説明

ケースの製造方法

【課題】製造コストが安価で、しかも、柔らかい皮革を用いても型崩れがせず、品質に優れたケースの製造方法を提供する。
【解決手段】所定の形状に形成された金属板11と、皮革製のシート材13と、これら金属板11とシート材13との間に介装される接着用シート12とからなる積層体2を金型1に配し、その状態で上記金型1を高周波加熱することにより上記積層体2を加熱して上記金属板11の表面にシート材13を接着,一体化するようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機,デジタルカメラ,パソコン,カムコーダー,オーディオプレーヤー等の携帯用機器等の各種製品に用いられるケースの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、携帯電話機等の携帯用機器の外装部品として、各種材質のケースが用いられているが、厚みを極力薄くしながらも充分な強度を確保することができ、かつ内部で発生する電磁波等が外部に漏出しにくくするため、金属製のケースがよく用いられている。一方、このような携帯用機器では、ユーザーの多様化に対応してユーザーの好む外観(模様や色彩等)等にすることが要求されており、金属製のケースの表面にめっき処理を行ったり、塗装をしたりして装飾を施すことにより、ユーザーのニーズにマッチした外観にすることが行われている。近年は、携帯用機器として高級感のあるものをユーザーが要求しており、上記装飾に各種の工夫を加えることが行われているが、金属製のケースの表面にめっき処理を行ったり、塗装をしたりしたものでは、高級感を持たせることができないというのが実情である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、金属製のケースの表面に皮革を貼り付けることで高級感を持たせることが考えられるが、ケースの表面もしくは皮革の裏面に液状のりを刷毛等で塗ってケースの表面に皮革を貼り付けるのでは、多大な労力を必要とするうえ、作業に長時間かかり、製造コストが高価になるという問題がある。しかも、柔らかい皮革を用いると、型崩れするため、ぬめ革等の硬い革を使用しなければならず、高級感がでにくいうえ、ケースの表面に柔らかい皮革や薄い皮革を均一に貼り付けることが難しく、剥離しやすい等、品質に劣るという問題がある。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、製造コストが安価で、しかも、柔らかい皮革を用いても型崩れがせず、品質に優れたケースの製造方法の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明のケースの製造方法は、所定の形状に形成された金属板もしくは樹脂板と、皮革製シート材と、上記金属板もしくは樹脂板と皮革製シート材との間に介装される接着剤層とからなる積層体を金型に配し、その状態で上記金型を高周波加熱することにより上記積層体を加熱して上記金属板もしくは樹脂板の表面に皮革製シート材を接着,一体化するようにしたという構成をとる。
【発明の効果】
【0006】
すなわち、本発明者は、高級感があり、しかも、製造コストが安価で、柔らかい皮革を用いても型崩れがせず、品質に優れたケースを得るための研究の過程で、金型を利用して金属製のケースの表面に皮革を貼り付けることを着想し一連の研究を重ねた。その結果、所定の形状に形成された金属板もしくは樹脂板と、皮革製シート材と、上記金属板もしくは樹脂板と皮革製シート材との間に介装される接着剤層とからなる積層体を金型に配し、その状態で上記金型を高周波加熱することにより上記積層体を加熱して上記金属板もしくは樹脂板の表面に皮革製シート材を接着,一体化すると、所期の目的を達成することを見出し、本発明に到達した。
【0007】
本発明のケースの製造方法では、金属板もしくは樹脂板の表面に皮革製シート材を接着,一体化しているため、従来例のように、金属板の表面にめっき処理を行ったり、塗装をしたりしたものと比べ、充分な高級感を持たせることができる。しかも、本発明のケースの製造方法のように、金型を高周波加熱することにより、この金型の加熱(加温)で、この金型内に配した積層体の接着剤層を加熱,溶融等し、金属板もしくは樹脂板の表面に皮革製シート材を接着,一体化する場合には、上記加熱に長時間を要せず、短時間で行えるため、量産が可能になり、製造コストが安価になる。しかも、特に金属板の場合、上記積層体を金型に配した状態では、上記金型の型面に金属板が当接しているため、上記金型の型面から金属板を直接加熱することができ、加熱時間がさらに短かくなり、製造コストが一層安価になる。しかも、上記金型を利用して金属板もしくは樹脂板の表面に皮革製シート材を接着,一体化しているため、皮革製シート材として、柔らかい皮革を用いた場合にも、型崩れしない。したがって、皮革製シート材として、高級な柔らかい皮革を用いることができ、さらに高級感を高めることができる。しかも、上記したように、金型を利用しているため、柔らかい皮革や薄い皮革であっても、その全体を均一に金属板もしくは樹脂板の表面に接着することができて金属板の表面から剥離等することがなく、品質に優れる。
【0008】
また、上記接着剤層がシート材で構成されていると、上記接着剤層として、(液状ではない)シート材を用いることができ、従来例では生じていた、硬い皮革であってもその裏面に液状のりを塗布すると型崩れしやすくなるという問題が生じなくなる。
【0009】
上記ケースが家電用品,鞄,収納ケース等の外装部品の一部であると、上記外装部品に高級感を持たせることができる。
【0010】
上記金属板を構成する金属材料としては、携帯用機器の外装部品等として用いられる金属材料であれば、どのようなものでもよく、好適には、ステンレス,アルミニウム,マグネシウムもしくはこれらの合金等が用いられ、上記樹脂板を構成する樹脂材料としては、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体)樹脂,PP(ポリプロピレン)樹脂等が用いられる。
【0011】
また、上記皮革製シート材を構成する皮革としては、牛皮,羊皮,豚皮等の天然皮革や人工皮革等が用いられる。このような皮革製シート材の厚みは、好適には、0.2〜1mmの範囲内に設定される。すなわち、0.2mm程度の薄い皮革製シート材であっても、上記金属板の表面に接着することができる。
【0012】
また、上記接着剤層を構成する接着剤としては、ポリエステル樹脂系接着剤,ナイロン系接着剤,ウレタン系接着剤やエチレン酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)等の各種のホットメルト接着剤等、各種の接着剤が用いられる。このような接着剤層は液状であっても、シート状,フィルム状であってもよい。
【0013】
また、上記金属板,樹脂板,皮革製シート材,接着剤層からなる積層体を金型に配する態様としては、上記金属板と、シート材からなる接着剤層と、皮革製シート材とをこの順で積層して金型の型面にセットする態様、上記金属板の表面に液状接着剤を塗布等したのち、この液状接着剤上に皮革製シート材を積層し(仮接着し)、上記液状接着剤が固化しないうちに金型の型面にセットする態様、上記皮革製シート材の裏面に液状接着剤を塗布等したのち、これを金属板の表面に積層し(仮接着し)、上記液状接着剤が固化しないうちに金型の型面にセットする態様、および上記仮接着した場合に上記液状接着剤が固化してから金型の型面にセットする態様等の各種の態様が採用される。
【0014】
上記金型を高周波加熱する際に、金型を備えた高周波ウェルダー等を用いると、短時間(5秒〜2分程度)で加熱することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。ただし、これに限定されるわけではない。
【0016】
図1は本発明のケースの製造方法の一実施の形態を示している。図において、1は高周波ウェルダー(図示せず)に設けられた金型であり、2は上記金型1にセットされた積層体である。上記金型1は、高周波ウェルダに固定される上下一対の真鍮製等の各種金属製の金型5,6を備えており、上型5には、その下面に、上記積層体2を外嵌状に収容しうる凹部5aが形成され、下型6には、その上面に、上記積層体2を内嵌状に挿入,固定しうる凸部6aが形成されている。
【0017】
上記積層体2は、所定の形状に形成された金属板11と、接着用シート(接着剤層)12と、牛革製のシート材(皮革製シート材)13とがこの順に積層されたもので構成されている。より詳しく説明すると、上記金属板11は、図2および図3に示すように、4隅に穴14aが穿設された略四角形状の平板部14と、この平板部14の外周部から折り曲げ形成された折り曲げ部15とからなっており、平板部14,折り曲げ部15の表面(外面)に接着用シート12,シート材13が積層されており、かつ折り曲げ部15の内面に沿って接着用シート12,シート材13が折り曲げられている。
【0018】
このような積層体2は、上記高周波ウェルダーにより金属板11とシート材13とが接着,一体化されて製品化されると、図4に示すような携帯電話機7の外装部品の一部を構成する外側ケース8として利用される。図4において、9は上記携帯電話機7の外装部品の一部を構成する内側ケースで、10は上記携帯電話機7のアンテナである。
【0019】
上記外側ケース8を、例えば、つぎのようにして製造することができる。すなわち、まず、積層体2を高周波ウェルダの上下両金型5,6にセットし、型締めする。このセットし型締めした状態では、上記積層体2の金属板11の平板部14の下面が下型6の凸部6aの上面に当接し、シート材13が上型5の凹部5aの内面,下型6の上面および下型6の凸部6aの外周側面に当接している。その状態で高周波ウェルダを作動させる。これにより、上記上下両金型5,6に高周波電流が流れて内部加熱が起こる。このとき、金属板11の平板部14の下面が下型6の凸部6aの上面に当接しているため、上記加熱は直接金属板11に伝えられたのち、接着用シート12に伝えられる。そして、上記加熱で接着用シート12が溶融して金属板11とシート材13とが接着し一体化する。そののち、上記上下両金型5,6から、得られた外側ケース8を取り出すことを行う。
【0020】
上記のように、この実施の形態では、上記金属板11の表面に牛革製のシート材13を接着,一体化しているため、上記携帯電話機7に高級感を持たせることができる。しかも、上記高周波ウェルダを利用して上下両金型5,6を加熱しているため、この加熱が短時間で行え、量産が可能になり、製造コストが安価になる。しかも、上記積層体2を上下両金型5,6にセットした状態では、下型6の凸部6aに金属板11が当接しているため、上記凸部6a,金属板11を介して接着用シート12を直接加熱することができ、加熱時間がさらに短かくなり、製造コストが一層安価になる。しかも、上記上下両金型5,6を利用して金属板11の表面にシート材13を接着,一体化しているため、上記シート材13として、高級な柔らかい皮革を用いることができ、さらに高級感を高めることができるうえ、上記シート材13が、柔らかい皮革や薄い皮革であっても、その全体を均一に金属板11の表面に接着することができて金属板11の表面から剥離等することがなく、品質に優れる。
【0021】
図5は本発明のケースの製造方法の他の実施の形態を示している。この実施の形態では、上記積層体2として、金属板11の平板部14,折り曲げ部15の表面(外面)にだけ接着用シート12,シート材13を積層したものが用いられている。それ以外の部分は上記実施の形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。この実施の形態でも、上記実施の形態と同様の作用・効果を奏する。
【0022】
図6は本発明のケースの製造方法のさらに他の実施の形態を示している。この実施の形態では、上記積層体2として、金属板11の平板部14の一部の表面(外面)にだけ接着用シート12,シート材13を積層したものが用いられている。それ以外の部分は、図1〜図4に示す実施の形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。この実施の形態でも、図1〜図4に示す実施の形態と同様の作用・効果を奏する。
【0023】
なお、上記各実施の形態では、上記ケースの製造方法により得られたケースを携帯電話機7の外装部品の一部を構成する外側ケース8として利用しているが、これに限定するものではなく、デジタルカメラ,パソコン,カムコーダー,オーディオプレーヤー等の携帯用機器等の家電用品、鞄、ケース(アタッシュケース等)や収容ケース(眼鏡ケース,名刺入れ、携帯用機器等を収容するケース)等の各種製品のケースとして用いることができる。また、上記高周波ウェルダーとしては、市販されている各種の製品を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明のケースの製造方法の一実施の形態を示す断面図である。
【図2】金属板の断面図である。
【図3】上記金属板の平面図である。
【図4】携帯電話機の斜視図である。
【図5】本発明のケースの製造方法の他の実施の形態を示す断面図である。
【図6】本発明のケースの製造方法のさらに他の実施の形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 金型
2 積層体
11 金属板
12 接着用シート
13 シート材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の形状に形成された金属板もしくは樹脂板と、皮革製シート材と、上記金属板もしくは樹脂板と皮革製シート材との間に介装される接着剤層とからなる積層体を金型に配し、その状態で上記金型を高周波加熱することにより上記積層体を加熱して上記金属板もしくは樹脂板の表面に皮革製シート材を接着,一体化するようにしたことを特徴とするケースの製造方法。
【請求項2】
上記接着剤層がシート材で構成されている請求項1記載のケースの製造方法。
【請求項3】
上記ケースが家電用品,鞄,収納ケース等の外装部品の一部である請求項1または2記載のケースの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−168106(P2007−168106A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−364995(P2005−364995)
【出願日】平成17年12月19日(2005.12.19)
【出願人】(391036264)株式会社サカン (8)
【Fターム(参考)】