説明

ケーブル接続器

【課題】海水に浸漬される等の過酷な布設状況下であったり、ケーブル自体が小径化されたりしても絶縁性能が劣化することがなく防水性及び耐久性を確保すること。
【解決手段】防水コネクタは、スリーブ端子をゴム系材料のレセプタクル本体122によって被覆し、先端部に嵌合凸部123を有するレセプタクル120と、ピン端子をゴム系材料のプラグ本体132によって被覆し、先端部に嵌合凹部133を有するプラグ130とを有する。防水コネクタは、分割可能な上側半割体152、下側半割体153によりなる筒状保護体150により被覆される。レセプタクル本体122及びプラグ本体132の外周面にはレセプタクル凹部127、プラグ凹部137が形成され、筒状保護体150の内周面には、レセプタクル凹部127、プラグ凹部137にそれぞれ嵌合する凸部180、190が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外配線、特に航空照明用ケーブルの接続に用いられるケーブル接続器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般住宅用或いは業務用のソーラーシステムは、建物の屋上等に設置した複数個の太陽電池モジュールをケーブル接続して構築されるが、このケーブル接続には防水性を備えたコネクタを用いている。
【0003】
防水性を備えたコネクタとしては、特許文献1に示す防水コネクタが知られている。この防水コネクタでは、レセプタクル外包体及びプラグ外包体の先端に、互いに嵌合可能な嵌合凸部及び嵌合凹部が、それぞれ設けられている。一方の嵌合凸部の外周面には、複数本の突条が断面鋸歯状に連続するように形成され、他方の嵌合凹部の内周面には、嵌合凸部の各突条の頂部に嵌装される部分として複数の円筒部が連続する形状が形成されている。複数の連続する円筒部は、他方の嵌合凹部の内周面において、内径を奥部よりも先端部の方が大きくなるように形成されている。
【0004】
このように構成された嵌合凸部及び嵌合凹部を互いに嵌合することによってレセプタクル及びプラグ同士は高い防水性を確保した状態で接続される。
【0005】
ところで、防水コネクタが用いられる屋外配線としては、空港、飛行場で用いられる航空照明用配線がある。
【0006】
空港は、航空機の発着のための広い敷地と、さらに広大な空域を必要とし、騒音問題もあるため、大都市から少し離れた場所、特に、海上に設置されることが多い。
【0007】
よって、空港、飛行場に布設される航空照明用配線は、太陽光線に晒されることは勿論のこと、海風、海水等の過酷な条件下での使用を想定されるため、ソーラーシステム等に用いられる一般の屋外配線と比較して更に高防水性を有する必要がある。
【0008】
特に、滑走路の脇に配設される誘導灯の配線では、コネクタを介したケーブルの接続部分は、滑走路脇等に形成されたハンドホール内に、折り込まれた状態で変圧器等とともに収納される。ハンドホール内には、風雨によって雨、海水等が入り込む。よって、ハンドホール内に収容されるケーブルの接続部分(コネクタ部分)は、変圧器とともに、雨水、海水中における浸漬状態であっても長期浸水、高温浸水等に耐えて絶縁性能が劣化しにくい特性、つまり、通常の屋外配線よりも高防水性及び高耐久性を有する特性を必要とする。
【0009】
この特性を確実に確保するために、例えば、特許文献2に示すように、コネクタを介した航空照明用ケーブルの接続部分を、箱状のケーブル保護体で覆う構成が考えられる。
【0010】
この特許文献2の保護体は、ケーブル同士の接続部分であるケーブル接続部を収容する保護ケースを備える。保護ケースは開閉可能な上側半割体と下側半割体を有し、上側半割体と下側半割体の境界部の側壁部分にケーブル接続部の入口側および出口側を挿通する挿通孔が形成されている。保護体は、保護ケース内にケーブル接続部を収容しつつ、ケーブル挿通孔の内面の圧着部で、ケーブル挿通孔内に位置するそれぞれのケーブルを圧着して、ケーブルの接続部を覆った状態でケーブル同士を強固に接続する。
【0011】
このように構成された保護体を航空照明用ケーブルの接続部分に用いることによって、ケーブルの接続部における防水性及び耐久性を向上することが考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2004−186112号公報
【特許文献2】特開2005−137176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記保護体によってケーブルの接続部を保護して防水性及び耐久性を向上させる構成では、保護ケースの内側からケーブルが導出される側壁部分の圧着部で締め付けることによってケーブル同士は保護ケースを介して固定される構造となっている。
【0014】
このため、この保護体で保護されたケーブルの接続部をハンドホール内に折り曲げて収容する場合、保護体及びケーブルに掛かる曲げ荷重がケーブルの圧着部分に集中して掛かり、この部分から亀裂が生じ、絶縁性能を劣化させる虞がある。さらに、近年では、航空照明をハロゲン電球からLED(Light Emitting Diode)へ移行しようという動向があり、これに伴い航空照明用配線で用いられるケーブル自体で流す電流も小さくて済むため、ケーブル自体も細くなると考えられる。このように、ケーブル自体が細くなる、つまり、航空照明用ケーブルが小径化される場合、上記構成のケーブルの接続部では、保護体及びケーブルに掛かる曲げ荷重が、ケーブルの圧着部分に集中して掛かると、ケーブルが細い分、更に絶縁性能が劣化しやすくなると考えられる。
【0015】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、海水に浸漬される等の過酷な布設状況下であったり、ケーブル自体が小径化されたりしても絶縁性能が劣化することがなく防水性及び耐久性を確保できるケーブル接続器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明のケーブル接続器の一つの態様は、雌端子をゴム系材料からなるレセプタクル外包体によって被覆したレセプタクルと、雄端子をゴム系材料からなるプラグ外包体によって被覆したプラグとの対からなり、前記レセプタクル外包体及びプラグ外包体の先端部には互いに嵌合可能な嵌合凸部及び嵌合凹部がそれぞれ設けられた防水コネクタと、前記防水コネクタを収容する分割可能な分割体によりなる筒状保護被覆体とを有するケーブル接続器であって、前記嵌合凸部の外周面は複数本の突条が断面鋸歯状に連続するように形成され、前記嵌合凹部の内周面は前記各突条の頂部に嵌装される部分が直円筒状に形成されてなり、前記レセプタクル外包体及びプラグ外包体の外周面には各々周方向に沿って凹部が形成され、前記筒状保護被覆体の内周面には、前記凹部にそれぞれ嵌合する凸部が形成されている構成を採る。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、海水に浸漬される等の過酷な布設状況下であったり、ケーブル自体が小径化されたりしても絶縁性能が劣化することがなく防水性及び耐久性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施の形態に係るケーブル接続器の説明に供する図
【図2】本発明の一実施の形態に係るケーブル接続器のレセプタクルを示す側断面図
【図3】本発明の一実施の形態に係るケーブル接続器のプラグを示す側断面図
【図4】図1(c)における筒状保護体のA−A線矢視端面図
【図5】レセプタクル及びプラグの接続部分を覆う筒状保護体の要部構成を示す平面図
【図6】筒状保護体を示す図
【図7】図6のB−B線矢視断面図である。
【図8】上側半割体と下側半割体とに分割した筒状保護体を示す図
【図9】分割された上側半割体と下側半割体とを組み合わせる筒状保護体の組立方法を示す図
【図10】ハンドホール内に配置されたケーブル接続器を示す図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施の形態に係るケーブル接続器の説明に供する図である。なお、図1(a)は、本発明の一実施の形態に係るケーブル接続器におけるレセプタクル及びプラグの側面図、図1(b)は、同ケーブル接続器におけるレセプタクルとプラグとの嵌合状態を示す図、図1(c)は、同ケーブル接続器の外観を示す側面図である。
【0021】
図1に示すように、ケーブル接続器100では、互いに嵌合可能なレセプタクル120とプラグ130(図1(a)参照)との対からなる防水コネクタと、嵌合したレセプタクル120及びプラグ130(防水コネクタ)を保持するとともに機械的に保護する筒状保護体(図1(c)参照)150とを有する。
【0022】
レセプタクル120はケーブル12の一端に設けられ、プラグ130はケーブル12とは別のケーブル13の一端に設けられている。
【0023】
図2は、本発明の一実施の形態に係るケーブル接続器のレセプタクルを示す側断面図である。
【0024】
図1(a)及び図2に示すレセプタクル120では、ケーブル12に接合されたスリーブ端子(雌端子)121が、先端部をハウジング129により被覆された状態で、ゴム系材料(ここでは、熱可塑性エラストマー)製のレセプタクル120のレセプタクル外包体(以下、「レセプタクル本体」という)122によって被覆されている。
【0025】
図1(a)及び図2に示すように、レセプタクル本体122の先端側に、ハウジング129が配置され、レセプタクル本体122においてハウジング129が配設された部分が、プラグ130の嵌合凹部133に嵌め込まれる嵌合凸部123となっている。この嵌合凸部123の先端部124には、図2に示すように、スリーブ端子121の一端部と連通する開口123aが形成され、プラグ130のピン端子(雄端子)131(図3参照)が挿入される。なお、ハウジング129は変性PPE等の難燃性を有する硬質プラスチック材料で形成されている。
【0026】
嵌合凸部123の外周面には、プラグ130の嵌合凹部133からの抜け出しを防ぐため、先端部124から基端側にかけて環状の3つの突条125が形成され、軸方向の断面が鋸歯状となるように連続している。すなわち、各突条125において、外周面は嵌合凸部123の基端側方向ほど外部に膨出し、最大径部を経て軸芯側に集束する形状とされている。
【0027】
また、各突条125の最大径部となる頂部の外径は、連続する突条125において嵌合凸部123の先端側から基端側にいくほど僅かに大きく形成されている。つまり、図1(a)及び図2において、先端部124から段部を介して連続する最も右側(嵌合凸部123の先端側)の突条125aよりも、3つの中央に位置する突条125bの方が僅かに頂部の外径が大きく形成されている。さらに、突条125bよりも最も左側(嵌合凸部123の基端側)に位置する突条125cの方が僅かに頂部の外径が大きく形成されている。また、かかる突条125の頂部は、軸方向断面が丸みを帯びた形状に形成されている。
【0028】
また、嵌合凸部123では、突条125cの基端側に、細溝126aを介して、突条125cの外径よりも外径が大きい鍔状の基端部126が形成されている。この基端部126は正面視円形であり、その外径は、嵌合凹部133の外径と等しく或いは略等しくなるように形成されている。なお、レセプタクル本体122内におけるケーブル端部は、スリーブ端子121に接続される部位と基端側で隣り合う部分に防水スリーブ12aを外嵌した状態で、レセプタクル本体122に固定されている。
【0029】
レセプタクル120のレセプタクル本体122の外周面には、周方向に沿って延在し、且つ、半径方向外方に開口する溝状の凹部(以下、便宜上「レセプタクル側凹部」とも称する)127が形成されている。
【0030】
レセプタクル側凹部127は、レセプタクル120のレセプタクル本体122において嵌合凸部123の基端側に、嵌合凸部123の基端部126に隣接して形成され、この基端部126とともに段差を形成する。このレセプタクル側凹部127には、レセプタクル120とプラグ130との接続部分が筒状保護体150で覆われた場合(図4参照)、筒状保護体150の凸部(詳細にはレセプタクル側凸部180)が嵌合される。
【0031】
図3は、本発明の一実施の形態に係るケーブル接続器のプラグを示す側断面図である。
【0032】
一方、図1(a)及び図3に示すプラグ130は、基端側からケーブル13が導出されるとともに、先端部として筒状の嵌合凹部133を有する。
【0033】
図3に示すように、プラグ130では、ケーブル13に接合されたピン端子131がゴム系材料(ここでは、熱可塑性エラストマー)製のプラグ外包体(以下、「プラグ本体」という)132によって被覆されている。
【0034】
プラグ本体132の先端側は、ピン端子131を囲むようにしてピン端子131の先端よりもさらに先端方向に延出された筒状をなしている。この筒状部分によってレセプタクル本体122の嵌合凸部123(図1(a)及び図2参照)が嵌め込まれる嵌合凹部133が形成されている。
【0035】
この嵌合凹部133の内周面では、レセプタクル本体122の嵌合凸部123に形成された突条125の頂部に嵌装される部分が直円筒状に形成されている。また、この嵌合凹部133の内周面は、内径の異なる三つの円筒部134a,134b,134cが連続して形成されている。具体的には、嵌合凹部133の内周面は、奥部の円筒部134a、真ん中に位置する円筒部134b、先端部に位置する円筒部134cの順に内径を大きくしている。
【0036】
円筒部134aの内径は嵌合凸部123の突条125a(図2参照)の頂部を、円筒部134bの内径は突条125b(図2参照)の頂部を、円筒部134cの内径は突条125c(図2参照)の頂部をそれぞれ押圧する程度の大きさで形成されている。
【0037】
この構成により、嵌合凸部123と嵌合凹部133との嵌合状態では、突条125aは嵌合凹部133の円筒部134aの頂部を、突条125bは円筒部134bの頂部を、突条125cは円筒部134cの頂部をそれぞれ軸心側に押圧する。
【0038】
このように嵌合凸部123と嵌合凹部133とが嵌合すると、嵌合凸部123と嵌合凹部133とが突条125の頂部を介して密着し、レセプタクル本体122とプラグ本体132との水密性が確保される。
【0039】
また、嵌合凹部133には、円筒部134同士の間に環状の突片部136が内側に向かって突設されている。この突片部136は、嵌合凸部123が嵌合凹部133に嵌め込まれたとき、嵌合凸部123の先端部124の段部及び各突条125の段部(各頂部により形成される段差部)に引っ掛かるように形成されている。これにより、嵌合凸部123の先端部124が所定の位置まで嵌め込まれるとき、先端部124及び各突条125のそれぞれの段部に、嵌合凹部133の各突片部136が嵌り込み明確な手応えが得られる。
【0040】
よって、作業者は、嵌合凸部123を嵌合凹部133に挿入する際の手応えを目安にして、レセプタクル本体122とプラグ本体132とを良好な嵌合状態に接続することができる。なお、プラグ本体132内におけるケーブル端部は、ピン端子131に接続される部位と基端側で隣り合う部分に、防水スリーブ13aを外嵌した状態で、プラグ本体132に固定されている。
【0041】
プラグ本体132の外周面には、周方向に沿って延在し、且つ、半径方向外方に開口する溝状の凹部(以下、便宜上「プラグ側凹部」とも称する)137が形成されている。
【0042】
プラグ側凹部137は、プラグ130のプラグ本体132において嵌合凹部133の基端側に、嵌合凹部133に隣接して形成され、嵌合凹部133の基端部分とともに段差を形成している。
【0043】
このプラグ側凹部137には、レセプタクル120とプラグ130との接続部分が筒状保護体150で覆われた場合(図4参照)、筒状保護体150の凸部(詳細にはプラグ側凸部190)が嵌合される。
【0044】
このように構成されたプラグ側凹部137は、レセプタクル120のレセプタクル本体122の外周面に形成されるレセプタクル側凹部127(図1(a)及び図2参照)と異なる溝幅で、プラグ本体132の外周面に形成されている。
【0045】
ここでは、レセプタクル120におけるレセプタクル側凹部127の溝幅W1よりもプラグ130におけるプラグ側凹部137の溝幅W2の方が大きい。
【0046】
これにより、ケーブル同士が接続された状態であっても、作業者は、凹部の幅を視認するだけでどちらのケーブルが、レセプタクル120が取り付けられたケーブルか、プラグ130が取り付けられたケーブルかを判別できる。
【0047】
さらに、レセプタクル120及びプラグ130の接続状態において、接続部分に曲げ荷重がかかる場合でも、レセプタクル側凹部127の溝幅W1よりもプラグ側凹部137の溝幅W2の方が大きいため、レセプタクル側凹部127とプラグ側凹部137とを同じ溝幅に構成した場合と比較して、プラグ側凹部137に掛かる曲げ荷重を分散させることができる。
【0048】
これらレセプタクル側凹部127及びプラグ側凹部137内に、筒状保護体150の凸部180、190(図4参照)を位置させた状態で、筒状保護体150は、レセプタクル120及びプラグ130の接続部分を覆うように取り付けられている。
【0049】
図4は、図1(c)における筒状保護体のA−A線矢視端面図である。
【0050】
図1(c)及び図4に示す筒状保護体150は、両端部でレセプタクル120及びプラグ130がそれぞれ導出された筒状をなし、レセプタクル120及びプラグ130の接続部分(互いに接続された嵌合凸部123及び嵌合凹部133)を収容することにより接続部分を機械的に保護する。
【0051】
図5は、レセプタクル及びプラグの接続部分を覆う筒状保護体の要部構成を示す平面図であり、図5のケーブル接続器は、図1(c)に示すケーブル接続器において筒状保護体を開いた状態を示している。図6は、筒状保護体を示す図であり、図7は、図6のB−B線矢視断面図である。
【0052】
図4〜図7に示す筒状保護体150は、ポリフェニレンエーテル(Poly Phenylene Ether)或いは変性PPE(modified-Poly Phenylene Ether)等の難燃性を有する硬質プラスチック材料で形成され、レセプタクル120及びプラグ130の接続部分に着脱自在に取り付けられる。
【0053】
ここでは、筒状保護体150は、図4〜図7に示すように、筒状体を分割してなる上側半割体152と下側半割体153とを有する。これら上側半割体152と下側半割体153とは、互いの一方の縁部152a、153aで、ヒンジ部154を介して開閉自在に接合されている。
【0054】
図4及び図5に示すようにヒンジ部154では、一方の半割体(下側半割体153)の縁部153aに形成された軸部154aに、他方の半割体(上側半割体152)の縁部152aに形成され、一方側に開口する鈎型形状のフック部154bが回動自在に掛合している。
【0055】
また、上側半割体152と下側半割体153の双方における他方の縁部152b、153bには、閉じた状態において互いに掛合する掛合爪部155及び掛合凹部156が設けられている。なお、掛合爪部155を上側半割体152に設け、この掛合爪部155に掛合する掛合凹部156を下側半割体153に設けても良い。
【0056】
なお、ヒンジ部154を設けずに、他方の縁部152b、153bと同様の構成、つまり、両半割体152、153の開口面面同士を合わせて筒状体とした場合に、両者を着脱自在に固定する爪とこの爪に掛合する凹部とによる掛合手段(互いに掛合する掛合爪部155と掛合凹部156に相当)を設けても良い。また、ヒンジ部154を筒状保護体150に設ける場合、ヒンジ部154は、上側半割体152及び下側半割体153を回動自在に接合して、両半割体152、153によって筒状体を形成する構成であればどのような形状、構成にしてもよい。
【0057】
このようにヒンジ部154を介して回動自在に接合された上側半割体152及び下側半割体153は断面略半円状で、且つ、嵌合凸部123及び嵌合凹部133の接続部分を覆う長手方向(ケーブル軸方向)の長さを有する。
【0058】
上側半割体152の内周面には、嵌合凸部123及び嵌合凹部133を収容する収容領域158を、長手方向(コネクタの軸方向)で区画し、且つ、レセプタクル側凹部127及びプラグ側凹部137に掛合する凸部182、192が設けられている。
【0059】
また、下側半割体153の内周面には、嵌合凸部123及び嵌合凹部133を収容する収容領域158を、長手方向(コネクタの軸方向)で区画し、且つ、レセプタクル側凹部127及びプラグ側凹部137に掛合する凸部183、193が設けられている。
【0060】
上側半割体152と下側半割体153との双方の内周面に形成された凸部182、183がレセプタクル側凸部180を形成し、レセプタクル側凹部127に嵌合される。なお、図5では、下側半割体153内部にレセプタクル120及びプラグ130の接続部分(嵌合凸部123及び嵌合凹部133の嵌合部分)が配置されている。このため、下側半割体153における凸部183がレセプタクル側凹部127に嵌合されている。
【0061】
上側半割体152と下側半割体153との双方の内周面に形成された凸部192、193がプラグ側凸部190を形成し、プラグ側凹部137に嵌合されている。なお、図5では、下側半割体153内部にレセプタクル120及びプラグ130の接続部分(嵌合凸部123及び嵌合凹部133の嵌合部分)が配置されているため、下側半割体153における凸部193がレセプタクル側凹部127に嵌合されている。
【0062】
図6に示すように、凸部182、183は、上側半割体152及び下側半割体153のそれぞれの内周面において、収容領域158より一端部150a側で、且つ、一端部150aを除く部位で、収容領域158に隣接して形成されている。
【0063】
すなわち、凸部182,183により構成されるレセプタクル側凸部180は、上側半割体152と下側半割体153を筒状に組み合わせた筒状保護体150の内周面において、一端部150a側で、且つ、一端部150aを除く部位で、収容領域158に隣接して形成されている。
【0064】
また、凸部192,193により構成されるプラグ側凸部190は、筒状保護体150の内周面において、収容領域158より他端部150b側で、他端部150bを除く部位で収容領域158に隣接して形成されている。
【0065】
このように、レセプタクル側凸部180及びプラグ側凸部190は、筒状保護体150において、それぞれ中央部分の収容領域158を挟み、筒状保護体150の両端部150a、150bを除く位置(両端部150a、150bから所定間隔を空けた位置)に形成されている。
【0066】
これらレセプタクル側凸部180及びプラグ側凸部190は、上側半割体152及び下側半割体153と同心で、且つ、内径を上側半割体152及び下側半割体153の内径よりも小さくしている。
【0067】
また、レセプタクル側凸部180及びプラグ側凸部190において、筒状保護体150の内周面(詳細には、上側半割体152及び下側半割体153の内周面)から軸心側に突出する高さは、レセプタクル120及びプラグ130のレセプタクル側凹部127及びプラグ側凹部137の深さに対応する。
【0068】
また、上側半割体152及び下側半割体153において、筒状保護体150の一端部150aの内周を形成する半円溝152c、153cの内径は、一端部150a内面に対向して配置されるレセプタクル120の外周面との間に隙間ができる大きさとしている。
【0069】
同様に、上側半割体152及び下側半割体153において、筒状保護体150の他端部150bの内周を形成する半円溝152d、153dの内径は、他端部150b内面に対向して配置されるプラグ130の外周面との間に隙間ができる大きさとしている。なお、一端部150a、他端部150b内には、ケーブル12、ケーブル13が位置してもよい。この場合、各半円溝152c、153c、152d、153dの内径は、筒状体となった状態においてケーブル12、13の外径よりも大きな径となる。
【0070】
このように構成される筒状保護体150は、上側半割体152と下側半割体153を閉じて接合するだけで簡単に組み立てられる。
【0071】
図8は、上側半割体と下側半割体とに分割した筒状保護体を示し、図9は、分割された上側半割体と下側半割体とを組み合わせる筒状保護体の組立方法を示す図である。
【0072】
すなわち、筒状保護体150は、図8に示すように分割された上側半割体152及び下側半割体153において、下側半割体153の軸部154aに、上方から上側半割体152のフック部154bを掛合させる(図9参照)。
【0073】
これにより、上側半割体152と下側半割体153とはヒンジ部154を介して回動自在に接合される。
【0074】
このように構成された筒状保護体150を備えるケーブル接続器100を用いたケーブル12、13の接続を説明する。
【0075】
ケーブル12の端部に形成されたレセプタクル120と、ケーブル13の端部に形成されたプラグ130を接続する場合、図1(a)に示すように、先ず、レセプタクル120の嵌合凸部123をプラグ130の嵌合凹部133内に挿入して両者を嵌合する。
【0076】
次いで、嵌合凸部123と嵌合凹部133との嵌合によって形成されたレセプタクル120とプラグ130との接続部分を、筒状保護体150の収容領域158内に収容する。このとき、接続部分を、上側半割体152或いは下側半割体153の一方の収容領域158に配置するとともに、レセプタクル側凸部180を構成する凸部182或いは凸部183を、レセプタクル側凹部127に嵌合し、プラグ側凸部190を構成する凸部192或いは凸部193を、レセプタクル側凹部127に嵌合する。
【0077】
次いで、上側半割体152及び下側半割体153を、ヒンジ部154を介して回動して閉じることによって、掛合爪部155と、掛合凹部156とを掛合させる。これにより、筒状保護体150は、レセプタクル120及びプラグ130の接続部分を被覆する筒状体となる。
【0078】
このとき、筒状保護体150は、内部の凸部182、183、192、193をレセプタクル側凹部127、プラグ側凹部137のそれぞれに位置させた状態で、レセプタクル120の嵌合凸部123とプラグ130の嵌合凹部133との嵌合部分を収容している。
【0079】
これにより、筒状保護体150の凸部182、183は、レセプタクル側凹部127に嵌合されることによって、レセプタクル120自体にかかる引っ張り力に抗する。すなわち、凸部182、183は、レセプタクル120が引っ張られる際に、嵌合凸部123の基端部126に掛合し、凸部182、183自体は、レセプタクル側凹部127における基端側の側面に掛合する。これにより、レセプタクル120自体の引っ張り方向への移動が規制される。
【0080】
また、同様に、筒状保護体150の凸部192、193は、プラグ側凹部137に嵌合されることによって、プラグ130自体にかかる引っ張り力に抗する。すなわち、凸部192、193は、プラグ130が引っ張られる際に、掛合凹部133の基端面に掛合し、凸部192、193自体は、プラグ側凹部137における基端側の側面に掛合する。これにより、プラグ130自体の引っ張り方向への移動が規制される。
【0081】
これにより嵌合凸部123及び嵌合凹部133の嵌合部分(すなわち、レセプタクル120とプラグ130の接続部分)自体の移動を規制して、接続状態を維持し絶縁性能を十分に確保できる。
【0082】
さらに、筒状保護体150の内周面において、軸方向と直交する方向で軸心に向かって突出する凸部182、183、192、193が、レセプタクル凹部127及びプラグ側凹部137のそれぞれの内部に嵌るように配置されている。このため、筒状保護体150によって覆われることにより防水性の向上が図られている嵌合凸部123及び嵌合凹部133の嵌合部分には、筒状保護体150の両端部150a、150b側から水が侵入しにくく、当該嵌合部分の防水性の一層の向上が図られている。
【0083】
このようにレセプタクル120及びプラグ130を接続して、この接続部分に筒状保護体150を取り付けるだけで、簡単に、防水性が確保され、且つ、安定した絶縁性能を有するケーブル接続を行うことができる。
【0084】
また、筒状保護体150によって、プラグ120及びレセプタクル130の接続部分(嵌合凸部123と嵌合凹部133の嵌合部分)は、プラグ120及びレセプタクル130自体に負荷が掛かることなく保持される。さらに、筒状保護体150の両端部150a、150bでは、これらの内周面と、レセプタクル120のレセプタクル本体122の外周及びプラグ130のプラグ本体132の外周との間に隙間が空いている。つまり、筒状保護体150は、中央部分でコネクタの接続部分の両側で、軸方向への動きを規制した状態で、両端部150a、150bにおいて、レセプタクル120及びプラグ130を締め付けることなく外部に導出している。
【0085】
このように防水コネクタ(レセプタクル120及びプラグ130)は、筒状保護体150によって、負荷がかかることなく、その接続状態を保持される。
【0086】
これによりケーブル接続器100自体に曲げ応力が掛かる場合でも、防水コネクタ(レセプタクル120及びプラグ130)及びこれらに接続されるケーブル12、13に局所的な負荷がかかることがない。例えば、ケーブル接続器100自体に曲げ応力が掛かる場合、両端部150a、150bの内側部分に位置するレセプタクル120、プラグ130は、両端部150a、150bの内側で若干曲がった後で、両端部150a、150bに接触する。
【0087】
すなわち、ケーブル接続器100自体に曲げ応力が掛かる場合、両端部150a、150bの内側部分に位置するレセプタクル120、プラグ130の部位に直接応力が作用することがなく、フレキシブル性に優れたケーブル接続器100を実現できる。
【0088】
これにより、図10に示すように、ケーブル接続器100は、航空照明用ケーブルの接続に用いられることによってハンドホール50内において接続される変圧器51とともに折曲された状態で配置され、且つ、海水に浸漬される過酷な布設状況下でも、絶縁性能が劣化することがなく高い防水性及び耐久性を確保できる。
【0089】
また、航空照明用ケーブルの接続に用いられた場合、配線のメンテナンスは主に夜中に行われる。この場合でも、本実施の形態によれば、レセプタクル120及びプラグ130のフラグ側凹部127及びプラグ側凹部137の幅を触手、視認等で確認するだけで、接続されたレセプタクル120及びプラグ130を外すことなく、どちらのケーブルが、レセプタクル120又はプラグ130が接続されたケーブルであるかを認識できる。これにより、ケーブルを交換する際の迅速性の向上を図ることができる。
【0090】
なお、ケーブル接続器100では、嵌合凹部133が、複数の円筒部134a,134b,134cの連続した形状であるので、これを成形するときには、各突片部136を除いてアンダーカットとなる箇所がなく、無理なく離型できる。よって、プラグ本体132を成形するとき、嵌合凹部133の各部が変形することはなく、設計寸法通りに安定して製造できる。また、嵌合凹部133に設けられた環状の突片部136は成形時にアンダーカットとなるが、嵌合状態の目安とするものにすぎないので、離型時に多少変形してもレセプタクル本体122とプラグ本体132との水密性が損なわれるおそれがない。
【0091】
[評価試験]
本実施の形態に係るケーブル接続器100の構成(実施例1)を用いて、防止性及び耐久性の試験を行い、下記従来構成を用いたケーブル接続構造の場合と比較した。この結果を表1に示す。
【表1】

【0092】
比較例1は、引用文献2のように接続されるケーブル同士の接続部を覆う保護体においてケーブルが挿通する両側壁面で、それぞれのケーブル或いはケーブルに取り付けられたコネクタの外周を圧着して固定する構造の接続器とした。
【0093】
比較例2は、本実施の形態のレセプタクル120及びプラグ130を用いて引用文献2の保護体で被覆して、レセプタクル120及びプラグ130が挿通する両側壁部でそれぞれのケーブル、あるいはケーブルに取り付けられたレセプタクル120、プラグ130の外周を圧着して固定する構造の接続器とした。
【0094】
表1に示すように、実施例1であるケーブル接続器100では、長期浸水試験として、常温の水に1000時間水没させた後の絶縁抵抗は、25000MΩ以上であった。
【0095】
また、実施例1であるケーブル接続器100では、高温浸水試験として、70℃の温水に20日間水没させた後の絶縁抵抗は、10000MΩ以上であった。
【0096】
さらに、ケーブル接続器100は、屈曲性能試験として、屈曲強度60°、速度40回/分、回数5000回、荷重500gの条件下において、屈曲させた場合でも、接着剤の剥がれ等の破損は確認できなかった。
【0097】
本実施の形態のケーブル接続器100は、上記長期浸水試験、高温浸水試験及び屈曲性能試験をクリアできるため、空港などの過酷な布設環境下において、航空照明用ケーブルの接続として使用することができる。さらに、航空照明がハロゲン電球からLEDに代わり、供給する電流量の減少に伴い、ケーブル径が小径になる場合でも、本実施の形態によれば、上述した効果と同様の効果を得ることができ、航空照明用ケーブルの接続におけるケーブル接続器として一層効果的に用いられることとなる。
【0098】
なお、上記本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り、構成要素などにおいて、種々の改変をなすことができ、そして本発明が該改変させたものに及ぶことは当然である。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明に係るケーブル接続器は、海水に浸漬される等過酷な布設状況下であったり、ケーブル自体が小径化されたりしても絶縁性能が劣化することがなく防水性及び耐久性を確保できる効果を有し、屋外配線、特に布設環境の厳しい航空照明用配線におけるケーブルの接続に用いられるケーブル接続器として有用である。
【符号の説明】
【0100】
12、13 ケーブル
100 ケーブル接続器
120 レセプタクル
122 レセプタクル本体
123 嵌合凸部
126 基端部
127 レセプタクル側凹部
130 プラグ
132 プラグ本体
133 嵌合凹部
137 プラグ側凹部
150 筒状保護体
152 上側半割体
153 下側半割体
154 ヒンジ部
155 掛合爪部
156 掛合凹部
158 収容領域
180 レセプタクル側凸部
182、183、192、193 凸部
190 プラグ側凸部
150a 筒状保護体の一端部
150b 筒状保護体の他端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雌端子をゴム系材料からなるレセプタクル外包体によって被覆したレセプタクルと、
雄端子をゴム系材料からなるプラグ外包体によって被覆したプラグとの対からなり、前記レセプタクル外包体及びプラグ外包体の先端部には互いに嵌合可能な嵌合凸部及び嵌合凹部がそれぞれ設けられた防水コネクタと、
前記防水コネクタを収容する分割可能な分割体によりなる筒状保護被覆体とを有するケーブル接続器であって、
前記嵌合凸部の外周面は複数本の突条が断面鋸歯状に連続するように形成され、
前記嵌合凹部の内周面は前記各突条の頂部に嵌装される部分が直円筒状に形成されてなり、
前記レセプタクル外包体及びプラグ外包体の外周面には各々周方向に沿って凹部が形成され、
前記筒状保護被覆体の内周面には、前記凹部にそれぞれ嵌合する凸部が形成されている、
ケーブル接続器。
【請求項2】
前記レセプタクル外包体の外周面に形成された凹部と、前記プラグ外包体の外周面に形成された凹部の幅が異なる、
請求項1記載のケーブル接続器。
【請求項3】
前記筒状保護被覆体の凸部は、前記筒状保護被覆体の内周面において嵌合凸部と嵌合凹部の嵌合部分を収容する領域を挟み、前記筒状保護被覆体の両端部を除く位置に形成されている、
請求項1又は2に記載のケーブル接続器。
【請求項4】
前記筒状保護被覆体の両端部の内径が、該両端部に対応するケーブル或いは防水コネクタの部位の外径よりも大きい、
請求項1から3のいずれかに記載のケーブル接続器。
【請求項5】
航空照明用ケーブルの接続に利用する、
請求項1から4のいずれかに記載のケーブル接続器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−142058(P2011−142058A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−3379(P2010−3379)
【出願日】平成22年1月8日(2010.1.8)
【出願人】(391057410)行田電線株式会社 (16)
【出願人】(306013120)昭和電線ケーブルシステム株式会社 (218)
【Fターム(参考)】