説明

グルービングカッター

【課題】タイヤのトレッド面の切削加工の速度を上げることができるグルービングカッターを提供する。
【解決手段】回転するタイヤ表面に所望のパターン溝を切削加工するためのグルービングカッター1において、U字型に成型されたストリップからなる芯材2と、該芯材2の周りを摺動自在に覆う薄刃材3とからなるものである。芯材2は、好ましくは熱源として機能し、より好ましくは、芯材2を通電することにより熱源とする。また、薄刃材3は、好ましくは芯材2のU字型に沿って振動する。更に、本発明のグルービングカッターは、グルービングロボット10のアーム先端に取り付けられることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グルービングカッターに関し、詳しくは、グルービングロボットのアーム先端に取り付けられ、未加硫のタイヤ表面に所望のパターン溝を切削加工するためのグルービングカッターに関する。
【背景技術】
【0002】
加硫済みタイヤ、更生タイヤまたは未加硫タイヤのトレッド表面にパターン溝を形成するための装置は種々知られている。例えば、特許文献1には、軸方向に曲面を持ったタイヤのレッド面に、その断面においてトレッド中央の接線に対して直角な垂直線に対し所望の傾きを持つパターン溝を切削加工するための装置が開示されている。
【0003】
また、近年では、アームの先端にグルービングカッターを備えるグルービングロボットが開発され、回転自在に支持されたタイヤのトレッド面に対し、所望の角度でアーム先端のグルービングカッターを適用し、所望のパターン溝を切削加工することが行われている。
【0004】
ところで、大型建設機械用タイヤの成型においては、ゴムボリュームが大きく、パターン溝も深いため、加硫時のゴムの移動量が大きいことが知られている。このような状況下で、トレッドゴムを巻いた状態のまま加硫釜に入れると溝部分が釜の型に押され、タイヤ内部のベルトを内側に押し込んでしまう事態が生ずる。そこで今日では、かかる未加硫タイヤを加硫釜入れする前に、溝となる部分を上述のグルービングロボットを用いて切削加工することが一般に行われている。
【0005】
かかるグルービングロボットは、電熱カッターを装備しており、この電熱カッターは金属ストリップをU字型にして形成され、これに通電することにより加熱させ、その状態で未加硫タイヤのパターン溝となる部分を切削加工するものである。
【特許文献1】特開平4−68137号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のグルービングカッターは加熱した刃を押し付けてタイヤのトレッドを切削加工しているため、抵抗が大きくカット速度を上げることができないという問題があった。また、加熱したカッターでトレッドゴムを焼き切るので、カッター本体を高温(例えば、200℃以上)に加熱する必要があった。さらに、切削加工した際のカット片がグルービングカッターの刃に付着し、グルービングロボットの自動運転を停止させることがあった。
【0007】
そこで本発明の目的は、タイヤのトレッド面の切削加工の速度を上げることができるグルービングカッターを提供することにある。
【0008】
また、本発明の他の目的は、カッター本体をこれまでほど高温に加熱することなく高速で切削加工することができるグルービングカッターを提供することにある。
【0009】
さらに、本発明の他の目的は、切削加工した際のカット片がグルービングカッターに付着することなく切削加工し続けることができるグルービングカッターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、グルービングカッターを芯材とその周りを覆う薄刃材との2重構造とすることにより前記目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明のグルービングカッターは、回転するタイヤ表面に所望のパターン溝を切削加工するためのグルービングカッターにおいて、U字型に成型されたストリップからなる芯材と、該芯材の周りを摺動自在に覆う薄刃材とからなることを特徴とするものである。
【0012】
これにより芯材のみを熱源として機能させることができ、好適には前記芯材を通電することにより熱源とすることが可能となる。
【0013】
また、薄刃材を前記芯材のU字型に沿って振動させることで、切削加工した際のカット片がグルービングカッターに付着することなく切削加工し続けることができる。さらに、芯材をこれまでほど高温にすることなく切削加工速度を上げることができる。即ち、グルービングカッターの薄刃材を振動させることで切削抵抗を下げることができ、これにより切削加工速度を上げ、切削加工サイクルタイムを短縮することができる。また、グルービングカッターの薄刃材が振動することでタイヤとの摩擦熱が発生するので、熱源である芯材自体の温度を下げることができる。
【0014】
本発明のグルービングカッターは、寸法および全体形状は既知のグルービングカッターと同様とすることができるため、既知のグルービングロボットのアーム先端に好適に取り付けることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のグルービングカッターによれば、カッター本体をこれまでほど高温に加熱することなく、高速で切削加工することができる。また、切削加工した際のカット片がグルービングカッターに付着することなく切削加工し続けることができる。さらに、既知のグルービングロボットのアーム先端に好適に取り付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態につき具体的に説明する。
図1に、グルービングロボットのアーム先端に装着された本発明の一実施形態に係るグルービングカッター1を示す。このグルービングカッター1は、グルービングロボット10に装着されていることで、回転するタイヤ20のトレッド面に対し、所望のパターン溝を切削加工することができる。グルービングロボット10の基本構造自体は、既知のものを採用することでき、特に制限されるべきものではない。
【0017】
本発明の一実施の形態に係るグルービングカッター1は、図2に示すように、U字型に成型されたストリップからなる芯材2と、芯材2の周りを覆う薄刃材3とからなる。この場合、薄刃材3は、芯材2に対し摺動可能とし、U字型の両端に設けられた一対の振動手段4により芯材2のU字型に沿って振動するようにすることが好ましい。即ち、図3に、図2にAで示す部分を拡大して示すように、薄刃材3が芯材2の周囲に対し摺動可能に覆うことにより、ゴムが薄刃材3に付着しないように薄刃材3のみを振動させることができる。なお、振動手段4は、例えば、いずれか一方または双方に小型モーター(図示せず)を内蔵するカムの作用によるものとすることができる。
【0018】
また、芯材2を通電することにより熱源とすることが好ましい。心材2としては、通電により熱源となり得る既知の材質のもの、例えば、ニクロム材等の合金やセラミック材またはフッ素樹脂等の耐熱性樹脂にカーボンブラックやグラファイトを添加したもの等を挙げることができる。また、薄刃材3の材質としては、これまでグルービングカッター1の材質として使用されているステンレス鋼等を好適に使用することができる。
【0019】
芯材2をグルービングロボットのアーム先端に固着させ、振動手段4により薄刃材3を芯材2のU字型に沿って振動させることで、切削加工した際のカット片がグルービングカッターに付着することなく切削加工し続けることができる。また、同時に、芯材2を電源(図示せず)からアームまたは電線を介して通電することにより所望の温度まで発熱させることで、これまでのように高温にすることなく切削加工速度を上げることができる。
【0020】
大型建設機械用タイヤの成型にあたり、未加硫タイヤを加硫釜入れする前に、溝となる部分を、本発明のグルービングカッターを備えたグルービングロボットを用いて切削加工することで、切削加工速度をこれまでより大幅に高めることが可能となる。
【実施例】
【0021】
以下、本発明を実施例に基づき説明する。
(従来例)
U字型に成型されたステンレス鋼製ストリップからなる既存のグルービングカッターを既知のグルービングロボットのアーム先端に装着した。次いで、このグルービングカッターを通電により250℃に加熱させ、回転する未加硫の大型建設機械用タイヤのトレッドに対し切削加工を施した。
【0022】
(実施例)
既存のグルービングカッターの代わりに、以下の本発明のグルービングカッターを従来と同様の既知のグルービングロボットのアーム先端に装着した。
1)外観形状は従来例のグルービングカッターと実質上同じとした。
2)心材はニクロム材とし、その周囲の薄刃材はステンレス鋼製とした。
次いで、このグルービングカッターの芯材を通電により200℃に加熱させ、かつ、その周囲の薄刃材をその両端に設けた振動手段により振動させ、回転する未加硫の大型建設機械用タイヤのトレッドに対し切削加工を施した。
【0023】
実施例では、切削加工中、グルービングカッターに未加硫ゴムが付着することはなかったが、従来例では、数度、付着により作業の中断を余儀なくされた。また、従来例に比べ、実施例では1サイクルの作業時間を3分の1に短縮することができた。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施の形態に係るグルービングカッターがグルービングロボットアーム先端に装着された状態を示す説明図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係るグルービングカッターの断面図である。
【図3】図2に示すグルービングカッターのAの部分を拡大して示す斜視図である。
【符号の説明】
【0025】
1 グルービングカッター
2 芯材
3 薄刃材
4 振動手段
10 グルービングロボット
20 タイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転するタイヤ表面に所望のパターン溝を切削加工するためのグルービングカッターにおいて、U字型に成型されたストリップからなる芯材と、該芯材の周りを摺動自在に覆う薄刃材とからなることを特徴とするグルービングカッター。
【請求項2】
前記芯材が熱源として機能する請求項1記載のグルービングカッター。
【請求項3】
前記芯材を通電することにより熱源とする請求項2記載のグルービングカッター。
【請求項4】
前記薄刃材が前記芯材のU字型に沿って振動する請求項1〜3のうちいずれか一項記載のグルービングカッター。
【請求項5】
グルービングロボットのアーム先端に取り付けられる請求項1〜4のうちいずれか一項記載のグルービングカッター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−758(P2009−758A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−162257(P2007−162257)
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】