説明

ケイ酸塩でコーティングされた酸化チタン揮発性有機化合物分解材料

【課題】ケイ酸塩でコーティングされたケイ酸塩−酸化チタン揮発性有機化合物分解材料を提供する。
【解決手段】酸化チタンからなる表面を持つ基材の表面に、無機ケイ酸塩がコーティングされた無機ケイ酸塩−酸化チタン複合体を製造する方法であって、ケイ素化合物水溶液と、アルミニウム化合物あるいは遷移金属化合物水溶液を混合し、前駆体懸濁液を調製し、上記工程で副生成した塩を除去し、上記前駆体懸濁液に基材を入れ、水熱反応を行うことにより、表面に無機ケイ酸塩を被覆した酸化チタン複合体を合成する、ことからなる無機ケイ酸塩−酸化チタン揮発性有機化合物分解材料の製造方法、及びその製品。
【効果】多孔質ケイ酸塩−酸化チタン複合材料からなる揮発性有機化合物分解材料を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケイ酸塩でコーティングされた酸化チタンからなる揮発性有機化合物分解材料に関するものであり、更に詳しくは、水熱反応を利用して、酸化チタンからなる表面を持つ基材の表面に、化学組成や細孔構造の制御された無機ケイ酸塩をコーティングした無機ケイ酸塩−酸化チタン複合材料からなる揮発性有機化合物分解材料を合成する方法及びその複合材料に関するものである。
【0002】
本発明は、酸化チタンを基材として利用した光触媒の技術分野において、水熱反応を用いて、酸化チタンの表面に、無機ケイ酸塩膜がコーティングされた酸化チタン複合材料からなる揮発性有機化合物分解材料(以下、酸化チタン揮発性有機化合物分解材料と記載することがある。)を合成する新規合成方法及びその製品を提供するものである。
【0003】
本発明の方法によって合成された酸化チタン複合材料は、耐水性、耐熱性、耐腐食性、イオン交換能や吸着能に優れ、例えば、その高比表面積を利用した、有害汚染物質吸着剤、脱臭剤、触媒担体、居室内や車内等の生活環境の湿度を自律的に制御する湿度調節材、悪臭の除去や空気中の有害物質又は汚れの分解除去、廃水処理や浄水処理、あるいは水の殺菌や殺藻等を行うための環境浄化材料として使用可能である。
【0004】
本発明は、有機繊維やプラスチック等に添加練り込み等に応用可能な、化学組成や細孔構造の制御されたケイ酸塩でコーティングされた酸化チタン揮発性有機化合物分解材料の新規製造方法、及び該方法で合成された新しいタイプの光触媒材料を合成し、提供するものである。
【背景技術】
【0005】
近年、住宅を高気密化することや、化学物質を放出する建材や内装材を使用することにより、新築や改築後の住宅やビル等で、これら化学物質により、室内空気が一定の濃度レベル以上に汚染され、居住者が、様々な体調不良を訴える事例が報告されている。それらの症状は、多様で、症状発生の仕組みをはじめ、未解明の部分も多く、また、様々な複合要因が考えられることから、「シックハウス症候群」と呼ばれている。
【0006】
シックハウス症候群は、医学的に確立した単一の病気というよりも、居住者の健康を維持するという観点から、問題のある住宅において見られる健康障害の総称として使われる。アセトアルデヒドは、シックハウス症候群との関連性が疑われていることから、厚生労働省では、アセトアルデヒドの室内空気濃度の指針値を、0.048mg/m(0.03ppm)と定めている。
【0007】
これは、アセトアルデヒドをラットに吸入させた実験における鼻腔嗅覚上皮の過形成(ある器官を構成する組織の細胞の数が通常より多くなること)を根拠にしている。変異原性に関しては、ヒトリンパ球を使った染色体異常試験において陽性を示す結果が報告されている。発がん性については、ラットに、1350mg/mの濃度のアセトアルデヒドを、28ヵ月間、空気中から吸入させた実験では、鼻腔上皮や上気道上皮における変性が報告されている。
【0008】
従来、化学物質の室内濃度低減策としては、換気や発生源の除去、吸着剤や脱臭機の使用等が基本として考えられ、例えば、酸やアルカリ等の吸収液や吸着剤等に、それらを吸収あるいは吸着させる方法が良く行われている。しかし、これらの方法は、廃液や使用済みの吸着剤の処理が問題であり、それにより、二次公害を起こす恐れがある。また、芳香剤を使用して、悪臭を隠ぺいする方法もあるが、この種の方法は、芳香剤の臭気が食品に移動したり、あるいは芳香剤自体の臭いによる被害が出る恐れがある等の欠点を持っている。
【0009】
一方、近年、酸化チタン光触媒により、有機物を分解、除去する方法が種々研究されている。酸化チタン光電極による水の光分解は、発見者の名前に因んで、本多・藤嶋効果と呼ばれている。この光触媒反応は、太陽エネルギーを利用する低環境負荷型化学プロセスとしての利用が期待されている。酸化チタンに光を照射すると、強い還元作用を持つ電子と強い酸化作用を持つ正孔とが生成し、接触してくる分子種を酸化還元作用により分解する。
【0010】
酸化チタンのこのような作用、すなわち光触媒作用を利用することによって、例えば、水中に溶解している有機溶剤、農薬や界面活性剤等の環境汚染物質、空気中の有害物質や悪臭等を分解除去することができる。
【0011】
この方法は、酸化チタンと光を利用するだけで繰り返し利用することができ、反応生成物は、無害な炭酸ガス等であり、微生物を用いる生物処理等の方法に比べて、温度、pH、ガス雰囲気、毒性等の反応条件の制約が少ない。
【0012】
しかも、この方法は、生物処理法では処理しにくい有機ハロゲン化合物や有機リン化合物のようなものでも容易に分解・除去できるという長所を持っている。この方法は、既に、滅菌、防汚、消臭等の分野で実用化されており、更に、燃焼排ガス中の窒素酸化物の除去、住宅内の揮発性有害有機化合物の分解、廃水浄化等の環境浄化への応用が検討されている。光触媒による室内空気の浄化では、揮発性の有機物が、アセトアルデヒドを経由して分解するため、アセトアルデヒド分解能力を把握することは、重要な課題である。
【0013】
しかし、これまで行われてきた酸化チタン光触媒による有機物の分解、除去の研究では、一般に、光触媒として、酸化チタンの粉末がそのまま用いられており、使用後の光触媒の回収が困難であることや、取扱いや使用が難しいこと等の問題があり、なかなか汎用性のある実用化技術を開発することができなかった。
【0014】
そこで、例えば、酸化チタン光触媒を、取扱いの容易な繊維や、プラスチックス等の媒体に練り込んで使用すること等が試みられた。しかし、その強力な光触媒作用によって、有害有機物や、環境汚染物質だけでなく、繊維や、プラスチック自身も分解され、それらが極めて劣化しやすいため、酸化チタン光触媒は、繊維や、プラスチックスに練り込んだ形での使用は、不可能であった。また、酸化チタン光触媒を、抗菌、抗かび材料として用いる場合、流水下等では、菌が光触媒に付着しにくいため、効果が発揮しにくく、効率が悪いという問題があった。
【0015】
従来、先行技術として、光触媒とアルミノケイ酸塩等を組み合わせることが種々行われており、例えば、光触媒含有アルミノ珪酸塩粒子を製造する方法(特許文献1)、光触媒粒子を光不活性物質(珪酸、アルミニウム等)からなる多孔質壁で内包した光触媒粉体(特許文献2)、チタニア粒子の表面に光触媒として不活性なセラミックス(アルミナ、シリカ等)を島状に担持した光触媒粒子(特許文献3)、が提案されている。
【0016】
また、他の先行技術として、例えば、光触媒含有アルミノ珪酸塩粒子とその製造方法(特許文献4)、無機コーティング剤(特許文献5)、ケイ酸塩含有シート(特許文献6)、光触媒性親水性コート剤(特許文献7)、防汚機能を有する目地体(特許文献8)、等が提案されている。
【0017】
しかし、従来、水熱反応を利用して、ケイ酸塩でコーティングされた酸化チタン揮発性有機化合物分解材料を合成することは、行われておらず、また、例えば、水熱反応を用いて、ケイ酸塩高分子重合体であるアロフェン又はイモゴライトを担持させた酸化チタン揮発性有機化合物分解材料を合成することも全く知られていない。
【0018】
光触媒作用により環境中の有害物質を効率良く分解除去するためには、汚染物質の触媒表面近傍での反応と、高い比表面積を有することが望ましい。例えば、Degussa製二酸化チタン(P25)は、一次粒子の平均粒子径が、30nm程度であるにも関わらず、比表面積は、50m/g程度であり、汚染物質の完全無害化には、長時間を必要とする。
【0019】
環境を汚染する嵩高い有機物分子の吸着担持には、高比表面積、かつメソ細孔を有する固体の使用が有効であり、また、大気系における極性分子の捕捉には、固体マトリックスの電荷分布も制御できることが望ましい。例えば、火山噴出物の風化鉱物として、地球表層中に産出するケイ酸塩群は、その特異な形状に起因する微細構造により、高比表面積や高細孔容積及び選択的イオン交換能を有することが明らかとなっている。
【0020】
【特許文献1】特開2001−97713号公報
【特許文献2】特開平10−5598号公報
【特許文献3】特開平9−225319公報
【特許文献4】特開平11−076835号公報
【特許文献5】特開平11−092689号公報
【特許文献6】特開平11−010781公報
【特許文献7】特開2001−089706号公報
【特許文献8】特開2001−026992号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、悪臭の除去や、空気中の有害物質又は汚れの分解除去、廃水処理や浄水処理、抗菌や抗かび等、環境の浄化を効果的、かつ経済的で安全に行うことができ、しかも、有機繊維やプラスチック等の媒体に練り込み等により添加して使用した場合でも、媒体の劣化を生ずることなく、耐久性の面からも優れた特性を有する、新しい環境浄化材料及びその製造方法を開発することを目標として鋭意研究を重ねた。
【0022】
その結果、本発明者らは、光触媒として、不活性で、雑菌等を吸着する性質を持ち、環境親和材料として有用であり、かつ多孔質であり、化学組成や細孔構造の制御された合成ケイ酸塩高分子重合体を、酸化チタンの回りに被覆することにより、この酸化チタンが持つ光触媒機能を損なうことなく、媒体等に添加して使用する場合の耐久性を高めることができるとの新規知見を見出し、更に研究を重ねて、本発明を完成するに至った。
【0023】
本発明は、酸化チタンからなる表面(酸化チタン表面)を持つ基材の表面に、化学組成や細孔構造の制御された多孔質無機ケイ酸塩をコーティングした新規酸化チタン揮発性有機化合物分解材料の製造方法及びその揮発性有機化合物分解材料を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)酸化チタン表面を持つ基材の表面に、無機ケイ酸塩がコーティングされた無機ケイ酸塩−酸化チタン複合材料からなる揮発性有機化合物分解材料を製造する方法であって、
1)ケイ素化合物水溶液と、アルミニウム化合物、あるいは遷移金属化合物水溶液を混合し、前駆体懸濁液を調製する、
2)上記工程で副生成した塩を除去する、
3)上記前駆体懸濁液に、基材を入れ、水熱反応を行う、
4)上記1)〜3)により、基材表面に無機ケイ酸塩を被覆した酸化チタン揮発性有機化合物分解材料を合成する、
ことを特徴とする無機ケイ酸塩−酸化チタン揮発性有機化合物分解材料の製造方法。
(2)基材が、酸化チタン粒子である、前記(1)に記載の揮発性有機化合物分解材料の製造方法。
(3)無機ケイ酸塩が、アロフェン、又はイモゴライトの非晶質体ないし準結晶質体からなるケイ酸塩である、前記(1)に記載の揮発性有機化合物分解材料の製造方法。
(4)酸化チタンの結晶形が、アナターゼである、前記(1)に記載の揮発性有機化合物分解材料の製造方法。
(5)溶液濃度が、それぞれ1mmol/l〜10000mol/lのケイ素化合物溶液と、1mmol/l〜10000mol/lのアルミニウム化合物、あるいは遷移金属化合物溶液を混合する、前記(1)に記載の揮発性有機化合物分解材料の製造方法。
(6)ケイ素のアルミニウム、あるいは遷移金属化合物に対するモル比率が、0.1〜5.0である、前記(1)に記載の揮発性有機化合物分解材料の製造方法。
(7)ケイ素化合物水溶液と、アルミニウム化合物、あるいは遷移金属化合物水溶液を、分速1ml〜10000lで同時混合、あるいは両溶液を急速混合して、前駆体懸濁液を調製する、前記(1)に記載の揮発性有機化合物分解材料の製造方法。
(8)前駆体懸濁液の液性を、pH3からpH8に調整する、前記(6)に記載の揮発性有機化合物分解材料の製造方法。
(9)凝集阻止剤として、ポリエチレングリコール、ポリビニールアルコール又は界面活性剤の水溶性、あるいは非水溶性の試剤を添加する、前記(6)に記載の揮発性有機化合物分解材料の製造方法。
(10)調製した前駆体懸濁液を、0.1〜72時間振盪した後、反応副生成物である塩を除去する、前記(1)に記載の揮発性有機化合物分解材料の製造方法。
(11)前駆体懸濁液に、酸性溶液を添加して、pH3から6の弱酸性に調整し、生成されるケイ酸塩の形態を制御する、前記(1)に記載の揮発性有機化合物分解材料の製造方法。
(12)反応温度20〜150℃、反応時間12〜240時間の条件で、懸濁液の水分が蒸発しない方法で、水熱反応を行う、前記(1)に記載の揮発性有機化合物分解材料の製造方法。
(13)反応終了後の懸濁液に、アルカリ性水溶液を添加して、溶液の液性を、pH8〜12に調整し、生成物を、ゲル状物質として凝集させて回収する、前記(1)に記載の揮発性有機化合物分解材料の製造方法。
(14)窒素吸着による比表面積が、少なくとも10m/gである複合材料を合成する、前記(1)に記載の揮発性有機化合物分解材料の製造方法。
(15)酸化チタン表面を持つ基材の表面に、無機ケイ酸塩を水熱合成反応で被覆した無機ケイ酸塩−酸化チタン複合材料からなる揮発性有機化合物分解材料であって、
上記複合材料は、表面が、光触媒として不活性なケイ酸塩膜によって被覆されており、該ケイ酸塩膜が、表面に細孔を有し、この細孔の底には、光触媒として活性な酸化チタンが露出した状態となっている多孔質構造を有し、窒素吸着による比表面積が、少なくとも10m/gであることを特徴とする無機ケイ酸塩−酸化チタン揮発性有機化合物分解材料。
(16)無機ケイ酸塩が、アロフェン、又はイモゴライトの非晶質体ないし準結晶質体からなるケイ酸塩である、前記(15)に記載の無機ケイ酸塩−酸化チタン揮発性有機化合物分解材料。
【0025】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、酸化チタン表面を持つ基材の表面に、無機ケイ酸塩がコーティングされた無機ケイ酸塩−酸化チタン複合材料からなる揮発性有機化合物分解材料を製造する方法であって、ケイ素化合物水溶液と、アルミニウム化合物、あるいは遷移金属化合物水溶液を混合し、前駆体懸濁液を調製し、上記工程で副生成した塩を除去し、上記前駆体懸濁液に、基材を入れ、水熱反応を行うことにより、基材表面に無機ケイ酸塩を被覆した酸化チタン揮発性有機化合物分解材料を合成する、ことを特徴とするものである。
【0026】
また、本発明は、酸化チタン表面を持つ基材の表面に、無機ケイ酸塩を水熱合成反応で被覆した無機ケイ酸塩−酸化チタン複合材料からなる揮発性有機化合物分解材料であって、上記複合材料は、表面が、光触媒として不活性なケイ酸塩膜によって被覆されており、該ケイ酸塩膜が、表面に細孔を有し、この細孔の底には、光触媒として活性な酸化チタンが露出した状態となっている多孔質構造を有し、窒素吸着による比表面積が、少なくとも10m/gであることを特徴とするものである。
【0027】
本発明では、酸化チタンをコーティングするための出発原料として、ケイ素化合物と、アルミニウム化合物、あるいは遷移金属化合物が用いられる。ケイ素源として使用される試剤は、モノケイ酸であれば良く、具体的には、例えば、オルトケイ酸ナトリウム、オルトケイ酸アルキル、メタケイ酸ナトリウム、無定形コロイド状二酸化ケイ素(エアロジル等)、等が好適なものとして挙げられる。
【0028】
これらのケイ酸化合物は、1種又は2種以上を併用して使用することができる。上記ケイ酸塩分子集合体と結合させるアルミニウム源としては、アルミニウムイオンであれば良く、具体的には、例えば、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、アルミニウムイソプロポキシド等のアルミニウムアルキル化合物、等のアルミニウム化合物が好適なものとして挙げられる。
【0029】
また、遷移金属化合物源としては、それらのイオンであれば良く、例えば、バナジウム、鉄、タングステン、チタン、コバルト、ニッケル、銅、ジルコニウム等の遷移金属化合物、例えば、それらの塩化物、硫化物、水酸化物、硝酸塩、ならびに有機金属塩等が好適なものとして挙げられる。
【0030】
これらのアルミニウム化合物、あるいは遷移金属化合物は、1種又は2種以上を併用して使用することができる。これらのケイ素源と、アルミニウム源、あるいは遷移金属源は、上記の化合物に制限されるものではなく、それらと同効のものであれば同様に使用することができる。
【0031】
本発明では、酸化チタン、あるいは少なくとも、酸化チタンからなる表面(酸化チタン表面)を持つ基材(担持)が用いられる。この基材としては、好適には、例えば、酸化チタン粒子が例示されるが、これに制限されるものではなく、少なくとも、表面に酸化チタンを有する基材であれば同様に使用することができる。本発明に用いられる担体としての酸化チタン粒子は、光触媒として高性能である点で、酸化チタンの結晶形がアナターゼであることが好ましい。
【0032】
酸化チタンが、ルチルやブルッカイト、非晶質のものは、光触媒としての活性が低いため、あまり好ましくないが、これらを使用することも可能である。また、酸化チタン粒子の粒径は、どのような大きさでも良いが、有機繊維やプラスチック等に練り込むことを前提とする場合は、サブミクロンの小さなものが好ましい。
【0033】
酸化チタン粒子をコーティングするための、これらの出発原料を、水に溶解して、1mmol/l〜10000mol/l濃度のケイ素化合物水溶液と、1mmol/l〜10000mol/l濃度のアルミニウム化合物、あるいはバナジウム、鉄、タングステン、チタン、コバルト、ニッケル、銅、ジルコニウム等の遷移金属化合物等の1種類以上の水溶液を調製する。
【0034】
これらの溶液を、分速1ml〜10000lで同時混合、あるいは両溶液を急速混合して、前駆体懸濁液を調製する。この時のケイ素/アルミニウム、あるいは遷移金属化合物のモル比率は、0.1〜5.0程度が望ましく、化学組成を制御することで、細孔構造が制御される。モル比が0.1を下回ると、副生成物として、ベーマイトやギブサイトを生成し、また、5.0を上回ると、非晶質シリカが副生成物として、多量に生成する。
【0035】
また、前駆体懸濁の液性は、弱酸性から中性付近(pH3からpH8)程度が好ましく、好適にはpH6から8付近である。組成を制御する目的で、前駆体懸濁液のpHが大幅に上記領域よりずれる場合、液性を調製するために、酸成分として、塩酸、硝酸、ならびに硫酸を、予め遷移金属化合物溶液に計算して添加しておくか、又はアルカリ成分として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ成分を、予めケイ素化合物溶液に計算して添加しておくことも有効である。
【0036】
この時、凝集阻止剤として、ポリエチレングリコールやポリビニールアルコール、界面活性剤等の水溶性、あるいは非水溶性の試剤を添加しても良い。このように、アルミニウム/遷移金属溶液に、ケイ素化合物溶液を混合した後に、pHが弱酸性領域であれば、アルカリ性溶液を、0.1から5ml/分の速度で滴下して、pHが中性付近になるように調製して、前駆体を生成させる。
【0037】
この時、前駆体の生成過程に滴下するアルカリ性溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニア水等が挙げられる。勿論、混合段階で溶液の液性が、中性付近のpH6.5から8の領域でも、前駆体は生成される。
【0038】
得られた前駆体懸濁液は、室温で、0.1〜72時間程度振盪した後、反応副生成物である塩を除去する。その除去方法は、特に制限されないが、好適には、例えば、限外濾過、遠心分離機による分離等で行うことができる。脱塩後、除去した量と同量の純水を添加し、良く分散させる。
【0039】
生成されるケイ酸塩の形態を制御するために、この時、必要であれば、その前駆体懸濁液に、酸性溶液を添加して、pHが3から6の弱酸性溶液、好適にはpH3.5から4.5付近になるような、弱酸性に調整する。この時、使用する酸性溶液としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、過塩素酸等が挙げられる。
【0040】
本発明の揮発性有機化合物分解材料の製造方法は、表面が酸化チタンで覆われている基材を、上記ケイ酸塩前駆体用いて、水熱反応を利用することにより、その表面に化学組成や細孔構造の制御された多孔質のケイ酸塩を生成させることを特徴とするものである。
【0041】
所定濃度の出発溶液より調製した前駆体懸濁液に、二酸化チタン粒子を浸積させ、所定の温度で加熱して反応させる。反応温度範囲は、20〜150℃であり、反応時間は、12〜240時間程度である。この時、懸濁液の水分が蒸発しないような方法で、加熱熟成を行えば良く、例えば、反応装置として、オートクレーブをはじめとする密閉容器や、冷却管付きマントルヒーター等を用いることができる。好適には、100℃前後で、48時間程度の条件が望ましい。
【0042】
反応終了後、得られた生成物は、そのまま、あるいは数回純水で洗浄、乾燥を行うことにより、ケイ酸塩でコーティングされた酸化チタン揮発性有機化合物分解材料が合成される。得られた生成物は、無機化合物であるため、耐熱性が高く、比較的過酷な条件下で乾燥させることができるが、乾燥条件としては、常圧下、温度40〜100℃が好適である。
【0043】
この場合は、反応終了後の懸濁液に、アルカリ性水溶液を添加することで、溶液の液性をpH8〜12程度に調整し、生成物をゲル状物質として凝集させて回収しても良い。この時用いられるアルカリ性水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニア水等が挙げられる。更に、その後、アルカリ溶液で凝集したゲル状生成物を、遠心分離器や、半透膜を用いて、回収することもできる。
【0044】
凝集阻止剤を添加している場合は、乾燥終了後、200℃以下の温度でメタノール、エタノール、アセトン、トルエン、キシレン、ベンゼン等の有機溶媒で、1時間以上抽出除去するか、あるいは空気中300〜600℃、保持時間1〜8時間の加熱処理を行うことにより、ケイ酸塩でコーティングされた酸化チタン複合材料が得られる。
【0045】
本発明では、無機ケイ酸塩として、好適には、アロフェン、イモゴライト及びそれらの類似物の非晶質体、ないし準結晶質体が挙げられる。それにより、球状もしくはチューブ状のアロフェン、又はイモゴライトをコーティングした酸化チタン揮発性有機化合物分解材料を合成し、提供することができる。
【0046】
上記方法により、比表面積が、10m/g以上であり、また、反応条件や、コートするケイ素化合物と他の金属元素化合物の比率を制御することにより、コーティング膜の物性を変化させた、ケイ酸塩でコーティングされた酸化チタン複合体を合成することができる。
【0047】
無機ケイ酸塩として、アロフェンを担持させる方法及び条件の一例を示すと、例えば、100mmol/lのオルトケイ酸ナトリウム溶液と、100mmol/lの塩化アルミニウム水溶液を調製する。それぞれを、Si/Al比が0.75となるように秤量し、塩化アルミニウム溶液に、オルトケイ酸ナトリウム溶液を添加する。
【0048】
この時の混合溶液の液性が、pH4〜7付近になることが望ましく、十分に撹拌して、前駆体懸濁液を生成する。この混合後の液性を制御するために、予め無機酸水溶液、あるいは無機塩基水溶液を添加しておいても良い。液性が酸性側に移行するときには、前駆体懸濁液は、透明な溶液へと変化するが、その後、水酸化ナトリウム溶液を、1ml/分程度でゆっくり添加して、液性をpH6〜7付近まで調整すると、前駆体が生成する。
【0049】
前駆体の生成と同時に、塩化ナトリウムが副生成するので、それを遠心分離等を用いて除去し、前駆体を洗浄する。前駆体濃度10mmol/lの懸濁液100mlに、酸化チタン粉末を0.1g添加し、100℃で、48時間、オートクレーブを用いて水熱反応を行うことで、アロフェンをコーティングした酸化チタン揮発性有機化合物分解材料粉末が得られる。
【0050】
次に、無機ケイ酸塩として、イモゴライトを担持させる方法及び条件の一例を示すと、例えば、100mmol/lのオルトケイ酸ナトリウム溶液と、100mmol/lの塩化アルミニウム水溶液を調製し、Si/Al比が、0.70となるように秤量し、塩化アルミニウム溶液に、オルトケイ酸ナトリウム溶液を添加する。この時の混合溶液の液性が、pH4〜7付近になることが望ましく、十分に撹拌して、前駆体懸濁液を生成する。
【0051】
この混合後の液性を制御するために、予め無機酸水溶液、あるいは無機塩基水溶液を添加しておいても良い。液性が酸性側に移行するときには、前駆体懸濁液は、透明な溶液へと変化するが、その後、水酸化ナトリウム溶液を、1ml/分程度でゆっくり添加して、液性をpH6付近まで調整すると、前駆体が生成する。前駆体の生成と同時に、塩化ナトリウムが副生成するので、それを、遠心分離等を用いて除去し、前駆体を洗浄する。
【0052】
前駆体濃度20mmol/lの懸濁液100mlに、酸化チタン粉末を0.1g添加し、その後、塩酸を加えて、pHが4になるように、液性を調節する。100℃で、48時間、オートクレーブを用いて水熱反応を行うことで、イモゴライトをコーティングした酸化チタン揮発性有機化合物分解材料粉末が得られる。アロフェン、イモゴライト両方に関して、コーティング膜の厚さは、出発無機溶液濃度及び反応前駆体濃度によって制御される。
【0053】
上記方法及び条件により、酸化チタンの表面に、アロフェンを担持させた無機ケイ酸塩−酸化チタン揮発性有機化合物分解材料(図1)、及び、酸化チタンの表面にイモゴライトを担持させた無機ケイ酸塩−酸化チタン揮発性有機化合物分解材料(図2)が合成される。
【0054】
アロフェンの場合には、酸化チタン表面に塊状の球状アロフェン粒子凝集体が付着しているのが確認され、イモゴライトの場合には、酸化チタン表面に繊維束が凝集したヒゲ状の塊が付着している様子が確認される。
【0055】
これらの生成物の理化学的性質を、以下に示す。BET法による比表面積及びHK法による平均細孔直径が、それぞれ約200m/g及び約1nm程度であり、基材である酸化チタンに、重量比で10wt%程度のアロフェン、あるいはイモゴライトがコーティングされている材料が生成する。X線回折では、アナターゼのピークと、アロフェンの場合は、そのブロードなピーク、イモゴライトの場合は、その低角度側に、特徴のあるピークが確認される。
【0056】
また、本発明の複合材料は、酸化チタンをコーティングするケイ酸塩膜の骨格内部、あるいは膜表面に、例えば、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、銀、銅、亜鉛等の金属を担持させることが可能であり、それにより、化学物質の酸化分解速度が、更に大きくなり、殺菌、殺藻作用も大きくなる。
【0057】
本発明の酸化チタン揮発性有機化合物分解材料は、その表面のケイ酸塩化合物の多孔質性や、膜厚、形状を、前駆体の組成や温度、浸積時間を変えることによって、制御することができる。ケイ素や他の金属化合物の含有率を低くしたり、反応温度を低くしたり、時間を短くした場合には、基材の表面に、ドメイン状のケイ酸塩が生成したり、ケイ酸塩の薄膜が生成する。ケイ素や、他の金属化合物の含有率を高くしたり、反応温度を高くすることにより、ケイ酸塩の膜厚を厚くすることができる。
【0058】
こうして調製された本発明の酸化チタン揮発性有機化合物分解材料は、表面が、光触媒として不活性なケイ酸塩膜によって被覆され、更に、このケイ酸塩膜は、蛋白質やアミノ酸、細菌、ウイルス等を吸着する作用を有するので、表面のケイ酸塩膜が、水中や空気中の細菌等を吸着することができる。そして、上記複合材料は、上記ケイ酸塩膜が、表面に細孔を有し、この細孔の底には、光触媒として活性な酸化チタンが露出した状態となっている多孔質の構造を有している。
【0059】
そのため、蛍光灯、白熱灯、ブラックライト、UVランプ、水銀灯、キセノンランプ、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ等からの人工光や太陽光等は、この露出部分に照射される。そして、光の照射によって、酸化チタンに生成した電子と正孔との酸化還元作用により、ケイ酸塩膜は、吸着した蛋白質やアミノ酸、細菌、ウイルス等を迅速に、かつ連続的に分解し、除去することができる。
【0060】
また、本発明の酸化チタン揮発性有機化合物分解材料は、例えば、環境浄化材料として使用される。上記環境浄化材料を、繊維や樹脂等の媒体に練り込んで使用した場合、これらの有機化合物材料と接触している部分が、光触媒として不活性なセラミックスであるため、上記有機化合物の分解を生じることがない。
【0061】
そして、この環境浄化材料は、悪臭物質やトルエン、キシレン、酢酸エチル、パラジクロロベンゼン、窒素酸化物、硫黄酸化物等の空気中の有害物質、あるいは水中に溶解している有機溶剤や農薬等の、環境を汚染している有機化合物を吸着し、蛍光灯、白熱灯、ブラックライト、UVランプ、水銀灯、キセノンランプ、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ等からの人工光や太陽光の照射によって、酸化チタンに生成した電子と正孔の酸化還元作用によって迅速に、かつ連続的に分解、除去することができる。
【0062】
しかも、この環境浄化材料は、光を照射するだけで、低コスト・省エネルギー的で、かつメンテナンスフリーで使用できる。そして、酸化チタン粒子上にコーティングされるケイ酸塩の内部骨格に、白金あるいはロジウム、ルテニウム、パラジウム、銀、銅、鉄、亜鉛の金属を担持したものを用いた場合には、その触媒作用により、有機化合物の分解除去効果や、抗菌抗黴効果等の環境浄化効果が、一層増大する。
【0063】
本発明による環境浄化材料の媒体としては、例えば、ポリエチレンやナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエチレンテレフタレート、シリコン樹脂、ポリビニルアルコール、ビニルアセタール樹脂、ポリアセテート、ABS樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、セルロース、セルロース誘導体、ポリアミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリスチレン、尿素樹脂、フッ素樹脂、ポリフッ化ビニリデン、フェノール樹脂、セルロイド、キチン、デンプンシート等の、あらゆる種類の有機繊維やプラスチックス、あるいはそれらの共重合体が適用可能である。
【発明の効果】
【0064】
本発明により、次のような効果が奏される。
(1)酸化チタンからなる表面を持つ基材の表面に、例えば、アロフェン、又はイモゴライト等の無機ケイ酸塩がコーティングされた、新規無機ケイ酸塩−酸化チタン揮発性有機化合物分解材料を合成することができる。
(2)表面を覆うケイ酸塩が、多孔質であるため、細孔の底に酸化チタンが露出した状態となり、この部分において、酸化チタンに光が照射される酸化チタン複合材料を提供することができる。
(3)光の照射によって生成した電子と正孔の酸化還元作用により、悪臭や空気中の有害物質、あるいは水中に溶解している有機溶剤や農薬等の環境を汚染している有機化合物を、容易に分解除去する機能を有する新規複合体を製造し、提供することができる。
(4)上記ケイ酸塩が、光触媒として不活性であるため、環境浄化材料を、有機繊維やプラスチックス等の媒体に練り込み等により添加して使用する場合でも、ケイ酸塩に保護されて、繊維やプラスチック自身の分解を生じにくく、長期間、その効果を持続させることができる。
(5)ケイ酸塩が、雑菌等を吸着する性質を持つため、吸着した雑菌等を、光の照射により、酸化チタンに生じる強力な酸化力によって、確実に、しかも効率良く、死滅、分解することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0065】
次に、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0066】
メタケイ酸ナトリウムを、脱イオン水に溶解し、100mmol/lメタケイ酸ナトリウム水溶液を38.46ml調製し、この水溶液に、1mol/l水酸化ナトリウム水溶液7.5mlを添加した。これとは別に、塩化アルミニウムを、脱イオン水に溶解し、100mmol/l塩化アルミニウム水溶液を50ml調製した。次に、塩化アルミニウム水溶液に、メタケイ酸ナトリウム/水酸化ナトリウム混合水溶液を添加し、室温で1時間撹拌し、前駆体懸濁液を得た。この時のケイ素/アルミニウム比は、0.75であった。この前駆体生成の際に、副成した塩化ナトリウムを除去するために、遠心分離機を用いて、脱イオン水で充分に洗浄した。得られた前駆体を、1000mlの脱イオン水中に分散させた。
【0067】
この前駆体懸濁液に、1gの二酸化チタン(アナターゼ)基材を投入し、充分に撹拌した後、この懸濁液を、テフロン(登録商標)容器に封入し、100℃で48時間加熱して水熱反応を行った。反応終了後、遠心分離機により充分に洗浄を行った。これは、基材表面に結合することができなかったアルミニウムケイ酸塩を除去するためであり、また、二酸化チタン基材と、生成したアルミニウムケイ酸塩を、それらの比重差を利用して、遠心分離により分離精製するためである。その後、電気乾燥機中で、40℃、常圧で乾燥し、ケイ酸塩でコーティングされた二酸化チタン揮発性有機化合物分解材料を得た。
【0068】
このようにして得られたケイ酸塩でコーティングされた二酸化チタン環境浄化材料は、X線回折図形から、基材アナターゼのピークが確認され、同時に、非晶質ケイ酸塩成分の特徴であるブロードなピークも10°付近に確認された。この材料は、窒素吸着による比表面積は、約200m/g、平均細孔直径は、約1nm、メソ領域の細孔容積は、0.06ml/g程度の値を示した。また、この材料は、蛍光X線分析による化学組成分析の結果、TiO:91.9wt%、Al:3.64wt%、SiO:3.51wt%であり、10wt%程度のアルミニウムケイ酸塩が、二酸化チタン基材に被覆されていることが示唆された(図1)。
【実施例2】
【0069】
100mmol/lのオルトケイ酸ナトリウム水溶液と、150mmol/lの塩化アルミニウム水溶液を、125mlずつ、それぞれ秤量した。塩化アルミニウム水溶液中に、オルトケイ酸ナトリウム水溶液を添加し、室温で、十分に撹拌した。撹拌しながら1mol/lの水酸化ナトリウムを、液性がpH6になるまで1ml/分の速度で添加した。生成した前駆体を、遠心分離機により、脱イオン水を用いて洗浄し、前駆体濃度が20mmol/lになるように、1000mlのオートクレーブ中に分散させた。
【0070】
この前駆体懸濁液に、1.0gの二酸化チタン(アナターゼ)基材を投入し、十分に撹拌した後に、5mol/lの塩酸水溶液を、pH4程度になるまで添加した。これを、撹拌した後に、テフロン(登録商標)容器に封入し、100℃で、48時間加熱して水熱反応を行った。反応終了後、アンモニアを添加して、液性をpH10程度まで上昇させ、イモゴライトをゲル化し、これを凝集させた。脱イオン水を用いた遠心分離による洗浄を行い、基材表面に結合することができなかったイモゴライトを除去した。その後、電気乾燥機を用いて、40℃、常圧で乾燥し、イモゴライトでコーティングされた二酸化チタン揮発性有機化合物分解材料を得た(図2)。
【実施例3】
【0071】
オルトケイ酸ナトリウムを、脱イオン水に溶解し、100mmol/lオルトケイ酸ナトリウム水溶液を50ml調製し、この水溶液に、1mol/l水酸化ナトリウム水溶液10mlを添加した。これとは別に、塩化アルミニウムを、脱イオン水に溶解し、100mmol/l塩化アルミニウム水溶液を100ml調製した。次に、塩化アルミニウム水溶液に、オルトケイ酸ナトリウム/水酸化ナトリウム混合水溶液を添加し、室温で、1時間撹拌し、前駆体懸濁液を得た。この時のケイ素/アルミニウム比は、0.50であった。この前駆体生成の際に、副成した塩化ナトリウムを除去するために、遠心分離機を用いて、脱イオン水で充分に洗浄した。得られた前駆体を、200mlの脱イオン水中に分散させた。
【0072】
この前駆体懸濁液に、0.2gの二酸化チタン(アナターゼ)基材を投入し、充分に撹拌した後、この懸濁液を、テフロン(登録商標)容器に封入し、100℃で、48時間加熱して水熱反応を行った。反応終了後、遠心分離機により、充分に洗浄を行った。これは、基材表面に結合することができなかったアルミニウムケイ酸塩を除去するためであり、また、二酸化チタン基材と、生成したアルミニウムケイ酸塩を、それらの比重差を利用して、遠心分離により分離精製するためである。その後、電気乾燥機中にて、40℃、常圧で乾燥し、ケイ酸塩でコーティングされた二酸化チタン揮発性有機化合物分解材料を得た。
【0073】
このようにして得られたケイ酸塩でコーティングされた二酸化チタン揮発性有機化合物分解材料は、X回折図形から、基材アナターゼのピークが確認され、同時に、非晶質ケイ酸塩成分の特徴であるブロードなピークも確認された。この材料は、窒素吸着によるBET比表面積は、211m/g、平均細孔直径は、8.28nm、マイクロ/メソ領域の細孔容積は、0.32cm/gの値を示した。また、この材料は、蛍光X線分析による化学組成分析の結果、TiO含有率が、42.8wt%であり、重量比で、60wt%程度のアルミニウムケイ酸塩が、二酸化チタン基材を被覆していることが示唆された。
【実施例4】
【0074】
オルトケイ酸ナトリウムを、脱イオン水に溶解し、100mmol/lオルトケイ酸ナトリウム水溶液を65ml調製し、この水溶液に、1mol/l水酸化ナトリウム水溶液4mlを添加した。これとは別に、塩化アルミニウムを、脱イオン水に溶解し、100mmol/l塩化アルミニウム水溶液を100ml調製した。次に、塩化アルミニウム水溶液に、オルトケイ酸ナトリウム/水酸化ナトリウム混合水溶液を添加し、室温で、1時間撹拌し、前駆体懸濁液を得た。この時のケイ素/アルミニウム比は、0.65であった。この前駆体生成の際に、副成した塩化ナトリウムを除去するために、遠心分離機を用いて、脱イオン水で充分に洗浄した。得られた前駆体を、200mlの脱イオン水中に分散させた。
【0075】
この前駆体懸濁液に、0.2gの二酸化チタン(アナターゼ)基材を投入し、充分に撹拌した後、この懸濁液を、テフロン(登録商標)容器に封入し、100℃で、48時間加熱して水熱反応を行った。反応終了後、遠心分離機により、充分に洗浄を行った。これは、基材表面に結合することができなかったアルミニウムケイ酸塩を除去するためであり、また、二酸化チタン基材と、生成したアルミニウムケイ酸塩を、それらの比重差を利用して、遠心分離により分離精製するためである。その後、電気乾燥機中にて、40℃、常圧で乾燥し、ケイ酸塩でコーティングされた二酸化チタン揮発性有機化合物分解材料を得た。
【0076】
このようにして得られたケイ酸塩でコーティングされた二酸化チタン揮発性有機化合物分解材料は、X回折図形から、基材アナターゼのピークが確認され、同時に、非晶質ケイ酸塩成分の特徴であるブロードなピークも確認された。この材料は、窒素吸着によるBET比表面積は、179m/g、平均細孔直径は、9.89nm、マイクロ/メソ領域の細孔容積は、0.16cm/gの値を示した。また、この材料は、蛍光X線分析による化学組成分析の結果、TiO含有率が、36.6wt%であり、重量比で、65wt%程度のアルミニウムケイ酸塩が、二酸化チタン基材を被覆していることが示唆された。
【実施例5】
【0077】
オルトケイ酸ナトリウムを、脱イオン水に溶解し、100mmol/lオルトケイ酸ナトリウム水溶液を70ml調製し、この水溶液に、1mol/l水酸化ナトリウム水溶液2mlを添加した。これとは別に、塩化アルミニウムを脱イオン水に溶解し、100mmol/l塩化アルミニウム水溶液を100ml調製した。次に、塩化アルミニウム水溶液に、オルトケイ酸ナトリウム/水酸化ナトリウム混合水溶液を添加し、室温で、1時間撹拌し、前駆体懸濁液を得た。この時のケイ素/アルミニウム比は、0.70であった。この前駆体生成の際に、副成した塩化ナトリウムを除去するために、遠心分離機を用いて、脱イオン水で充分に洗浄した。得られた前駆体を、200mlの脱イオン水中に分散させた。
【0078】
この前駆体懸濁液に、0.2gの二酸化チタン(アナターゼ)基材を投入し、充分に撹拌した後、この懸濁液を、テフロン(登録商標)容器に封入し、100℃で48時間加熱して水熱反応を行った。反応終了後、遠心分離機により、充分に洗浄を行った。これは、基材表面に結合することができなかったアルミニウムケイ酸塩を除去するためであり、また、二酸化チタン基材と、生成したアルミニウムケイ酸塩を、それらの比重差を利用して、遠心分離により分離精製するためである。その後、電気乾燥機中にて、40℃、常圧で乾燥し、ケイ酸塩でコーティングされた二酸化チタン揮発性有機化合物分解材料を得た。
【0079】
このようにして得られたケイ酸塩でコーティングされた二酸化チタン揮発性有機化合物分解材料は、X回折図形から基材アナターゼのピークが確認され、同時に、非晶質ケイ酸塩成分の特徴であるブロードなピークも確認された。この材料は、窒素吸着によるBET比表面積は、198m/g、平均細孔直径は、7.76nm、マイクロ/メソ領域の細孔容積は、0.14cm/gの値を示した。また、この材料は、蛍光X線分析による化学組成分析の結果、TiO含有率が、43.2wt%であり、重量比で、55wt%程度のアルミニウムケイ酸塩が、二酸化チタン基材を被覆していることが示唆された。
【実施例6】
【0080】
オルトケイ酸ナトリウムを、脱イオン水に溶解し、100mmol/lオルトケイ酸ナトリウム水溶液を75ml調製した。これとは別に、塩化アルミニウムを、脱イオン水に溶解し、100mmol/l塩化アルミニウム水溶液を100ml調製した。次に、塩化アルミニウム水溶液に、オルトケイ酸ナトリウム水溶液を添加し、室温で、1時間撹拌し、前駆体懸濁液を得た。この時のケイ素/アルミニウム比は、0.75であった。この前駆体生成の際に、副成した塩化ナトリウムを除去するために、遠心分離機を用いて、脱イオン水で充分に洗浄した。得られた前駆体を、200mlの脱イオン水中に分散させた。
【0081】
この前駆体懸濁液に、0.2gの二酸化チタン(アナターゼ)基材を投入し、充分に撹拌した後、この懸濁液を、テフロン(登録商標)容器に封入し、100℃で、48時間加熱して水熱反応を行った。反応終了後、遠心分離機により、充分に洗浄を行った。これは、基材表面に結合することができなかったアルミニウムケイ酸塩を除去するためであり、また、二酸化チタン基材と、生成したアルミニウムケイ酸塩を、それらの比重差を利用して、遠心分離により分離精製するためである。その後、電気乾燥機中にて、40℃、常圧で乾燥し、ケイ酸塩でコーティングされた二酸化チタン揮発性有機化合物分解材料を得た。
【0082】
このようにして得られたケイ酸塩でコーティングされた二酸化チタン揮発性有機化合物分解材料は、X回折図形から基材アナターゼのピークが確認され、同時に、非晶質ケイ酸塩成分の特徴であるブロードなピークも確認された。この材料は、窒素吸着によるBET比表面積は、193m/g、平均細孔直径は、9.77nm、マイクロ/メソ領域の細孔容積は、0.23cm/gの値を示した。また、この材料は、蛍光X線分析による化学組成分析の結果、TiO含有率が、46.6wt%であり、重量比で、55wt%程度のアルミニウムケイ酸塩が、二酸化チタン基材を被覆していることが示唆された。
【実施例7】
【0083】
オルトケイ酸ナトリウムを、脱イオン水に溶解し、100mmol/lオルトケイ酸ナトリウム水溶液を80ml調製した。これとは別に、塩化アルミニウムを、脱イオン水に溶解し、100mmol/l塩化アルミニウム水溶液を100ml調製し、この水溶液に、1mol/l塩酸2mlを添加した。次に、塩化アルミニウム/塩酸混合水溶液に、オルトケイ酸ナトリウム水溶液を添加し、室温で、1時間撹拌し、前駆体懸濁液を得た。この時のケイ素/アルミニウム比は、0.80であった。この前駆体生成の際に、副成した塩化ナトリウムを除去するために、遠心分離機を用いて、脱イオン水で充分に洗浄した。得られた前駆体を、200mlの脱イオン水中に分散させた。
【0084】
この前駆体懸濁液に、0.2gの二酸化チタン(アナターゼ)基材を投入し、充分に撹拌した後、この懸濁液を、テフロン(登録商標)容器に封入し、100℃で、48時間加熱して水熱反応を行った。反応終了後、遠心分離機により充分に洗浄を行った。これは、基材表面に結合することができなかったアルミニウムケイ酸塩を除去するためであり、また、二酸化チタン基材と、生成したアルミニウムケイ酸塩を、それらの比重差を利用して、遠心分離により分離精製するためである。その後、電気乾燥機中にて、40℃、常圧で乾燥し、ケイ酸塩でコーティングされた二酸化チタン揮発性有機化合物分解材料を得た。
【0085】
このようにして得られたケイ酸塩でコーティングされた二酸化チタン揮発性有機化合物分解材料は、X回折図形から基材アナターゼのピークが確認され、同時に、非晶質ケイ酸塩成分の特徴であるブロードなピークも確認された。この材料は、窒素吸着によるBET比表面積は、200m/g、平均細孔直径は、9.51nm、マイクロ/メソ領域の細孔容積は、0.29cm/gの値を示した。また、この材料は、蛍光X線分析による化学組成分析の結果、TiO含有率が、34.7wt%であり、重量比で、65wt%程度のアルミニウムケイ酸塩が、二酸化チタン基材を被覆していることが示唆された。
【実施例8】
【0086】
オルトケイ酸ナトリウムを、脱イオン水に溶解し、100mmol/lオルトケイ酸ナトリウム水溶液を85ml調製した。これとは別に、塩化アルミニウムを、脱イオン水に溶解し、100mmol/l塩化アルミニウム水溶液を100ml調製し、この水溶液に、1mol/l塩酸4mlを添加した。次に、塩化アルミニウム/塩酸混合水溶液に、オルトケイ酸ナトリウム水溶液を添加し、室温で1時間撹拌し、前駆体懸濁液を得た。この時のケイ素/アルミニウム比は、0.85であった。この前駆体生成の際に、副成した塩化ナトリウムを除去するために、遠心分離機を用いて、脱イオン水で充分に洗浄した。得られた前駆体を、200mlの脱イオン水中に分散させた。
【0087】
この前駆体懸濁液に、0.2gの二酸化チタン(アナターゼ)基材を投入し、充分に撹拌した後、この懸濁液を、テフロン(登録商標)容器に封入し、100℃で、48時間加熱して水熱反応を行った。反応終了後、遠心分離機により、充分に洗浄を行った。これは、基材表面に結合することができなかったアルミニウムケイ酸塩を除去するためであり、また、二酸化チタン基材と、生成したアルミニウムケイ酸塩を、それらの比重差を利用して、遠心分離により分離精製するためである。その後、電気乾燥機中にて、40℃、常圧で乾燥し、ケイ酸塩でコーティングされた二酸化チタン揮発性有機化合物分解材料を得た。
【0088】
このようにして得られたケイ酸塩でコーティングされた二酸化チタン揮発性有機化合物分解材料は、X回折図形から基材アナターゼのピークが確認され、同時に、非晶質ケイ酸塩成分の特徴であるブロードなピークも確認された。この材料は、窒素吸着によるBET比表面積は、201m/g、平均細孔直径は、9.66nm、マイクロ/メソ領域の細孔容積は、0.24cm/gの値を示した。また、この材料は、蛍光X線分析による化学組成分析の結果、TiO含有率が、34.6wt%であり、重量比で、65wt%程度のアルミニウムケイ酸塩が、二酸化チタン基材を被覆していることが示唆された。
【実施例9】
【0089】
オルトケイ酸ナトリウムを、脱イオン水に溶解し、100mmol/lオルトケイ酸ナトリウム水溶液を100ml調製した。これとは別に、塩化アルミニウムを、脱イオン水に溶解し、100mmol/l塩化アルミニウム水溶液を100ml調製し、この水溶液に、1mol/l塩酸10mlを添加した。次に、塩化アルミニウム/塩酸混合水溶液に、オルトケイ酸ナトリウム水溶液を添加し、室温で1時間撹拌し、前駆体懸濁液を得た。この時のケイ素/アルミニウム比は、1.00であった。この前駆体生成の際に、副成した塩化ナトリウムを除去するために、遠心分離機を用いて、脱イオン水で充分に洗浄した。得られた前駆体を、200mlの脱イオン水中に分散させた。
【0090】
この前駆体懸濁液に、0.2gの二酸化チタン(アナターゼ)基材を投入し、充分に撹拌した後、この懸濁液を、テフロン(登録商標)容器に封入し、100℃で、48時間加熱して水熱反応を行った。反応終了後、遠心分離機により、充分に洗浄を行った。これは、基材表面に結合することができなかったアルミニウムケイ酸塩を除去するためであり、また、二酸化チタン基材と、生成したアルミニウムケイ酸塩を、遠心分離により分離精製するためである。その後、電気乾燥機中にて、40℃、常圧で乾燥し、ケイ酸塩でコーティングされた二酸化チタン揮発性有機化合物分解材料を得た。
【0091】
このようにして得られたケイ酸塩でコーティングされた二酸化チタン揮発性有機化合物分解材料は、X回折図形から、基材アナターゼのピークが確認され、同時に、非晶質ケイ酸塩成分の特徴であるブロードなピークも確認された。この材料は、窒素吸着によるBET比表面積は、184m/g、平均細孔直径は、11.5nm、マイクロ/メソ領域の細孔容積は、0.26cm/gの値を示した。また、この材料は、蛍光X線分析による化学組成分析の結果、TiO含有率が、41.3wt%であり、重量比で、60wt%程度のアルミニウムケイ酸塩が、二酸化チタン基材を被覆していることが示唆された。表1に、ケイ酸塩でコーティングされた二酸化チタン揮発性有機化合物分解材料の物性評価の結果を示す。
【0092】
【表1】

【0093】
表1から明らかなように、この材料は、窒素吸着によるBET比表面積が、200m/g程度、平均細孔直径が、8〜12nm程度、マイクロ/メソ領域の細孔容積が、0.1から0.3cm/g程度、TiO含有率が、35から40wt%程度のであり、重量比で、60wt%程度のアルミニウムケイ酸塩が二酸化チタン基材を被覆されているケイ酸塩でコーティングされた二酸化チタン揮発性有機化合物分解材料が合成されたことが確認された。
【実施例10】
【0094】
本実施例では、上記揮発性有機化合物分解材料を用いて、アセトアルデヒドの分解試験を行い、テドラーバックを用いた空気中での紫外線照射によるアセトアルデヒド分解により評価を行った。直径100mmのガラスシャーレに、試料0.50gを秤量し、紫外線ランプ(BLBタイプ:365nm)を、1.0mW/cmで、3時間照射した。照射後、3Lテドラーバックに、ガラスシャーレを入れ、バック内を密封した。
【0095】
上記バックに、35ppmアセトアルデヒドガスを封入し、23℃暗室中で、60分静置した。60分後、バック内のアセトアルデヒド濃度を、検知管(ガステック製)により測定した。測定後、紫外線1.0mW/cmの照射を、再び開始し、10分おきに、60分後まで測定を行った。
【0096】
図3に、アセトアルデヒド分解試験の結果をグラフで示した。各試料の暗所におけるアセトアルデヒド吸着率は、初期濃度基準で、30から40%程度であった。UVランプ照射後のアセトアルデヒド分解率は、照射開始後、50分で、総分解率の95%以上に達する分解速度を示す複合体が大半を占めていた。組成と分解挙動の間には、メチレンブルー分解時の挙動とは異なり、明確な相関関係は確認されなかった。
【0097】
二酸化チタン含有率が、他の複合体と比較して低く、天然アロフェンの化学組成に比較的近い実施例7及び実施例8の揮発性有機化合物分解材料において、UVランプ照射後のアセトアルデヒド分解率は、照射開始後30分で、100%の分解率を示すことが明らかとなった。二酸化チタン表面を包囲するアルミニウムケイ酸塩に捕捉されたアセトアルデヒドが、触媒表面近傍で効率良く分解されたと考えられる。
【0098】
比較例として、市販されている、二酸化チタン表面に、竹炭をコーティングした材料を使用した。UVランプ照射60分後では、アセトアルデヒド分解率が、60%であったのに対し、本発明の揮発性有機化合物分解材料では、100%の高い分解率を示すことが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0099】
以上詳述したように、本発明は、ケイ酸塩でコーティングされた酸化チタン揮発性有機化合物分解材料に係るものであり、本発明の酸化チタン複合揮発性有機化合物分解材料は、ケイ酸塩前駆体懸濁液に、基材を投入して製造することが可能であり、この時のケイ酸塩前駆体懸濁液の組成や反応温度、時間を変化させることによって、表面の細孔径の大きさや、細孔分布の密度等を制御することが可能である。本発明の酸化チタン複合材料は、基材表面の酸化チタンを覆うケイ酸塩膜が多孔質であり、化学組成や細孔構造の制御されたケイ酸塩ドメイン、あるいは細孔の空隙を通じて、基材表面の酸化チタンに光が照射されるため、当該酸化チタン複合材料により、ケイ酸塩膜で覆われていないものと殆ど遜色のない、光触媒作用を得ることができる。また、上記ケイ酸塩膜は、雑菌等の汚染物質を吸着する性質を持っているため、吸着した揮発性有機化合物を、上記光触媒作用によって、確実、かつ効果的に、分解、除去することが可能である。
【0100】
本発明の酸化チタン複合材料は、無機化合物本来の優れた耐水性、耐熱性や耐腐食性に優れるため、例えば、悪臭や煙草の煙、NOx、SOxのような、空気中に存在する有害物質の分解除去、水中に溶解している有機溶剤や農薬のような有機化合物の分解除去、廃水処理や浄水処理、汚れの防止、抗菌及び抗かび、MRSA等による院内感染の防止等、触媒担体、居室内や車内等の生活環境の湿度を自律的に制御する湿度調節材や、その特異な形状を利用した薬剤のマイクロカプセルや浄水用フィルター等、広範な産業分野での利用が可能である。更に、本発明の酸化チタン複合材料は、環境の浄化に極めて有効であり、しかも、上記酸化チタンは、塗料や化粧品、歯磨き粉等にも使用され、食品添加物としても認められているものであって、無毒、かつ安全であり、安価で耐候性や耐久性にも優れるため、経済的である。また、上記ケイ酸塩膜は、光触媒として不活性であるため、酸化チタン複合材料を、有機繊維やプラスチックス等の媒体に、練り込み等によって添加して使用する場合でも、媒体を劣化させなることがなく、長期間、その光触媒効果を持続させることができる。
【0101】
本発明は、有機繊維やプラスチックス等の媒体に添加することが可能であり、自動車の車内や居間、台所、トイレ等の脱臭や、廃水処理、プールや貯水の浄化だけでなく、菌や黴の繁殖防止、食品の腐敗防止等、非常に幅広い用途に適用でき、しかも、化学薬品やオゾンのような有毒な物質を使用せず、電灯の光や自然光等の光を照射するだけで、低コストで省エネルギー的、かつ安全に、メンテナンスフリーで長期間使用することができる新規二酸化チタン揮発性有機化合物分解材料を提供するものとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の一実施例に係わる、アロフェンでコーティングされた酸化チタン複合材料の電子顕微鏡写真である。
【図2】本発明の一実施例に係わる、イモゴライトでコーティングされた酸化チタン複合材料の電子顕微鏡写真である。
【図3】本発明の実施例に係わる、ケイ酸塩でコーティングされた酸化チタン複合材料のアセトアルデヒド分解試験結果である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化チタン表面を持つ基材の表面に、無機ケイ酸塩がコーティングされた無機ケイ酸塩−酸化チタン複合材料からなる揮発性有機化合物分解材料を製造する方法であって、
(1)ケイ素化合物水溶液と、アルミニウム化合物、あるいは遷移金属化合物水溶液を混合し、前駆体懸濁液を調製する、
(2)上記工程で副生成した塩を除去する、
(3)上記前駆体懸濁液に、基材を入れ、水熱反応を行う、
(4)上記(1)〜(3)により、基材表面に無機ケイ酸塩を被覆した酸化チタン揮発性有機化合物分解材料を合成する、
ことを特徴とする無機ケイ酸塩−酸化チタン揮発性有機化合物分解材料の製造方法。
【請求項2】
基材が、酸化チタン粒子である、請求項1に記載の揮発性有機化合物分解材料の製造方法。
【請求項3】
無機ケイ酸塩が、アロフェン、又はイモゴライトの非晶質体ないし準結晶質体からなるケイ酸塩である、請求項1に記載の揮発性有機化合物分解材料の製造方法。
【請求項4】
酸化チタンの結晶形が、アナターゼである、請求項1に記載の揮発性有機化合物分解材料の製造方法。
【請求項5】
溶液濃度が、それぞれ1mmol/l〜10000mol/lのケイ素化合物溶液と、1mmol/l〜10000mol/lのアルミニウム化合物、あるいは遷移金属化合物溶液を混合する、請求項1に記載の揮発性有機化合物分解材料の製造方法。
【請求項6】
ケイ素のアルミニウム、あるいは遷移金属化合物に対するモル比率が、0.1〜5.0である、請求項1に記載の揮発性有機化合物分解材料の製造方法。
【請求項7】
ケイ素化合物水溶液と、アルミニウム化合物、あるいは遷移金属化合物水溶液を、分速1ml〜10000lで同時混合、あるいは両溶液を急速混合して、前駆体懸濁液を調製する、請求項1に記載の揮発性有機化合物分解材料の製造方法。
【請求項8】
前駆体懸濁液の液性を、pH3からpH8に調整する、請求項6に記載の揮発性有機化合物分解材料の製造方法。
【請求項9】
凝集阻止剤として、ポリエチレングリコール、ポリビニールアルコール又は界面活性剤の水溶性、あるいは非水溶性の試剤を添加する、請求項6に記載の揮発性有機化合物分解材料の製造方法。
【請求項10】
調製した前駆体懸濁液を、0.1〜72時間振盪した後、反応副生成物である塩を除去する、請求項1に記載の揮発性有機化合物分解材料の製造方法。
【請求項11】
前駆体懸濁液に、酸性溶液を添加して、pH3から6の弱酸性に調整し、生成されるケイ酸塩の形態を制御する、請求項1に記載の揮発性有機化合物分解材料の製造方法。
【請求項12】
反応温度20〜150℃、反応時間12〜240時間の条件で、懸濁液の水分が蒸発しない方法で、水熱反応を行う、請求項1に記載の揮発性有機化合物分解材料の製造方法。
【請求項13】
反応終了後の懸濁液に、アルカリ性水溶液を添加して、溶液の液性を、pH8〜12に調整し、生成物を、ゲル状物質として凝集させて回収する、請求項1に記載の揮発性有機化合物分解材料の製造方法。
【請求項14】
窒素吸着による比表面積が、少なくとも10m/gである複合材料を合成する、請求項1に記載の揮発性有機化合物分解材料の製造方法。
【請求項15】
酸化チタン表面を持つ基材の表面に、無機ケイ酸塩を水熱合成反応で被覆した無機ケイ酸塩−酸化チタン複合材料からなる揮発性有機化合物分解材料であって、
上記複合材料は、表面が、光触媒として不活性なケイ酸塩膜によって被覆されており、該ケイ酸塩膜が、表面に細孔を有し、この細孔の底には、光触媒として活性な酸化チタンが露出した状態となっている多孔質構造を有し、窒素吸着による比表面積が、少なくとも10m/gであることを特徴とする無機ケイ酸塩−酸化チタン揮発性有機化合物分解材料。
【請求項16】
無機ケイ酸塩が、アロフェン、又はイモゴライトの非晶質体ないし準結晶質体からなるケイ酸塩である、請求項15に記載の無機ケイ酸塩−酸化チタン揮発性有機化合物分解材料。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−58994(P2010−58994A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−224012(P2008−224012)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(000224123)藤倉化成株式会社 (124)
【Fターム(参考)】