説明

ゲル状組成物

【課題】塩やイオン性界面活性剤等の共存下でも高い粘性を保持することができるゲル状組成物を提供する。
【解決手段】下記の(A)成分および(B)成分を用いてなるゲル状組成物であって、上記(A)成分の含有量がゲル状組成物全体の0.3〜5.0重量%の範囲である。
(A)最大繊維径が1000nm以下で、数平均繊維径が2〜150nmのセルロース繊維であって、そのセルロースが、セルロースI型結晶構造を有すると共に、セルロース分子中のグルコースユニットのC6位の水酸基が選択的に酸化されてアルデヒド基およびカルボキシル基に変性され、上記アルデヒド基を0.08〜0.3mmol/gおよび上記カルボキシル基を0.6〜2.0mmol/g有する、セルロース繊維。
(B)水。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース繊維を用いてなるゲル状組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、増粘剤やゲル化剤としては、ジュランガム,カラギーナン,寒天、ザンタンガム等の天然高分子化合物や、メチルセルロース,ヒドロキシメチルセルロース等の非イオン性の水溶性セルロース、カルボキシメチルセルロース,カチオン化セルロース等のイオン性セルロース、ポリビニルアルコール,ポリビニルピロリドン,ポリアクリル酸ソーダ,カルボキシビニルポリマー,ポリエチレングリコール等の合成高分子、スメクタイト等の水膨潤性粘土鉱物等が使用されてきた。
【0003】
しかし、上記天然高分子化合物は、水に対する溶解性が低いため、ゲル状組成物の製造工程中において水の加熱処理が必要となり、生産性に劣るという問題や、香料等を添加した場合にはその一部が揮発するという問題等があった。一方、上記非イオン性の水溶性セルロースは、水に対する溶解性が高いため、水の加熱処理は不要であるが、ゲル状物を得るためには大量に水溶性セルロースを添加する必要が生じるという問題があった。また、上記ポリアクリル酸ソーダやカルボキシビニルポリマー等の合成高分子は、分散・溶解する際に継粉(ママコ)にならないように留意したり、pH調整を行わなければならないという煩雑さがあった。また、上記ザンタンガムは曳糸性が強く、化粧品等に使用した際にはべたつき感があることが開示されている(非特許文献1)。これら天然高分子化合物、水溶性セルロース、合成高分子の多くは、共存する塩類により著しく粘度が低下したり、糸引き性を示すなど使用範囲や意匠性に問題が多かった。
【0004】
そこで、カルボキシビニルポリマーをゲル化剤として使用した点鼻用ゲル剤が提案され、このものは液だれが改善され、薬効成分の吸収促進等の効果が認められることが開示されている(特許文献1)。また、数10nmまでにダウンサイジング化されたセルロース粒子は、透明性が高く、少量の添加量で高い増粘性、分散・乳化安定性、構造安定性が得られることが開示されている(特許文献2)。
【非特許文献1】柴山充弘、梶原莞爾監修「高分子ゲルの最新動向」シーエムシー出版、2004年4月30日、p.216−226
【特許文献1】特開2001−89359号公報
【特許文献2】国際公開第99/28350号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載のものは、製剤の際に塩基性物質でpH調整が必要であること、高粘度化された基材に薬効成分を均一に混合分散するために強力な攪拌が必要である等の製造上の難点もある。また、上記特許文献2に記載のセルロース粒子は、塩類等の電解質や高濃度のイオン性界面活性剤の共存下では増粘性が低下するだけでなく、セルロース粒子が沈降し分散体としての形を取ることができない等の難点があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、塩やイオン性界面活性剤等の共存下でも高い粘性を保持することができるゲル状組成物の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明のゲル状組成物は、下記の(A)成分および(B)成分を用いてなるゲル状組成物であって、上記(A)成分の含有量がゲル状組成物全体の0.3〜5.0重量%の範囲に設定されているという構成をとる。
(A)最大繊維径が1000nm以下で、数平均繊維径が2〜150nmのセルロース繊維であって、そのセルロースが、セルロースI型結晶構造を有すると共に、セルロース分子中のグルコースユニットのC6位の水酸基が選択的に酸化されてアルデヒド基およびカルボキシル基に変性され、上記アルデヒド基を0.08〜0.3mmol/gおよび上記カルボキシル基を0.6〜2.0mmol/g有する、セルロース繊維。
(B)水。
【0008】
すなわち、本発明者らは、塩やイオン性界面活性剤等の共存下でも高い粘性を保持することができるゲル状組成物を得るため、鋭意研究を重ねた。その研究の過程で、最大繊維径が1000nm以下、かつ数平均繊維径が2〜150nmであり、セルロースI型結晶構造を有すると共に、セルロース分子中のグルコースユニットのC6位の水酸基が選択的に酸化されてアルデヒド基およびカルボキシル基に変性されてなる微細セルロース繊維に着目した。そして、上記アルデヒド基を0.08〜0.3mmol/gおよび上記カルボキシル基を0.6〜2.0mmol/g有する特定の微細セルロース繊維(水不溶性のセルロース繊維)を、液状分散媒体である水と組み合わせてなるゲル状組成物を突き止めた。このゲル状組成物について、上記特定のセルロース繊維の好ましい含有量について実験を重ねたところ、特定のセルロース繊維の含有量がゲル状組成物全体の0.3〜5.0重量%の範囲である場合に、所期の目的を達成できることを見いだし、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0009】
このように、本発明のゲル状組成物は、最大繊維径が1000nm以下で、数平均繊維径が2〜150nmのセルロース繊維であって、そのセルロースが、セルロースI型結晶構造を有すると共に、セルロース分子中のグルコースユニットのC6位の水酸基が選択的に酸化されてアルデヒド基およびカルボキシル基に変性され、上記アルデヒド基を0.08〜0.3mmol/gおよび上記カルボキシル基を0.6〜2.0mmol/g有する微細セルロース繊維(A)と、液状分散媒体である水(B)とを用いてなる。そして、上記微細セルロース繊維の含有量が、ゲル状組成物全体の0.3〜5.0重量%の範囲であるため、塩やイオン性界面活性剤等の共存下でも高粘度で、分離や離水等を起こさずにゲル状態を保つことができる。また、本発明のゲル状組成物は、曳糸性もなく、各種の機能性添加剤と混合しやすい等、使い勝手に優れている。
【0010】
また、本発明のゲル状組成物は、高温環境下でも充分に粘度を保持することができるため、例えば、車内温度が70℃以上の高温になるような用途(自動車用の芳香剤、脱臭剤、消臭剤等)に用いることも可能である。なお、ゼラチン,アガロース等の天然多糖類ゲル化剤は、高温下ではゲル−ゾル転移を起こし、ゲルとしての粘度を保持することができないため、このような用途には不向きである。
【0011】
そして、上記特定のセルロース繊維および水(液状分散媒体)を用いてなるゲル状組成物は、無機塩類、界面活性剤等の機能性添加剤との配合性にも富んでいることから、化粧品基材や、芳香剤等のトイレタリー用品ゲル基材として広く好適に利用することができる。
【0012】
また、上記(A)成分のセルロース繊維が、N−オキシル化合物の存在下、共酸化剤を用いて、セルロース繊維の水酸基の一部をカルボキシル基およびアルデヒド基に酸化されたものであると、共酸化剤の使用量および酸化時間を調整することにより、上記酸化され変性された官能基を特定の範囲に調整することができ、ゲル状組成物としてより良好な結果を得ることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0014】
本発明のゲル状組成物は、特定のセルロース繊維(A成分)と、水(B成分)とを用いてなるものである。
【0015】
ここで、本発明においては、上記特定のセルロース繊維(A成分)の含有量が、ゲル状組成物全体の0.3〜5.0重量%の範囲であることが最大の特徴であり、好ましくは0.5〜3.0重量%の範囲である。すなわち、上記A成分の含有量が上記範囲内であると、塩やイオン性界面活性剤等の共存下でも、高い粘性を保持することができる。これに対し、上記A成分の含有量が0.3重量%未満であると、機能性添加剤を配合した時にゲル状にならず流動性を示し、逆に上記A成分の含有量が5.0重量%を超えると、非常に高粘度となり分散工程において微細化処理が不可能であり、マクロ的に均質なゲル状組成物とならないため実質的にゲル状組成物を得ることができないからである。
【0016】
本発明に用いる上記特定の微細セルロース繊維(A成分)は、セルロース繊維の水酸基の一部がカルボキシル基およびアルデヒド基に酸化されているセルロース繊維であって、最大繊維径が1000nm以下、かつ数平均繊維径が2〜150nmであり、好ましくは最大繊維径が500nm以下、かつ数平均繊維径が2〜100nmであり、特に好ましくは最大繊維径が30nm以下、かつ数平均繊維径が2〜10nmである。すなわち、最大繊維径が1000nmを超えるか、もしくは数平均繊維径が150nmを超えるセルロース繊維を用いると、セルロース繊維が沈降し流動性を保持したままで、ゲル状とはならないからである。
【0017】
ここで、上記最大繊維径および数平均繊維径の解析は、例えば、つぎのようにして行うことができる。すなわち、固形分率で0.05〜0.1重量%の微細セルロースの水分散体を調製し、その分散体を、親水化処理済みのカーボン膜被覆グリッド上にキャストして、透過型電子顕微鏡(TEM)の観察用試料とする。なお、本発明外の大きな繊維径の繊維を含む場合には、ガラス上へキャストした表面の走査型電子顕微鏡(SEM)像を観察してもよい。そして、構成する繊維の大きさに応じて5000倍、10000倍あるいは50000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡画像による観察を行う。その際に、得られた画像内に縦横任意の画像幅の軸を想定し、その軸に対し、20本以上の繊維が交差するよう、試料および観察条件(倍率等)を調節する。そして、この条件を満たす観察画像を得た後、この画像に対し、1枚の画像当たり縦横2本ずつの無作為な軸を引き、軸に交錯する繊維の繊維径を目視で読み取っていく。このようにして、最低3枚の重複しない表面部分の画像を、電子顕微鏡で撮影し、各々2つの軸に交錯する繊維の繊維径の値を読み取る(したがって、最低20本×2×3=120本の繊維径の情報が得られる)。このようにして得られた繊維径のデータにより、最大繊維径および数平均繊維径を算出する。
【0018】
つぎに、本発明に用いる上記特定のセルロース繊維(A成分)のカルボキシル基とアルデヒド基の量について説明する。一般に、セルロースに存在するカルボキシル基とアルデヒド基の量の総和が多いと、より微小な繊維径として安定に存在し得るため好ましい。本発明においては、少量の添加量で高粘度化することができるという点から、上記特定のセルロース繊維(A成分)における、上記アルデヒド基の量が0.08〜0.3mmol/gで、かつ、上記カルボキシル基の量が0.6〜2.0mmol/gの範囲に設定され、好ましくは上記アルデヒド基の量が0.10〜0.25mmol/gで、かつ、上記カルボキシル基の量が0.8〜1.6mmol/gの範囲である。すなわち、上記カルボキシル基の量およびアルデヒド基の量を上記範囲に設定すると、上記特定のセルロース繊維(A成分)が凝集沈殿を起こすことなく安定してゲル中に存在するようになる。
【0019】
なお、所望のカルボキシル基量,アルデヒド基量の調整は、後述するように、セルロース繊維の酸化工程で用いる共酸化剤の添加量や反応時間を制御することにより行うことができる。
【0020】
ここで、上記カルボキシル基量、アルデヒド基量の測定は、以下のような電位差滴定により行うことができる。
【0021】
〔カルボキシル基量の測定〕
乾燥重量を精秤したセルロース試料から0.5〜1重量%スラリーを60ml調製し、0.1Mの塩酸水溶液によってpHを約2.5とした後、0.05Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、電気伝導度測定を行う。測定はpHが約11になるまで続ける。電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(V)から、下の式(1)に従い官能基量1(カルボキシル基量)を求めることができる。
【0022】
【数1】

【0023】
〔アルデヒド基量の測定〕
上記セルロース試料を、酢酸でpHを4〜5に調整した2%亜塩素酸ナトリウム水溶液中でさらに48時間常温(25℃)で酸化し、上記式(1)に準じて官能基量2を測定する。そして、この酸化によって追加された官能基量(官能基量2−官能基量1)を算出し、アルデヒド基量とする。
【0024】
そして、上記特定のセルロース繊維のセルロースにアルデヒド基あるいはカルボキシル基が導入されていることは、つぎのようにして確認することができる。すなわち、水分を完全に除去したサンプルにおいて、全反射式赤外分光スペクトル(ATR)解析により、カルボニル基に起因する吸収(1608cm-1付近)および酸型のカルボキシル基(COOH)に起因する吸収(1730cm-1付近)が存在することにより確認することができる。
【0025】
つぎに、上記特定のセルロース繊維(A成分)は、例えば、(1) 酸化反応工程、(2) 精製工程、(3) 分散工程(微細化処理工程)等を行うことにより得ることができる。以下、各工程を順に説明する。
【0026】
(1) 酸化反応工程
天然セルロースと、N−オキシル化合物とを水(分散媒体)に分散させた後、共酸化剤を添加して、反応を開始する。反応中は0.5Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを10〜11に保ち、pHに変化が見られなくなった時点で反応終了と見なす。ここで、共酸化剤とは、直接的にセルロース水酸基を酸化する物質ではなく、酸化触媒として用いられるN−オキシル化合物を酸化する物質のことである。
【0027】
上記天然セルロースは、植物,動物,バクテリア産生ゲル等のセルロースの生合成系から単離した精製セルロースを意味する。より具体的には、針葉樹系パルプ、広葉樹系パルプ、コットンリンター,コットンリント等の綿系パルプ、麦わらパルプ,バガスパルプ等の非木材系パルプ、バクテリアセルロース(BC)、ホヤから単離されるセルロース、海草から単離されるセルロース等をあげることができる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。これらのなかでも、針葉樹系パルプ、広葉樹系パルプ、コットンリンター、コットンリント等の綿系パルプ、麦わらパルプ,バガスパルプ等の非木材系パルプが好ましい。上記天然セルロースは、叩解等の表面積を高める処理を施すと、反応効率を高めることができ、生産性を高めることができるため好ましい。また、上記天然セルロースとして、単離、精製の後、乾燥させない(ネバードライ)で保存していたものを使用すると、ミクロフィブリルの集束体が膨潤しやすい状態であるため、反応効率を高め、微細化処理後の数平均繊維径を小さくすることができるため好ましい。
【0028】
上記反応における天然セルロースの分散媒体は水であり、反応水溶液中の天然セルロース濃度は、試薬(天然セルロース)の充分な拡散が可能な濃度であれば任意である。通常は、反応水溶液の重量に対して約5%以下であるが、機械的攪拌力の強い装置を使用することにより反応濃度を上げることができる。
【0029】
また、上記N−オキシル化合物としては、例えば、一般に酸化触媒として用いられるニトロキシラジカルを有する化合物があげられる。上記N−オキシル化合物は、水溶性の化合物が好ましく、なかでもピペリジンニトロキシオキシラジカルが好ましく、特に2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシラジカル(TEMPO)または4−アセトアミド−TEMPOが好ましい。上記N−オキシル化合物の添加は、触媒量で充分であり、好ましくは0.1〜4mmol/l、さらに好ましくは0.2〜2mmol/lの範囲で反応水溶液に添加する。
【0030】
上記共酸化剤としては、例えば、次亜ハロゲン酸またはその塩、亜ハロゲン酸またはその塩、過ハロゲン酸またはその塩、過酸化水素、過有機酸等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。なかでも、次亜塩素酸ナトリウム、次亜臭素酸ナトリウム等のアルカリ金属次亜ハロゲン酸塩が好ましい。そして、上記次亜塩素酸ナトリウムを使用する場合は、臭化ナトリウム等の臭化アルカリ金属の存在下で反応を進めることが、反応速度の点において好ましい。上記臭化アルカリ金属の添加量は、上記N−オキシル化合物に対して約1〜40倍モル量、好ましくは約10〜20倍モル量である。
【0031】
上記反応水溶液のpHは約8〜11の範囲で維持されることが好ましい。水溶液の温度は約4〜40℃において任意であるが、反応は室温(25℃)で行うことが可能であり、特に温度の制御は必要としない。
【0032】
目的とするカルボキシル基量,アルデヒド基量を得るために、酸化の程度を共酸化剤の添加量と反応時間により制御する。通常、反応時間は約5〜120分、長くとも240分以内に完了する。
【0033】
(2) 精製工程
つぎに、未反応の共酸化剤(次亜塩素酸等)や、各種副生成物等を除く目的で精製を行う。反応物繊維は通常、この段階ではナノファイバー単位までばらばらに分散しているわけではないため、通常の精製法、すなわち水洗とろ過を繰り返すことで高純度(99重量%以上)の反応物繊維と水の分散体とする。
【0034】
上記精製工程における精製方法は、遠心脱水を利用する方法(例えば、連続式デカンダー)のように、上述した目的を達成できる装置であればどのような装置を利用しても構わない。こうして得られる反応物繊維の水分散体は、絞った状態で固形分(セルロース)濃度としておよそ10重量%〜50重量%の範囲にある。この後の分散工程を考慮すると、50重量%よりも高い固形分濃度とすると、分散に極めて高いエネルギーが必要となることから好ましくない。
【0035】
(3) 分散工程(微細化処理工程)
上記精製工程にて得られる水を含浸した反応物繊維(水分散体)を、分散媒体中に分散させ分散処理を行う。処理に伴って粘度が上昇し、微細化処理されたセルロース繊維の分散体を得ることができる。その後、上記セルロース繊維の分散体を乾燥することによって、特定のセルロース繊維(A成分)を得ることできる。なお、上記セルロース繊維の分散体を乾燥することなく、分散体の状態でゲル状組成物に用いても差し支えない。
【0036】
そして、上記のようにして得られた特定のセルロース繊維(A成分)の分散媒体には、水(B成分)が用いられる。
【0037】
上記分散工程で使用する分散機としては、高速回転下でのホモミキサー、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、超音波分散処理、ビーター、ディスク型レファイナー、コニカル型レファイナー、ダブルディスク型レファイナー、グラインダー等の強力で叩解能力のある装置を使用することにより、より効率的かつ高度なダウンサイジングが可能となり、経済的有利にゲル状組成物を得ることができる点で好ましい。なお、上記分散機としては、例えば、スクリュー型ミキサー、パドルミキサー、ディスパー型ミキサー、タービン型ミキサー等を用いても差し支えない。
【0038】
上記セルロース繊維の分散体の乾燥法としては、例えば、分散媒体が水である場合は、スプレードライ、凍結乾燥法等が用いられ、分散媒体が水と有機溶媒の混合溶液である場合は、ドラムドライヤーによる乾燥法、スプレードライヤーによる噴霧乾燥法等が用いられる。
【0039】
なお、本発明のゲル状組成物には、上記特定のセルロース繊維(A成分)および水(B成分)とともに、機能性添加剤を用いることも可能である。上記機能性添加剤としては、例えば、無機塩類、有機塩類、界面活性剤、オイル類、保湿剤、防腐剤、有機微粒子、無機微粒子、消臭剤、香料、有機溶媒等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0040】
上記無機塩類としては、水(B成分)に溶解・分散できるものが好ましく、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属と、ハロゲン化水素、硫酸、炭酸等からなる塩類があげられ、具体的には、NaCl、KCl、CaCl2 、MgCl2 、(NH4 2 SO4 、Na2 CO3 等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0041】
上記有機塩類としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の水酸化物や、有機アミンと分子中に存在するカルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基等を中和することにより実質的に水溶性、水分散性を示す物質であれば特に限定することなく用いられる。
【0042】
上記界面活性剤としては、水(B成分)に溶解・分散できるものが好ましく特に限定されるものではないが、例えば、アルキルスルホコハク酸ソーダ,アルキルスルホン酸ソーダ,アルキル硫酸エステル塩等のスルホン酸系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル等のリン酸エステル系界面活性剤、高級アルコールのアルキレンオキサイド付加物,アルキルアリールフェノールのアルキレンオキサイド付加物等の非イオン系界面活性剤等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0043】
上記オイル類としては、例えば、メチルポリシロキサン,シリコーンポリエーテルコポリマー等のシリコンオイル、オリーブ油,ひまし油等の植物油、動物油、ラノリン、流動パラフィン、スクワラン等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0044】
上記保湿剤としては、例えば、ヒアルロン酸、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、ソルビトール、ジプロピレングリコール等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0045】
上記有機微粒子としては、例えば、スチレン−ブタジエンラテックス、アクリルエマルジョン、ウレタンエマルジョン等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0046】
上記無機微粒子としては、例えば、酸化チタン、シリカ化合物、カーボンブラック等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0047】
上記防腐剤としては、例えば、メチルパラベン、エチルパラベン等があげられ、単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0048】
上記消臭剤・香料としては、例えば、Dリモネン、デシルアルデヒド、メントン、プレゴン、オイゲノール、シンナムアルデヒド、ベンズアルデヒド、メントール、ペパーミント油、レモン油、オレンジ油、植物(例えば、カタバミ、ドクダミ、ツガ、イチョウ、クロマツ、カラマツ、アカマツ、キリ、ヒイラギモクセイ、ライラック、キンモクセイ、フキ、ツワブキ、レンギョウ等)の各器官から水、親水性有機溶剤で抽出された消臭有効成分等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0049】
上記有機溶媒としては、例えば、水に可溶するアルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコール、グリセリン等)、エーテル類(エチレングリコールジメチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン)、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキサイド等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0050】
また、上記機能性添加剤の配合量は、機能性添加剤が目的とする効果を発現するために必要な配合量で用いることが好ましく、特に限定されるものではない。
【0051】
本発明のゲル状組成物は、例えば、上記特定のセルロース繊維(A成分)および水(B成分)とともに、必要に応じて機能性添加剤を適宜配合し、これらを混合処理等することにより得ることができる。
【0052】
上記混合処理としては、例えば、真空ホモミキサー、ディスパー、プロペラミキサー、ニーダー等の各種混練器、各種粉砕機、ブレンダー、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、コロイドミル、ペブルミル、ビーズミル粉砕機、高圧ホモジナイザーや超高圧ホモジナイザー等を用いた混合処理があげられる。
【0053】
このようにして得られる本発明のゲル状組成物の粘度は、15Pa・s以上が好ましく、特に好ましくは30〜150Pa・sの範囲である。
【0054】
なお、上記粘度は、例えば、BH型粘度計(No.4ローター)等を用いて測定することができる。
【0055】
ここで、上記水(B成分)の配合量は、前記特定のセルロース繊維(A成分)の含有量が、ゲル状組成物全体の0.1〜5.0重量%になるような範囲で用いられる。すなわち、本発明のゲル状組成物が、上記特定のセルロース繊維(A成分)と、上記水(B成分)とのみからなる場合は、水(B成分)の配合量は、組成物全体から特定のセルロース繊維(A成分)の含有量(0.1〜5.0重量%)を除いた残量(95重量%〜99.9重量%)が、水(B成分)の配合量となる。また、本発明のゲル状組成物が、上記特定のセルロース繊維(A成分)および水(B成分)以外に、機能性添加剤等を含有する場合には、組成物全体から特定のセルロース繊維(A成分)の含有量(0.1〜5.0重量%)と、機能性添加剤等の含有量を除いた残量が、水(B成分)の配合量となる。
【実施例】
【0056】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0057】
まず、実施例および比較例に先立ち、実施例用のセルロース繊維S1〜S3および比較例用のセルロース繊維H1,H2を、以下のようにして作製した。
【0058】
〔セルロース繊維S1(実施例用)の作製〕
(1) 酸化工程
乾燥重量で200g相当分の未乾燥の亜硫酸漂白針葉樹パルプ(主に1000nmを超える繊維径の繊維からなる)と、TEMPO2.5gと、臭化ナトリウム25gとを水1500mlに分散させた後、13重量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、1.0gのパルプに対して次亜塩素酸ナトリウムの量が5.4mmolとなるように加えて反応を開始した。反応中は0.5Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを10〜11に保ち、pHに変化が見られなくなった時点で反応終了と見なした(反応時間:120分)。
【0059】
(2) 精製工程
上記反応物をガラスフィルターにてろ過した後、充分な量のイオン交換水による水洗、ろ過を行い、得られたろ液の電気伝導度を測定した。水洗を繰り返しても、ろ液の電気伝導度に変化がなくなった時点で精製工程を終了した。このようにして、水を含んだ固形分量15重量%のセルロース繊維S1を得た。
【0060】
〔セルロース繊維S2,S3(実施例用)、セルロース繊維H1,H2(比較例用)の作製〕
添加する次亜塩素酸ナトリウムの量および反応時間を、下記の表1に示すように変更する以外は、セルロール繊維S1の作製に準じて、セルロール繊維S2,S3,H1,H2をそれぞれ作製した。
【0061】
【表1】

【0062】
このようにして得られたセルロース繊維S1〜S3,H1,H2を用い、下記の基準に従って各項目の測定を行った。これらの結果を、上記の表1に併せて示した。
【0063】
〔最大繊維径、数平均繊維径〕
上記セルロース繊維S1〜S3およびH1,H2に水を加えて2重量%のスラリーとして、ディスパー型ミキサーを用いて回転数8,000rpmで10分間微細化処理を行った。各セルロース繊維の最大繊維径および数平均繊維径を、透過型電子顕微鏡(TEM)(日本電子社製、JEM−1400)を用いて観察した。すなわち、各セルロース繊維を親水化処理済みのカーボン膜被覆グリッド上にキャストした後、2%ウラニルアセテートでネガティブ染色したTEM像(倍率:10000倍)から、先に述べた方法に従い、最大繊維径および数平均繊維径を算出した。
【0064】
〔カルボキシル基量の測定〕
上記ディスパー型ミキサーを用いて約10分間の処理を行ったスラリーを60ml調製し、0.1Mの塩酸水溶液によってpHを約2.5とした後、0.05Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、電気伝導度測定を行った。測定はpHが約11になるまで続けた。電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(V)から、下の式(1)に従い官能基量1(カルボキシル基量)を求めた。
【0065】
【数2】

【0066】
〔アルデヒド基量の測定〕
上記セルロース繊維を、酢酸でpHを4〜5に調整した2%亜塩素酸ナトリウム水溶液中でさらに48時間常温(25℃)で酸化し、上記式(1)に準じて官能基量2を測定した。そして、この酸化によって追加された官能基量(官能基量2−官能基量1)を算出し、アルデヒド基量を求めた。
【0067】
〔セルロースI型結晶構造、カルボキシル基、アルデヒド基の確認〕
上記スラリーの一部を乾燥させて得られた透明な膜状のセルロースの広角X線回折像から、セルロースI型結晶構造を有することを確認した。また、全反射式赤外分光スペクトル(ATR)において、カルボニル基に起因する吸収(1608cm-1付近)および酸型のカルボキシル基(COOH)に起因する吸収(1730cm-1付近)が存在することも確認した。
【0068】
〔実施例1〜9、比較例1〜8〕
上記セルロース繊維S1〜S3,H1,H2の各濃度が、下記の表2に示す割合になるように、水を添加してスラリーとし、ディスパー型ミキサーを用いて回転数8,000rpmで10分間微細化処理を行って、各試料を得た。なお、表2において、セルロース繊維の添加量を除く残量が、水の添加量である(以下、同様)。
【0069】
【表2】

【0070】
このようにして得られた各試料を用い、下記の基準に従って、各特性の評価を行った。これらの結果を、上記の表2に併せて示した。
【0071】
〔粘度の測定〕
得られた各試料(組成物)を25℃で24時間放置した後、BH型粘度計(No.4ローター)(東機産業社製、BH型粘度計)を用いて回転数2.5rpm(3分)で粘度を測定した。
【0072】
〔ゲルの状態〕
1日後、1週間後、2週間後のゲルの状態を目視で観察した。評価は、ゲル状態のものを「○」、液状(流動性あり)のものを「×」、ゲルから水分離したもの「分離」とした。
【0073】
上記表2の結果から、アルデヒド基量が0.08〜0.3mmol/gで、かつ、カルボキシル基量が0.6〜2.0mmol/gの範囲のセルロース繊維S1〜S3を用い、そのセルロース繊維の含有量が0.3〜5.0重量%の実施例1〜9品は、2週間保存してもゲル状態を保っていた。
【0074】
これに対して、アルデヒド基量が0.08〜0.3mmol/gで、かつ、カルボキシル基量が0.6〜2.0mmol/gのセルロース繊維S1〜S3を用いているが、セルロース繊維の含有量が下限(0.3重量%)未満の比較例1,3,5品は、ゲル状態とならなかった。また、アルデヒド基量が0.08〜0.3mmol/gで、かつ、カルボキシル基量が0.6〜2.0mmol/gのセルロース繊維S1〜S3を用いているが、セルロース繊維の含有量が上限(5.0重量%)を超える比較例2,4,6品は、粘度が高すぎるため、均一分散することができずゲル状物を調製することができなかった。
【0075】
また、カルボキシル基量が0.6mmol/g未満のセルロース繊維H1を用いた比較例7品は、1日後、一部セルロース繊維が析出して分離した。カルボキシル基量が2.0mmol/gを超えるセルロース繊維H2を用いた比較例8品では、経時的にゲル状態を保つことができず、流動性を発現した。
【0076】
つぎに、上記セルロース繊維と、水(液状分散媒体)と、機能性添加剤(無機塩類等)を用いてゲル状組成物を調製した。
【0077】
〔実施例10〜222、比較例9〜148〕
セルロース繊維S1〜S3,H1,H2の各濃度が、下記の表3〜表33に示す割合になるように、水および下記の表3〜表33に示す機能性添加剤(無機塩類、界面活性剤、オイル類、保湿剤、防腐剤、無機微粒子、有機微粒子、有機溶媒、香料・消臭剤)を同表に示す割合で添加してスラリーとし、ディスパー型ミキサーを用いて回転数8,000rpmで10分間微細化処理を行って、各試料を得た。なお、表3〜表33において、セルロース繊維と機能性添加剤の添加量を除く残量が、水の添加量である(以下、同様)。
【0078】
〔従来例1〜27〕
WO99/28350に記載の方法に準拠して得られたセルロース繊維を用いた。すなわち、バルブシートを5mm×5mmのチップに切断した重合度760の木材バルブを、−5℃で65%硫酸水溶液にセルロース濃度が5%になるように150rpmの攪拌条件下で10分間溶解して透明で均一なセルロースドープを得た。このセルロースドープを、重量で2.5倍量の水中(5℃)に攪拌しながら注ぎ、セルロースをフロック状に凝集させ懸濁液を得た。この懸濁液を85℃で20分間加水分解し、ついで洗液のpHが4以上になるまで充分に水洗と濾過を繰り返し、セルロース濃度15%の白色かつ透明性を帯びたゲル状物のセルロース繊維を得た。このゲル状物を家庭用フードプロセッサー(ナイフカッター)で3分間混合均一化処理し、さらに水および後記の表34および表35に示す機能性添加剤(〔無機塩類〕NaCl、KCl、CaCl2 、MgCl2 、(NH4 2 SO4 、Na2 CO3 、〔界面活性剤〕活性剤1〜3、〔オイル類〕オイル類1〜3、〔有機溶媒〕有機溶媒1,2)を表中に示す所定濃度になるように加えてセルロース濃度1.5%に希釈し、ブレンダーで15,000rpmの回転速度で5分間混合した。つぎに、この希釈されたサンプルを、超高圧ホモジナイザー(みづほ工業社製,Microfluidizer M−110EH 型、操作圧力1,750kg/cm2 )で4回微細化処理を行い、試料を得た。水のみ添加した試料(Blank) を4回処理した微細化セルロース繊維(A1)は、平均粒子径が0.18μmであり、かつ分散体の透過率は95%であった。
【0079】
〔従来例28〜51〕
ディスパー型ミキサーで水および後記の表36に示す機能性添加剤(〔無機塩類〕NaCl、KCl、CaCl2 、MgCl2 、(NH4 2 SO4 、Na2 CO3 、〔界面活性剤〕活性剤3、〔オイル類〕オイル類1〜3、〔無機微粒子〕無機微粒子1,2)を、最終的に表中に示す所定濃度となるように配合した水溶液もしくは水分散液97.5gに、ディスパー型攪拌機を用いて回転数8,000rpmで攪拌しながら、カルボキシビニルポリマーA2(BFGoodrich社製、カーボポール980)0.50gを徐々に加えて分散させた。そこに、10%水酸化ナトリウム水溶液2.0gを滴下し、中和増粘を行った。充分に均質化するために10分間攪拌して試料を作製した。なお、水とカルボキシビニルポリマーA2のみで作製した試料(Blank) の粘度は61.0Pa・sであった。
【0080】
下記の表3〜表36に示す機能性添加剤は、つぎの通りである。
【0081】
〔無機塩類〕
NaCl、KCl、CaCl2 、MgCl2 、(NH4 2 SO4 、Na2 CO3
【0082】
〔界面活性剤〕
ポリオキシエチレンラウリルエーテル(活性剤1)
アルキルポリグルコシド(活性剤2)
ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ソーダ(活性剤3)
【0083】
〔オイル類〕
ジメチルポリシロキサン(オイル類1)
トリイソオクタン酸グリセリル(オイル類2)
スクワラン(オイル類3)
【0084】
〔保湿剤〕
グリセリン
【0085】
〔防腐剤〕
メチルパラベン
【0086】
〔無機微粒子〕
酸化チタン(無機微粒子1)
ベンガラ(無機微粒子2)
【0087】
〔有機微粒子〕
ウレタンエマルジョン(第一工業製薬社製、スーパフレックス150)
【0088】
〔有機溶媒〕
エタノール(有機溶媒1)
イソプロパノール(有機溶媒2)
【0089】
〔香料・消臭剤〕
Dリモネン(香料・消臭剤1)
オレンジ油(香料・消臭剤2)
【0090】
【表3】

【0091】
【表4】

【0092】
【表5】

【0093】
【表6】

【0094】
【表7】

【0095】
【表8】

【0096】
【表9】

【0097】
【表10】

【0098】
【表11】

【0099】
【表12】

【0100】
【表13】

【0101】
【表14】

【0102】
【表15】

【0103】
【表16】

【0104】
【表17】

【0105】
【表18】

【0106】
【表19】

【0107】
【表20】

【0108】
【表21】

【0109】
【表22】

【0110】
【表23】

【0111】
【表24】

【0112】
【表25】

【0113】
【表26】

【0114】
【表27】

【0115】
【表28】

【0116】
【表29】

【0117】
【表30】

【0118】
【表31】

【0119】
【表32】

【0120】
【表33】

【0121】
【表34】

【0122】
【表35】

【0123】
【表36】

【0124】
このようにして得られた各試料(組成物)を用い、前述と同様の基準に従って、各特性の評価を行った。これらの結果を、上記表3〜表36に併せて示した。
【0125】
上記表3〜表36の結果から、アルデヒド基量が0.08〜0.3mmol/gで、かつ、カルボキシル基量が0.6〜2.0mmol/gのセルロース繊維S1〜S3を用い、そのセルロース繊維の含有量が0.3〜5.0重量%の実施例品は、各種機能性添加剤(無機塩類等)を添加しても粘度の低下が小さく、ゲル状態を保持していた。従来例品は、各種機能性添加剤を添加すると、粘度の低下が大きく、分離もしくはゲル状態を保持できなかった。
【0126】
これに対して、アルデヒド基量が0.08〜0.3mmol/gで、かつ、カルボキシル基量が0.6〜2.0mmol/gのセルロース繊維S1〜S3を用いているが、セルロース繊維の含有量が下限(0.3重量%)未満の比較例品は、1日後にゲル状態を保つことができなかった。また、アルデヒド基量が0.08〜0.3mmol/gで、かつ、カルボキシル基量が0.6〜2.0mmol/gのセルロース繊維S1〜S3を用いているが、セルロース繊維の含有量が上限(5.0重量%)を超える比較例品は、マクロ的に均質なゲル状組成物を得ることができなかった。
【0127】
また、カルボキシル基量が0.6mmol/g未満のセルロース繊維H1を用いた比較例品は、セルロース繊維が一部分離沈降し、マクロ的に不均一なゲルとなった。カルボキシル基量が2.0mmol/gを超えるセルロース繊維H2を用いた比較例品は、経時的に流動性が生じ、2日後にはゲル状態を保つことができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明のゲル状組成物は、天然素材であるセルロース繊維をゲル化剤として使用し、また、各種機能性添加剤との配合性にも富んでいることから、化粧品基材や、芳香剤のようなトイレタリー用品基材等として広く好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)成分および(B)成分を用いてなるゲル状組成物であって、上記(A)成分の含有量がゲル状組成物全体の0.3〜5.0重量%の範囲であることを特徴とするゲル状組成物。
(A)最大繊維径が1000nm以下で、数平均繊維径が2〜150nmのセルロース繊維であって、そのセルロースが、セルロースI型結晶構造を有すると共に、セルロース分子中のグルコースユニットのC6位の水酸基が選択的に酸化されてアルデヒド基およびカルボキシル基に変性され、上記アルデヒド基を0.08〜0.3mmol/gおよび上記カルボキシル基を0.6〜2.0mmol/g有する、セルロース繊維。
(B)水。
【請求項2】
機能性添加剤を含有する請求項1記載のゲル状組成物。
【請求項3】
上記機能性添加剤が、無機塩類、界面活性剤、オイル類、保湿剤、防腐剤、有機微粒子、無機微粒子、消臭剤、香料および有機溶媒からなる群から選ばれた少なくとも一つである請求項2記載のゲル状組成物。
【請求項4】
上記(A)成分のセルロース繊維が、N−オキシル化合物の存在下、共酸化剤を用いて、セルロース繊維の水酸基の一部をカルボキシル基およびアルデヒド基に酸化されたものである請求項1〜3のいずれか一項に記載のゲル状組成物。

【公開番号】特開2010−37348(P2010−37348A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−197847(P2008−197847)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000003506)第一工業製薬株式会社 (491)
【Fターム(参考)】