説明

コアシェル構造を有する無機酸化物微粒子、該微粒子を含む分散ゾルおよび光学基材用塗布液

【課題】高い屈折率と耐候性とを兼ね備えた硬化性塗膜を形成するための光学基材用塗布液および該塗布液中に含有させる無機酸化物微粒子を提供する。
【解決手段】チタニウムの酸化物微粒子、および/またはチタニウムと、ジルコニウム、スズ、タングステン、ニオブ、セリウムおよびケイ素から選ばれた1種または2種以上の金属元素を含む複合酸化物微粒子からなる核粒子の表面を、ケイ素と、ジルコニウム、アルミニウムおよびアンチモンから選ばれた1種または2種以上の金属元素の酸化物および/または複合酸化物で被覆した無機酸化物微粒子であって、該微粒子中にカリウム化合物をK2O換算基準で1.0〜8.0重量%含ませた無機酸化物微粒子、該微粒子を含む分散液および光学基材用塗布液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比較的高い屈折率を有し、さらには耐擦傷性、耐摩耗性、耐衝撃性、耐候性、耐光性、耐汗性、耐熱水性、密着性、透明性、染色性などの性状に優れた硬化性塗膜を基材上に形成するための塗布液や塗料を調製する際に使用されるコアシェル構造を有する無機酸化物微粒子、該微粒子を含む分散ゾルおよび光学基材用塗布液に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、眼鏡レンズなどの光学基材の材料としては、無機ガラス基材に代わってプラスチック基材が使用されることが多くなっている。これは、プラスチック基材が軽量性、耐衝撃性、加工性、染色性などの面で優れた特性を備えているためである。しかし、該プラスチック基材は、無機ガラス基材に較べて傷つきやすいという欠点を有している。
【0003】
そこで、この欠点を回避するため、プラスチック基材を用いた光学レンズの表面には、通常、シリコーン系の硬化性塗膜、すなわちハードコート層が設けられている。さらに、比較的高い屈折率を有するプラスチック基材を光学レンズの材料として使用した場合には、該プラスチック基材とハードコート層との間に起こる光の干渉(干渉縞として現れる)を避けるため、前記ハードコート層に無機酸化物微粒子を含ませて、その屈折率を前記プラスチック基材の屈折率に合わせるような処置が施されている。
【0004】
このような特性を備えたシリコーン系硬化性塗膜、例えばハードコート層をプラスチック基材上に形成するための塗布液や塗料については、様々な開発が行われ、数多くの出願がなされている。
また、眼鏡レンズなどの光学基材(プラスチックレンズ)を製造する際には、無色透明で屈折率が高く、しかも耐擦傷性、耐摩耗性、耐衝撃性、耐候性、耐光性、耐汗性、耐熱水性、密着性、染色性などの性状に優れた硬化性塗膜を形成するための塗布液が求められており、これについても、現在に至るまで数多くの出願がなされている。
【0005】
例えば、特許文献1には、シリカ、酸化鉄、酸化チタン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛または酸化スズの少なくともいずれかを含む酸化物微粒子もしくはそれらの混合物またはそれらの複合酸化物からなる微粒子と有機ケイ素化合物とを含有する高屈折率コーティング組成物が開示されている。しかしながら、これらの微粒子を含む塗布液を用いて形成された硬化性塗膜は、比較的高い屈折率を有するものの、耐候性に優れているとは云えなかった。
【0006】
その背景としては、眼鏡レンズなどの光学基材においては、軽量化を求めてプラスチックレンズなどの厚さが薄くなり、これに伴って塗膜の高屈折率化が進められたため、高屈折率特性を有するチタン酸化物の含有量を増加させる傾向にあったが、その反面、光触媒活性を有するチタン酸化物によって塗膜の耐候性が損ねられることになった。
【0007】
そこで、本出願人らは、チタン系酸化物を含む核粒子の表面に、ケイ素、ジルコニウムおよび/またはアルミニウムの複合酸化物で被覆してなる微粒子と有機ケイ素化合物とを含有する塗膜形成用塗布液を開発し、これを出願している。すなわち、チタン系酸化物を含む核粒子を前記複合酸化物で被覆することによって、該核粒子中に含まれるチタン酸化物の光触媒活性を抑えたものである。
【0008】
例えば、特許文献2には、(1)酸化チタン微粒子を核として、その表面を酸化ジルコニウムおよび酸化ケイ素で被覆した微粒子、(2)酸化チタンおよび酸化ジルコニウムの固溶体からなる複合酸化物微粒子を核として、その表面を酸化ケイ素で被覆した微粒子、(3)チタンとケイ素との複合酸化物微粒子を核として、その表面を酸化ケイ素と、酸化ジルコニウムおよび/または酸化アルミニウムで被覆した微粒子、(4)チタン、ケイ素およびジルコニウムの複合酸化物微粒子を核として、その表面を酸化ケイ素、酸化ジルコニウムおよび酸化アルミニウムの少なくとも1種で被覆した微粒子と、有機ケイ素化合物とを含む被膜形成用塗布液が開示されている。すなわち、この特許文献2に係る発明では、アナターゼ型の結晶構造を有するチタン含有核粒子の表面を酸化ケイ素、酸化ジルコニウムおよび酸化アルミニウムから選ばれた少なくとも1種で被覆して得られる、コアシェル構造を有する無機酸化物微粒子が用いられている。
【0009】
また、特許文献3には、チタンおよびスズの複合固溶体酸化物を核粒子として、その表面をケイ素酸化物とジルコニウムおよび/またはアルミニウムの酸化物との複合酸化物で被覆した複合酸化物微粒子と、有機ケイ素化合物とを含む被膜形成用塗布液が開示されている。すなわち、この特許文献3に係る発明では、ルチル型の結晶構造を有するチタン含有核粒子の表面をケイ素酸化物とジルコニウムおよび/またはアルミニウムの酸化物との複合酸化物で被覆して得られる、コアシェル構造を有する無機酸化物微粒子が用いられている。
【0010】
これらの特許文献2および特許文献3に記載された発明によれば、屈折率1.52〜1.67の範囲においては、優れた耐候性を有しているばかりでなく、その他の性状、例えば耐擦傷性、耐摩耗性、耐衝撃性、耐光性、耐汗性、耐熱水性、密着性、透明性、染色性などの性状においても優れた特性を有する硬化性塗膜を得ることができる。
しかし、昨今では、1.70以上、さらに詳しくは1.71〜1.76の屈折率を有する光学基材(プラスチックレンズ)が開発され、これに見合った硬化性塗膜を形成するための塗布液が求められているが、塗膜の屈折率を高めるためには、前記核粒子中に含まれるチタン含有量をさらに増加させるか、あるいは前記被覆層の厚さをさらに薄くする必要があった。その結果、上記の高い屈折率を有する硬化性塗膜は得られるものの、その耐候性は損なわれる傾向にあった。
【0011】
一方、プラスチック基材の表面に前記のハードコート層を形成して、さらにその上に反射防止膜を設けた、眼鏡レンズなどの光学レンズは、耐衝撃性に劣るという欠点を有している。
この欠点を解決する手段としては、(1)熱硬化性ウレタン樹脂と酸化チタンを含有するコロイド状金属酸化物微粒子とを含むプライマー層を形成する方法(たとえば、特許文献4)や、(2)ポリウレタン樹脂と酸化亜鉛、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化ベリリウム、酸化アンチモン、酸化タングステン、酸化セリウム等の金属酸化物微粒子とを含むプライマー層を形成する方法(たとえば、特許文献5)などが知られている。ここで、前記金属酸化物微粒子は、塗膜の屈折率調整(光の干渉抑制)や塗膜強度を向上させるために添加されているが、上記のハードコート層の場合と同様に、光学レンズの高屈折率化に対応させることを目的として該微粒子中のチタン含有量を高めると、塗膜の耐候性が悪化するという問題があった。
【0012】
【特許文献1】特開平7−325201号公報
【特許文献2】特開平8−048940号公報
【特許文献3】特開2000−204301号公報
【特許文献4】特開平6−118203号公報
【特許文献5】特開平6―337376号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明者らは、上記のような問題を解決して高い屈折率と耐候性とを兼ね備えた硬化性塗膜を形成するための塗布液が得られないかどうかについて鋭意研究を重ねた結果、上記のコアシェル構造を有する無機酸化物微粒子中にカリウム化合物(ただし、以下に述べる理由から、酸化物としてのK2Oを除く)を含ませればよいことを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、カリウム化合物(酸化物としてのK2Oを除くものとし、以下同じ)を特定の範囲で含ませた、コアシェル構造を有する無機酸化物微粒子を提供することを目的としている。さらに、本発明は、前記無機酸化物微粒子を含む水分散ゾルや有機溶媒分散ゾルなどの分散液、および該分散液を用いて調製されたハードコート形成用塗布液やプライマー層形成用塗布液などの光学基材用塗布液を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係るコアシェル構造を有する無機酸化物微粒子は、
チタニウムの酸化物微粒子、および/またはチタニウムと、ジルコニウム、スズ、タングステン、ニオブ、セリウムおよびケイ素から選ばれた1種または2種以上の金属元素を含む複合酸化物微粒子からなる核粒子の表面を、ケイ素と、ジルコニウム、アルミニウムおよびアンチモンから選ばれた1種または2種以上の金属元素の酸化物および/または複合酸化物で被覆した無機酸化物微粒子であって、
該微粒子中にカリウム化合物(酸化物としてのK2Oを除く)をK2O換算基準で1.0〜8.0重量%含ませたことを特徴としている。
ここで、前記無機酸化物微粒子中には、前記金属元素の酸化物からなる固体酸を含むことが好ましい。
また、前記無機酸化物微粒子中に含まれるカリウム化合物の少なくとも一部は、固体酸と化合した形態で存在することが好ましい。
【0015】
前記カリウム化合物は、前記核粒子中にK2O換算基準で0.0〜5.0重量%含み、前記被覆層中にK2O換算基準で1.0〜7.0重量%含むことが好ましい。
また、前記核粒子は、アナターゼ型の結晶構造を有するチタン系複合酸化物微粒子であることが好ましい。
さらに、前記核粒子は、ルチル型の結晶構造を有するチタン系複合酸化物微粒子であることが好ましい。
【0016】
前記核粒子上への被覆は、前記核粒子の重量をCで表し、前記被覆層の重量をSで表したとき、その重量比(S/C)が、酸化物基準で7/100〜150/100の範囲となるように行うことが好ましい。
また、前記微粒子の平均粒子径は、動的光散乱法で測定したとき、4〜40nmの範囲にあることが好ましい。
さらに、前記微粒子の比表面積は、70〜450m2/gの範囲にあることが好ましい。
【0017】
本発明に係る分散ゾルは、上記のコアシェル構造を有する無機酸化物微粒子を水中に分散させてなる水分散ゾルであることが好ましい。
さらに、本発明に係る分散ゾルは、上記のコアシェル構造を有する無機酸化物微粒子を水に可溶な有機溶媒中に分散させてなる有機溶媒分散ゾルであることが好ましい。
【0018】
本発明に係る光学基材用塗布液は、
(1)チタニウムの酸化物微粒子、および/またはチタニウムと、ジルコニウム、スズ、タングステン、ニオブ、セリウムおよびケイ素から選ばれた1種または2種以上の金属元素を含む複合酸化物微粒子からなる核粒子の表面を、ケイ素と、ジルコニウム、アルミニウムおよびアンチモンから選ばれた1種または2種以上の金属元素の酸化物および/または複合酸化物で被覆した無機酸化物微粒子中に、カリウム化合物(酸化物としてのK2Oを除く)をK2O換算基準で1.0〜8.0重量%含ませたコアシェル構造を有する無機酸化物微粒子、および
(2)下記一般式(I)で表される有機ケイ素化合物および/またはその加水分解物
を含むことを特徴としている。
1a2bSi(OR34-(a+b) (I)
(式中、R1は炭素数1〜6のアルキル基、ビニル基を含有する炭素数8以下の有機基、エポキシ基を含有する炭素数8以下の有機基、メタクリロキシ基を含有する炭素数8以下の有機基、メルカプト基を含有する炭素数1〜5の有機基またはアミノ基を含有する炭素数1〜5の有機基であり、R2は炭素数1〜3のアルキル基、アルキレン基、シクロアルキル基もしくはハロゲン化アルキル基またはアリル基であり、R3は炭素数1〜3のアルキル基、アルキレン基またはシクロアルキル基である。また、aは0または1の整数、bは0、1または2の整数である。)
【0019】
前記無機酸化物微粒子は、有機ケイ素化合物またはアミン系化合物で表面処理されたものであることが好ましい。
また、前記光学基材用塗布液中に、さらに未架橋エポキシ化合物を含むことが好ましい。
さらに、前記光学基材用塗布液は、ハードコート層形成用塗布液であることが好ましい。
【0020】
本発明に係る光学基材用塗布液は、
(1)チタニウムの酸化物微粒子、および/またはチタニウムと、ジルコニウム、スズ、タングステン、ニオブ、セリウムおよびケイ素から選ばれた1種または2種以上の金属元素を含む複合酸化物微粒子からなる核粒子の表面を、ケイ素と、ジルコニウム、アルミニウムおよびアンチモンから選ばれた1種または2種以上の金属元素の酸化物および/または複合酸化物で被覆した無機酸化物微粒子中に、カリウム化合物(酸化物としてのK2Oを除く)をK2O換算基準で1.0〜8.0重量%含ませたコアシェル構造を有する無機酸化物微粒子、および
(2)熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂
を含むことを特徴としている。
【0021】
前記無機酸化物微粒子は、有機ケイ素化合物またはアミン系化合物で表面処理されたものであることが好ましい。
また、前記熱硬化性樹脂は、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂およびシリコーン系樹脂から選ばれた1種または2種以上の熱硬化性樹脂であることが好ましい。
さらに、前記熱可塑性樹脂は、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂およびエステル系樹脂から選ばれた1種または2種以上の熱可塑性樹脂であることが好ましい。
また、前記光学基材用塗布液は、プライマー層形成用塗布液であることが好ましい。
なお、上記の光学基材用塗布液を塗布するための光学基材は、プラスチックレンズであることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るコアシェル構造を有する無機酸化物微粒子によれば、該微粒子中に含まれるカリウム化合物によってチタン酸化物の持つ光触媒活性を抑えることができるので、該チタン酸化物の含有量を高めることができる。これにより、光触媒活性能が比較的低く、しかも高屈折率特性を備えた無機酸化物微粒子が得られる。
また、本発明に係る前記無機酸化物微粒子を含む塗布液、例えばハードコート層形成用塗布液を用いれば、1.52以上、特に1.70以上の比較的高い屈折率を有し、しかも耐候性に優れた硬化性塗膜を基材上に容易に形成することができる。さらに、耐擦傷性、耐摩耗性、耐衝撃性、耐光性、耐汗性、耐熱水性、密着性、染色性などの性状に優れた無色透明な硬化性塗膜を形成することができる。
よって、本発明に係る光学基材用塗布液は、プラスチックレンズなどの光学基材上に、ハードコート層やプライマー層を形成する際に好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明に係るコアシェル構造を有する無機酸化物微粒子、該微粒子を含む分散ゾルおよび光学基材用塗布液について具体的に説明する。
【0024】
[無機酸化物微粒子]
本発明に係るコアシェル構造を有する無機酸化物微粒子は、
チタニウムの酸化物微粒子、および/またはチタニウムと、ジルコニウム、スズ、タングステン、ニオブ、セリウムおよびケイ素から選ばれた1種または2種以上の金属元素を含む複合酸化物微粒子からなる核粒子の表面を、ケイ素と、ジルコニウム、アルミニウムおよびアンチモンから選ばれた1種または2種以上の金属元素の酸化物および/または複合酸化物で被覆した無機酸化物微粒子であって、
該微粒子中にカリウム化合物(酸化物としてのK2Oを除く)をK2O換算基準で1.0〜8.0重量%含ませたものである。
【0025】
本発明において、コアシェル構造を有する無機酸化物微粒子とは、金属元素の酸化物微粒子および/または複合酸化物微粒子からなる核粒子の表面を、金属元素の酸化物および/または複合酸化物で被覆した無機酸化物微粒子を意味し、これらの成分についてさらに詳しく述べれば、以下の通りである。
核粒子としての前記チタニウム酸化物微粒子は、化学式TiO2で表される化合物の微粒子である。しかし、前記チタン系複合酸化物微粒子には、チタニウムと前記元素とを組み合わせて得られる様々な化合物の微粒子があり、これらの化合物の一部を化学式で模式的に表せば、[化1]および[化2]に示す通りである。
また、その結晶構造は、該化合物の調製条件(使用元素や各元素の含有量等を含む)によっても異なるが、主にアナターゼ型、ルチル型またはその混在型に分類される。しかし、本発明においては、アナターゼ型の結晶構造を有するチタン系複合酸化物の微粒子またはルチル型の結晶構造を有するチタン系複合酸化物の微粒子であることが好ましい。
【0026】
【化1】

【0027】
【化2】

【0028】
また、被覆物としての前記複合酸化物には、ケイ素と前記元素とを組み合わせて得られる複数の化合物があり、これらの化合物の一部を化学式で模式的に表せば、[化3]に示す通りである。
【0029】
【化3】

【0030】
上記の無機酸化物微粒子において、前記核粒子上への前記複合酸化物の被覆は、核粒子の重量をCで表し、被覆層の重量をSで表したとき、その重量比(S/C)が、酸化物基準で7/100〜150/100、好ましくは12/100〜40/100の範囲となるように行うことが望ましい。ここで、前記重量比が7/100未満であると、チタン酸化物による光触媒活性を抑えることが難しくなり、結果として塗膜の耐候性が悪くなったり、あるいは紫外線照射時に塗膜の変色(たとえば、青灰色に変化)が起こったりするので、好ましくない。また、前記重量比が150/100を超えると、前記核粒子を含む水分散ゾルと前記被覆層を形成するための水溶液を混合したとき、該水分散ゾルの安定性が悪くなるばかりでなく、被覆層が厚くなって前記核粒子中に含まれるチタン系酸化物を遮蔽する度合いが高まるため、結果として塗膜の屈折率を低くしてしまうので、好ましくない
【0031】
本発明において、前記無機酸化物微粒子中には、カリウム化合物をK2O換算基準で1.0〜8.0重量%、好ましくは1.5〜6.5重量%含ませることが必要である。ここで、前記含有量が1.0重量%未満であると、塗膜の耐候性を向上させることが難しくなったり、あるいは塗膜の変色を抑えることが難しくなったりするので、好ましくない。また、前記含有量が8.0重量%を超えると、該カリウム化合物が溶出して水分散ゾルのpHを高めてしまうため、結果として該水分散ゾルの安定性が悪くなるので、好ましくない。
しかし、本発明においては、カリウム酸化物としてのK2Oは、前記カリウム化合物の中から除外される。これは、K2O自体が比較的安定であるため、本発明でいう「塗膜の耐候性」を向上させる効能は殆どないからである。さらに付言すれば、本発明に係る前記無機酸化物微粒子の調製工程において、前記のK2Oが該微粒子中に形成されることもない。
【0032】
さらに、前記カリウム化合物は、前記核粒子中にK2O換算基準で0.0〜5.0重量%、好ましくは1.0〜4.5重量%含み、前記被覆層中にK2O換算基準で1.0〜7.0重量%、好ましくは1.5〜6.5重量%含むことが望ましい。ここで、前記核粒子中には、カリウム化合物を必ずしも含ませる必要はないが、チタン系酸化物(チタニウム酸化物のほかに、チタン系複合酸化物を含む)の光触媒活性を抑えるためには、K2O換算基準で5.0重量%以下の範囲から適宜選択して含ませることが好ましい。しかし、当該含有量が5.0重量%を超えると、水分散ゾルの安定性が悪くなるので、好ましくない。
一方、前記被覆層中に含ませるカリウム含有量は、前記核粒子中に含まれるカリウム含有量などによっても異なるが、K2O換算基準で1.0重量%以上とすることが好ましい。ここで、当該含有量が1.0重量%未満であると、粒子の成長が必要以上に促進されることがあり、また前記含有量が7.0重量%を超えると、粒子の安定性が悪くなるので、好ましくない。
【0033】
前記無機酸化物微粒子中には、該微粒子の調製時に副生される前記金属元素の酸化物からなる固体酸、すなわちZrO2・TiO2、ZrO2・SiO2、SiO2・TiO2、SnO2・TiO2、SnO2・SiO2、SiO2・Al23、SiO2・Sb25、Sb25・ZrO2などの固体酸が含まれることが好ましい。これは、前記カリウム化合物の共存下でこれらの固体酸が多く含まれると、塗膜の耐候性を向上させるばかりでなく、紫外線照射時の塗膜の変色(たとえば、青灰色への変色)を抑えることができるためである。その理由は、必ずしも明らかではないが、前記固体酸の作用により、紫外線を照射した時に起こる種々の反応(たとえば、Ti4+ + e- → Ti3+)が抑制されるためと考えられる。
また、チタン系酸化物(チタニウム酸化物のほかに、チタン系複合酸化物を含む)の表面には、塩基として働くOH基と、酸として働くO・H基が存在していると言われている。そこで、前者の活性基(すなわち、OH基)に対しては、前記の固体酸が作用し、さらに後者の活性基(すなわち、O・H基)に対しては、前記のカリウムイオンが作用して、前記チタン系酸化物の表面活性を抑制していることが考えられる。さらに、これらの相互作用は、OH基のフリーラジカル化(・OH)を抑制して、種々の有機物(たとえば、プラスチックレンズやプライマー組成物など)との反応を阻害していることも考えられる。
【0034】
さらに、前記無機酸化物微粒子中に含まれるカリウム化合物の少なくとも一部は、該微粒子中に含まれる前記固体酸と化合した形態で存在することが好ましい。すなわち、該微粒子中に上記のような固体酸が形成されると、前記無機酸化物微粒子の調製時に加えられたカリウム化合物に由来するカリウムイオンがこれらの固体酸と反応して固定化され易いため、たとえカリウムイオンの量を増加させても、分散液中のpH変動は小さく、またゾルの安定性に対しても余り大きな影響を及ぼすことがないためである。
なお、このように、カリウムイオンと固体酸とが反応して得られる化合物としては、例えば、xSiO2・yK・zZrO2、xSiO2・yK・zTiO2、xSiO2・yK・zSnO2などが挙げられる。
このようにして、前記無機酸化物微粒子の調製工程で加えられたカリウム化合物は、イオン化されて上記のような作用効果をもたらし、結果として塗膜の耐候性を向上させているものと察せられる。なお、カリウム酸化物としてのK2Oの場合は、結晶性でもあり、上記のような作用効果をもたらすことができないばかりか、前記微粒子中に固定することが難しいので、これを多く含むとゾルの安定性にも大きな影響を及ぼすことになる。
【0035】
前記無機酸化物微粒子の平均粒子径は、下記に記載する動的光散乱法で測定したとき、4〜40nmの範囲にあることが好ましい。ここで、前記平均粒子径が4nm未満であると、この無機酸化物微粒子を含むゾルを所望の濃度まで濃縮したとき、該ゾルの安定性が悪くなり、また前記平均粒子径が40nmを超えると、塗膜の透過率が悪くなるので、好ましくない。
また、前記無機酸化物微粒子の比表面積は、70〜450m2/gの範囲にあることが好ましい。ここで、前記比表面積が70m2/g未満であると、塗膜の透過率が悪くなり、また前記比表面積が450m2/gを超えると、この無機酸化物微粒子を含むゾルを所望の濃度まで濃縮したとき、該ゾルの安定性が悪くなるので、好ましくない。
【0036】
[分散ゾル]
水分散ゾル
本発明に係るコアシェル構造を有する無機酸化物微粒子を含む水分散ゾルは、前記無機酸化物微粒子を純水などの水中に均一に分散させてなるもので、該無機酸化物微粒子の固形分含有量が5〜30重量%の範囲にあることが好ましい。ここで、前記固形分含有量が5重量%未満であると、表面処理剤との反応性が悪くなるばかりでなく、溶媒置換に使用する溶媒使用量が多くなって、経済的でなくなる。また、前記固形分含有量が30重量%を超えると、水分散ゾルの安定性が悪くなるので、好ましくない。
【0037】
有機溶媒分散ゾル
本発明に係るコアシェル構造を有する無機酸化物微粒子を含む有機溶媒分散ゾルは、前記無機酸化物微粒子を水に可溶な有機溶媒などの中に均一に分散させてなるもので、該無機酸化物微粒子の固形分含有量が20〜40重量%の範囲にあることが好ましい。
このような水に可溶な有機溶媒としては、メタノ-ル、エタノ-ル、ブタノール、プロパノール、イソプロピルアルコ-ルなどのアルコール類や、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル類から選択して使用することが好ましい。その理由は、塗布膜の乾燥速度が比較的速く、成膜し易いためである。ただし、必要に応じて前記の水に可溶な有機溶媒の一部または全部を、水に難溶性な有機溶媒と置換して使用してもよいことは勿論である。ここで、前記固形分含有量が20重量%未満であると、光学基材用塗布液の固形分含有量が低下するため、塗膜の膜厚が薄くなって、膜硬度が低下するので、好ましくない。また、前記固形分含有量が40重量%を超えると、有機溶媒分散ゾルの安定性が悪くなるので、好ましくない。
【0038】
[調製方法]
本発明に係るコアシェル構造を有する無機酸化物微粒子および該微粒子を含む分散ゾルの調製方法を述べれば、概ね以下の通りである。ただし、本発明は、前記無機酸化物微粒子中にカリウム化合物(酸化物としてのK2Oを除く)を特定の範囲で含ませることを特徴とするものであるので、これらの調製方法に限定されるものではない。
【0039】
アナターゼ型結晶構造を有するチタン系複合酸化物微粒子
(1)核粒子としての無機酸化物微粒子を含む水分散ゾルの調製例
四塩化チタンをTiO2換算基準で約1〜3重量%含む四塩化チタン水溶液と、アンモニア(NH3)を約10〜20重量%含むアンモニア水とを混合して、pH約8〜9の白色スラリー液を得る。次いで、このスラリーを濾過した後、純水で洗浄して、固形分含有量が約8〜10重量%の含水チタン酸ケーキを得る。
次に、このケーキに、過酸化水素を約30〜40重量%含む過酸化水素水と純水とを加えた後、約70〜90℃の温度で約0.5〜5時間、撹拌下で加熱して、過酸化チタン酸をTiO2換算基準で約1〜3重量%含む過酸化チタン酸水溶液を得る。この過酸化チタン酸水溶液は、透明な黄褐色でpHは約7.5〜8.5である。
【0040】
次いで、前記過酸化チタン酸水溶液に、平均粒子径が約4〜12nmのシリカ微粒子を含む、酸化ケイ素(SiO2)を約10〜20重量%含むシリカゾルと純水とを混合して、オートクレーブ中で約160〜170℃の温度で約15〜40時間、加熱する。
次に、得られたゾルを室温まで冷却した後、限外濾過膜装置を用いて濃縮して、固形分含有量が約5〜30重量%の水分散ゾルを得る。この水分散ゾル中に含まれる無機酸化物微粒子は、アナターゼ型の結晶構造を有する、チタンとケイ素とを含む複合酸化物微粒子であり、本発明でいう「核粒子」として使用される。
【0041】
しかし、この方法から得られる無機酸化物微粒子には、カリウム化合物が含まれていないので、該微粒子中にカリウム化合物を含ませるためには、前記前記過酸化チタン酸水溶液にシリカゾルと純水とを加える際に、水酸化カリウム水溶液などを所望量、添加してオートクレーブ中で加熱処理するか、あるいは得られた水分散ゾル中に水酸化カリウム水溶液を所望量、添加すればよい。ただし、核粒子として使用される当該無機酸化物微粒子中には、必ずしもカリウム化合物を含む必要はないので、このような添加操作を行わなくてもよい。
【0042】
なお、前記無機酸化物微粒子中に含まれるカリウム化合物の量が、K2O換算基準で5.0重量%を超える場合、あるいは所望量以上のカリウム化合物を含む場合には、添加される水酸化カリウムの量を調整するか、あるいはオートクレーブから得られた前記ゾル中に陽イオン交換樹脂を加えて撹拌した後、カリウムイオンを取り込んだ陽イオン交換樹脂を分離することによって、カリウム化合物の含有量を低減させることが好ましい。
このようにして、カリウム化合物をK2O換算基準で0.0〜5.0重量%含む無機酸化物微粒子(核粒子)を含む水分散ゾルを得ることができる。
さらに、前記無機酸化物微粒子中に、その他の金属成分、たとえばジルコニウムやセリウムなどを含ませる場合には、前記前記過酸化チタン酸水溶液にシリカゾルと純水とを加える際に、これらの金属を含む水溶液を所望量、添加してオートクレーブ中で加熱処理すればよい。これにより、チタンとこれらの金属とを含む複合酸化物微粒子を含む水分散ゾルが得られる。
【0043】
(2)被覆した無機酸化物微粒子を含む水分散ゾルの調製例
オキシ塩化ジルコニルをZrO2換算基準で約1〜3重量%含むオキシ塩化ジルコニウム水溶液に、アンモニア(NH3)を約10〜20重量%含むアンモニア水を撹拌下で徐々に添加して、ジルコニウム含有ゲルを含むpH約8〜9のスラリー液を得る。次いで、このスラリーを濾過した後、純水で洗浄して、ジルコニウム成分をZrO2換算基準で約9〜11重量%含むケーキを得る。
次に、このケーキに、水酸化カリウム水溶液と純水を加えてアルカリ性にした後、過酸化水素(H22)を約30〜40重量%含む過酸化水素水を加えて、約30〜50℃の温度で加熱する。これにより、過酸化ジルコン酸をZrO2換算基準で約0.3〜1重量%含む過酸化ジルコン酸水溶液を得る。この過酸化ジルコン酸水溶液のpHは、約11〜13である。
【0044】
一方、市販の水ガラスを純水にて希釈した後、陽イオン交換樹脂を用いて脱アルカリして、ケイ素成分をSiO2換算基準で約1〜3重量%含む珪酸水溶液を得る。この珪酸水溶液のpHは、約2〜3である。
次に、上記で得られた無機酸化物微粒子(核粒子)を含む水分散ゾルに純水を加えて撹拌することにより、固形分含有量が約1〜3重量%の水分散ゾルを得る。次いで、この水分散ゾルを約80〜95℃の温度に加熱した後、これに前記過酸化ジルコン酸水溶液と珪酸水溶液を徐々に添加し、さらに添加終了後約0.5〜2時間熟成する。
次いで、得られた混合液のpHを必要に応じて7〜10に調整した後、この混合液をオートクレーブに入れて、約160〜170℃の温度で約16〜20時間、加熱する。
【0045】
次に、得られたゾルを室温まで冷却した後、限外濾過膜装置を用いて濃縮して、固形分含有量が約10〜30重量%の水分散ゾルを得る。この水分散ゾル中に含まれる無機酸化物微粒子は、アナターゼ型の結晶構造を有する、チタンとケイ素とを含む複合酸化物微粒子(核粒子)の表面を、ジルコニウムとケイ素とを含む複合酸化物で被覆してなる無機酸化物微粒子である。この無機酸化物微粒子を含む水分散ゾルの外観は、通常、透明な淡乳白色を呈している。
【0046】
なお、前記無機酸化物微粒子の被覆層中に含まれるカリウム化合物の量が、K2O換算基準で7.0重量%を超える場合、あるいは所望量以上のカリウム化合物を含む場合には、添加される水酸化カリウムの量を調整するか、あるいはオートクレーブから得られた前記ゾル中に陽イオン交換樹脂を加えて撹拌した後、カリウムイオンを取り込んだ陽イオン交換樹脂を分離することによって、カリウム化合物の含有量を低減させることが好ましい。
一方、前記カリウム化合物の含有量が、K2O換算基準で1.0重量%未満である場合には、添加される水酸化カリウムの量を調整することが好ましい。
【0047】
このようにして、カリウム化合物をK2O換算基準で1.0〜7.0重量%含む複合酸化物(被覆層)で被覆してなる無機酸化物微粒子を含む水分散ゾルを得ることができる。
さらに、前記無機酸化物微粒子の被覆層中に、その他の金属成分、たとえばアルミニウムやアンチモンなどを含ませる場合には、前記過酸化ジルコン酸水溶液に、予め調製したこれらの金属を含む水溶液と前記珪酸水溶液を添加してオートクレーブ中で加熱処理すればよい。これにより、ケイ素とこれらの金属とを含む複合酸化物微粒子を含む水分散ゾルが得られる。
【0048】
(3)被覆した無機酸化物微粒子を含むメタノール分散ゾルの調製例
上記で得られた無機酸化物微粒子を含む水分散ゾルを、表面処理剤としてのテトラエトキシシランを溶解させたメタノール溶液に撹拌下で添加した後、約40〜60℃の温度で約1〜20時間、加熱する。
次に、この混合溶液を室温まで冷却してから、限外濾過膜装置を用いて分散媒を水からメタノールに置換する。
【0049】
さらに、得られたメタノール分散液を限外濾過膜装置で濃縮して、固形分含有量が10〜30重量%の無機酸化物微粒子を含むメタノール分散ゾルを調製する。
このようにして得られる無機酸化物微粒子(すなわち、アナターゼ型の結晶構造を有する、チタンとケイ素とを含む複合酸化物微粒子の表面を、ジルコニウムとケイ素とを含む複合酸化物で被覆してなる微粒子)を含むメタノール分散ゾルの外観は、透明な淡青白色である。また、前記無機酸化物微粒子の平均粒子径は、動的光散乱法で測定したとき、約4〜40nmの範囲にある。
【0050】
ルチル型結晶構造を有するチタン系複合酸化物微粒子
(1)核粒子としての無機酸化物微粒子を含む水分散ゾルの調製例
四塩化チタンをTiO2換算基準で約7〜8重量%含む四塩化チタン水溶液と、アンモニア(NH3)を約10〜20重量%含むアンモニア水とを混合して、pH約9〜10の白色スラリー液を得る。次いで、このスラリーを濾過した後、純水で洗浄して、固形分含有量が約8〜14重量%の含水チタン酸ケーキを得る。
次に、このケーキに、過酸化水素(H22)を約30〜40重量%含む過酸化水素水と純水とを加えた後、約70〜90℃の温度で約0.5〜5時間、撹拌下で加熱して、過酸化チタン酸をTiO2に換算基準で約1〜3重量%含む過酸化チタン酸水溶液を得る。この過酸化チタン酸水溶液は、透明な黄褐色でpHは約7.5〜8.5である。
【0051】
次いで、前記過酸化チタン酸水溶液に陽イオン交換樹脂を混合して、これに、スズ酸カリウムをSnO2換算基準で約0.5〜2重量%含むスズ酸カリウム水溶液を撹拌下で徐々に添加する。
次に、カリウムイオンなどを取り込んだ陽イオン交換樹脂を分離した後、平均粒子径が約4〜12nmのシリカ微粒子を含む、酸化ケイ素(SiO2)を約10〜20重量%含むシリカゾルと純水とを混合して、オートクレーブ中で約160〜170℃の温度で約15〜20時間、加熱する。
次に、得られたゾルを室温まで冷却した後、限外濾過膜装置で濃縮して、固形分含有量が約5〜30重量%の水分散ゾルを得る。この水分散ゾル中に含まれる無機酸化物微粒子は、ルチル型の結晶構造を有する、チタン、スズおよびケイ素を含む複合酸化物微粒子であり、本発明でいう「核粒子」として使用される。
【0052】
この方法から得られる無機酸化物微粒子(核粒子)には、カリウム化合物が含まれているが、従来において、このカリウム化合物は塗膜の屈折率などに悪影響を及ぼす不純物として考えられていたため、陽イオン交換樹脂を用いてその含有量がK2O換算基準で約0.5重量%以下となるように可能な限り除去されていた。しかし、本願発明においては、前記カリウム化合物の含有量がK2O換算基準で5重量%以下であればよく、できれば1.0〜4.5重量%の範囲にあることが好ましい。すなわち、前記含有量がK2O換算基準で5重量%を超えなければ、高価な陽イオン交換樹脂を用いてこれを必ずしも除去する必要はない。ただし、前記含有量がK2O換算基準で1.0重量%未満である場合は、以下で述べる被覆層中に含まれるカリウム化合物の含有量を増加させて調整することが好ましい。
【0053】
なお、前記無機酸化物微粒子(核粒子)に含まれるカリウム化合物の含有量を増減させる方法については、上記の「アナターゼ型結晶構造を有するチタン系複合酸化物微粒子」に関する説明のところで述べた方法と同様である。
このようにして、カリウム化合物をK2O換算基準で0.0〜5.0重量%含む無機酸化物微粒子(核粒子)を含む水分散ゾルを得ることができる。
さらに、前記無機酸化物微粒子中に、その他の金属成分、たとえばジルコニウムやセリウムなどを含ませる場合には、前記前記過酸化チタン酸水溶液にシリカゾルと純水とを加える際に、これらの金属を含む水溶液を所望量、添加してオートクレーブ中で加熱処理すればよい。これにより、チタンとこれらの金属とを含む複合酸化物微粒子を含む水分散ゾルが得られる。
【0054】
(2)被覆した無機酸化物微粒子を含む水分散ゾルの調製例
上記の「アナターゼ型結晶構造を有するチタン系複合酸化物微粒子」に関する説明のところで述べた方法と同様な方法で、過酸化ジルコン酸水溶液および珪酸水溶液を得る。
一方、上記で得られた無機酸化物微粒子(核粒子)を含む水分散ゾルに純水を加えて撹拌することにより、固形分含有量が約1〜3重量%の水分散ゾルを得る。次いで、この水分散ゾルを約80〜95℃の温度に加熱した後、これに前記過酸化ジルコン酸水溶液と前記珪酸水溶液を徐々に添加し、さらに添加終了後約0.5〜2時間熟成する。
次いで、得られた混合液のpHを必要に応じて7〜10に調整した後、この混合液をオートクレーブに入れて、約160〜170℃の温度で約16〜20時間、加熱する。
【0055】
次に、得られたゾルを室温まで冷却した後、限外濾過膜装置で濃縮して、固形分含有量が約10〜30重量%の水分散ゾルを得る。この水分散ゾル中に含まれる無機酸化物微粒子は、ルチル型の結晶構造を有する、チタン、スズおよびケイ素を含む複合酸化物微粒子(核粒子)の表面を、ジルコニウムとケイ素とを含む複合酸化物で被覆してなる無機酸化物微粒子である。この無機酸化物微粒子を含む水分散ゾルの外観は、通常、透明な淡乳白色を呈している。
【0056】
なお、前記無機酸化物微粒子の被覆層中に含まれるカリウム化合物の含有量を増減させる方法については、上記の「アナターゼ型結晶構造を有するチタン系複合酸化物微粒子」関する説明のところで述べた方法と同様である。
このようにして、カリウム化合物をK2O換算基準で1.0〜7.0重量%含む複合酸化物(被覆層)で被覆してなる無機酸化物微粒子を含む水分散ゾルを得ることができる。
さらに、前記無機酸化物微粒子の被覆層中に、その他の金属成分、たとえばアルミニウムやアンチモンなどを含ませる場合には、前記過酸化ジルコン酸水溶液に、予め調製したこれらの金属を含む水溶液と前記珪酸水溶液を添加してオートクレーブ中で加熱処理すればよい。これにより、ケイ素とこれらの金属とを含む複合酸化物微粒子を含む水分散ゾルが得られる。
【0057】
(3)被覆した無機酸化物微粒子を含むメタノール分散ゾルの調製例
上記で得られた無機酸化物微粒子を含む水分散ゾルを、表面処理剤としてのテトラエトキシシランを溶解させたメタノール溶液に撹拌下で添加した後、約40〜60℃の温度で約1〜20時間、加熱する。
次に、この混合溶液を室温まで冷却してから、限外濾過膜装置を用いて分散媒を水からメタノールに置換する。
【0058】
さらに、得られたメタノール分散液を限外濾過膜装置で濃縮して、固形分含有量が10〜30重量%の無機酸化物微粒子を含むメタノール分散ゾルを調製する。
このようにして得られる無機酸化物微粒子(すなわち、ルチル型の結晶構造を有する、チタン、スズおよびケイ素を含む複合酸化物微粒子の表面を、ジルコニウムとケイ素とを含む複合酸化物で被覆してなる微粒子)を含むメタノール分散ゾルの外観は、透明な淡青白色である。また、前記無機酸化物微粒子の平均粒子径は、動的光散乱法で測定したとき、約4〜40nmの範囲にある。
【0059】
[光学基材用塗布液]
光学基材用塗布液A
本発明に係る光学基材用塗布液Aは、
(1)チタニウムの酸化物微粒子、および/またはチタニウムと、ジルコニウム、スズ、タングステン、ニオブ、セリウムおよびケイ素から選ばれた1種または2種以上の金属元素を含む複合酸化物微粒子からなる核粒子の表面を、ケイ素と、ジルコニウム、アルミニウムおよびアンチモンから選ばれた1種または2種以上の金属元素の酸化物および/または複合酸化物で被覆した無機酸化物微粒子中に、カリウム化合物(酸化物としてのK2Oを除く)をK2O換算基準で1.0〜8.0重量%含ませたコアシェル構造を有する無機酸化物微粒子、および
(2)下記一般式(I)で表される有機ケイ素化合物および/またはその加水分解物
を含むものである。
1a2bSi(OR34-(a+b) (I)
(式中、R1は炭素数1〜6のアルキル基、ビニル基を含有する炭素数8以下の有機基、エポキシ基を含有する炭素数8以下の有機基、メタクリロキシ基を含有する炭素数8以下の有機基、メルカプト基を含有する炭素数1〜5の有機基またはアミノ基を含有する炭素数1〜5の有機基であり、R2は炭素数1〜3のアルキル基、アルキレン基、シクロアルキル基もしくはハロゲン化アルキル基またはアリル基であり、R3は炭素数1〜3のアルキル基、アルキレン基またはシクロアルキル基である。また、aは0または1の整数、bは0、1または2の整数である。)
【0060】
前記無機酸化物微粒子は、有機ケイ素化合物(以下、「有機ケイ素化合物(1)」という)またはアミン系化合物で表面処理されたものであることが好ましい。
前記の表面処理に使用される有機ケイ素化合物としては、加水分解性基を有する従来公知のシランカップリング剤を用いることができ、その種類は、用途や溶媒の種類などに応じて適宜選定される。これらのシランカップリング剤は、1種類だけでなく2種類以上を使用してもよい。この有機ケイ素化合物(1)としては、具体的には、以下の(a)〜(d)の化合物が挙げられる。
【0061】
(a)一般式R3SiXで表される単官能性シラン
(式中、Rは、アルキル基、フェニル基、ビニル基、メタクリロキシ基、メルカプト基、アミノ基またはエポキシ基を有する有機基を表し、Xは、アルコキシ基、クロロ基等の加水分解性基を表す。)
その代表例としては、トリメチルエトキシシラン、ジメチルフェニルエトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン等が挙げられる。
(b)一般式R2SiX2で表される二官能性シラン
(式中、RおよびXは前記同様である。)
その代表例としては、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0062】
(c)一般式RSiX3で表される三官能性シラン
(式中、RおよびXは前記同様である。)
その代表例としては、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等が挙げられる。
(d)一般式SiX4で表される四官能性シラン
(式中、Xは前記同様である。)
その代表例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のテトラアルコキシシランなどが挙げられる。
【0063】
この表面処理に際し、前記有機ケイ素化合物(1)は、前記無機酸化物微粒子と混合した後にその加水分解性基を加水分解させてもよく、あるいはその加水分解性基を部分加水分解または加水分解させた後に前記無機酸化物微粒子と混合して更に必要に応じて加水分解させてもよい。
また、この表面処理の操作が終了した段階では、前記加水分解性基のすべてが、前記無機酸化物微粒子の被覆層の表面に存在する−OH基と反応した状態となっていることが好ましいが、その一部が未反応のまま残存した状態であってもよい。なお、この表面処理を行なう場合には、前記無機酸化物微粒子として、その被覆層表面に−OH基を有する無機酸化物微粒子を使用することが望ましい。
【0064】
前記アミン系化合物としては、アンモニア;エチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミン、n−プロピルアミン等のアルキルアミン;ベンジルアミン等のアラルキルアミン;ピペリジン等の脂環式アミン;モノエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン;テトラメチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等の第4級アンモニウム塩または第4級アンモニウムハイドロオキサイドなどが挙げられる。
【0065】
前記無機酸化物微粒子と混合して使用される、上記一般式(I)で表される有機ケイ素化合物(以下、「有機ケイ素化合物(2)」という)としては、アルコキシシラン化合物がその代表例として挙げられ、具体的には、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、トリメチルクロロシラン、α−グルシドキシメチルトリメトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキキシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキキシランなどがある。これらの中でも、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリメトキシシランなどを使用することが好ましい。また、これらの有機ケイ素化合物(2)は、1種類だけでなく2種類以上を使用してもよい。
【0066】
また、本発明に係る光学基材用塗布液Aを調製する際に、前記有機ケイ素化合物(2)は、無溶媒下またはアルコール等の極性有機溶媒中で、酸および水の存在下で部分加水分解または加水分解した後に、前記無機酸化物微粒子と混合することが好ましい。ただし、有機ケイ素化合物(2)は、前記無機酸化物微粒子と混合した後に、部分加水分解または加水分解してもよい。
【0067】
このようにして、本発明に係る光学基材用塗布液Aは、前記有機ケイ素化合物(2)および/またはその加水分解物と前記無機酸化物微粒子とを混合して調製されるが、その混合割合は、前記有機ケイ素化合物(2)をSiO2基準に換算した重量をXで表し、前記無機酸化物微粒子の重量をYで表したとき、その重量比(X/Y)が30/70〜90/10の範囲にあることが好ましい。ここで、前記重量比が30/70未満であると、光学基材との密着性が低下し、また前記重量比が90/10を超えると、塗膜の屈折率が低くなってしまうので、好ましくない。
【0068】
本発明に係る光学基材用塗布液Aは、ハードコート層の染色性や、プラスチックレンズ基材等への密着性を向上させ、更にはクラック発生を防止するために、上記の成分に加えて、未架橋エポキシ化合物を含有していてもよい。
この未架橋エポキシ化合物としては、たとえば1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル等が挙げられる。これらの中でも1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテルなどを使用することが好ましい。また、これらの未架橋エポキシ化合物は、1種類だけでなく2種類以上を使用してもよい。
【0069】
さらに、本発明に係る光学基材用塗布液Aは、上記以外の成分、たとえば界面活性剤、レベリング剤または紫外線吸収剤、さらには特許文献2、特許文献3、特開平11−310755号公報、国際出願公報WO2007/046357などの従来公知の文献に記載されている有機化合物や無機化合物などを含んでいてもよい。
また、このようにして調製された光学基材用塗布液Aは、ハードコート層形成用塗布液として好適に使用することができる。
【0070】
光学基材用塗布液B
本発明に係る光学基材用塗布液Bは、
(1)チタニウムの酸化物微粒子、および/またはチタニウムと、ジルコニウム、スズ、タングステン、ニオブ、セリウムおよびケイ素から選ばれた1種または2種以上の金属元素を含む複合酸化物微粒子からなる核粒子の表面を、ケイ素と、ジルコニウム、アルミニウムおよびアンチモンから選ばれた1種または2種以上の金属元素の酸化物および/または複合酸化物で被覆した無機酸化物微粒子中に、カリウム化合物(酸化物としてのK2Oを除く)をK2O換算基準で1.0〜8.0重量%含ませたコアシェル構造を有する無機酸化物微粒子、および
(2)熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂
を含むものである。
【0071】
前記無機酸化物微粒子は、有機ケイ素化合物またはアミン系化合物で表面処理されたものであることが好ましい。
前記の表面処理に使用される有機ケイ素化合物やアミン系化合物については、上記のものから適宜選択して使用することができるので、ここではその説明を省略する。
【0072】
前記無機酸化物微粒子と混合して使用される熱硬化性樹脂としては、たとえばウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、シリコーン系樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ウレタン系樹脂やエポキシ系樹脂などを使用するこが好ましい。また、これらの熱硬化性樹脂は、1種類だけでなく2種類以上を使用してもよい。
【0073】
前記無機酸化物微粒子と混合して使用される熱可塑性樹脂としては、たとえばアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂およびエステル系樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ウレタン系樹脂やエステル系樹脂などを使用するこが好ましい。また、これらの熱可塑性樹脂は、1種類だけでなく2種類以上を使用してもよい。
【0074】
さらに、本発明に係る光学基材用塗布液Bは、上記以外の成分、たとえば中和剤、界面活性剤または紫外線吸収剤、さらには国際出願公報WO2007/026529などの従来公知の文献に記載されている有機化合物や無機化合物などを含んでいてもよい。
また、このようにして調製された光学基材用塗布液Bは、プライマー層形成用塗布液として好適に使用することができる。
【0075】
[光学基材]
本発明で使用される光学基材としては、各種のプラスチック基材があり、これを光学レンズとして使用する場合には、ポリスチレン樹脂、アリル樹脂(特に、芳香族系アリル樹脂)、ポリカーボネート樹脂、ポリチオウレタン樹脂、ポリチオエポキシ樹脂などで構成されたプラスチックレンズ基材がある。また、光学レンズ以外に用いられるプラスチック基材としては、PMMA樹脂、ABS樹脂、エポキシ樹脂、ポリサルフォン樹脂などで構成されたプラスチック基材がある。
なお、本発明において使用される光学基材は、現在、市販または試験供給されているこれらのプラスチック基材から適宜選択して使用することができる。
【0076】
[測定方法]
次に、本発明の実施例その他で使用された測定方法および評価試験法を具体的に述べれば、以下の通りである。
(1)粒子の平均粒子径
無機酸化物微粒子の水分散ゾル(固形分含有量20重量%)7.0gを長さ3cm、幅2cm、高さ2cmの透過窓付き円柱状ステンレスセルに入れて、動的光散乱法による超微粒子粒度分析装置(Honeywell社製、型式9340-UPA150)を用いて、粒子径分布を測定し、これより平均粒子径を算出する。
【0077】
(2)粒子の比表面積
無機酸化物微粒子の乾燥粉体を磁性ルツボ(B−2型)に約30ml採取し、300℃の温度で2時間乾燥後、デシケータに入れて室温まで冷却する。次に、サンプルを1g取り、全自動表面積測定装置(湯浅アイオニクス社製、マルチソーブ12型)を用いて、比表面積(m2/g)をBET法にて測定する。
【0078】
(3)粒子中に含まれる固体酸の有無
無機酸化物微粒子の水分散ゾルを磁性ルツボ(B−2型)に約30ml採取し、200℃で3時間乾燥後、デシケータに入れて室温まで冷却する。次に、サンプルを1.5g取り、MULTI MICRO CALORIMETER((株)東京理工製、MMC−511SV)を用いて、フリーの固体酸量(すなわち、固体酸残量)をアンモニアの吸着量として測定する。これにより、前記無機酸化物微粒子中に存在する固体酸の有無を確認する。
しかし、この測定方法から得られる固体酸量は、前記無機酸化物微粒子中に含まれる固体酸の総量を示すものではない。すなわち、前記微粒子の調製過程で前記カリウム化合物などと化合した固体酸は、アンモニアを吸着しないため、これを測定することができないからである。
【0079】
(4)核粒子の結晶形態
無機酸化物微粒子の水分散ゾルを磁性ルツボ(B−2型)に約30ml採取し、110℃12時間乾燥後、デシケータに入れて室温まで冷却する。次に、乳鉢にて15分粉砕後、X線回折装置(理学電気(株)製、RINT1400)を用いて結晶形態を測定する。
【0080】
(5)粒子中に含まれる金属酸化物の含有量
無機酸化物微粒子の水分散ゾル(試料)をジルコニアボールに採取し、乾燥、焼成した後、Na22とNaOHを加えて溶融する。さらに、H2SO4とHClで溶解し、純水で希釈した後、ICP装置(島津製作所(株)製、ICPS−8100)を用いて、チタニウム、スズおよびシリカの含有量を酸化物換算基準(TiO2、SnO2およびSiO2)で測定する。
次いで、前記試料を白金皿に採取し、HFとH2SO4を加えて加熱し、HClで溶解する。さらに、これを純水で希釈した後、ICP装置((株)島津製作所製、ICPS−8100)を用いてジルコニウムの含有量を酸化物換算基準(ZrO2)で測定する。
次に、前記試料を白金皿に採取し、HFとH2SO4を加えて加熱し、HClで溶解する。さらに、これを純水で希釈した後、原子吸光装置((株)日立製作所製、Z−5300)を用いてカリウムの含有量を酸化物換算基準(K2O)で測定する。
【0081】
(6)外観(干渉縞)
内壁が黒色である箱の中に蛍光灯「商品名:メロウ5N」(東芝ライテック(株)製、三波長型昼白色蛍光灯)を取り付け、蛍光灯の光を以下に示す実施例基板および比較例基板の反射防止膜表面で反射させ、光の干渉による虹模様(干渉縞)の発生を目視にて確認し、以下の基準で評価する。
S:干渉縞が殆ど無い
A:干渉縞が目立たない
B:干渉縞が認められるが、許容範囲にある
C:干渉縞が目立つ
D:ぎらつきのある干渉縞がある。
【0082】
(7)外観(曇り)
内壁が黒色である箱の中に蛍光灯「商品名:メロウ5N」(東芝ライテック(株)製、三波長型昼白色蛍光灯)を取り付け、以下に示す実施例基板および比較例基板を蛍光灯の直下に垂直に置き、これらの透明度(曇りの程度)を目視にて確認し、以下の基準で評価する。
A:曇りが無い
B:僅かに曇りがある
C:明らかな曇りがある
D:著しい曇りがある。
【0083】
(8)耐擦傷性試験
ハードコート層を形成した基板の表面をボンスタースチールウール♯0000(日本スチールウール(株)製)で手擦りし、傷の入り具合を目視にて判定し、以下の基準で評価する。
A:殆ど傷が入らない
B:若干の傷が入る
C:かなりの傷が入る
D:擦った面積のほぼ全面に傷が入る。
【0084】
(9)密着性試験
ハードコート層を形成した基板のレンズ表面に、ナイフにより1mm間隔で切れ目を入れ、1平方mmのマス目を100個形成し、セロハン製粘着テープを強く押し付けた後、プラスチックレンズ基板の面内方向に対して90度方向へ急激に引っ張り、この操作を合計5回行い、剥離しないマス目の数を数え、以下の基準で評価する。
良好:剥離していないマス目の数が95個以上
不良:剥離していないマス目の数が95個未満。
【0085】
(10)耐候性試験
ハードコート層を形成した基板をキセノンウエザーメーター(スガ試験機(株)製X−75型)で曝露試験をした後、外観の確認および前記の密着性試験と同様の試験を行い、以下の基準で評価する。なお、曝露時間は、反射防止膜を有している基板は200時間、反射防止膜を有していない基板は50時間とする。
良好:剥離していないマス目の数が95個以上
不良:剥離していないマス目の数が95個未満。
【0086】
(11)耐光性試験
退色試験用水銀ランプ(東芝(株)製H400−E)により紫外線を50時間照射し、試験前後のレンズ色の目視確認を行い、以下の基準で評価する。なお、ランプと試験片との照射距離は、70mmとし、ランプの出力は、試験片の表面温度が45±5℃となるように調整する。また、この試験は、反射防止膜をハードコート層の表面に施したプラスチックレンズを対象として行ったものである。
○:あまり変色が認められない
△:若干の変色が認められる
×:明らかな変色が認められる。
【実施例】
【0087】
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明する。しかし、本発明は、これらの実施例に記載された範囲に限定されるものではない。
【0088】
[実施例1]
アナターゼ型結晶構造を有するチタン系複合酸化物微粒子(1)およびゾル
(1)核粒子としての無機酸化物微粒子を含む水分散ゾルの調製
四塩化チタン(大阪チタニウムテクノロジ-ズ(株)製)をTiO2換算基準で2.0重量%含む四塩化チタン水溶液100kgと、アンモニアを15重量%含むアンモニア水(宇部興産(株)製)とを混合して、pH8.5の白色スラリー液を調製した。次いで、このスラリーを濾過した後、純水(触媒化成工業(株)製)で洗浄して、固形分含有量が10重量%の含水チタン酸ケーキ20kgを得た。
次に、このケーキ20kgに、過酸化水素を35重量%含む過酸化水素水(三菱瓦斯化学(株)製)22.84kgと純水57.16kgとを加えた後、80℃の温度で1時間、撹拌下で加熱して、過酸化チタン酸をTiO2換算基準で2重量%含む過酸化チタン酸水溶液100kgを得た。この過酸化チタン酸水溶液は、透明な黄褐色でpHは8.1であった。
【0089】
次いで、前記過酸化チタン酸水溶液22.5kgに、平均粒子径が7nmのシリカ微粒子を15重量%含むシリカゾル(触媒化成工業(株)製)496.5gと純水29.45kgとを混合して、オートクレーブ(耐圧硝子工業(株)製、120L)中にて165℃の温度で18時間、加熱した。
次に、得られたゾルを室温まで冷却した後、限外濾過膜装置(旭化成(株)製、ACV−3010)を用いて濃縮して、固形分含有量が10重量%の水分散ゾル5.245kgを得た。
このようにして得られた水分散ゾル中に含まれる無機酸化物微粒子を上記の方法で測定したところ、アナターゼ型結晶構造を有する、チタンおよびケイ素を含む複合酸化物微粒子(以下、「無機酸化物微粒子1Ac」という)であった。さらに、この無機酸化物微粒子1Ac中に含まれる金属成分の含有量を測定したところ、各金属成分の酸化物換算基準で、TiO288.0重量%およびSiO212.0重量%であった。
【0090】
(2)被覆した無機酸化物微粒子を含む水分散ゾルの調製
オキシ塩化ジルコニウム(太陽鉱工(株)製)をZrO2換算基準で2重量%含むオキシ塩化ジルコニウム水溶液26.3kgに、アンモニアを15重量%含むアンモニア水を撹拌下で徐々に添加して、ジルコニウムの水和物を含むpH8.5のスラリー液を得た。次いで、このスラリーを濾過した後、純水で洗浄して、ジルコニウム成分をZrO2換算基準で10重量%のケーキ5.26kgを得た。
次に、このケーキ200gに純水1.80kgを加え、さらに水酸化カリウム(関東化学(株)製)を10重量%含む水酸化カリウム水溶液120gを加えてアルカリ性にした後、過酸化水素を35重量%含む過酸化水素水400gを加えて、50℃の温度に加熱してこのケーキを溶解した。さらに純水1.48kgを加えて、過酸化ジルコン酸をZrO2に換算基準で0.5重量%含む過酸化ジルコン酸水溶液4.0kgを得た。なお、この過酸化ジルコン酸水溶液のpHは、12であった。
【0091】
一方、市販の水ガラス(AGCエスアイテック(株)製)を純水にて希釈した後、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製)を用いて脱アルカリして、ケイ素成分をSiO2換算基準で2重量%含む珪酸水溶液を得た。なお、この珪酸水溶液のpHは、2.3であった。
次に、前記工程(1)で得られた無機酸化物微粒子1Acを含む水分散ゾル3.0kgに純水12.0kgを加えて撹拌することにより、固形分含有量が2重量%の水分散ゾルを得た。次いで、この水分散ゾルを90℃の温度に加熱した後、これに前記過酸化ジルコン酸水溶液1020gと珪酸水溶液795gを徐々に添加し、さらに添加終了後、90℃の温度に保ちながら攪拌下で1時間熟成した。
次いで、この混合液をオートクレーブ(耐圧硝子工業(株)製、50L)に入れて、165℃の温度で18時間、加熱処理を行った。
次に、得られた混合液を室温まで冷却した後、限外濾過膜装置(旭化成(株)製、SIP−1013)で濃縮して、固形分含有量が20重量%の水分散ゾル1Aを得た。
【0092】
このようにして得られた水分散ゾル中に含まれる無機酸化物微粒子を上記の方法で測定したところ、アナターゼ型の結晶構造を有する、チタンおよびケイ素を含む複合酸化物微粒子(核粒子)の表面を、ジルコニウムおよびケイ素を含む複合酸化物で被覆してなる無機酸化物微粒子(以下、「無機酸化物微粒子1Aw」という)であった。なお、この無機酸化物微粒子1Awを含む水分散ゾルの外観は、透明な淡乳白色であった。
【0093】
さらに、前記無機酸化物微粒子1Aw中に含まれる金属成分を測定したところ、各金属成分の酸化物換算基準で、TiO282.2重量%、SiO214.6重量%、ZrO21.5重量%およびK2O1.7重量%であった。この粒子全体の測定結果と、前記無機酸化物微粒子1Ac(核粒子)の測定結果より、前記被覆層中に含まれる金属成分の含有比率を算出したところ、粒子全量に対してZrO21.5重量%、SiO23.4重量%およびK2O1.7重量%であった。
また、前記無機酸化物微粒子中に含まれる固体酸残量をNH3吸着量として測定したところ、0.06mmol/gであった。
さらに、前記無機酸化物微粒子1Awの平均粒子径は、上記の超微粒子粒度分析装置で測定したとき、10nmであり、またその乾燥粉体の比表面積は、223m2/gであった。
また、該無機酸化物微粒子中にK20が含まれているかどうかを、X線回折装置(理学電気(株)製、RINT1400)を用いて測定したところ、結晶物としてのK20のピークは検出されなかった。
【0094】
(3)被覆した無機酸化物微粒子を含むメタノール分散ゾルの調製
前記工程(2)で得られた無機酸化物微粒子1Awを含む水分散ゾルを、表面処理剤としてのテトラエトキシシラン(多摩化学工業(株)製)を溶解させたメタノール溶液に撹拌下で添加した後、50℃の温度で6時間、加熱した。
次に、この混合溶液を室温まで冷却してから、限外濾過膜を用いて分散媒を水からメタノール(中国精油(株)製)に置換した。
さらに、得られたメタノール分散液を限外濾過膜(旭化成(株)製、SIP−1013)で濃縮して、固形分含有量が20重量%の無機酸化物微粒子1Awを含むメタノール分散ゾル1Aを調製した。
このようにして得られる無機酸化物微粒子を含むメタノール分散ゾルの外観は、透明な淡青白色であった。
【0095】
[実施例2]
アナターゼ型結晶構造を有するチタン系複合酸化物微粒子(2)およびゾル
(1)核粒子としての無機酸化物微粒子を含む水分散ゾルの調製
四塩化チタン(大阪チタニウムテクノロジ-ズ(株)製)をTiO2換算基準で2.0重量%含む四塩化チタン水溶液100kgと、アンモニアを15重量%含むアンモニア水(宇部興産(株)製)とを混合して、pH8.5の白色スラリー液を調製した。次いで、このスラリーを濾過した後、純水で洗浄して、固形分含有量が10重量%の含水チタン酸ケーキ20kgを得た。
【0096】
次に、このケーキ5.0kgに、過酸化水素を35重量%含む過酸化水素水(三菱瓦斯化学(株)製)5.71kgと純水14.29kgとを加えた後、80℃の温度で1時間、撹拌下で加熱して、過酸化チタン酸をTiO2換算基準で2重量%含む過酸化チタン酸水溶液25kgを得た。さらに、純水25.0kgを加えて、過酸化チタン酸をTiO2換算基準で1重量%含む過酸化チタン酸水溶液を得た。この過酸化チタン酸水溶液は、透明な黄褐色でpHは8.3であった。
【0097】
次いで、前記過酸化チタン酸水溶液50.0kgに陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製)3.0kgを加えた後、オキシ塩化ジルコニウムをZrO2換算基準で1重量%含むオキシ塩化ジルコニウム水溶液(太陽鉱工(株)製)5.0kgを徐々に添加して混合した。その後、前記陰イオン交換樹脂を分離除去した。さらに、平均粒子径が7nmのシリカ微粒子を15重量%含むシリカゾル(触媒化成工業(株)製)607gおよび純水(触媒化成工業(株)製)8.5kgを加えて混合した後、水酸化カリウムを1重量%含む水酸化カリウム水溶液(関東化学(株)製)を1.67kg加えて、オートクレーブ中にて165℃の温度で18時間、加熱した。
【0098】
次に、得られたゾルを室温まで冷却した後、限外濾過膜装置(旭化成(株)製、ACV−3010)で濃縮して、固形分含有量が10重量%の水分散ゾル6.4kgを得た。
このようにして得られた水分散ゾル中に含まれる無機酸化物微粒子を上記の方法で測定したところ、アナターゼ型結晶構造を有する、チタン、ケイ素、およびジルコニウムを含む複合酸化物微粒子(以下、「無機酸化物微粒子2Ac」という)であった。さらに、この無機酸化物微粒子2Ac中に含まれる金属成分の含有量を測定したところ、各金属成分の酸化物換算基準で、TiO278.4重量%、SiO211.8重量%、ZrO27.8重量%およびK2O2.0重量%であった。
【0099】
(2)被覆した無機酸化物微粒子を含む水分散ゾルの調製
実施例1に示す方法と同様な条件下で、前記工程(1)で得られた無機酸化物微粒子2Acの表面を、ジルコニウム、ケイ素およびカリウムを含む複合酸化物で被覆してなる無機酸化物微粒子を含む水分散ゾル2Aを得た。
このようにして得られた水分散ゾル中に含まれる無機酸化物微粒子を上記の方法で測定したところ、アナターゼ型の結晶構造を有する、チタン、ケイ素およびジルコニウムを含む複合酸化物微粒子(核粒子)の表面を、ジルコニウムおよびケイ素を含む複合酸化物で被覆してなる無機酸化物微粒子(以下、「無機酸化物微粒子2Aw」という)であった。なお、この無機酸化物微粒子2Awを含む水分散ゾルの外観は、透明な淡乳白色であった。
【0100】
また、前記無機酸化物微粒子2Aw中に含まれる金属成分を測定したところ、各金属成分の酸化物換算基準で、TiO273.5重量%、SiO214.4重量%、ZrO28.8重量%およびK2O3.3重量%であった。この粒子全体の測定結果と、前記無機酸化物微粒子2Ac(核粒子)の測定結果より、前記被覆層中に含まれる金属成分の含有比率を算出したところ、粒子全量に対してZrO21.5重量%、SiO23.3重量%およびK2O1.4重量%であった。
さらに、前記無機酸化物微粒子中に含まれる固体酸残量をNH3吸着量として測定したところ、0.05mmol/gであった。
さらに、前記無機酸化物微粒子2Awの平均粒子径は、動的光散乱法で測定したとき、15nmであり、またその乾燥粉体の比表面積は、206m2/gであった。
【0101】
(3)被覆した無機酸化物微粒子を含むメタノール分散ゾルの調製
前記工程(2)で得られた無機酸化物微粒子2Awを含む水分散ゾルを、表面処理剤としてのテトラエトキシシラン(多摩化学工業(株)製)を溶解させたメタノール溶液に撹拌下で添加した後、50℃の温度で6時間、加熱した。
次いで、実施例1に示す方法と同様な条件下で、溶媒置換を行い、固形分含有量が20重量%の無機酸化物微粒子2Awを含むメタノール分散ゾル2Aを調製した。
【0102】
[実施例3および比較例1]
アナターゼ型結晶構造を有するチタン系複合酸化物微粒子(3)〜(8)およびゾル
(1)核粒子としての無機酸化物微粒子を含む水分散ゾルの調製
実施例1に示す方法と同様な条件下で、過酸化チタン酸をTiO2換算基準で2重量%含む過酸化チタン酸水溶液100kgを得た。
次いで、前記過酸化チタン酸水溶液から12.87kgを取り、これらに平均粒子径が7nmのシリカ微粒子を15重量%含むシリカゾル(触媒化成工業(株)製)284gと純水(触媒化成工業(株)製)16.846kgを混合し、さらに水酸化カリウム(関東化学(株)製)を1重量%含む水酸化カリウム水溶液を表1に示す割合で加えて、オートクレーブ(耐圧硝子工業(株)製、50L)中にて165℃の温度で18時間、加熱した。
さらに、表1に示す割合で、前記過酸化チタン酸水溶液に前記シリカゾルおよび前記水酸化カリウム水溶液を加えて、上記と同様な条件下で、オートクレーブ中にて加熱処理を行った。
【0103】
次に、得られたゾルを室温まで冷却した後、限外濾過膜装置(旭化成(株)製、SIP−1013)で濃縮して、固形分含有量が10重量%の水分散ゾルを得た。
このようにして得られた、それぞれの水分散ゾル中に含まれる無機酸化物微粒子を上記の方法で測定したところ、アナターゼ型結晶構造を有する、チタンおよびケイ素を含む複合酸化物微粒子(以下、「無機酸化物微粒子3Ac〜8Ac」、という)であった。さらに、これらの無機酸化物微粒子3Ac〜8Ac中に含まれる金属成分の含有量を、実施例1の場合と同様に測定した。その結果を表1に示す。
【0104】
(2)被覆した無機酸化物微粒子を含む水分散ゾルの調製
実施例1に示す方法と同様な条件下で、ジルコニウム成分をZrO2換算基準で10重量%含むケーキ5.26kgを得た。
次に、このケーキ51gに純水461gを加えてジルコニウム成分をZrO2換算基準で1重量%含むスラリー液を調製した後、さらに水酸化カリウム(関東化学(株)製)を10重量%含む水酸化カリウム水溶液を102g加えてアルカリ性にした後、過酸化水素を35重量%含む過酸化水素水(三菱瓦斯化学(株)製)102gを加え、さらに純水を306g加えて、50℃の温度に加熱してこのケーキを溶解した。これにより、過酸化ジルコン酸をZrO2換算基準で0.5重量%含む過酸化ジルコン酸水溶液1020gを得た。
さらに、表1に示す割合で、前記ケーキに前記水酸化カリウム水溶液および前記過酸化水素水を加えて、上記と同様な条件下で、過酸化ジルコン酸をZrO2換算基準で0.5重量%含む過酸化ジルコン酸水溶液を得た。
【0105】
次いで、実施例1に示す方法と同様な条件下で、市販の水ガラス(AGCエスアイテック(株)製)を純水にて希釈した後、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製)を用いて脱アルカリして、ケイ素成分をSiO2換算基準で2重量%含む珪酸水溶液を得た。
次に、前記工程(1)で得られた無機酸化物微粒子3Ac〜8Acを含む水分散ゾル3.0kgにそれぞれ純水12.0kgを加えて撹拌することにより、固形分含有量が2重量%の水分散ゾルを得た。
【0106】
次いで、前記無機酸化物微粒子3Acの水分散ゾルを90℃の温度に加熱した後、これに前記過酸化ジルコン酸水溶液1020gと前記珪酸水溶液795gを徐々に添加し、さらに添加終了後、90℃の温度に保ちながら攪拌下で1時間熟成した。
さらに、前記無機酸化物微粒子4Ac〜8Acを含む水分散ゾルについても、表1に示す割合で、前記過酸化ジルコン酸水溶液および前記珪酸水溶液を添加して、上記と同様な条件下で熟成を行った。
次いで、これらの混合液をそれぞれオートクレーブに入れて、165℃の温度で18時間、加熱処理を行った。
次に、得られた混合液を室温まで冷却した後、限外濾過膜装置(旭化成(株)製、SIP−1013)を用いて濃縮して、固形分含有量が20重量%の水分散ゾル3A〜8Aを得た。
【0107】
このようにして得られた水分散ゾル中に含まれる無機酸化物微粒子を上記の方法で測定したところ、アナターゼ型の結晶構造を有する、チタンおよびケイ素を含む複合酸化物微粒子(核粒子)の表面を、ジルコニウムおよびケイ素を含む複合酸化物で被覆してなる無機酸化物微粒子(以下、「無機酸化物微粒子3Aw〜8Aw」という)であった。
また、これらの無機酸化物微粒子3Aw〜8Aw中に含まれる金属成分の含有量を、実施例1の場合と同様に測定した。さらに、実施例1の場合と同様に、該微粒子中に含まれる固体酸残量をNH3吸着量として測定した。その結果を表1に示す。
【0108】
(3)被覆した無機酸化物微粒子を含むメタノール分散ゾルの調製
前記工程(2)で得られた無機酸化物微粒子3Aw〜8Awを含む、それぞれの水分散ゾルを、表面処理剤としてのテトラエトキシシラン(多摩化学工業(株)製)を溶解させたメタノール溶液に撹拌下で添加した後、50℃の温度で6時間、加熱した。
次いで、実施例1に示す方法と同様な条件下で、溶媒置換を行い、固形分含有量が20重量%の無機酸化物微粒子3Aw〜8Awを含むメタノール分散ゾル3A〜8Aをそれぞれ調製した。
【0109】
【表1】

【0110】
[比較例2]
アナターゼ型結晶構造を有するチタン系複合酸化物微粒子(9)およびゾル
(1)被覆した無機酸化物微粒子中に含まれるカリウム含有量の調整
実施例1の前記工程(2)で得られた無機酸化物微粒子1Awを含む水分散ゾル1A2000gに、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製)50gを加えて、室温にて1時間撹拌した。
これにより、前記無機酸化物微粒子中に含まれるカリウム化合物の含有量を低減させた無機酸化物微粒子9Awを含む水分散ゾル9Aを得た。
このようにして得られた無機酸化物微粒子9Aw中に含まれる金属成分を測定したところ、各金属成分の酸化物換算基準で、TiO282.8重量%、SiO215.1重量%、ZrO21.6重量%およびK2O0.5重量%であった。この粒子全体の測定結果と、前記無機酸化物微粒子1Ac(核粒子)の測定結果より、前記被覆層中に含まれる金属成分の含有比率を算出したところ、粒子全量に対してZrO21.6重量%、SiO23.8重量%およびK2O0.5重量%であった。
さらに、前記無機酸化物微粒子中に含まれる固体酸残量をNH3吸着量として測定したところ、0.09mmol/gであった。
【0111】
(2)被覆した無機酸化物微粒子を含むメタノール分散ゾルの調製
上記で得られた無機酸化物微粒子9Awを含む水分散ゾルを、表面処理剤としてのテトラエトキシシラン(多摩化学工業(株)製)を溶解させたメタノール溶液に撹拌下で添加した後、50℃の温度で6時間、加熱した。
次いで、実施例1に示す方法と同様な条件下で、溶媒置換を行い、固形分含有量が20重量%の無機酸化物微粒子9Awを含むメタノール分散ゾル9Aを調製した。
【0112】
[実施例4]
アナターゼ型結晶構造を有するチタン系複合酸化物微粒子(10)およびゾル
(1)被覆した無機酸化物微粒子中に含まれるカリウム含有量の調整
比較例1の前記工程(2)で得られた無機酸化物微粒子8Awを含む水分散ゾル8A2000gに、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製)100gを加えて、室温にて1時間撹拌した。
【0113】
これにより、前記無機酸化物微粒子中に含まれるカリウム化合物の含有量を低減させた無機酸化物微粒子10Awを含む水分散ゾル10Aを得た。
このようにして得られた無機酸化物微粒子10Aw中に含まれる金属成分を測定したところ、各金属成分の酸化物換算基準で、TiO237.1重量%、SiO236.7重量%、ZrO219.2重量%およびK2O7.0重量%であった。この粒子全体の測定結果と、前記無機酸化物微粒子8Ac(核粒子)の測定結果より、前記被覆層中に含まれる金属成分の含有比率を算出したところ、粒子全量に対してZrO219.2重量%、SiO231.6重量%およびK2O6.6重量%であった。ただし、この被覆層中に含まれるカリウム化合物の算定にあたっては、前記陽イオン交換樹脂による処理中に、前記前記無機酸化物微粒子8Acの核粒子中からはカリウムイオンなどが溶出しないとみなした。
さらに、前記無機酸化物微粒子中に含まれる固体酸残量をNH3吸着量として測定したところ、0.28mmol/gであった。
【0114】
(2)被覆した無機酸化物微粒子を含むメタノール分散ゾルの調製
上記で得られた無機酸化物微粒子10Awを含む水分散ゾルを、表面処理剤としてのテトラエトキシシラン(多摩化学工業(株)製)を溶解させたメタノール溶液に撹拌下で添加した後、50℃の温度で6時間、加熱した。
次いで、実施例1に示す方法と同様な条件下で、溶媒置換を行い、固形分含有量が20重量%の無機酸化物微粒子10Awを含むメタノール分散ゾル10Aをそれぞれ調製した。
【0115】
[実施例5]
アナターゼ型結晶構造を有するチタン系複合酸化物微粒子(11)およびゾル
(1)核粒子中に含まれるカリウム含有量の調整
実施例3の前記工程(1)で得られた無機酸化物微粒子3Acを含む水分散ゾル3A
3.0kgに、水酸化カリウム(関東化学(株)製)を1重量%含む水酸化カリウム水溶液290gを加えて、室温にて1時間撹拌した。
これにより、前記無機酸化物微粒子(核粒子)中に含まれるカリウム化合物の含有量を増加させた無機酸化物微粒子11Acを含む水分散ゾル11Aを得た。なお、このように外部から添加したカリウム化合物も、前記無機酸化物微粒子の表面に付着して、該微粒子中に取り込まれていることが分かった。これは、該微粒子の表面に存在するO・H基とカリウムイオンとが反応したことによるものと考えられる。
このようにして得られた無機酸化物微粒子11Ac中に含まれる金属成分を測定したところ、各金属成分の酸化物換算基準で、TiO286.9重量%、SiO211.8重量%およびK2O1.3重量%であった。
【0116】
(2)被覆した無機酸化物微粒子を含む水分散ゾルの調製
実施例1に示す方法と同様な条件下で、前記工程(1)で得られた無機酸化物微粒子11Acの表面を、ジルコニウムおよびケイ素を含む複合酸化物で被覆してなる無機酸化物微粒子(以下、「無機酸化物微粒子11Aw」という)を含む水分散ゾル11Aを得た。
このようにして得られた無機酸化物微粒子11Aw中に含まれる金属成分を測定したところ、各金属成分の酸化物換算基準で、TiO281.1重量%、SiO214.5重量%、ZrO21.4重量%およびK2O3.0重量%であった。この粒子全体の測定結果と、前記無機酸化物微粒子11Ac(核粒子)の測定結果より、前記被覆層中に含まれる金属成分の含有比率を算出したところ、粒子全量に対してZrO21.4重量%、SiO23.5重量%およびK2O1.8重量%であった。
さらに、前記無機酸化物微粒子中に含まれる固体酸残量をNH3吸着量として測定したところ、0.05mmol/gであった。
【0117】
(3)被覆した無機酸化物微粒子を含むメタノール分散ゾルの調製
上記で得られた無機酸化物微粒子11Awを含む水分散ゾルを、表面処理剤としてのテトラエトキシシラン(多摩化学工業(株)製)を溶解させたメタノール溶液に撹拌下で添加した後、50℃の温度で6時間、加熱した。
次いで、実施例1に示す方法と同様な条件下で、溶媒置換を行い、固形分含有量が20重量%の無機酸化物微粒子11Awを含むメタノール分散ゾル11Aを調製した。
【0118】
[比較例3]
アナターゼ型結晶構造を有するチタン系複合酸化物微粒子(12)およびゾル
実施例1の工程(1)に示す方法(すなわち、核粒子1Acの調製)と同様な条件下で、アナターゼ型結晶構造を有する、チタンおよびケイ素を含む複合酸化物微粒子(以下、「無機酸化物微粒子12Ac」という)を含む水分散ゾルを調製した。
なお、該微粒子中に含まれる金属成分の含有量を測定したところ、各金属成分の酸化物換算基準で、TiO288.0重量%およびSiO212.0重量%であった。
さらに、前記無機酸化物微粒子中に含まれる固体酸残量をNH3吸着量として測定したところ、0.02mmol/gであった。
次いで、実施例1の工程(2)に示す手段(すなわち、該微粒子の被覆)を施すことなく、実施例1の工程(3)に示す方法と同様な条件下で、該微粒子を含む水分散ゾルを、表面処理剤としてのテトラエトキシシラン(多摩化学工業(株)製)を溶解させたメタノール溶液に撹拌下で添加した後、50℃の温度で3時間、加熱した。
さらに、実施例1に示す方法と同様な条件下で、溶媒置換を行い、固形分含有量が20重量%の無機酸化物微粒子12Awを含むメタノール分散ゾル12Aを調製した。
【0119】
[実施例6]
ルチル型結晶構造を有するチタン系複合酸化物微粒子(1)およびゾル
(1)核粒子としての無機酸化物微粒子を含む水分散ゾルの調製
四塩化チタン(大阪チタニウムテクノロジ-ズ(株)製)をTiO2換算基準で7.75重量%含む四塩化チタン水溶液93.665kgと、アンモニアを15重量%含むアンモニア水(宇部興産(株)製)36.295kgとを混合し、pH9.5の白色スラリー液を調製した。次いで、このスラリーを濾過した後、純水(触媒化成工業(株)製)で洗浄して、固形分含有量が10重量%の含水チタン酸ケーキ72.6kgを得た。
次に、このケーキに、過酸化水素を35重量%含む過酸化水素水(三菱瓦斯化学(株)製)83.0kgと純水411.4kgとを加えた後、80℃の温度で1時間、撹拌下で加熱し、さらに純水159kgを加えて、過酸化チタン酸をTiO2換算基準で1重量%含む過酸化チタン酸水溶液を726kg得た。この過酸化チタン酸水溶液は、透明な黄褐色でpHは8.5であった。
【0120】
次いで、前記過酸化チタン酸水溶液72.9kgに陽イオン交換樹脂3.5kgを混合して、これに、スズ酸カリウム(昭和化工(株)製)をSnO2換算基準で1重量%含むスズ酸カリウム水溶液9.11kgを撹拌下で徐々に添加した。
次に、カリウムイオンなどを取り込んだ陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製)を分離した後、平均粒子径が7nmのシリカ微粒子を15重量%含むシリカゾル(触媒化成工業(株)製)1.2kgと純水18.0kgとを混合して、オートクレーブ(耐圧硝子工業(株)製、120L)中で165℃の温度で18時間、加熱した。
【0121】
次に、得られたゾルを室温まで冷却した後、限外濾過膜装置(旭化成(株)製、ACV−3010)で濃縮して、固形分含有量が10重量%の水分散ゾル10.0kgを得た。
このようにして得られた水分散ゾル中に含まれる無機酸化物微粒子を上記の方法で測定したところ、ルチル型結晶構造を有する、チタン、スズおよびケイ素を含む複合酸化物微粒子(以下、「無機酸化物微粒子1Bc」という)であった。さらに、この無機酸化物微粒子1Bc中に含まれる金属成分の含有量を測定したところ、各金属成分の酸化物換算基準で、TiO273.7重量%、SnO29.3重量%、SiO215.7重量%およびK2O1.3重量%であった。
【0122】
(2)被覆した無機酸化物微粒子を含む水分散ゾルの調製
オキシ塩化ジルコニウム(太陽鉱工(株)製)をZrO2換算基準で2重量%含むオキシ塩化ジルコニウム水溶液26.3kgに、アンモニアを15重量%含むアンモニア水を撹拌下で徐々に添加して、pH8.5のスラリー液を得た。次いで、このスラリーを濾過した後、純水で洗浄して、ジルコニウム成分をZrO2に換算基準で10重量%含むケーキ5.26kgを得た。
次に、このケーキ200gに純水1.80kgを加え、さらに水酸化カリウム(関東化学(株)製)を10重量%含む水酸化カリウム水溶液120gを加えてアルカリ性にした後、過酸化水素を35重量%含む過酸化水素水400gを加えて、50℃の温度に加熱してこのケーキを溶解した。さらに、純水1.48kgを加えて、過酸化ジルコン酸をZrO2換算基準で0.5重量%含む過酸化ジルコン酸水溶液4.0kgを得た。なお、この過酸化ジルコン酸水溶液のpHは、12.2であった。
【0123】
一方、市販の水ガラス(AGCエスアイテック(株)製)を純水にて希釈した後、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製)を用いて脱アルカリして、ケイ素成分をSiO2換算基準で2重量%含む珪酸水溶液を得た。なお、この珪酸水溶液液のpHは、2.3であった。
次に、前記工程(1)で得られた無機酸化物微粒子1Bcを含む水分散ゾル3.0kgに純水12.0kgを加えて撹拌することにより、固形分含有量が2重量%の水分散ゾルを得た。次いで、この水分散ゾルを90℃の温度に加熱した後、これに前記過酸化ジルコン酸水溶液1020gと珪酸水溶液795gを徐々に添加し、さらに添加終了後、90℃の温度に保ちながら攪拌下で1時間熟成した。
次いで、この混合液をオートクレーブ(耐圧硝子工業(株)製、50L)に入れて、165℃の温度で18時間、加熱処理を行った。
次に、得られた混合液を室温まで冷却した後、限外濾過膜装置(旭化成(株)製、SIP−1013)を用いて濃縮して、固形分含有量が20重量%の水分散ゾル1Bを得た。
【0124】
このようにして得られた水分散ゾル中に含まれる無機酸化物微粒子を上記の方法で測定したところ、ルチル型の結晶構造を有する、チタン、スズおよびケイ素を含む複合酸化物微粒子(核粒子)の表面を、ジルコニウムおよびケイ素を含む複合酸化物で被覆してなる無機酸化物微粒子(以下、「無機酸化物微粒子1Bw」という)であった。なお、この無機酸化物微粒子1Bwを含む水分散ゾルの外観は、透明な淡乳白色であった。
さらに、前記無機酸化物微粒子1Bw中に含まれる金属成分を測定したところ、各金属成分の酸化物換算基準で、TiO268.7重量%、SnO28.8重量%、SiO217.9重量%、ZrO21.5重量%およびK2O3.1重量%であった。この粒子全体の測定結果と、前記無機酸化物微粒子1Bc(核粒子)の測定結果より、前記被覆層中に含まれる金属成分の含有比率を算出したところ、粒子全量に対してZrO21.5重量%、SiO23.3重量%およびK2O1.9重量%であった。
また、前記無機酸化物微粒子中に含まれる固体酸残量をNH3吸着量として測定したところ、0.05mmol/gであった。
さらに、前記無機酸化物微粒子1Bwの平均粒子径は、動的光散乱法で測定したとき、15nmであり、またその乾燥粉体の比表面積は、224m2/gであった。
【0125】
(3)被覆した無機酸化物微粒子を含むメタノール分散ゾルの調製
前記工程(2)で得られた無機酸化物微粒子1Bwを含む水分散ゾルを、表面処理剤としてのテトラエトキシシラン(多摩化学工業(株)製)を溶解させたメタノール溶液に撹拌下で添加した後、50℃の温度で6時間、加熱した。
次に、この混合溶液を室温まで冷却してから、限外濾過膜装置を用いて分散媒を水からメタノール(中国精油(株)製)に置換した。
さらに、得られたメタノール分散液を限外濾過膜装置(旭化成(株)製、SIP−1013)で濃縮して、固形分含有量が20重量%の無機酸化物微粒子1Bwを含むメタノール分散ゾル1Bを調製した。
このようにして得られる無機酸化物微粒子を含むメタノール分散ゾルの外観は、透明な淡青白色であった。
【0126】
[実施例7および比較例4]
ルチル型結晶構造を有するチタン系複合酸化物微粒子(2)〜(7)およびゾル
(1)核粒子としての無機酸化物微粒子を含む水分散ゾルの調製
実施例6に示す方法と同様な条件下で、過酸化チタン酸をTiO2換算基準で1重量%含む過酸化チタン酸水溶液726kgを得た。
次いで、前記過酸化チタン酸水溶液72.9kgに陽イオン交換樹脂3.5kgを混合して、これに、スズ酸カリウム(昭和化工(株)製)をSnO2換算基準で1重量%含むスズ酸カリウム水溶液9.11kgを撹拌下で徐々に添加した。
【0127】
次に、前記過酸化チタン酸水溶液と前記スズ酸カリウム水溶液との混合液に、平均粒子径が7nmのシリカ微粒子を15重量%含むシリカゾル(触媒化成工業(株)製)1.20kgと純水(触媒化成工業(株)製)18.0kgを混合し、さらに水酸化カリウムを1重量%含む水酸化カリウム水溶液(関東化学(株)製)を1435g加えて、オートクレーブ(耐圧硝子工業(株)製、120L)中にて165℃の温度で18時間、加熱した。
さらに、表2に示す割合で、前記過酸化チタン酸水溶液に前記シリカゾルおよび前記水酸化カリウム水溶液を加えて、上記と同様な条件下で、オートクレーブ中にて加熱処理を行った。
【0128】
次に、得られたゾルを室温まで冷却した後、限外濾過膜装置(旭化成(株)製、ACV−3010)で濃縮して、固形分含有量が10重量%の水分散ゾルを得た。
このようにして得られた、それぞれの水分散ゾル中に含まれる無機酸化物微粒子を上記の方法で測定したところ、ルチル型結晶構造を有する、チタン、スズおよびケイ素を含む複合酸化物微粒子(以下、「無機酸化物微粒子2Bc〜7Bc」、という)であった。さらに、これらの無機酸化物微粒子2Bc〜7Bc中に含まれる金属成分の含有量を、実施例6の場合と同様に測定した。その結果を表2に示す。
【0129】
(2)被覆した無機酸化物微粒子を含む水分散ゾルの調製
実施例6に示す方法と同様な条件下で、ジルコニウム成分をZrO2に換算基準で10重量%含むケーキ5.26kgを得た。
次に、このケーキ51gに純水459gを加え、さらに水酸化カリウム(関東化学(株)製)を10重量%含む水酸化カリウム水溶液を102g加えてアルカリ性にした後、過酸化水素を35重量%含む過酸化水素水(三菱瓦斯化学(株)製)102gを加え、さらに純水を306g加えて、45℃の温度に加熱してこのケーキを溶解した。これにより、過酸化ジルコン酸をZrO2換算基準で0.5重量%含む過酸化ジルコン酸水溶液1020gを得た。
さらに、表2に示す割合で、前記ケーキに前記水酸化カリウム水溶液および前記過酸化水素水を加えて、上記と同様な条件下で、過酸化ジルコン酸をZrO2換算基準で0.5重量%含む過酸化ジルコン酸水溶液を得た。
【0130】
さらに、実施例6に示す方法と同様な条件下で、市販の水ガラス(AGCエスアイテック(株)製)を純水にて希釈した後、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製)を用いて脱アルカリして、ケイ素成分をSiO2換算基準で2重量%含む珪酸水溶液を得た。
次に、前記工程(1)で得られた無機酸化物微粒子2Bc〜7Bcを含む水分散ゾル3.0kgにそれぞれ純水12.0kgを加えて撹拌することにより、固形分含有量が2重量%の水分散ゾルを得た。
【0131】
次いで、前記無機酸化物微粒子2Bcの水分散ゾルを90℃の温度に加熱した後、これに前記過酸化ジルコン酸水溶液1020gと珪酸水溶液795gとを徐々に添加し、さらに添加終了後、90℃の温度に保ちながら攪拌下で1時間熟成した。
さらに、前記無機酸化物微粒子3Bc〜7Bcを含む水分散ゾルについても、表2に示す割合で、前記過酸化ジルコン酸水溶液および前記珪酸水溶液を添加して、上記と同様な条件下で熟成を行った。
次いで、これらの混合液をそれぞれオートクレーブに入れて、165℃の温度で18時間、加熱処理を行った。
次に、得られた混合液を室温まで冷却した後、限外濾過膜装置(旭化成(株)製、SIP−1013)で濃縮して、固形分含有量が20重量%の水分散ゾル2B〜7Bを得た。
【0132】
このようにして得られた水分散ゾル中に含まれる無機酸化物微粒子を上記の方法で測定したところ、ルチル型の結晶構造を有する、チタン、スズおよびケイ素を含む複合酸化物微粒子(核粒子)の表面を、ジルコニウムおよびケイ素を含む複合酸化物で被覆してなる無機酸化物微粒子(以下、「無機酸化物微粒子2Bw〜7Bw」という)であった。
また、これらの無機酸化物微粒子2Bw〜7Bw中に含まれる金属成分の含有量を、実施例6の場合と同様に測定した。さらに、実施例6の場合と同様に、該微粒子中に含まれる固体酸残量をNH3吸着量として測定した。その結果を表2に示す。
【0133】
(3)被覆した無機酸化物微粒子を含むメタノール分散ゾルの調製
前記工程(2)で得られた無機酸化物微粒子2Bw〜7Bwを含む、それぞれの水分散ゾルを、表面処理剤としてのテトラエトキシシラン(多摩化学工業(株)製)を溶解させたメタノール溶液に撹拌下で添加した後、50℃の温度で6時間、加熱した。
次いで、実施例6に示す方法と同様な条件下で、溶媒置換を行い、固形分含有量が20重量%の無機酸化物微粒子2Bw〜7Bwを含むメタノール分散ゾル2B〜7Bをそれぞれ調製した。
【0134】
【表2】

【0135】
[比較例5]
ルチル型結晶構造を有するチタン系複合酸化物微粒子(8)およびゾル
(1)核粒子としての無機酸化物微粒子に含まれるカリウム含有量の調整
実施例6の前記工程(1)で得られた無機酸化物微粒子1Bcを含む水分散ゾル3000gに、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製)80gを加えて、室温にて1時間撹拌した。
これにより、前記無機酸化物微粒子中に含まれるカリウム化合物の含有量を低減させた無機酸化物微粒子8Bcを含む水分散ゾルを得た。
このようにして得られた無機酸化物微粒子8Bc(核粒子)中に含まれる金属成分を測定したところ、各金属成分の酸化物換算基準で、TiO274.8重量%、SnO29.3重量%、SiO215.6重量%およびK2O0.3重量%であった。
【0136】
(2)被覆した無機酸化物微粒子を含むメタノール分散ゾルの調製
前記工程(1)で得られた無機酸化物微粒子8Bc(核粒子)を含む水分散ゾルを用いて、実施例6の前記工程(2)と同様な条件下で、該核粒子の表面にジルコニウムおよびケイ素を含む複合酸化物で被覆してなる無機酸化物微粒子8Bwを含む水分散ゾルを調製した。
次いで、得られた無機酸化物微粒子8Bwを含む水分散ゾル3000gに、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製)200gを加えて、室温にて1時間撹拌した。
【0137】
これにより、前記無機酸化物微粒子中に含まれるカリウム化合物の含有量を低減させた無機酸化物微粒子8Bwを含む水分散ゾル8Bを得た。
このようにして得られた無機酸化物微粒子8Bw中に含まれる金属成分を測定したところ、各金属成分の酸化物換算基準で、TiO270.6重量%、SnO28.9重量%、SiO218.3重量%、ZrO21.6重量%およびK2O0.6重量%であった。この粒子全体の測定結果と、前記無機酸化物微粒子8Bc(核粒子)の測定結果より、前記被覆層中に含まれる金属成分の含有比率を算出したところ、粒子全量に対してZrO21.6重量%、SiO23.6重量%およびK2O0.3重量%であった。
さらに、前記無機酸化物微粒子中に含まれる固体酸残量をNH3吸着量として測定したところ、0.08mmol/gであった。
【0138】
(3)被覆した無機酸化物微粒子を含むメタノール分散ゾルの調製
上記で得られた無機酸化物微粒子8Bwを含む水分散ゾルを、表面処理剤としてのテトラエトキシシラン(多摩化学工業(株)製)を溶解させたメタノール溶液に撹拌下で添加した後、50℃の温度で3時間、加熱した。
次いで、実施例6に示す方法と同様な条件下で、溶媒置換を行い、固形分含有量が20重量%の無機酸化物微粒子8Bwを含むメタノール分散ゾル8Bをそれぞれ調製した。
【0139】
[実施例8]
ルチル型結晶構造を有するチタン系複合酸化物微粒子(9)およびゾル
(1)被覆した無機酸化物微粒子中に含まれるカリウム含有量の調整
比較例4の前記工程(2)で得られた無機酸化物微粒子6Bwを含む水分散ゾル6B3000gに、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製)150gを加えて、室温にて1時間撹拌した。
これにより、前記無機酸化物微粒子中に含まれるカリウム化合物の含有量を低減させた無機酸化物微粒子9Bwを含む水分散ゾル9Bを得た。
このようにして得られた無機酸化物微粒子9Bw中に含まれる金属成分を測定したところ、各金属成分の酸化物換算基準で、TiO244.1重量%、SnO25.5重量%、SiO231.1重量%、ZrO213.8重量%およびK2O5.5重量%であった。この粒子全体の測定結果と、前記無機酸化物微粒子6Bc(核粒子)の測定結果より、前記被覆層中に含まれる金属成分の含有比率を算出したところ、粒子全量に対してZrO213.8重量%、SiO223.9重量%およびK2O2.9重量%であった。ただし、この被覆層中に含まれるカリウム化合物の算定にあたっては、前記陽イオン交換樹脂による処理中に、前記前記無機酸化物微粒子6Bcの核粒子中からはカリウムイオンなどが溶出しないとみなした。
さらに、前記無機酸化物微粒子中に含まれる固体酸残量をNH3吸着量として測定したところ、0.29mmol/gであった。
【0140】
(2)被覆した無機酸化物微粒子を含むメタノール分散ゾルの調製
上記で得られた無機酸化物微粒子9Bwを含む水分散ゾルを、表面処理剤としてのテトラエトキシシラン(多摩化学工業(株)製)を溶解させたメタノール溶液に撹拌下で添加した後、50℃の温度で6時間、加熱した。
次いで、実施例6に示す方法と同様な条件下で、溶媒置換を行い、固形分含有量が20重量%の無機酸化物微粒子9Bwを含むメタノール分散ゾル9Bをそれぞれ調製した。
【0141】
[実施例9]
ルチル型結晶構造を有するチタン系複合酸化物微粒子(10)およびゾル
(1)核粒子としての無機酸化物微粒子を含む水分散ゾルの調製
実施例6の工程(1)と同様な条件下で、ルチル型結晶構造を有する複合酸化物微粒子からなる無機酸化物微粒子10Bc(核粒子)を含む水分散ゾルを調製した。なお、この無機酸化物微粒子10Bc中に含まれる金属成分の含有量は、実施例6の場合と同様に、各金属成分の酸化物換算基準で、TiO273.7重量%、SnO29.3重量%およびSiO215.7重量%およびK2O1.3重量%であった。
【0142】
(2)被覆した無機酸化物微粒子を含む水分散ゾルの調製
実施例6に示す方法と同様な条件下で、ジルコニウム成分をZrO2換算基準で10重量%含むケーキ5.26kgを得た。
次に、このケーキ200gに純水1.80kgを加え、さらに水酸化カリウム(関東化学(株)製)を1重量%含む水酸化カリウム水溶液1.20kgを加えてアルカリ性にした後、過酸化水素を35重量%含む過酸化水素水(三菱瓦斯化学(株)製)400gを加えて、45℃の温度で加熱した。これにより、過酸化ジルコン酸をZrO2換算基準で0.5重量%含む過酸化ジルコン酸水溶液4.0kgを得た。
【0143】
さらに、水酸化カリウム(関東化学(株)製)を2.6重量%含む水酸化カリウム水溶液9.29kgに、三酸化アンチモン(日本精鉱(株)製)555gを撹拌下で加えて、三酸化アンチモンの懸濁液を得た。次いで、この懸濁液を98℃の温度に加熱した後、これに過酸化水素を35重量%含む過酸化水素水(三菱瓦斯化学(株)製)1110gを14時間かけて撹拌下で添加した。これにより、過酸化アンチモン酸をSb25換算基準で5.6重量%含む過酸化アンチモン酸水溶液を得た。これを純水にて希釈して、過酸化アンチモン酸をSb25換算基準で1重量%含む過酸化アンチモン酸水溶液を得た。
次に、実施例6に示す方法と同様な条件下で、市販の水ガラス(AGCエスアイテック(株)製)を純水にて希釈した後、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製)を用いて脱アルカリして、ケイ素成分をSiO2換算基準で2重量%含む珪酸水溶液を得た。
【0144】
次に、前記工程(1)で得られた無機酸化物微粒子10Bcを含む水分散ゾル3.0kgにそれぞれ純水27.0kgを加えて撹拌することにより、固形分含有量が1重量%の水分散ゾルを得た。次いで、この水分散ゾルを90℃の温度に加熱した後、これに前記過酸化ジルコン酸水溶液3.66kg、前記過酸化アンチモン酸水溶液1.83kgおよび前記珪酸水溶液2.84kgを徐々に添加し、さらに添加終了後、90℃の温度に保ちながら攪拌下で1時間熟成した。
次いで、この混合液をオートクレーブに入れて、165℃の温度で18時間、加熱処理を行った。
次に、得られた混合液を室温まで冷却した後、限外濾過膜装置(旭化成(株)製、SIP−1013)で濃縮して、固形分含有量が20重量%の水分散ゾル10Bを得た。
【0145】
このようにして得られた水分散ゾル中に含まれる無機酸化物微粒子を上記の方法で測定したところ、ルチル型の結晶構造を有する、チタン、スズおよびケイ素を含む複合酸化物微粒子(核粒子)の表面を、ジルコニウム、アンチモンおよびケイ素を含む複合酸化物で被覆してなる無機酸化物微粒子(以下、「無機酸化物微粒子10Bw」という)であった。
また、これらの無機酸化物微粒子10Bw中に含まれる金属成分の含有量を測定したところ、各金属成分の酸化物換算基準で、TiO256.8重量%、SiO222.9重量%、SnO27.1重量%、ZrO24.7重量%、Sb254.7重量%およびK2O3.8重量%であった。この粒子全体の測定結果と、前記無機酸化物微粒子10Bc(核粒子)の測定結果より、前記被覆層中に含まれる金属成分の含有比率を算出したところ、粒子全量に対してZrO24.7重量%、SiO210.8重量%、Sb254.7重量%およびK2O2.8重量%であった。
さらに、前記無機酸化物微粒子中に含まれる固体酸残量をNH3吸着量として測定したところ、0.18mmol/gであった。
【0146】
(3)被覆した無機酸化物微粒子を含むメタノール分散ゾルの調製
前記工程(2)で得られた無機酸化物微粒子10Bwを含む、それぞれの水分散ゾルを、表面処理剤としてのテトラエトキシシラン(多摩化学工業(株)製)を溶解させたメタノール溶液に撹拌下で添加した後、50℃の温度で3時間、加熱した。
次いで、実施例6に示す方法と同様な条件下で、溶媒置換を行い、固形分含有量が20重量%の無機酸化物微粒子10Bwを含むメタノール分散ゾル10Bをそれぞれ調製した。
【0147】
[実施例10]
ルチル型結晶構造を有するチタン系複合酸化物微粒子(11)およびゾル
(1)核粒子中に含まれるカリウム含有量の調整
実施例6の前記工程(1)で得られた無機酸化物微粒子1Bcを含む水分散ゾル1B3000gに、水酸化カリウム(関東化学(株)製)を1重量%含む水酸化カリウム水溶液290gを加えて、室温にて1時間撹拌した。
これにより、前記無機酸化物微粒子(核粒子)中に含まれるカリウム化合物の含有量を増加させた無機酸化物微粒子11Bcを含む水分散ゾル11Bを得た。なお、このように外部から添加したカリウム化合物も、前記無機酸化物微粒子の表面に付着して、該微粒子中に取り込まれていることが分かった。これは、該微粒子の表面に存在するO・H基とカリウムイオンとが反応したことによるものと考えられる。
このようにして得られた無機酸化物微粒子11Bc中に含まれる金属成分を測定したところ、各金属成分の酸化物換算基準で、TiO273.0重量%、SnO29.2重量%、SiO215.5重量%およびK2O2.3重量%であった。
【0148】
(2)被覆した無機酸化物微粒子を含む水分散ゾルの調製
実施例6に示す方法と同様な条件下で、前記工程(1)で得られた無機酸化物微粒子11Bcの表面を、ジルコニウム、スズおよびケイ素を含む複合酸化物で被覆してなる無機酸化物微粒子(以下、「無機酸化物微粒子11Bw」という)を含む水分散ゾル11Bを得た。
このようにして得られた無機酸化物微粒子11Bw中に含まれる金属成分を測定したところ、各金属成分の酸化物換算基準で、TiO268.6重量%、SnO28.6重量%、SiO217.6重量%、ZrO21.4重量%およびK2O3.8重量%であった。この粒子全体の測定結果と、前記無機酸化物微粒子11Bc(核粒子)の測定結果より、前記被覆層中に含まれる金属成分の含有比率を算出したところ、粒子全量に対してZrO21.4重量%、SiO23.0重量%およびK2O1.6重量%であった。
さらに、前記無機酸化物微粒子中に含まれる固体酸残量をNH3吸着量として測定したところ、0.04mmol/gであった。
【0149】
(3)被覆した無機酸化物微粒子を含むメタノール分散ゾルの調製
上記で得られた無機酸化物微粒子11Bwを含む水分散ゾルを、表面処理剤としてのテトラエトキシシラン(多摩化学工業(株)製)を溶解させたメタノール溶液に撹拌下で添加した後、50℃の温度で3時間、加熱した。
次いで、実施例6に示す方法と同様な条件下で、溶媒置換を行い、固形分含有量が20重量%の無機酸化物微粒子11Bwを含むメタノール分散ゾル11Bを調製した。
【0150】
[比較例6]
ルチル型結晶構造を有するチタン系複合酸化物微粒子(12)およびゾル
実施例6の工程(1)に示す方法(すなわち、核粒子1Bcの調製)と同様な条件下で、ルチル型結晶構造を有する、チタンおよびケイ素を含む複合酸化物微粒子(以下、「無機酸化物微粒子12Bc」という)を含む水分散ゾルを調製した。
なお、該微粒子中に含まれる金属成分の含有量を測定したところ、各金属成分の酸化物換算基準で、TiO273.7重量%、SnO29.3重量%、SiO215.7重量%およびK2O1.3重量%であった。
さらに、前記無機酸化物微粒子中に含まれる固体酸残量をNH3吸着量として測定したところ、0.03mmol/gであった。
次いで、実施例6の工程(2)に示す手段(すなわち、該微粒子の被覆)を施すことなく、実施例6の工程(3)に示す方法と同様な条件下で、該微粒子を含む水分散ゾルを、表面処理剤としてのテトラエトキシシラン(多摩化学工業(株)製)を溶解させたメタノール溶液に撹拌下で添加した後、50℃の温度で6時間、加熱した。
さらに、実施例6に示す方法と同様な条件下で、溶媒置換を行い、固形分含有量が20重量%の無機酸化物微粒子12Bwを含むメタノール分散ゾル12Bを調製した。
【0151】
[実施例11]
光学基材用塗布液(ハードコート層形成用塗布液)の調製(1)
γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング(株)製Z−6040)80g、γ―グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(東レ・ダウコーニング(株)製Z−6042)20gおよびメタノール50gの混合液を入れた容器を複数用意し、これらの混合液中に攪拌しながら0.01Nの塩酸水溶液25gを滴下した。更に、この混合液を室温で一昼夜攪拌して、シラン化合物の加水分解を行った。
次いで、これらの加水分解液が入った容器中に、実施例1〜5で得られたメタノール分散ゾル1A〜5A、10A、11Aをそれぞれ350g、純水50g、トリス(2,4−ペンタンジオナト)アルミニウムIII(東京化成工業(株)製)2g、グリセロールポリギリシジルエーテル(ナガセ化成工業(株)製、デナコールEX−314、エポキシ当量145)5gおよびレベリング剤としてシリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング(株)製、L−7001)0.5gを加え、室温で一昼夜攪拌して、本発明でいう光学基材用塗布液としてのハードコート層形成用の塗料組成物(以下、「ハードコート用塗料1A(1)〜5A(1)、10A(1)、11A(1)」という)を調製した。
【0152】
[比較例7]
光学基材用塗布液(ハードコート層形成用塗布液)の調製(2)
γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング(株)製、Z−6040)80g、γ―グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(東レ・ダウコーニング(株)製、Z−6042)20gおよびメタノール50gの混合液を入れた容器を複数用意し、これらの混合液中に攪拌しながら0.01Nの塩酸水溶液25gを滴下した。更に、この混合液を室温で一昼夜攪拌して、シラン化合物の加水分解を行った。
次いで、これらの加水分解液が入った容器中に、比較例1〜3で得られたメタノール分散ゾル6A〜9A、12Aをそれぞれ350g、純水50g、トリス(2,4−ペンタンジオナト)アルミニウムIII(東京化成工業(株)製)2g、グリセロールポリギリシジルエーテル(ナガセ化成工業(株)製、デナコールEX−314、エポキシ当量145)5gおよびレベリング剤としてシリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング(株)製、L−7001)0.5gを加え、室温で一昼夜攪拌して、本発明でいう光学基材用塗布液としてのハードコート層形成用の塗料組成物(以下、「ハードコート用塗料6A(1)〜9A(1)、12A(1)」という)を調製した。
【0153】
[実施例12]
光学基材用塗布液(ハードコート層形成用塗布液)の調製(3)
γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング(株)製、Z−6040)100gおよびメタノール50gの混合液を入れた容器を複数用意し、これらの混合液中に攪拌しながら0.01Nの塩酸水溶液25gを滴下した。更に、これらの混合液を室温で一昼夜攪拌して、シラン化合物の加水分解を行った。
次いで、これらの加水分解液が入った容器中に、実施例1〜5で得られたメタノール分散ゾル1A〜5A、10A、11Aをそれぞれ350g、トリス(2,4−ペンタンジオナト)鉄III(東京化成工業(株)製)3gおよびレベリング剤としてシリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング(株)製、L−7001)0.5gを加えて、室温で一昼夜攪拌して、本発明でいう光学基材用塗布液としてのハードコート層形成用の塗料組成物(以下、「ハードコート用塗料1A(2)〜5A(2)、10A(2)、11A(2)」という)を調製した。
【0154】
[比較例8]
光学基材用塗布液(ハードコート層形成用塗布液)の調製(4)
γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング(株)製、Z−6040)100gおよびメタノール50gの混合液を入れた容器を複数用意し、これらの混合液中に攪拌しながら0.01Nの塩酸水溶液25gを滴下した。更に、これらの混合液を室温で一昼夜攪拌して、シラン化合物の加水分解を行った。
次いで、これらの加水分解液が入った容器中に、比較例1〜3で得られたメタノール分散ゾル6A〜9A、12Aをそれぞれ350g、トリス(2,4−ペンタンジオナト)鉄III(東京化成工業(株)製)3gおよびレベリング剤としてシリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング(株)製、L−7001)0.5gを加えて、室温で一昼夜攪拌して、本発明でいう光学基材用塗布液としてのハードコート層形成用の塗料組成物(以下、「ハードコート用塗料6A(2)〜9A(2)、12A(2)」という)を調製した。
【0155】
[実施例13]
光学基材用塗布液(ハードコート層形成用塗布液)の調製(5)
γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング(株)製、Z−6040)80g、γ―グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(東レ・ダウコーニング(株)製、Z−6042)20gおよびメタノール50gの混合液を入れた容器を複数用意し、これらの混合液中に攪拌しながら0.01Nの塩酸水溶液25gを滴下した。更に、この混合液を室温で一昼夜攪拌して、シラン化合物の加水分解を行った。
次いで、これらの加水分解液が入った容器中に、実施例6〜10で得られたメタノール分散ゾル1B〜4B、9B〜11Bをそれぞれ350g、純水50g、トリス(2,4−ペンタンジオナト)アルミニウムIII(東京化成工業(株)製)2g、グリセロールポリギリシジルエーテル(ナガセ化成工業(株)製、デナコールEX−314、エポキシ当量145)5gおよびレベリング剤としてシリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング(株)製、L−7001)0.5gを加え、室温で一昼夜攪拌して、本発明でいう光学基材用塗布液としてのハードコート層形成用の塗料組成物(以下、「ハードコート用塗料1B(3)〜4B(3)、9B(3)〜11B(3)」という)を調製した。
【0156】
[比較例9]
光学基材用塗布液(ハードコート層形成用塗布液)の調製(6)
γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング(株)製、Z−6040)80g、γ―グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(東レ・ダウコーニング(株)製、Z−6042)20gおよびメタノール50gの混合液を入れた容器を複数用意し、これらの混合液中に攪拌しながら0.01Nの塩酸水溶液25gを滴下した。更に、この混合液を室温で一昼夜攪拌して、シラン化合物の加水分解を行った。
次いで、これらの加水分解液が入った容器中に、比較例4〜6で得られたメタノール分散ゾル5B〜8B、12Bをそれぞれ350g、純水50g、トリス(2,4−ペンタンジオナト)アルミニウムIII(東京化成工業(株)製)2g、グリセロールポリギリシジルエーテル(ナガセ化成工業(株)製、デナコールEX−314、エポキシ当量145)5gおよびレベリング剤としてシリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング(株)製、L−7001)0.5gを加え、室温で一昼夜攪拌して、本発明でいう光学基材用塗布液としてのハードコート層形成用の塗料組成物(以下、「ハードコート用塗料5B(3)〜8B(3)、12B(3)」という)を調製した。
【0157】
[実施例14]
光学基材用塗布液(ハードコート層形成用塗布液)の調製(7)
γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン100g(東レ・ダウコーニング(株)製、Z−6040)およびメタノール50gの混合液を入れた容器を複数用意し、これらの混合液中に攪拌しながら0.01Nの塩酸水溶液25gを滴下した。更に、これらの混合液を室温で一昼夜攪拌して、シラン化合物の加水分解を行った。
次いで、これらの加水分解液が入った容器中に、実施例6〜10で得られたメタノール分散ゾル1B〜4B、9B〜11Bをそれぞれ350g、トリス(2,4−ペンタンジオナト)鉄III(東京化成工業(株)製)3gおよびレベリング剤としてシリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング(株)製、L−7001)0.5gを加えて、室温で一昼夜攪拌して、本発明でいう光学基材用塗布液としてのハードコート層形成用の塗料組成物(以下、「ハードコート用塗料1B(4)〜4B(4)、9B(4)〜11B(4)」という)を調製した。
【0158】
[比較例10]
光学基材用塗布液(ハードコート層形成用塗布液)の調製(8)
γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン100g(東レ・ダウコーニング(株)製、Z−6040)およびメタノール50gの混合液を入れた容器を複数用意し、これらの混合液中に攪拌しながら0.01Nの塩酸水溶液25gを滴下した。更に、これらの混合液を室温で一昼夜攪拌して、シラン化合物の加水分解を行った。
次いで、これらの加水分解液が入った容器中に、比較例4〜6で得られたメタノール分散ゾル5B〜8B、12Bをそれぞれ350g、トリス(2,4−ペンタンジオナト)鉄III(東京化成工業(株)製)3gおよびレベリング剤としてシリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング(株)製、L−7001)0.5gを加えて、室温で一昼夜攪拌して、本発明でいう光学基材用塗布液としてのハードコート層形成用の塗料組成物(以下、「ハードコート用塗料5B(4)〜8B(4)、12B(4)」という)を調製した。
【0159】
[実施例15]
光学基材用塗布液(プライマー層形成用塗布液)の調製(9)
市販のポリウレタンエマルジョン「スーパーフレックス150」(第一工業製薬製、水分散型ウレタンエラストマー固形分含有量30%)122gを入れた容器を複数用意し、これらに、実施例1〜5で得られたメタノール分散ゾル1A〜5A、10A、11Aをそれぞれ240gおよびメタノール480gを加え、1時間攪拌した。
次いで、これらの混合液に、レベリング剤としてシリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング(株)製、L−7604)0.5gを加えて、室温で一昼夜攪拌して、本発明でいう光学基材用塗布液としてのプライマー層形成用の塗料組成物(以下、「プライマー用塗料1A(5)〜5A(5)、10A(5)、11A(5)」という)を調製した。
【0160】
[比較例11]
光学基材用塗布液(プライマー層形成用塗布液)の調製(10)
市販のポリウレタンエマルジョン「スーパーフレックス150」(第一工業製薬製、水分散型ウレタンエラストマー固形分含有量30%)122gを入れた容器を複数用意し、これらに、比較例1〜3で得られたメタノール分散ゾル6A〜9A、12Aをそれぞれ240gおよびメタノール480gを加え、1時間攪拌した。
次いで、これらの混合液に、レベリング剤としてシリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング(株)製、L−7604)0.5gを加えて、室温で一昼夜攪拌して、本発明でいう光学基材用塗布液としてのプライマー層形成用の塗料組成物(以下、「プライマー用塗料6A(5)〜9A(5)、12A(5)」という)を調製した。
【0161】
[実施例16]
光学基材用塗布液(プライマー層形成用塗布液)の調製(11)
市販のメラミン系化合物水溶液(昭和高分子(株)製、ミルベンSM−850)17.5g、プロピレングリコールモノメチルエーテル(ダウ・ケミカル日本(株)製)682g、市販のポリオール化合物(日本ポリウレタン(株)製 ニッポラン131)44.9gおよび硬化触媒としてp−トルエンスルホン酸(キシダ化学(株)製)0.5gを入れた容器を複数用意し、これらに、実施例6〜10で得られたメタノール分散ゾル1B〜4B、9B〜11Bをそれぞれ315g加え、1時間攪拌した。
次いで、これらの混合液に、レベリング剤としてシリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング(株)製、L−7001)0.5gを加えて、室温で一昼夜攪拌して、本発明でいう光学基材用塗布液としてのプライマー層形成用の塗料組成物(以下、「プライマー用塗料1B(6)〜4B(6)、9B(6)〜11B(6)」という)を調製した。
【0162】
[比較例12]
光学基材用塗布液(プライマー層形成用塗布液)の調製(12)
市販のメラミン系化合物水溶液(昭和高分子(株)製、ミルベンSM−850)17.5g、プロピレングリコールモノメチルエーテル(ダウ・ケミカル日本(株)製)682g、市販のポリオール化合物(日本ポリウレタン(株)製 ニッポラン131)44.9gおよび硬化触媒としてp−トルエンスルホン酸(キシダ化学(株)製)0.5gを入れた容器を複数用意し、これらに、比較例4〜6で得られたメタノール分散ゾル5B〜8B、12Bをそれぞれ240g加え、1時間攪拌した。
次いで、これらの混合液に、レベリング剤としてシリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング(株)製、L−7001)0.5gを加えて、室温で一昼夜攪拌して、本発明でいう光学基材用塗布液としてのプライマー層形成用の塗料組成物(以下、「プライマー用塗料5B(6)〜8B(6)、12B(6)」という)を調製した。
【0163】
[調製例1]
<試験用プラスチックレンズ基板の作成(1)>
(1)プラスチックレンズ基材の前処理
以下に示す市販のプラスチックレンズ基材を、以下の試験および評価に必要な枚数準備した。
(a) 三井化学(株)製の「モノマー名:MR−8」(屈折率1.60のプラスチックレンズ基材)
(b) 三井化学(株)製の「モノマー名:MR−7」(屈折率1.67のプラスチックレンズ基材)
(c) 三井化学(株)製の「モノマー名:MR−174」(屈折率1.74のプラスチックレンズ基材)
次いで、これらのプラスチックレンズ基材を、40℃に保った10重量%濃度のKOH水溶液に2分間浸漬してエッチング処理を行った。更に、これらを取り出して水洗した後、十分に乾燥させた。
【0164】
(2)ハードコート層の形成
前記プラスチックレンズ基材の表面に、上記で得られたハードコート層形成用の塗料組成物(ハードコート用塗料)をそれぞれ塗布して塗膜を形成した。なお、この塗料組成物の塗布は、ディッピング法(引き上げ速度250mm/分)を用いて行った。
次に、前記塗膜を90℃で10分間、乾燥させた後、110℃で2時間、加熱処理して、塗膜(ハードコート層)の硬化を行った。
なお、このようにして形成された前記ハードコート層の硬化後の膜厚は、概ね2.0〜2.6μmであった。
【0165】
(3)反射防止膜層の形成
前記ハードコート層の表面に、以下に示す構成の無機酸化物成分を真空蒸着法によって蒸着させた。ここでは、ハードコート層側から大気側に向かって、SiO2:0.06λ、ZrO2:0.15λ、SiO2:0.04λ、ZrO2:0.25λ、SiO2:0.25λの順序で積層された反射防止膜の層をそれぞれ形成した。また、設計波長λは、520nmとした。
なお、本発明の実施例および比較例においては、従来公知の蒸着法を用いて、前記ハードコート層の表面に反射防止膜層を形成したが、国際出願公報WO2006/095469などに記載された湿式法(すなわち、従来公知のビヒクル成分と低屈折率の中空シリカ微粒子とを含む塗料組成物などをハードコート層の表面に塗布する方法)を用いて、該反射防止膜層を形成してもよいことは勿論である。
【0166】
[調製例2]
<試験用プラスチックレンズ基板の作成(2)>
(1)プラスチックレンズ基材の前処理
調製例1と同様な条件下で、プラスチック基材の前処理を行なった。
(2)プライマー層の形成
前記プラスチックレンズ基材の表面に、上記で得られたプライマー層形成用の塗料組成物(プライマー用塗料)をそれぞれ塗布して塗膜を形成した。なお、この塗料組成物の塗布は、ディッピング法を用い、実施例15および比較例11で調製したプライマー塗料は、引き上げ速度120mm/分にて、実施例16および比較例12で調製したプライマー塗料は、200mm/分にてプラスチックレンズ基材上に塗布を行った。
次に、前記塗膜を100℃で10分間、加熱処理して、塗膜(プライマー層)の予備硬化を行った。
なお、このようにして形成された前記プライマー層の予備硬化後の膜厚は、120mm/分にて引き上げたものは、概ね0.5〜0.7μm、200mm/分で引き上げたものは、概ね0.8〜1.0μmであった。
【0167】
(3)ハードコート層の形成
調製例1と同様な条件下で、前記プライマー層を形成してなるプラスチックレンズ基材の表面に、上記で得られたハードコート層形成用の塗料組成物(ハードコート用塗料)をそれぞれ塗布して塗膜を形成し、その硬化を行なった。この際、前記プライマー層の本硬化も同時に行った。
なお、このようにして形成された前記ハードコート層の膜厚は、概ね2.0〜2.6μmであった。
(4)反射防止膜層の形成
調製例1と同様な条件下で、前記ハードコート層の表面に、反射防止膜の層をそれぞれ形成した。
【0168】
[実施例17]
実施例11で得られたハードコート用塗料1A(1)〜5A(1)、10A(1)および11A(1)を用いて、調製例1に示す方法でプラスチックレンズ基材上にハードコート層および反射防止膜層をそれぞれ形成した。
このようにして得られた実施例基板1A(1)〜5A(1)、10A(1)および11A(1)について、上記の評価試験法を用いて、外観(干渉縞)、外観(曇り)、耐擦傷性、密着性、耐候性および耐光性を試験して評価した。その結果を表3に示す。
【0169】
【表3】

【0170】
[比較例13]
比較例7で得られたハードコート用塗料6A(1)〜9A(1)および12A(1)を用いて、調製例1に示す方法でプラスチックレンズ基材上にハードコート層および反射防止膜層をそれぞれ形成した。
このようにして得られた比較例基板6A(1)〜9A(1)および12A(1)について、上記の評価試験法を用いて、外観(干渉縞)、外観(曇り)、耐擦傷性、密着性、耐候性および耐光性を試験して評価した。その結果を表4に示す。
【0171】
【表4】

【0172】
[実施例18]
実施例12で得られたハードコート用塗料1A(2)〜5A(2)、10A(2)および11A(2)を用いて、調製例1に示す方法でプラスチックレンズ基材上にハードコート層および反射防止膜層をそれぞれ形成した。
このようにして得られた実施例基板1A(2)〜5A(2)、10A(2)および11A(2)について、上記の評価試験法を用いて、外観(干渉縞)、外観(曇り)、耐擦傷性、密着性、耐候性および耐光性を試験して評価した。その結果を表5に示す。
【0173】
【表5】

【0174】
[比較例14]
比較例8で得られたハードコート用塗料6A(2)〜9A(2)および12A(2)を用いて、調製例1に示す方法でプラスチックレンズ基材上にハードコート層および反射防止膜層をそれぞれ形成した。
このようにして得られた比較例基板6A(2)〜9A(2)および12A(2)について、上記の評価試験法を用いて、外観(干渉縞)、外観(曇り)、耐擦傷性、密着性、耐候性および耐光性を試験して評価した。その結果を表6に示す。
【0175】
【表6】

【0176】
[実施例19]
実施例13で得られたハードコート用塗料1B(3)〜4B(3)、9B(3)〜11B(3)を用いて、調製例1に示す方法でプラスチックレンズ基材上にハードコート層および反射防止膜層をそれぞれ形成した。
このようにして得られた実施例基板1B(3)〜4B(3)および9B(3)〜11B(3)について、上記の評価試験法を用いて、外観(干渉縞)、外観(曇り)、耐擦傷性、密着性、耐候性および耐光性を試験して評価した。その結果を表7に示す。
【0177】
【表7】

【0178】
[比較例15]
比較例9で得られたハードコート用塗料5B(3)〜8B(3)および12B(3)を用いて、調製例1に示す方法でプラスチックレンズ基材上にハードコート層および反射防止膜層をそれぞれ形成した。
このようにして得られた比較例基板5B(3)〜8B(3)および12B(3)について、上記の評価試験法を用いて、外観(干渉縞)、外観(曇り)、耐擦傷性、密着性、耐候性および耐光性を試験して評価した。その結果を表8に示す。
【0179】
【表8】

【0180】
[実施例20]
実施例14で得られたハードコート用塗料1B(4)〜4B(4)、9B(4)〜11B(4)を用いて、調製例1に示す方法でプラスチックレンズ基材上にハードコート層をそれぞれ形成した。
このようにして得られた実施例基板1B(4)〜4B(4)、9B(4)〜11B(4)について、上記の評価試験法を用いて、外観(干渉縞)、外観(曇り)、耐擦傷性、密着性および耐候性を試験して評価した。その結果を表9に示す。なお、ここでは、反射防止膜層をハードコート層上に設けなかったので、耐光性試験は行わなかった。
【0181】
【表9】

【0182】
[比較例16]
比較例10で得られたハードコート用塗料5B(4)〜8B(4)および12B(4)を用いて、調製例1に示す方法でプラスチックレンズ基材上にハードコート層をそれぞれ形成した。
このようにして得られた比較例基板5B(4)〜8B(4)および12B(4)について、上記の評価試験法を用いて、外観(干渉縞)、外観(曇り)、耐擦傷性、密着性および耐候性を試験して評価した。その結果を表10に示す。なお、ここでは、反射防止膜層をハードコート層上に設けなかったので、耐光性試験は行わなかった。
【0183】
【表10】

【0184】
[実施例21]
実施例15で得られたプライマー用塗料1A(5)〜5A(5)、10A(5)、11A(5)、および実施例11で得られた表11に示すハードコート用塗料を用いて、調製例2に示す方法でプラスチックレンズ基材上にプライマー層、ハードコート層および反射防止膜層をそれぞれ形成した。
このようにして得られた実施例基板1A(5)〜5A(5)、10A(5)および11A(5)について、上記の評価試験法を用いて、外観(干渉縞)、外観(曇り)、耐擦傷性、密着性、耐候性および耐光性を試験して評価した。その結果を表11に示す。
【0185】
【表11】

【0186】
[比較例17]
比較例11で得られたプライマー用塗料6A(5)〜9A(5)、12A(5)、および比較例7で得られた表12に示すハードコート用塗料を用いて、調製例2に示す方法でプラスチックレンズ基材上にプライマー層、ハードコート層および反射防止膜層をそれぞれ形成した。
このようにして得られた比較例基板6A(5)〜9A(5)および12A(5)について、上記の評価試験法を用いて、外観(干渉縞)、外観(曇り)、耐擦傷性、密着性、耐候性および耐光性を試験して評価した。その結果を表12に示す。
【0187】
【表12】

【0188】
[実施例22]
実施例16で得られたプライマー用塗料1B(6)〜4B(6)、9B(6)〜11B(6)、および実施例13で得られた表13に示すハードコート用塗料を用いて、調製例2に示す方法でプラスチックレンズ基材上にプライマー層、ハードコート層および反射防止膜層をそれぞれ形成した。
このようにして得られた実施例基板1B(6)〜4B(6)、9B(6)〜11B(6)について、上記の評価試験法を用いて、外観(干渉縞)、外観(曇り)、耐擦傷性、密着性、耐候性および耐光性を試験して評価した。その結果を表13に示す。
【0189】
【表13】

【0190】
[比較例18]
比較例12で得られたプライマー用塗料5B(6)〜8B(6)、12B(6)、および比較例9で得られた表14に示すハードコート用塗料を用いて、調製例2に示す方法でプラスチックレンズ基材上にプライマー層、ハードコート層および反射防止膜層をそれぞれ形成した。
このようにして得られた比較例基板5B(6)〜8B(6)および12B(6)について、上記の評価試験法を用いて、外観(干渉縞)、外観(曇り)、耐擦傷性、密着性、耐候性および耐光性を試験して評価した。その結果を表14に示す。
【0191】
【表14】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタニウムの酸化物微粒子、および/またはチタニウムと、ジルコニウム、スズ、タングステン、ニオブ、セリウムおよびケイ素から選ばれた1種または2種以上の金属元素を含む複合酸化物微粒子からなる核粒子の表面を、ケイ素と、ジルコニウム、アルミニウムおよびアンチモンから選ばれた1種または2種以上の金属元素の酸化物および/または複合酸化物で被覆した無機酸化物微粒子であって、該微粒子中にカリウム化合物(酸化物としてのK2Oを除く)をK2O換算基準で1.0〜8.0重量%含ませたことを特徴とするコアシェル構造を有する無機酸化物微粒子。
【請求項2】
前記無機酸化物微粒子中に、前記金属元素の酸化物からなる固体酸を含むことを特徴とする請求項1に記載のコアシェル構造を有する無機酸化物微粒子。
【請求項3】
前記無機酸化物微粒子中に含まれるカリウム化合物の少なくとも一部が、前記固体酸と化合した形態で存在することを特徴とする請求項2に記載のコアシェル構造を有する無機酸化物微粒子。
【請求項4】
前記カリウム化合物を、前記核粒子中にK2O換算基準で0.0〜5.0重量%含み、前記被覆層中にK2O換算基準で1.0〜7.0重量%含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のコアシェル構造を有する無機酸化物微粒子。
【請求項5】
前記核粒子が、アナターゼ型の結晶構造を有するチタン系複合酸化物微粒子であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のコアシェル構造を有する無機酸化物微粒子。
【請求項6】
前記核粒子が、ルチル型の結晶構造を有するチタン系複合酸化物微粒子であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のコアシェル構造を有する無機酸化物微粒子。
【請求項7】
前記核粒子上への被覆を、前記核粒子の重量をCで表し、前記被覆層の重量をSで表したとき、その重量比(S/C)が、酸化物基準で7/100〜150/100の範囲となるように行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のコアシェル構造を有する無機酸化物微粒子。
【請求項8】
前記無機酸化物微粒子の平均粒子径が、動的光散乱法で測定したとき、4〜40nmの範囲にあることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のコアシェル構造を有する無機酸化物微粒子。
【請求項9】
前記無機酸化物微粒子の比表面積が、70〜450m2/gの範囲にあることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のコアシェル構造を有する無機酸化物微粒子。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載のコアシェル構造を有する無機酸化物微粒子を水中に分散させてなる水分散ゾル。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれかに記載のコアシェル構造を有する無機酸化物微粒子を水に可溶な有機溶媒中に分散させてなる有機溶媒分散ゾル。
【請求項12】
(1)チタニウムの酸化物微粒子、および/またはチタニウムと、ジルコニウム、スズ、タングステン、ニオブ、セリウムおよびケイ素から選ばれた1種または2種以上の金属元素を含む複合酸化物微粒子からなる核粒子の表面を、ケイ素と、ジルコニウム、アルミニウムおよびアンチモンから選ばれた1種または2種以上の金属元素の酸化物および/または複合酸化物で被覆した無機酸化物微粒子中に、カリウム化合物(酸化物としてのK2Oを除く)をK2O換算基準で1.0〜8.0重量%含ませたコアシェル構造を有する無機酸化物微粒子、および
(2)下記一般式(I)で表される有機ケイ素化合物および/またはその加水分解物;
1a2bSi(OR34-(a+b) (I)
(式中、R1は炭素数1〜6のアルキル基、ビニル基を含有する炭素数8以下の有機基、エポキシ基を含有する炭素数8以下の有機基、メタクリロキシ基を含有する炭素数8以下の有機基、メルカプト基を含有する炭素数1〜5の有機基またはアミノ基を含有する炭素数1〜5の有機基であり、R2は炭素数1〜3のアルキル基、アルキレン基、シクロアルキル基もしくはハロゲン化アルキル基またはアリル基であり、R3は炭素数1〜3のアルキル基、アルキレン基またはシクロアルキル基である。また、aは0または1の整数、bは0、1または2の整数である。)
を含むことを特徴とする光学基材用塗布液。
【請求項13】
前記無機酸化物微粒子が、有機ケイ素化合物またはアミン系化合物で表面処理されたものであることを特徴とする請求項12に記載の光学基材用塗布液。
【請求項14】
前記光学基材用塗布液中に、さらに未架橋エポキシ化合物を含むことを特徴とする請求項12〜13のいずれかに記載の光学基材用塗布液。
【請求項15】
前記光学基材用塗布液が、ハードコート層形成用塗布液であることを特徴とする請求項12〜14のいずれかに記載の光学基材用塗布液。
【請求項16】
(1)チタニウムの酸化物微粒子、および/またはチタニウムと、ジルコニウム、スズ、タングステン、ニオブ、セリウムおよびケイ素から選ばれた1種または2種以上の金属元素を含む複合酸化物微粒子からなる核粒子の表面を、ケイ素と、ジルコニウム、アルミニウムおよびアンチモンから選ばれた1種または2種以上の金属元素の酸化物および/または複合酸化物で被覆した無機酸化物微粒子中に、カリウム化合物(酸化物としてのK2Oを除く)をK2O換算基準で1.0〜8.0重量%含ませたコアシェル構造を有する無機酸化物微粒子、および
(2)熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂
を含むことを特徴とする光学基材用塗布液。
【請求項17】
前記無機酸化物微粒子が、有機ケイ素化合物またはアミン系化合物で表面処理されたものであることを特徴とする請求項16に記載の光学基材用塗布液。
【請求項18】
前記熱硬化性樹脂が、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂およびシリコーン系樹脂から選ばれた1種または2種以上の熱硬化性樹脂であることを特徴とする請求項16〜17のいずれかに記載の光学基材用塗布液。
【請求項19】
前記熱可塑性樹脂が、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂およびエステル系樹脂から選ばれた1種または2種以上の熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項16〜17のいずれかに記載の光学基材用塗布液。
【請求項20】
前記光学基材用塗布液が、プライマー層形成用塗布液であることを特徴とする請求項16〜19のいずれかに記載の光学基材用塗布液。
【請求項21】
前記光学基材が、プラスチックレンズであることを特徴とする請求項12〜20のいずれかに記載の光学基材用塗布液。

【公開番号】特開2009−155496(P2009−155496A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−335796(P2007−335796)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000190024)日揮触媒化成株式会社 (458)
【Fターム(参考)】