説明

グレリンのミメティックに基づく強化された偏頭痛の治療

本発明は、偏頭痛薬の吸収を増進する方法、及び、偏頭痛薬の吸収を増進することによって、偏頭痛を治療することを必要とする対象者に有効量のグレリンミメティック又はその製薬上許容される塩、水和物若しくは溶媒和物と少なくとも1種類の偏頭痛薬(ここで、該少なくとも1種類の偏頭痛薬は、セロトニン5−HT1B/1D受容体アゴニスト、トリプタミン誘導体、エルゴリン誘導体、非ステロイド性抗炎症薬又は鎮痛薬又はそれらの任意の組合せから選択される)を共投与することにより偏頭痛を治療する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本出願は、米国特許法119条により、2009年2月27日に出願したUSSN61/156.129に基づいて優先権を主張するものである。
偏頭痛は、住民の中で一般的であり、個人の健康と生活の質に大きな影響を及ぼし得る。米国単独で、女性の18%及び男性の6%が、前年に少なくとも1回の偏頭痛の症状の発現を経験したと報告している(Silberstein,“Migraine”. Lancet 2004; 363:381−391)。偏頭痛は、さらにまた、医療費及び仕事の生産性の低下又は喪失に起因して、経済的な影響も有している。偏頭痛は、一般に、全労働人口の主要な集団である若年成人を苦しめる。偏頭痛の予測できないという性質又は繰り返し起こるという性質によって、個人の正常な活動が妨げられることは言うまでもなく、仕事の生産性が一時的に失われ得るか、又は、就業不能の期間が長くなり得る。
【0002】
偏頭痛は、一般に、治療されない場合には4〜72時間にわたって継続する中程度から重度の頭痛(この頭痛について、患者は、しばしば、脈動性又は拍動性と表現する)を特徴とする特殊な型の血管性頭痛をもたらす。偏頭痛の痛みは、多くの場合、頭部の片側に局在化される(即ち、片側性)が、その痛みは、頭部の両側に存在し得る(即ち、両側性)。偏頭痛には、刺激(例えば、光及び音)に対する極度の感受性、胃腸の不調及び視力障害などの少なくとも1種類か又はそれより多くの症状又は前兆も伴う。
【0003】
偏頭痛を引き起こすもととなるイベントは、今もなお、充分には理解されていないので、偏頭痛の制御において、予防及び誘引の回避は概して効果的ではない。さらに一般的には、偏頭痛の患者は、対症的な制御又は個人の頭痛を軽減させるための頓挫性治療に頼る。偏頭痛の治療は継続的に進歩しているのにもかかわらず、既存する殆どの治療は、作用が遅いか、又は、効力が限られているか、又は、望ましくない副作用を有する。
【0004】
スマトリプタン及び別のトリプタン系分子は、偏頭痛の発作に対する看護の主要な標準を代表している。スマトリプタンは、頭蓋血管の収縮を引き起こすセロトニン(5−HT1B/1D)受容体アゴニストである。スマトリプタンは、成人において前兆の有無にかかわらず急性偏頭痛に対する治療として米国及び世界中で広く処方されている。コハク酸スマトリプタンは、錠剤、鼻内噴霧剤及び注射剤の投与形態でImitrex(登録商標)として市販されている。「Doenicke et al., Lancet, 1988, Vol.1, 1309−11」、及び、「Feniuk & Humphrey, Drug Development Research, 1992, 26, 235−40」。5−HT1B/1D受容体アゴニストとして作用する市販されている別のトリプタン類としては、リザトリプタン、エレトリプタン、ゾルミトリプタン、ナラトリプタン、アルモトリプタン及びフロバトリプタンなどがある。
【0005】
上記トリプタン類は、偏頭痛の再発を包含する幾つかの不利点を被るということが報告されている。特に、スマトリプタンで治療されている患者の偏頭痛は、しばしば、最初の治療を受けてから8〜24時間以内に再発するということが観察されている。この問題を克服するために、Plachetkaらは、米国特許第6,060,499号において、、スマトリプタンを長期間にわたって作用するNSAID(例えば、ナプロキセンナトリウム)と組み合わせることを提案してきた。Plachetkaによれば、“長期間にわたって作用するNSAIDを5−HTアゴニストに加えることによって、偏頭痛の原因が何であれ、効果的な抗偏頭痛作用の期間が延長され、再発頭痛(又は、反跳偏頭痛(rebound migrains))が起こるのが防止される”。以下のものも参照されたい:「Smith et al., HEADACHE 2005;45:983−91」、及び、Simitchievaらに対する米国特許第6,384,034号(ここでは、スマトリプタン又はリザトリプタンと選択的COX−2阻害薬(例えば、ロフェコキシブ又はセレコキシブ)を組み合わせることが提案されている)。
【0006】
トリプタン類は、さらにまた、遅い薬物動態学的プロフィール、従って、治療効果が遅いという欠点も有している。健康な成人では、スマトリプタンが血漿中においてその最高濃度に達するのに、投与後、平均で2時間を要する。偏頭痛の発作が起こっている間、スマトリプタンの吸収はさらに遅く、投与後2.5時間が経過するまで血中最高濃度には達しない。Imitrex(登録商標)錠剤の処方情報を参照されたい。治験担当医は、この増大された吸収時間は胃腸管の緩慢化に起因すると提案してきたが、胃腸管のそのような遅延された運動性に基づく治療的介入は、依然として捕らえ所がない。以下のものを参照されたい:De Ponti et al., FUNCT NEUROL. 2000; 15 Suppl 3:43−9。
【0007】
この遅延型作用を克服するため、胃腸管内でのジクロフェナクの吸収を速める特別に製剤された投与形態中でトリプタンをジクロフェナクと組み合わせることが、Maichleら(WO 2007/127207)によって提案された。この組合せは、トリプタンが効果を発揮し得る前に、ジクロフェナクによって、15分という短い時間で素早く痛みを軽減すると言われている。上記投与形態は多少の有用性は有しているものの、トリプタンの吸収及びそのトリプタンによる遅延性の治療効果に関する問題を未だに解決していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,060,499号
【特許文献2】米国特許第6,384,034号
【特許文献3】国際特許出願公開第WO 2007/127207号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Silberstein,“Migraine”. Lancet 2004; 363:381−391
【非特許文献2】Doenicke et al., Lancet, 1988, Vol.1, 1309−11
【非特許文献3】Feniuk & Humphrey, Drug Development Research, 1992, 26, 235−40
【非特許文献4】Smith et al., HEADACHE 2005;45:983−91
【非特許文献5】De Ponti et al., FUNCT NEUROL. 2000; 15 Suppl 3:43−9
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、経口投与されたときに、トリプタン類及び別の偏頭痛薬の吸収速度を向上させることである。別の目的は、偏頭痛の発作が起きている間に経口投与されたときに、トリプタン類及び別の偏頭痛薬の吸収速度を向上させることである。
【0011】
さらに別の目的は、併用投薬計画を用いて偏頭痛に関連する症状を治療すること、トリプタン又は別の偏頭痛薬を単独で用いて達成される痛みの軽減よりもさらに充分に痛みを軽減することである。
【0012】
かくして、別の目的は、偏頭痛にしばしば伴う1種類以上の症状(ここで、該症状は、吐き気、羞明、音声恐怖症、痛み及び反跳頭痛(rebound headache)から選択される)をトリプタン又は別の偏頭痛薬の単独と比較して迅速に治療する併用投薬計画を提供することである。
【0013】
別の実施形態では、該併用投薬計画は、偏頭痛にしばしば伴う1種類以上の症状(ここで、該症状は、吐き気、羞明、音声恐怖症、痛み及び反跳頭痛から選択される)をトリプタン又は別の偏頭痛薬の単独と比較して良好に治療する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、本発明によるグレリンミメティックと偏頭痛薬を共投与し、それによって該偏頭痛薬の吸収速度及び/又は治療効果を高めることによる、偏頭痛を有している対象者を治療する方法、又は、偏頭痛の病歴を有しているか若しくは偏頭痛が発症するリスクを有している対象者における偏頭痛を予防する方法に関する。かくして、一実施形態において、本発明は、セロトニン5−HT1B/1D受容体アゴニスト、トリプタミン誘導体、エルゴリン誘導体、非ステロイド性抗炎症薬及び鎮痛薬から選択される第2の分子の吸収速度(又は、治療効果の速さ)を高める方法を提供し、ここで、該方法は、偏頭痛を有している対象者に有効量のグレリンミメティック及び該第2の分子を投与することを含む。
【0015】
別の実施形態において、本発明は、偏頭痛を有している対象者を治療する方法を提供し、ここで、該方法は、該対象者に有効量のグレリンミメティック及び第2の分子(ここで、該第2の分子は、セロトニン5−HT1B/1D受容体アゴニスト、トリプタミン誘導体、エルゴリン誘導体、非ステロイド性抗炎症薬及び鎮痛薬から選択される)を投与することを含む。
【0016】
さらに別の実施形態において、本発明は、偏頭痛の症状又は合併症を患っている患者における、治療、並びに、吸収及び/又は効果の改善された速度に関する。従って、さらに別の実施形態において、本発明は、偏頭痛の1種類以上の症状若しくは合併症を治療する方法、及び/又は、そのような症状若しくは合併症を患っている患者における吸収若しくは治療効果の速度を高める方法(ここで、該症状又は合併症は、胃内容鬱滞、吐き気、嘔吐、羞明及び音声恐怖症から選択される)を提供し、ここで、該方法は、該症状又は合併症のうちの1種類以上を患っている対象者に有効量の本発明のグレリンミメティック及び第2の分子(ここで、該第2の分子は、セロトニン5−HT1B/1D受容体アゴニスト、トリプタミン誘導体、エルゴリン誘導体、非ステロイド性抗炎症薬及び鎮痛薬から選択される)を投与することを含む。
【0017】
本発明は、さらに、偏頭痛に起因する胃腸の不調及び別の状態を治療する方法にも関する。胃腸の不調は、胃内容鬱滞、嘔吐(emesis)、吐き気又は嘔吐(vomiting)のうちの1種類以上を含んでいる。該方法は、そのような治療を必要とする対象者に治療有効量の本発明のグレリンミメティック及び少なくとも1種類の付加的な治療薬(例えば、セロトニン5−HT1B/1D受容体アゴニスト、トリプタミン誘導体、エルゴリン誘導体、非ステロイド性抗炎症薬又は鎮痛薬又はそれらの任意の組合せ)を投与することを含んでいる。
【0018】
本発明は、さらに、偏頭痛を治療するための医薬組成物も提供し、ここで、該組成物は、本発明のグレリンミメティックと、セロトニン5−HT1B/1D受容体アゴニスト、トリプタミン誘導体、エルゴリン誘導体、非ステロイド性抗炎症薬及び鎮痛薬のうちの少なくとも1種類又はそれらの任意の組合せを含んでいる。
【0019】
本発明の上記目的及び別の目的、特徴並びに有利点は、本発明の好ましい実施形態のついての以下のさらに詳細な記述から明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、本発明の好ましい実施形態についての以下の詳細な記述及びそれに含まれている実施例を参照することによって、より容易に理解することができる。
【0021】
定義
本明細書及び特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、その文脈によって別途明瞭に示されていない限り、複数の意味も包含している。例えば、用語「製薬用賦形剤(pharmaceutical excipient)」は、本明細書に開示されている製剤及び方法において使用するための1種類以上の製薬用賦形剤のことを示し得る。
【0022】
薬物及びその塩について用量が与えられている場合、本明細書中において別途示されていない限り、計算された該用量が、塩部分の重量を含めることなく、当該基剤薬物の分子量に基づいているということは、理解されるであろう。かくして、アナモレリン塩酸塩の塩酸塩部分の重量は、計算から除外されるであろう。
【0023】
ある範囲の下端をその範囲の上端から切り離して指定することによって範囲が与えられている場合、該範囲が、下端の変数のうちの任意の1つを上端の変数のうちの任意の1つと選択的に組み合わせる(これは、数学的に可能である)ことによって定められ得るということは理解されるであろう。
【0024】
本明細書中で使用されている場合、用語「約」は、製薬工業において考慮に入れられている、医薬品に固有のばらつき(例えば、製造の変動性及び製品の経時的な劣化に起因する製品強度の差)を補償するであろう。該用語は、製薬の実践において評価されている製品が説明されている強度に生物学的に同等であると見なされることを可能とする任意のばらつきを補償するであろう。
【0025】
「対象者(subject)」は、本明細書中で使用されている場合、哺乳動物などの動物のことを意味し、ここで、哺乳動物としては、限定するものではないが、霊長類(例えば、ヒト)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ブタ、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、ラット若しくはマウス、又は、別の、ウシ亜科、ヒツジ類、ウマ科、イヌ科、ネコ科、齧歯類若しくはネズミ科の動物種などを挙げることができる。好ましい実施形態では、該哺乳動物はヒトである。
【0026】
本明細書中で使用されている場合、「治療すること(treating)」及び「治療(treatment)」は、疾患又は障害の発症、進行又は状態を、減少させること、低減すること、抑制すること、弱めること、縮小すること、阻止すること、安定化すること又は排除することを意味する。本発明に関連して、本発明の方法、医薬組成物及びキットは、対象者における偏頭痛又は偏頭痛の症状(例えば、頭痛、胃腸の不調、刺激に対する過敏性)を低減又は排除するために使用し得る。
【0027】
本明細書中で使用されている場合、「予防する(prevent)」及び「予防(prevention)」は、対象者における障害の発症を低減させること、又は、対象者における障害若しくはそれに関連した症状の発症のリスクを低減させることを意味する。本発明に関連して、本発明の方法及び組成物は、対象者における偏頭痛又は偏頭痛に関連した症状を予防するために使用し得る。上記予防は、完全なもの、例えば、偏頭痛及び/又はその症状が全く存在しないようなものであり得る。上記予防は、部分的なものであっても良く、その結果、偏頭痛を発症する可能性が本発明の方法及び組成物を受けなかった対象者よりも低いようなものであることもできる。
【0028】
ディスカッション
本発明は、偏頭痛(例えば、普通型偏頭痛、又は、古典型偏頭痛)を有している対象者を治療する方法に関する。本発明は、さらに、偏頭痛の病歴を有しているか又は偏頭痛が発症するリスクを有している対象者における偏頭痛を予防する方法にも関する。該方法は、そのような治療又は予防を必要とする対象者に、治療有効量の本発明のグレリンミメティックと治療有効量の少なくとも1種類の付加的な治療薬(例えば、セロトニン5−HT1B/1D受容体アゴニスト、トリプタミン誘導体、エルゴリン誘導体、非ステロイド性抗炎症薬、鎮痛薬、又は、それらの任意の組合せ)を共投与することを含んでいる。該付加的な治療薬、例えば、セロトニン5−HT1B/1D受容体アゴニスト、トリプタミン誘導体、エルゴリン誘導体、非ステロイド性抗炎症薬又は鎮痛薬は、それらの製薬上許容される塩、水和物又は溶媒和物として投与することができる。
【0029】
本発明は、さらに、偏頭痛に起因する胃腸の不調及び別の状態を治療する方法にも関する。胃腸の不調は、胃内容鬱滞、嘔吐(emesis)、吐き気又は嘔吐(vomiting)の症状のうちの1種類以上を含んでいる。該方法は、そのような治療を必要とする対象者に治療有効量のグレリンミメティック及び少なくとも1種類の付加的な治療薬(例えば、セロトニン5−HT1B/1D受容体アゴニスト、トリプタミン誘導体、エルゴリン誘導体、非ステロイド性抗炎症薬、鎮痛薬、又は、それらの任意の組合せ)を投与することを含んでいる。該グレリンミメティックと、セロトニン5−HT1B/1D受容体アゴニスト、トリプタミン誘導体、エルゴリン誘導体、非ステロイド性抗炎症薬又は鎮痛薬は、それらの製薬上許容される塩、水和物又は溶媒和物として投与することができる。
【0030】
本発明は、さらに、偏頭痛を治療するための医薬組成物も提供し、ここで、該組成物は、本発明のグレリンミメティックと、セロトニン5−HT1B/1D受容体アゴニスト、トリプタミン誘導体、エルゴリン誘導体、非ステロイド性抗炎症薬、鎮痛薬又はそれらの任意の組合せのうちの少なくとも1種類を含んでいる。該医薬組成物は、さらに、鎮静薬、血管収縮薬又はカフェインのうちの1種類以上も含み得る。好ましくは単一の医薬組成物として共投与するが、該グレリンミメティックと、セロトニン5−HT1B/1D受容体アゴニスト、トリプタミン誘導体、エルゴリン誘導体、非ステロイド性抗炎症薬、鎮痛薬又はそれらの任意の組合せのうちの少なくとも1種類は、別々に共投与することができる。
【0031】
偏頭痛
本明細書中で使用されている場合、用語「偏頭痛」は、頭痛又は偏頭痛、及び、症状を伴っていることを特徴とする神経障害を意味する。しかしながら、用語「偏頭痛」は、頭痛を伴わずにそのような症状を含んでいる神経障害、例えば、無頭痛偏頭痛(headache−free migrain)及び腹部偏頭痛なども表し得る。本発明の範囲内に包含されることが意図され且つ本明細書中で偏頭痛と称される頭痛のさらなるタイプとしては、自発性偏頭痛(spontaneous migraine)、視覚誘発性偏頭痛(visually−induced migraine)、発作間歇期偏頭痛(interictal period migraine)、小児周期性症候群、網膜偏頭痛及び偏頭痛の疑い(probable migraine)などを挙げることができる。
【0032】
偏頭痛は、一般に、治療されない場合には4〜72時間にわたって継続する中程度から重度の頭痛(この頭痛について、患者は、しばしば、脈動性又は拍動性と表現する)を特徴とする特殊な型の血管性頭痛をもたらす。偏頭痛の痛みは、多くの場合、頭部の片側に局在化される(即ち、片側性)が、その痛みは、頭部の両側に存在し得る(即ち、両側性)。偏頭痛には、刺激(例えば、光及び音)に対する極度の感受性、胃腸の不調(例えば、吐き気及び嘔吐)及び視力障害などの少なくとも1種類か又はそれより多くの症状又は前兆も伴う。
【0033】
偏頭痛の最も一般的な2種類の型は、「普通型偏頭痛」及び「古典型偏頭痛」である。普通型偏頭痛は、偏頭痛患者の約3分の2が経験している。古典型偏頭痛は、偏頭痛患者の約5分の1から3分の1において発症すると推定される。偏頭痛の2種類の型の間の主な違いは、古典型偏頭痛に先行するか又は古典型偏頭痛に伴う神経学的現象、即ち、「前兆」が現れることである。前兆は、現実には、視覚的、感覚的又は運動性であり得る。視覚的前兆は、経験される最も一般的な型であり、そのような前兆においては、ヒトは、閃光若しくはジグザグ線を見たり又は一時的に視覚を失ったりすることがあり得る。古典型偏頭痛の症状としては、言語障害、上下肢の脱力感、顔又は手の刺痛及び錯乱状態なども挙げることができる。本発明の方法、医薬組成物及びキットは、上記型の偏頭痛又はそのような偏頭痛の本明細書中に記載されている症状を治療又は予防するために使用することができる。一部の患者は、視覚的前兆が先行するので、偏頭痛発症の開始を予測することができる。視覚的前兆が先行する偏頭痛の予防は、意図されている。
【0034】
吐き気及び/又は嘔吐も、偏頭痛の一般的な症状である。吐き気及び/又は嘔吐のために、胃腸の不調が不快症状を引き起こすのみではなく、胃腸の損なわれた運動性も経口投与を妨げ得る。さらに、胃内容鬱滞は、経口投与された薬物がそれらを吸収する腸へ移送されるのを遅らせることによって、そのような薬物の有効性を減じ得る。本発明は、さらにまた、胃腸の不調の症状又は状態を軽減することにも関し、ここで、そのような症状又は状態としては、限定するものではないが、胃内容鬱滞、吐き気、嘔吐又はそれらの任意の組合せなどを挙げることができる。
【0035】
偏頭痛の別の症状及び合併症(例えば、羞明及び音声恐怖症)の改善された治療も、本発明の方法によって意図されている。かくして、薬物の該組合せを使用して、偏頭痛に関連したさまざまな症状及び状態を、いずれかの薬物を単独で用いた場合を超えて治療することができる。本発明の方法は、かくして、以下のように定義することができる: 頭痛、胃内容鬱滞、吐き気、嘔吐、羞明又は音声恐怖症から選択される偏頭痛の1種類以上の症状又は合併症を治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に本発明の組合せを個別的に又は一緒に投与することを含む、前記方法。
【0036】
かくして、さまざまな実施形態において、本発明は、偏頭痛、頭痛、胃内容鬱滞、吐き気、嘔吐、羞明又は音声恐怖症を個別的に治療するために、及び、以下のものを包含するそれらの任意の組合せを治療するために、使用される:
・ 偏頭痛+胃内容鬱滞
・ 偏頭痛+頭痛+吐き気+羞明+音声恐怖症
・ 頭痛+吐き気+羞明+音声恐怖症
・ 頭痛+吐き気+羞明
・ 頭痛+吐き気+音声恐怖症
・ 頭痛+吐き気
・ 頭痛+羞明
・ 頭痛+音声恐怖症。
【0037】
胃不全麻痺関連障害
胃不全麻痺又は胃内容鬱滞、機械的な障害の非存在下において胃内容排出が遅くなっている障害である。それは、早期満腹感、鼓脹、吐き気、食欲不振、嘔吐、腹部の痛み及び体重減少などの概ね非特異的な一連の症状を通して臨床的に現れる。
【0038】
胃不全麻痺は、別の疾患、障害又は状態の治療を難しくするときにますます問題になる。胃不全麻痺に起因する困難な問題の一例は、経口投与された薬物の低下された効力である。胃の運動性は遅くなったとき、経口投与された薬物の腸内における吸収速度も低減し、そのことが、それらの疾患、障害及び状態の治療に関する困難な問題を生じる。
【0039】
多くの疾患、障害及び状態を有している対象者は、胃不全麻痺を有しているとして特徴付けられてきた。例えば、以下のものを有している対象者:糖尿病、強皮症、例えば、胃の強皮症;精神病、例えば、鬱病、及び、摂食障害(食欲不振、過食症);胃食道逆流症;萎縮性胃炎;悪性腫瘍;内分泌及び代謝障害、例えば、甲状腺機能低下症、上皮小体機能低下症及び上皮小体機能亢進症;胆嚢障害;嚢摘出術後症候群(post−cholecystectomy);硬変症、及び、門脈圧亢進症。胃不全麻痺は、さらにまた、アルコール、喫煙及び大麻の使用とも関連付けられてきた。
【0040】
従って、本発明は、胃不全麻痺をもたらす疾患、状態及び障害を有する対象者を治療するための方法及び組成物を提供する。本明細書中に記述されているように、本発明は、グレリンミメティックを提供し、及び、胃の運動性を増大させ、それによって、共投与された薬物の吸収速度が増大するのを可能とするために該グレリンミメティックを共投与する方法を提供する。
【0041】
成長ホルモン分泌促進薬/グレリンミメティック
本明細書中で使用されている場合、本発明の「グレリンミメティック」は、グレリン受容体(GRLN受容体;これは、「成長ホルモン分泌促進薬受容体(GHS−R1a受容体)」としても知られている)に典型的な少なくとも1の機能を促進(誘発又は強化)する物質(例えば、分子、化合物)を意味する。代表的なグレリンミメティックは、成長ホルモン分泌促進薬などのグレリンアゴニストである。一実施形態において、該グレリンミメティック化合物又はグレリンアゴニストは、GHS−R1a受容体又はグレリン受容体に結合して(即ち、グレリン又はGHS受容体アゴニストである)、成長ホルモンの分泌を誘発する。GHS受容体アゴニスト活性を有する化合物(例えば、GHS受容体又はグレリン受容体アゴニスト)は、任意の適切な方法によって確認することができ、及び、活性を評価することができる。例えば、GHS受容体に対するGHS受容体アゴニストの結合親和性は受容体結合アッセイを用いて決定することが可能であり、成長ホルモン刺激は米国特許第6,919,315号(これは、参照により本明細書中に組み入れる)に記載されているようにして評価することができる。
【0042】
グレリン受容体及びGHS受容体は、他の組織でも発現されるが、とりわけ、視床下部、下垂体及び膵臓で発現される。下垂体中のこれらの受容体を活性化すると、成長ホルモンの分泌が誘発される。最近の研究によって、ホルモン分泌促進薬及びグレリンミメティックが、成長ホルモンの分泌を誘発することに加えて、食欲を増進させ、体重を増やすことができるということが示された。典型的な投薬量において、グレリンミメティックは、IGF−1の分泌を誘発するということも知られている。代表的なグレリンミメティック化合物は、米国特許第6,303,620号、米国特許第6,576,648号、米国特許第5,977,178号、米国特許第6,566,337号、米国特許第6,083,908号、米国特許第6,274,584号、米国特許第6,919,315号及び米国特許第5,767,085号(これら全ての米国特許の全内容は、参照により本明細書に組み入れる)に記載されているグレリンミメティック化合物である。
【0043】
代表的なグレリンミメティックは、アナモレリン、イパモレリン又は本明細書中で定義されている化合物1141又はそれらの製薬上許容される塩、水和物若しくは溶媒和物から選択される。アナモレリンは、化学的には、3−ピペリジンカルボン酸,1−(2−メチルアラニル−D−トリプトフィル)−3−(フェニルメチル)−,トリメチルヒドラジド,(3R)−、又は、(3R)−1−{(2R)−2−[(2−アミノ−2−メチルプロパノイル)アミノ]−3−(インドール−3−イル)プロパノイル}−3−ベンジル−N,N’,N’−トリメチルピペリジン−3−カルボヒドラジドと記載され、下記化学構造によって表される:
【化1】

【0044】

化合物1141は、化学的には、(2E)−4−(1−アミノシクロブチル)ブタ−2−エン酸 N−((1R)−1−{N−[(1R)−1−ベンジル−2−(4−ヒドロキシピペリジン−1−イル)−2−オキソエチル]−N−メチルカルバモイル}−2−(ビフェニル−4−イル)エチル)−N−メチルアミドと記載され、下記化学構造によって表される:
【化2】

【0045】


イパモレリンは、化学的には、α−メチルアラニン−L−ヒスチジン−D−β−(2−ナフチル)−アラニン−D−フェニルアラニン−1−リシンアミド、又は、H−Aib−His−β−(2−ナフチル)−D−Ala−D−Phe−Lys−NHと化学的に定義されるように記載され、下記化学構造を有する:
【化3】

【0046】


セロトニン5−HT1b/1d受容体アゴニスト
本明細書中で使用されている場合、「セロトニン5−HT1B/1D受容体アゴニスト」は、セロトニン5−HT1B及び5−HT1D受容体を活性化する薬物を意味する。そのような化合物は、神経伝達物質セロトニンの効果を模倣し、そして、偏頭痛及び偏頭痛の症状を治療するのに有効であることが示されている。どのような特定の理論にも拘束されるものではないが、そのようなアゴニストは、頭蓋血管中でセロトニン5−HT1B及び5−HT1D受容体を活性化させ(これは、それら頭蓋血管を収縮させる)、続いて、プロ炎症性神経ペプチドの放出を阻害することによって、偏頭痛を軽減させるように作用する。これらの薬物も、神経終末及び血管におけるセロトニン受容体に対して作用するので、有効であり得る。本発明での使用に関して代表的なセロトニン5−HT1B/1D受容体アゴニストとしては、限定するものではないが、トリプタン類及び何種類かのエルゴリン誘導体(例えば、エルゴタミン)などを挙げることができる。
【0047】
トリプタミン誘導体
本明細書中で使用されている場合、「トリプタミン誘導体」又は「トリプタン」は、インドール環構造を含んで化学的にアミノ酸トリプトファンと関連しているモノアミンアルカロイド(即ち、トリプタミン)から誘導された薬物を意味する。トリプタミンは、哺乳動物の脳内において極微量で見られ、神経調節物質又は神経伝達物質として役割を果たしていると考えられる。トリプタミン誘導体には、神経伝達物質及び幻覚発現物質などの生物学的活性化合物が包含される。
【0048】
トリプタン類としては、限定するものではないが、以下のものを挙げることができる: スマトリプタン、即ち、1−[3−(2−ジメチルアミノエチル)−1H−インドール−5−イル]−N−メチル−メタンスルホンアミド;
リザトリプタン、即ち、N,N−ジメチル−2−[5−(1,2,4−トリアゾール−1−イルメチル)−1H−インドール−3−イル]エタンアミン;
ナラトリプタン、即ち、N−メチル−2−[3−(1−メチル−4−ピペリジル)−1H−インドール−5−イル]−エタンスルホンアミド;
ゾルミトリプタン、即ち、(4S)−4−{[3−(2−ジメチルアミノエチル)−1H−インドール−5−イル]メチル}−1,3−オキサゾリジン−2−オン;
エレトリプタン、即ち、3−[((2R)−1−メチルピロリジン−2−イル)メチル]−5−(2−フェニルスルホニルエチル)−1H−インドール;
アルモトリプタン、即ち、N,N−ジメチル−2−[5−(ピロリジン−1−イルスルホニルメチル)−1H−インドール−3−イル]−エタンアミン;
及び、
フロバトリプタン、即ち、6−メチルアミノ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−カルバゾール−3−カルボキサミド。どのような特定の理論にも拘束されるものではないが、トリプタン類の作用は、それらが、頭蓋血管中でセロトニン5−HT1B及び5−HT1D受容体に結合し(これは、それら頭蓋血管を収縮させる)、続いて、プロ炎症性神経ペプチドの放出を阻害することによる。これらの薬物はそれらが神経終末及び血管におけるセロトニン受容体に対して作用するので有効であるということを示唆する証拠が存在する。本発明での使用に関して代表的なトリプタン類としては、限定するものではないが、スマトリプタン、リザトリプタン、ナラトリプタン、ゾルミトリプタン、エレトリプタン、アルモトリプタン及びフロバトリプタンなどを挙げることができる。
【0049】
スマトリプタンの好ましい用量は、経口投与される場合は約25〜約200mgの範囲にわたり、非経口投与(特に、皮下投与)される場合は約2〜約8mg又は4mgの範囲にわたり、及び、鼻腔内投与される場合には5〜20mgの範囲にわたる。さらなる用量範囲は以下のとおりである:エレトリプタンでは、10〜60、又は、20〜40;リザトリプタンでは、2.5〜20、又は、5〜10;ゾルミトリプタンでは、1.5〜7.5、又は、2.5〜5.0mg;ナラトリプタンでは、0.5〜5.0、又は、1.0〜2.5mg;アルモトリプタンでは、2.5〜15.0、又は、6.25〜12.5mg;及び、フロバトリプタンでは、1.0〜5.0mg。
【0050】
エルゴリン誘導体
本明細書中で使用されている場合、「エルゴリン誘導体」は、真菌類及び植物において見られるエルゴリンアルカロイドから誘導された薬物を意味する。エルゴリン誘導体は、偏頭痛の治療において(場合により、カフェインと組み合わせて)使用され、臨床的には、血管を収縮させる目的で5−HTアゴニストとして使用される。エルゴリン誘導体は、高用量では毒性があり、一部のものは催幻覚作用(psychedelic effect)又は幻覚誘発作用(hallucinogenic effect)を有しているが、低用量において及び/又は規則正しく使用された場合、エルゴリン誘導体は、偏頭痛を治療するために使用することが可能である。
【0051】
エルゴリン誘導体としては、限定するものではないが、以下のものを挙げることができる:リセルグ酸類(例えば、エルギン(ergine)、エルゴメトリン、メチルエルゴメトリン、メチセルギド、及び、リセルギド);エルゴペプチン類(例えば、エルゴタミン、エルゴクリスチン、エルゴコルニン、エルゴクリプチン、ブロモクリプチン、及び、エルゴバリン);クラビン類(例えば、アグロクラビン、エリモクラビン、及び、リセルゴール);ペルゴリド;及び、リスリド。本発明で使用するのに適している代表的なエルゴリン誘導体としては、限定するものではないが、エルゴタミン、エルギン、エルゴメトリン、メチルエルゴメトリン、メチセルギド、リセルギド、エルゴクリスチン、エルゴコルニン、エルゴクリプチン、ブロモクリプチン、エルゴバリン、エルゴクリスチン、エルゴコルニン、エルゴクリプチン、ブロモクリプチン、エルゴバリン、アグロクラビン、エリモクラビン、リセルゴール、ペルゴリド及びリスリドなどを挙げることができる。
【0052】
非ステロイド性抗炎症薬及び鎮痛薬
本明細書中で使用されている場合、「鎮痛薬」は、痛みを軽減するために使用される薬物のさまざまな群の任意のメンバーを意味する。鎮痛薬は、さまざまな方法で、末梢神経系及び中枢神経系に作用する。鎮痛薬としては、以下のものを挙げることができる:アセトアミノフェン、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID類)、例えば、サリチレート類、2−アリールプロピオン酸類、及び、COX−2選択的阻害薬、麻酔薬、例えば、モルヒネ、麻酔特性を有する合成薬、例えば、トラマドール、及び、別のさまざまなもの。本発明での使用に関して代表的な鎮痛薬としては、限定するものではないが、アセトアミノフェン及び非ステロイド性抗炎症薬などを挙げることができる。アセトアミノフェン及び特定のNSAIDは、概して安価であり、処方箋なしで入手可能である。
【0053】
本明細書中で使用されている場合、「非ステロイド性抗炎症薬」又は「NSAID」は、鎮痛作用、解熱作用及び抗炎症作用を有する薬物、即ち、痛み、熱及び炎症を低減することが可能な薬物を意味する。用語「非ステロイド性」は、これらの薬物を、同様の抗炎症作用を有するのみではなく広範な別の作用も有するステロイド類と区別するために使用される。鎮痛薬として、NSAID類は、それらが非麻酔性であるという点で例外的である。
【0054】
NSAID類としては、限定するものではないが、以下のものを挙げることができる:サリチレート類(例えば、アスピリン、アモキシプリン(amoxiprin)、ベノリラート、サリチル酸コリンマグネシウム、ジフルニサル、ファイスラミン(faislamine)、サリチル酸メチル、サリチル酸マグネシウム、及び、サリチル酸サリチル(サルサレート));アリールアルカン酸類(例えば、ジクロフェナク、アセクロフェナク、アセメタシン、ブロムフェナク、エトドラク、インドメタシン、ナブメトン、スリンダク、及び、トルメチン);2−アリールプロピオン酸類(プロフェン類)(例えば、イブプロフェン、カルプロフェン、フェンブフェン、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、ケトロラク、ロキソプロフェン、ナプロキセン、オキサプロジン、チアプロフェン酸、及び、スプロフェン);N−アリールアントラニル酸類(フェナム酸類)(例えば、メフェナム酸、及び、メクロフェナム酸);ピラゾリジン誘導体(例えば、フェニルブタゾン、アザプロパゾン、メタミゾール、オキシフェンブタゾン、及び、スルフィンピラゾン);オキシカム類(例えば、ピロキシカム、ロルノキシカム、メロキシカム、及び、テノキシカム);COX−2選択的阻害薬(例えば、セレコキシブ、エトリコキシブ、ルミラコキシブ、パレコキシブ、ロフェコキシブ、及び、バルデコキシブ);スルホンアニリド類(例えば、ニメスリド);リコフェロン;及び、ω−3脂肪酸類。このグループの薬物の一般的なメンバーは、安価であり且つ一般的に処方箋なしで入手可能であるという理由で、アスピリン、イブプロフェン及びナプロキセンである。本発明での使用に関して代表的なNSAIDとしては、限定するものではないが、アスピリン、イブプロフェン及びナプロキセンなどを挙げることができる。
【0055】
本明細書中で使用されている場合、「治療有効量」は、望まれる生物学的応答を誘発するのに充分な量を意味する。本発明において、該望まれる生物学的応答は、偏頭痛を治療又は予防することである。
【0056】
治療有効量又は用量は、患者の年齢、性別及び体重、並びに、患者の現状の病状に依存する。当業者は、望まれる生物学的応答を達成するために、上記要因及び別の要因に応じて適切な投与量を決定することができる。主要薬物(例えば、トリプタン)の用量は、典型的には、該主要薬物を個別的に投与するときに使用する用量と同じ用量である。
【0057】
グレリンミメティックは、一般的に、主要薬物と同じ頻度で投与されるが、そのグレリンミメティックについての適切な用量は、約0.1mg〜約2,000mg又は1mg〜1000mgの範囲内であり得る。アナモレリン塩酸塩は、一般的に、経口投与されるが、そのアナモレリン塩酸塩の場合、好ましい1日用量は、10mg〜300mg、20mg〜200mg又は25mg〜100mgの範囲内である。イパモレリンジアセテートは、一般的に、非経口投与されるが、そのイパモレリンジアセテートの場合、好ましいのは、0.5mg〜40mg、1.0〜25mg又は2.0〜15mgの範囲内である。
【0058】
併用投与
グレリンミメティックは、付加的な治療薬(例えば、本明細書中に開示されている薬剤を包含する、偏頭痛を治療するための1種類以上の付加的な薬剤)での治療に先立って、その治療の後で、又は、その治療と同時に投与することができる。本明細書中で使用されている場合、「併用投与(combination administration)」又は「共投与(co−administration)」は、少なくとも2種類の治療薬を所与の時間枠内で投与することを意味する。共投与は、少なくとも2種類の治療薬が投与されなければならない特定の順番を意味するものではない。該少なくとも2種類の治療薬は、ほぼ同時に個別的に投与し得るか、又は、同一の医薬組成物の中に存在させて同時に投与し得る。
【0059】
医薬組成物及び投与方法
本発明のグレリンミメティックは、医薬組成物の中に組み入れることができる。そのような組成物は、一般的に、該グレリンミメティックと製薬上許容される担体を含んでいる。本明細書中で使用されている場合、用語「製薬上許容される担体」には、医薬投与(pharmaceutical administration)に適合性を有する溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌薬及び抗真菌薬、等張化剤(isotonic agent)並びに吸収遅延剤(absorption delaying agent)などが包含される。該組成物には、補助的な活性化合物も組み入れることができる。そのような補助的な活性化合物としては、限定するものではないが、鎮静薬、血管収縮薬及びカフェインなどを挙げることができる。
【0060】
該医薬組成物は、投与に関する使用説明書と一緒に、容器、パック又はディスペンサーの中に含ませることができる。
【0061】
医薬組成物は、その意図された投与経路に適合するように製剤される。投与経路の例としては、非経口投与、経口投与、経粘膜投与及び直腸内投与などを挙げることができる。本発明の方法において使用するための化合物は、任意の適切な経路による投与のために、例えば、経口投与用として、又は、非経口投与(経粘膜投与、例えば、舌下投与、舌投与、口腔内投与、鼻内投与、経皮投与及び直腸内投与)用として製剤することができる。
【0062】
適切な組成物及び投与形態としては、錠剤、カプセル剤、カプレット剤(caplet)、丸剤、ゲルキャップ剤、トローチ剤、分散液剤、懸濁液剤、溶液剤、シロップ剤、顆粒剤、ビーズ剤、ゲル剤、粉末剤、ペレット剤、マグマ剤、ロゼンジ剤、ディスク剤、坐剤、液体噴霧剤又は乾燥粉末剤などがある。
【0063】
該化合物は、経口投与されるのが好ましい。適切な経口投与形態としては、例えば、製薬上許容される賦形剤〔例えば、結合剤(例えば、ポリビニルピロリドン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース);増量剤(例えば、乳糖、微結晶性セルロース又はリン酸カルシウム);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク又はシリカ);崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウム);又は、湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)〕を用いて慣習的な方法で調製された錠剤、カプセル剤又はカプレット剤などを挙げることができる。必用に応じて、例えば、嚥下を容易にするために、又は、活性物質の放出を遅延させるために、錠剤に適切な方法を用いてコーティングを施すことができる。経口投与用の液体調製物は、溶液剤、シロップ剤又は懸濁液剤の形態であり得る。液体調製物(例えば、溶液剤、懸濁液剤及びシロップ剤)も、経口投与に適しており、そして、製薬上許容される添加剤〔例えば、懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ、メチルセルロース又は水素化食用脂);乳化剤(例えば、レシチン又はアカシア);非水性ビヒクル(例えば、扁桃油、油性エステル又はエチルアルコール);及び、防腐剤(例えば、p−ヒドロキシ安息香酸メチル、p−ヒドロキシ安息香酸プロピル又はソルビン酸)〕を用いて慣習的な方法で調製することができる。
【0064】
本明細書中で使用されている場合、用語「製薬上許容される塩」は、製薬上許容される無毒性の酸(これは、無機酸、有機酸を包含する)から調製された、投与される化合物の塩、その溶媒和物、水和物又はクラスレートを意味する。そのような無機酸の例は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸及びリン酸である。適切な有機酸は、例えば、脂肪族類、芳香族類、カルボン酸類及びスルホン酸類の有機酸(その例は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、カンファースルホン酸、クエン酸、フマル酸、グルコン酸、イセチオン酸、乳酸、リンゴ酸、粘液酸、酒石酸、パラ−トルエンスルホン酸、グリコール酸、グルクロン酸、マレイン酸、フロ酸、グルタミン酸、安息香酸、アントラニル酸、サリチル酸、フェニル酢酸、マンデル酸、エンボン酸(パモ酸)、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、パントテン酸、ベンゼンスルホン酸(ベシラート)、ステアリン酸、スルファニル酸、アルギン酸、ガラクツロン酸などである)から選択され得る。
【0065】
開示された上記グレリンミメティックは、任意の製薬上許容される塩の形態で存在し得るが、アナモレリンに関しては、塩酸塩が好ましく、イパモレリンに関しては、二酢酸塩が好ましい。主要な活性成分(例えば、トリプタン)も、任意の製薬上許容される塩の形態で存在し得る。同様に、該活性成分は、それらの水和物(例えば、半水和物、一水和物、二水和物、三水和物、四水和物など)として、及び、溶媒和物として、存在し得る。
【実施例】
【0066】
例証
同時に投与された場合における経口投与された本発明のグレリンミメティックであるアナモレリン塩酸塩(100mg/用量;塩の重量基準)が経口投与されたスマトリプタンの生物学的利用能に及ぼす影響について評価するために、スマトリプタンコハク酸塩(25mg/用量)を用いて薬物動態学的試験を行った。その試験は、オープンラベルフォーマットで実施された年齢18〜45歳の健康で正常な22人の男女における2期クロスオーバー試験であった。スマトリプタンは1錠の経口用錠剤として投与され、アナモレリンは425mg経口用カプセル剤として投与され、全ての薬剤は200mLの水を用いて与えられた。被検者は、一晩絶食させ、期間の間に7日間のウオッシュアウト期間を与えた。投与の10分前並びに投与の15分後、30分後、45分後、1時間後、1.25時間後、1.5時間後、2時間後、2.5時間後、3時間後、3.5時間後及び4時間後に、結晶PKサンプルを採取した。全てのサンプルは、有効な生物分析法(LC−MS−MS)を用いて分析した。結果は、下記表1及び表2に記載されている。
【表1】

【表2】

【0067】

別の実施形態
上述の記載から、本明細書中に記載されている本発明をさまざまな用法及び条件に適合させるために、そのような本発明に対して変更及び修正を加えることができるということは明らかであろう。そのような実施形態も、下記「特許請求の範囲」の範囲内に含まれる。
【0068】
本明細書中の可変部分の定義において要素のリストが挙げられている場合、その要素のリストは、単一の要素としての又は記載されている要素の組合せ(又は、副組合せ)としてのそのような可変部分の定義を包含する。本明細書中において実施形態が挙げられている場合、その挙げられている実施形態は、単一の実施形態としての又は別の実施形態若しくはその一部分との組合せとしてのそのような実施形態を包含する。
【0069】
本明細書中で引用されている全ての参考文献(これは、特許、特許出願及び公開された特許出願を包含する)は、その各々がさらに個別的に参照により本明細書中に組み込まれているかいないかにかかわらず、参照によりその全体を本明細書に組み入れる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
セロトニン5−HT1B/1D受容体アゴニスト、トリプタミン誘導体、エルゴリン誘導体、非ステロイド性抗炎症薬及び鎮痛薬から選択される第2の分子の吸収速度を高める方法であって、偏頭痛を有している対象者に有効量のグレリンミメティック及び該第2の分子を投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
偏頭痛を有している対象者を治療する方法であって、該対象者に有効量のグレリンミメティック及び第2の分子(ここで、該第2の分子は、セロトニン5−HT1B/1D受容体アゴニスト、トリプタミン誘導体、エルゴリン誘導体、非ステロイド性抗炎症薬及び鎮痛薬から選択される)を投与することを含む、前記方法。
【請求項3】
前記偏頭痛が、胃内容鬱滞、吐き気又は嘔吐を特徴とする胃腸の不調を伴っている、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
偏頭痛の合併症又は症状を治療する方法(ここで、該合併症又は症状は、胃内容鬱滞、吐き気、嘔吐、羞明及び音声恐怖症から選択される)であって、該合併症又は症状のうちの1種類以上を患っている対象者に有効量のグレリンミメティック及び第2の分子(ここで、該第2の分子は、セロトニン5−HT1B/1D受容体アゴニスト、トリプタミン誘導体、エルゴリン誘導体、非ステロイド性抗炎症薬及び鎮痛薬から選択される)を投与することを含む、前記方法。
【請求項5】
前記グレリンミメティックが、アナモレリン、イパモレリン、1141又はそれらの製薬上許容される塩である、請求項1、2、3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記グレリンミメティックが、アナモレリン遊離塩基の重量に基づいて約20〜約200mgの用量で投与されるアナモレリン又はその製薬上許容される塩である、請求項1、2、3又は4に記載の方法。
【請求項7】
前記グレリンミメティックが、イパモレリン遊離塩基の重量に基づいて約0.5〜約40.0mgの用量で投与されるイパモレリン又はその製薬上許容される塩である、請求項1、2、3又は4に記載の方法。
【請求項8】
前記セロトニン5−HT1B/1D受容体アゴニストが、スマトリプタン、リザトリプタン、ナラトリプタン、ゾルミトリプタン、エレトリプタン、アルモトリプタン、フロバトリプタン及びエルゴタミンからなるリストから選択される、請求項1、2、3又は4に記載の方法。
【請求項9】
前記トリプタミン誘導体が、スマトリプタン、リザトリプタン、ナラトリプタン、ゾルミトリプタン、エレトリプタン、アルモトリプタン及びフロバトリプタンからなるリストから選択される、請求項1、2、3又は4に記載の方法。
【請求項10】
前記エルゴリン誘導体が、リセルグ酸、エルゴペプチン及びクラビンからなるリストから選択される、請求項1、2、3又は4に記載の方法。
【請求項11】
前記エルゴリン誘導体が、エルギン、エルゴメトリン、メチルエルゴメトリン、メチルセルギド、リセルギド、エルゴタミン、エルゴクリスチン、エルゴコルニン、エルゴクリプチン、ブロモクリプチン、エルゴバリン、アグロクラビン、エリモクラビン、リセルゴール、ペルゴリド及びリスリドからなるリストから選択される、請求項1、2、3又は4に記載の方法。
【請求項12】
前記非ステロイド性抗炎症薬が、サリチレート類、アリールアルカン酸類、N−アリールアントラニル酸類(フェナム酸類)、ピラゾリジン誘導体、オキシカム類、COX−2阻害薬及びスルホンアニリド類からなるリストから選択される、請求項1、2、3又は4に記載の方法。
【請求項13】
前記非ステロイド性抗炎症薬が、アスピリン、アモキシプリン(amoxiprin)、ベノリラート、サリチル酸コリンマグネシウム、ジフルニサル、ファイスラミン(faislamine)、サリチル酸メチル、サリチル酸マグネシウム、サリチル酸サリチル、ジクロフェナク、アセクロフェナク、アセメタシン、ブロムフェナク、エトドラク、インドメタシン、ナブメトン、スリンダク、トルメチン、イブプロフェン、カルプロフェン、フェンブフェン、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、ケトロラク、ロキソプロフェン、ナプロキセン、オキサプロジン、チアプロフェン酸、スプロフェン、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フェニルブタゾン、アザプロパゾン、メタミゾール、オキシフェンブタゾン、スルフィンピラゾン、オキシカム類、ピロキシカム、ロルノキシカム、メロキシカム、テノキシカム、セレコキシブ、エトリコキシブ、ルミラコキシブ、パレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ及びニメスリドからなるリストから選択される、請求項1、2、3又は4に記載の方法。
【請求項14】
前記鎮痛薬が、アセトアミノフェンである、請求項1、2、3又は4に記載の方法。
【請求項15】
有効量のグレリンミメティック及び第2の分子(ここで、該第2の分子は、セロトニン5−HT1B/1D受容体アゴニスト、トリプタミン誘導体、エルゴリン誘導体、非ステロイド性抗炎症薬及び鎮痛薬から選択される)を含んでいる、医薬組成物。
【請求項16】
前記グレリンミメティックが、アナモレリン、イパモレリン、1141又はそれらの製薬上許容される塩である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記グレリンミメティックが、アナモレリン遊離塩基の重量に基づいて約20〜約200mgの用量で投与されるアナモレリン又はその製薬上許容される塩である、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
前記グレリンミメティックが、イパモレリン遊離塩基の重量に基づいて約0.5〜約40mgの用量で投与されるイパモレリン又はその製薬上許容される塩である、請求項15に記載の方法。


【公表番号】特表2012−519184(P2012−519184A)
【公表日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552215(P2011−552215)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【国際出願番号】PCT/US2010/025725
【国際公開番号】WO2010/099522
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(509227632)ヘルシン セラピューティクス(ユー.エス.),インコーポレイティド (6)
【Fターム(参考)】