説明

コアシェル型ナノ粒子および熱電変換材料

【課題】 本発明は、高い熱電変換の性能を示し、量産性に優れた熱電変換材料を提供すること、および、この熱電変換材料等に用いられるコアシェル型ナノ粒子を提供することを主目的とする。
【解決手段】 本発明は、コア部と、上記コア部を被覆するシェル部とを有するコアシェル型ナノ粒子であって、上記シェル部の構成材料がInSbであり、上記コア部の構成材料の融点が、上記シェル部の構成材料であるInSbよりも高いことを特徴とするコアシェル型ナノ粒子を提供することにより、上記目的を達成するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電変換素子等に用いられる、コアシェル型ナノ粒子および熱電変換材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱電変換素子に用いられる熱電変換材料には、熱エネルギーの電気エネルギーへの変換効率が高いことが要求され、次のような性能が要求される。(1)温度差を与えたときに発生する電圧は大きい方がよく、温度差1K当りの熱起電力が大きいことが要求される。(2)電流が流れたとき電気抵抗が大きいとジュール熱によってエネルギーが失われるので、電気抵抗は小さい方がよい。(3)熱伝導が起きると電気エネルギーに変換されるべき熱エネルギーが熱のまま逃げてしまうので、熱伝導率は小さい方がよい。以上のことから、熱電変換材料の特性は、性能指数Zと呼ばれる下記式(i)で示される値で支配される。
Z=S・σ/k (i)
ここで、Sは熱起電力、σは導電率、kは熱伝導率である。この性能指数Zの値の大きい材料ほど優れた熱電変換材料となる。
【0003】
近年、熱電変換材料の性能を向上させる試みの一つとして、熱電変換材料中に微粒子を分散させる研究が行われている。熱電変換材料としてスクッテルダイト化合物やSiGe等の移動度の高い材料を用いると、これらの材料は導電率σが大きいので性能向上に寄与する一方、熱伝導率kも大きいことから性能指数Zを大きくすることができなかったが、このような熱電変換材料中に微粒子を分散させることで、微粒子によりフォノンが散乱されるので、熱伝導率kを小さくすることができ、性能を向上させることができるのである。
【0004】
例えば非特許文献1には、スクッテルダイト化合物のマトリックス中にFeSb微粒子を、メカニカルアロイング処理により、モル比で40%まで導入した熱電変換材料が提案されている。FeSb微粒子のサイズはサブミクロンオーダーであり、600K〜800Kの範囲内における性能指数は、FeSb微粒子を導入した系の方が、FeSb微粒子を導入しない系より大きいことが示されている。しかしながら、500K以下ではFeSb微粒子の導入による性能向上は示されなかった。
【0005】
また、非特許文献2には、SiGe合金(Ge:20atm%)に粒径0.7nmのフレライト(C60:90%とC70:10%との混合物)を、1wt%までメカニカルアロイング処理により導入した。しかしながら、フレライトの分散性については述べられていなく、性能向上は示されなかった。性能が向上しない主な原因は、微粒子導入により熱伝導率kは減少するが、導電率σも減少してしまうことにあると考えられる。
【0006】
さらに、非特許文献3には、PbTe/PbSeTe系の量子ドット超格子により性能を向上させる方法が提案されている。この量子ドット超格子は、分子線エピタキシー(molecular beam epitaxy)法によりPbTeとPbSeTe(配合モル比 Pb:Se:Te=1.00:0.98:0.02、以降、省略する。)とを交互に積層させることで作製されるものであり、PbTe上に成膜されたPbSeTeが、成膜直後の薄膜から、経時でPbTeとの格子不整合により粒子状に変化することを利用したものである。PbTe膜上で粒子状に変化したPbSeTe粒子を覆うようにPbTeをさらに成膜し、再びPbSeTeを成膜することにより、PbSeTe微粒子(量子ドット)がPbTe中に規則的に分散した構造を有する量子ドット超格子が得られる。PbSeTe微粒子のサイズは30nm以下であり、300K〜500Kの範囲内において、PbTe中にPbSeTe微粒子を導入した系の方が、導入しない系より7倍から13倍も大きい性能指数を示した。これは、上述したフォノンの散乱による効果だけでなく、量子効果が性能向上に寄与するためであると考えられている。この理論については、非特許文献4に詳述されている。一般的に量子効果の発現するサイズは、100nm以下である。
【0007】
しかしながら、量子ドット超格子は、上述したように分子線エピタキシー法により真空系においてPbTeとPbSeTeとを交互に積層させることで作製されるため、大変手間がかかるという問題がある。また、各層の厚みは10nm程度であり、熱電変換材料として使用するには10μm以上必要であることから、各層を少なくとも500層ずつ積層しなければならず、量産には適していない。
【0008】
一方、熱電変換材料中に微粒子を分散させた系ではないが、非特許文献5には、SiO微粒子をスクッテルダイト化合物で被覆する方法が提案されている。これは、粒径が300nmのSiO微粒子に、金をスパッタリングにより10〜60nmの厚みでコーティングし、さらにその上にスクッテルダイト化合物の1種であるCoSbをコーティングするという方法である。このCoSbは、その前駆体を金の上にコーティングした後に還元焼成することにより形成される。しかしながらこの方法では、SiO微粒子を単なる支持体として用いており、SiO微粒子によるフォノンの散乱効果については述べられていない。また、CoSbの前駆体を還元する際に還元ガスを用いるために前駆体の内部まで十分に還元されない場合があるという問題がある。
【0009】
【非特許文献1】J. Applied Physics, 88, p.3484-3489(2000)
【非特許文献2】Materials Science and Engineering, B41, p.280-288 (1996)
【非特許文献3】18th International Conference on Thermoelectrics, p.280-284(1999)
【非特許文献4】Phys. Rev. B, 47, p.16631(1993)
【非特許文献5】Nanostructured Films and Coatings, p.149-156(2000)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、高い熱電変換の性能を示し、量産性に優れた熱電変換材料を提供すること、および、この熱電変換材料等に用いられるコアシェル型ナノ粒子を提供することを主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、コア部と、上記コア部を被覆するシェル部とを有するコアシェル型ナノ粒子であって、上記シェル部の構成材料がInSbであり、上記コア部の構成材料の融点が、上記シェル部の構成材料であるInSbよりも高いことを特徴とするコアシェル型ナノ粒子を提供する。
【0012】
本発明においては、コア部の構成材料の融点が、シェル部の構成材料であるInSbよりも高いことから、例えば、本発明のコアシェル型ナノ粒子を圧縮成形して、後述するコアシェル構造体を作製する場合に、シェル部の構成材料が溶融し、隣り合うコアシェル型ナノ粒子のシェル部同士が結合する一方、コア部の構成材料は溶融せず、それぞれ独立したコア部を維持することができ、その結果、熱電変換性能に優れた熱電変換材料を得ることができる。
【0013】
また、上記発明においては、上記シェル部と上記コア部とが相分離していることが好ましい。コア部およびシェル部に異なった機能を付与する場合、これらが相分離していれば、それぞれの機能をより効率的に発揮することができるからである。
【0014】
また、本発明は、上記コアシェル型ナノ粒子と、分散媒とを含有することを特徴とするコアシェル型ナノ粒子分散液を提供する。
【0015】
本発明においては、上記コアシェル型ナノ粒子を分散媒に分散させコアシェル型ナノ粒子分散液とすることによって、コアシェル型ナノ粒子単独の場合に比べて、取扱性や保存性を向上させることができる。
【0016】
また、本発明は、複数のコア部と、上記コア部を被覆する結合シェル部とを有するコアシェル構造体で構成される熱電変換材料であって、上記複数のコア部は互いに独立し、上記結合シェル部は連続し、さらに、上記結合シェル部の構成材料がInSbであり、上記コア部の構成材料の融点が、上記結合シェル部の構成材料であるInSbよりも高いことを特徴とする熱電変換材料を提供する。
【0017】
本発明においては、コアシェル構造体中で複数のコア部が互いに独立しており、細かく分散しているものであることから、電気および熱がコアシェル構造体を伝導する際に、このコア部によりフォノンが散乱されるので熱伝導率を小さくすることができ、熱電変換の性能を向上させることができる。また、本発明におけるコアシェル構造体は、例えば上記コアシェル型ナノ粒子を圧縮成型して作製することができるので、上述した量子ドット超格子の作製と比較して量産に適しているという利点を有する。
【0018】
また、本発明は、InSbよりも融点の高い材料を用いてコア部を形成するコア部調製工程と、ホットソープ法により上記コア部をInSbで被覆しシェル部を形成し、コアシェル型ナノ粒子を形成するシェル部調製工程と、上記シェル部に付着する有機物を除去する除去工程と、上記有機物を除去したコアシェル型ナノ粒子を圧縮成形する圧縮成形工程と、を有することを特徴とする熱電変換材料の製造方法を提供する。
【0019】
本発明においては、上記工程を行うことにより、高い熱電変換の性能を示し、量産性に優れた熱電変換材料を得ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明においては、上記コアシェル型ナノ粒子を用いて、上記コアシェル構造体を作製した場合、電気および熱がコアシェル構造体を伝導する際に、独立分散して存在するコア部によりフォノンが散乱されるので熱伝導率を小さくすることができ、熱電変換の性能を向上させることが可能である。また、上記コアシェル構造体は、上記コアシェル型ナノ粒子を圧縮成形して作製することができるので、量産に適しているという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明のコアシェル型ナノ粒子、コアシェル型ナノ粒子分散液、熱電変換材料、および熱電変換材料の製造方法について説明する。
【0022】
A.コアシェル型ナノ粒子
まず、本発明のコアシェル型ナノ粒子について説明する。本発明のコアシェル型ナノ粒子は、コア部と、上記コア部を被覆するシェル部とを有するコアシェル型ナノ粒子であって、上記シェル部の構成材料がInSbであり、上記コア部の構成材料の融点が、上記シェル部の構成材料であるInSbよりも高いことを特徴とするものである。
【0023】
本発明においては、コア部の構成材料の融点が、シェル部の構成材料であるInSbよりも高いことから、例えば、本発明のコアシェル型ナノ粒子を圧縮成形して、後述するコアシェル構造体を作製する場合に、シェル部の構成材料が溶融し、隣り合うコアシェル型ナノ粒子のシェル部同士が結合する一方、コア部の構成材料は溶融せず、それぞれ独立したコア部を維持することができ、その結果、熱電変換性能に優れた熱電変換材料を得ることができる。
【0024】
次に、本発明のコアシェル型ナノ粒子について図面を用いて説明する。図1は、本発明のコアシェル型ナノ粒子の一例を示す概略断面図である。図1において、コアシェル型ナノ粒子3は、InSbよりも融点の高い材料を用いたコア部1と、このコア部1を被覆し、InSbを用いたシェル部2と、を有するものである。
以下、本発明のコアシェル型ナノ粒子の各構成について説明する。
【0025】
1.シェル部
まず、本発明に用いられるシェル部について説明する。本発明に用いられるシェル部は、後述するコア部を被覆するものであって、シェル部の構成材料としてInSbを用いたものである。
【0026】
なお、本発明において、上記シェル部の構成材料として用いられる「InSb」は、InSbのみならず、他の元素をドーピングしたInSbも含むものである。他の元素をドーピングした場合、例えばシェル部の導電率等を向上させることができる。このようなドーピングの一例としては、例えば、InSbに対して、S、Se、Te等の第6族元素;Zn、Cd、Hg等の第12族元素;Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu等の第3族〜第11族遷移元素;等をドーピングすることにより得られるもの等を挙げることができる。具体的には、InZn(1−x)Sb(なお、x=0.01〜0.1を表す。)等を挙げることができる。上記ドーピングの方法は、コアシェル型ナノ粒子を形成した後に半導体の分野で一般的に行っている方法が適用できる。例えば熱拡散が適用される。または、後述するホットソープ法等によりコアシェル型ナノ粒子を作製する際に、ドーピング元素またはドーピング元素を含む前駆体を添加することでドーピングを行っても良い。
【0027】
また、上記シェル部の厚みとしては、コアシェル型ナノ粒子の用途によって異なるものであるが、本発明のコアシェル型ナノ粒子を、後述する「C.熱電変換材料」に記載のコアシェル構造体に用いる場合は、1nm〜100nmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは1nm〜70nmの範囲内であり、特に2nm〜50nmの範囲内であることが好ましい。上記膜みが薄すぎると電子が十分に伝導されなくなり、導電性が減少して性能が低下する可能性があるからである。逆に、上記厚みが厚すぎるとコア部によるフォノンの散乱効果が得られにくくなる場合があるからである。ここで、上記シェル部の厚みとは、例えば図1のnで示される厚みをいう。
【0028】
なお、上記シェル部の厚みは、シェル部まで形成した微粒子の粒径から、コア部のみを形成した微粒子の粒径を差し引き、2で除することにより得られる。各微粒子の粒径は、本発明のコアシェル型ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)または透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて得られた画像から、微粒子が20個以上存在していることが確認される領域を選択し、この領域中の全ての微粒子について、粒径を測定し、平均値を求めることにより得られる値とする。ただし、焦点がぼやけている部分については測定対象から除外するものとする。
【0029】
2.コア部
次に、本発明に用いられるコア部について説明する。本発明に用いられるコア部は、上記シェル部に被覆されるものであって、上記コア部の構成材料の融点が、上記シェル部の構成材料であるInSbよりも高いものである。また、本発明に用いられるコア部は、通常、コア部微粒子から構成される。
【0030】
本発明において、上記コア部の構成材料の融点としては、上記シェル部の構成材料であるInSbよりも高いものであれば特に限定されるものではないが、上記コア部の構成材料の融点と、上記InSbの融点との差が、50℃以上、中でも100℃以上、特に200℃以上であることが好ましい。コア部とシェル部との融点に差があるコアシェル型ナノ粒子を圧縮成形して、後述するコアシェル構造体を作製する場合に、シェル部の構成材料が溶融し、隣り合うコアシェル型ナノ粒子のシェル部同士が結合する一方、コア部の構成材料は溶融せず、それぞれ独立したコア部を維持することができ、その結果、熱電変換性能に優れた熱電変換材料を得ることができるからである。また、具体的なコア部の構成材料の融点としては、550℃〜5000℃の範囲内、中でも1050℃〜4000℃の範囲内であることが好ましい。なお、上記コア部を構成するコア部微粒子のサイズが1μm以下の場合、コア部微粒子の融点が、その材料の本来有する融点よりも低くなる場合があるが、本発明で示す融点は、材料が本来有する融点を示すものとする。
【0031】
このようなコア部の構成材料としては、例えば、SiO、Al、ZnO等の無機酸化物、MnS、CdS、ZnS等の無機硫化物、BN、Si等の無機窒化物、Au、Cu、U、Mn、Sm、Be、Gd、Tb、Si、Ni、Co、Dy、Y、Er、Fe、Sc、Pd、Ti、Th、Pt、Zr、Cr、V、Rh、Hf、B、Ru、Ir、Nb、Mo、Os、Ta、Re、W等の単一元素からなる材料、上記元素を少なくとも一つ以上含む合金、NiSi、FeSi、TiSi等の無機ケイ化物、SiC、MoC等の無機炭化物、カーボン、CB等が挙げられる。
【0032】
また、上記コア部微粒子の平均粒径としては、コアシェル型ナノ粒子の用途によって異なるものであるが、本発明のコアシェル型ナノ粒子を、後述する「C.熱電変換材料」に記載のコアシェル構造体に用いる場合は、フォノンを効果的に散乱することができる大きさであることが好ましい。具体的には0.3nm〜100nmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは1nm〜70nmの範囲内、特に2nm〜50nmの範囲内であることが好ましい。
【0033】
なお、上記平均粒径は、本発明のコアシェル型ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)または透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて得られた画像から、コア部が20個以上存在していることが確認される領域を選択し、この領域中の全てのコア部について粒径を測定し、平均値を求めることにより得られる値とする。ただし、焦点がぼやけているコア部については測定対象から除外するものとする。
【0034】
3.コアシェル型ナノ粒子
本発明のコアシェル型ナノ粒子は、上記シェル部と上記コア部とを有するものである。中でも、本発明においては、上記コア部と上記シェル部とが相分離していることが好ましい。コア部およびシェル部に異なった機能を付与する場合、これらが相分離していれば、それぞれの機能をより効率的に発揮することができるからである。例えば、後述する熱電変換材料のコアシェル構造体に、本発明のコアシェル型ナノ粒子を用いた場合、コア部はフォノンを散乱させる機能を有し、シェル部は電子を伝導する機能を有するのであるが、コア部とシェル部とが相分離していれば、各機能をより効果的に発揮することができる。
【0035】
なお、本発明において、コア部とシェル部とが相分離しているか否かの判断は、走査透過型電子顕微鏡(STEM)の測定により得られる元素の二次元マッピングの結果から判断することができる。具体的には、コアシェル型ナノ粒子を、STEMを用いて測定し、得られる二次元マッピングの結果から、コア部の構成元素を10%以上有する領域が存在する状態を、本発明における「コア部とシェル部とが相分離している」状態であると定義する。尚、上記パーセンテージは、コア部の構成元素において、ナノ粒子の中心付近における強度からバックグラウンド強度を引いた値を100%に標準化した場合のものとする。ただし、上記標準化およびパーセンテージの算出は、コア部の構成元素において、バックグラウンドに対してナノ粒子の中心付近で強度に有意差がある場合に限られる。また、本発明において、上記コア部は通常、結晶またはアモルファスの状態であるが、上記コア部が結晶状態である場合は、X線回折分析(XRD)による分析が可能である。従って、本発明においては、XRD測定によってコア部の構成材料のピークが検出される場合は、コア部とシェル部とは相分離しているものとすることができる。
【0036】
また、本発明のコアシェル型ナノ粒子の平均粒径としては、特に限定されるものではないが、例えば2nm〜200nmの範囲内、中でも3nm〜100nmの範囲内、特に5nm〜50nmの範囲内であることが好ましい。平均粒径が小さすぎるものは、製造が困難であるからである。一方、平均粒径が大きすぎると、単位重量当たりの表面積(比表面積)が小さくなり、所望の効果が得られない可能性があるからである。
【0037】
なお、上記平均粒径は、コアシェル型ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)または透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて得られた画像から、コアシェル型ナノ粒子が20個以上存在していることが確認される領域を選択し、この領域中の全てのコアシェル型ナノ粒子について粒径を測定し、平均値を求めることにより得られる値とする。ただし、焦点がぼやけているコアシェル型ナノ粒子については測定対象から除外するものとする。また、コアシェル型ナノ粒子が球状ではなく例えば棒状のような形状である場合は、個々の粒子に対して最大径および最小径を測定し、その平均値を平均粒径とする。
【0038】
また、本発明に用いられるコアシェル型ナノ粒子中のコア部の粒径とシェル部の厚みとの比率としては、コアシェル型ナノ粒子の用途によって異なるものであるが、本発明のコアシェル型ナノ粒子を、後述する「C.熱電変換材料」に記載のコアシェル構造体に用いる場合は、電子および熱を伝導することができ、コア部によりフォノンを散乱させることができるような比率であることが好ましい。具体的には、コア部の粒径とシェル部の厚みとの比率が、1:10〜10:1の範囲内であることが好ましく、より好ましくは1:7〜7:1の範囲内、特に1:5〜5:1の範囲内であることが好ましい。コア部とシェル部との比率が上記範囲内であることにより、効果的に熱伝導率を減少させることができるからである。
【0039】
また、本発明のコアシェル型ナノ粒子は、独立分散していることが好ましい。なお、上記コアシェル型ナノ粒子が独立分散していることは、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察することにより確認することができる。例えば図2のTEM写真に示すように、粒子が重なっていない状態であれば、コアシェル型ナノ粒子は独立分散しているという。一方、コアシェル型ナノ粒子ではないが、例えばAdv. Mater., 13, p.145-148 (2001) Fig. 2. a〜b のTEM写真、またはCan. J. Chem., 79, p.127-130 (2001) のFig. 2. a〜c のTEM写真に示すように、粒子が重なっている状態であれば、粒子は二次凝集しているという。
【0040】
また、本発明のコアシェル型ナノ粒子は、分散媒中に分散可能であることが好ましい。ここで、「分散媒中に分散可能」であるとは、コアシェル型ナノ粒子自体が微粒子として存在するものであり、所定の分散媒中に分散可能であることをいう。なお、上記分散媒については、「B.コアシェル型ナノ粒子分散液」に記載するものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0041】
また、本発明のコアシェル型ナノ粒子は、1分子中に親水基を1残基以上および疎水基を有する有機化合物が表面に付着していることが好ましい。コアシェル型ナノ粒子の表面に所定の有機化合物が付着していることにより、コアシェル型ナノ粒子の凝集を防ぐことが可能となるからである。なお、コアシェル型ナノ粒子の表面とは、コアシェル型ナノ粒子のシェル部の表面を意味するものである。また、上述したように、本発明においては、シェル部の構成材料としてInSbが用いられる。
【0042】
一方、コアシェル型ナノ粒子が表面に所定の有機化合物が付着していないものである場合は、分散媒中に分散させる際に所定の有機化合物を添加することで、コアシェル型ナノ粒子の凝集を防ぐことが可能となる。
【0043】
本発明における、コアシェル型ナノ粒子の表面に付着している所定の有機化合物としては、1分子中に親水基を1残基以上および疎水基を有するものであれば特に限定されるものではないが、疎水基の片末端もしくは両末端に親水基が結合している有機化合物であることが好ましい。
【0044】
疎水基としては、例えば炭素数が4以上の脂肪族炭化水素基;フェニル基およびナフチル基等の芳香族炭化水素基;ピリジル基、ピロール基およびチオフェン基等の複素環式基;などが挙げられる。また、疎水基はこれらの基の残基であってもよい。
【0045】
上記の中でも、疎水性基としては、脂肪族炭化水素基であることが好ましい。脂肪族炭化水素基は、鎖状であっても環状であってもよいが、鎖状であることが好ましい。また、鎖状の脂肪族炭化水素基は、直鎖であっても分岐していてもよい。さらに、脂肪族炭化水素基は、不飽和であっても飽和であってもよい。
【0046】
このような鎖状の脂肪族炭化水素基の炭素数としては、通常分岐している炭素を除いた直鎖の炭素数が6〜30の範囲内であり、より好ましくは8〜20の範囲内である。
【0047】
また、親水基としては、コアシェル型ナノ粒子表面に付着可能な官能基であれば特に限定されるものではなく、例えばカルボキシル基、アミノ基、水酸基、チオール基、アルデヒド基、スルホン酸基、アミド基、スルホンアミド基、リン酸基、ホスフィン酸基、P=O基などが挙げられる。これらの中でも、親水基がカルボキシル基、アミノ基または水酸基であることが好ましい。一般に、カルボキシル基、アミノ基または水酸基は金属との親和性が高いからである。また、これらの親水性基を有する有機化合物は入手しやすいからである。
【0048】
上記所定の有機化合物として具体的には、分散媒中でコアシェル型ナノ粒子のシェル部の構成材料であるInSbに配位して安定化する有機化合物が用いられる。このような有機化合物としては、例えばオクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン等のアミノアルカン類;パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等の高級脂肪酸;高級アルコール類;などを好ましいものとして挙げることができる。上述したように、所定の有機化合物の親水基がアミノ基、カルボキシル基または水酸基であることが好ましいからである。
【0049】
高級アルコール類としては、1分子中に長鎖アルキル基を1残基以上および水酸基を2残基以上有するものであることが好ましく、例えば長鎖アルキル−1,2−ジオール等が挙げられる。後述する「4.コアシェル型ナノ粒子の製造方法」に記載するように、ホットソープ法によりコアシェル型ナノ粒子を合成する際に、シェル部前駆体としてアンチモンアルコキシドを用いた場合は、長鎖アルキル−1,2−ジオール等を用いることにより、アンチモンアルコキシドを安定化させることができるからである。
【0050】
上述した有機化合物は、コアシェル型ナノ粒子表面に単独で付着していてもよく、複数種が付着していてもよい。また、上記の有機化合物のコアシェル型ナノ粒子への付着量としては特に限定されるものでない。
【0051】
また、上記所定の有機化合物は、コアシェル型ナノ粒子の表面に付着していればよく、ここでいう「付着」には、所定の有機化合物がコアシェル型ナノ粒子の表面に吸着している場合も配位している場合も含まれる。
【0052】
なお、上記コアシェル型ナノ粒子表面に所定の有機化合物が付着していることは、あらかじめコアシェル型ナノ粒子が分散媒に分散することを確認し、そのコアシェル型ナノ粒子に関して、表面分析方法の一つであるX線光電子分光分析(XPS)を用いて、炭素および親水基に相当する元素が含まれていることを調べることにより確認することができる。
【0053】
本発明のコアシェル型ナノ粒子の用途としては、特に限定されるものではないが、例えば、熱電変換素子、ホール素子、光導電性素子等の半導体用途、非線形光学素子等を挙げることができる。
【0054】
4.コアシェル型ナノ粒子の製造方法
次に、コアシェル型ナノ粒子の製造方法について説明する。コアシェル型ナノ粒子の製造方法は、上述したコアシェル型ナノ粒子を得ることができる方法であれば、特に限定されるものではないが、中でも、コア部をシェル部で被覆する際(シェル部調整工程)のシェル部の形成方法として、液相法を用いることが好ましい。液相法は、構成成分が2種類以上の化合物を形成する場合に化学的に組成を均一にできるという利点があるからである。この液相法としては、共沈法、逆ミセル法、ホットソープ法を挙げることができるが、本発明においてはこれらの中でもホットソープ法を用いることが好ましい。
【0055】
ここで、ホットソープ法とは、目的とする化合物の前駆体の少なくとも1種を高温に加熱された分散剤中で熱分解させた結果、開始する反応により結晶の核生成と結晶成長とを進行させる方法である。この結晶の核生成および結晶成長の過程の反応速度を制御する目的で、目的とする化合物の構成元素に適切な配位力のある分散剤が、液相媒体を構成する必須成分として使用される。この分散剤が結晶に配位して安定化する状況が、石鹸分子が油滴を水中で安定化する状況に似ているため、この反応はホットソープ(Hot soap)法と呼ばれる。
【0056】
本発明においては、このようなホットソープ法を用いることにより、コア部を核として、コア部の周囲にシェル部を成長させることができるので、コア部をシェル部で均一に被覆することができるという利点を有する。
以下、ホットソープ法を用いたコアシェル型ナノ粒子の製造方法について説明する。
【0057】
本発明において、ホットソープ法を用いた熱電変換材料の製造方法は、InSbよりも融点の高い材料を用いてコア部を形成するコア部調製工程と、ホットソープ法により上記コア部をInSbで被覆しシェル部を形成するシェル部調製工程と、を有するものである。以下、このようなコアシェル型ナノ粒子の製造方法における各工程について説明する。
【0058】
(1)コア部調製工程
本発明におけるコア部調製工程は、シェル部の構成材料であるInSbよりも融点の高い材料を用いてコア部(コア部微粒子)を調製する工程である。
本発明に用いられるコア部微粒子の形成方法としては、上述した「2.コア部」に記載したようなコア部微粒子を形成することができる方法であれば特に限定されるものではないが、シェル部の形成方法と同様に、液相法を用いることが好ましく、中でもホットソープ法を用いることが好ましい。ホットソープ法を用いることにより、粒径分布の狭いコア部微粒子を得ることができるからである。また、ホットソープ法を用いて得られたコア部微粒子は、後述するシェル部調製工程において、シェル部の構成元素を含むシェル部前駆体および分散剤中での分散性が良好であるからである。
【0059】
このようなホットソープ法を用いてコア部微粒子を形成するには、分散剤を加熱し、この加熱した分散剤に上記コア部の構成元素を含むコア部前駆体を注入する方法を用いることができる。
以下、このようなホットソープ法を用いたコア部微粒子の形成方法について説明する。
【0060】
本発明に用いられるコア部前駆体としては、上述したコア部の構成元素を含むものであり、上記コア部微粒子を形成することが可能なものであれば特に限定されるものではない。例えばMo微粒子を形成するには、コア部前駆体としてはMoを含む化合物を用いればよく、具体的にはChem. Mater. , 13, p1008-1014 (2001)に記載のものを使用することができる。例えば、モリブデンヘキサカルボニル、モリブデニルアセチルアセトナート等が用いられる。また、例えばZnS微粒子を形成するには、コア部前駆体としてはZnSを含む化合物を用いればよく、具体的にはChem. Commun., p1849-1850 (1998) に記載のものあるいはその類似物を使用することができる。例えばジエチルジチオカルバミックアシッドジンクソルト、bis−(エチルヘキシル)ジチオカルバミックアシッドジンクソルト等が用いられる。また、コア部前駆体が2種以上用いられる場合、その混合比としては、例えば目的とする化合物の化学量論比に基づいて設定すればよい。
【0061】
また、上記コア部前駆体は、製造操作上の簡便性の理由で液状であることが好ましい。このコア部前駆体自身が常温で液体であればそのまま使用することができるが、必要に応じて適当な有機溶媒に溶解または分散しても用いてもよい。このような有機溶媒としては、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン等のアルカン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン等の芳香族炭化水素、ジフェニルエーテル、ジ(n−オクチル)エーテル等のエーテル、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン系炭化水素、n−ヘキシルアミン、n−オクチルアミン、トリ(n−ヘキシル)アミン、トリ(n−オクチル)アミン等のアミン類、あるいは後述する分散剤に用いられる化合物等が挙げられる。これらの中でも、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン等のアルカン類、あるいはトリブチルホスフィン、トリヘキシルホスフィン、トリオクチルホスフィン等のトリアルキルホスフィン類、エーテル類が好ましく用いられる。
【0062】
さらに、上記コア部前駆体の少なくとも1種が気体である場合、前記有機溶媒もしくは分散剤にバブリング等で溶解させて導入するか、その他のコア部前駆体を注入した反応液相中に、この気体を直接導入することもできる。
【0063】
本発明に用いられる分散剤としては、高温液相において微結晶に配位して安定化する物質であれば特に限定されるものではないが、例えばトリブチルホスフィン、トリヘキシルホスフィン、トリオクチルホスフィン等のトリアルキルホスフィン類、トリブチルホスフィンオキシド、トリヘキシルホスフィンオキシド、トリオクチルホスフィンオキシド、トリデシルホスフィンオキシド等の有機リン化合物、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン等のω−アミノアルカン類、トリ(n−ヘキシル)アミン、トリ(n−オクチル)アミン等の第3級アミン類、ピリジン、ルチジン、コリジン、キノリン類の含窒素芳香族化合物等の有機窒素化合物、ジブチルスルフィド等のジアルキルスルフィド類、ジメチルスルホキシドやジブチルスルホキシド等のジアルキルスルホキシド類、チオフェン等の含硫黄芳香族化合物等の有機硫黄化合物、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等の高級脂肪酸、1-adamantanecarboxylic acid等が挙げられる。これらの中でも、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン等のトリアルキルホスフィン類、トリブチルホスフィンオキシドやトリオクチルホスフィンオキシド等のトリアルキルホスフィンオキシド類、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン等の炭素数12以上のω−アミノアルカン類等の分子構造中に窒素原子またはリン原子を含む化合物が好ましく用いられる。より好ましいものとしては、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン等のトリアルキルホスフィン類、トリブチルホスフィンオキシドやトリオクチルホスフィンオキシド等のトリアルキルホスフィンオキシド類等の炭素−リン単結合を有する化合物が挙げられる。特に、トリオクチルホスフィンオキシド等のトリアルキルホスフィンオキシド類は好適に用いられる。これらの分散剤は、単独で用いても、必要に応じ複数種を混合して使用してもよい。
【0064】
さらに、上記分散剤は、適当な有機溶剤(例えばトルエン、キシレン、ナフタレン等の芳香族炭化水素、オクタン、デカン、ドデカン、オクタデカン等の長鎖アルカン類、ジフェニルエーテル、ジ(n−オクチル)エーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ハロゲン系炭化水素等)で希釈して使用してもよい。
【0065】
上記分散剤の加熱温度としては、上記分散剤およびコア部前駆体が溶融する温度であれば特に限定されるものではなく、圧力条件等によっても異なるものであるが、通常は150℃以上とする。また、この加熱温度は比較的高い方が好ましい。高温に設定することにより分散剤に注入されたコア部前駆体が一斉に分解することで、多数の核が一気に生成するために、比較的粒径の小さいコア部微粒子が得られやすくなるからである。
【0066】
また、この加熱した分散剤への上記コア部前駆体の注入方法としては、コア部微粒子を形成することができるものであれば特に限定されるものではない。また、コア部前駆体の注入は、比較的粒径の小さいコア部微粒子を得るには1回でさらに可能なら短時間で行うことが望ましい。粒径を大きくしたい場合には、注入を複数回行っても良く連続して行っても良い。
【0067】
上記コア部前駆体を加熱した分散剤に注入した後の、コア部微粒子を形成する際の反応温度としては、上記分散剤およびコア部前駆体が溶融または有機溶媒に溶解する温度であり、かつ、結晶成長が起こる温度であれば特に限定されるものではなく、圧力条件等によっても異なるものであるが、通常は150℃以上とする。
【0068】
上述したようにコア部前駆体を分散剤に注入することによりコア部微粒子を形成した後は、通常、このコア部微粒子を上記分散剤と分離する。この分離方法としては、例えば遠心分離、浮上分離、泡沫分離等の沈降分離法、ケークろ過、清澄ろ過等のろ過法、圧搾法が挙げられる。本発明においては、上記の中でも遠心分離が好ましく用いられる。ただし、分離操作後に得られたコア部微粒子は、少量の分散剤との混合物として得られる場合が多い。
【0069】
上述した分離の際に、上記コア部微粒子の大きさが極めて小さいためにコア部微粒子の沈降が困難である場合は、沈降性を向上させるために、アセトニトリル、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、第2ブチルアルコール、第3ブチルアルコール等の炭素数1〜4のアルコール類、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アクロレイン、クロトンアルデヒド等の炭素数1〜4のアルデヒド類、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等の炭素数3〜5のケトン類、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の炭素数2〜4のエーテル類、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ジメチルホルムアミド等の炭素数1〜4の有機含窒素化合物などの添加剤を使用することができる。これらの中でも、水、またはメタノール、エタノール等のアルコール類が好ましく用いられる。上述した添加剤は、単独で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0070】
上記コア部微粒子の形成は、通常、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性ガスの雰囲気下で行われる。
【0071】
(2)シェル部調製工程
次に、本発明におけるシェル部調製工程について説明する。本発明におけるシェル部調製工程は、ホットソープ法により上記コア部をInSbで被覆しシェル部を形成する工程である。具体的には、分散剤を加熱し、この加熱した分散剤に上記コア部微粒子、およびシェル部の構成元素を含むシェル部前駆体を注入して、コア部をシェル部で被覆して、コアシェル型ナノ粒子を形成する工程である。
【0072】
本発明に用いられるシェル部前駆体としては、上述したシェル部の構成元素を含むものであり、上記コア部微粒子を被覆することが可能なものであれば特に限定されるものではない。本発明においては、InSbでコア部微粒子を被覆するため、シェル部前駆体としてはInを含む化合物とSbを含む化合物とを用いればよい。このInを含む化合物としては、Inを含む有機金属化合物を用いることができ、例えば、インジウムアセチルアセトナート、酢酸インジウム、シクロペンタジエニルインジウム、インジウムアルコキシド、塩化インジウム等が挙げられる。また、Sbを含む化合物としては、Sbを含む有機金属化合物を用いることができ、例えばSbアルコキシド、酢酸アンチモン、トリフェニルアンチモン、トリメチルシリルアンチモン等が挙げられる。また、このようにシェル部前駆体が2種以上用いられる場合、その混合比としては、例えば目的とする化合物の化学量論比に基づいて設定すればよい。
【0073】
また、上記シェル部前駆体は、製造操作上の簡便性の理由で液状であることが好ましい。このシェル部前駆体自身が常温で液体であればそのまま使用することができるが、必要に応じて適当な有機溶媒に溶解または分散しても用いてもよい。このような有機溶媒としては、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン等のアルカン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン等の芳香族炭化水素、あるいは上述した分散剤に用いられる化合物等が挙げられる。これらの中でも、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン等のアルカン類、あるいはトリブチルホスフィン、トリヘキシルホスフィン、トリオクチルホスフィン等のトリアルキルホスフィン類、エーテル類が好ましく用いられる。
【0074】
なお、分散剤については、上記コア部調製工程の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0075】
上記分散剤の加熱温度としては、上記分散剤およびシェル部前駆体が溶融または有機溶媒に溶解する温度であれば特に限定されるものではなく、圧力条件等によっても異なるものであるが、通常は60℃以上とする。
【0076】
また、この加熱した分散剤への上記コア部微粒子およびシェル部前駆体の注入方法としては、コア部をシェル部で被覆することができる方法であれば特に限定されるものではない。例えばコア部微粒子およびシェル部前駆体を同時に注入してもよく、コア部微粒子を先に注入するものでもよいが、本発明においては、コア部微粒子を注入した後に、シェル部前駆体を徐々に注入することが好ましい。シェル部前駆体を先に注入したり、一度に大量に注入したりすると、シェル部前駆体による核生成が起こり、シェル部のみから構成される微粒子が形成される可能性があるからである。
【0077】
上記コア部微粒子およびシェル部前駆体を加熱した分散剤に注入した後の、コア部をシェル部で被覆する際の反応温度としては、上記分散剤およびシェル部前駆体が溶融または有機溶媒に溶解する温度であり、かつ、シェル部の構成材料の結晶成長が起こる温度であれば特に限定されるものではなく、圧力条件等によっても異なるものであるが、通常は100℃以上とする。
【0078】
上述したようにコア部をシェル部で被覆することによりコアシェル型ナノ粒子が形成された後は、通常、このコアシェル型ナノ粒子を上記分散剤と分離する。この分離方法としては、例えば遠心分離、浮上分離、泡沫分離等の沈降分離法、ケークろ過、清澄ろ過等のろ過法、圧搾法が挙げられる。本発明においては、上記の中でも遠心分離が好ましく用いられる。
【0079】
上述した分離の際に、上記コアシェル型ナノ粒子の大きさが極めて小さいためにコアシェル型ナノ粒子の沈降が困難である場合は、沈降性を向上させるために添加剤を使用することができる。なお、添加剤については、上記コア部調製工程の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0080】
また、本工程は、通常、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性ガスの雰囲気下で行われる。
【0081】
また本発明において、粒径の揃ったコアシェル型ナノ粒子を得たい場合には、分級を行ってもよい。コアシェル型ナノ粒子を粒径の大きさによって分級する方法としては、例えばコアシェル型ナノ粒子に対して親和性の高い親溶媒と親和性の低い貧溶媒との混合溶媒を用いて、親溶媒と貧溶媒との比率を変化させることにより、沈殿するコアシェル型ナノ粒子の粒径を制御することができる。これは、親溶媒/貧溶媒の比率が大きいほど粒径の大きいコアシェル型ナノ粒子が沈殿し、上記の比率が小さくなると粒径のより小さいコアシェル型ナノ粒子も合わせて沈殿する現象を利用するものである。具体的には、まず親溶媒にコアシェル型ナノ粒子を分散させた分散液に、少量の貧溶媒を添加し、粒径の大きいコアシェル型ナノ粒子のみを沈殿させる。この沈殿を遠心分離等で分離し、粒径の大きいコアシェル型ナノ粒子を得る。次に、遠心分離後の分散液にさらに貧溶媒を添加し、先に沈殿させたコアシェル型ナノ粒子より粒径の小さいコアシェル型ナノ粒子を沈殿させる。この沈殿を遠心分離等で分離し、先に沈殿させたコアシェル型ナノ粒子より粒径の小さいコアシェル型ナノ粒子を得る。このように貧溶媒の添加と遠心分離の操作とを繰り返すことで、分級を行うことができる。
【0082】
分級に用いられる親溶媒としては、「B.コアシェル型ナノ粒子分散液」の項に記載する分散媒が挙げられる。また、貧溶媒としては、上述したコアシェル型ナノ粒子の沈降性を向上させるために用いる添加剤が挙げられる。
【0083】
さらに本発明においては、コアシェル型ナノ粒子の表面に付着している分散剤を他の有機化合物に置換することができる。この場合には、多量の置換したい他の有機化合物とコアシェル型ナノ粒子を不活性ガス雰囲気下で混合しながら加熱することで、はじめにコアシェル型ナノ粒子の表面に付着していた分散剤が、多量に存在する他の有機化合物に置換される。置換したい他の有機化合物の添加量は、コアシェル型ナノ粒子に対して重量比で5倍以上であればよい。また、加熱時間は通常1〜48時間である。
【0084】
また本発明において、表面に分散剤が付着しているコアシェル型ナノ粒子を加熱することで、分散剤を除去し、表面に分散剤の付着していないコアシェル型ナノ粒子を得ることもできる。この場合、コアシェル型ナノ粒子を分散媒に分散させるには、分散剤を添加すればよい。これにより、コアシェル型ナノ粒子は分散媒中で独立分散した状態となる。
【0085】
さらに本発明において、微量の元素がドープされたInSbをシェル部とするコアシェル型ナノ粒子を作製する場合には、上記分散剤を加熱する際に、分散剤に微量の所定の元素もしくはその元素を含む化合物を添加する。あるいは、上記前駆体に微量の所定の元素もしくはその元素を含む化合物を添加してもよい。
【0086】
この微量の元素がドープされたInSbをシェル部とするコアシェル型ナノ粒子は、元素の種類によってn型半導体形成材料にもp型半導体形成材料にもなるため、半導体形成材料として有用である。添加される所定の元素を含む化合物としては、ドープされる元素の種類によって異なるが、n型半導体形成材料となるコアシェル型ナノ粒子を作製する場合は、例えばSeもしくはTeのトリブチルホスフィン溶液、ジイソプロピルテルライド、テルルアルコキシド等が用いられる。一方、p型半導体形成材料となるコアシェル型ナノ粒子を作製する場合、添加される所定の元素を含む化合物としては、例えば酢酸亜鉛、コバルトカルボニル、塩化カドニウム等が用いられる。
【0087】
B.コアシェル型ナノ粒子分散液
次に、本発明のコアシェル型ナノ粒子分散液について説明する。本発明のコアシェル型ナノ粒子分散液は、コアシェル型ナノ粒子と分散媒とを含有することを特徴とするものである。
【0088】
本発明においては、上記コアシェル型ナノ粒子を分散媒に分散させコアシェル型ナノ粒子分散液とすることによって、コアシェル型ナノ粒子単独の場合に比べて、取扱性や保存性を向上させることができる。
以下、本発明のコアシェル型ナノ粒子分散液の各構成について説明する。
【0089】
1.コアシェル型ナノ粒子
本発明に用いられるコアシェル型ナノ粒子は、上記「A.コアシェル型ナノ粒子」の項に記載したものと同様のものを用いることができる。中でも、本発明においては、コアシェル型ナノ粒子が、表面に1分子中に親水基を1残基以上および疎水基を有する有機化合物が付着したものであることが好ましい。このような有機化合物が表面に付着していることにより、コアシェル型ナノ粒子の凝集を効果的に妨げることができるからである。
【0090】
一方、コアシェル型ナノ粒子の表面に所定の有機化合物が付着していない場合は、コアシェル型ナノ粒子分散液を使用する際に、所定の有機化合物を添加することで、コアシェル型ナノ粒子の凝集を防ぐことが可能となる。
【0091】
また、上記コアシェル型ナノ粒子のコアシェル型ナノ粒子分散液中の含有量としては、特に限定されるものではないが、コアシェル型ナノ粒子の独立分散状態を保つことが可能な量であることが好ましい。具体的には、コアシェル型ナノ粒子の含有量がコアシェル型ナノ粒子分散液中で10重量%以下であることが好ましく、より好ましくは5重量%以下、最も好ましくは1重量%以下である。また、下限は0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上である。
【0092】
2.分散媒
次に、本発明に用いられる分散媒について説明する。本発明に用いられる分散媒は、上記コアシェル型ナノ粒子を分散させることができるものであれば、特に限定されるものではないが、上記コアシェル型ナノ粒子が表面に所定の有機化合物が付着したものである場合、あるいはコアシェル型ナノ粒子分散液に所定の有機化合物が添加されている場合は、この所定の有機化合物の種類に応じて適宜選択することが好ましい。
【0093】
例えば、所定の有機化合物が1分子中に親水基および疎水基を有し、疎水基の片末端に親水基が結合したものである場合、分散媒は極性が低いことが好ましい。これは、有機化合物の親水基がコアシェル型ナノ粒子と相互作用し、有機化合物は、親水基を内側(コアシェル型ナノ粒子側)に、疎水基を外側にしてコアシェル型ナノ粒子に付着しているものと想定されるからである。このため、コアシェル型ナノ粒子の表面は、疎水基で覆われている状態にある。よって、極性の低い分散媒であれば、疎水基と相互作用しやすく、疎水基で覆われたコアシェル型ナノ粒子が独立分散しやすいのである。
【0094】
極性が低い分散媒としては、非極性溶媒であれば特に限定されるものではなく、例えば「溶剤ハンドブック」(浅原照三他編、講談社)p.34に記載の溶解パラメーター:δが10未満の溶媒が好ましい。具体的には、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ジクロロメタン、四塩化炭素、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、塩化プロピル、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨウ化メチル等のハロゲン化炭化水素;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;酢酸エチル、安息香酸メチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;トリエチルアミン、プロピルアミン等のアミン類;硫化ジエチル;またはこれらの混合物等が挙げられる。これらの中でも、トルエン、クロロホルム、へキサン等が好ましく用いられる。
【0095】
また例えば、所定の有機化合物が1分子中に親水基および疎水基を有し、疎水基の両末端に親水基が結合したものである場合、分散媒は極性が高いことが好ましい。これは、有機化合物の片側の親水基がコアシェル型ナノ粒子と相互作用し、有機化合物は、片側の親水基を内側(コアシェル型ナノ粒子側)に、疎水基を介してもう片側の親水基を外側にしてコアシェル型ナノ粒子に付着しているものと想定されるからである。このため、コアシェル型ナノ粒子の表面は、親水基で覆われている状態にある。よって、極性の高い分散媒であれば、親水基と相互作用しやすく、親水基で覆われたコアシェル型ナノ粒子が独立分散しやすいのである。
【0096】
極性が高い分散媒としては、極性溶媒であれば特に限定されるものではなく、例えば「溶剤ハンドブック」(浅原照三他編、講談社)p.34に記載の溶解パラメーター:δが10以上の溶媒が好ましい。具体的には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert-ブチルアルコール、フェノール、1,2−エタンジオール等のアルコール類;ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;ニトロメタン、ニトロベンゼン等のニトロ基含有化合物;アセトニトリル、1,3−ジシアノプロパン、ベンゾニトリル等のニトリル基含有化合物;ピリジン;炭酸プロピレン;2−アミノエタノール;水;酢酸;またはこれらの混合物等が挙げられる。これらの中でも、N,N−ジメチルホルムアミド、2−プロパノール、アセトニトリルが好ましく用いられる。
【0097】
3.分散性向上剤
本発明のコアシェル型ナノ粒子分散液は、コアシェル型ナノ粒子の分散性を向上させるために、分散性向上剤を含有していても良い。このような分散性向上剤としては、上記「A.コアシェル型ナノ粒子」の項に記載したアミノアルカン類、高級脂肪酸および高級アルコール類などを用いることができる。
【0098】
4.コアシェル型ナノ粒子分散液
本発明のコアシェル型ナノ粒子分散液は、上記コアシェル型ナノ粒子と、分散媒とを含有するものである。本発明のコアシェル型ナノ粒子分散液は、コアシェル型ナノ粒子と分散媒とを含有するものであれば特に限定されるものではなく、コアシェル型ナノ粒子が分散媒中に分散していてもよく沈降していてもよい。
【0099】
特に本発明においては、コアシェル型ナノ粒子が分散媒中で独立分散していることが好ましい。ここで、「コアシェル型ナノ粒子が分散媒中で独立分散している」とは、コアシェル型ナノ粒子分散液の使用温度において、コアシェル型ナノ粒子が分散媒中で1時間以上沈降しないことをいう。本発明においては、中でも6時間以上、特に12時間以上沈降しないことがより好ましい。なお、上記の時間は、コアシェル型ナノ粒子分散液を透明な容器に入れて水平な場所に静置し、目視で容器の底部に沈殿が認められるまでの時間を測定した値である。また、上記使用温度としては、例えば、コアシェル型ナノ粒子分散液を塗布したりパターニングしたりする場合は、通常0℃〜40℃の範囲内である。
【0100】
このようにコアシェル型ナノ粒子が分散媒中で独立分散しており、所定の時間沈降しないものであれば、例えば本発明のコアシェル型ナノ粒子分散液を塗布することにより半導体を形成する場合には、均一な塗膜を得ることができるという利点を有する。特に、インクジェット法や印刷法によって半導体をパターニングする場合に有利である。また、半導体をインクジェット法や印刷法によってパターニング可能であるので、従来のリソグラフィー法による場合と比較して、パターニングが容易となり、製造工程を簡略化することができる。
【0101】
また、本発明のコアシェル型ナノ粒子分散液のコアシェル型ナノ粒子が分散媒中で沈降したものである場合は、使用する直前に分散液でさらに希釈することによりコアシェル型ナノ粒子を分散媒中で独立分散させることができる。また、コアシェル型ナノ粒子分散液を使用する際に、所定の有機化合物を添加することで、コアシェル型ナノ粒子を分散媒中で独立分散させることが可能である。したがって、上述したコアシェル型ナノ粒子が分散媒中で独立分散したものと同様の効果を得ることができる。
【0102】
また、本発明のコアシェル型ナノ粒子分散液の用途としては、特に限定されるものではないが、例えば、熱電変換素子、ホール素子、光導電性素子等の半導体用途、非線形光学素子用途等を挙げることができる。
【0103】
C.熱電変換材料
次に、本発明の熱電変換材料について説明する。本発明の熱電変換材料は、複数のコア部と、上記コア部を被覆する結合シェル部とを有するコアシェル構造体で構成される熱電変換材料であって、上記複数のコア部は互いに独立し、上記結合シェル部は連続し、さらに、上記結合シェル部の構成材料がInSbであり、上記コア部の構成材料の融点が、上記結合シェル部の構成材料であるInSbよりも高いことを特徴とする。
【0104】
本発明においては、コアシェル構造体中で複数のコア部が互いに独立しており、細かく分散しているものであることから、電気および熱がコアシェル構造体を伝導する際に、このコア部によりフォノンが散乱されるので熱伝導率を小さくすることができ、熱電変換の性能を向上させることができる。また、本発明におけるコアシェル構造体は、例えば上記コアシェル型ナノ粒子を圧縮成型して作製することができるので、上述した量子ドット超格子の作製と比較して量産に適しているという利点を有する。
【0105】
次に、本発明の熱電変換材料について図面を参照しながら説明する。図3は、本発明の熱電変換材料を構成するコアシェル構造体の一例を示す概略断面図である。図3において、コアシェル構造体5は、複数のコア部1と、このコア部1を被覆する結合シェル部4とを有している。また、複数のコア部1は互いに独立しており、コアシェル構造体5中に分散して存在している。一方、結合シェル部4は独立しているものではなく連続しているものである。さらに、結合シェル部4の構成材料としてInSbが用いられ、コア部1の構成材料としてInSbよりも融点が高い材料が用いられたものである。
【0106】
なお、本発明において結合シェル部が連続しているとは、例えば図4(a)に示すような結合シェル部4の内部に界面が存在しない場合のほか、内部にある程度の界面が存在する場合も結合シェル部4を移動する電子の導電率が向上することから含むものであり、一部、不連続または独立している部分があっても本発明でいう「連続している」に含まれるものである。ここで、界面が存在するとは、例えば図4(b)に示すように隣接するコア部1を被覆する結合シェル部4同士が結合していなく、その間に界面aが存在する状態である。
【0107】
本発明においては、図3に示すように、コア部1はコアシェル構造体5中に細かく分散して存在しているものであることから、電気および熱がコアシェル構造体5を伝導する際に、このコア部1によりフォノンが散乱され、矢印Pのように移動するので、熱が伝導しにくくなり熱伝導率を小さくすることができる。一方、電子は、結合シェル部4が連続していることによりほとんど散乱されることなく、矢印Eのように結合シェル部4内を移動することができるので、導電率が大幅に減少することはない。また、電子やフォノンの通り道である結合シェル部4の厚みが量子効果の発現する100nm以下の場合には、量子効果により性能指数Zが向上する場合がある。したがって本発明においては、熱電変換の性能を向上させることができる。
【0108】
また、本発明におけるコアシェル構造体は、後述するように、上記「A.コアシェル型ナノ粒子」に記載したコアシェル型ナノ粒子を圧縮成型して作製することができるので、量子ドット超格子の作製と比較して量産に適しているという利点を有する。
【0109】
また、本発明におけるコアシェル構造体が、例えば、上記コアシェル型ナノ粒子を圧縮成型して作製される場合、コアシェル型ナノ粒子のシェル部が融着、結合してなるものが、本発明における結合シェル部となる。
以下、このようなコアシェル構造体について説明する。
【0110】
本発明に用いられるコアシェル構造体は、複数のコア部と、このコア部を被覆する結合シェル部とを有するものである。また、複数のコア部は互いに独立し、結合シェル部は連続しているものであり、さらに、結合シェル部の構成材料としてInSbが用いられ、コア部の構成材料としてInSbよりも融点が高い材料が用いられたものである。
【0111】
1.結合シェル部
本発明における結合シェル部は、後述するコア部を被覆しているものである。また、本発明における結合シェル部は、コアシェル構造体中で連続しているものであり、上述したように結合シェル部の内部の界面は少ないことが好ましく、内部に界面が存在しないことが特に好ましい。
【0112】
また、本発明において、上記結合シェル部の構成材料として用いられる「InSb」は、InSbのみならず、他の元素をドーピングしたInSbも含むものである。具体的には「A.コアシェル型ナノ粒子」に記載したシェル部の構成材料と同様のものを挙げることができるので、ここでの説明は省略する。
【0113】
また、本発明において、結合シェル部のコア部を覆っている部分の厚みとしては、電子およびフォノンを伝導させることができ、かつ、量子効果を発現することができる厚みであれば特に限定されるものではないが、具体的には上記「A.コアシェル型ナノ粒子」に記載した「シェル部の厚み」と同様であるので、ここでの説明は省略する。なお、上記結合シェル部のコア部を覆っている部分の厚みとは、例えば図3のn´で示される厚みをいう。
【0114】
2.コア部
次に、本発明におけるコア部について説明する。本発明におけるコア部は、上記結合シェル部に被覆されるものであり、かつ、コアシェル構造体中で互いに独立しているものである。さらに、本発明においては、コア部の構成材料の融点は、上記結合シェル部の構成材料であるInSbよりも融点が高いものである。
【0115】
本発明におけるコア部は、コアシェル構造体中で互いに独立しているものであればよいが、中でも均一に分散していることが好ましい。コア部がコアシェル構造体中に均一に分散していることにより、フォノンを効率よく散乱させることができ、効果的に熱伝導率を減少させることができるからである。
【0116】
本発明に用いられるコア部の構成材料は、「A.コアシェル型ナノ粒子」に記載したコア部の構成材料と同様の材料を用いることができる。中でも、本発明においては、上記コア部の構成材料が、上記シェル部の構成材料であるInSbに対して界面を形成することが可能である材料であることが好ましい。
【0117】
また、上記コア部を形成するコア部微粒子の平均粒径としては、フォノンを効果的に散乱することができる大きさであれば特に限定されるものではないが、具体的には0.3nm〜100nmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは1nm〜70nmの範囲内、特に2nm〜50nmの範囲内であることが好ましい。上記平均粒径が大きすぎると、コアシェル構造体の形成時に、例えば図5(a)に示すようにコアシェル型ナノ粒子3を隙間なく配列してもコアシェル型ナノ粒子3間に生じる空間bが大きくなり、圧縮成型する際にこの空間bにシェル部2の構成材料が流動し、例えば図5(b)に示すようにコア部1がシェル部2(結合シェル部4)に覆われていない部分cが生じ、コアシェル構造を維持できなくなり、シェルの厚みが極端に薄い部分や極端に熱い部分を生じる可能性があるからである。また、平均粒径が上記範囲内より小さい微粒子は、製造が困難であるからである。
【0118】
また、上記コア部微粒子の平均粒径の標準偏差は、20%以下であることが好ましく、より好ましくは10%以下である。上記標準偏差が大きすぎると、コアシェル型ナノ粒子の圧縮成型前の段階で、上述したようにコアシェル型ナノ粒子間に大きな空間が生じる可能性があるからである。
【0119】
3.コアシェル構造体
本発明に用いられるコアシェル構造体は、上記結合シェル部と上記コア部とを有するものである。中でも、本発明においては、上記コア部と上記結合シェル部とが相分離していることが好ましい。コア部はフォノンを散乱させる機能を有し、シェル部は電子を伝導する機能を有するのであるが、コア部とシェル部とが相分離していれば、各機能をより効果的に発揮することができるからである。なお、本発明において、コア部と結合シェル部とが相分離しているか否かの判断は、走査透過型電子顕微鏡(STEM)の測定により得られる元素の二次元マッピングから判断することができる。具体的な判断方法は、上記「A.コアシェル型ナノ粒子」に記載した内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0120】
D.熱電変換材料の製造方法
次に、本発明の熱電変換材料の製造方法について説明する。本発明の熱電変換材料の製造方法は、InSbよりも融点の高い材料を用いてコア部を形成するコア部調製工程と、ホットソープ法により上記コア部をInSbで被覆しシェル部を形成し、コアシェル型ナノ粒子を形成するシェル部調製工程と、上記シェル部に付着する有機物を除去する除去工程と、上記有機物を除去したコアシェル型ナノ粒子を圧縮成形する圧縮成形工程と、を有することを特徴とするものである。
【0121】
本発明においては、上記工程を行うことにより、高い熱電変換の性能を示し、量産性に優れた熱電変換材料を得ることができる。
【0122】
また、本発明において、コア部調製工程およびシェル部調製工程については、上記「A.コアシェル型ナノ粒子(4)コアシェル型ナノ粒子の製造方法」に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。コア部調製工程およびシェル部調製工程を行うことによって、上述したコアシェル型ナノ粒子が得られる。
以下、本発明における除去工程および圧縮成形工程について説明する。
【0123】
1.除去工程
本発明における除去工程は、上述したシェル部調製工程後に残存する有機物を除去する工程である。
【0124】
上記シェル部調製工程にて形成されたコアシェル型ナノ粒子は、上述したように分散剤と分離した後も、分散剤、有機溶剤、コア部前駆体およびシェル部前駆体に用いる有機金属化合物に由来する有機物質、有機溶媒、添加剤などが付着している場合がある。本工程は、このような残存する有機物質や分散剤などの有機物を除去するために行われるのである。
【0125】
本工程においては、このような有機物を熱分解して除去することができる。加熱温度、加熱時間、圧力などの反応条件としては、上記有機物が分解除去される条件であれば特に限定されるものではない。この反応条件は、例えば示差熱分析(DTA)などを用いて決定することができる。通常は窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中、もしくは減圧雰囲気にして行う。
【0126】
2.圧縮成型工程
次に、本発明における圧縮成型工程について説明する。本発明における圧縮成型工程は、有機物を除去したコアシェル型ナノ粒子を圧縮成型する工程である。
【0127】
上記コアシェル型ナノ粒子を圧縮成型する方法としては、隣接するコアシェル型ナノ粒子のシェル部のみを結合させることができる方法であれば特に限定されるものではなく、例えばホットプレス法や放電プラズマ焼結法等が挙げられる。
【0128】
また、コアシェル型ナノ粒子を圧縮成型する際の温度としては、シェル部の構成材料を溶融、結合することができる温度であれば特に限定されるものではないが、中でも、隣接するコアシェル型ナノ粒子のシェル部を、界面が形成されないように結合することができる温度であることが好ましい。また、コア部の構成材料の融点は、シェル部の構成材料であるInSbの融点に比べて高いものであるが、本発明においては、上記圧縮成形する際の温度が、InSbの融点以上、コア部の構成材料の融点以下であることが好ましい。このような温度範囲で圧縮成形を行うことによって、シェル部は溶融し互いに結合するが、コア部は溶融せず結晶性を維持することができ、コア部とシェル部(結合シェル部)とが相分離した熱電変換材料を得ることができるからである。また、構成材料の融点等は、後述する圧力条件によって変化するため、温度条件および圧力条件を考慮して圧縮成形することが好ましい。
【0129】
また、コアシェル型ナノ粒子を圧縮成型する際の圧力としては、シェル部の構成材料を溶融、結合することができる圧力であれば特に限定されるものではないが、中でも、隣接するコアシェル型ナノ粒子のシェル部を、界面が形成されないように結合することができる圧力であることが好ましい。
【0130】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0131】
以下、本発明について実施例を用いて具体的に説明する。
[実施例1]
(コア部微粒子の形成)
次に示す反応液を用いた液相法により、粒径が約4nmのMo微粒子を合成した。
分散剤:ヘキサデシルアミン(関東化学(株)製) 0.5g
有機溶剤:ジフェニルエーテル(関東化学(株)製) 32g
前駆体:モリブデンヘキサカルボニル(関東化学(株)製) 2g
上記の分散剤、有機溶剤および前駆体をフラスコ内で混合し、フラスコ内をアルゴンガス雰囲気に置換した後に250℃まで昇温し、この温度にて2.5時間保持した。その後、反応液を空冷し、60℃まで冷却したところでメタノールを40ml添加した。遠心分離によって黒色沈殿物を反応液から分離した後、クロロホルムに再溶解した後にメタノールを添加して再沈殿させ、黒色粉体を得た。得られた黒色粉体は、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により、粒径が約4nmの球状であることが観察された。また、X線回折(XRD)測定により、Moの結晶構造を形成していることを確認した。
【0132】
(シェル部によるコア部の被覆)
ホットソープ法の反応場を、下記の分散剤および有機溶剤にて構成した。
分散剤:1,2−ヘキサデカンジオール(ALDRICH製) 1.2g
オレイン酸(関東化学(株)製) 0.76g
ヘキサデシルアミン(関東化学(株)製) 18g
上記の分散剤をフラスコ内で混合し、このフラスコ内に上記Mo微粒子0.05gを添加し、フラスコ内をアルゴンガス雰囲気に置換した後に300℃まで昇温した。
次に、シェル部前駆体液を下記の化合物にて構成した。
前駆体:ブトキシSb(アヅマックス(株)製) 0.12g
インジウムアセチルアセトナート(ALDRICH製) 0.2g
分散剤:オクチルアミン(東京化成工業(株)製) 0.3g
有機溶媒:ジクロロベンゼン(関東化学(株)製) 1.0g
上記の前駆体、分散剤および有機溶媒を別の容器内で混合し、溶解した後に、300℃に昇温したフラスコ内に、シリンジを用いて15分かけて滴下した。
上記シェル部前駆体の注入後、温度を300℃で20分間保持した。その後、反応液を空冷し、60℃まで冷却したところでエタノールを50ml添加した。遠心分離によって黒色沈殿物を反応液から分離した後、クロロホルム/エタノール=1/2(体積比)の混合溶媒で洗浄し、黒色粉体を得た。得られた黒色粉体は、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により、粒径が約6nmの球状であることが観察された。また、X線回折(XRD)測定により、MoとInSbの結晶構造を形成していることから、Moをコア部、InSbをシェル部としたコアシェル型ナノ粒子が作製されたことを確認した。
【0133】
(有機物の除去)
上記黒色粉体を減圧雰囲気において300℃で2時間保持し、残存する有機物を除去した。
【0134】
(圧縮成型)
上記の有機物を除去した黒色粉体を、所定の形状のダイス中に入れ、ホットプレス法により成型を行い、コアシェル構造体を得た。ホットプレスの条件は、温度350℃、圧力630MPa、真空雰囲気、2時間である。成型後のコアシェル構造体の外観は、銀黒色固体であった。
【0135】
[実施例2]
(コア部微粒子の形成)
次に示す反応液を用いた液相法により、短径が約3nm、長径が10〜20nmのロッド状のZnS微粒子を合成した。
分散剤:ヘキサデシルアミン(関東化学(株)製) 18g
前駆体:ジエチルジチオカルバミックアシッドジンクソルト
(東京化成工業(株)製) 0.3g
上記の分散剤および前駆体をフラスコ内で混合し、フラスコ内をアルゴンガス雰囲気に置換した後に200℃まで昇温し、この温度にて0.5時間保持した。その後、反応液を空冷し、60℃まで冷却したところでエタノールを40ml添加した。遠心分離によって黒色沈殿物を反応液から分離した後、クロロホルムに再溶解した後にエタノールを添加して再沈殿させ、黒色粉体を得た。得られた黒色粉体は、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により、短径が約3nm、長径が10〜20nmのロッド状であることが観察された。また、X線回折(XRD)測定により、ZnSの結晶構造を形成していることを確認した。
【0136】
(シェル部によるコア部の被覆)
ホットソープ法の反応場を、下記の分散剤および有機溶剤にて構成した。
分散剤:1,2−ヘキサデカンジオール(ALDRICH製) 1.2g
オレイン酸(関東化学(株)製) 0.4g
ヘキサデシルアミン(関東化学(株)製) 18g
上記の分散剤をフラスコ内で混合し、このフラスコ内に上記ZnS微粒子0.1gを添加し、フラスコ内をアルゴンガス雰囲気に置換した後に300℃まで昇温した。
次に、シェル部前駆体液を下記の化合物にて構成した。
前駆体:ブトキシSb(アヅマックス(株)製) 0.12g
インジウムアセチルアセトナート(ALDRICH製) 0.2g
分散剤:オクチルアミン(東京化成工業(株)製) 0.3g
有機溶媒:ジクロロベンゼン(関東化学(株)製) 1.0g
上記の前駆体、分散剤および有機溶媒を別の容器内で混合し、溶解した後に、300℃に昇温したフラスコ内に、シリンジを用いて15分かけて滴下した。
上記シェル部前駆体の注入後、温度を300℃で20分間保持した。その後、反応液を空冷し、60℃まで冷却したところでエタノールを50ml添加した。遠心分離によって黒色沈殿物を反応液から分離した後、クロロホルム/エタノール=1/2(体積比)の混合溶媒で洗浄し、黒色粉体を得た。得られた黒色粉体は、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により、粒径が約6nmの球状であることが観察された。また、X線回折(XRD)測定により、ZnSとInSbの結晶構造を形成していることから、ZnSをコア部、InSbをシェル部としたコアシェル型ナノ粒子が作製されたことを確認した。
【0137】
(有機物の除去)
上記黒色粉体を減圧雰囲気において300℃で2時間保持し、残存する有機物を除去した。
【0138】
(圧縮成型)
上記の有機物を除去した黒色粉体を、所定の形状のダイス中に入れ、ホットプレス法により成型を行い、コアシェル構造体を得た。ホットプレスの条件は、温度350℃、圧力630MPa、真空雰囲気、2時間である。成型後のコアシェル構造体の外観は、銀黒色固体であった。
【0139】
[比較例]
(微粒子の形成)
上述した実施例1において、Mo微粒子を添加しなかった以外は、実施例と同様にして微粒子を作製したところ、InSbからなる微粒子が得られた。このInSb微粒子の外観は黒色粉体であった。また、この黒色粉体は、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により、粒径が約10nmの球状であることが観察された。
(有機物の除去)
上記黒色粉体を減圧雰囲気において300℃で2時間保持し、残存する有機物を除去した。
(圧縮成型)
上記の有機物を除去した黒色粉体を、所定の形状のダイス中に入れ、ホットプレス法により成型を行った。ホットプレスの条件は、温度350℃、圧力630MPa、真空雰囲気、2時間である。成型後の外観は、銀黒色固体であった。
【0140】
[評価]
(熱電変換性能の比較)
実施例1、2および比較例にて得られた銀黒色固体を、それぞれ0.5mm×0.5mm×3mmの直方体に100個ずつ切り出した。次に、図6に示すように切り出した銀黒色固体22を配置し、熱電変換素子21を作製した。なお、図6では銀黒色固体22が10個の場合を記載しているが、中心部8個と同様の配置を繰り返すことで、100個の銀黒色固体22をつないで配置するものとする。ここで、アルミナ基板23は厚さ1mmで、切り出した銀黒色固体22は直列に銅線24でつないでいる。また、25は昇圧回路を組み込んだ発光ダイオードである。この熱電素子を作製する際には、銀黒色固体および銅線は、必要に応じてハンダづけしてもよい。また、アルミナ基板および銀黒色固体は、必要に応じて銀等の金属等でろうづけしてもよい。室温が300Kの部屋においてアルミナ基板側に500Kの熱を供給したところ、比較例の銀黒色固体で構成される熱電変換素子よりも、実施例1または2の銀黒色固体で構成される熱電変換素子の方が、発光ダイオードが明るく光った。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】本発明のコアシェル型ナノ粒子の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明のコアシェル型ナノ粒子の一例を示すTEM写真である。
【図3】本発明に用いられるコアシェル構造体の一例を示す概略断面図である。
【図4】結合シェル部を説明するための図である。
【図5】コア部およびシェル部(結合シェル部)を説明するための図である。
【図6】本発明の熱電変換材料を用いた熱電変換素子の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0142】
1 … コア部
2 … シェル部
3 … コアシェル型ナノ粒子
4 … 結合シェル部
5 … コアシェル構造体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア部と、前記コア部を被覆するシェル部とを有するコアシェル型ナノ粒子であって、前記シェル部の構成材料がInSbであり、前記コア部の構成材料の融点が、前記シェル部の構成材料であるInSbよりも高いことを特徴とするコアシェル型ナノ粒子。
【請求項2】
前記シェル部と前記コア部とが相分離していることを特徴とする請求項1に記載のコアシェル型ナノ粒子。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のコアシェル型ナノ粒子と、分散媒とを含有することを特徴とするコアシェル型ナノ粒子分散液。
【請求項4】
複数のコア部と、前記コア部を被覆する結合シェル部とを有するコアシェル構造体で構成される熱電変換材料であって、前記複数のコア部は互いに独立し、前記結合シェル部は連続し、さらに、前記結合シェル部の構成材料がInSbであり、前記コア部の構成材料の融点が、前記結合シェル部の構成材料であるInSbよりも高いことを特徴とする熱電変換材料。
【請求項5】
InSbよりも融点の高い材料を用いてコア部を形成するコア部調製工程と、ホットソープ法により前記コア部をInSbで被覆しシェル部を形成し、コアシェル型ナノ粒子を形成するシェル部調製工程と、前記シェル部に付着する有機物を除去する除去工程と、前記有機物を除去したコアシェル型ナノ粒子を圧縮成形する圧縮成形工程と、を有することを特徴とする熱電変換材料の製造方法。




【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−21670(P2007−21670A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−208592(P2005−208592)
【出願日】平成17年7月19日(2005.7.19)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度、新エネルギー・産業技術総合開発機構ナノテクノロジープログラムナノ粒子の合成と機能化技術プロジェクト委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】