を加えた。
【0142】
一定時間後、白色濃厚懸濁液が観察された。0℃で、1時間にわたって、攪拌を継続した。その反応を薄層クロマトグラフィーでモニターし、次いで、飽和塩化アンモニウム溶液でクエンチした。次いで、その混合物を分液漏斗に移し、5%炭酸水素ナトリウム(2×5mL)で洗浄し、1:1の塩酸(2×5mL)で洗浄し、次いで、ブライン(5mL)で洗浄した。そのジクロロメタン層を水層から分離し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、そして真空中で蒸発させて、淡黄色がかった液体として、表題生成物を得た。フラッシュクロマトグラフィーおよび真空蒸留(沸点=113℃、2.8mmHg)で精製すると、無色液体(130.0mg、46.42%)として、純粋生成物が得られた。
【0143】
特性付けは、NMR(Hおよび13C)、IRおよび質量分析で行った:
【0144】
【化52】

【0145】
(実施例21)
(シクロプロパンカルボン酸、2−[2−(2−シクロプロパンカルボニルオキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチルエステルの調製)
【0146】
【化53】

【0147】
トリエチレングリコール(1.6mmol、0.24g)およびピリジン(2.2当量、3.52mmol、0.28g、0.28mL)を10mL丸底フラスコに入れ、そしてジクロロメタン(5mL)を加えた。この混合物を0℃まで冷却し、次いで、絶えず攪拌しつつ、その温度を0℃で維持して、滴下様式で、塩化シクロプロパンカルボニル(3.4mmol、0.36g、0.31mL)を加えた。
【0148】
一定時間後、白色濃厚懸濁液が観察された。0℃で、1時間にわたって、攪拌を継続した。その反応を薄層クロマトグラフィーでモニターし、次いで、飽和塩化アンモニウム溶液でクエンチした。次いで、その混合物を分液漏斗に移し、5%炭酸水素ナトリウム(2×5mL)で洗浄し、1:1の塩酸(2×5mL)で洗浄し、次いで、ブライン(5mL)で洗浄した。そのジクロロメタン層を水層から分離し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、そして真空中で蒸発させて、淡黄色がかった液体として、表題生成物を得た。フラッシュクロマトグラフィーおよび真空蒸留(沸点=127℃、2.8mmHg)で精製すると、無色液体(234.5mg、50.97%)として、純粋生成物が得られた。
【0149】
特性付けは、NMR(Hおよび13C)、IRおよび質量分析で行った:
【0150】
【化54】

【0151】
(実施例22)
(シクロブタンカルボン酸、2−[2−(2−シクロブタンカルボニルオキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチルエステルの調製)
【0152】
【化55】

【0153】
以下の試薬を以下の量で使用して、実施例21で記述した手順に従った:トリエチレングリコール(1.6mmol、0.24g)、ピリジン(2.2当量、3.52mmol、0.28g、0.28mL);および塩化シクロブタンカルボニル(3.4mmol、0.40g、0.39mL)。
【0154】
この化合物は、NMR(Hおよび13C)、IRおよび質量分析により、特性付けた:
【0155】
【化56】

【0156】
【化57】

【0157】
(実施例23)
(シクロプロパンカルボン酸2−[{2−[ビス(2−シクロプロパンカルボニルオキシ−エチル)−アミノ]−エチル}−(2−シクロプロパンカルボニルオキシ−エチル)−アミノ]エチルエステルの調製)
【0158】
【化58】

【0159】
ジアミンテトラ−オール(1当量、4.23mmol、1.0g)、ピリジン(1.0当量、4.23mmol、0.33g、0.34mL)およびトリエチルアミン(5.0当量、0.021mol、2.12g、2.90mL)の溶液を25mL丸底フラスコに入れ、そしてジクロロメタン(10mL)を加えた。この混合物を0℃まで冷却し、次いで、激しく攪拌しつつ、その温度を0℃で維持して、1ショットで、塩化シクロプロパンカルボニル(0.019mol、1.98g、1.72mL)を加えた。
【0160】
一定時間後、黄色がかった白色濃厚懸濁液が観察された。0℃で、15分間にわたって、攪拌を継続した。その反応を薄層クロマトグラフィーでモニターし、次いで、飽和塩化アンモニウム溶液でクエンチした。次いで、その混合物を分液漏斗に移し、そして酢酸エチル(2×25ml)で抽出した。その酢酸エチル層をブライン(1×20ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、そして真空中で蒸発させて、淡黄色がかった液体として、表題生成物を得た。フラッシュクロマトグラフィーで精製すると、無色液体(900.0mg、42.0%)として、純粋生成物が得られた。
【0161】
特性付けは、NMR(Hおよび13C)、IRおよび質量分析で行った:
【0162】
【化59】

【0163】
(実施例24)
(シクロプロパンカルボン酸(2−イソプロポキシ−エチル)−アミドの調製)
【0164】
【化60】

【0165】
上記アミノエーテル(1.1当量、5.26mmol、0.54g、0.64mL)、ピリジン(0.5当量、2.39mmol、0.19g、0.19mL)、トリエチルアミン(1.1当量、5.26mmol、0.53g、0.73mL)の溶液を10mL丸底フラスコに入れ、そしてジクロロメタン(6mL)を加えた。この混合物を0℃まで冷却し、次いで、絶えず攪拌しつつ、その温度を0℃で維持して、滴下様式で、塩化シクロプロパンカルボニル(4.78mmol、0.5g、0.43mL)を加えた。
【0166】
一定時間後、白色懸濁液が観察された。0℃で、30分間にわたって、攪拌を継続した。その反応を薄層クロマトグラフィーでモニターし、次いで、飽和塩化アンモニウム溶液でクエンチした。次いで、その混合物を分液漏斗に移し、水(1×10mL)、ブライン(2×10mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、そして真空中で蒸発させて、無色液体として、表題生成物を得た。フラッシュクロマトグラフィーおよび真空蒸留(沸点=106℃、1.4mmHg)で精製すると、無色液体(493.8mg、60.22%)として、純粋生成物が得られた。
【0167】
特性付けは、NMR(Hおよび13C)、IRおよび質量分析で行った:
【0168】
【化61】

【0169】
(実施例25)
((±)−トランス−2−フェニル−シクロプロパンカルボン酸2−イソプロポキシ−エチルエステルの調製)
【0170】
【化62】

【0171】
2−イソプロポキシ−エタノール(1.1当量、3.04mmol、0.32g、0.35mL)、ピリジン(0.5当量、1.38mmol、0.11g、0.11mL)、トリエチルアミン(1.1当量、3.04mmol、0.31g、0.43mL)を10mL丸底フラスコに入れ、そしてジクロロメタン(6mL)を加えた。この混合物を0℃まで冷却し、次いで、その温度を0℃で維持して、滴下様式で、塩化(±)−トランス−2−フェニル−シクロプロパンカルボニル(2.76mmol、0.5g、0.43mL)を加えた。
【0172】
一定時間後、白色懸濁液が観察された。0℃で、30分間にわたって、攪拌を継続した。その反応を薄層クロマトグラフィーでモニターし、次いで、飽和塩化アンモニウム溶液でクエンチした。次いで、その混合物を分液漏斗に移し、5%炭酸水素ナトリウム(2×5mL)で洗浄し、1:1の塩酸(2×5mL)で洗浄し、次いで、ブライン(5mL)で洗浄した。そのジクロロメタン層を水層から分離し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、そして真空中で蒸発させて、淡黄色がかった液体として、表題生成物を得た。フラッシュクロマトグラフィーで精製すると、無色液体(450.0mg、65.0%)として、純粋生成物が得られた。上記化合物は、キラルHPLC(キラルセルOJカラム;ヘキサン中の2%イソプロパノール)で決定したとき、ラセミ体である。UVλmax=278nm(流速=1mL/分)。
【0173】
特性付けは、NMR(Hおよび13C)、IRおよび質量分析で行った:
【0174】
【化63】

【0175】
(実施例26)
((±)−トランス−2−フェニル−シクロプロパンカルボン酸の調製)
【0176】
【化64】

【0177】
実施例25で記述した手順を使用し、以下の試薬を使用して、この化合物を調製した:2−エトキシ−エタノール(1.1当量、3.05mmol、0.27g、0.30mL)ピリジン(0.5当量、1.39mmol、0.11g、0.11mL)、トリエチルアミン(1.1当量、3.05mmol、0.31g、0.43mL);および塩化(±)−トランス−2−フェニル−シクロプロパンカルボニル(2.77mmol、0.5g、0.43mL)。
【0178】
この化合物は、NMR(Hおよび13C)、IRおよび質量分析で特性付けた:
【0179】
【化65】

【0180】
(実施例27)
(1−フェニル−シクロプロパンカルボン酸2−エトキシ−エチルエステルの調製)
【0181】
【化66】

【0182】
1−フェニル−シクロプロパンカルボン酸(0.5g、3.1mmol)を塩化チオニル(10当量、0.031mol、3.68g、2.3mL)に溶解し、そして80℃で、1.5時間還流した。次いで、塩化チオニルの過剰量をロータリーエバポレーターで蒸発させて、暗黄色がかった液体(塩化1−フェニル−シクロプロパンカルボニルA)を得、これを、次いで、アルゴン下にて、0℃まで冷却した。
【0183】
2−エトキシ−エタノール(1.1当量、3.41mmol、0.31g、0.33mL)およびピリジン(1.2当量、3.41mmol、0.27g、0.28mL)を25mL丸底フラスコに入れ、そしてジクロロメタン(10mL)を加えた。この混合物を0℃まで冷却し、次いで、その温度を0℃で維持して、滴下様式で、Aを加えた。0℃で、30分間にわたって、攪拌を継続した。その反応を薄層クロマトグラフィーでモニターし、次いで、飽和塩化アンモニウム溶液でクエンチした。次いで、その混合物を分液漏斗に移し、5%炭酸水素ナトリウム(2×5mL)で洗浄し、1:1の塩酸(2×5mL)で洗浄し、次いで、ブライン(5mL)で洗浄した。そのジクロロメタン層を水層から分離し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、そして真空中で蒸発させて、淡黄色がかった液体として、表題生成物を得た。フラッシュクロマトグラフィーおよび真空蒸留(沸点=93℃、2.4mmHg)で精製すると、無色液体(437.7mg、60.62%)として、純粋生成物が得られた。
【0184】
特性付けは、NMR(Hおよび13C)、IRおよび質量分析で行った:
【0185】
【化67】

【0186】
注記:
実施例1〜27の化合物について、フラッシュクロマトグラフィーに使用する溶媒系は、特に明記しない限り、酢酸エチル/ヘキサンであった。
【0187】
(表1)
【0188】
【表1−1】

【0189】
【表1−2】

【0190】
【表1−3】

【0191】
【表1−4】

【0192】
【表1−5】

【0193】
【表1−6】

【0194】
a.P 塩化シクロプロパンカルボニル
b.B** 塩化シクロブタンカルボニル
(実施例A)
未処理の心筋細胞およびシクロプロパンカルボン酸、2−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチルエステルで処理した心筋細胞におけるグルコース酸化刺激。
【0195】
J Pharmacol Exp Ther.1993;264:135−144(この開示全体は本明細書中で参考として援用される)に記載されるようにして、単離された作業心臓の60分の有酸素灌流のために、ラット心臓にカテーテルを挿入した。
【0196】
雄性Sprague−Dawleyラット(0.3〜0.35kg)をペントバルビタールナトリウム(60mg/kg IP)で麻酔し、そして心臓を迅速に切り取り、大動脈にカテーテルを挿入し、そして37℃での逆行性灌流を、60mmHgの静水圧で開始した。心臓を過剰な組織と共に切り取り、次いで、肺動脈および左心房に至る開口部にカテーテルを挿入した。15分間のLangendorff灌流の後、Langendorffレザバからの大動脈流入ラインをクランプ留めし、左心房流入ラインを開けることによって、心臓を作業モードに切り替えた。灌流液は、11mmHgの一定の前負荷圧で、酸素供給器から左心房まで送達された。灌流液は、自発的に拍動している心臓からコンプライアンスチャンバ(1mlの空気を含む)へ、そして大動脈流出ラインへと排出された。後負荷を、80mmHgの静水圧に設定した。全ての作業心臓を、Krebs’−Henseleit溶液(カルシウム 2.5mmol/L、グルコース 5.5mmol/L、3% ウシ血清アルブミン(脂肪酸を含まない、初めに熱ショックによって画分化、Sigma)を含む)および1.2mmol/L パルミテートで灌流した。パルミテートは、J Bio Chem.1992;267:3825−3831(この開示全体は本明細書中で参考として援用される)に記載されるように、アルブミンに結合した。
【0197】
灌流液を、再循環させ、そして95% Oおよび5% COを含む混合物でバブリングすることによって、pHを7.4に調整した。
【0198】
自発的に拍動する心臓を、全ての灌流で使用した。心拍数および大動脈圧を、Biopac Systems Inc.の血圧変換機(大動脈流出ラインに接続)を用いて測定した。心拍出量および動脈流を、それぞれ、前負荷ラインおよび後負荷ライン中で、Transonic T206超音波フロープローブを用いて測定した。冠動脈流を、心拍出量と動脈流との間の差異として算出した。心仕事量を、収縮期血圧と心拍出量との積として算出した。
【0199】
グルコース酸化の測定:グルコース酸化を、Saddik M.ら.,J Bio Chem.1992;267:3825−3831に記載される手順に従って、[U−14C]グルコースを有する心臓を使用する灌流によって同時に測定した。この参考文献の開示全体は、本明細書中で参考として援用される。全心筋14CO生成を、60分間の有酸素期間から10分間隔で決定した。グルコース酸化率を、Barbour RLら.,Biochemistry.1984;1923:6503−6062に記載されるような定量的測定によって決定した。この参考文献の開示全体は本明細書中で参考として援用される。コントロール群の14CO生成を、シクロプロパンカルボン酸、2−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチルエステルで処理した群の14CO生成と比較した。結果を図1および表2に示す。
【0200】
(実施例B)
(1)シクロブタンカルボン酸、2−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチルエステルで処理された心筋細胞におけるグルコース酸化刺激
1μM、10μM、100μMおよび1000μMの量のシクロブタンカルボン酸、2−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチルエステルを、シクロプロパンカルボン酸、2−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチルエステルの代わりに緩衝液に添加したことを除いて、実施例Aの手順に従った。結果を、図2および表2に示す。
【0201】
(2)シクロプロパンカルボン酸、2−イソプロポキシエチルエステルで処理された心筋細胞のグルコース酸化刺激
1μM、10μM、100μMおよび1000μMの量のシクロプロパンカルボン酸、2−イソプロポキシエチルエステルを、シクロプロパンカルボン酸、2−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチルエステルの代わりに緩衝液に添加したことを除いて、実施例Aの手順に従った。結果を、図3および表2に示す。
【0202】
(3)種々のシクロプロパンカルボン酸誘導体およびシクロプロパンカルボン酸誘導体で処理された心筋細胞におけるグルコース酸化刺激
100μMまたは1000μMの量の種々のシクロブタンカルボン酸誘導体、シクロプロパンカルボン酸誘導体およびシクロブタンカルボン酸を、シクロプロパンカルボン酸、2−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチルエステルの代わりに緩衝液に添加したことを除いて、実施例Aの手順に従った。結果を表2に示す。
【0203】
(4)シクロプロパンカルボン酸で処理された心筋細胞におけるグルコース酸化刺激
0.001μM、0.01μM、0.1μM、1μM、10μM、および100μMの量のシクロブタンカルボン酸を、シクロプロパンカルボン酸、2−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチルエステルの代わりに緩衝液に添加したことを除いて、実施例Aの手順に従った。結果を図4および表2に示す。
【0204】
(表2)
【0205】
【表2−1】

【0206】
【表2−2】

【0207】
【表2−3】

【0208】
【表2−4】

【0209】
【表2−5】

【0210】
本発明の多数の実施態様が記述されている。それにもかかわらず、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、種々の改良が行われ得ることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−90166(P2010−90166A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−3041(P2010−3041)
【出願日】平成22年1月8日(2010.1.8)
【分割の表示】特願2003−580269(P2003−580269)の分割
【原出願日】平成15年3月31日(2003.3.31)
【出願人】(504368697)ザ ガバナーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ アルバータ (6)
【Fターム(参考)】