説明

ケースモールド型コンデンサ

【課題】自動車用等に使用されるケースモールド型コンデンサに関し、素子内でP極/N極の半田付け部を結ぶ直線の周辺部分が局所的に高く発熱するという課題を解決し、耐熱性向上と高周波電流への適合性向上を目的とする。
【解決手段】P極/N極電極が両端に設けられた複数のコンデンサ1をバスバー2、3で接続し、これらをケース内に収容して樹脂モールドしたケースモールド型コンデンサにおいて、個々のコンデンサ1におけるP極電極のバスバー2との接続部と、N極電極のバスバー3との接続部を非対称位置にした構成により、高周波電流が流れても、P極電極の半田付け部2cとN極電極の半田付け部3cを結ぶ直線を巻回軸に対し傾斜させたためにコンデンサ1内の多くの部分に電流が流れ易くなり、半田付け部2cと3cを直線で結ぶ周辺のみに電流が集中して発熱が高くなる現象を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種電子機器、電気機器、産業機器、自動車等に使用され、特に、ハイブリッド自動車のモータ駆動用インバータ回路の平滑用、フィルタ用、スナバ用に最適な金属化フィルムコンデンサをケース内に樹脂モールドしたケースモールド型コンデンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護の観点から、あらゆる電気機器がインバータ回路で制御され、省エネルギー化、高効率化が進められている。中でも自動車業界においては、電気モータとエンジンで走行するハイブリッド車(以下、HEVと呼ぶ)が市場導入される等、地球環境に優しく、省エネルギー化、高効率化に関する技術の開発が活発化している。
【0003】
このようなHEV用の電気モータは使用電圧領域が数百ボルトと高いため、このような電気モータに関連して使用されるコンデンサとして、高耐電圧で低損失の電気特性を有する金属化フィルムコンデンサが注目されており、更に市場におけるメンテナンスフリー化の要望からも極めて寿命が長い金属化フィルムコンデンサを採用する傾向が目立っている。
【0004】
そして、このようにHEV用として用いられる金属化フィルムコンデンサには、使用電圧の高耐電圧化、大電流化、大容量化等が強く要求されるため、バスバーによって並列接続した複数の金属化フィルムコンデンサをケース内に収納し、このケース内にモールド樹脂を注型したケースモールド型コンデンサが開発され、実用化されている。
【0005】
図8はこの種の従来のケースモールド型コンデンサの構成を示した分解斜視図であり、図8において、10は金属化フィルムコンデンサ(以下、コンデンサと呼ぶ)を示し、このコンデンサ10はポリプロピレンからなる誘電体フィルムの片面または両面に金属蒸着電極を形成した金属化フィルムを一対とし、上記金属蒸着電極が誘電体フィルムを介して対向する状態で巻回し、両端面に亜鉛を溶射したメタリコン電極を形成することによってP極とN極の一対の取り出し電極を夫々設けて構成されたものである。
【0006】
11はP極バスバー、11aはこのP極バスバー11の一端に設けられた外部接続用のP極端子であり、このP極バスバー11は上記コンデンサ10を複数個密着して並べた状態で各コンデンサ10の一方の端面に形成されたP極電極と夫々接合され、また、P極端子11aはこのコンデンサ10の上方へ引き出され、後述するケース13から表出するようにしているものである。
【0007】
12はN極バスバー、12aはこのN極バスバー12の一端に設けられた外部接続用のN極端子であり、このN極バスバー12も上記P極バスバー11と同様に、上記コンデンサ10を複数個密着して並べた状態で各コンデンサ10の他方の端面に形成されたN極電極と夫々接合され、また、N極端子12aはこのコンデンサ10の上方へ引き出され、後述するケース13から表出するようにしており、これにより、複数個のコンデンサ10がP極バスバー11とN極バスバー12により並列接続状態で連結されているものである。
【0008】
13は樹脂製のケース、14はこのケース13内に充填されたモールド樹脂であり、このモールド樹脂14は上記P極バスバー11とN極バスバー12により並列接続されて連結された複数個のコンデンサ10をケース13内に樹脂モールドしたものである。
【0009】
また、図9は上記複数個のコンデンサ10をP極バスバー11とN極バスバー12により一体に接続することによって連結した構成を、より分かり易くするために簡略化して示したものであり、図8に示すように、一端に外部接続用のP極端子11aを設けたP極バスバー11には枝状に分岐された複数の接合部11bが設けられ、この接合部11bを介してコンデンサ10のP極電極(図8において上面側)と半田付け部11cにより接合されているものである。
【0010】
また、図9において底面側となるN極バスバー12にも上面側のP極バスバー11に設けられた枝状の接合部11bと同様の枝状の接合部12b(図示せず)が上下方向に対称に複数設けられ、これらの図示しない枝状の接合部12bを介して図示しない半田付け部12cにより同様に接合されているものであり、このように構成された従来のケースモールド型コンデンサは、コンデンサ10をモールド樹脂14にてケース13内にモールドしたことにより、機械的強度、耐熱性、耐水性に優れた高信頼性のケースモールド型コンデンサを提供することができるというものであった。
【0011】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2004−146724号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら上記従来のケースモールド型コンデンサでは、図示しない外部機器を介してケースモールド型コンデンサに電流を印加した際に、コンデンサ10の両端面に夫々設けられたP極電極とP極バスバー11に設けられた接合部11bとを接合した半田付け部11cと、同N極電極とN極バスバー12に設けられた接合部12bとを接合した半田付け部12cとを直線で結んだ付近の発熱が、この半田付け部11cと12cとを直線で結んだ付近以外の部分の発熱と比べて大きくなると共に、P極端子11a、N極端子12aに最も近いコンデンサ10の発熱が他のコンデンサの発熱と比べて大きくなり易く、これにより特性劣化を引き起こし易いという課題があった。
【0013】
このような課題は、通常のインバータのスイッチングでよく用いられる数kHzから数10kHzの基本周波数の電流では、上記P極端子11a、P極バスバー11、半田付け部11cを介して入力された電流はコンデンサ10のP極電極全体に伝播し、コンデンサ10の内部を略均一に通過してN極電極全体に伝播した後、半田付け部12cを介してN極バスバー12に流れるものであり、このようなケースモールド型コンデンサに接続された図示しない外部機器が基本周波数でスイッチング動作を行った際に、高調波や他の電子部品との共振等により、100kHz〜数100kHzの高周波電流が流れる場合に顕著に現れるものである。
【0014】
このような基本周波数を大幅に上回るような高周波電流が流れた際のコンデンサ10における電流の流れは、上記半田付け部11cと半田付け部12cが一直線上に上下対称位置に設けられているために、コンデンサ素子内においても、表皮効果のために半田付け部11cと半田付け部12cとを結ぶ直線の周辺付近のみにしか電流が流れず、これにより、半田付け部11cと12cとを結ぶ直線の周辺付近のみが大きく発熱するというものである。
【0015】
また、このような基本周波数を大幅に上回るような高周波電流が流れた際には、複数のコンデンサ10が並列接続されていても、P極端子11aとN極端子12aに最も近く、インダクタンスが小さいコンデンサ10に集中して電流が流れるため、P極端子11aとN極端子12aに近接するコンデンサ10の発熱が更に高くなるということもあった。
【0016】
また、このような現象を詳細に確認したところ、100kHz以上の高周波の電流となると表皮効果の影響が強く、単一素子で見るとメタリコン電極への半田付け箇所によって発熱の影響が異なることが分かった。更にその影響は、外部機器と接続するP極端子11aとN極端子12aに最も近い素子が特に影響を受け易いことも確認できた。
【0017】
本発明はこのような従来の課題を解決し、基本周波数を大幅に上回るような高周波電流が流れた場合でも、コンデンサの特定部分のみが局所的に高く発熱したり、外部端子に近接するコンデンサのみが高く発熱したりすることを抑制し、優れた耐熱性を発揮し、高周波電流にも適合することができるケースモールド型コンデンサを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために本発明は、P極電極とN極電極が夫々両端面に設けられた複数の素子を外部接続用の端子を一端に設けたバスバーで接続し、これらをケース内に収容して樹脂モールドしたケースモールド型コンデンサにおいて、個々の素子におけるP極電極のバスバーとの接続部と、N極電極のバスバーとの接続部が非対称位置になるようにした構成のものである。
【発明の効果】
【0019】
以上のように本発明によるケースモールド型コンデンサは、個々の素子におけるP極電極の半田付け部とN極電極の半田付け部が非対称位置になるようにした構成により、基本周波数を大幅に上回るような高周波電流が流れた場合でも、対称位置に半田付け部を設けた場合よりも素子内に均一に電流が流れ、発熱集中を避けることができるという効果が得られる。
【0020】
これは、一方のメタリコン電極に形成された半田付け部から他方のメタリコン電極に形成された半田付け部に電流が流れるためには、金属蒸着電極よりも電気抵抗が低い一方のメタリコン電極面上で他方のメタリコン電極面の半田付け部の方向に広く電流が流れた後に金属蒸着電極に電流が流れ込むため、これにより素子内で局所的に電流が集中して発熱が高くなるという現象を抑制することができるという効果が得られるものであり、このような効果は、特に高周波電流が集中し易いP極/N極端子近傍の素子に適用することにより、より大きな効果が得られるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(実施の形態1)
以下、実施の形態1を用いて、本発明の特に全請求項に記載の発明について説明する。
【0022】
図1は本発明の実施の形態1によるケースモールド型コンデンサの構成を示した樹脂モールド前の斜視図、図2は図1の平面図、図3は図1の分解斜視図であり、図1〜図3において、1は金属化フィルムコンデンサ(以下、コンデンサと呼ぶ)であり、このコンデンサ1は夫々ポリプロピレンからなる誘電体フィルムの片面、または両面に金属蒸着電極を形成した金属化フィルムを一対とし、上記金属蒸着電極が誘電体フィルムを介して対向する状態で巻回し、両端面に亜鉛を溶射したメタリコン電極を夫々形成することによってP極電極(図1において上面側)とN極電極(図1において底面側)の一対の取り出し電極を設けて構成されたものであり、このように構成されたコンデンサ1を2列に、各2個併設したものである(なお、コンデンサ1の個数はこれに限定されるものではない)。
【0023】
2はP極バスバー、2aはこのP極バスバー2の一端に設けられて上方へ引き出された外部接続用のP極端子、2bはこのP極バスバー2から枝状に複数に分岐されて半田付け部2cで各コンデンサ1のP極電極と夫々半田付けされる接合部である。
【0024】
3はN極バスバー、3aはこのN極バスバー3の一端に設けられて上方へ引き出された外部接続用のN極端子、3bはこのN極バスバー3から枝状に複数に分岐されて半田付け部3cで各コンデンサ1のN極電極と夫々半田付けされる接合部であり、この接合部3bならびに半田付け部3cは上記P極バスバー2に設けられた接合部2bならびに半田付け部2cと上下方向で非対称位置になるように、すなわち、コンデンサ1の巻回軸に対して傾斜した線で結ばれるように設けられているものである。
【0025】
そして、このようにP極バスバー2、N極バスバー3により一体に連結された複数個のコンデンサ1を図示しないケースに収容した後、このケース内に図示しない絶縁性のモールド樹脂を充填することによって本実施の形態によるケースモールド型コンデンサが構成され、上記図示しないモールド樹脂から表出したP極端子2aとN極端子3aを介して図示しない外部機器に接続するようにしたものである。
【0026】
なお、本実施の形態においては、誘電体フィルムとして厚みが3μmのポリプロピレンフィルムを用いた。また、コンデンサ1は100μFの静電容量を有し、このコンデンサ1が4個並列接続されているために400μFのコンデンサとなっているものである。
【0027】
このように構成された本実施の形態によるケースモールド型コンデンサは、個々のコンデンサ1におけるP極電極の半田付け部2cとN極電極の半田付け部3cが非対称位置になるようにした構成により、基本周波数を大幅に上回るような高周波電流が流れた場合でも、対称位置に半田付け部を設けた場合よりも、個々のコンデンサ1のP極電極の半田付け部2cからP極電極のメタリコン面上を反対側となるN極電極の半田付け部3cの方向に広く電流が流れ易くなるため、巻回した金属化フィルム内にも広く電流が流れる。N極電極のメタリコン面の半田付け部3cから見た場合においても、同様のメカニズムで素子内に広く電流が流れる。
【0028】
この電流が流れる際に、半田付け部2cと半田付け部3cはコンデンサ1の巻回軸に対して傾斜した線で結ばれているために、表皮効果の影響があっても、コンデンサ1の内部の多くの部分に電流が流れるようになり、これにより、半田付け部2cと3cを結ぶ直線付近の周辺のみに電流が集中して発熱が高くなるという現象を抑制することができるという格別の効果を奏するものである。
【0029】
更に、このような効果により、P極端子2aとN極端子3aに近接するコンデンサ1の発熱が高くなるという現象も抑制されるという格別の効果も奏し、耐熱性に優れ、かつ、高周波電流に適合することができるケースモールド型コンデンサを実現することができるようになるものである。
【0030】
なお、このように構成された本実施の形態によるケースモールド型コンデンサの耐熱性を評価した結果を比較例としての従来品と比較して(表1)に示す。
【0031】
なお、評価方法としては、300kHzの正弦波リプル電流30Armsを通電した際のP極電極に最も近いコンデンサの中心位置(巻芯内)と、偏平部表面位置の温度上昇を測定したものであり、素子中心の温度測定は、素子の巻芯内に熱電対を挿入して測定し、また、偏平部表面の温度測定は、熱電対を素子の偏平部の表面に貼り付けて測定した。
【0032】
また、比較例としての従来品の構成は、図7の斜視図にその詳細を示すように、半田付け部を対称位置に設けた以外は実施の形態1と同様にして作製したものである。
【0033】
図7において、6はP極バスバー、6aはこのP極バスバー6の一端に設けられて上方へ引き出された外部接続用のP極端子、6bはこのP極バスバー6から枝状に複数に分岐されて半田付け部6cで各コンデンサ1のP極電極と夫々半田付けされる接合部である。
【0034】
7はN極バスバー、7aはこのN極バスバー7の一端に設けられて上方へ引き出された外部接続用のN極端子、7bはこのN極バスバー7から枝状に複数に分岐されて半田付け部7cで各コンデンサ1のN極電極と夫々半田付けされる接合部であり、この接合部7bならびに半田付け部7cは上記P極バスバー6に設けられた接合部6bならびに半田付け部6cと上下方向で対称位置になるように、すなわち、コンデンサ1の巻回軸に対して平行に最短距離の直線で結ばれるように設けられているものである。
【0035】
【表1】

【0036】
(表1)から明らかなように、本実施の形態によるケースモールド型コンデンサは、個々の素子におけるP極電極の半田付け部とN極電極の半田付け部が非対称位置になるようにした構成により、素子中心の温度上昇が比較例よりも6K小さく、なおかつ、偏平部表面との温度差も小さいことが分かる。これは、300kHzという高周波の電流であっても、コンデンサの素子中心部の局所的な発熱を低減させることが可能になったことを意味しているものである。
【0037】
また、比較例は半田付け部が対称位置であるために、表皮効果の影響をまともに受けてメタリコン電極面には殆ど電流が流れず、半田付け部6cと7cを直線で結んだ周辺のみに発熱が極端に集中するため、半田付け部6cと7cの近くに位置するコンデンサの素子中心の温度上昇が実施の形態1よりも高くなっているものである。
【0038】
なお、本実施の形態においては、図1〜図3に示すような非対称位置の半田付け位置を例にして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、素子の巻回軸に対して非対称位置になっているものであれば同様の効果を発揮することができるものである。
【0039】
また、本実施の形態においては、1つのメタリコン電極面に2点の半田付けを行う2点
半田を例にして説明したが、本発明は2点に限定されるものではない。
【0040】
さらに、本発明は、特に、外部機器に接続するP極/N極端子に近い素子に対してこのような半田付け位置を適用するのが有効であり、言い換えれば、P極/N極端子から遠い素子には高周波電流が流れ難いために、半田付け位置を非対称にしなくても影響は少ないものである。従って、バスバーを作製する材料の歩留まりを考えると、P極/N極端子に近い素子には半田付け部を非対称に設け、P極/N極端子から遠い素子には半田付け部を対称位置に設けるような組み合わせを行うことも可能であり、これによりコスト面での効果が大きくなるものである。
【0041】
(実施の形態2)
以下、実施の形態2を用いて、本発明の特に全請求項に記載の発明について説明する。
【0042】
本実施の形態は、上記実施の形態1で図1〜図3を用いて説明したケースモールド型コンデンサに使用されるP極バスバーとN極バスバーの構成が一部異なるようにしたものであり、これ以外の構成は実施の形態1と同様であるために同一部分には同一の符号を付与してその詳細な説明は省略し、異なる部分についてのみ以下に図面を用いて説明する。
【0043】
図4は本発明の実施の形態2によるケースモールド型コンデンサの構成を示した樹脂モールド前の斜視図、図5は図4の平面図、図6は図4の分解斜視図であり、図4〜図6において、1は上記実施の形態1と同様に形成されたコンデンサである。
【0044】
4はP極バスバー、4aはこのP極バスバー4の一端に設けられて上方へ引き出された外部接続用のP極端子、4bはこのP極バスバー4から枝状に複数に分岐されて半田付け部4cで各コンデンサ1のP極電極と夫々半田付けされる接合部である。
【0045】
5はN極バスバー、5aはこのN極バスバー5の一端に設けられて上方へ引き出された外部接続用のN極端子、5bはこのN極バスバー5から枝状に複数に分岐されて半田付け部5cで各コンデンサ1のN極電極と夫々半田付けされる接合部であり、この接合部5bならびに半田付け部5cは上記P極バスバー4に設けられた接合部4bならびに半田付け部4cと上下方向で非対称位置になるように、すなわち、コンデンサ1の巻回軸に対して傾斜した線で結ばれるように設けられているものである。
【0046】
そして、このようにP極バスバー4、N極バスバー5により一体に連結された複数個のコンデンサ1を図示しないケースに収容した後、このケース内に図示しない絶縁性のモールド樹脂を充填することによって本実施の形態によるケースモールド型コンデンサが構成され、上記図示しないモールド樹脂から表出したP極端子4aとN極端子5aを介して図示しない外部機器に接続するようにしたものである。
【0047】
このように構成された本実施の形態によるケースモールド型コンデンサの耐熱性を評価した結果を上記(表1)に併せて記載する。
【0048】
(表1)から明らかなように、本実施の形態によるケースモールド型コンデンサは、個々の素子におけるP極電極の半田付け部とN極電極の半田付け部が非対称位置になるようにした構成により、素子中心の温度上昇が比較例よりも5K小さく、なおかつ、偏平部表面との温度差も小さいことが分かる。これは、300kHzという高周波の電流であっても、コンデンサの素子中心部の局所的な発熱を低減させることが可能になったことを意味しているものである。
【0049】
また、比較例は半田付け部が対称位置であるために、表皮効果の影響をまともに受けてメタリコン電極面には殆ど電流が流れず、半田付け部6cと7cを直線で結んだ周辺のみに発熱が極端に集中するため、半田付け部6cと7cの近くに位置するコンデンサの素子中心の温度上昇が実施の形態1よりも高くなっているものである。
【0050】
このように構成された本実施の形態によるケースモールド型コンデンサは、上記実施の形態1によるケースモールド型コンデンサと同様に、基本周波数を大幅に上回るような高周波電流が流れた場合でも、個々のコンデンサ1のP極電極の半田付け部4cからメタリコン電極面上を広く電流が流れた後、巻回された金属化フィルム内に広く電流が供給され、N極側のメタリコン電極面を介してN極電極の半田付け部5cへと電流が流れるようになる。すなわち、この電流が流れる際に、半田付け部4cと半田付け部5cはコンデンサ1の巻回軸に対して傾斜した線で結ばれているためにコンデンサ1の内部の多くの部分に電流が流れるようになり、これにより半田付け部4cと5cを結んだ直線の周辺のみに電流が集中して発熱が高くなるという現象を抑制し、更に、P極端子4aとN極端子5aに近接するコンデンサ1の発熱が高くなるという現象も抑制することができるという格別の効果を奏し、耐熱性に優れ、高周波電流に適合することが可能なケースモールド型コンデンサを実現することができるようになるものである。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明によるケースモールド型コンデンサは、コンデンサの特定部分が局所的に高く発熱したり、外部接続用の端子に近接したコンデンサのみが高く発熱したりすることが無く、優れた耐熱性を発揮することができるという効果を有し、特にハイブリッド自動車等の自動車用分野のコンデンサ等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施の形態1によるケースモールド型コンデンサの構成を示した樹脂モールド前の斜視図
【図2】図1の平面図
【図3】図1の分解斜視図
【図4】本発明の実施の形態2によるケースモールド型コンデンサの構成を示した樹脂モールド前の斜視図
【図5】図4の平面図
【図6】図4の分解斜視図
【図7】比較例によるケースモールド型コンデンサの構成を示した樹脂モールド前の斜視図
【図8】従来のケースモールド型コンデンサの構成を示した分解斜視図
【図9】従来のケースモールド型コンデンサの構成を簡略化して示した平面図
【符号の説明】
【0053】
1 コンデンサ
2、4 P極バスバー
2a、4a P極端子
2b、3b、4b、5b 接合部
2c、3c、4c、5c 半田付け部
3、5 N極バスバー
3a、5a N極端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
P極電極とN極電極が夫々両端面に設けられた複数の素子を外部接続用の端子を一端に設けたバスバーで接続し、これらをケース内に収容して少なくとも上記バスバーに設けた端子を除いて樹脂モールドしたケースモールド型コンデンサにおいて、個々の素子におけるP極電極のバスバーとの接続部と、N極電極のバスバーとの接続部が非対称位置になるようにしたケースモールド型コンデンサ。
【請求項2】
素子として巻回型の素子を用い、個々の素子におけるP極電極のバスバーとの接続部と、N極電極のバスバーとの接続部が、素子の巻回軸に対して傾斜した線で結ばれるようにした請求項1に記載のケースモールド型コンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−258405(P2008−258405A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−99153(P2007−99153)
【出願日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】