説明

ゲル配合物およびその使用

本発明は、細胞および蛍光ビーズなどの粒子の操作、加工または分析における、支持マトリックスとしてブロックポリマーを含む組成物の使用を提供する。好ましい実施形態では、この組成物は、ゲル-ゾル熱可逆性、ゲル化条件でのミセル形成、光学適合性、制御可能な界面活性特性、分子ふるい特性および生物学的適合性を示す。本発明のさらなる態様は、(a)粒子の操作、加工または分析に使用するためのブロックポリマー、蛍光ビーズおよび/または色素を含む支持マトリックス組成物、(b)支持マトリックス組成物中で被覆されたマルチチャンバープレートならびに(c)それを生み出すためのキットを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可逆性ゲル組成物と、一般的に研究アッセイ、診断アッセイ、およびスクリーニングアッセイにおけるそれらの適用と、細胞または粒子または試薬の支持マトリックスに基づく適用の使用における方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
生物学的アッセイをより迅速に、より簡便にし、最大の駆動力で実行し、工程をより安価にし、なおかつ正確さおよび再現性を維持する必要性が存在する。これは、利用できる研究用および診断用分子プローブ(例えば、新しい蛍光レポーター分子)数の急速な増加、ならびに一連の機器にわたってそのようなアッセイを多重化する、情報量の点から見た利点が原因である。細胞、粒子、およびビーズに基づく(ならびにこれらのユニットの組合せ)アッセイの必要性がますます存在する。それらのアッセイでは、例えばある特徴を有する細胞の存在が、疾患過程を示す。同様に、新しい医療のために生体活性分子を求めた合理的アプローチの要求および展開の結果として、低コストの高スループットスクリーニング(HTS)の必要性が生じ、機能的分析の分野内で細胞および分子に基づくアッセイ、ツールおよびアレイが開発されるに至った。
【0003】
そのようなアッセイは、
i)加工目的での液相およびゲル相での細胞/粒子、分析対照物質および試薬の操作、
ii)細胞/粒子への蛍光/生物ルミネセンス分子の制御送達、または前記粒子/細胞の蛍光/生物ルミネセンス関連特性の保持、
iii)光収集を伴う分析のための前記細胞/粒子の制御可能な固定化、
iv)分析のために十分な時間での細胞生存率および細胞機能の保持
のための方法を利用できることを必要として、それによって向上する。
【非特許文献1】Smolweskiら、2001、Cytometry 44(4):355〜60
【非特許文献2】http://dtp.nci.nih.gov/docs/misc/common_files/cell_list.html
【非特許文献3】http://www.basf.com/static/OpenMarket/Xcelerate/Preview_cid-982931200587_pubid-974236729499_c-Article.html
【非特許文献4】「Intracellular ion activities and membrane transport in parietal cells measured with fluorescent dyes」Negulescu PA、Machen TE.Methods Enzymol 192、38〜81(1990)
【非特許文献5】Schmolka,I.R.(1972)Artificial skin I.Preparation and properties of Pluronic(登録商標)F-127 gels for treatment of burns.J Biomed.Mater.Res.6、571〜582
【非特許文献6】Dulbecco,R.およびVogt,M.、(1954)Plaque formation and isolation of pure lines with Poliomyelitis viruses.J.Exp.Med.、98:167
【非特許文献7】White NS、Errington RJ.Fluorescence techniques for drug delivery research:theory and practice.Adv Drug Deliv Rev.2005 Jan 2;57(1):17〜42
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、そのような方法を使用するための手段を提供することを試みる。
【0005】
アガロース、寒天、ファーセレラン、ベータ-カラギナン、カードランなどのベータ-1,3-グルカン類、ゼラチン、またはポリオキシアルキレン含有化合物などの天然ゲル形成物質を含めた(高温では液体形態であるが低温ではゲル形態の)熱可逆性ポリマーに基づく様々なヒドロゲルが公知である。
【0006】
本発明は、温度低下したときに通常は液体形態への転移を起こす、ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックポリマーゲル(PBP)などのブロックポリマーに基づくゲルの独特の利点および特性を利用する。この特性は、「逆熱凝固性」(reversed thermosetting)として表現することができる。
【0007】
界面活性特性などのPBP製剤の選択された特性ならびにヒドロゲル一般の機械的特性および熱可逆特性は、当技術分野において記録され、かつ利用されてきた。
【0008】
例えば、PBP製剤の報告された使用および特性には、以下が挙げられる:
【0009】
界面活性特性
ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックポリマー(PBP)は、ほんの少数例を挙げると、洗剤用の非イオン界面活性剤、分散剤、結合剤、安定剤、消泡剤、乳化剤として使用されてきた。転移温度を超える高い水性PBP濃度で、両親媒性ブロックコポリマーミセルを含むゲルが形成できる。市販のPluronic(登録商標)製剤F-127(PEO99-PPO69-PEO99、EおよびPはそれぞれポリオキシエチレンおよびポリオキシプロピレンである)が医薬製剤用にゲル形態で使用されてきた。
【0010】
リバースアガー(reverse agar)およびバイオフィルム
PBPのゲル形成配合物は、それらを使用するときに「リバースアガー」として表現されてきた。低温ゲル化配合物は、従来の微生物学適用において微生物の制限された成長を支援するために使用されてきた。そのようなPluronic(登録商標)に基づくヒドロゲルは、殺生物剤処理をアッセイするために広範囲に使用されてきた。ゲルに捕捉された微生物集団は、バイオフィルム中で観察された局所高細胞密度を模倣して、天然バイオフィルム内でみられるものに類似した栄養勾配および化学勾配に供される。微生物に関するそのような従来技術の使用は、PBPが安定なゲル形態で低毒性を有するはずであることを明らかにした。
【0011】
分子ふるい特性
PBPのゲル形態は、規則正しいミセル構造を形成する潜在性を有し、核酸のための分離媒質として使用されてきた。これは、連続電流またはパルス電流が通過したときに、ゲルを介して分子がコヒーレント運動することを示している。1cmのオーダーの距離にわたり一本鎖および二本鎖DNAの両方を伴う分離を行うために、内部にふるいわけするゲルを有するマイクロデバイスも設計されている。ゲル成形の容易さ、再利用性、および例えば標準試料として100塩基対の二本鎖DNAラダーを使用した全体的な分離性能に基づいて種々のゲルマトリックスを比較するために、広範囲の比較が行われてきた。
【0012】
ハイドロパッド(Hydropad)
微小サイズで高感度のバイオチップが、医学、獣医学および獣医学への適用、農学、毒性学、環境監視、法医学などにおける診断、検査、および研究に探し求められている。顕微鏡用スライドの疎水性表面上での三次元ゲル要素のアレイからなる、非熱可逆性ゲル(ハイドロパッド)を含む三次元バイオチップが開発された。例えば、ゲルに基づくバイオチップのプロジェクトがロシア科学院Engelhardt分子生物学研究所(EIMB)で1989に開始して、チップ上の「ゲル要素の固定化マイクロアレイ」(すなわちIMAGEチップ)の開発をもたらし、そのマイクロアレイは、半球形ハイドロゲルパッド内に固定されたオリゴヌクレオチド、DNA、タンパク質、小化合物または細胞を担持できる。そのようなチップの大規模製造のために簡便な二段階手順が開発された。このゲルパッドは、固定化のための支持体と、様々な特異的相互作用、化学反応または酵素反応を実施するための個別のナノリットル試験管との両方として役立つことができる。固定化抗体、抗原、酵素、受容体、および種々のリガンドを含むチップが生産されてきた。
【0013】
細胞封入
組織工学のための細胞封入材料としても、ポリマーゲルは探求されてきた。単離された哺乳動物細胞および組織は、医学およびバイオテクノロジーに無数の適用を有するが、in vitroまたはin vivoのいずれかで細胞を保護して生育させる一方で、所望の産物を採取することは困難であることが証明された。
【0014】
薬物および色素の送達
以前の臨床適用は、薬理学的活性薬剤を組織に局所送達するためのヒドロゲルの使用を明らかにした。対照的に、ゲル(ポリアクリルアミドまたはゼラチン)からの色素拡散による「無液体(liquid less)」細胞染色に関する以前の研究は、PBPに基づくゲルの独特の熱可逆特性を欠いたゲルシステムの使用に限定されてきた。そのような研究は、Smolweskiら、2001、Cytometry 44(4):355〜60に記載されている。細胞への色素送達が観察されたが、DNA色素の通常の染色濃度から2から4倍に増やす必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、(例えば、ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックポリマー[PBP]に基づく)ブロックポリマーゲルの特徴、すなわち熱可逆(操作を可能にするゲル-ゾル転移、下に定義する)特性、ゲル化条件でのミセル形成(ゲルが支持体/固定化マトリックスとして作用できるようにする)、光学特性(光に基づく光学分析できるようにする低吸光度および非蛍光)、制御可能な界面活性特性(細胞にレポーター分子の変更された送達をできるようにして、細胞可溶化の手段である)、分子ふるい特性(制御された、すなわち変更および調節された、外因性レポーター分子の送達をもたらす)および低毒性(生きた細胞を加工できるようにする)を利用することにより、上に述べた4つの方法を組み合わせる一般手段を提供する。本発明は、細胞/粒子を制御および操作できるようにすること、ならびにそのような細胞に基づくアッセイに使用するために反応体およびレポーター分子のアクセスを調節することによって、アッセイをモジュールにする一般手段も提供する。PBPゲルの特異的配合物は、所与の適用または賦形剤特性について最適の性能をもたらすであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
「熱可逆性」によって、PBP組成物の温度が臨界転移温度を超えて上昇したときにゲルが形成するが、液体形態またはゾル形態のその組成物がその転移点未満の温度で存在する特性を指す。
【0017】
本発明は、さらなる外傷なしに被験接種材料を回収するための、および真核生物系(例えば、ヒト細胞および動物細胞)においてゲルを使用するための手段を提供する。
【0018】
ブロックポリマーゲルの分子ふるい特性は、分析中の系に逐次送達または制御送達するための、(分子状レポーター分子などの)分析対象物質のコヒーレントな送達および挙動の手段を提供する。
【0019】
ブロックポリマーゲルの熱可逆性ゲル化特性は、熱損傷を回避することによって、細胞採取および細胞回収のための有利な経路も提供する。一戦略は、細胞への、および細胞からの小分子の拡散を可能にするマトリックス中に細胞を封入することである。PBPポリマーはしばしば生物学的に適合性であり、多細胞系における支持状態を刺激するための三次元足場を提供することから、封入は有望な結果をもたらす。細胞封入の成功は、ある程度は細胞の種類に依存する。ゲルの目的は、マトリックス-ゲル環境を提供することであり、その環境は、異なる組織から単離された細胞が本来の細胞表現型を維持することを可能にする。理想的な状況では、そのゲルは不活性環境を提供するはずである(すなわち、そのゲルは、細胞を刺激または活性化して何か異常なことを果たすようには作用しない)。そのようなゲル中に置かれた細胞は、正常に機能でき、分泌高分子を合成するに伴って、おそらくやがてゲルを組織化して、疑似組織移植片を形成するであろう。本発明は、細胞封入マトリックスに必要とされる特徴のすべてを組み込んでいる。PBPゲルが液体形態である間に、細胞をそのマトリックスに取り込むことができる。ゲルが形成すると、細胞は捕捉される。ゲルがどちらかの相である間に必要な試薬を投与することによって、支持された環境中にある間にその細胞が必要な薬剤を確実に吸収できるようにすることが可能である。捕捉された細胞を有するゲルをさらに低温に置くことによって、ゲルの選択された領域からでさえも液相への転移により細胞を抽出することができ、それによって、まったく有害作用なしに所与の性質を有する細胞集団の微小選択を可能にすることができる。この方法で固定された任意の粒子に同じことがあてはまる。
【0020】
色素送達のためのブロックポリマーゲルの潜在的利点には、微小重力条件および漏出が望ましくない条件でのそれらの利用がある。潜在的に危険な賦形剤(例えば、突然変異誘発色素)を含有する熱可逆性PBP製剤は、皮膚温度以上でゲルを形成することによって、拡散律速経皮送達を減らすという追加の安全性の特徴を有するであろう。色素分子の安全な送達は、より広い範囲の適用および賦形剤へのアクセスをもたらすことができる。本発明は、重大な安全性の利点を有する色素送達系の固相化および熱不安定な賦形剤を有する製剤の冷配合物も可能にする。
【0021】
このように、本発明の第1の態様は、粒子の操作、加工または分析における、支持マトリックスとしてブロックポリマーを含む組成物の使用を提供する。特に、本発明は、粒子の光学分析における、支持マトリックスとしてブロックポリマーを含む組成物の使用を提供する。
【0022】
このブロックポリマー組成物は、細胞培養用の基材または培地として使用されるばかりではない。
【0023】
好ましくは、この支持マトリックスは、以下の特性を示す:
1.ゲル-ゾル熱可逆性、
2.ゲル化条件でのミセル形成、
3.光学適合性(すなわち光に基づく光学アッセイに適合し、電磁スペクトル350から1300nm)、
4.制御可能な界面活性特性、
5.分子ふるい特性、および
6.生物学的適合性。
【0024】
そのブロックポリマー組成物を任意の粒子状物質のための支持マトリックスとして使用できることは、当業者に認識されているであろう。
【0025】
好ましい実施形態では、その粒子は、生物学的試料由来であるか、またはそれを構成する。好ましくは、その粒子は細胞であり、例えば、固定されているか、または生存している原核または真核細胞である。これらの細胞は接着性または非接着性でありうる。
【0026】
好都合には、これらの細胞は、以下の細胞の種類からなる群から選択される:
1.(例えば、細針吸引物による)生検検体として、組織移植片として、初代培養物(例えば、ヒト皮膚線維芽細胞)として、形質転換細胞系(例えば、EBウイルスで形質転換されたリンパ芽球)として、不死化細胞系(例えば、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素[hTERT]で不死化された細胞系)として、および樹立腫瘍細胞系として得られた、ヒト細胞および哺乳動物細胞を含めた動物細胞。
2.治療、診断および分析上の関心対象の特異的部位および疾患に相当するものを含めたヒト腫瘍細胞系、例えば、脳腫瘍、膀胱癌、乳癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌(腎臓細胞)、白血病、肺癌、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、膵臓癌、前立腺癌、皮膚癌(非黒色腫)、甲状腺癌。
3.接着特性(例えば、乳癌細胞系MCF-7)または非接着特性(例えば、白血病細胞系CCRF-CEMまたは古典的肺小細胞癌細胞系NCI-H69)を有する細胞系。
4.機能性ゲノミクス研究に使用される哺乳動物細胞系(例えば、NIH 3T3マウス細胞系)。
5.CCRF-CEM、HL-60(TB)、K-562、MOLT-4、RPMI-8226、SR、A549/ATCC、EKVX、HOP-62、HOP-92、NCI-H226、NCI-H23、NCI-H322M、NCI-H460、NCI-H522、COLO 205、HCC-2998、HCT-116、HCT-15、HT29、KM12、SW-620、SF-268、SF-295、SF-539、SNB-19、SNB-75、U251、LOX IMVI、MALME-3M、M14、SK-MEL-2、SK-MEL-28、SK-MEL-5、UACC-257、UACC-62、IGR-OV1、OVCAR-3、OVCAR-4、OVCAR-5、OVCAR-8、SK-OV-3、786-0、A498、ACHN、CAKI-1、RXF 393、SN12C、TK-10、UO-31、PC-3、DU-145、MCF7、NCI/ADR-RES、MDA-MB-231/ATCC、HS 578T、MDA-MB-435、MDA-N、BT-549、T-47D、LXFL 529、DMS 114、SHP-77、DLD-1、KM20L2、SNB-78、XF 498、RPMI-7951、M19-MEL、RXF-631、SN12K1、MDA-MB-468、P388、P388/ADRを含むが、それに限定されるわけではない、米国国立癌研究所の腫瘍細胞系パネルに示された細胞系などの、薬物スクリーニング方法のために利用できるヒト腫瘍細胞細胞系(参照:http://dtp.nci.nih.gov/docs/misc/common_files/cell_list.html)。
6.生体異物分子の輸送体などの、特異的分子実体の機能的発現のために選択されたヒト腫瘍細胞系(例えば、肺癌系H522M、A549、およびEKVXに発現しているABCA3薬物輸送体)。
7.遺伝子導入研究における好都合な性能のために選択されたヒト腫瘍細胞(例えば、U2-OSヒト骨肉腫細胞)。
8.単細胞および多細胞形態の脊椎動物(例えばゼブラフィッシュ(Danio[Brachydanio]rerio)の胚、幼生形態またはそれから誘導された解離細胞調製物)。
9.ADME/毒性(吸収、分布、代謝、排泄/毒性)スクリーニングプロトコールに使用される細胞系(例えば、HepG2などの肝細胞由来細胞系)。
10.ヒトまたはマウス起源由来の胚性幹細胞。
11.中枢神経系のニューロンおよび/または支持細胞(例えば、星状細胞、オリゴデンドロサイト、小膠細胞およびシュワン細胞)。
12.抗体を分泌するハイブリッドを含めた不死化体細胞ハイブリッド(例えば、ハイブリドーマ)。
13.酵母(例えば、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)および分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe))。
14.植物由来の細胞(例えば、新品種、希少種、および繁殖困難な植物のためのin vitro繁殖方法の分析用)。
15.免疫応答細胞(例えば、抗原提示樹状細胞)。
16.細胞外形態および細胞内形態の動物寄生虫(例えば熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum))。
17.診断上の関心対象の病原性細菌を含めた微生物(例えばメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus))。
18.有害生物防除に使用されるものを含めた真菌(例えば、ベアウベリア属(Beauveria)、メタリジウム属(Metarhizium)およびトリポクラジウム属(Tolypocladium)を含めた昆虫病原性真菌)。
19.線虫シーエレガンス(Caenorhabditis elegans)などの単細胞形態および多細胞形態の自由生活動物。
20.器官培養物由来細胞(例えば細胞凝集塊、細胞球状体および脳切片)。
21.移植片材料由来細胞(例えば、軟骨、皮膚および椎間板)。
【0027】
好都合には、これらの細胞は蛍光分子を発現できる。例えば、組換えDNA技法により細胞を操作して、緑色蛍光タンパク質(GFP)ならびに/またはそのスペクトル変異体および/もしくは安定性変異体を発現させることができる。
【0028】
好ましくは、その組成物は、細胞にとって不活性な環境を提供する。さらに好ましくは、その組成物は使用前に無菌である。
【0029】
代替の好ましい実施形態では、それらの粒子は蛍光ビーズである。そのようなビーズは、特異的サイズ(30μmまでの大きさで分解能以下(例えば200nm未満))、一定量のフルオロホア、独特のフルオロホアスペクトルおよびその混合を有するキャリブレーション用粒子を提供できる。適切なビーズがMolecular Probes(Invitrogen)、Carlsbad、米国から入手できる(例えば、FluoSpheres(商標))。
【0030】
好都合には、その組成物は、粒子をその中に固定化することができるようにする。
【0031】
本発明に使用するためのブロックポリマー組成物がゲル-ゾル熱可逆性を示さなければならないことが当業者によって認識されているであろう。好ましくは、この組成物は、ポロキサマーなどの、ポリオキシエチレンおよびポリオキシプロピレンのブロックコポリマーを含む。
【0032】
ポロキサマーは、エチレンオキシド(PEO)分子とプロピレンオキシド(PPO)分子とを含む、次式に記載のポリエチレン-ポリプロピレングリコールブロックポリマーである(表1参照):
(PEO).sub.a-(PPO).sub.b-(PEO).sub.c.
【0033】
【表1】

【0034】
好ましいのは、
aが46から128であり、bが16から67であり、かつcが46から128であるポロキサマーである。
【0035】
さらに好ましいのは、
aが46、52、62、75、97、98、122および128であり、bが16、30、35、39、47、54および67であり、かつcが46、52、62、75、97、98、122および128のポロキサマーである。
【0036】
最も好ましくは、このブロックポリマーは、ゲルを形成する認識された能力を有する以下のポロキサマーから選択される(http://www.basf.com/static/OpenMarket/Xcelerate/Preview_cid-982931200587_pubid- 974236729499_c-Article.html):
一般名 商品名
ポロキサマー407 Pluronic(登録商標)F127
ポロキサマー338 Pluronic(登録商標)F108
ポロキサマー288 Pluronic(登録商標)F98
ポロキサマー237 Pluronic(登録商標)F87
ポロキサマー238 Pluronic(登録商標)F88
ポロキサマー217 Pluronic(登録商標)F77
ポロキサマー188 Pluronic(登録商標)F68
ポロキサマー108 Pluronic(登録商標)F38
【0037】
特に好ましい実施形態では、このブロックポリマーはポロキサマー407(Pluronic(登録商標)F127、BASF)である。
【0038】
このブロックポリマー を任意の適切な水性媒質中で調製することができる。例えば、このブロックポリマーは、蒸留水、またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)などの生理的緩衝液中で調製される。
【0039】
好ましくは、この組成物は7.2から7.4のpHを有する。
【0040】
このブロックポリマーは、ゲル化濃度で支持マトリックス組成物中に存在すべきであることが認識されているであろう。好ましい実施形態では、このブロックポリマーは、濃度24%(w/v)でこの組成物中に存在する。
【0041】
好都合には、この組成物は、冷却条件(例えば、0から5℃)で液体(ゾル)形態であるが、室温以上で半固体のゲル形態である。例えば、この組成物は、室温から37℃の間の転移温度でゲル形態を実現できる。
【0042】
この組成物の配合を改変することによって、例えば、この組成物中のブロックポリマーの濃度を変化させることによって、この組成物の転移温度を変更できることが認識されているであろう。あるいは、表2に例を示す1つまたは複数の賦形剤の添加により、このブロックポリマー組成物の転移温度を変更することができる。
【0043】
【表2】

【0044】
好ましい実施形態では、この組成物は、顕微鏡スライド、カバースリップまたはマルチチャンバープレート(例えばマルチウェルプレート)に適用される。
【0045】
さらに好ましい実施形態では、この組成物は、透過、位相コントラスト、蛍光、蛍光寿命、生物ルミネセンス、化学ルミネセンス、異方性、光散乱、および屈折率を含めた、光収集を伴う粒子分析のための支持マトリックスとして役立つ。例えば、この組成物は、撮像、顕微鏡法または非撮像プレート性検出プラットフォームによる粒子分析のための支持マトリックスとして役立つことができる。
【0046】
好ましくは、これらの粒子は標準的な蛍光顕微鏡法により分析される。
【0047】
さらに好ましくは、これらの粒子は、収集された画像データが(デコンボリューションを含めた)数学的処理に供されて、深度に特異的な情報を提供する共焦点レーザ走査顕微鏡法、多光子励起レーザ走査顕微鏡法または蛍光顕微鏡法により分析される。
【0048】
好都合には、その光は、蛍光分子、例えば緑色蛍光タンパク質ならびに/またはそのスペクトル変異体および/もしくは安定性変異体を発現するように操作された細胞などの、蛍光分子を発現する細胞中に遺伝的にコードされた構築体から生じる。
【0049】
さらに好ましい実施形態では、この組成物は、例えば3D(x,y,z)撮像、時間(動態)分析およびラムダ(スペクトル)分析による、粒子の多次元分析のための支持マトリックスとして役立つ。
【0050】
あるいは、この組成物は、粒子の動態分析のための支持マトリックスとして役立つことができる。
【0051】
本発明の第1の態様の特に好ましい実施形態では、これらの粒子の分析は高スループットスクリーニングにより行われる。
【0052】
別の好ましい実施形態では、この支持マトリックスは、光収集を必要とする方法におけるキャリブレーション、光学アライメントまたは配向に使用するためのものである。例えば、この分析は、キャリブレーション目的、点像分布関数の決定および二次元以上の光学的スライス内の事象の配向のためのものでありうる。
【0053】
代替の好ましい実施形態では、この組成物は粒子のマウント剤(mountant)として役立つ。
【0054】
さらに好ましい実施形態では、この組成物は、粒子への反応体およびレポーター分子のアクセスを制御および/または変更する手段を提供する。
【0055】
好ましくは、この組成物は蛍光ビーズをさらに含む。例えば、ビーズを前記組成物内の表面上または層上に沈着させることができる。
【0056】
好都合には、この組成物は、種々のサイズおよび/または種々の色の蛍光ビーズを含む(そのようなビーズは、Molecular Probes[Invitrogen Corporation]、Carlsbad、米国から商業的に入手できる)。
【0057】
あるいは、またはその上に、この組成物は、DNA蛍光色素などの色素をさらに含む。適切な色素は(例えば、Molecular Probes[Invitrogen Corporation]、Carlsbad、米国から)商業的に入手できる。好ましくは、この色素は近赤外を含めた可視範囲のスペクトルに励起波長および発光波長を有する細胞浸透特性を示す。適切な色素の例には、カルセイン、ヨウ化プロピジウムおよびSYTOシリーズの色素がある。最も好ましくは、この組成物は、1,5-ビス{[2-(メチルアミノ)エチル]アミノ}-4,8-ジヒドロキシアントラセン-9,10-ジオン(DRAQ5(商標)、BioStatus Limited、Shepshed、イギリスから入手できる)またはその誘導体を含む。
【0058】
この組成物は、1つまたは複数の以下の添加剤もさらに含みうる:
1.パラホルムアルデヒド(PFA)などの細胞固定化学物質、
2.化学遊走物質、すなわち反応細胞での方向性運動を誘発する、外因的に存在する化学薬剤、
3.細胞保護もしくは生物学的変更のための賦形剤(成長因子もしくはシグナル伝達分子など)、ならびに/または
4.細胞もしくはレポーター分子に及ぼす光照明の光物理学的および/もしくは光化学的作用を変更するための賦形剤(例えば、この賦形剤は、蛍光レポーター分子の光退色を低減しうるし、また、細胞外の蛍光レポーター分子の光退色を増強しうる)。
【0059】
本発明の第2の態様は、ブロックポリマーを蛍光ビーズおよび/または色素と共に含む粒子の操作、加工または分析のための支持マトリックス組成物を提供する。
【0060】
好ましくは、この組成物は以下の特性を示す:
1.ゲル-ゾル熱可逆性、
2.ゲル化条件でのミセル形成、
3.光学適合性、
4.制御可能な界面活性特性、
5.分子ふるい特性、および
6.生物学的適合性。
【0061】
本発明の第2の態様のさらに好ましい実施形態は、本発明の第1の態様に関して定義されたとおりである。
【0062】
例えば、これらの粒子は、本発明の第1の態様に関して上に定義された任意の粒子、例えば生きた非接着細胞でありうる。
【0063】
同様に、このブロックポリマーは、本発明の第1の態様に関して上に定義された任意のブロックポリマー、例えばポリオキシエチレンおよびポリオキシプロピレンのブロックコポリマーでありうる。好ましくは、このブロックポリマー(ポリオキシエチレンおよびポリオキシプロピレンのブロックコポリマーなど)は、濃度24%(w/v)でこの組成物中に存在しうる。
【0064】
都合よくは、この組成物は、顕微鏡用スライド、カバースリップまたはマルチチャンバープレート(例えば、96ウェル、384ウェルまたは1536ウェルプレート)の表面に適用される。
【0065】
さらに好ましい実施形態では、この組成物は、例えば撮像(例えば3D撮像)、顕微鏡法(例えば蛍光顕微鏡法)または非撮像プレート性アッセイによる、光収集を伴う粒子分析に適する。
【0066】
好ましくは、分析される光は、蛍光、生物ルミネセンスまたは化学ルミネセンスの発光である。最も好ましくは、この組成物は、高スループットスクリーニングに適する。
【0067】
本発明の第2の態様による組成物は、光収集を必要とする方法におけるキャリブレーション、光学アライメントまたは配向に適しうる。例えば、キャリブレーション、点像分布関数の決定および二次元以上の光学的スライス内の事象の配向のためにこの組成物を使用することができる。
【0068】
あるいは、この組成物は、粒子マウント剤として役立つことができ、かつ/または粒子への反応体およびレポーター分子のアクセスを制御する手段を提供することができる。
【0069】
本発明の第2の態様のさらに好ましい実施形態では、この組成物は蛍光ビーズを含む。例えば、蛍光ビーズを、この組成物内の表面上に沈着することができる。好ましくは、この組成物は、種々のサイズおよび/または種々の色(すなわち蛍光スペクトル特性)の蛍光ビーズを含む。
【0070】
本発明の第2の態様の代替の好ましい実施形態では、この組成物は、DNA蛍光色素(例えば、DRAQ5(商標)またはその誘導体、Biostatus Limited、イギリスから入手できる)などの色素をさらに含む。
【0071】
本発明の第3の態様は、本発明の第2の態様による支持マトリックス組成物を作成する方法を提供し、この方法は、蛍光ビーズおよび/または色素をブロックポリマー配合物に組み込むことを含む。好ましくは、この方法は、蒸留水またはリン酸緩衝生理食塩水にブロックポリマーを溶解させること、それによって形成した溶液を滅菌すること、およびその溶液を4℃で保存することを含む。
【0072】
本発明の第4の態様は、本発明の第2の態様による支持マトリックス組成物を作成するためのキットを提供し、このキットは、ブロックポリマー、蛍光ビーズおよび/または色素を含む。
【0073】
本発明の第4の態様は、表面に適用された、添付の特許請求の範囲のいずれか一項に記載の支持マトリックス組成物を含む顕微鏡用スライド、カバースリップまたはマルチチャンバープレートを提供する。例えば、このマルチチャンバープレートは、96ウェル、384ウェルまたは1536ウェルプレートでありうる。好都合には、この支持マトリックス組成物は、分析対象物質の機械的送達と、透過、位相コントラスト、蛍光、蛍光寿命、生物ルミネセンス、化学ルミネセンス、異方性、光散乱、および屈折率を含めた、光収集を必要とするその後の光学分析とのためのアドレスで呼び出せるアレイを形成する。
【0074】
本発明の第4の態様の好ましい実施形態では、支持マトリックス組成物は、使用前に再水和を必要とする乾燥形態で、顕微鏡用スライド、カバースリップまたはマルチチャンバープレート上に提供される。
【0075】
本発明の第5の態様は、本発明の第4の態様による顕微鏡用スライド、カバースリップまたはマルチチャンバープレートを作成する方法を提供し、この方法は、本発明の第1または第2の態様に関して上に定義した支持マトリックス組成物を、顕微鏡用スライド、カバースリップまたはマルチチャンバープレート表面に適用することを含む。
【0076】
好ましくは、この方法は、この支持マトリックス組成物が顕微鏡用スライド、カバースリップまたはマルチチャンバープレート表面に適用された後で、この支持マトリックス組成物を脱水することをさらに含む。
【0077】
本発明の第6の態様は、本発明の第5の態様による顕微鏡用スライド、カバースリップまたはマルチチャンバープレートを作成するためのキットを提供し、このキットは、顕微鏡用スライド、カバースリップまたはマルチチャンバープレートと、本発明の第1または第2の態様に関して上に定義された支持マトリックス組成物とを含む。好ましくは、96個のウェル、384個のウェルまたは1536個のウェルを備えるマルチチャンバープレートである。
【0078】
本発明の第7の態様は、細胞を染色する方法を提供し、この方法は、染色される細胞を、本発明の第2の態様による支持マトリックス組成物で被覆するか、またはそれと共に混合することを含む。好ましくは、この染色法は、生きた細胞を死滅した(アポトーシス)細胞と識別することを可能にする。
【0079】
本発明の追加の態様には、
1.(蛍光、蛍光寿命、生物ルミネセンス、科学ルミネセンス、異方性および光散乱を含めた)光収集を必要とする方法におけるキャリブレーション、光学アライメントおよび/または配向のために粒子を捕捉および固定化する光学適合性手段としての、ゲル化濃度(およびゲル化温度)でのポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックポリマー(PBP)の使用。
2.(蛍光、蛍光寿命、生物ルミネセンス、化学ルミネセンス、異方性および光散乱を含めた)光収集を必要とする方法における分析のために生きた細胞および/または固定された細胞を捕捉および固定化する光学適合性手段としての、ゲル化濃度でのポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックポリマー(PBP)の使用。
3.例えば、温度変化およびゲル濃度により保護および/または制御された環境を提供する、生きた細胞または固定された細胞の接着培養物または平面調製物のための重層マウント剤としての、ゲル化濃度でのポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックポリマー(PBP)の使用。
4.水性懸濁液から同容器内のポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックポリマー(PBP)ゲル相に粒子、ビーズまたは細胞を遠心分離することを含む、粒子、ビーズまたは細胞の調製のための方法。
5.ゲル化濃度でポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックポリマー(PBP)に生きた細胞を固定化すること、および次に、これらの細胞を溶解させるために、希釈してPBPに界面活性特性を与えることを含む、生存細胞-溶解細胞の逐次in situ分析のための方法。
6.ゲル化濃度でのポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックポリマー(PBP)と、細胞固定化学物質および/または色素とを含む、in situ固定、固定化/構造支持および細胞染色のための組成物。
7.短期培養および/または試料の位置がデータリンクの目的で認識される逐次分析の目的で、多孔質または非多孔質表面上に封入された細胞を調製および固定化するための、ゲル化濃度でのポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックポリマー(PBP)の使用。
8.試料の保護、操作または分析目的で、封入された細胞または粒子を調製するための、ゲル化濃度でのポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックポリマー(PBP)の使用。
9.制御された分析方法の目的で、受動拡散または電気泳動により細胞または粒子に分子を制御運搬および制御送達するための、ゲル化濃度でのポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックポリマー(PBP)の使用。
10.表面への細胞または粒子の熱制御された提示のための、ゲル化濃度でのポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックポリマー(PBP)の使用。
11.ゲル形態が調製されて、既知体積で機械的手段によりマルチウェルプレートのウェルに沈着されて、続いて脱水されて保存または輸送に備える、上に定義されたポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックポリマー(PBP)の調製方法。好ましい実施形態では、マルチウェルプレートは、96ウェル、384ウェル、または1536ウェル形式を備えるであろう。
12.ゲル形態が調製されて、既知体積で機械的手段によりガラスなどの表面に沈着されて、続いて脱水されて保存または輸送に備える、上に定義されたポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックポリマー(PBP)の調製方法。好ましい実施形態では、PBP沈着物のパターンは分析対象物質の機械的送達と、透過、位相コントラスト、蛍光、蛍光寿命、生物ルミネセンス、化学ルミネセンス、異方性、光散乱、および屈折率を含めた、光収集を必要とするその後の光学分析とのためのアドレスで呼び出せるアレイを形成するであろう。
13.ゲル形態が請求項20に記載されたように調製され、続いて、適切な体積の水または使用者に指定された溶質の水溶液の導入により再水和される、上に定義されたポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックポリマー(PBP)の調製方法。好ましい実施形態では、マルチウェルプレートは、96ウェル、384ウェル、または1536ウェル形式を備えるであろう。
14.ゲル形態が請求項20に記載されたように調製され、透過、位相コントラスト、蛍光、蛍光寿命、生物ルミネセンス、化学ルミネセンス、異方性、光散乱、および屈折率を含めた、光収集を必要とする光学分析のために粒子または生きた細胞もしくは固定された細胞の適切な体積の水性懸濁液の導入によりその後再水和される、上に定義されたポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックポリマー(PBP)の調製方法。好ましい実施形態では、マルチウェルプレートは、96ウェル、384ウェル、または1536ウェル形式を備えるであろう。
15.再水和の工程が、与えられた光学平面内の粒子または生きた細胞もしくは固定された細胞の頻度を増加させることにより、それらの層別化を招いて光学分析の工程を援助する、粒子または生きた細胞もしくは固定された細胞の制御された再水和を行うための、上に定義されたポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックポリマー(PBP)を用いた試料調製の方法。
【0080】
細胞および粒子/ビーズの調製、操作、加工および蛍光に基づく技法を用いた分析のための、熱可逆性ゲル中のPBPについての特性および一般的要求
この要求は、新規な適用のためのブロックポリマーの特性の独特の組合せから生じる。これらの特性は、ゾル形成が低温で有利な熱可逆性ゲル-ゾル形成、粒子/細胞固定化、低毒性、光学適合性、分子ふるいおよび界面活性である。転移温度でのゲルの迅速な形成は、生きた細胞の操作、分析または加工のための固定化および支持マトリックスを提供して、水性PBPの界面活性特性を低減する。好ましい実施形態では、研究、診断およびスクリーニングアッセイは顕微鏡法または撮像法による連続分析および定期的分析の間に固定化され、それにより細胞運動、基材からの細胞剥離、ブラウン運動の効果、細胞位置の物理的かく乱または試料操作時の相互関係の欠如という、好ましくない作用が低減されている必要のある生物学的試料を用いる。生きた細胞に適合性の固定化法は、3D再構築用の種々の光学平面の逐次撮像またはレーザ走査およびカメラに基づく顕微鏡検査アプローチを用いた動態分析のための経時的な画像の獲得のために極めて重大である。異なる適用に適した異なる転移温度を有するブロックポリマーを提供する配合物により、PBPのゲル特性を変更できる。
【0081】
プロトコールの概要および一般的な考察
本発明は、熱可逆性ゲルの水性配合物に基づく、細胞または粒子または試薬の支持/包埋マトリックスの使用に関し、この配合物は、好ましい実施形態では、操作、加工および分析に好都合な特性を提供するポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックポリマー(PBP)を含む。以下のプロトコールに、Pluronic(登録商標)F-127に例示される熱可逆性ゲルの調製のための典型的な方法を記載する。F-127(BASF Corp.、ニュージャージー州により製造されたF-127ポリオール)の粉末を、脱イオン水に溶かした1×緩衝液(例えば、本明細書においてリン酸緩衝生理食塩水を用いて例示される)に約1〜4℃で溶解させることができる。両ブロックコポリマーは4℃で水性媒質に容易に溶解できることから、4℃という低温が必要である。この結果として、単量体分子から主になる均質な溶液が生じる。例えば、1×緩衝液に溶かしたF-127の21.2%(w/v)溶液は、温度約4℃で低粘度を有する。この温度で、例えば圧力、遠心分離などによりその流体を操作することができる。低温で細胞の機能または粒子の完全性を保ちながら、上昇した温度(>37℃)でのみ液体になるゲルを使用することの熱ショックの潜在性なしに、この流体形態の細胞または粒子を導入することができる。流体形態の細胞および粒子では混合を簡単に達成することができる。流体形態では、色素(蛍光プローブ)およびレポーター分子などの他の賦形剤を導入して均質な製剤を発生させることができる。液相からの、または冷却した緩衝液中のゲルの希釈物からの、細胞または粒子の回収を、遠心分離法、ろ過または磁気分離を含めた従来法により実現することができる。
【0082】
(室温から37℃でゲル形態を実現する配合物により選択された15℃を超えた)室温で、F-127コポリマーの中央のPブロックは疎水性になる。粘度は急激に増加して、系はゲル様になり、固定化相をもたらす。低濃度(非ゲル化)溶液中のPluronic(登録商標)F-127は、非イオン系洗剤特性および分散特性の両方を有するが(「Intracellular ion activities and membrane transport in parietal cells measured with fluorescent dyes」Negulescu PA、Machen TE.Methods Enzymol 192、38〜81(1990))、このことは、細胞の取扱い、特に洗剤-液体相互作用が細胞膜パラメータに影響しうる研究に必ずしも許容されうるとは限らないおそれがある。
【0083】
PBPのゲル形態は、例えば、撮像目的で運動性を低減するために、細胞または粒子を固定化する支持マトリックスとして作用することができる。固定化は、高密度で情報に富む視野の検査(例えば、異なる蛍光色素または特徴によりマークされた細胞/粒子のサブセットの計数)、経時的な細胞/粒子の特徴変化の撮像、逐次獲得を必要とする細胞/粒子の多重分析、細胞/粒子の視野における非同期事象の撮像、および細胞自体が可動性ならば損なわれるおそれのある細胞下事象の高分解能撮像を可能にするために重要である。ゲル形成は、例えば包埋された細胞への色素分子の送達速度も低減し、したがって(例えば、拡散で制限される系内で都合のよい分析時間尺度を用いて、迅速および遅延染色集団を分離して)アッセイの形態またはダイナミックレンジを高めるか、または広げるために、およびより高い粘度の色素製剤、よって(例えば、実験室の事故でのエーロゾル形成または経皮送達の速度を低減する)より安全な配合物の操作を許すために利用できる制御要素を提供する。
【0084】
図1は、細胞/粒子の操作および色素送達のための熱可逆性配合物の利用に妥当な、パラメータおよび値の範囲を示している典型的なPBPの粘度-温度プロファイルを示す。ゾル-ゲル転移温度(t50%)は、最大ゲル粘度の半分に達する温度の尺度である。t25%およびt75%の値は、それぞれ最大粘度の25および75%での温度を指す。これらの値の測定以外に、(例えば、緩衝液としてリン酸緩衝生理食塩水を使用することによりpH7.2〜7.4に調整された)この配合物のpH が、細胞の生存に重要である。
【0085】
このゲルの背後の取扱い概念は、(液体試薬形態をもたらす)冷所でそのゲルが日常的に保存されるであろうということである。この液体形態は冷条件で操作されるが、温度が増加すると数秒以内にゲルを形成する。加温過程を制御することは、規則性の程度により異なるミセルの質をもたらすであろう。迅速性は、迅速アッセイへの組み込みを可能にする。ゾルからゲル相への瞬間的な変換は、アッセイへの組み込みのための経路を提供する。この液体形態は、操作(例えば細胞ペレットの再懸濁)前または操作中に、粒子、ビーズ、細胞などを捕捉、支持、重層、または懸濁するために使用することができる。温度変動の際に(積極的または受動的加温)、このゲルは硬化して細胞/粒子マウント剤をもたらす。
【0086】
情報を提供する色素または他のレポーター分子を含みうる配合物を有するゲルに、生きた細胞もしくは固定された細胞、粒子またはビーズを組み込むことができる適用に備える一般的な方法を記載することができる。創薬、細胞および粒子/ビーズに基づくバイオテクノロジーにおける候補産物スクリーニングでの特定の適用に、ならびに撮像および顕微鏡法および非撮像プレート性アッセイでの多数の適用に、これらの基本プロトコールを適応させることができる。
【0087】
本発明の好ましい態様を、以下の図面を参照して以下の非限定的な実施例に記載する。
【実施例】
【0088】
(実施例I)
方法の態様
A 水性滅菌PF-127ポロキサマー溶液の調製のための典型的なプロトコール
i)1972年にSchmolkaによって記載された工程に類似した冷工程により、体積あたりの重量百分率として水性ポロキサマー溶液を調製した(Schmolka,I.R.(1972)Artificial skin I.Preparation and properties of Pluronic(登録商標)F-127 gels for treatment of burns.J Biomed.Mater.Res.6、571〜582)。蒸留水にPBPをゆっくりと加え、常に撹拌した。ゾルを完全に混合し、必要になるまで4℃で保存した。
ii)BASF Corporation(Preston、ランカシャー州、イギリス)からPF-127(例えばバッチ番号WPDL-510B)を得た。例えば、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を使用して細胞マウント剤のプロトコールで使用されるPF-127溶液を調製する。PBSの種々の配合物を使用することができる。リン酸緩衝生理食塩水の典型的な配合は:
a.1×液体としてのPBS、pH:7.4±0.05(リン酸二水素カリウム(KH2PO4)1.06mM、塩化ナトリウム(NaCl)155.17mM、リン酸一水素ナトリウム(Na2HPO4-7H2O)2.97mM)
b.ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(D-PBS)(1×)カルシウムおよびマグネシウム含有液(塩化カルシウム(CaCl2)(無水)0.901mM、塩化マグネシウム(MgCl2-6H2O)0.493mM、塩化カリウム(KCl)2.67mM、リン酸二水素カリウム(KH2PO4)1.47mM、塩化ナトリウム(NaCl)137.93mM、リン酸一水素ナトリウム(Na2HPO4-7H2O)8.06mM)。[参考文献:Dulbecco,R.およびVogt,M.、(1954)Plaque formation and isolation of pure lines with Poliomyelitis viruses.J.Exp.Med.、98:167]。
iii)蒸気滅菌を必要とするPF-127溶液を100mLガラス瓶に移し、120℃で20分間オートクレーブをかけ(USP、XX11NFXV11)、続いて必要になるまで4℃で保存する。D-PBSまたはRPMI培地(単独、完全補充、またはグルタミンおよび抗生物質補充のいずれか)などの最適な緩衝液に溶解させる必要のある固体PF-127を無菌条件で計量し、滅菌した媒質に混合せずに加え、4℃で12時間保存する。この後で、滅菌スパーテルを用いて、残ったPF-127の任意の凝集塊を無菌条件で分散させ、(屈折率の参照により規定される)透明溶液の存在によって判定されるように、PF-127の水和が完全になるまで4℃でさらに24時間、得られた混合物を保存する。
iv)任意の細胞培養実験に使用される緩衝液中に熱不安定な成分が存在することは、そのような媒質中に水和したPF-127の蒸気滅菌を妨げるおそれがある。その代わりとして、使用直前にPF-127溶液をろ過滅菌することができる(孔径0.2μmのフィルター)。このアプローチは、液体形態を実現するために加熱を必要とするゲル中での溶解では不可能な手順である、熱に不安定な賦形剤の調製も可能にする。
v)過剰濃度のPF-127溶液を用いて、賦形剤、例えば薬物原液を溶解することにより、混合したときに、必要な濃度の色素(例えば20μM DRAQ5(商標)または1μg/mLヨウ化プロピジウム)およびPF-127ゲルが得られた。
【0089】
B 細胞/粒子マウント剤として使用するための(本明細書においてPBSに溶かしたPF-127の24%w/v製剤として例示される)PBPゲルの物理的取扱いのための典型的な段階的プロトコール
i)顕微鏡用スライド表面上(例えば、チャンバースライドもしくはマルチチャンバープレート)またはカバースリップ上(例えば、カバースリップ培養)で成長しているか、あるいは(例えば、塗抹標本形成または液滴送達または細胞遠心分離により)顕微鏡用スライド上に沈着した付着細胞を使用することを含めた、最適な標準的な細胞培養法により、細胞調製物を作成する。
ii)都合のよい容器にPBPゲルを調製する。本明細書において、PBPゲルに物理的に混合された細胞のための、または顕微鏡用スライド表面に沈着した細胞もしくはカバースリップ上で成長している細胞のための、滴瓶製剤を記載する。
iii)4℃の保冷庫からPBPゲルの滴瓶を取り出し(使用前に4℃で一晩直立させて保存し、スポイトを使用する場合に液体形態に泡が入らないようにする)、粉砕した氷の上にこれを置いて、PBPゲルを液体形態として維持して、瓶の中のガラススポイトをさらに冷却する。
iv)顕微鏡用ガラススライド(室温)を持ち出し、平坦な表面にそれを置き、スポイトを素速く使って、スライドの中央にPBPゲル1滴を沈着させる。冷却した瓶にスポイトを直ちに戻す。ゲルは顕微鏡用スライド表面で速やかに硬化するであろう。触らないこと。
v)標準的なカバースリップ(室温)を持ち出し、接触点で圧を加えたり空気を閉じ込めることなしに、ゲルの中央の隆起の上にそれを静かに均等に置く。このカバースリップは、ゲルの上でバランスを保つ「帽子」として見えるであろう。
vi)敷いた氷の上(または好ましくは敷いた氷の上の平らな金属板上もしくは都合のよい冷却表面をもたらすペルチェ素子上)にこの顕微鏡用スライドを置く。
vii)ゲルを注意深く観察すると、数秒以内にゲルは逆転移を受けて、液体になり、カバースリップ下のマウント剤として拡散する。
viii)ゲルの拡散が起こったならば、冷却板からスライドを取り出し、スライドの下面を加温表面、例えば手のひらと接するように置く。ゲルは速やかに硬化して、室温でも定位置にカバースリップを保持するであろう。カバースリップを動かさずにスライドを逆にすることができる。冷却した水または緩衝液を用いて潅注することによりゲルを表面から取り除くことができる。
ix)練習すれば、スライド上への正確な量のPBPゲルを沈着させて、カバースリップを適用し、一連の温度変動を行うことにより、カバースリップを完全に充填して泡を閉じ込めずに、30秒でマウントされた試料を生み出すことができる。
x)次に、この調製物を標準的な顕微鏡法により分析する。
【0090】
C 核DNAを染色するために24%w/vでリン酸緩衝生理食塩水中に調製された水性滅菌PF-127ポロキサマー溶液を用いた、室温での生きた細胞のin situ染色のための典型的なプロトコール
i)記載されたように体積あたりの重量百分率で過剰濃度の水性ポロキサマー溶液を調製して、DNA色素DRAQ5(商標)の濃縮原液と混合して、24%PF-127に溶かした終濃度20μMのDRAQ5(商標)を得た。
ii)氷冷したピペットを使用して、4℃のDRAQ5(商標)/PF-127溶液を、標準的な細胞培養法を用いて得られた細胞単層培養上に速やかに重層した(例えばチャンバースライド中で成長しているヒト骨肉腫細胞系U2-OS)。ゲルを重層する前に、培地を取り除いて、冷リン酸緩衝生理食塩水を用いて単層を洗い、冷却した表面にそのチャンバースライドを置く。
iii)次に、重層したゲルの上にカバースリップを置き、上記のようにマウント手順を完了する。
iv)次に標準的な蛍光顕微鏡法によりこの調製物を分析して、核がDRAQ5(商標)/PF-127製剤でin situ染色することから、これらの細胞の核の形態を調べる。
【0091】
D ヨウ化プロピジウムによる分染を用いて生および死(アポトーシス細胞)を識別するための、PBS中で24%w/vで調製された水性滅菌PBP溶液を用いて、室温で生きた細胞をin situ染色するための典型的なプロトコール
i)記載されたように体積あたりの重量百分率で過剰濃度の水性PBP溶液を調製して、生存度色素であるヨウ化プロピジウムの濃縮原液と混合して、24%PF-127に溶かした終濃度1μg/mLのヨウ化プロピジウムを得た)。
ii)氷冷したピペットを使用して、PI/PBP溶液の4℃の溶液を、標準的な細胞培養法を用いて得られた分析用細胞の高密度懸濁液(例えば、懸濁培養物として成長しているヒトB細胞リンパ腫細胞系)と混合する。この冷却された混合試料を、冷却した顕微鏡用スライドにピペットで載せ、カバースリップを上記のように追加した。
iii)次に、この調製物を標準的な蛍光顕微鏡法により分析して、異常な核形態(アポトーシスもしくはネクローシス)を示す迅速に染色される細胞または無傷の原形質膜を有する細胞を表す、染色に抵抗している細胞の存在を調べる。この段階で細胞を捕捉することにより、染色の動態を観察することが可能になり、固定化された細胞の視野の繰り返し分析が可能になる。固定化された細胞は、撮像/顕微鏡法に基づくアッセイでは通常は見失われるものである。
iv)水性PBP溶液に移す前に、例えばフローサイトメトリー用に最初調製された試料を移す前に、水性懸濁液中でヨウ化プロピジウムで細胞を予備染色して、続いてゲル中での撮像により分析することができる。
【0092】
E 生きた細胞の撮像のためにPBPゲル中に(例えば緑色蛍光タンパク質を発現している)蛍光細胞を調製するための典型的なプロトコール
i)蛍光レポーターを有する細胞を、最適な培地中で高密度で、付着培養物または再懸濁細胞のいずれかとして、標準的な細胞培養法を用いて調製する。
ii)付着細胞培養のために、液相のPBPゲルを上記のように重層する。
iii)細胞懸濁液について、一定分量を液相のPBPゲルに直接混合して、顕微鏡用スライドに直接ピペットで載せ、上記のようにカバースリップを追加する。
iv)次に、この生きた細胞の調製物を標準的な蛍光顕微鏡法により分析して、対象となる特徴を調べる。
【0093】
本発明の追加の適用には以下のものがある:
ゲル化濃度でのポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックポリマー(PBP)を使用して、生物ルミネセンス発光の蛍光を含めた、光の収集を必要とする方法におけるキャリブレーション、光学アライメントおよび配向のために粒子を捕捉および固定化する光学適合性手段として作用させることができる。好ましい実施形態では、PBPゲル内の表面に沈着した蛍光ビーズは、キャリブレーション、点像分布関数の決定および二次元以上の光学的スライス内の事象の配向の手段をもたらすための蛍光顕微鏡システム(例えば共焦点レーザ走査顕微鏡システムまたは多光子励起レーザ走査顕微鏡法)で使用されるであろう。
【0094】
キャリブレーション用試料には、PBPゲル内でビーズを細胞と共に同時混合して、同じ生きた試料の条件での深度対蛍光補正対点像分布関数の決定について散乱をもたらすことを含む。そのような試料を使用して、光学要素の性能または機器の設定の表示ももたらすことができる。そのような方法は、x、yまたはz軸分解能のキャリブレーションを必要とする任意の種類の多次元撮像に適するであろう。キャリブレーションは、試料に由来する収差を測定して、結果として補正するために必要である。したがって、細胞性試料と同時混合された封入されたビーズは、分解能以下のビーズから得られた点像分布関数を含めた、特にx、y、z軸分解能の多次元分解能測定に適する。その他の収差には、深度に依存した蛍光、蛍光スペクトル重複およびクロストーク測定の補正を必要とする。
【0095】
ゲル化濃度でのポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックポリマー(PBP)を使用して、蛍光または生物ルミネセンスの発光を含めた光の収集を必要とする方法における分析のために、生きた細胞および固定された細胞を捕捉および固定化する光学的に適合性の手段として作用させることができる。これらの細胞は、非接着性または加工された細胞懸濁液でありうる。好ましい実施形態では、この蛍光は、緑色蛍光タンパク質(GFP)などの、細胞により発現されるように操作された蛍光分子から生じるであろう。
【0096】
細胞の保護および細胞のin situ染色または標識のための都合のよいマウント剤を提供している、生きた細胞または固定された細胞の接着培養物または平面調製物のための重層マウント剤としての、ゲル化濃度のポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックポリマー(PBP)。本明細書において、温度の関数としてのゾル-ゲル転移は、低温でマウント剤を拡散させて、調製物の局所温度を上げることによるゲル形成を介して、拡散を止めることによってゲルの深さを制御する新規な手段を提供する。接着特性は、倒立顕微鏡形式を使用できるように、マウントされた標本の反転を見込んでいるであろう。本明細書において、ゲルは、標本と撮像のための別の光学的界面との間に水-ゲル相を提供する。好ましい実施形態では、蛍光は、緑色蛍光タンパク質(GFP)のような、細胞により発現されるように操作された蛍光分子から生じるであろう。
【0097】
水性懸濁液から同一容器内のPBPゲル相への遠心分離により、ゲル化濃度のポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックポリマー(PBP)を、粒子、ビーズまたは細胞(「分析対象物質」)の調製方法に使用することができる。好ましい実施形態では、PBPゲルは、前記分析対象物質の懸濁液を含む重層している水相の下に存在し、温度制御によりゲル-水界面を維持している。遠心分離は、分析対象物質を強制的にゲルに進入させる。水性上層の除去後に、ゲル相に沈着した分析対象物質をゾルへの温度制御転移により回収することができる。
【0098】
分析対象物質を、蛍光プローブまたは生物ルミネセンスプローブを用いて予備標識することができる。さらに、蛍光分子プローブまたは生物ルミネセンス分子プローブである分析対象物質は、水相またはゲル相のいずれかに存在することができて、懸濁した粒子、ビーズまたは細胞を光学分析できるようにする。好ましい実施形態では、蛍光分子プローブはアントラキノンDRAQ5(商標)である。
【0099】
非ゲル化低濃度でポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックポリマー(PBP)は、一次および/または二次分析のための分子放出についての細胞破壊特性または溶解特性をもたらすことのできる界面活性特性を有する。特性の調整は、in situ希釈によるPBP濃度の変動および/または温度変動を必要とするであろう。好ましい実施形態では、in situで溶解したPBPゲルは、界面活性特性を与えて、生きた細胞-溶解細胞の逐次分析方法をもたらすであろう。
【0100】
ゲル化濃度のポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックポリマー(PBP)を、細胞固定化学物質(例えば、パラホルムアルデヒド)および/または色素(例えば、DNA蛍光色素)と組み合わせて、in situ固定、固定化 /構造支持および細胞染色用の独特の多機能薬剤を提供することができる。好ましい実施形態では、そのような多機能薬剤は、加工時間を短縮して、(例えば洗浄段階および流体除去段階を必要とする固定スケジュールにおいて)加工の段階数の低減により細胞の損失を最小にして、浸透圧環境、代謝勾配および構造/機械的完全性を維持するための手段を提供するであろう。
【0101】
短期培養および/または試料の位置がデータリンク目的で認識される逐次分析のために多孔質または非多孔質表面上で封入された原核細胞を調製および固定化することができるようにするポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックポリマー(PBP)ゲルの形成。好ましい実施形態では、原核細胞の低温液相封入物の温度を変動させることを使用して、化学感受性検査のために薬物を送達することができる特異的位置で細胞を捕捉することができる。
【0102】
短期培養および/または試料の位置がデータリンク目的で認識される逐次分析のための、多孔質または非多孔質表面上で封入された真核細胞を調製および固定化することができるようにするポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックポリマー(PBP)ゲルの形成。好ましい実施形態では、真核細胞の低温液相封入物の温度を変更させることを使用して、特異的位置で細胞が捕捉され、その位置で、それに続く遺伝子配列および/もしくはタンパク質またはその他の細胞から生じる分子を分析する。
【0103】
短期培養および/または試料の位置がデータリンク目的で認識される逐次分析のための、多孔質または非多孔質表面上で封入された細胞を調製および固定化することができるようにするポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックポリマー(PBP)ゲルの形成。好ましい実施形態では、真核細胞の低温液相封入物の温度を変更させることを使用して、マラリアの診断におけるマラリア原虫(Plasmodium species)の細胞内形態を含めた寄生虫の存在または不在を検出および分析するために、ならびに種および変異体の同定のために、特異的位置で細胞が捕捉される。
【0104】
試料保護、操作または分析のための、封入された細胞または粒子を調製できるようにするポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックポリマー(PBP)ゲルの形成。好ましい実施形態では、細胞または粒子の低温液相封入は、封入された試料の情報を提供する特徴の分析前または分析後に受け入れ表面または容器へのそのような液滴の送達を介してアレイまたは複製物を調製する目的で、液滴の発生を可能にする。
【0105】
熱可逆性ゲルの特性により調節される逐次処理のためのモジュラーアッセイ系/装置の予備構築の手段を提供する方法。例えば液滴形成または送達の点で転移温度を経るときに、封入された試料では、生きた細胞調製物について受ける蒸発ストレスは減少するであろうが、表面接着特性は増大するであろう。好ましい実施形態では、封入された細胞は、選別またはアレイを形成する計装により与えられた機械的応力から細胞を物理的に保護する。
【0106】
ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックポリマー(PBP)ゲルの迅速な形成は、最初は細胞上に固定化層をもたらす。潜在的化学遊走物質をゲル内またはゲルの上の層内に添加すると、この勾配は、細胞を刺激するための、または細胞を誘因/選別して未刺激の対応物から離すための活性層になる。熱可逆性は、これらの細胞が選択的に除去されて、さらに加工されることを可能にする。
【0107】
ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックポリマー(PBP)は、制御された分析法の目的で、受動拡散または電気泳動により細胞または粒子に分子(例えば反応体、レポーター蛍光色素またはその複合体)を制御送搬および制御送達することに備える。好ましい実施形態では、PBPゲルの分子ふるい効果は、試料調製物内での反応体および蛍光体レポーター分子または生物ルミネセンスレポーター分子の逐次送達に影響するであろう。
【0108】
細胞保護または生物学的変更のための賦形剤の添加は、ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックポリマー(PBP)ゲルに追加の機能性を与えるであろう。例えば、特異的細胞表現型を維持または変更するための成長因子またはシグナル伝達分子の含有。
【0109】
細胞またはレポーター分子に及ぼす光照明の光物理学的および光化学的作用を変更するための賦形物の添加は、ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックポリマー(PBP)ゲルに追加の機能性を与えるであろう。例えば、蛍光レポーター分子の光退色を低減するために賦形剤を含ませることができる。
【0110】
アッセイ性能を高めるか可能にする、表面への熱制御された細胞または粒子の提示を可能にするポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックポリマー(PBP)ゲルの形成。好ましい実施形態では、そのアッセイは、光学的界面での高度に制限された深度からの表面プラズモン共鳴効果または光収集を利用するであろう。
【0111】
本発明に関連するブロックコポリマーは、ポリオキシエチレンおよびポリオキシプロピレンを含みうる。したがって、ゲル形成製剤には、Pluronic(登録商標)F127、F108、F98、F87およびF88(Pluronic(登録商標)はBASF Corporationの登録商標である)として記載された製剤が含まれる。
【0112】
(実施例II)
蛍光細胞または染色された細胞の分析における本発明のブロックポリマー組成物の使用
1.EGFPを発現している細胞系の調製およびその光学分析のための一般法
構築体の調製。フレーム内で融合されて、pCI-Neo(Promega)ベクターにクローニングされた3個のDNA断片から細胞周期相のマーカーDNA構築体(GE Healthcare、Cardiff、イギリス)を調製した。そのベクターは、予めBglIIおよびNheIで切断されてCMVプロモーターを除去されていた。使用されたこれら3個の断片は、サイクリンB1プロモーター、ヒトサイクリンB1コード領域の171残基N末端アミノ酸およびEGFPであった。PCRならびにプライマー5'-CGCGGCAGCTGCCCGAGAGCGCAGGCGC-3'および5'-CGCAAGCTTCCTCTTCACCAGGCAGCAGCTC-3'を用いて、以前に記載した(22)構築体からサイクリンB1プロモーターを増幅させた。PCRならびにプライマー5'-GGGAAGCTTAGGATGGCGCTCCGAGTCACCAGGAAC-3'[配列番号1]および5'-GCCGGATCCCACATATTCACTACAAAGGTT-3'[配列番号2]を用いて、以前に記載した(5)サイクリンB1 cDNAから、サイクリンB1破壊ボックスおよびCRSをコードするがCDK結合部位を有さずに、HindIIIおよびBamHI末端を有するサイクリンB1のmRNAのN末端領域を増幅させた。プライマー 5'GGTACGGGCCGCCACCATGGGATCCAAGGGCGAGGAGCTGTTCAC[配列番号3]および5'-GGTACGGGTTAACCGGTCTTGTACAGCTCGTCCATG3'[配列番号4]を用いてpEGFP-N2(Clontech)から、EGFPについての遺伝子を増幅させた。3個の断片すべてを融合して、最終的なクローンの完全性を配列分析により確認した。
【0113】
細胞レポーター系。これらの研究で使用された親細胞系は、15歳白人女性由来のヒト骨肉腫細胞系U-2 OS(American Type Culture Collection[ATCC]HTB-96)であった。製造業者の説明書に従ってFugene(Roche)を用いて細胞周期マーカーDNA構築体をU-2 OS細胞にトランスフェクトした。1000μg/mlゲネチシン(Sigma G7040)で選択した後で、発現している細胞を高速蛍光標示式細胞分取(MoFlow;DAKO-Cytomation)を用いて濃縮して、96ウェルプレートに選別した(緑色蛍光細胞1個/ウェル)。コロニーを増殖させて、従来のフローサイトメトリーにより決定される、サイクリンに基づくレポーターについて予測される細胞周期により緑色蛍光が変動するクローンを増殖させて、高発現亜系を維持した。
【0114】
成長および維持条件。標準的な組織培養技法を用いて、安定トランスフェクトされた細胞を37℃および5%CO2で維持した。使用した培地は、2mMグルタミン、100ユニット/mlペニシリン、100mg/mlストレプトマイシン、10%ウシ胎仔血清および1000μg/mlゲネチシンを補充したMcCoys 5A変法(Sigma)であった。
【0115】
微速度/カメラ撮像。8ウェルNuncカバーガラスチャンバー(Labtek Inc)に蒔いた細胞を用いて、高分解能蛍光細胞追跡を行った。明視野相画像およびGFP蛍光(励起480/25nm発光525/30nm)を取得するために設計された微速度機器に培養皿を置いた。Axiovert100顕微鏡(Carl Zeiss、Welwyn Garden City、イギリス)に37℃/5%CO2維持のためのインキュベータ(Solent Scientific、Portsmouth、イギリス)およびORCA-ER 12ビットCCDカメラ(Hamamatsu、Reading、イギリス)を取り付けた。透過ランプ前部のシャッターにより照明を制御し、別々のz焦点を有するx、y位置決めステージ(Prior Scientific、Cambridge、イギリス)は多視野獲得を制御した。画像取得をAQM2000(Kinetic Imaging Ltd)により制御した。すべての画像を、125×125mmの視野サイズを提供する4O×、0.75NA乾燥系アポクロマート対物レンズで収集した。必要に応じシーケンスを取得した。必要な場合は、統合AQM2000ソフトウェアパッケージ(Kinetic Imaging Ltd)を用いて画像分析を行った。視野内の各細胞を個別に追跡した。単一細胞に基づく蛍光追跡を、Lucida(KI Ltd)で実現した。関心対象の領域内の蛍光を記録した。
【0116】
2.ゲル中の蛍光細胞の典型的な分析
図2は、培地中で撮像された発現細胞におけるEGFP関連蛍光についての典型的な結果を示す(欄a)。この結果では、マークされた領域は、細胞質(矢印)に高レベルのEGFPを発現している細胞3個の群の存在を示している。画像の細胞の取得の後で、培地を吸引して細胞単層に、PBS中で調製された冷(4℃)24%w/vゲル(PF-127、ゾル形態)を重層し、撮像プラットフォームに戻し(37℃、上層はこの温度で支持ゲルを形成する)、視野の位置を再び見出した。ゲル中でのインキュベーション0、10および60分目で同じ細胞のさらなる蛍光画像を取得した。この画像は、細胞の完全性(平らになった細胞)および細胞質でのGFP発現の維持を明らかに示している。
【0117】
3.ゲル中の生きた細胞における1つを超える蛍光の典型的な分析:DNA色素(DRAQ5)で同時染色した、ゲル(PBS中で調製された24%w/v PF-127)中のEGFP発現細胞
図3は、蛍光薬剤DRAQ5を用いて、核DNAについて染色した3試料におけるEGFP関連蛍光についての典型的な結果を示す。画像の対は、DRAQ5に関連する遠赤蛍光(図3左欄a、cおよびe)またはEGFP緑色蛍光(図3右欄b、dおよびf)を示す。欄aおよびbは、DRAQ5(20μM×10min)でPBS中で染色され、PBS中で撮像された同じ細胞についての結果を示し、この撮像により、細胞質内に高(hgfp)または低(lgfp)EGFP発現(矢印)を有する細胞(核の存在、矢印)の同定が可能になる。欄cおよびdは、これもPBS中でDRAQ5を用いて予備染色されたが、DRAQ5溶液の吸引後にゲルを重層された(上記参照)細胞を示す。欄cおよびdでの画像は、hgfpおよびlgfp発現細胞を識別する能力が連続していることを示す。欄eおよびfは、ゲル上層で1時間DRAQ5で染色された細胞を示し(PBS中で調製された24%w/v PF-127に溶かした20μM DRAQ5、37℃)、これは、ゲル内染色法を用いてhgfp細胞およびlgfp細胞を識別する能力を実証している。これらの画像は、細胞の完全性(平らになった細胞)および細胞質でのGFP発現の維持をはっきりと示している。
【0118】
4.細胞浸透性の色素(DRAQ5)を用いてゲル中で染色された細胞の典型的な光透過および蛍光分析
ヒトB細胞リンパ腫細胞(系列SU-DHL-4)を日常的な方法を用いて懸濁培養した。細胞培養物は、典型的には生きた細胞と、バックグラウンドの死滅途中の細胞、破片および場合により非細胞性粒子とを含む。物体を識別するための典型的な分析では、透過画像および蛍光画像の比較を行うことができる。典型的な方法は、冷却したゲル(PBS中で調製されて20μM DRAQ5を含む24%w/v PF-127)と予備混合されて、冷却した顕微鏡用スライドの上でカバースリップの下にマウントされた細胞試料を含むであろう。次に、このスライドを30分間室温に上昇させて、DRAQ5による核DNAの連続ゲル内染色を可能にする。図4は、透過(欄a)について、またはDNA色素の遠赤蛍光(DRAQ5、青色光励起欄b)について撮像された典型的な視野を示す。これらの画像(矢印参照)は、無傷細胞の陽性のゲル内染色を明らかにして、2つの核を有する物体(すなわち、分裂途中の細胞)、破片(不明瞭な核シグナル)または非細胞性(DNA不含)含有物の識別を可能にする。この分析は、ゲル中で行われて、3次元での位置を見失うことなしに細胞/物体の特徴を逐次調査できるようにする非接着細胞/物体の撮像を例示している。
【0119】
5.高分解能撮像を使用して免疫蛍光の位置を決定するために非接着細胞を固定化するための本発明のブロックポリマー組成物の使用例
PF-127ゲル配合物の重要な特徴は、フローサイトメトリーのために調製されたもののような懸濁細胞を固定化する容易な方法を提供することである。これは、光学的表面に本来係留されていない細胞に高分解能撮像を行うことができるようにする。
【0120】
したがって、PF-127配合物は、異なるサイトメトリープラットフォーム(例えば撮像により分析されるフローサイトメトリー試料)、特に、懸濁細胞の逐次分析を必要とするプラットフォームを結び付ける経路を提供する。特に関心対象であるのは、与えられた蛍光シグナルを細胞区画に位置決定すること(例えば小細胞肺癌細胞[SCLC細胞]表面上の神経細胞接着分子[NCAM]の発現)、または近隣細胞に関係したシグナルの発現であり、これらの場合では、例えば共焦点顕微鏡または多光子顕微鏡の多数の光学スキャンを行うときに、細胞クラスターを維持するために支持マトリックスが必要である。
【0121】
本明細書において、適切な蛍光タグを付けられた抗体およびDNA染色で探査された、固定された細胞用の支持マトリックスとしてのゲルの使用を記載する。標準的な細胞培養法を用いて、10%FCSを有するRPMI-1460培地中で懸濁細胞としてNCI-H69細胞を培養した。細胞を採取して、氷冷メタノール中で20分間固定した。リン酸緩衝生理食塩水中で洗浄後、フローサイトメトリー分析および蛍光顕微鏡法のために使用される標準的な免疫蛍光のために試料を処理した。マウス抗ヒト(CD-56、BD Pharmingen、イギリス)モノクローナル抗体に続いて抗マウスAlexa488 (Molecular Probes,InVitrogen、米国)を用いた二次染色を用いて、NCAM(CD-56)検出のための流体分析として、これらの懸濁液を調製した。最終的に、この調製物をDRAQ5で標識して核を識別した。
【0122】
細胞の試料少量(50μl、1×106細胞/ml)をチャンバーカバースリップ(Nunc)に置き、PBSに溶かした24%w/vのPF-127ゾルを細胞層の上に載せ、室温で放置してゲル層を形成させた(チャンバースライド調製物についてはA部を参照のこと)。細胞および細胞クラスターはゲルマトリックス下に固定化された。
【0123】
高分解能共焦点レーザ走査顕微鏡検査(BioRad 1024MP、BioRad Microscience Ltd)を行って、細胞塊の3チャネル画像を得た(図5)。透過画像は、488/647nm光で光学適合性を示した。試料の安定性は、密に結合した細胞を撮像できるようにして、NCAM位置を示す、細胞間の明瞭な縁部を提供した。核の位置は、細胞の位置を示したが、塊内の細胞数をはっきりと示している。ゲルマウント剤に関連して、検出可能なバックグラウンドも光散乱問題も存在しなかった。この実施例は、フローサイトメトリー分析に適合するプロトコール内で、固定された細胞調製物と共にゲルを使用できること、およびゲル中で高分解能免疫蛍光シグナルを発生できること実証している。
【0124】
(実施例III)
ブロックポリマー組成物中で被覆された顕微鏡用スライドまたはマルチウェルプレートの製造例
1.ゲル中で予備混合された試料を標準的な顕微鏡用スライド上にマウントする簡便プロトコール(図6欄a〜e)
ステップa:ゲル(ゾル形態、試験管中で氷冷して保持)に、例えば、PBS中で調製された体積250μlの24%w/v F-127への細胞濃縮懸濁液(例えば、標準遠心分離法を用いて調製された、体積10μlのPBS中の細胞4×105個)の添加により、分析用試料を混合する)。過剰濃度のゲル製剤を使用して、必要ならば、PBS中で調製された終濃度24%w/vのF-127を用意することができる。
ステップb:試料を標準的な顕微鏡用スライド表面に室温で速やかに画線すると、ゲルは数秒以内に硬化する。
ステップc:カバースリップをゲル上に置く。
ステップd:スライドをアイスパック上に置くと、ゲルは液体状態に変換し、数秒以内にカバースリップの下に拡散する。
ステップe:アイスパックからスライドを取り出すことにより、スライドが室温まで空気加温され、数秒以内にゲルの凝固が生じる。
【0125】
2.標準的な顕微鏡用スライド上の与えられた位置でゲル中の試料をマウントする変更プロトコール(図7欄a〜k)
水性懸濁液中での染色または非染色細胞、ビーズまたは粒子の予備調製、上清の吸引および氷上でのペレットの保管。図2(欄a〜k)は、顕微鏡用スライド上に単一試料を調製するためのその後の段階を示す。この手順を必要に応じて多試料について繰り返す。
【0126】
ステップa:アイスパック上で顕微鏡用スライドにケイ素アイソレータを圧着する(欄aに示した種類は、穴8個を有するS2560ケイ素アイソレータ(それぞれ深さ2mm、直径9mm)である、Sigma-Aldrich、イギリスから入手)。
ステップb:ウェルに冷35%PF-127ゲル90μLを加える。例えば、予備冷却した1mlマイクロピペットチップを用いてこれを実現できる。
ステップcおよびd:ウェルの底にゲルを介して細胞/ビーズまたは粒子試料を体積10uLで注入して、得られた懸濁液はゲル表面の中心領域へのプルームを発生する。
ステップe:スライドを温かい加熱ブロック(37℃に保持)に移動させると、ゲルは硬化する。ステップf:アイソレータを慎重に剥がす。
ステップg:現れたゲルディスクは自己支持性である。
ステップh:ゲルの底面が液化し始めるまで、スライドをアイスパックの上に置く。
ステップi:ゲルディスク表面にカバースリップを置き、一方でスライドはアイスパックの上に置いたままにする。このディスクは液化し続け、拡散し始める。
ステップj:このスライドに吸収紙を重層して、静かに圧着して試料の拡散を完了して過剰の液体を除去する。
ステップk:温かい加熱ブロックに戻してゲルを硬化させて、調製を完了する。保存のために室温に戻す(例えば24hまで)。
【0127】
3.チャンバー/ウェル(例えば、標準的なガラス底8ウェルチャンバースライド)に試料をマウントするための変更プロトコール(図7欄1およびm)
水性懸濁液中での染色もしくは未染色の細胞、ビーズまたは粒子の予備調製、上清の吸引および氷上でのペレットの保持。ゲルおよび試料の添加のための手順を上記と逆にする。図2は、アイスパック上に保持された多チャンバースライドの空のウェル/チャンバーに体積10μLの細胞/ビーズまたは粒子試料を導入する主ステップを示す(欄1)。次に、ウェルに冷35% PF-127ゲル90uLを加える(欄m)。例えば、予備冷却した1mlマイクロピペットチップを用いてこれを実現することができる。液状ゲルを試料懸濁液に重層する。次に、このスライドを加温して(例えば、37℃の加熱ブロック上)、分析前に上記のように試料-ゲル界面を硬化させる。
【0128】
4.ブロックポリマーの乾燥フィルムの調製およびマルチウェルプレート中でのそれらフィルムの再構成のための簡便プロトコールの例(表3)
PF-127の乾燥フィルムを調製して、様々な体積の水(または与えられた溶液)の添加によりそれらを再構成して、細胞/ビーズまたは粒子の固定化または操作するために一連の濃度の潜在的ゲル/液体を用意するための方法の一例を記載する。段階を以下に概略する。
【0129】
ステップa:19.3%w/v PF-127水溶液を調製した。この濃度は、(例えば4℃に)冷却した場合に液体状態を容易に形成するが、依然として室温(20℃)である程度の緩いゲル/液体状態を保持することを許す。
ステップb:表に示すように標準的な96ウェル(平底)透明プラスチック皿内の48ウェルのマトリックスに、多量の冷ゲルを分注する。
ステップc:プレートを37℃で24時間加熱ブロック上に保持して、ゲルが乾燥して各ウェルの底面を被覆する乾燥フィルムになるのを可能にする。ここで、例えば減圧乾燥によりこの工程を加速することができる。
ステップd:この段階で、再水和に関与する前に乾燥フィルムを保存することができる。
ステップe:表に示すように各ウェルに大量の氷冷PBSを分注して、乾燥物のぬれを援助するためにプレートを素速く回す。ここで機械的振動によりこの工程を加速することができる。
ステップf:次に、蓋を密封してプレートを4℃で24時間保持する。ここで、再水和条件は変動しうる(例えば、加湿雰囲気中で37℃でインキュベートする)。
ステップg:再水和後に、ピペットのチップでウェルの内容物を撹拌することによって、透明度および機械的特性の直接観察および顕微鏡観察により、ウェル中のゲル形成を質評価するためにプレートを室温に戻す。
【0130】
結果:表3は、室温で評価した場合にすべての組合せにおける液相およびゲル様相を調製する能力を示す。ここで、PBSを用いて再構成が実現され、最適な緩衝液を用いたゲルのin situ調製を実証している。室温で液相(すなわち「液体」)を示している一部のウェルは、温度が上昇したならばゲルを形成できるであろう。さらに、一部の組合せだけが、透明かつ光学的に許容できるゲル(すなわち「透明ゲル」)の形成を生じたが、他の場合では混濁-不透明ゲル/ペーストが形成した(すなわち「ゲル」)。19.3%PF-127ゲル75μLの乾燥フィルムを体積50μLのPBSで再構成した組合せは、名目上のポロキサマー濃度29%を有する透明ゲル(冷却によりゾルに可逆)をもたらした。この好ましい組合せは、室温(および37℃)の固定化特性の保持を可能にして、試料体積のさらなる添加(例えばゲルの終濃度を24%に低減すること)を許すであろう。
【0131】
【表3】

【0132】
(実施例IV)
蛍光ビーズおよび/または色素を含むブロックポリマー組成物の生産の実施例
1.固定化および分析目的でゲル中に蛍光ビーズを調製する簡便プロトコール
ビーズの分析は、例えばビーズの位置および蛍光などの光学特性の決定を必要とすることがある。蛍光性質およびビーズの位置の分析のための典型的なプロトコールの一例を、製造業者に記載された励起および発光条件を用いた直径約1μmの赤色蛍光ビーズ(例えばBecton Dickinson Calbrite APCビーズ、BD Biosciences、米国)について図8に示す。ゲル中にビーズを調製する一般的な方法は、上に記載されている。ビーズの濃縮製剤(例えばゲル0.5mlに1滴でピペットのマイクロチップを用いて氷冷しながら混合。顕微鏡用スライド上でゲル試料を調製した。上記の微速度撮像システムを使用して、PBS(カバースリップの下に捕捉されたフィルムとして)中または24%w/vゲル(PBS中で調製されたPF-127)中のいずれかでビーズの蛍光を逐次撮像した。画像aからdは、各画像取得の間に1秒間隔で4回撮像された、PBS中のビーズについての同視野を示す。画像eは、画像a〜dの4枚のマージされた画像を示す。同様に、画像f〜iは、室温でゲル中のビーズについての1秒間隔の画像を示し、対応するマージされた画像を欄jに示す。流体移動およびブラウン運動が原因で、PBS製剤ではビーズは明らかに移動しており、混乱したマージ画像を生じている。走査時間の間にビーズはゲル中に一定の位置に残り、ビーズについてのゲルの固定化特性を実証している。
【0133】
2.ゲル中での磁気ビーズ調製および磁場中でのそれらの操作のための簡便プロトコール
磁気ビーズは、分離法に一般に使われている。未標識磁気ビーズ(Reagent Mine Ltd.、Melton Mowbray、イギリスから入手、直径約2μm)を2mLポリプロピレン試験管の中で4℃でゲル(水に調製した24%w/v PF-127)に分散させた。次に、カメラシステムを備える標準顕微鏡を用いて、透過光により撮像するために顕微鏡用スライド上に懸濁液を調製した。図9(欄a)は、室温でゲル中に固定化された分散したビーズを示す。次に、ネオジム磁石(The Reagent Mine Ltd.、Melton Mowbray、イギリス)を視野の中心から2.5cmで、スライド表面と同じ高さに置き、30秒後に視野を再撮像した。図9(欄b)は、力線に沿ってビーズのアライメントを生じる磁場の効果を示し、これは、ゲル内でのアライメントおよび再局在化のために支持ゲル中でビーズを移動させる能力を実証している。
【0134】
3.ゲル中での色素の調製
生命標識法は、細胞内プロセシングの際に蛍光性になる非蛍光形態の色素の取込みを必要とすることが多い。ここで、ゲル-色素調製物を重層した生きた細胞のゲル内染色のための生命色素カルセイン-AMの調製を記載する。カルセイン色素(カルセインAM、0.1μg/ml、カタログ番号C3099、Molecular Probes、InVitrogen)を、PBS中で調製された24%w/v PF-127に入れて混合し、チャンバースライド中でヒトMCF-7細胞の単層培養物に重層して、室温で15分間インキュベートした。標準的な共焦点顕微鏡法を用いて画像を収集した(システム:BioRad 1024MP、BioRad Microsciences、イギリス)。図10は、細胞の光学的な切片を示すが、一部の細胞では色素の典型的な区画化を、その他の細胞ではより散在した染色を有することを実証している。結果は、生きた細胞のマーク付けおよび機能のためにゲル中に色素を調製する能力を実証している。
【0135】
(実施例V)
光学分析のための装置のキャリブレーションにおける本発明のブロックポリマー組成物の使用実施例(例えば、点像分布関数の決定)
1.固定化に使用されるゲル調製物は利点を有する
撮像機器(顕微鏡およびHCS機器)は、空間的にサンプリングされた蛍光アレイを生み出す。光学系により直接(カメラに基づく)画像を生み出すこともできるし、また、走査により構築することもできる(レーザ走査顕微鏡法)。異なる光学界面で屈折率の変化がより少ないことが好都合である。水性ゲルを入手できることは、例えば、より高いRIのグリセロール系マウント剤と比べた場合に、屈折率の点から見て好都合な媒質をもたらす。標準的な屈折分析を使用して、典型的なゲル調製物についてのRI値を測定した。得られた値を表4に示す。
【0136】
【表4】

【0137】
理論的空間分解能:(アークランプからの)照明波長を励起フィルターまたはスペクトロメータにより選択し、光は高開口数コンデンサーレンズにより視野開口に拡散する。次に、その光は45度のダイクロイックミラーから反射して、視野開口の画像は対物レンズにより試料に縮小する。このように、試料全体が等しく光に当たる。対物レンズにより蛍光が収集され、拡大接眼レンズを用いて目視で検鏡されるか、またはCCDカメラなどの適切な光検出器に移動するかのいずれかである、顕微鏡画像を形成する。照明された試料のすべての部分は、(焦点が)鮮明な特徴と同様に焦点がはずれた特徴を含む画像に貢献する。任意の蛍光撮像機器の性能の性質を考慮することが重要である。分解能以下(すなわち、約200nm未満)の蛍光ビーズの画像は、弱い明暗の環に囲まれた中心スポットからなるエアリーディスクを示すものである。そのエアリーディスクの測定は、顕微鏡の性能を説明するパラメータを与える。中心から最初の暗い環までの距離は、水平(x,y)分解能を説明し、次式により与えられる:
dxy = 0.61λ/NA
【0138】
ビーズの画像のフォーカスシリーズが収集されたならば、対応する軸(z)分解能は次式となる。
dz=3.7dxyη/NA
(η=試料媒質の屈折率
λ=波長
NA=対物レンズ開口数)
任意の水平面での合計強度は、NA2/(倍率)に比例し、焦点近くでは一定であるため、従来の顕微鏡では光学的な切片効果は存在しない。
【0139】
実際の空間分解能:アッセイが任意の撮像システムに実装されうる厳密さは、機器の再現性およびキャリブレーションに依存する。量的情報を抽出するか、または3D情報を抽出するためにデコンボリューション処理を実際に受けるために、撮像系の空間性能を理解することが必須である。試料媒質の屈折率が軸分解能に直線的に影響して、軸の性能変化は球面収差による深度であることから、「in situ」で軸分解能をキャリブレーションすることが重要である。顕微鏡のx,y,z性能を得るための許容された方法は、試料の撮像に使用されたのと正確に同条件で分解能以下のビーズから画像を取得することである。しかし、水性試料中(生理的緩衝液および培地)で、細胞を生存しているままにしてxyzキャリブレーションの情報をビーズから得ることが不可欠である。ブロックポリマー組成物に試料(細胞)およびビーズを配置することにより、軸性能が抽出されるのを可能にする、固定化ビーズの高分解能画像を得ることができる。
【0140】
組み込まれた分解能以下のビーズを有するブロックポリマー組成物の使用を例示するために、試料により異なる深度で機器の光学性能に関する情報を得ることができる。
【0141】
材料および試料の調製:
(i)多くの異なる製造業者、この場合はMolecular Probesから、分解能以下のビーズを得ることができる。PS-speck顕微鏡ポイントソースキット:505/515nmフルオスフェアカルボキシレート修飾ミクロスフェア0.17μm黄緑色蛍光(濃度107/ml)。
(ii)水に24%w/v配合したブロックポリマー組成物(PF-127)を、予め上に記載したように調製した。
【0142】
ステップ1:4℃に維持した24%Pluronic(登録商標)F127 0.5mlを採り、ビーズ溶液5
μlと混合する。
ステップ2:使用の準備ができるまで氷上に4℃で維持する。
ステップ3:顕微鏡用スライドに50μlを載せる(液滴はゲルになる)
ステップ4:液滴の上にカバースリップ(22mm×22mm)を置く
ステップ5:アイスブロックの上でスライドを冷却すると、液滴は拡散して、カバースリップは水平になる。
【0143】
光軸に沿ってビーズを通過したフォーカスシリーズの画像を得る(図参照)
ステップ1:顕微鏡にスライドをしっかりと固定する(振動は画像収集を妨害するものである)
ステップ2:フォーカスシリーズを得るための適切な撮像条件を選択する。
【0144】
結果を図11から13に示す。
【0145】
参考文献
White NS、Errington RJ.Fluorescence techniques for drug delivery research:theory and practice.Adv Drug Deliv Rev.2005 Jan 2;57(1):17〜42
【0146】
(実施例VI)
細胞への試薬の制御送達における本発明のブロックポリマー組成物の使用例
1.ゲル中の細胞への細胞浸透性DNA色素の送達
ゲル中に固定化した細胞、ビーズまたは粒子への試薬の送達は、長期間変更された相互作用動態の分析を可能にする。本明細書に記載したのは、PBS単独中での染色により得られた動態と比較した、試薬、すなわち細胞浸透性DNA色素であるDRAQ5のゲルに基づく送達の影響の一例である。ここで、付着したU-2 OS(American Type Culture Collection[ATCC]HTB-96)細胞を、標準的な細胞培養法を用いてガラス底のチャンバースライドの中で成長させた。付着した培養物の使用によって、PBS中で染色するための固定化と、ゲル中の染色との直接比較とが可能になった。培地を吸引して、DRAQ5(20μM)を補充したPBSと交換するか、または同様にDRAQ5(20μM)を含むゲル(PBS中で調製された24%w/v PF-127)を重層した。次に、微速度顕微鏡を用いて試料を撮像し、個別の細胞で監視した、核に関連する遠赤蛍光の変化を分析した。図14は、個別の細胞についてのPBS対ゲルの取込み動態を示す。正常成長条件での細胞培養物の十分に承認された非同期性の結果として、ある範囲(2倍)の細胞DNA含量が生じる。これは、集団の細胞周期の齢の分布を表している。PBS中では、細胞の速やかな染色が起こり、核蛍光強度について予想された広がりは平衡に近い値になる。ゲル染色でも値の広がりは繰り返すが、ゲルでの拡散に細胞の染色が制限されることから予想されるように、より遅い動態を伴う(<10分の1)。
【0147】
2.蛍光色素を用いたゲル中の生きた細胞および死滅した細胞の分別染色
図15において、ヨウ化プロピジウム(PI)は、損傷した原形質膜が陽イオン色素を排除できないことが原因で、(細胞死途中の)損傷した細胞に進入する。無傷の健常細胞は、膜の完全性が保たれているならば染色しない。ゲル中の生きた/死滅した細胞の識別のための典型的な分析を本明細書に述べる。DoHH2(ヒトB細胞リンパ腫細胞)細胞系は、PIを用いた陽性染色により通常は識別できる普通のバックグラウンドのアポトーシス(死滅途中の)細胞を有する。図2は、室温で15分間ゲル中(PBS中で調製された24%w/v PF-127、1μg/mlヨウ化プロピジウム含有)で保持されて染色された細胞の、青色光励起での透過画像および赤色蛍光画像の比較を示す。陽性染色細胞および陰性染色細胞を明らかに区別する能力があり、これは、事象の識別のために試薬のゲル送達を使用できることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】細胞/粒子の操作および色素送達のための熱可逆性配合物の利用に妥当であるパラメータおよび値の範囲を示す典型的なPBPの粘度-温度プロファイルを示す図である。
【図2】ゲル中に保持されたU2-OSヒト腫瘍細胞でのEGFP関連蛍光のカメラ画像を示す図であり、この画像は、細胞の完全性の維持および細胞質でのEGFP発現(矢印)を実証している。(欄:a、完全な培地中の細胞;b〜d、ゲルを重層されて37℃で0分目[b]、10分目[c]および60分目[d]に撮像された細胞。
【図3】核に局在している蛍光色素DRAQ5の曝露後にゲル中にマウントされた、EGFP発現U2-OSヒト腫瘍細胞のカメラ画像を示す図である(a:b)。
【図4】ゲル中に保持された、ゲル染色されたSU-DHL-4細胞におけるDRAQ5のカメラ画像を示す図である。
【図5】ゲル中で支持された、固定された細胞についての細胞核および細胞表面抗原の免疫染色のレーザ走査顕微鏡検出を示す図である(棒線=10μm)。左欄は透過画像を、中央欄は緑色のAlexa488-NCAM緑色免疫蛍光を、右欄は遠赤DRAQ5核蛍光を示す。
【図6】標準的な顕微鏡用スライド上へ、ゲル中に予備混合された試料をマウントする簡便プロトコールでの段階を示す図である。
【図7】スライドおよびマルチウェルシステム上のゲル中に試料を調製する変更プロトコールでの段階を示す図である。
【図8】PBSまたはゲル中のビーズの微速度撮像が逐次画像収集のための蛍光物体の効率的な捕捉を明らかにすることを示す図である。
【図9】室温で 24%PF-127ゲル中の分散磁気ビーズに及ぼす磁場の効果を示す図である。
【図10】カルセインを負荷した細胞(ガラス底チャンバーでの日常的な方法およびカメラに基づくシステムを用いて培養されたMCF-7ヒト乳癌細胞)についての典型的な結果を示す図である。
【図11】水に溶かした24%w/v PF-127中でマウントした170nmビーズを通過した広視野(CCDカメラ)フォーカスシリーズを示す図である(逆コントラスト)。Nikon固定ステージ正立顕微鏡にスライドを装着し、×40 ELWD NA0.6 乾燥系対物レンズ(画素分解能0.23μm)を用いて撮像した。蛍光モード(470/40励起および525/50発光)では、0.15μmのzステップを使用してフォーカスシリーズを収集し、合計距離7.5μmに相当する合計51平面を取得した。総スタックから単一ビーズを切り出して、モンタージュを行って回折環を示した。分解能以下(すなわち約200nm未満)の蛍光ビーズの画像は、薄い明暗環に囲まれた中央のスポットからなるエアリーディスクを示した。
【図12】水に溶かしたPF-127(24%w/v)中にマウントした170nmビーズを通過したフォーカスシリーズの最大投影を示す図である(逆コントラスト)。条件は上記の条件と同一である。ビーズは、収集に約3分間かかったシリーズ全体にわたり定常のままである。各ビーズは、明るい(黒色)中心および中心の周りの環からなり、各ビーズが定常であることを示している。
【図13】xzにおけるデータを再サンプリングすることにより得られた、2つの典型的な広視野点像分布関数(PSF)を示す図である。非対称画像は、球面収差(すなわち乾燥系レンズ(24%PF-127ゲル試料の屈折率1.357に向かう屈折率)が原因で生じる。これは、乾燥系レンズが日常的に使用されるが、生きた試料がマルチウェルプレート内のゲル中に存在する高含量スクリーニング機器による選別では典型的な状況である。PSFは、機器のアライメントがやや軸からはずれるという事実が原因で、やや傾斜して位置する。まとめると、ビーズ画像は、典型的な生きた細胞のマルチウェル撮像設定に使用される条件と同一の条件で、機器の性能の定量評価をもたらす。この種の評価のためにのみ培地または生理的緩衝液にビーズを固定化することは不可能であろう。
【図14】PBSまたはゲル中に保持されたU2-OSヒト腫瘍細胞へのDRAQ5色素の取込み動態の比較を示す図である。
【図15】ヨウ化プロピジウムで染色された細胞核の透過(欄a)または蛍光により検査された生きたヒトB細胞リンパ腫細胞および死滅(矢印)したヒトB細胞リンパ腫細胞の分別染色を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子の操作、加工または分析における支持マトリックスとしてのブロックポリマーを含む組成物の使用。
【請求項2】
前記組成物が、
(a)ゲル-ゾル熱可逆性、
(b)ゲル化条件でのミセル形成、
(c)光学適合性、
(d)制御可能な界面活性特性、
(e)分子ふるい特性、および
(f)生物学的適合性
の特性を示す、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記粒子が生物学的試料由来であるか、またはそれを構成する、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記粒子が細胞である、請求項1、2または3に記載の使用。
【請求項5】
前記細胞が固定されている、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記細胞が生きている、請求項4に記載の使用。
【請求項7】
前記細胞が非接着性である、請求項4に記載の使用。
【請求項8】
前記細胞が、ヒト細胞、動物細胞、培養細胞系、不死体細胞ハイブリッド、酵母細胞、植物細胞および真菌細胞からなる群から選択される、請求項4から7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記細胞が蛍光分子を発現できる、請求項6から8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
前記蛍光分子が、緑色蛍光タンパク質(GFP)ならびに/またはそのスペクトル変異体および/もしくは安定性変異体からなる群から選択される、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
前記粒子が蛍光ビーズである、請求項1に記載の使用。
【請求項12】
前記組成物が細胞にとって不活性な環境を提供する、請求項1から11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
前記組成物が使用前に無菌である、請求項1から12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
前記組成物が粒子をその中に固定化することができるようにする、請求項1から13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
前記組成物がポリオキシエチレンおよびポリオキシプロピレンのブロックコポリマーを含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
前記ブロックポリマーが、ポロキサマー407、ポロキサマー338、ポロキサマー288、ポロキサマー237、ポロキサマー238、ポロキサマー217、ポロキサマー188およびポロキサマー108からなる群から選択される、請求項1から15のいずれか一項に記載の使用。
【請求項17】
前記ブロックポリマーが、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で調製される、請求項1から16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項18】
前記組成物が7.2から7.4のpHを有する、請求項1から17のいずれか一項に記載の使用。
【請求項19】
前記ブロックポリマーがゲル化濃度で前記組成物中に存在する、請求項1から18のいずれか一項に記載の使用。
【請求項20】
前記ブロックポリマーが濃度24%(w/v)で前記組成物中に存在する、請求項1から19のいずれか一項に記載の使用。
【請求項21】
前記組成物の転移温度を変更することができる、請求項1から20のいずれか一項に記載の使用。
【請求項22】
前記組成物が、室温から37℃の間の転移温度でゲル形態を実現する、請求項1から21のいずれか一項に記載の使用。
【請求項23】
前記組成物が、顕微鏡用スライド、カバースリップまたはマルチチャンバープレートの表面に適用される、請求項1から22のいずれか一項に記載の使用。
【請求項24】
前記組成物が、光収集を伴う粒子分析のための支持マトリックスとして役立つ、請求項1から23のいずれか一項に記載の使用。
【請求項25】
前記組成物が、撮像、顕微鏡法または非撮像プレート性アッセイによる粒子の分析のための支持マトリックスとして役立つ、請求項1から24のいずれか一項に記載の使用。
【請求項26】
光が蛍光、生物ルミネセンスまたは化学ルミネセンスである、請求項24または25に記載の使用。
【請求項27】
前記粒子が、標準的な蛍光顕微鏡法により分析される、請求項24から26のいずれか一項に記載の使用。
【請求項28】
前記粒子が、共焦点レーザ走査顕微鏡法または多光子励起レーザ走査顕微鏡法により分析される、請求項27に記載の使用。
【請求項29】
前記光が、蛍光分子を発現するように操作された細胞から生じる、請求項26から28のいずれか一項に記載の使用。
【請求項30】
前記蛍光分子が、緑色蛍光タンパク質(GFP)ならびに/またはそのスペクトル変異体および/もしくは安定性変異体からなる群から選択される、請求項29に記載の使用。
【請求項31】
前記組成物が、粒子の多次元分析のための支持マトリックスとして役立つ、請求項1から30のいずれか一項に記載の使用。
【請求項32】
前記組成物が、粒子の動態分析のための支持マトリックスとして役立つ、請求項1から31のいずれか一項に記載の使用。
【請求項33】
前記分析が、高スループットスクリーニングにより行われる、請求項1から32のいずれか一項に記載の使用。
【請求項34】
前記分析が、光収集を必要とする方法におけるキャリブレーション、光学アライメントまたは配向のためのものである、請求項1から33のいずれか一項に記載の使用。
【請求項35】
前記分析が、キャリブレーション、点像分布関数の決定および二次元以上の光学的スライス内の事象の配向のためのものである、請求項1から34のいずれか一項に記載の使用。
【請求項36】
前記組成物が粒子マウント剤として役立つ、請求項1から35のいずれか一項に記載の使用。
【請求項37】
前記組成物が、粒子への反応体およびレポーター分子のアクセスを制御する手段を提供する、請求項1から36のいずれか一項に記載の使用。
【請求項38】
前記組成物が蛍光ビーズをさらに含む、請求項1から37のいずれか一項に記載の使用。
【請求項39】
前記ビーズが組成物内で表面上に沈着している、請求項38に記載の使用。
【請求項40】
前記組成物が異なるサイズおよび/または異なる色の蛍光ビーズをさらに含む、請求項38または39に記載の使用。
【請求項41】
前記組成物が色素をさらに含む、請求項1から40のいずれか一項に記載の使用。
【請求項42】
前記色素がDNA蛍光色素である、請求項41に記載の使用。
【請求項43】
前記色素が、1,5-ビス{[2-(メチルアミノ)エチル]アミノ}-4,8-ジヒドロキシアントラセン-9,10-ジオン(DRAQ5)またはその誘導体である、請求項41または42に記載の使用。
【請求項44】
前記組成物が細胞固定化学物質をさらに含む、請求項1から43のいずれか一項に記載の使用。
【請求項45】
前記細胞固定化学物質がパラホルムアルデヒド(PFA)である、請求項44に記載の使用。
【請求項46】
前記組成物が化学遊走物質をさらに含む、請求項1から45のいずれか一項に記載の使用。
【請求項47】
前記組成物が細胞保護または生物学的変更のための賦形剤をさらに含む、請求項1から46のいずれか一項に記載の使用。
【請求項48】
前記賦形剤が成長因子またはシグナル伝達分子である、請求項47に記載の使用。
【請求項49】
前記組成物が、細胞またはレポーター分子に及ぼす光照明の光物理学的および/または光化学的作用を変更するための賦形剤をさらに含む、請求項1から48のいずれか一項に記載の使用。
【請求項50】
前記賦形剤が、蛍光レポーター分子の光退色を低減して、かつ/または細胞外蛍光レポーター分子の光退色を増強する、請求項49に記載の使用。
【請求項51】
ブロックポリマーを蛍光ビーズおよび/または色素と共に含む粒子の操作、加工または分析のための支持マトリックス組成物。
【請求項52】
前記組成物が、
(a)ゲル-ゾル熱可逆性、
(b)ゲル化条件でのミセル形成、
(c)光学適合性、
(d)制御可能な界面活性特性、
(e)分子ふるい特性、および
(f)生物学的適合性
の特性を示す、請求項51に記載の支持マトリックス組成物。
【請求項53】
前記粒子が生物学的試料由来であるか、またはそれを構成する、請求項51または52に記載の組成物。
【請求項54】
前記粒子が細胞である、請求項51、52または53に記載の組成物。
【請求項55】
前記細胞が固定されている、請求項54に記載の組成物。
【請求項56】
前記細胞が生きている、請求項54に記載の組成物。
【請求項57】
前記細胞が非接着性である、請求項54に記載の組成物。
【請求項58】
前記細胞が、ヒト細胞、動物細胞、培養細胞系、不死体細胞ハイブリッド、酵母細胞、植物細胞および真菌細胞からなる群から選択される、請求項54から57のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項59】
前記細胞が蛍光分子を発現することができる、請求項56または58に記載の組成物。
【請求項60】
前記蛍光分子が緑色蛍光タンパク質(GFP)である、請求項59に記載の組成物。
【請求項61】
前記組成物が、細胞にとって不活性な環境を提供する、請求項51から60のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項62】
前記組成物が使用前に無菌である、請求項51から61のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項63】
前記組成物が、粒子をその中に固定化することができるようにする、請求項51から62のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項64】
前記組成物が、ポリオキシエチレンおよびポリオキシプロピレンのブロックコポリマーを含む、請求項51から63のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項65】
前記ブロックポリマーが、ポロキサマー407、ポロキサマー338、ポロキサマー288、ポロキサマー237、ポロキサマー238、ポロキサマー217、ポロキサマー188およびポロキサマー108からなる群から選択される、請求項51から64のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項66】
前記ブロックポリマーがリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で調製される、請求項51から65のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項67】
前記組成物が、7.2から7.4のpHを有する、請求項51から66のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項68】
前記ブロックポリマーが、ゲル化濃度で前記組成物中に存在する、請求項51から67のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項69】
前記ブロックポリマーが、濃度24%(w/v)で前記組成物中に存在する、請求項51から68のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項70】
前記組成物の転移温度を変更することができる、請求項51から69のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項71】
前記組成物が室温から37℃の間の転移温度でゲル形態を実現する、請求項51から70のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項72】
前記組成物が、顕微鏡用スライド、カバースリップまたはマルチチャンバープレートの表面に適用される、請求項51から71のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項73】
前記組成物が、光収集を伴う粒子分析に適する、請求項51から72のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項74】
前記組成物が、撮像、顕微鏡法または非撮像プレート性アッセイによる粒子分析に適する、請求項51から73のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項75】
光が、透過、蛍光、生物ルミネセンスまたは化学ルミネセンスである、請求項73または74に記載の組成物。
【請求項76】
前記組成物が3D撮像による粒子分析に適する、請求項51から75のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項77】
前記組成物が粒子の動態分析に適する、請求項51から76のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項78】
前記組成物が高スループットスクリーニングに適する、請求項51から77のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項79】
前記組成物が、光収集を必要とする方法におけるキャリブレーション、光学アライメントまたは配向に適する、請求項51から78のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項80】
前記組成物が、キャリブレーション、点像分布関数の決定および二次元以上の光学スライス内の事象の配向に適する、請求項51から79のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項81】
前記組成物が粒子マウント剤として役立つ、請求項51から80のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項82】
前記組成物が、粒子への反応体およびレポーター分子のアクセスを制御する手段を提供する、請求項51から81のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項83】
前記組成物が蛍光ビーズを含む、請求項51から82のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項84】
前記蛍光ビーズが、前記組成物内で表面上に沈着している、請求項83に記載の組成物。
【請求項85】
前記組成物が、異なるサイズおよび/または異なる色の蛍光ビーズを含む、請求項51から84のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項86】
前記組成物が色素をさらに含む、請求項51から85のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項87】
前記色素がDNA蛍光色素である、請求項86に記載の組成物。
【請求項88】
前記色素がDRAQ5またはその誘導体である、請求項87に記載の組成物。
【請求項89】
前記組成物が細胞固定化学物質をさらに含む、請求項51から88のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項90】
前記細胞固定化学物質がパラホルムアルデヒド(PFA)である、請求項51から89のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項91】
前記組成物が化学遊走物質をさらに含む、請求項51から90のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項92】
前記組成物が、細胞保護または生物学的変更のための賦形剤をさらに含む、請求項51から91のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項93】
前記賦形剤が成長因子またはシグナル伝達分子である、請求項92に記載の組成物。
【請求項94】
前記組成物が、細胞またはレポーター分子に及ぼす光照明の光物理学的および/または光化学的作用を変更するための賦形剤をさらに含む、請求項51から93のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項95】
前記賦形剤が、蛍光レポーター分子の光退色を低減して、かつ/または細胞外蛍光レポーター分子の光退色を増強する、請求項94に記載の組成物。
【請求項96】
蛍光ビーズおよび/または色素をブロックポリマー配合物に組み込むことを含む、請求項51から95のいずれか一項に記載の支持マトリックス組成物を作成する方法。
【請求項97】
蒸留水またはリン酸緩衝生理食塩水にブロックポリマーを溶解させること、それにより形成した溶液を滅菌すること、および前記溶液を4℃で保存することを含む、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
ブロックポリマー、蛍光ビーズおよび/または色素を含む、請求項51から95のいずれか一項に記載の支持マトリックス組成物を作成するためのキット。
【請求項99】
表面に適用された、請求項1から95のいずれか一項に規定される支持マトリックス組成物を含む、顕微鏡用スライド、カバースリップまたはマルチチャンバープレート。
【請求項100】
96ウェル、384ウェルまたは1536ウェルを含む、請求項99に記載のマルチチャンバープレート。
【請求項101】
前記支持マトリックス組成物が、分析対象物質の機械的送達と、透過、位相コントラスト、蛍光、蛍光寿命、生物ルミネセンス、化学ルミネセンス、異方性、光散乱および屈折率を含めた、光収集を必要とするその後の光学分析とのためのアドレスで呼び出せるアレイを形成する、請求項99または100に記載の顕微鏡用スライド、カバースリップまたはマルチチャンバープレート。
【請求項102】
前記支持マトリックス組成物が、使用前に再水和を必要とする乾燥形態である、請求項99から101のいずれか一項に記載の顕微鏡用スライド、カバースリップまたはマルチチャンバープレート。
【請求項103】
顕微鏡用スライド、カバースリップまたはマルチチャンバープレートの表面に、請求項1から95のいずれか一項に記載の支持マトリックス組成物を適用することを含む、請求項99から102のいずれか一項に記載の顕微鏡用スライド、カバースリップまたはマルチチャンバープレートを作成する方法。
【請求項104】
前記支持マトリックス組成物が前記顕微鏡用スライド、カバースリップまたはマルチチャンバープレートの表面に適用された後で前記支持マトリックス組成物を脱水することをさらに含む、請求項103に記載の方法。
【請求項105】
顕微鏡用スライド、カバースリップまたはマルチチャンバープレートと、請求項1から95のいずれか一項に記載の支持マトリックス組成物とを含む、請求項99から102のいずれか一項に記載の顕微鏡用スライド、カバースリップまたはマルチチャンバープレートを作成するためのキット。
【請求項106】
96ウェル、384ウェルまたは1536ウェルを備えるマルチチャンバープレートを含む、請求項105に記載のキット。
【請求項107】
請求項51から95のいずれか一項に記載の支持マトリックス組成物で被覆すること、または染色される細胞をそれと共に混合することを含む、細胞を染色する方法。
【請求項108】
生きた細胞を死滅した(アポトーシス)細胞と区別するためである、請求項107に記載の方法。
【請求項109】
光収集を必要とする方法におけるキャリブレーション、光学アライメントおよび/または配向のために粒子を捕捉および固定化する光学適合性手段としてである、ゲル化濃度でのポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックポリマー(PBP)の使用。
【請求項110】
蛍光ビーズが前記PBP内の表面上に沈着している、請求項109に記載の使用。
【請求項111】
蛍光、生物ルミネセンスおよび屈折率の差異を伴う方法のためである、請求項110に記載の使用。
【請求項112】
蛍光顕微鏡システムにおける、請求項111に記載の使用。
【請求項113】
共焦点レーザ走査顕微鏡法または多光子励起レーザ走査顕微鏡法における、請求項112に記載の使用。
【請求項114】
ビーズが点像分布関数の決定のために、または光学要素の性能もしくは機器の設定の表示を提供するために細胞と同時混合されている、請求項109から113のいずれか一項に記載の使用。
【請求項115】
多次元(3D)撮像のためである、請求項109から114のいずれか一項に記載の使用。
【請求項116】
光収集を必要とする方法における、分析のために生きた細胞および/または固定された細胞を捕捉および固定化する光学適合性手段としてである、、ゲル化濃度でのポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックポリマー(PBP)の使用。
【請求項117】
蛍光、生物ルミネセンス、蛍光寿命、異方性および光散乱の分析のためである、請求項116に記載の使用。
【請求項118】
細胞によって発現される蛍光分子からの蛍光の分析のためである、請求項117に記載の使用。
【請求項119】
前記蛍光分子が緑色蛍光タンパク質(GFP)である、請求項118に記載の使用。
【請求項120】
非接着性細胞または加工された細胞の分析のためである、請求項116から119のいずれか一項に記載の使用。
【請求項121】
接着培養物または生きた細胞もしくは固定された細胞の平面調製物のための重層マウント剤としてである、ゲル化濃度でのポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックポリマー(PBP)の使用。
【請求項122】
細胞の保護のためである、請求項121に記載の使用。
【請求項123】
細胞のin situ染色または標識のためである、請求項121に記載の使用。
【請求項124】
水性懸濁液からの粒子、ビーズまたは細胞を同じ容器内のポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックポリマー(PBP)ゲル相に遠心分離することを含む、粒子、ビーズまたは細胞の調製のための方法。
【請求項125】
前記PBPゲルが、前記粒子、ビーズまたは細胞の懸濁液を含む重層している水相の下に存在して、温度制御によりゲル-水界面を維持する、請求項124に記載の方法。
【請求項126】
前記ゲル相内に沈着した粒子、ビーズまたは細胞が、水性上層の除去後にゾルへの温度制御された転移により回収される、請求項124または125に記載の方法。
【請求項127】
前記粒子、ビーズまたは細胞が蛍光プローブまたは生物ルミネセンスプローブで予備標識される、請求項124から126のいずれか一項に記載の方法。
【請求項128】
蛍光分子プローブまたは生物ルミネセンス分子プローブが水相中またはゲル相中のいずれかに存在して、懸濁された前記粒子、ビーズまたは細胞の光学分析をできるようにする、請求項124から127のいずれか一項に記載の方法。
【請求項129】
前記蛍光分子プローブが、1,5-ビス{[2-(メチルアミノ)エチル]アミノ}-4,8-ジヒドロキシアントラセン-9,10-ジオン(DRAQ5(商標))である、請求項128に記載の方法。
【請求項130】
ゲル化濃度でポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックポリマー(PBP)中に生きた細胞を固定化すること、および次に希釈して、前記細胞を溶解するためにPBPに界面活性特性を与えることを含む、生きた細胞-溶解した細胞のin situ逐次分析のための方法。
【請求項131】
ゲル化濃度でのポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックポリマー(PBP)と、細胞固定化学物質および/または色素とを含む、in situ固定、固定化/構造支持および細胞染色のための組成物。
【請求項132】
前記組成物が、浸透圧環境、代謝勾配および構造/機械的完全性を維持するための手段を提供する、請求項131に記載の組成物。
【請求項133】
前記細胞固定化学物質がパラホルムアルデヒドである、請求項131または132に記載の組成物。
【請求項134】
前記色素DNA蛍光色素である、請求項131から133のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項135】
短期培養および/または試料の位置がデータリンクの目的で認識される逐次分析のために、封入された細胞を多孔質または非多孔質表面上に調製および固定化するためである、ゲル化濃度でのポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックポリマー(PBP)の使用。
【請求項136】
前記細胞が原核細胞である、請求項135に記載の使用。
【請求項137】
前記細胞が真核細胞である、請求項135に記載の使用。
【請求項138】
細胞の低温液相封入物を温度変動させることが、化学感受性検査のために薬物を送達することができる特異的位置で細胞を捕捉するために使用される、請求項136または137に記載の使用。
【請求項139】
短期培養および/または試料の位置がデータリンクの目的で認識される逐次分析のために、封入された細胞を多孔質または非多孔質表面上に調製および固定化するためである、ゲル化濃度でのポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックポリマー(PBP)の使用。
【請求項140】
真核細胞の低温液相封入物を温度変動させることが、マラリアの診断において、および種および変異体の同定の目的で、マラリア原虫(Plasmodium species)の細胞内形態を含めた寄生虫の存在または不在を検出および分析するために特異的位置で細胞を捕捉するために使用される、請求項139に記載の使用。
【請求項141】
試料保護、操作または分析の目的で封入された細胞または粒子を調製するためである、ゲル化濃度でのポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックポリマー(PBP)の使用。
【請求項142】
細胞または粒子の低温液相封入物が、アレイまたは複製物を調製するために液滴の発生を許し、前記調製が、封入された試料の情報特徴を分析する前または後に、受け入れ表面または容器に前記液滴を送達することによる、請求項141に記載の使用。
【請求項143】
制御された分析方法のために受動拡散または電気泳動により細胞または粒子に分子を制御運搬および制御送達するためである、ゲル化濃度でのポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックポリマー(PBP)の使用。
【請求項144】
前記分子が反応体、レポーター蛍光色素またはその複合体である、請求項143に記載の使用。
【請求項145】
前記PBPゲルの分子ふるい特性が、試料調製物内の反応体および蛍光レポーター分子または生物ルミネセンスレポーター分子の逐次送達を許す、請求項143または144に記載の使用。
【請求項146】
表面への細胞または粒子の熱制御された提示のためである、ゲル化濃度でのポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックポリマー(PBP)の使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図15】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図14】
image rotate


【公表番号】特表2008−504045(P2008−504045A)
【公表日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−518706(P2007−518706)
【出願日】平成17年7月1日(2005.7.1)
【国際出願番号】PCT/GB2005/002603
【国際公開番号】WO2006/003423
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(507002136)バイオステータス・リミテッド (1)
【Fターム(参考)】