説明

ケイ化モリブデンタイプの発熱体を製造する方法及び発熱体

【課題】本発明は、ケイ化モリブデン及びこの基本材料の合金から本質的に構成される発熱体の製造のための方法に関する。
【解決手段】本発明は、それ自体既知の方法で、アルミニウムケイ化モリブデンMo(Si1−yAlをベントナイトクレーと混合することによりMo(Si1−xAl及びAlを実質的に含有する材料を生成し、しかも、該ベントナイトクレーは不純な又は汚染性の物質を含有するようにされ、該ケイ化モリブデンは、該不純物と合金化されることができなく且つケイ化モリブデンの結晶格子の対称性は、2000ppm未満での組み合わせ含有量で該不純物と維持されることを特徴とする。本発明はまた、発熱体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はケイ化モリブデンタイプの発熱体(加熱素子)(heating element)を製造する方法に関し、そしてまた発熱体に関する。
【背景技術】
【0002】
ケイ化モリブデンタイプの電気抵抗素子は、スウェーデン特許明細書第0003512−1号及び同第0004329−9号において記載されている。その特許明細書第0003512−1号に従えば、発熱体(heating element)の抵抗材料は、有害物(pest)の形成が本質的に防止される程度までアルミニウム含有させているMo(Si1−xAlを含んでいる。
【0003】
そのような材料が400〜600℃の温度範囲で操作されるとき、有害物が形成されないか、又はほんの僅かな量の有害物が形成されることが分かった。有害物は、MoSi及びOからMoOの形成に基づいて形成される。
【0004】
有害物の形成が有意義に減少されるか又は排除される理由は、該発熱体の表面上でのAlの形成に起因している。
1つの好ましい態様に従えば、xは0.2〜0.6の範囲に存在するようにされる。
【0005】
他の特許明細書第0004329−9号は、発熱体が高温で操作される、ケイ化モリブデン及びこの基本物質の合金から主としてなる、該発熱体の有用な寿命期間を増大させる方法を教示している。
【0006】
この特許明細書に従えば、発熱体は、その発熱体の表面上に酸化アルミニウムの安定なゆっくり成長する層を維持するのに十分である程度までにアルミニウムを含有させている。
【0007】
好ましい態様に従えば、その発熱体材料は、xが0.2〜0.6の範囲にあるMo(Si1−xAlを含有させている。
【0008】
アルミニウムを含有するケイ化モリブデンタイプの材料は、低温度及び高温度の両方での改良された腐食性を保持することが分かった。
【0009】
そのような材料は、しばしばMoSi粉末を、アルミノケイ酸塩のような酸化物原材料と混合することにより生成される。原材料がベントナイトクレーである場合、MoSi及び15〜20体積%に相当する割合のケイ酸アルミニウムを含有する濃密な材料を生ずる、いわゆる溶融相焼結に寄与する比較的に低い融点が得られる。
【0010】
ベントナイトクレーは、異なる組成を有する。或る種のベントナイトは、60重量%のSiOを包含する一方で、或る種のものは70重量%より少々多くのSiOを含有する。Al含有量は変化するけれども、通常は13〜20重量%にある。融点は約1200〜1400℃で変化する。
【0011】
主にSiOを含有するベントナイトクレーは、Mo(Si1−xAlを含有する発熱体の製造において使用されることができる。Al−合金化ケイ化物を用いて焼結する場合、Siに対するよりAlに対する酸素のいっそう大きな親和性は、Alがケイ化物を離れ、そして酸化物相により吸収される結果として、Siがケイ酸アルミニウムを離れて、該ケイ化物に入る化学反応が起こる。この交換反応はまた、複合材料の改良された焼結性質に寄与する。最終材料はAlが実質的に激減しているMo(Si1−xAlを含有し、そこで、酸化物相は本質的にAlを含有する。
【0012】
標準の製造方法は、粉末形での、モリブデン、ケイ素及びアルミニウムを混合し、通常、ガス遮蔽雰囲気下に粉末混合物を焼成することを包含する。これは、前記交換反応の結果としてyがxより大である材料Mo(Si1−yAlのケーキを生ずる。その反応は発熱性である。次に、そのケーキは通常1〜20μmの水準での微粒子寸法に砕かれ且つ挽いて粉末化される。この粉末は、湿潤セラミック材料を形成するようにベントナイトクレーと混合される。その材料は、直径が後での発熱体の直径に相当する棒状形に押し出され且つ乾燥される。次にその材料は、包含している成分の溶融温度を超える温度で焼結される。
【0013】
しかしながら、この種の発熱体に関して欠点が存在する。その問題は、その発熱体の表面上に形成される酸化物、即ちAlが、循環操作において、ときには、発熱体の表面から剥ぎ取られるか又は薄片になって剥がれ落ちる、即ち、ゆるくなって剥がれる。
【0014】
酸化物の剥がれは、発熱体の外側表面をいっそう迅速に貧弱化させる、アルミニウムの連続した酸化に対してのより貧弱な保護を提供する。さらに、酸化物の剥がれは、そのような発熱体を有するオーブン中での加熱処理された生成物の性能及び外観が重大に損傷される危険性と共に、発熱体が入れられているオーブンを汚染する可能性がある。このことは、加熱処理においてのそのような発熱体の使用を制限する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
この問題は本発明により解決される。
【0016】
こうして、本発明はケイ化モリブデンタイプ及びこの基本材料の合金から実質的に構成される発熱体を製造する方法に関し、その方法は、それ自体既知の方法でアルミノケイ化モリブデン(Mo(Si1−yAl)をベントナイトクレーと混合することによりMo(Si1−xAlとAlとを主として含有する材料を生成し、しかも、該ベントナイトクレーは不純物を包含するようにされ、該ケイ化モリブデンは該不純物と合金化されることができなく、且つ該ケイ化モリブデンの結晶格子の対称性は、2000ppmの組み合わされた含有量で該不純物と保持されることを特徴とする。
【0017】
本発明はまた、特許請求の範囲の請求項7に記載された有意義な特徴を有する種類の発熱体に関する。
本発明は以下に詳細に記載されるだろう。
【0018】
本発明に従えば、ケイ化モリブデンタイプ及びこの基本材料の合金から主としてなる発熱体は、上記方法により原則として製造される。かくして、Alを含有するベントナイトクレーと混合される本質的にMo(Si1−yAlを含有する粉末が生成される。
【0019】
本発明に従えば、ベントナイトクレーは不純物を含み、該ケイ化モリブデンは該不純物と合金化されることができなく、その結果、結晶格子の対称性は2000ppm未満の組み合わせ含有量で維持されるであろう。これらの低い不純物含有量を有するベントナイトクレーは、既知の化学的清浄化方法の助けをかりてベントナイトクレーを精製することにより生成することができる。
【0020】
この方法とは対照的に、結晶格子の対称性を変化させることなしに材料Mo(Si1−xAlにおいてモリブデンをRe又はWと部分的に置換することが可能である。
【0021】
本発明の1つの好ましい態様に従えば、不純な物質Mg、Ca、Fe、Na及びKの組み合わされた含有量が2000ppmより低いようにされる。
本発明の他の好ましい態様に従えば、前記不純な物質の含有量は1000ppmより低いようにされる。
【0022】
そのような低い汚染物含有量で、室温〜高温、例えば1500℃での循環操作後、剥がれない酸化物が得られることが、驚くべきことに見い出された。
【0023】
1つの態様に従えば、xは0.4〜0.6の範囲にあるようにされる。
1つの好ましい態様に従えば、xは0.45〜0.55の範囲にあるようにされる。
【0024】
このようにして、本発明は、本明細書の導入部分に記載された問題を解決し、そしてオーブン中で処理される材料に有害でなしに、オーブン中で有益に用いられることを当該発熱体に可能にさせる。
【0025】
種々の変更が特許請求の範囲の範囲内で行われることができるので、本発明は上記態様に限定されるべきとは考えられないだろう。
【0026】
本発明に関連して、更に以下の内容を開示する。
(1)それ自体既知の方法で、アルミニウムケイ化モリブデンMo(Si1−yAlをベントナイトクレーと混合することにより実質的にMo(Si1−xAlびAlを含有する材料を生成させることを特徴とし、しかも、該ベントナイトクレーは不純な物質を含有するようにされ、ケイ化モリブデンは該不純な物質と合金化されることができず、そして該ケイ化モリブデンの結晶格子の対称性は、2000ppm未満の組み合わされた含有量で該不純な物質と維持されることを特徴とする、ケイ化モリブデンタイプ及びこの基本材料の合金から本質的に構成される発熱体を製造する方法。
(2)不純物Mg、Ca、Fe、Na及びKの組み合わされた含有量が2000ppm未満であるようにされることを特徴とする、(1)に記載の方法。
(3)前記不純物の含有量が1000ppm未満であるようにされることを特徴とする、(1)又は(2)に記載の方法。
(4)xが0.4〜0.6の範囲にあるようにされることを特徴とする、(1)、(2)又は(3)に記載の方法。
(5)xが0.45〜0.55の範囲にあるようにされることを特徴とする、(1)、(2)又は(3)に記載の方法。
(6)材料Mo(Si1−xAlにおけるモリブデンをRe又はWと部分的に置換させることを特徴とする、(1)、(2)、(3)又は(4)に記載の方法。
(7)ケイ化モリブデンタイプ及びこの基本材料の合金から実質的に構成される電気発熱体において、前記発熱体が材料Mo(Si1−xAl及びAlから主として構成されていることを特徴とし、該材料は不純な物質を含み、該ケイ化モリブデンは該不純な物質と合金化されることができなく、且つ該ケイ化モリブデンの結晶格子の対称性は、2000ppm未満の組み合わされた含有量で該不純な物質と維持されていることを特徴とする電気発熱体。
(8)不純物Mg、Ca、Fe、Na及びKの組み合わされた含有量が2000ppm未満であるようにされることを特徴とする、(7)に記載の発熱体。
(9)前記材料の不純物含有量が1000ppm未満であることを特徴とする、(7)又は(8)に記載の発熱体。
(10)xが0.4〜0.6の範囲にあることを特徴とする、(7)、(8)又は(9)に記載の発熱体。
(11)xが0.45〜0.55の範囲にあるようにされることを特徴とする、(7)、(8)又は(9)に記載の発熱体。
(12)材料Mo(Si1−xAlにおけるモリブデンがRe又はWと部分的に置き換えられることを特徴とする、(7)、(8)、(9)、(10)又は(11)に記載の発熱体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末形での、モリブデン、ケイ素及びアルミニウムを混合して、粉末混合物を形成し;
前記粉末混合物を焼成して、yがxより大であるアルミニウムケイ化モリブデンMo(Si1−yAlのケーキを形成し;
前記ケーキを1〜20μmの微粒子寸法を有するように砕き且つ挽いて微粒子を形成し;
前記アルミニウムケイ化モリブデンMo(Si1−yAlの前記微粒子を、湿潤セラミック材料を形成するように、ベントナイトクレーと混合し、しかも、得られるケイ化モリブデンの結晶格子の対称性が維持されるように、該ベントナイトクレーは1000ppm未満の組み合わされた含有量でMg、Ca、Fe、Na及びKの中の少なくとも1つの不純な物質を含有するようにされ、前記得られるケイ化モリブデンは該不純な物質と合金化されることができず;
前記湿潤セラミック材料を棒状形に押し出し且つ乾燥させ、該棒状形の直径は、後で得られる発熱体の直径に相当し;次に
前記棒を、包含している成分の溶融温度を超える温度で焼結して、xが0.45〜0.55の範囲にあるMo(Si1−xAl及びAlを実質的に含有する材料を生成させる:
工程を包含する、
Mo(Si1−xAl及びAlから本質的に構成される発熱体を製造する方法。
【請求項2】
材料Mo(Si1−xAlにおけるモリブデンをRe又はWと部分的に置換させることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
電気発熱体において、前記発熱体が、xが0.45〜0.55の範囲にある材料Mo(Si1−xAl及びAlから主として構成されていることを特徴とし、ケイ化モリブデンの結晶格子の対称性が維持されるように、該材料は1000ppm未満の組み合わされた含有量でMg、Ca、Fe、Na及びKの中の少なくとも1つの不純な物質を含み、該ケイ化モリブデンMo(Si1−xAlは該不純な物質と合金化されることができないことを特徴とする電気発熱体。
【請求項4】
材料Mo(Si1−xAlにおけるモリブデンがRe又はWと部分的に置き換えられることを特徴とする、請求項3に記載の発熱体。

【公開番号】特開2011−20920(P2011−20920A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−176887(P2010−176887)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【分割の表示】特願2003−583974(P2003−583974)の分割
【原出願日】平成15年3月6日(2003.3.6)
【出願人】(505277521)サンドビック インテレクチュアル プロパティー アクティエボラーグ (284)
【Fターム(参考)】