説明

ケーブルドラム支持装置

【課題】 ケーブルドラムが高速回転となることを防止できて、ケーブルドラムからのケーブルの流れ出しを抑制することができるケーブルドラム支持装置を提供する。
【解決手段】 ケーブルドラム支持装置1は、ケーブルドラム16を回転自在に支持する支持部10を有する支持体2と、ケーブルドラム16の回転速度を検出するロータリエンコーダ21とを備えると共に、ケーブルドラム16の回転に制動力を付与するブレーキ機構29と、ロータリエンコーダ21による検出速度が設定速度を超えることに基づきブレーキ機構29を作動させる制御盤42とを備えている。この構成によれば、ケーブルドラム16の回転速度が設定速度を超えるとブレーキ機構29が作動し、これによりケーブルドラム16の回転に対し制動力を付与できるので、ケーブルドラム16が高速回転となることを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルが巻回されたケーブルドラムを回転可能に支持するケーブルドラム支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば電力用や通信用のケーブルが巻回されたケーブルドラムを支持するケーブルドラム支持装置においては、ジャッキにより上下方向への移動が可能に設けられた一対の支持部と、ドラム受用軸とを備え、このドラム受用軸を前記ケーブルドラムの中心孔に挿通し該ドラム受用軸の両端部を前記支持部に回転自在に支持させることにより、前記ケーブルドラムを前記ドラム受用軸を介して前記支持部に回転自在に設ける構成としたものが供されている。
この種の支持装置を使用して、ケーブル布設工事を行なう場合、前記ケーブルドラムは単に前記支持部に回転自在に支持されているにすぎないので、作業者がケーブルを持って移動する際の速度が変化する等の事情によっては、ケーブルドラムの慣性によりケーブルドラムの過回転が発生する。このような場合、ケーブルに弛みが生じて、ケーブルの絡み等が発生する。
【0003】
このようなことに対処するため、ケーブルの弛み具合を検知するケーブル弛み検知手段と、ケーブルドラムに固定されたドラム受用軸の回転を制動するブレーキ手段と、前記ケーブル弛み検知手段による該ケーブルの弛み具合に応じて前記ブレーキ手段を作用させる制御手段とを備えたブレーキ手段つきのものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−219435号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記ケーブル布設工事において、ケーブルドラムを上方に設置して、その設置位置より下方にケーブルを延線する場合等に、該ケーブルは、その自重により落下する可能性がある。
ここで、ケーブルドラムが従来の一般的な支持装置により支持されている場合、前記ケーブルドラムは自由に空回りする状態にある為、作業者は、角材等をケーブルドラムの鍔に押し当ててケーブルの回転を制動させながら作業を行なうことがあるが、ケーブルの繰り出し量が過大になると、繰り出されたケーブルの荷重によりケーブルドラムの回転の制動が不可能となり、ケーブルドラムの慣性によりさらにケーブルが流れ出すと共に、前記支持部に支持されたケーブルドラム自体もバランスを失い、該ケーブルドラムが支持装置ごと転倒する等の危険性があった。
【0005】
また、前述したブレーキ手段付きのものにおいても、このような事態に対処できず、ケーブルドラムの回転の制動が行なわれない場合がある。即ち、前記ケーブル弛み検知手段は、ケーブルの弛みを検知するにすぎないので、例えばケーブルが弛むことなく流れ出したような場合、そのケーブルの流れ出しを前記ケーブル弛み検知手段によっては検出できないことがある。このような場合には、前記制御手段による前記ドラム受用軸の回転の制動も行なわれない為、高速回転となったケーブルドラムがバランスを失い支持装置ごと転倒する惧れがあるのである。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ケーブルドラムが高速回転となることを防止できて、ケーブルドラムからのケーブルの流れ出しを抑制することができるケーブルドラム支持装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、ケーブルドラムを回転自在に支持する支持部を有する支持体と、
前記ケーブルドラムの回転速度を検出する回転速度検出手段と、
前記ケーブルドラムの回転に制動力を付与するブレーキ機構と、
前記回転速度検出手段による検出速度が設定速度を超えることに基づき前記ブレーキ機構を作動させる制御手段とを備えたことを特徴としている。
この構成によれば、ケーブルドラムの回転速度が設定速度を超えると、前記ブレーキ機構が作動し、これにより該ケーブルドラムの回転に対し制動力を付与できるので、ケーブルドラムが高速回転となることを防止することができる。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明のケーブルドラム支持装置によれば、ケーブルドラムが高速回転となることを防止でき、ひいてはケーブルの流れ出しを抑えることができる効果を得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施例について図面を参照して説明する。
まず、図3は、本発明のケーブルドラム支持装置の概略的な斜視図を示す。
そして、図1はこのケーブルドラム支持装置の概略的な側面図、図2はその平面図を示す。ケーブルドラム支持装置1の支持体2は、図1及び図2に示すように、長尺な鋼材からなる一対の左フレーム3及び右フレーム4と、これらの後部(図1において右部)間にねじ(図示せず)により連結されたフレーム連結部材5を備えていて、上方から見て全体として略コの字状となるように構成されている(図2参照)。
【0010】
左右の両フレーム3、4の後端部には、支持柱6が立設されている。これら両支持柱6の上端には一対の軸受7が設けられ、該軸受7、7に支軸8が挿通されている。
尚、フレーム3、4には、それぞれ複数の自在車9が取付板9aを介して取り付けられており、フレーム3、4は、それぞれ単独の状態、乃至フレーム連結部材5により連結された状態で床面G上(図1参照)を自由に移動することができるように構成されている。
【0011】
かようにして構成された支持体2には、前記支軸8を支点として、支持部10たる左アーム11、右アーム12が上下方向に回動可能に取り付けられている。左右の各アーム11、12は、その略中央部の下方を、左、右フレーム3、4の上面に設けられたジャッキ13により支持されるようになっている。該ジャッキ13にはレバー13aが着脱可能に設けられており、このレバー13aによりジャッキ13を作動させることによって、左右の各アーム11、12が支軸8を支点に上下方向へ回動されるように構成されている。
これらアーム11、12のそれぞれの他端部(支軸8、8が装着される一端部の反対の端部)の上方には軸受14が設けられている。この軸受14は、図1に示すように、ヒンジ部を介して開閉可能に連結された分割構成としている。
【0012】
前記軸受14、14には、回転軸15が回転自在に取り付けられるようになっている。この回転軸15には、ケーブルドラム16が装着された状態で、該ケーブルドラム16の両端が楔状の駒17、17で押さえられると共にバックル17aにて固定される。そして、該回転軸15の両端がそれぞれ軸受14により回転自在に支持されることで、ケーブルドラム16は、回転軸15と一体となって、アーム11、12に回転自在に支持されるようになっている。さらに、前記駒17、17の外側には水準器17bがそれぞれ設けられており、回転軸15の水平状態を前記ジャッキ13によって調整することができるように構成されている。
【0013】
前記回転軸15の左アーム11側の端部には、この回転軸15と一体に回転する歯車18が設けられている。また、左アーム11の先端部には、歯車18と噛合する歯車19が設けられていて、この歯車19と一体に回転する軸20に、回転速度検出手段を構成するロータリエンコーダ21が設けられている(図1、図3参照)。ロータリエンコーダ21は、軸20の回転に応じてパルス信号を発生するように構成されている。この場合、ロータリエンコーダ21は、軸20が一回転すると、予め決まった数のパルスが発生されるように構成されており、該ロータリエンコーダ21から出力されるパルス数によって、軸20の回転速度ひいてはケーブルドラム16の回転速度を検知可能な構成となっている。
【0014】
さらに、左アーム11には、前記ケーブルドラム16を回転駆動させる駆動装置を構成するモータ22がスライドベース23を介して設けられている。このモータ22は、ブレーキ付きのギアードモータからなり、正逆回転が可能な構成となっている。スライドベース23には以下のような送り機構が備えられている。即ち、該送り機構は、左アーム11の後方(図1中、右)の端部の軸受11aを介してスライドベース23の移動方向に対して平行に支持された送りねじ軸24と、この送りねじ軸24を回転させる送りハンドル25とを備えると共に、送りねじ軸24に螺合したナット部材26がスライドベース23にコイルばね27を介して設けられている。
【0015】
他方、モータ22は、その回転軸に、例えばゴム製のローラ28を備え、このローラ28の外周と前記ケーブルドラム16の鍔の外周16aとが接するよう位置決めされた状態で、前記スライドベース23上にねじ22a(図3参照)により固定されるようになっている。
これにより、前記送りハンドル25を操作すると、前記送りねじ軸24が回転し、送りねじ軸24に螺合されたナット部材26との協動により、スライドベース23ひいてはモータ22が、送りねじ軸24に沿った方向へと移動されるよう構成されている。
【0016】
前記左アーム11の下方(図1参照)には、ブレーキ機構29が設けられている。図4はこのブレーキ機構29の部分破断側面図、図5はその平面図、図6は正面側から見た要部の破断正面図を示す。
ブレーキ機構29の支持板は、両端部の曲げ加工により断面が略コの字状をなす金属板製の第一の支持板30、第二の支持板31、第三の支持板32を備え、第三の支持板32の両端部32a、32aにおいて、第一の支持板30及び第二の支持板31が対向し、且つこれら支持板30、31の下端部が位置決めされた状態でねじ(図示せず)により固定されることによって、全体として略U字形となるように構成されている。
【0017】
第一の支持板30の略中央部には軸受30aが設けられると共に、第二の支持板31の略中央部にも軸受31aが設けられている。これら軸受30a、31aにねじ軸33が挿着されることで、ねじ軸33は、ブレーキ機構29の支持板に回転可能に取り付けられている。
前記ねじ軸33と螺合するナット部材34には、取付部材35を介してブレーキシュー36が揺動可能に取り付けられている。このブレーキシュー36の前方(図4中、左方)側の表面には、例えば、多数の半球状若しくは角錐状の小突起36aが設けられている。また、前記取付部材35は、その前方の端部に、軸35aを支点として揺動可能に設けられた揺動部35bを有し、該揺動部35bの両端部が、前記ブレーキシュー36の後方(図4中、右方)から該ブレーキシュー36の上下の両端部を支持するように取り付けられている。
【0018】
第一の支持板30には、ぜんまいばね37を収容したばねケース38が設けられている。ぜんまいばね37は、その一端部である巻始端部をねじ軸33に連結すると共に、他端部である巻終端部をばねケース38側に連結している。ねじ軸33の一端部にはハンドル39が装着されており、該ハンドル39を巻き方向(図6中、矢印A方向)に操作すれば、ねじ軸33も一体となって巻き方向に回転し、ねじ軸33に螺合されたナット部材34との協動により、取付部材35ひいてはブレーキシュー36が、ねじ軸33に沿って後方(図4中、矢印C方向)へと移動されるよう構成されている。
【0019】
これにより、前記ぜんまいばね37は巻き締められ、ねじ軸33に戻り方向(図6中、矢印B方向)の回転力を付与すると同時に、ブレーキシュー36がねじ軸33に沿って前方(図4中、矢印D方向)へ移動する力を付与される。即ち、ぜんまいばね37は、ブレーキシュー36を前方へ移動する力を付与する手段として機能するものである。
【0020】
ねじ軸33の先端部付近にはラチェット機構40が設けられている。このラチェット機構40は、ねじ軸33にこれと一体に回転するように設けられたストッパギア40aと、レバー40bを有して軸40cを中心に回動可能に設けられたラチェット40dと、レバー40bを介してラチェット40dをストッパギア40aに係合させる方向に付勢する引張りコイルばね40eとを備えて構成されている。このラチェット機構40はストッパギア40aひいてはねじ軸33の矢印A方向(図6参照)への回転は許容するが、ラチェット40dがストッパギア40aに係合することでストッパギア40aひいてはねじ軸33の戻り方向(矢印B方向)への回転を阻止する構成となっている。
【0021】
前記レバー40bの先端部付近にはソレノイド41が設けられていて、このソレノイド41の非作動状態(断電状態)で、ロッド41aの先端部がレバー40bの先端部に上方から当接している。このソレノイド41が通電されて作動状態になると、ロッド41aが下方(図6中、矢印X方向)へ突出してレバー40bを下方へ押すことに伴い、ラチェット40dが、反時計回り方向(矢印Y方向)へ回転されてストッパギア40aに対する係合が外れる。すると、ねじ軸33の戻り方向への回転の制止が解除され、ぜんまいばね37の戻り力によりねじ軸33が戻り方向(矢印B方向)へ回転される。これによりブレーキシュー36がねじ軸33に沿って前方へ移動され、ケーブルドラム16の鍔の外周16aに衝突するようになっている。このときぜんまいばね37はブレーキシュー36がケーブルドラム16の鍔に当たった後も、ブレーキシュー36をケーブルドラム16の鍔に押し当てる方向へ付勢するように設定されている。
【0022】
また、支持体2には、図3に示すように、左フレーム3の後方に位置させて制御手段を構成する制御盤42が設けられ、その制御盤42には操作手段たるコントローラ43がケーブル43aを介して接続されている。コントローラ43は、前記モータ22を操作する操作部44と、非常停止用操作部たる非常停止用スイッチ45とを備えている。前記操作部44は、モータ22の起動スイッチ44a、停止スイッチ44b、正転逆転切換スイッチ44c、及び速度調整ボリューム44dを具備して構成されている。さらに、前記制御盤42の上方には、電源操作部46と、非常停止用操作手段としての非常停止用スイッチ47とが配設されて、それぞれ制御盤42に接続されている。
【0023】
前記制御盤42の内部には制御回路、例えばマイクロコンピュータ(図示せず)が収められている。このマイクロコンピュータは、ケーブルドラム16の回転を制御するための制御プログラムを記憶している。即ち、該マイクロコンピュータは、前記操作部44及び非常停止用スイッチ45、47からの各種スイッチ信号、及び前記ロータリエンコーダ21からの回転速度検出信号を受けるように構成されており、モータ22及びブレーキ機構29を作動させるように構成されている。具体的には、二個の非常停止用スイッチ45、47の何れかが操作されたとき、または、ロータリエンコーダ21による検出速度が設定速度を超えたときに、マイクロコンピュータは、前記ソレノイド41を作動してブレーキ機構29を作動させると共に、モータ22を停止させるように構成されている。
【0024】
このほか、左フレーム3及び右フレーム4の前方にはアジャスタ48がそれぞれ設けられている(図1及び図2参照)。アジャスタ48、48は、これらを調整することによって、アジャスタ48、48が床面Gに接地された状態で両フレーム3、4の前方の自在車9を床面Gから浮かせて、ケーブルドラム支持装置1を固定するように構成されている。
他方、図2に示すように、左フレーム3及び右フレーム4の後方にはアイボルト49、49が配設されている。アイボルト49、49は、例えば、壁にワイヤ49a、49aを介して連結されて、ケーブルドラム支持装置1を固定するように構成されている。
【0025】
次に、上記のように構成された本実施例の作用について説明する。
ケーブルドラム16は、これをケーブルドラム支持装置1にセットする場合、ブレーキ機構29のハンドル39を巻き方向(図6中、矢印A方向)に操作することにより、ブレーキシュー36とケーブルドラム16とが接触しない位置までブレーキシュー36を後方(図4中、矢印C方向)へ移動させる。このとき、ぜんまいばね37は巻き締められて、ブレーキシュー36を前方へと移動させるエネルギーが蓄えられる。
【0026】
さらに、モータ22は、送りハンドル25の操作により、モータ22のローラ28の外周とケーブルドラム16の鍔の外周16aとが圧接するようにセットされる。
続いて、正転逆転切換スイッチ44cの正転が選択されている状態で、モータ22の起動スイッチ44aが操作されると、前記ローラ28が回転すると同時に、ローラ28の外周とケーブルドラム16の鍔の外周16aとの間の摩擦力によりケーブルドラム16は引出し方向(図1中、矢印F方向)に回転する。
かようにして、ケーブルドラム16からケーブル16b(図1参照)が繰り出されることによりケーブル16bの延線作業が行なわれる。該ケーブル布設工事において、ケーブルドラム16を上方に設置して、その設置位置より下方にケーブル16bを延線する場合等に、該ケーブル16bは、その自重により落下する可能性がある。
【0027】
ケーブル16bが落下すると、ケーブル16bの繰り出し量が過大となりケーブルドラム16の回転速度が速くなる。この場合、ロータリエンコーダ21による検出速度が設定速度を超えると、マイクロコンピュータは、ソレノイド41を作動してブレーキ機構29を作動させると共に、モータ22を停止させるように構成されている。これにより、ブレーキシュー36がケーブルドラム16の鍔の外周16aに衝突し且つ圧接するので、これらの間に大きな摩擦力が作用すると同時に、ケーブルドラム16には駆動装置たるブレーキ付モータ22の制動力が作用し、ケーブルドラム16は停止される。
【0028】
このように制御手段を構成するマイクロコンピュータは、ロータリエンコーダ21によるケーブルドラム16の回転速度が設定速度を超えることに基づき自動的にケーブルドラム16を停止させる。また、マイクロコンピュータは、二個の非常停止用スイッチ45、47の何れかが操作されたときも、ブレーキ機構29を作動させると共に、モータ22を停止させ、ひいてはケーブルドラム16の回転を停止させる。
【0029】
尚、こうした自動的なケーブルドラム16の停止、及び非常停止用スイッチ45、47の操作によるケーブルドラム16の停止は、モータ22が停止し或いはモータ22を使用しない場合であっても同様である。即ち、ローラ28とケーブルドラム16とが接しないようモータ22を後方へ移動させてケーブルドラム16よりケーブル16bを引き出す場合でも、マイクロコンピュータは、ロータリエンコーダ21からの信号、乃至非常停止用スイッチ45、47からのスイッチ信号によりブレーキ機構29を作動させてケーブルドラム16の回転を停止させるべく作用する。
【0030】
以上のように本実施例によれば、ケーブルドラム16の回転速度が設定速度を超えると、ブレーキ機構29が作動すると共にモータ22が停止して、ケーブルドラム16の回転に対し制動力を付与できるので、ケーブルドラム16が高速回転となることを防止することができる。
また、非常停止用スイッチ45、47を操作することによってもケーブルドラム16の回転に対し制動力を付与できるので、作業現場の状況(ケーブルの流れ出し、ケーブルの弛み等)に応じた任意のケーブルドラム16の停止が可能となり、作業性をも向上させることができる。
【0031】
さらに、ケーブルドラム支持装置1は、その前方(図2中、左方)がアジャスタ48、48を調整することにより固定されると共に、後方(図2中、左方)がアイボルト49、49で壁にワイヤ49a、49aを介して連結されて強固に固定されるので作業の安全性を確保することができる。
ブレーキシュー36の表面には、多数の半球状若しくは角錐状の小突起36aが設けられ、ブレーキシュー36とケーブルドラム16の鍔の外周16aとが圧接した場合に大きな摩擦力が発生するので、より大きな制動力を得ることができる。また、ブレーキシュー36の取付部材35によって、ブレーキシュー36は、その両端部が支持されると共に、ケーブルドラムの外周の形状に応じて揺動可能に取り付けられているので、ケーブルドラムの大きさに応じた効果的な制動力を得ることができる。
【0032】
また、支持体2には、支持部10たる左アーム11、右アーム12が回動可能に取り付けられているので、ケーブルドラム16の鍔の大きさに関係なく、ケーブルドラム16を支持部10にセットすることができる。さらに、ブレーキ機構29及びモータ22はケーブルドラム16の寸法に応じてセットすることができるので、ケーブルドラム支持装置1はさまざまな大きさのケーブルドラム16に対応することができる。
【0033】
ケーブルドラム16の回転速度は、ロータリエンコーダ21により検出される。この構成によれば、ケーブル弛み検知手段によってケーブルドラム16の過回転を検出する場合よりも、より正確なケーブルドラム16の回転速度の検出が可能となる。即ち、前記ケーブル弛み検知手段は、ケーブルの弛みを検知するにすぎないので、例えばケーブルが弛むことなく流れ出したような場合、そのケーブルの流れ出しを前記ケーブル弛み検知手段によっては検出できず、従ってケーブルドラム16の回転の制動も行なわれない為、高速回転となったケーブルドラム16がバランスを失い支持体と共に転倒する惧れがある。他方、ケーブルドラム支持装置1のロータリエンコーダ21によれば、ケーブルドラム16の回転速度を正確に検出できるのでケーブルドラム16からのケーブルの流れ出しやケーブルドラム16の高速回転による転倒等をより確実に防止できる。
【0034】
また、モータ22に備えられた送り機構のコイルばね27によって、モータ22のローラ28の外周とケーブルドラム16の鍔の外周16aとが常に圧接するようにセットすることができる。これにより、ローラ28の外周とケーブルドラム16の鍔の外周16aとの間の摩擦力を高めることができるので、モータ22たるブレーキ付モータのブレーキによる制動力及び該モータの駆動力を効率よくケーブルドラムに伝達することができる。
【0035】
尚、本発明は、上記し、且つ図面に示す実施例にのみ限定されるものではなく、次のような変形、拡張が可能である。
上記実施例では、モータ22を設けるように構成したが、これに限定されるものではない。即ち、モータ22を省いて、より簡単な構成にしてもよい。
また、上記実施例のブレーキ機構29に代えて、油圧ユニット及び先端部にブレーキシューを備えた油圧シリンダによりブレーキ機構を構成し、より大きな制動力を得るようにしてもよい。
【0036】
さらに、上記実施例では、支持体2には、支持部10が回動可能に取り付けられるようにしたが、これに代えて、支持体2に支持部10を固定することで、より簡単な構成にしてもよい。
また、上記実施例では、二個の非常停止用スイッチ45、47を設けるように構成したが、これに限定されるものでは無い。即ち、制御盤42の上方に配設された非常停止用スイッチ47の近傍に位置させて操作部44を設け、一個の非常停止用スイッチ47のみで、モータ22の停止及びブレーキ機構の作動を行えるように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】支持装置の概略的な側面図
【図2】同平面図
【図3】全体の概略的な斜視図
【図4】ブレーキ機構の破断側面図
【図5】ブレーキ機構の平面図
【図6】ブレーキ機構の要部の正面図
【符号の説明】
【0038】
図面中、1はケーブルドラム支持装置、2は支持体、10は支持部、16はケーブルドラム、21はロータリエンコーダ(回転速度検出手段)、22はモータ(駆動装置)、29はブレーキ機構、42は制御盤(制御手段)、43はコントローラ(操作手段)、44は操作部、45は非常停止用スイッチ(非常停止用操作部)、47は非常停止用スイッチ(非常停止用操作手段)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルドラムを回転自在に支持する支持部を有する支持体と、
前記ケーブルドラムの回転速度を検出する回転速度検出手段と、
前記ケーブルドラムの回転に制動力を付与するブレーキ機構と、
前記回転速度検出手段による検出速度が設定速度を超えることに基づき前記ブレーキ機構を作動させる制御手段とを備えたことを特徴とするケーブルドラム支持装置。
【請求項2】
非常停止用操作手段を備え、
前記制御手段は、前記非常停止用操作手段が操作されたときに前記ブレーキ機構を作動させることを特徴とする請求項1記載のケーブルドラム支持装置。
【請求項3】
前記ケーブルドラムを回転駆動する駆動装置と、
この駆動装置を操作する操作部を有すると共に、非常停止用操作部を有する操作手段とを備え、
前記制御手段は、前記非常停止用操作部が操作されたときに、前記ブレーキ機構を作動させると共に、前記駆動装置を停止させることを特徴とする請求項1記載のケーブルドラム支持装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−335492(P2006−335492A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−159576(P2005−159576)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(000153786)株式会社畑屋製作所 (6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】