説明

ケーブル式道路防護柵

【課題】車輌事故等で破壊した場合の補修性に優れ、道路メンテナンスや事故処理に必要とする作業空間や車輌通行路確保のための一時的撤去を比較的簡単に行えるケーブル式道路防護柵を提供する。
【解決手段】端末支柱と中間支柱3はパイプからなり、それぞれ道路と平行な面に支柱上端に開口する1対のスリット8を有し、複数本のケーブル4は上下方向で間隔をおいてスリット8を横通して張設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はケーブル式道路防護柵に関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路の交通安全対策としてガードケーブルと呼ばれるケーブル式の道路防護柵が汎用されており、車輌が防護柵に衝突した際にその衝突エネルギーを防護柵が破壊することで吸収し、車輌を安全に誘導できるように法定の強度設計がなされることが要求されている。
かかる道路防護柵は、通常、数百mを1スパンとして、複数のケーブル(ワイヤロープ)を一定長延展し、両端末を索端金具を介して端末支柱に繋止して張力を与えると共に、端末支柱間に所定の間隔で中間支柱を設置し、ケーブルの中間部を支持する構造になっている。
【0003】
しかし、従来の道路防護柵は、端末支柱および中間支柱が路面に設けたコンクリート基礎に固定されるか、もしくは中間支柱は下半部が地中に打ち込み埋設され、張設したワイヤロープは端末支柱と中間支柱にクリップ、Uボルトなどにより固持されていた。そのため、車輌が防護柵に衝突し、防護柵を構成する支柱が転倒あるいは破壊された場合、その補修は基礎工事を伴う大掛かりなものを必要としていた。
さらに、車輌同士の接触事故で破壊した車輌が道路上に散乱したような場合、車輌の事故現場からの移動や事故処理用の重機械類の事故現場への搬入などが円滑、迅速に行われることが好ましいが、道路防護柵が固定構造物のため撤去が容易ではなく、上記事故処理のための作業空間確保の障害となることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭63−130518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記のような問題点を解消するためになされたもので、その目的とするところは、車輌事故等で破壊した場合の補修性に優れ、道路メンテナンスや事故処理に必要とする作業空間や車輌通行路確保のための一時的撤去を比較的簡単に行えるケーブル式道路防護柵を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明のケーブル式道路防護柵は、コンクリート基礎上に据付けられた端末支柱と、端末支柱間の地中に埋設したスリーブに挿入されて下端が支持された中間支柱と、両端が前記端末支柱より先のアンカー体に連結されたn本(n=3〜7本)のケーブルを備え、前記端末支柱と中間支柱はパイプからなり、それぞれ道路と平行な左右の面に支柱上端に開口する1対のスリットを有し、前記ケーブルは上下方向で間隔をおいて前記スリットを横通して張設されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、端末支柱と中間支柱の道路と平行な左右の面に、上端に開口する1対のスリットが設けられ、そのスリット内にケーブルが上下で間隔をおいて納められ、ケーブルは支柱に何ら固定されず、スリットを横通して張設されている。
車輌が衝突したときにはケーブルが伸びて衝撃を吸収し、強い衝撃が作用したときには支柱上部のスリットが道路と直角方向にV状に口開きするため、ケーブルは支柱上端の開口から外れ、さらには支柱が曲がることにより衝撃を吸収する。したがって、適切な防護性能を発揮することができる。
【0008】
そして、損傷された道路防護柵は、端末支柱については新たなものをコンクリート基礎上に据付ければよく、数多くある中間支柱はコンクリート基礎に固定されておらず、また直接地中に埋設されているのでもなく、下半部が地中に予め埋設してあるスリーブに内挿されているだけであるので、車輌の衝突で口開きした支柱を新たなものと交換してスリーブに差し込むことで旧状に復する。あとはケーブルを張設し、支柱を横通するようにスリットに落とし込めばよいので、比較的容易かつ迅速に補修を行なうことができる。

【0009】
事故が起ったときあるいは事故が起らない状況において、アンカーされていたケーブルの一端を緩め、支柱のスリット中を貫通しているケーブルを持ち上げれば、支柱上端の開口から簡単に取り出されて支柱とケーブルを分離することができるので、ケーブルを路面上に置くことによりそれまでケーブルにより分離されていた上下線道路や、道路内と道路外の分離が解かれ、車輌や機械、機器などの移動通路を確保することができる。
さらに、中間支柱は地中に埋設したスリーブに挿入支持されているので、中間支柱を持ち上げてスリーブから抜き取ることで、簡単に何もさえぎるものがない広い自由空間や通路を確保することもできる。
【0010】
したがって、これらの自由空間や通路を利用して清掃車輌等の搬入搬出を行えるので、道路メンテナンス作業が容易になる。また、車輌事故等に際しても、ケーブルの支柱からの分離や中間支柱の一時撤去により広いスペースを確保できるので、大型重機械の搬出入や事故車輌の撤去などが容易で、迅速な事故処理が可能となり交通渋滞を緩和することができる。
【0011】
また、ケーブルは端末支柱よりも背後の基礎に設置したアンカー体により一定の張力が印加されており、その張力は中間支柱や端末支柱を絶えず沈下させる方向に働いているが、端末支柱をコンクリート基礎上に設置することで土質に影響されることなく端末支柱の沈下や中間支柱の沈下を防ぎ、安定したケーブル張力を維持することができる。したがってケーブルの弛みが防止され、ケーブルに衝突した車輌の誘導機能の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明によるケーブル式道路防護柵の一実施例を示し、(a)はその正面図、(b)はその側面図、(c)はその平面図である。
【図2】端末支柱を示すもので(a)は第一例の正面図、(b)は第2例の正面図、(c)は第2例の平面図である。
【図3】設置された端末支柱を示すもので、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図4】立設された中間支柱とケーブルの取り合いを示しており、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は横断面である。
【図5】中間支柱を示すもので(a)は第一例の正面図、(b)は第2例の正面図、(c)は第2例の平面図である。
【図6】中間支柱のためのスリーブを示すもので、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は平面図、(d)は地中への埋め込み作業状態図である。
【図7】間隔材の一例を示すもので(a)は正面図、(b)は平面図である。(c)は他の例を示す間隔材の斜視図であり、(d)は中間支柱に間隔材を取り付ける工程を示す図であり、(e)は立設された中間支柱とケーブルと(c)の間隔材の取り合いを示す図である。
【図8】ストラップを示すもので(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図9】端末基礎を示すもので(a)は縦断正面図、(b)は平面図である。
【図10】端末金具を示すもので(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図11】最外部の端末金具を示すもので(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図12】使用されるケーブル構成を示す正面図である。
【図13】間隔保持材の一例を示すもので(a)は正面図、(b)は斜視図である。
【図14】設置された端末支柱と間隔保持材との取り合いを示す図である。
【図15】立設された端末支柱とケーブルと間隔保持材との取り合いを示しており、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図16】(a)(b)(c)は本発明のケーブル式道路防護柵に車輛が衝突した時の支柱とケーブルの挙動を示す模式図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
好適には、支柱のスリット形成領域にストラップを嵌めている(請求項2)。
車輌がケーブルに衝突すると、ケーブルに衝突方向前方への張力が加わり、支柱を変形させる力となる。本発明では支柱の上部がケーブルを導くための1対のスリットで割られており、スリット領域は剛性に劣り変形しやすく、衝突エネルギーを十分に吸収しないままケーブルが不用意に外れたりする可能性がある。
しかし、ストラップを支柱のスリット形成領域にタガとして嵌めているため、一定の力が加わるまでスリットの過度な口開きが起きず、車輌衝突によりケーブルに加わる一定の力までパイプ状が維持される。そして、支柱の曲がりとケーブルの伸びで衝突エネルギーが適切に吸収され、支柱が曲がるとケーブルの上方への移動でストラップが支柱から外れ、ケーブルは伸びながら支柱と分離し、車輌衝突エネルギーを吸収しながら車輌を誘導する効果が得られる。
【0014】
支柱内にn本のケーブルの上下間隔を保持する間隔材を内装している(請求項3)。
これによれば、間隔材の長さ(高さ)によりスリットを横切るケーブル相互の間隔を自由に設定することができる。したがって、たとえば大型車輌の交通量の多い道路ではケーブルを上段グループと下段グループに分け、上段グループでは相対的に短い寸法の間隔材を使用することにより上下間隔を密にし、下段グループについては相対的に長い寸法の間隔材を使用することにより上下間隔を疎にして容易に対応することができる。
【0015】
端末支柱内に、n本のケーブルを上下に分離しその間隔を保持する間隔保持材本体と該間隔保持材本体に形成されn本のケーブルをそれぞれ1本ずつ保持する保持部とを有する間隔保持材を内装している(請求項4)。
これによれば、ケーブルが端末支柱に内装されている間隔保持材に形成された保持部へ挿入される形式であるため、車両等が衝突した際、端末支柱から前記間隔保持材が外れやすいとともに、ケーブルを外すこともないため、間隔保持材が飛散しないという効果が得られる。
【0016】
スリーブは高さ方向の中央より下方に中間支柱を係止する支持部を有する(請求項5)。
これにより支持部がスリーブの下端内に当接しあるいは入り込むようになるので、支柱を簡単、確実に支持することができる。
【0017】
スリーブは底蓋を有している(請求項6)。
スリーブの底部に底蓋をすることで、スリーブを土中に打設しても内部に土砂が詰まる心配がなく、支柱の挿入をスムーズに行える。さらに、打設により底蓋が土砂を固め、スリーブの土圧抵抗を高めるので、結果的に中間支柱の強度を高める効果が得られる。
【0018】
端末支柱とケーブルに対する複数のアンカー体が直線状に並び、張設したn本のケーブルの下段が端末支柱のアンカー体に近く、以下上位になるほど遠いアンカー体に順次連結している(請求項7)。
これによれば、アンカー体の基礎が必要とする面積は道路長手方向に確保すればよくなるので、車道の路幅を十分に確保することができる。
【実施例1】
【0019】
以下添付図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図1は本発明によるケーブル式道路防護柵の第1実施例を示している。
1は本発明ケーブル式道路防護柵の全体を指し、2、2は左右の端末支柱を示す。各端末支柱2はそれぞれコンクリート製の端末基礎5、5に主部が埋設されているアンカー体71により強固に固定されている。
端末支柱2,2間には適度の間隔をおいて中間支柱3が複数本立設されており、各中間支柱3は地中に垂直状に埋設された円筒状のスリーブ6に挿入され支持されている。
【0020】
4はケーブルであり、この例では4段の柵であるため、たとえば構造が3×7、直径が18mmの4本のワイヤロープが用いられている。ケーブルは腐食を防止するために亜鉛めっきされているが、景観の保持および防食効果を高めるため有色塗装していてもよい。それぞれのケーブル4の両端末は前記端末支柱2よりも後方の前記端末基礎5、5に主部を埋設した複数(4本)のアンカー体72にそれぞれ連結金具を介して結合されている。複数のアンカー体72は図1(c)のように直線上に配置されている。
【0021】
一方のアンカー体72に結合された各ケーブル4は、上下方向で平行に導かれ、各段のケーブルは端末支柱2の上部に形成したスリット8を経由し、中間支柱3の上部に形成したスリット8を経由し、さらに他方の端末支柱2の上部にスリット8を経由して他端のアンカー体72に連結されている。ケーブル4は上下等間隔に平行に張設され、下段のケーブルから順次端末支柱2に近いアンカー体72に連結されている。
【0022】
端末支柱2は、たとえば外径89.1mm、厚さ3.2mm、高さ804mmのパイプからなり、亜鉛めっき等の防食処理がなされているが、さらに景観と調和するように有色塗装されていてもよい。
端末支柱2の下部には、図2(a)(b)のように、座プレート21の中心にパイプ20の下端が溶接され、パイプ20の周囲に4枚の三角形状プレート22が90度間隔で配置溶接され、それらプレートの下端は座プレート21に溶接されている。座プレート21にはアンカー体71に結合するための孔が4箇所設けられている。
【0023】
端末支柱2の上半部には、支柱上端に開口するスリット8が2箇所180度の角度で対面するように道路と平行な左右面に形成されている。
前記スリット8は、幅寸法がケーブル4の直径の寸法よりも適度に大きく、深さはケーブルの段数に対応させるもので、たとえば、幅が25mm、深さ410mmである。
前記スリット8は、図示しないが、略V字状の形状であってもよいが、図2(a)のようにストレートな形状であってもよい。図2(b)の例では、半円状に拡大した節状の切り欠き81をケーブルの段数に対応して設けている。最下段の切り欠き81はスリット底を構成している。切り欠き81は各ケーブル4が上下方向で所定の間隔たとえば110mmで配置しやすいように目印ないしスケールとしての機能を果たすが、車輌の衝突時にケーブルがスリットの縁に沿って上方にずれたときに切り欠き81に落ち込み、ここの抵抗でケーブル4が不用意にスリット8から外れることを抑制する作用もある。
【0024】
前記端末支柱2には上部の開口からケーブル4、間隔材10の順で挿入され、最下段のケーブルを除くケーブル4はそれぞれ間隔材10で上下間隔が規定されている。そしてパイプ20の上端には、パイプ内への塵埃や雨水の浸入を防止するためとスリットの口開きを防止するためにキャップ11が取り付けられている。
端末支柱2の端末基礎5への取り付けを説明すると、端末支柱2の座プレート21がアンカー体71に締結されているが、アンカー体71はL字状の鋼棒からなっていて、上端部が端末基礎5の上部に突出するように埋設されている。突出した鋼棒上端部には雄ねじが切ってあり、その突出した鋼棒端部を端末支柱2の座プレート21に配設されている孔23に通し、ナットで締付けてある。
アンカー体71の形状がL字状なので引き抜き抵抗が大きく、端末支柱2は端末基礎5に強固に締結することができる。
【0025】
図4は設置された中間支柱3を示しており、スリーブ6の底部には底蓋65が被せられ、上部は地表面と略同等になるように埋設されている。
埋設されたスリーブ6の上端面には、スリーブ6とパイプ30との隙間を密閉し、隙間からの汚泥や雨水の浸入を防止し、スリーブ6およびパイプ30の腐食を防ぐために上蓋66を被せており、上蓋66は中間支柱3を構成するパイプ30を挿通する穴660を有し、この穴660にパイプ30が貫挿されている。
スリーブ6には支持部としてパイプ内方に傾斜した切り起し片61があるので、パイプ30は切り起し片61に当接してその位置で支持される。
【0026】
中間支柱3のパイプ30の上部には図5のように、前記端末支柱2と同じく上端に開口する一対のスリット8,8が180度対称で切られており、スリット8,8には、上部の開口部から下方にケーブル4、間隔材10の順に4本のケーブルが横通されている。ケーブル4、4は間隔材10で間隔が保持されている。好ましくはスリット8の切り欠き81に各々のケーブル4が位置される。スリット8と切り欠き81は前記端末支柱のそれと同じであるから、説明は援用するものとする。
【0027】
前記パイプ30にはスリット8の比較的上端部に近い位置、この例では2段目のケーブルに対応するパイプ外周部位にストラップ9がはめ込まれている。
ストラップ9はたとえばステンレスの帯板を円形に丸め、重なり部分あるいは突合せた端部を数箇所でスポット溶接90したものが用いられる。
パイプ30の頭部にはコップ状のキャップ11が被せられパイプ内への塵埃や雨水の浸入を防止するとともに、スリットの口開きを若干防止している。
【0028】
パイプ30にスリット8,8を設けることにより、小さな力でスリット8,8が口開きを起こす傾向になるが、ストラップ9が箍の役目を果たすことでスリット8,8の不用意な口開きを防止することができる。
すなわち、車輌の衝突を受けたケーブル4が軸線と直角方向に衝撃的に押圧されることによりスリット8,8に口開きの力が加わったり、ケーブル4が上方にずらされてストラップ9をスリット8,8の上端の開口部に移動する力が働くとストラップ9は溶接部が分離して、パイプ30から外れる。
ストラップ9は上記の例に限らず、支柱の外径よりやや大きい内径のリングの円周の一部を切削するなどして脆弱部(括れ部)を形成したものであってもよいし、場合によってはコイルばねなどであってもよい。なお、前記端末支柱2のパイプ20にも図3の仮想線のようにストラップ9を取り付けることはいうまでもない。
【0029】
図5は中間支柱3を構成するパイプ30を単体の状態で示しており、たとえば外径が89.1mm、厚さ3.2mm、長さが1220mmの鋼管からなり、道路と平行な左右の面に、幅が25mm、深さ410mmの2本のスリット8,8が180度対称に設けられている。パイプは亜鉛めっき等の防食処置がなされている。さらに景観と調和するように有色塗装されていてもよい。
【0030】
図6はスリーブ6を単体の状態で示しており、鋼管に亜鉛めっき等の防食処理がなされている。パイプ60の高さ方向中央より下方に支持部が設けられている。
この支持部として実施例では切り起し片61、61が対設されている。切り起し片位置がスリーブ6の高さ方向中間より上方にあるとスリーブ6の耐力を十分にパイプ30に伝えることができないので適切でない。
【0031】
スリーブ6はたとえば全長700mm、外径114.3mm、内径105.3mmで、切り起し片61、61は長さが30mm程度で、スリーブ上方から400mmのところに設けられており、パイプ内方向に30度から60度、好適には45度の角度の上向きに折り曲げられており、挿入された中間支柱のパイプ30の下端内面に切り起し片61、61が嵌まり、これで中間支柱は確実に支持される。なお、切り起し片61は、3ないし4箇所あってもよい。いずれにしても切り起しであるため、簡単安価なものとすることができる。
支持部としては切り起し片に限らず、コストアップを招くが、スリーブ6にスリーブ内径と一致する外径のパイプまたはリングを内嵌めした構造などとしてよい。
【0032】
前記スリーブ6の下端部には鉄鋼製あるいはプラスチック製の底蓋65が嵌着されている。底蓋65は椀状をしており、たとえば内径が115mmでスリーブ6と同じく防食の処理がされており、スリーブ6の下端部に嵌め込むようになっている。このような底蓋65付きのスリーブ6を土中に打設すると、底蓋65が土を圧縮するのでスリーブ6の土圧耐力が高まり、結果として中間支柱3の強度が向上する。なお、土質により底蓋65の中央部に孔を設けてもよい。
【0033】
図6(d)はスリーブ6の埋設法を例示しており、頭部950の下にスリーブの上端面61と当接して打撃力を伝達する鍔951と、鍔951から下方に伸び底蓋65に当接可能なロッド952を備えた治具95を使用し、図示のようにロッド952をスリーブ6に挿入し、エアパンチャーのごとき打設機96で頭部950と鍔951を介してスリーブ6の上端部を打撃して地中に推進させることで簡単に埋め込むことができる。
【0034】
図7(a)と(b)は間隔材10を例示しており、ケーブル4の上下間隔を設定し、下位のケーブル上に受支されることでケーブルを上下に分離しその間隔を保持する手段であり、端末支柱と中間支柱のパイプ20,30に内挿し得る外径を有している。
この実施例では、たとえば高さ110mm、直径40〜80mmの円筒となっているが、円柱でもよく、ブロックでもよい。材質はケーブルを支え得る強度を持ち、腐食しないものであればなんでもよく、ポリエチレン、発泡ウレタンなど任意である。
図7(c)は、中間支柱のスリット、特にストレート状のスリットに装着された間隔材10´であり、平面からみて円弧状の部材をしている。
前記間隔材10´は、前記中間支柱のスリットの幅と同等の幅の間隔材本体10´aを有し、その間隔材本体の両側に前記中間支柱のパイプの肉厚よりも広く形成された溝10´b、10´bが設けられており、図7(d)のように、前記間隔材本体10´aを中間支柱3のスリット上端に配し、下方に落とし込むことにより、前記溝10´b、10´bが中間支柱3のスリット8に嵌まり、中間支柱3に保持されるようになっている。
前記間隔材10´は合成樹脂の成形体からなっている。
かかる間隔材は、車両等がケーブルに衝突すると、その衝撃により、中間支柱のスリットと間隔材本体の溝との嵌合関係が崩れ、中間支柱から外れる。
そのため、ケーブルの自由度を有効に利用することができる。
【0035】
図8の(a),(b)はストラップ9の具体例を示しており、たとえば外径98mm、内径96mm、高さ30mmのリングで、材質はステンレスである。この例では帯板状のステンレスをリング状に巻き、端部をつき合わせて2か所をスポット溶接90、90している。
しかし、好適には、図8の(c)に示すように円筒形状のリング91がよい。というのは、スポット溶接ではストラップ固有の能力を十分に発揮することができないことがあるためである。かかるリング91はステンレス鋼管を切断して製作されている。
ストラップの個数は、1支柱に対して1個でも、または1支柱に対して2個でもよい。
ストラップ9は、パイプ30のスリット8,8形成による剛性の低下を箍としてカバーし、しかも、一定の口開き力がスリット8に加わると円周状の一部が破壊されてパイプから外れるためスリット8,8の口開きが進行し、ケーブル4が端末支柱2や中間支柱3から分離できるようになる。これにより、法定の設計強度を保ちながら、地中に埋設したスリーブ6の破壊が防止され、支柱を構成するパイプ30の取替えですむようになるのである。
【0036】
図9は端末基礎5の詳細を示しており、たとえば深さ1500mm、幅600mm、長さ3800mmのコンクリート塊が略地表の同等の高さに埋め込まれている。
端末基礎5には中間支柱3に近い位置に端末支柱用アンカー体71が設けられ、このアンカー体と約1,500mm程度離れた位置から、下段から上段のケーブル4を順次連結するためのケーブル用アンカー体72a,bが略直線状に配設されている。
アンカー体71、アンカー体72a,bが直線状に並ぶことで、道路防護柵は幅方向の面積を縮小でき、必要な車輛通行道路幅の確保が容易になる。
【0037】
端末支柱用のアンカー体71は、直径24mm、長さ440mmの鋼棒の下方100mmをL字状に曲げて引き抜き抵抗を高めたL字状の鋼棒からなり、それぞれ上端部が端末基礎5の上部に突出するように4本埋設され、突出した鋼棒の先端部は雄ねじを有している。
【0038】
ケーブル用アンカー体72aは、直径16mm、長さ250mm、下方60mmをL字状に曲げた鋼棒が端末基礎5の上部に突出するように4本埋設され、突出した鋼棒の先端部に雄ねじが切ってある。
3つのケーブル用アンカー体72aにはそれぞれ図10に示すような端末金具73が取り付けられている。端末金具73は厚さ10mm、幅130mm、縦210mmの長方形の鋼板からなる座板731に三角形状鋼板からなるブラケット732が縦に溶接され、ブラケット頂部にケーブルを連結するための軸受け孔733が設けられ構成されている。
据付は、アンカー体72の突出した鋼棒に端末金具73の座板にある孔734を合わせて差し込み、ナットで締め付けることで行われ、アンカー体72aの形状がL字なので引き抜き抵抗が大きく、端末金具73は端末基礎5に強固に締結される。
【0039】
最上段ケーブル4は最外側アンカー体72bに締結される。最外側用端末金具74は、図11のように、厚さ10mm、幅130mm、縦210mmの長方形の鋼板からなる座板741に略平行四辺形の鋼板からなるブラケット742が溶接され、これの上部に近い一側にはケーブル4を連結するための軸受け孔743が設けられ、他側にはケーブル張設作業用の孔745が設けられている。
据付は上記端末金具73の場合と同じであり、アンカー体72の突出した鋼棒に座板741に設けた孔744を合わせて差し込み、ナットで締め付ける。
【0040】
ケーブル4と端末金具73,74は図12に示す公知のターンバックル機構75を介して連結される。
ケーブル4の端末に取り付けたソケット751とターンバックル750がねじを介して結合し、ターンバックル750の他端部にねじ込んだフォークエンド752が前記端末金具73,74の軸受け孔733,743に交合されピンボルトで連結される。ケーブル4の張力負荷はターンバックル750を回転することで調整する。
【0041】
図13、図14は、本発明によるケーブル式道路防護柵で
使用される間隔保持材100を示しており、本発明によるケーブル式道路防護柵の第2実施例を示している。
かかる実施例も、図1に示すように、第一実施例を採用している箇所が多く、具体的には、本発明ケーブル式道路防護柵において、コンクリート製の端末基礎5、5に主部が埋設されているアンカー体71により強固に固定されている左右の端末支柱2、2と、端末支柱2,2間に適度の間隔をおいて立設されている複数本の中間支柱3とを有している。各中間支柱3は地中に垂直状に埋設された円筒状のスリーブ6に挿入され支持されている点は、第1実施例と同じであるので、ここではそれらの構造の説明は図面に同一符号を付すにとどまり省略する。
【0042】
第2実施例において第一実施例と異なる箇所は、端末支柱2で保持されるケーブル4を、ケーブル4の上下間隔を設定し、下位のケーブル上に受支させることでケーブルを上下に分離しその間隔を保持するのではなく、図13に示すような間隔保持材100、すなわち、間隔保持材本体101と該間隔保持材本体101に形成された保持部102とを有し、前記保持部102でケーブルを保持することである。
すなわち、第2実施例の間隔保持材100は前記間隔保持材本体101内にケーブル4を挿入する形式を採用することで、車両がケーブル4に衝突した際、間隔保持材100がケーブル4から外れないため、飛散することがないという点で、第一実施例の間隔材と異なっている。
【0043】
以下間隔保持材100について説明する。
間隔保持材100は間隔保持材本体101と間隔保持材本体101に形成された保持部102とを有し、間隔保持材本体101は端末支柱2に内装されるものであるため、ケーブル4の張力により沈下する力に耐えうる材質であれば材質は問わない。
しかし、ケーブル4に車の衝突などにより張力が加わると、一方のケーブル4の端末が地盤にアンカーされているため、他方のケーブル4の端末は張力が斜め方向に作用するので、ケーブル4の張力による曲げ応力が間隔保持材100に付加される関係上、間隔保持材100の材質をプラスチックとすると破壊される可能性がある。
そこで、好適には、沈下させる方向の荷重に耐え、また沈下する力がスムーズにコンクリート製の端末基礎5へ伝達するよう、鋼製とすることが望ましい。
間隔保持材本体101は中実でもよいが、図13に示すように、筒状体が好ましい。かかる筒状体は、例えばプラスチックまたは鋼製のパイプを切断加工すれば製造可能である。
【0044】
間隔保持材本体101は端末支柱2に内装されるものであるため、端末支柱2に嵌まる外径となっている。
また、前記間隔保持材本体101内にはケーブルを保持する保持部102が形成されている。
前記保持部102は種々の構造が考えられるが、例えば、間隔保持材本体にケーブルを挿通可能な径の一対の横方向の穴部を形成し、この穴部の周縁下方で、ケーブルを点接触により保持してもよい。
なお、前記穴部の周縁下方にゴム等の層を施し、ケーブルの破損を防ぐようにしてもよい。
また、例えば、図13に示すように、前記間隔保持材本体100に形成した穴部102に、前記ケーブルの径よりも大きい径の円筒形状の筒体110を配し、その筒体110内にケーブル4を挿通して保持をしてもよい。
図13では、間隔保持材の穴部に配された筒体110はその両端が間隔保持部本体101の外周よりも若干突出しているが、突出していなくても、機能上問題はない。
前記間隔保持材本体101に形成される保持部102は、車の衝突の際に端末支柱2からケーブル4が外れ易いよう、ケーブル1本につき1個を形成するようにしている。
かかる間隔保持材100は前記端末支柱2にケーブル4の数分だけ内装される。
このときに、前記間隔保持材100は間隔保持材100相互間に隙間を形成することなく、間隔保持材本体101の頂部がそれより上方の間隔保持材本体101の底部に当接するよう、いわゆる積み木のように積み上げられている。
これにより、前記間隔保持材100は、ケーブル4を保持すると共に、端末支柱2内でケーブル上下方向の所定間隔を維持する機能を発揮する。
12はストッパーであり、最下段の間隔保持材100を端末支柱2に配したときに、最下段の間隔保持材100を端末支柱2内で支持するために取り付けられたものであり、端末支柱2の軸線方向中央部位より下方に一対の穴を開け、その穴にボルトを通し、先端にナットを配して、端末支柱に固定されている。
【0045】
次に、前記間隔保持材を端末支柱に取り付ける方法について説明するが、ほとんどは第一実施例と同様であるため、同様な箇所は説明を省略し、ここでは端末支柱2に間隔保持材100とケーブル4を取り付ける方法のみを説明することにする。
最下段ケーブル4を端末支柱に配すにあたり、間隔保持材を端末支柱上端の開口から挿入する。
そのとき、最下段の間隔保持材100は前記ストッパー12で支持されるため、端末支柱2内の下方に落下することはない。
その後、ケーブル4を間隔保持材100の保持部102に通す。
このようにして、順次、ケーブル4の本数分だけ間隔保持材を端末支柱2に挿入すればよい。
このように設置された後は、ケーブル4は端末支柱2の所定の高さ位置から地際へ連結された構造となっているため、端末支柱2では絶えず沈下する方向(下向きの方向)へケーブルの張力が作用している。
また、最下段ケーブル2の間隔保持材100はケーブルの所定位置が保持できるようにストッパー12(固定金具)上に配されているので、沈下する力に耐え、さらに端末支柱2を介してコンクリート製の端末基礎へスムーズに力を伝達させることができる。
【0046】
図16は本発明によるケーブル式道路防護柵に車輛が衝突した時の状態を模式的に示している。
4本のケーブル4a〜4dが中間支柱3のスリット8を貫通しており、それぞれ支柱内に配した間隔材10を介して等間隔で張設されている。中間支柱3の頭部にはキャップ11が被せてあり、また、最上段のケーブル4aの下の支柱外周にストラップ9が取り付けてある。
【0047】
いま、車輌Mがケーブルに衝突すると、ケーブルには車道より外側方向に力が加わり、スリット8の口開きを伴う支柱3を外側に曲げる力が働く。ケーブルは伸びることで衝突エネルギーを吸収するが、衝撃力が大きいと支柱3の曲がりも大きくなり、最上段ケーブル4aの部分にはストラップ9によるたが効果が働いていないので、該カーブルはスリット8内を上方に滑り、キャップ11を跳ね飛ばし、支柱3から外れる。
【0048】
さらに、ケーブルに大きな衝撃が加わり,支柱3が大きく曲がるとスリット8の口開き度が増し、ストラップ9のつなぎたとえばスポット溶接が破壊され、ストラップ9が中間支柱3から脱落するとともに、拡大したスリット8からこの例では2段目のケーブル4bが外れ、伸びにより衝撃エネルギーを吸収しながらケーブルに沿うように車輌を誘導する。上記作用は端末支柱でも同様である。
このように一定以上の衝撃荷重がかかるとスリット8が口開きしてケーブル4を曲りの生じつつある支柱から離脱させるので、支柱にかかる負荷が過大とならず、地中に埋め込んだスリーブ6に対する影響は少ない。
【0049】
上記状況でケーブルが再使用可能である場合には、スリットが口開きし、曲がりが生じている支柱をスリーブから引き抜き、新たな支柱をスリーブに挿入して支持させ、支柱のスリットと支柱内にケーブルと間隔材を順次セットし、ストラップを支柱外周に巻きつけ固定し、支柱上端にキャップを装着すればよい。したがって補修が簡単である。
【0050】
上記説明は本発明の単なる数例であり、各部の個数、数値、形状、材質などはあくまでも例であり、本発明はそうした記載に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0051】


ケーブル式道路防護柵
2 端末支柱
3 中間支柱
4 ケーブル
5 端末基礎
6 スリーブ
61 支持部(切り起し片)
65 底蓋
71 端末支柱アンカー体
72 ケーブルアンカー体
8 スリット
81 切り欠き
9 ストッラップ
10 間隔材
100 間隔保持材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート基礎上に据付けられた端末支柱と、端末支柱間の地中に埋設したスリーブに挿入されて下端が支持された中間支柱と、両端が前記端末支柱より先のアンカー体に連結されたn本(n=3〜7本)のケーブルを備え、前記端末支柱と中間支柱はパイプからなり、それぞれ道路と平行な左右面に支柱上端に開口する1対のスリットを有し、前記ケーブルは上下方向で間隔をおいて前記スリットを横通して張設されていることを特徴とするケーブル式道路防護柵。
【請求項2】
支柱のスリット形成領域にストラップを嵌めている請求項1に記載のケーブル式道路防護柵。
【請求項3】
支柱内にn本のケーブルの上下間隔を保持する間隔材を内装している請求項1に記載のケーブル式道路防護柵。
【請求項4】
端末支柱内に、n本のケーブルを上下に分離しその間隔を保持する間隔保持材本体と該間隔保持材本体に形成されn本のケーブルをそれぞれ1本ずつ保持する保持部とを有する間隔保持材を内装している請求項1に記載のケーブル式道路防護柵。
【請求項5】
スリーブは、高さ方向の中央より下方に中間支柱を係止する支持部を有する請求項1に記載のケーブル式道路防護柵。
【請求項6】
スリーブは底蓋を有している請求項1に記載のケーブル式道路防護柵。
【請求項7】
端末支柱とケーブルに対する複数のアンカー体が直線状に並び、張設したn本のケーブルの下段が端末支柱のアンカー体に近く、以下上位になるほど遠いアンカー体に順次連結した請求項1に記載のケーブル式道路防護柵。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−208491(P2011−208491A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2590(P2011−2590)
【出願日】平成23年1月9日(2011.1.9)
【出願人】(301031392)独立行政法人土木研究所 (107)
【出願人】(000003528)東京製綱株式会社 (139)
【Fターム(参考)】