説明

ケーブルの片撚り検出方法

【課題】インラインで連続的に正確な検出が行え、また非接触にもかかわらずコストの増加の少ないケーブルの片撚り検出方法を提供する。
【解決手段】一対のコア10a,10bを移動させながら対撚りしてケーブル11を作製する際にインラインで連続的に片撚りを検出するケーブルの片撚り検出方法であって、ケーブル11における対撚りの山12の高さを光透過型光電センサ13a,13bで非接触にて検出することにより対撚り周期を求め、その対撚り周期の変化に基づいて片撚りの発生を検出するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対撚りが必要なケーブルの片撚り検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ケーブルの片撚りを検出するためには、対撚りが完成している部分に平滑な物をあてがい、一対のコアが双方ともあてがった平滑な物に接するか否かを目視で確認することで片撚りを検出していた。
【0003】
その他にも、被測定対象となる特定の対象絶縁電線のみに信号を与え、撚合ケーブルを軸方向に移動させつつ、撚合ケーブルの外表面に近接したセンサによって対象絶縁電線の信号が周囲に与える電磁的又は静電的影響の変化を検出することで、センサと対象絶縁電線との離間距離の変化を検出し、検出された離間距離の変化と、撚合ケーブルの軸方向への移動長とに基づいて、対象絶縁電線の撚合周期を演算検出する方法(特許文献1参照)を用いて片撚りを検出することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−125151号公報
【特許文献2】特開平7−324289号公報
【特許文献3】特開昭63−59493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、対撚りが完成している部分に平滑な物をあてがって片撚りを検出する方法では、物をあてがった部分における片撚りの判定しかできず、ケーブルの全長に亘って連続的に片撚りを検出することはできないため、片撚りの発生をリアルタイムで確認することはできなかった。また、物理的に物を接触させて片撚りを判定していたため、ケーブルに外傷を与えてしまう可能性があった。更に、片撚りの判定は人が目視で実施するため、測定者の違いで判定に違いが発生する可能性があった。
【0006】
特許文献1の方法を用いて片撚りを検出する場合には、被測定対象となる特定の対象絶縁電線に信号を与えなければならないので、そのための設備が必要となり、センサに加えて更なるコストの増加が見込まれる。
【0007】
そこで、本発明の目的は、インラインで連続的に正確な検出が行え、また非接触にもかかわらずコストの増加の少ないケーブルの片撚り検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために創案された本発明は、一対のコアを移動させながら対撚りしてケーブルを作製する際にインラインで連続的に片撚りを検出するケーブルの片撚り検出方法であって、前記ケーブルにおける対撚りの山の高さを光透過型光電センサで非接触にて検出することにより対撚り周期を求め、その対撚り周期の変化に基づいて片撚りの発生を検出するケーブルの片撚り検出方法である。
【0009】
また本発明は、一対のコアを移動させながら対撚りしてケーブルを作製する際にインラインで連続的に片撚りを検出するケーブルの片撚り検出方法であって、前記ケーブルにおける対撚りの山の高さを光透過型光電センサで非接触にて検出すると共に前記一対のコアの色相を判別することによりコア毎に対撚り周期を求め、その対撚り周期の変化に基づいて片撚りの発生を検出すると共にどちらのコアの張力が異常なのかを識別し、その識別の結果に基づいてコアの張力を調整するケーブルの片撚り検出方法である。
【0010】
前記コアの色相を光反射型光電センサで判別すると良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、インラインで連続的に正確な検出が行え、また非接触にもかかわらずコストの増加の少ないケーブルの片撚り検出方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るケーブルの片撚り検出方法を説明する図である。
【図2】対撚りの山の高さ、対撚り周期を説明する図である。
【図3】実施例で用いたケーブルを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0014】
図1,2に示すように、本実施の形態に係るケーブルの片撚り検出方法は、一対のコア10a,10bを移動させながら対撚りしてケーブル11を作製する際にインラインで連続的に片撚りを検出するものであり、ケーブル11における対撚りの山12の高さを光透過型光電センサ13a,13bで非接触にて検出することにより対撚り周期を求め、その対撚り周期の変化に基づいて片撚りの発生を検出することを特徴とする。
【0015】
一対のコア10a,10bは、撚合機にて対撚りされてケーブル11とされ、そのケーブル11は、一対の光透過型光電センサ13a,13bの間に通された後、引取機にて所定の引取速度で引き取られる。
【0016】
ケーブル11の表面形状は、対撚りの山12(図2の実線部分)が周期的に繰り返される形状となっており、軸方向に直線的に移動するケーブル11の山12の高さが遷移する周期(例えば、山12の高さが最も高くなる位置A又は最も低くなる位置Bが現れる周期)を固定設置した光透過型光電センサ13a,13bで非接触にて検出することにより、対撚り周期を求めることができる。
【0017】
光透過型光電センサ13a,13bは、一方の光透過型光電センサ13aから照射された光を他方の光透過型光電センサ13bで受光して、検出対象物(ケーブル11)によって遮光される光量の変化を検出し出力信号(例えば、ON又はOFF)を得るものである。
【0018】
光透過型光電センサ13a,13bは、磁気センサなどに比べて検出距離が長く、ケーブル11に対する距離を緻密に決める必要がないため、光軸合わせさえできれば比較的容易且つ正確に対撚り周期を求めることができる。
【0019】
例えば、対撚りの山12の頂点部(位置A)で光透過型光電センサ13a,13bがOFFとなるようにこれらの光軸合わせをすれば、光透過型光電センサ13a,13bとケーブル11との距離はさほど気にしなくても容易且つ簡単に対撚り周期を求めることができる。
【0020】
また、光透過型光電センサ13a,13bは非接触で検出が行えるため、ケーブル11に外傷を与えることがない。加えて、光透過型光電センサ13a,13b自体も傷付かないため、光透過型光電センサ13a,13bの寿命が長く、またメンテナンスの必要がない。
【0021】
片撚りの発生を検出するだけであれば、対撚り周期が変化した箇所を片撚りの発生箇所として検出すれば良いし、片撚りの程度をも検出する場合には、ケーブル11の引取速度と対撚りのピッチとから導き出される単位時間当たりの位置A又は位置Bの出現回数(出力信号のON、OFFの周期(波形))の理論値と、光透過型光電センサ13a,13bで検出した対撚り周期とを比較してそのズレの大小で検出すれば良い。
【0022】
前者の場合は片撚りが発生した時点で警報を発し、後者の場合はズレが規定値以上になった時点で警報を発して作業者などに知らせるようにする。これにより、作業者の判断で製造ラインを停止させるなど状況に合わせた種々の対応が容易に行えるようになる。
【0023】
このように、本実施の形態に係るケーブルの片撚り検出方法では、ケーブル11の製造ラインに光透過型光電センサ13a,13bを新たに設けるだけでケーブル11の片撚りを検出することができるため、特許文献1などの技術を利用した場合に比べてコストの増加を抑えることができる。
【0024】
更に、検出した片撚りの発生結果をケーブル11の製造ラインにフィードバックすることも考えられる。具体的には、図3に示すように、色相の異なる一対のコア10a,10bを用いてケーブル11を作製する際に、ケーブル11における対撚りの山12の高さを光透過型光電センサ13a,13bで非接触にて検出すると共に一対のコア10a,10bの色相を判別することによりコア10a,10b毎に対撚り周期を求め、その対撚り周期の変化に基づいて片撚りの発生を検出すると共にどちらのコア10a又は10bの張力が異常なのかを識別し、その識別の結果に基づいてコア10a又は10bの張力を調整する。
【0025】
この場合、コア10a,10bの色相を光反射型光電センサ14で判別すると良い。光反射型光電センサ14は、検出対象物(コア10a,10b)に光を照射し、その反射光の受光量の変化で色の判別を行うものである。これは色相毎に光の反射率や吸収率が異なることを利用したものである。
【0026】
このようにしてコア10a,10b毎に対撚り周期を求め、その結果を製造ラインにフィードバックしてコア10a又は10bの張力を適切に調整することで、製造ラインを停止させることなく片撚り異常に起因する不良の発生を抑制し、ケーブル11の製造コストの増加をも防止することができる。
【0027】
以上説明したように、本発明によれば、インラインで連続的に正確な検出が行え、また非接触にもかかわらずコストの増加の少ないケーブルの片撚り検出方法を提供することができる。
【実施例】
【0028】
次に、本発明の実施例を説明する。
【0029】
図3に示したように、導体断面積が0.3mm2、外径が1.7mmである白色のコア10aと黒色のコア10bとから構成される対撚りのピッチが34mmのケーブル11を作製する際に本発明に係るケーブルの片撚り検出方法を実施した。
【0030】
このとき、ケーブル11の引取速度を40.8m/minとし、対撚り後のケーブル11を通す光透過型光電センサ13a,13bの焦点を対撚りの山12の頂点部(位置A)が塞ぐぎりぎりの位置に配置すると共にその焦点をコア端面から0.5mmの位置に設定し、光反射型光電センサ14の焦点をコア端面から1.0mmの位置に設定し、更に光透過型光電センサ13a,13bの出力が、ケーブル11のピッチと引取速度とから導かれる40Hz以下になると警報を発するように設定した。
【0031】
そして、ケーブル11の片撚りを検出したところ、インラインで連続的に規格範囲内の片撚りを検出することができ、即時に片撚り異常の発生を知り得ることができた。また、非接触であるため、外傷など品質に影響を与えることなくケーブル11を作製することができた。
【符号の説明】
【0032】
10a,10b コア
11 ケーブル
12 山
13a,13b 光透過型光電センサ
14 光反射型光電センサ
A,B 位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のコアを移動させながら対撚りしてケーブルを作製する際にインラインで連続的に片撚りを検出するケーブルの片撚り検出方法であって、
前記ケーブルにおける対撚りの山の高さを光透過型光電センサで非接触にて検出することにより対撚り周期を求め、その対撚り周期の変化に基づいて片撚りの発生を検出することを特徴とするケーブルの片撚り検出方法。
【請求項2】
色相の異なる一対のコアを移動させながら対撚りしてケーブルを作製する際にインラインで連続的に片撚りを検出するケーブルの片撚り検出方法であって、
前記ケーブルにおける対撚りの山の高さを光透過型光電センサで非接触にて検出すると共に前記一対のコアの色相を判別することによりコア毎に対撚り周期を求め、その対撚り周期の変化に基づいて片撚りの発生を検出すると共にどちらのコアの張力が異常なのかを識別し、その識別の結果に基づいてコアの張力を調整することを特徴とするケーブルの片撚り検出方法。
【請求項3】
前記コアの色相を光反射型光電センサで判別する請求項2に記載のケーブルの片撚り検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−84506(P2013−84506A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224893(P2011−224893)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】