説明

グループ通話制御サーバ

【課題】 送信権獲得シーケンスにおいて途中で障害が発生した場合に、基地局の処理が停滞するのを防ぎ、また、送信権解放シーケンスにおいて、迅速に送信権を解放することができ、システムを効率的に運用することができるグループ通話制御サーバを提供する。
【解決手段】 AGWが、送信権獲得シーケンスにおいて、基地局から送信権要求のメッセージを受信した場合に、それに対応する応答としてPTエンジンから送信権受付又は送信権拒否のメッセージを受信するまでの制限時間を計時するガードタイマを備え、シーケンス中に障害が発生した場合には、当該タイマのタイムアウトにより、送信権獲得ができなかったことを示すメッセージを基地局に送信し、送信権解放シーケンスにおいて、PTエンジンが通話制限時間タイマのタイムアウトを検出すると、直ちに送信権待機のメッセージをAGWに送信するグループ通話制御サーバとしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線携帯端末を用いたグループ通話を実現するグループ通話制御サーバに係り、特にグループ通話に伴う処理の無駄を無くして、システムを効率的に運用することができるグループ通話制御サーバに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、IP網上において、複数の無線携帯端末間で半二重多対多の同報通信によるグループ通話を行う自営IPネットワークがあり、グループ通話の方式としては、PoC(Push-to-Talk over Cellular)を用いたものがある。
PoCでは、端末からボタンを押下して送話すると同時に複数の端末に送信され、複数の端末が音声を受信するようになっている。ボタンを押下して送話する方法をプレストークという。
また、IP電話における通話プロトコルとしてはSIP(Session Initiation Protocol)が用いられている。
【0003】
PoCを用いてグループ通話を行うシステムでは、グループ通話の制御サーバが、端末からの要求に応じてグループ通話を開始し、通話中、端末から送信の要求があった場合に、許可可能か否かを判断して当該端末に送信権を許可したり、端末から送信権の解放要求があった場合に送信権を解放するといった送信権の制御を行うようになっている。
これらの送信権の制御は、TBCPメッセージによって通知される。
【0004】
[PoCを用いた自営無線システムの構成:図7]
PoCを用いた自営無線システムの構成について図7を用いて説明する。図7は、PoCを用いた自営無線システムの概略構成ブロック図である。
図7に示すように、PoCを用いた自営無線システムでは、クライアントとしての複数の基地局1(10a)、基地局2(10b)、基地局3(10c)…と、グループ通話制御サーバである回線制御装置20とを備え、回線制御装置20は、更に、処理手段として複数のAGW(Access Gate Way)21a、21b、21c…と、PT(Press Talk)エンジン22とを備えている。
【0005】
基地局10は、無線通信システムの基地局であり、移動端末と無線通信を行う。
回線制御装置20は、システム全体の回線制御やグループ通話の制御を行うものである。
回線制御装置20のAGW21は、各基地局に対応して設けられ、通信に伴うセッションの制御を行うゲートウェイであり、個別通話やグループ通信の制御を行う。AGW21は、送信権制御においては、無線方式によって異なる各基地局10からの送信権要求等の送信権制御メッセージをTBCPのメッセージに変換して、PTエンジン22に出力する。また、PTエンジン22からのTBCPメッセージを各無線方式に応じた送信権制御メッセージに変換して対応する基地局10に出力する。すなわち、AGW21は、無線方式の違いを吸収するものである。
【0006】
PTエンジン22は、プレストークによるグループ通話の制御を行うものであり、グループメンバの管理や、グループ通話の要求があった場合のグループメンバの呼び出し、送信権の制御、及び音声データの複製転送等を行う。
【0007】
[従来の送信権獲得シーケンス:図8]
次に、自営無線システムのグループ通話における従来の送信権獲得シーケンスについて図8を用いて説明する。図8は、グループ通話における従来の送信権獲得シーケンスを示す説明図である。
図8に示すように、従来の送信権獲得シーケンスでは、基地局1に収容されている移動局において送話ボタンが押下されると、基地局1は送話ボタンの押下を検出し(400)、対応するAGW1にTalk Burst Requestメッセージを送信する(402)。
【0008】
AGW1は、基地局1からTalk Burst Requestメッセージを受信すると、宛先のIPアドレスとポートをPTエンジンのものに変更して、PTエンジンにTalk Burst Requestメッセージを送信する(404)。
【0009】
PTエンジンは、Talk Burst Requestメッセージを受信すると、通話制限時間タイマをスタートさせる(通話制限時間タイマ開始)(406)。通話制限時間タイマは、当該要求での送信権を有効とする制限時間を計時する。
そして、PTエンジンは、当該グループのメンバが収容されている基地局を特定し(ここでは基地局1と基地局2とする)、基地局1及び基地局2がいずれも送信権を獲得していないことを確認する(408)。
【0010】
そして、PTエンジンは、AGW1及びAGW2にTalk Burst Takenメッセージを送信し(410、412)、更に、AGW1に対して送信権を許可するTalk Burst Grantedメッセージを送信する(414)。
AGW1は、Talk Burst Grantedメッセージを受信すると、IPアドレスとポートを基地局1のものに変更し、基地局1に対してTalk Burst Grantedメッセージを送信する(416)。これにより、送信権を要求した移動局は送信を許可される。
【0011】
同様に、AGW2は、Talk Burst Takenメッセージを受信すると、基地局2に当該メッセージを送信する(418)。
そして、送信権を獲得した移動局と基地局2に収容された移動局との間でグループ通話が行われるものである(420)。
【0012】
尚、処理408でいずれかの基地局が送信権を獲得していた場合には、PTエンジンは通話制限時間タイマを停止し、送信権を拒否するTalk Burst DenyメッセージをAGW1に送信し、AGW1が基地局1にTalk Burst Denyメッセージを送信する。
つまり、基地局からのTalk Burst Requestメッセージに対しては、Talk Burst Grantedメッセージ又はTalk Burst Denyメッセージが応答されるものである。
【0013】
[送信権解放]
次に、自営無線システムのグループ通話における従来の送信権解放シーケンスについて説明する。
送信権解放は、送信権が与えられている基地局において送話ボタンが離された(解放された)ことを検出した場合、若しくは、PTエンジンにおいて通話制限時間タイマがタイムアウトした場合に行われる。
【0014】
[送話ボタン解放による従来の送信権解放シーケンス:図9]
図9は、グループ通話における送話ボタン解放による従来の送信権解放シーケンスを示す説明図である。
図9に示すように、通話状態において(500)、送信権が与えられている基地局1が送話ボタンが解放された(離された)ことを検出すると(502)、基地局1は、AGW1に対してTalk Burst Release(送信権解放)メッセージを送信する(504)。
【0015】
AGW1は、受信したTalk Burst ReleaseメッセージのIPアドレスとポートをPTエンジンのものに変更して、Talk Burst ReleaseメッセージをPTエンジンに送信する(506)。
【0016】
PTエンジンは、Talk Burst Releaseメッセージを受信すると、通話制限時間タイマを停止し(508)、送信権解放を通知する処理を行う(510)。
PTエンジンは、送信権解放通知として、Talk Burst Idle(送信権待機)メッセージをAGW1及びAGW2に送信し(512,514)、AGW1及びAGW2は、それぞれ、基地局1、基地局2にTalk Burst Idleメッセージを送信し(514,516)、送信権の解放が行われる。
【0017】
[通話制限時間タイマによる従来の送信権解放シーケンス:図10]
図9は、グループ通話における通話制限時間タイマによる従来の送信権解放シーケンスを示す説明図である。
図10に示すように、通話状態において(600)、PTエンジンが通話制限時間タイマのタイムアウトを検出すると(602)、送信権を持っているAGW1にTalk Burst Revoke(送信権取消)メッセージを送信する(604)。
AGW1は、受信したTalk Burst RevokeメッセージのIPアドレとポートを基地局1のものに変更して、Talk Burst Revokeメッセージを基地局1に送信する(606)。
【0018】
基地局1は、Talk Burst Revokeメッセージを受信すると、Talk Burst ReleaseメッセージをAGW1に送信し(608)、AGW1は、受信したTalk Burst ReleaseメッセージのIPアドレスとポートをPTエンジンのものに変更して、Talk Burst ReleaseメッセージをPTエンジンに送信する(610)。
【0019】
PTエンジンは、Talk Burst Releaseメッセージを受信すると、Talk Burst IdleメッセージをAGW1及びAGW2に送信する(612,614)。
そして、AGW1及びAGW2は、それぞれ、基地局1、基地局2にTalk Burst Idleメッセージを送信し(616,618)、送信権の解放が行われる。
【0020】
[関連技術]
尚、無線通信システムにおけるグループ通話に関する技術としては、特開2009−141481号公報「配信装置及びコーデック変換装置、通信システム」(出願人:株式会社日立国際電気、特許文献1)がある。
特許文献1には、コーデックが異なる複数の移動端末が一つのグループを形成し、コーデック変換装置が、受信したRTPパケットのSSRCを管理し、最新のSSRCと一致するジッタバッファから音声情報を取り出してコーデック回路に入力して、最新のSSRCが切り替わることによりコーデック変換対象の音声送信端末が切り替わり、同じコーデックを使用する移動端末同士でコーデック回路を共用でき、少ないコーデック回路でグループ通話を実現することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開2009−141481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
しかしながら、従来のグループ通話制御サーバでは、送信権獲得シーケンスにおいて、AGWが、基地局からTalk Burst Requestメッセージを受信してから基地局にTalk Burst Grantedメッセージを送信するまでのシーケンス上で障害が発生した場合、当該障害発生を基地局に伝えることができず、基地局は、内部に備えているタイマによるタイムアウトとなるまで応答を待ち続けなければならないため、処理が停滞してしまうという問題点があった。
【0023】
また、従来のグループ通話制御サーバでは、通話制限時間タイマタイムアウトによる送信権解放シーケンスにおいて、通話制限時間タイマがタイムアウトしてから3種類のメッセージを送受信しなければならず、送信権の解放に時間がかかるという問題点があった。
【0024】
本発明は上記実状に鑑みて為されたもので、送信権獲得シーケンスにおいて、途中で障害が発生した場合に基地局において処理が停滞するのを防ぎ、また、送信権解放シーケンスにおいて、迅速に送信権を解放することができ、システムを効率的に運用することができるグループ通話制御サーバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、ネットワーク中の移動局間のグループ通話の制御を行うグループ通話制御サーバであって、グループ通話における送信権の制御を行うと共に、送信権要求から特定の制限時間を計時する通話制限時間タイマを備えたグループ通話手段と、基地局に対応して設けられ、基地局からメッセージを受信すると当該メッセージをグループ通話手段に送信し、グループ通話手段からメッセージを受信すると当該メッセージを基地局に送信する複数のアクセスゲートウェイとを備え、アクセスゲートウェイが、メッセージを待ち受ける制限時間を計時するガードタイマを備え、基地局からの送信権要求を受信すると、ガードタイマを起動して、グループ通話手段から送信権受付又は送信権拒否のメッセージを受信した場合には、ガードタイマを停止して受信したメッセージを基地局に送信し、グループ通話手段から送信権受付又は送信権拒否のメッセージを受信しないままガードタイマがタイムアウトした場合には、基地局に対して送信権獲得が成功しなかった旨を示すメッセージを送信し、グループ通話手段が、送信権受付のメッセージを送信した場合、グループ通話中に通話制限時間タイマのタイムアウトを検出すると、送信権取消のメッセージを送信することなく、グループ通話に参加している全てのアクセスゲートウェイに対して送信権待機のメッセージを送信することを特徴としている。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、ネットワーク中の移動局間のグループ通話の制御を行うグループ通話制御サーバであって、グループ通話における送信権の制御を行うと共に、送信権要求から特定の制限時間を計時する通話制限時間タイマを備えたグループ通話手段と、基地局に対応して設けられ、基地局からメッセージを受信すると当該メッセージをグループ通話手段に送信し、グループ通話手段からメッセージを受信すると当該メッセージを基地局に送信する複数のアクセスゲートウェイとを備え、アクセスゲートウェイが、メッセージを待ち受ける制限時間を計時するガードタイマを備え、基地局からの送信権要求を受信すると、ガードタイマを起動して、グループ通話手段から送信権受付又は送信権拒否のメッセージを受信した場合には、ガードタイマを停止して受信したメッセージを基地局に送信し、グループ通話手段から送信権受付又は送信権拒否のメッセージを受信しないままガードタイマがタイムアウトした場合には、基地局に対して送信権獲得が成功しなかった旨を示すメッセージを送信し、グループ通話手段が、送信権受付のメッセージを送信した場合、グループ通話中に通話制限時間タイマのタイムアウトを検出すると、送信権取消のメッセージを送信することなく、グループ通話に参加している全てのアクセスゲートウェイに対して送信権待機のメッセージを送信するグループ通話制御サーバとしているので、グループ通話の送信権要求シーケンス中で障害が発生した場合に、アクセスゲートウェイが基地局に送信権獲得失敗を迅速に報知して、基地局における処理の停滞を防ぐことができ、また、通話中に、グループ通話手段の通話制限時間タイマがタイムアウトすると、直ちに送信権を解放して次の送信権要求を待ち受けることができ、処理の無駄を無くし、システムを効率的に運用することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態に係るグループ通話制御サーバを備えた自営系無線システムの構成例を示す模式説明図である。
【図2】グループ通話制御サーバの処理手段の構成を示す説明図である。
【図3】本システムにおける送信権獲得シーケンスを示す説明図である。
【図4】本システムにおける送話ボタン解放による送信権解放シーケンスを示す説明図である。
【図5】本グループ通話制御サーバにおける通話制限時間タイマタイムアウトによる送信権解放シーケンスを示す説明図である。
【図6】送信権獲得/失敗シーケンスにおけるAGWの処理を示すフローチャートである。
【図7】PoCを用いた自営無線システムの概略構成ブロック図である。
【図8】従来の送信権獲得シーケンスを示す説明図である。
【図9】送話ボタン解放による従来の送信権解放シーケンスを示す説明図である。
【図10】通話制限時間タイマによる従来の送信権解放シーケンスを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係るグループ通話制御サーバは、AGWが、送信権獲得シーケンスにおいて、基地局からTalk Burst Requestメッセージを受信した場合に、それに対応する応答としてPTエンジンからTalk Burst Granted又はTalk Burst Denyを受信するまでの制限時間を計時するTalk Burst Requestガードタイマを備え、Talk Burst RequestメッセージをPTエンジンに出力した後、シーケンス中に障害が発生した場合には、当該タイマのタイムアウトにより、送信権獲得ができなかったことを示すメッセージを基地局に送信するようにしているので、基地局に送信権獲得が失敗したことを迅速に報知することができ、基地局における処理の停滞を防ぎ、システムを効率的に運用することができるものである。
【0029】
また、本発明の実施の形態に係るグループ通話制御サーバは、送信権解放シーケンスにおいて、PTエンジンが通話制限時間タイマのタイムアウトを検出すると、Talk Burst Revokeメッセージではなく、直ちにTalk Burst IdleメッセージをAGWに送信するようにしているので、シーケンスを短縮して送信権を迅速に解放することができ、システムを効率的に運用できるものである。
【0030】
[本実施の形態に係る自営系無線システムの構成例:図1]
まず、本発明の実施の形態に係るグループ通話制御サーバを備えた自営系無線システム(本システム)の構成例について図1を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態に係るグループ通話制御サーバを備えた自営系無線システムの構成例を示す模式説明図である。
図1に示すように、IPネットワーク化した本自営系無線システムは、複数の移動局1a、1bと、無線通信の基地局であるIP基地局2a、2b、2cと、データを転送するルータ3a、3b、3cと、ルータ5と、グループ通話や個別通話及びデータ通信の制御を行う回線制御装置6と、メンテナンスに用いられる保守コンソール7と、有線卓8と、システムの管理を行う運用管理装置9とを備えている。
【0031】
そして、ルータ2a、2b、2cとルータ5はIPネットワーク網4を介して接続されており、IP基地局2とルータ3との間、及びルータ5と回線制御装置6との間はイーサネット(登録商標)等のWAN(Wide Area Network)で接続されている。
【0032】
本発明の実施の形態に係るグループ通話制御サーバは、回線制御装置6に設けられている。回線制御装置6は、基本的に、CPU(Central Processing Unit)等の処理部と、記憶部とを備えたコンピュータで構成され、グループ通話制御サーバは回線制御装置6内の機能の内、グループの管理、グループ通話における送信権の制御等、グループ通話に関連する機能を実現するものである。
更に、グループ通話制御サーバは、処理手段として、AGWとPTエンジンとを備えている。尚、PTエンジンは、請求項に記載した「グループ通話手段」に相当している。
【0033】
[グループ通話制御サーバの構成:図2]
ここで、回線制御装置6に設けられている本実施の形態に係るグループ通話制御サーバの処理手段の構成について図2を用いて説明する。図2は、グループ通話制御サーバの処理手段の構成を示す説明図である。
図2に示すように、グループ通話制御サーバは、各基地局に対応する処理を行うAGW61と、グループ通話全体の処理を行うPTエンジン62とを備えている。AGW61は、基地局に対応して複数設けられているが、ここでは1つのみを示す。
【0034】
そして、AGW61は、最上位のアプリケーションとしてANCF(Access Network Controlling Function)とPNP(PN client Proxy)、MF(Monitoring Function)、PTPF(PT Participating Function)、TBCP(Talk Burst Control Protocol)を備えており、その下にRTP、RTCPを備え、その下にANCF、PTP、MF、PTPFについてのUDP(User Datagram Protocol)/IPを持ち、TBCPにはTCP/IPを備え、最下位にIEEE802.3を備えている。
【0035】
ANCFは、BS(基地局)からの要求、又はPNPからの要求に応じ、PNC(PN Client)−PNP間のアクセスリンクの確立及び解放を行う。
PNPは、PNC/PNO(有線卓)/BSに対するメディアフローの制御(帯域割当、フィルタリング、QoSマーキング)を行う。また、ISDNメッセージとTBCP/RTCPの間の送信権制御信号の変換を行う。
【0036】
MFは、PNOによるモニタリング対象となっている通信セッションの音声データを受信し、ミキシングする。
PTPFは、PNC/PNO/BS毎の設定情報(着信優先度、応答モード(自動/手動)等)に基づき、プレストーク通信の接続制御を行う。
そして、本グループ通話制御サーバにおける特徴部分となるガードタイマの処理は、これらの処理手段の内、ANCFと、PNPによって行われるものである。
【0037】
また、PTエンジンは、最上位にプレストークサービス用のアプリケーションサーバ(PTCF:PT controlling Function)とTBCP(Talk Burst Control Protocol)を備え、その下にRTP、RTCPを備え、その下にPTCFについてのUDP/IPと、TBCPについてのTCP/IDを備え、最下位にIEEE802.3を備えている。
本グループ通話制御サーバの特徴部分である送信権解放シーケンスの処理は、PTCFによって行われるものである。尚、PTCFは、グループメンバの呼び出し、送信権の管理、PT音声パケットの複製と転送を行う。
【0038】
[ガードタイマ]
本グループ通話制御サーバの特徴部分であるガードタイマについて説明する。
本グループ通話制御サーバでは、AGWの処理にガードタイマを設けて、処理が正常に終わらなかった場合に速やかに基地局にその旨報知するようにしている。
ガードタイマは、AGWがあるメッセージを送信する場合に、当該メッセージに対する応答を受信するまでの制限時間を計時するものであり、例えば、シーケンス中の障害発生等により応答が受信されないまま制限時間に達してタイムアウトした場合には、AGWが基地局にその旨報知するメッセージを送信するようになっている。
【0039】
これにより、基地局はシーケンス上で処理が正常に実行されなかったことを迅速に認識して次の処理へ移行することができ、システムの効率的な運用を図ることができるものである。
本実施の形態では、Talk Burst Requestガードタイマ、Talk Burst Idleガードタイマ、Talk Burst Releaseガードタイマが設けられている。各ガードタイマについてはシーケンスの中で説明する。
【0040】
[送信権解放]
また、本グループ通話制御サーバでは、PTエンジンにおける送信権解放時の処理が従来と異なっている。
具体的には、本グループ通話制御サーバのPTエンジンでは、通話制限時間タイマのタイムアウトを検出した場合には、従来のようにTalk Burst Revoke(送信権取消)メッセージを送信して基地局に送信権解放を促すのではなく、タイムアウト検出後直ちにTalk Burst Idle(送信権待機)メッセージを送信して、送信権の解放を迅速に行うようにしている。これにより、Talk Burst RevokeメッセージやTalk Burst Releaseメッセージの送受信に伴う処理を削減し、通信路における障害発生の可能性を低減することができ、システムの効率的な運用を可能とするものである。
尚、送話ボタンの解放検出に基づく送信権解放シーケンスにおけるPTエンジンの処理は、従来と同じである。
【0041】
[本システムにおける送信権獲得シーケンス:図3]
次に、本システムにおける送信権獲得シーケンスについて図3を用いて説明する。図3は、本システムにおける送信権獲得シーケンスを示す説明図である。
尚、AGW1は基地局1に対応しており、AGW2は基地局2に対応した処理を行う。
図3に示すように、基地局1が送話ボタンの押下を検出すると(100)、基地局1は、本グループ通話制御サーバのAGW1にTalk Burst Requestメッセージを送信して(102)、送信権を要求する。
【0042】
AGW1は、Talk Burst Requestメッセージを受信すると、本システムの特徴として、Talk Burst Requestガードタイマを起動(計時開始)する(104)。
【0043】
Talk Burst Requestガードタイマは、送信権獲得シーケンス中の障害発生により基地局の処理が滞ってしまうのを回避するものであり、各AGWは、基地局からTalk Burst Requestメッセージを受信すると当該ガードタイマを起動し、Talk Burst Requestメッセージに対する応答として、PTエンジンからTalk Burst Granted(送信権受付)メッセージ又はTalk Burst Deny(送信権拒否)メッセージのいずれかを受信した場合にTalk Burst Requestガードタイマを停止するようになっている。
【0044】
Talk Burst Requestガードタイマがタイムアウトした場合には、AGWは、送信権受付が失敗した旨基地局に報知し、基地局はTalk Burst Requestが通らなかったことを迅速に認識することができ、次の処理に移行することができるものである。Talk Burst Requestガードタイマがタイムアウトした場合の処理については後で詳細に説明する。
【0045】
そして、図3に示すように、AGW1は、受信したTalk Burst RequestメッセージのIPアドレスとポートをPTエンジンのものに書き換えて、PTエンジンにTalk Burst Requestメッセージを送信する(106)。
PTエンジンは、Talk Burst Requestメッセージを受信すると、通話制限時間タイマを起動し(108)、基地局1及び基地局2が送信権を獲得していないことを確認し、基地局1に送信権を割り当て、送信権表示を通知する(110)。
尚、通話制限時間タイマはAGW毎に設けられ、別の基地局に既に送信権が割り当てられている場合には、起動された当該AGWの通話制限時間タイマは、Talk Burst Deny(送信権拒否)メッセージを受信することにより停止される。
【0046】
PTエンジンは、送信権表示のメッセージとして、Talk Burst TakenメッセージをAGW1及びAGW2に送信する(112,114)。
AGW2は、基地局2にTalk Burst Takenメッセージを送信する(116)。
更に、PTエンジンは、送信権受付を要求元のAGW1に通知する(118)。PTエンジンは、送信権受付のメッセージとしてTalk Burst GrantedメッセージをAGW1に送信する(120)。
【0047】
そして、AGW1は、Talk Burst Requestメッセージに対する応答であるTalk Burst Grantedメッセージを受信すると、処理104で起動したTalk Burst Requestガードタイマを停止する(122)。
更に、AGW1及びAGW2は、基地局1に送信権が与えられている時間を計時するTalk Burst Idleガードタイマを起動する(124,128)。
そして、AGW1は、基地局1にTalk Burst Grantedメッセージを送信して(126)、基地局1に送信権を与え、通話状態となる(130)。
【0048】
Talk Burst Idleガードタイマは、いずれかのクライアント(基地局)に送信権が与えられた状態のまま何らかの障害により送信権解放がなされなくなってしまうことを回避するためのガードタイマであり、各AGWは、PTエンジンからTalk Burst Takenメッセージを受信するとTalk Burst Idleガードタイマを起動し、PTエンジンからTalk Burst Idleメッセージを受信すると当該ガードタイマを停止するものである。
また、Talk Burst Idleガードタイマがタイムアウトした場合には、AGWは、Talk Burst Idleメッセージを基地局に送信し、送信権を持つAGWは、PTエンジンに対してTalk Burst Releaseメッセージを送信する。
それと共に、Talk Burst Idleガードタイマがタイムアウトした場合には、AGWは、基地局に対して、送信権が解放されたことを示すメッセージを送信する。
【0049】
[送話ボタン解放による本システムの送信権解放シーケンス:図4]
次に、送話ボタン解放による送信権解放シーケンスについて図4を用いて説明する。図4は、本システムにおける送話ボタン解放による送信権解放シーケンスを示す説明図である。
図4に示すように、通話状態において(200)、送信権が与えられている基地局1が、送話ボタンが解放された(離された)ことを検出すると(202)、基地局1は、AGW1に対してTalk Burst Releaseメッセージを送信する(204)。
【0050】
AGW1は、基地局からTalk Burst Releaseメッセージを受信すると、Talk Burst Releaseガードタイマを起動し(206)、受信したTalk Burst ReleaseメッセージのIPアドレスとポートをPTエンジンのものに変更して、Talk Burst ReleaseメッセージをPTエンジンに送信する(208)。
【0051】
Talk Burst Releaseガードタイマは、送話ボタンの解放がなされたにもかかわらず何らかの障害により送信権の解放がなされなくなってしまうことを回避するためのガードタイマであり、送信権を持つAGWは、基地局からTalk Burst Releaseメッセージを受信するとTalk Burst Releaseガードタイマを起動し、PTエンジンからそれに対する応答として、Talk Burst Idleメッセージを受信すると当該ガードタイマを停止するものである。
【0052】
Talk Burst Releaseガードタイマがタイムアウトした場合には、当該AGWは、Talk Burst Idleメッセージを基地局に送信し、送信権の解放が行われるものである。また、AGWは、PTエンジンにもTalk Burst Releaseメッセージを送信する。これにより、送話ボタンの解放後に何らかの障害によって送信権の解放が正常に行われなくなっても、強制的に送信権を解放することができ、処理の滞りを防ぐことができるものである。
また、それと共に、AGWは、基地局に送信権解放を示すメッセージを送信する。
【0053】
そして、PTエンジンは、AGW1からTalk Burst Releaseメッセージを受信すると、通話制限時間タイマを停止し(210)、送信権解放を通知する処理を行う(212)。
PTエンジンは、送信権解放通知として、Talk Burst IdleメッセージをAGW1及びAGW2に送信し(214,216)、AGW1及びAGW2は、それぞれ、Talk Burst Idleガードタイマを停止し(218,224)、更に、Talk Burst Releaseメッセージを送信したAGW1は、Talk Burst Releaseガードタイマを停止する(220)。
そして、AGW1及びAGW2は、それぞれ基地局1、基地局2にTalk Burst Idleメッセージを送信し(222,226)、送信権の解放が行われる。
【0054】
[通話制限時間タイマタイムアウトによる送信権解放シーケンス:図5]
次に、通話制限時間タイマタイムアウトによる送信権解放シーケンスについて図5を用いて説明する。図5は、本グループ通話制御サーバにおける通話制限時間タイマタイムアウトによる送信権解放シーケンスを示す説明図である。
図5に示すように、通話状態において(300)、PTエンジンが通話制限時間タイマのタイムアウトを検出すると(302)、Talk Burst Idleメッセージを通話に参加しているAGW1、AGW2に送信する(304,306)。
【0055】
AGW1及びAGW2は、それぞれ、Talk Burst Idleガードタイマを停止し(308,312)、基地局1,2に対してTalk Burst Idleメッセージを送信する(310,314)。これにより送信権が解放される。
【0056】
このように、本グループ通話制御サーバのシーケンスでは、通話制限時間タイマタイムアウトの検出後、多くのメッセージのやり取りを行わないので、迅速に送信権が解放され、速やかに次の送信権要求を受け付けることが可能となるものである。
【0057】
[AGWの処理例:図6]
次に、送信権獲得/失敗シーケンスにおけるAGWの処理について図6を用いて説明する。図6は、送信権獲得シーケンスにおけるAGWの処理を示すフローチャートである。
図6に示すように、AGWは、基地局からTalk Burst Requestメッセージを受信すると(700)、Talk Burst Requestガードタイマを起動する(702)。そして、AGWは、PTエンジンにTalk Burst Requestメッセージを送信する(704)。
【0058】
そして、AGWは、Talk Burst Requestガードタイマがタイムアウトしたかどうかを判断し(706)、Talk Burst Requestガードタイマがタイムアウトしていない場合には、PTエンジンからTalk Burst Grantedメッセージ又はTalk Burst Denyメッセージを受信したか否かを判断する(708)。
【0059】
処理708において、いずれのメッセージも受信していない場合(Noの場合)には、AGWは、処理706に移行してTalk Burst Requestメッセージに対する応答であるTalk Burst Grantedメッセージ又はTalk Burst Denyメッセージを待ち受ける。
【0060】
そして、処理708において、Talk Burst Grantedメッセージ又はTalk Burst Denyメッセージを受信した場合(Yesの場合)には、AGWは、Talk Burst Requestガードタイマを停止し(710)、基地局にTalk Burst Grantedメッセージ又はTalk Burst Denyメッセージを送信する(712)。
【0061】
また、処理706において、Talk Burst Requestガードタイマがタイムアウトした場合には、シーケンス途中で何らかの障害が発生してシーケンスが正常に行われなかったものであり、AGWは、基地局に、送信権獲得失敗を示すメッセージを送信する(714)。
障害としては、AGWからPTエンジンへのTalk Burst Requestメッセージが正常に受信されなかった場合や、PTエンジンからのTalk Burst GrantedメッセージやTalk Burst Denyメッセージが正常に受信されなかった場合が考えられる。
これにより、基地局は、送信権要求時にシーケンス途中で障害が発生した場合に、来るはずのない応答を無駄に長時間待ち続ける必要がなくなり、AGWからのメッセージによって送信権獲得失敗を認識して次の処理に移行することができるものである。
【0062】
[実施の形態の効果]
本発明の実施の形態に係るグループ通話制御サーバによれば、AGWが、基地局からTalk Burst Requestメッセージを受信すると、Talk Burst Requestガードタイマを起動し、当該Talk Burst Requestメッセージに対する応答としてのTalk Burst Grantedメッセージ若しくはTalk Burst Denyメッセージのいずれかを受信した場合には当該ガードタイマを停止して、受信したメッセージを基地局に送信し、Talk Burst Grantedメッセージ若しくはTalk Burst Denyメッセージを受信せずにガードタイマがタイムアウトした場合には、送信権の獲得に失敗したことを示すメッセージを基地局に送信するようにしているので、送信権獲得シーケンス中で障害が発生した場合に、基地局に対して送信権獲得が成功しなかった旨を迅速に報知して、基地局は無意味に応答を待ち受けることなく次の処理に移行することができ、システムを効率的に運用することができる効果がある。
【0063】
また、本発明の実施の形態に係るグループ通話制御サーバによれば、PTエンジンが、通話状態において、通話制限時間タイマのタイムアウトを検出した場合、Talk Burst Revokeメッセージを送信せずに直ちにTalk Burst Idleメッセージを送信するようにしているので、送信権解放シーケンスを大幅に短縮して処理を軽減でき、システムを効率的に運用することができる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、グループ通話に伴う処理の無駄を無くして、システムを効率的に運用することができるグループ通話制御サーバに適している。
【符号の説明】
【0065】
1,10…移動局、 2…基地局、 3,5…ルータ、 6,20…回線制御装置、 7…保守コンソール、 8…有線卓、 9…運用管理装置、 61,21…アクセスゲートウェイ(AGW)、 62,22…PTエンジン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワーク中の移動局間のグループ通話の制御を行うグループ通話制御サーバであって、
グループ通話における送信権の制御を行うと共に、送信権要求から特定の制限時間を計時する通話制限時間タイマを備えたグループ通話手段と、
基地局に対応して設けられ、前記基地局からメッセージを受信すると前記メッセージを前記グループ通話手段に送信し、前記グループ通話手段からメッセージを受信すると前記メッセージを前記基地局に送信する複数のアクセスゲートウェイとを備え、
前記アクセスゲートウェイが、メッセージを待ち受ける制限時間を計時するガードタイマを備え、基地局からの送信権要求を受信すると、前記ガードタイマを起動して、前記グループ通話手段から送信権受付又は送信権拒否のメッセージを受信した場合には、前記ガードタイマを停止して前記受信したメッセージを前記基地局に送信し、前記グループ通話手段から送信権受付又は送信権拒否のメッセージを受信しないまま前記ガードタイマがタイムアウトした場合には、前記基地局に対して送信権獲得が成功しなかった旨を示すメッセージを送信し、
前記グループ通話手段が、送信権受付のメッセージを送信した場合、グループ通話中に前記通話制限時間タイマのタイムアウトを検出すると、送信権取消のメッセージを送信することなく、前記グループ通話に参加している全てのアクセスゲートウェイに対して送信権待機のメッセージを送信することを特徴とするグループ通話制御サーバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−109230(P2011−109230A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−259791(P2009−259791)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】