説明

コア径変換光ファイバ

【課題】本発明は、コアの径の大きさを、一端から他端へ徐々に小さくしても、光がコアからクラッドに漏洩することのないコア径変換光ファイバを提供することを目的とする。
【解決手段】本願発明のコア径変換光ファイバは、コアの径の大きさが一端から他端へ徐々に小さくなるに従い、コア又はクラッドの屈折率を変化させる構造とした。具体的には、本願発明のコア径変換光ファイバは、コアよりも低い屈折率のクラッドで半径方向を囲まれた前記コアの径が、一端から他端へ徐々に小さくなっている光ファイバであって、前記コアの径が小さくなるに従い、前記コアの屈折率の前記クラッドの屈折率に対する比が大きくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラッドで囲まれたコアが、一端から他端へ徐々に細くなっているコア径変換光ファイバに関する。
【背景技術】
【0002】
コアの径の大きい光ファイバからの光を集束して用いるために、コアの径を光ファイバの一端から他端へ徐々に小さくしたコア径変換光ファイバがある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許4116479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、コアの径を、一端から他端へ徐々に小さくすると、コアの径の大きい側から光を入射した場合、光ファイバ内を伝搬する光のコアとクラッドとの界面での入射角及び反射角が徐々に小さくなり、コアとクラッドとの間で光が全反射しなくなり、コアの径が小さくなっている部分で、光がコアからクラッドに漏洩する。前記課題を解決するために、本発明は、コアの径の大きさを、一端から他端へ徐々に小さくしても、光がコアからクラッドに漏洩することのないコア径変換光ファイバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本願発明のコア径変換光ファイバは、コアの径の大きさが一端から他端へ徐々に小さくなるに従い、コア又はクラッドの屈折率を変化させる構造とした。
【0006】
具体的には、本願発明のコア径変換光ファイバは、コアよりも低い屈折率のクラッドで半径方向を囲まれた前記コアの径が、一端から他端へ徐々に小さくなっている光ファイバであって、前記コアの径が小さくなるに従い、前記コアの屈折率の前記クラッドの屈折率に対する比が大きくなることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、コアの径が大きい入射側から光を入射した場合、コアの径が小さい出射側で光がコアからクラッドに漏洩することはなくなる。
【0008】
また、本願発明のコア径変換光ファイバの前記クラッドの屈折率は一定であって、前記コアの径が小さくなるに従い、前記コアの屈折率が大きくなることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、コアの径が大きい入射側から光を入射した場合、コアの径が小さい出射側で光がコアからクラッドに漏洩することはなくなる。また、クラッドの屈折率を変化させることなく、コアの屈折率の変化によってコアとクラッドとの間で光が全反射するので、クラッドの製造が容易となる。
【0010】
また、本願発明のコア径変換光ファイバの前記コアの径が小さくなるに従い、前記コアの屈折率が大きくなり、前記クラッドの屈折率が小さくなることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、コアの径が大きい入射側から光を入射した場合、コアの径が小さい出射側で光がコアからクラッドに漏洩することはなくなる。また、コアの径が小さくなった部分で、コアの屈折率のクラッドの屈折率に対する比を大きくすることができる。
【0012】
また、本願発明のコア径変換光ファイバの前記クラッドの外径は、一定の大きさであることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、コアの径が大きい入射側から光を入射した場合、コアの径が小さい出射側で光がコアからクラッドに漏洩することはなくなる。また、クラッドの外径が一定であるため、光ファイバの外径を変えずに、コアからクラッドへの光の漏洩を無くすることができる。
【0014】
また、本願発明のコア径変換光ファイバの前記コアの径が小さくなるに従い、前記クラッドの外径は小さくなることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、コアの径が大きい入射側から光を入射した場合、コアの径が小さい出射側で光がコアからクラッドに漏洩することはなくなる。また、コアの径が小さくなると共に、クラッドの外径も小さくなることから、コアの径及びクラッドの外径の小さい部分では、光ファイバの曲げを容易に行うことができる。
【0016】
なお、上記各構成は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、コアの径の大きさを、一端から他端へ徐々に小さくしても、光がコアからクラッドに漏洩することのないコア径変換光ファイバを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るコア径変換光ファイバ30の断面図である。
【図2】本発明に係るコア径変換光ファイバ31の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0020】
本発明に係るコア径変換光ファイバは、コアよりも低い屈折率のクラッドで半径方向を囲まれたコアの径が、一端から他端へ徐々に小さくなっている光ファイバであって、コアの径が小さくなるに従い、コアの屈折率のクラッドの屈折率に対する比が大きくなる。図1は本発明に係るコア径変換光ファイバ30の断面図である。
【0021】
図1において、11は、外径が一定の大きさのクラッド、12は、一端から他端に向けて径が徐々に小さくなっている形状のコアである。クラッド11の外径は、本発明に係る第一のコア径変換光ファイバ30の一端から他端まで一定の大きさである。コア12の径は、本発明に係るコア径変換光ファイバ30の一端から他端へ徐々に小さくなっている。ここで、コア12の屈折率のクラッド11の屈折率に対する比が、コア12の径の大きさに対して一定の場合は、コア12の太い側から入射された光は、一端から他端へ向かうに従い、反射角が変化していくことで、クラッド11とコア12との間で全反射されなくなり、入射された光はクラッド11へ漏洩する。
【0022】
本発明に係るコア径変換光ファイバ30では、クラッド11の屈折率を一定として、コア12の屈折率は、コア12の径が小さくなるに従い大きくなる。つまり、コア12の径が小さくなるに従い、コア12の屈折率のクラッド11の屈折率に対する比が大きくなる。よって、コア12の太い側から入射された光は、一端から他端へ向かうに従い反射角が小さくなっても、クラッド11とコア12との間で全反射され、入射側から出射側まで漏洩することはない。また、クラッド11の屈折率を変化させることなく、コア12の屈折率の変化によって、コア12及びクラッド11の間で光を全反射できるので、クラッド11の製造が容易となる。なお、屈折率の変化は、一端から他端へ徐々に、又は段階的に変化してもよい。
【0023】
また、クラッド11の屈折率を、コア12の径が小さくなるに従い小さく、コア12の屈折率を、コア12の径が小さくなるに従い大きくなるようにしてもよい。つまり、コア12の径が小さくなるに従い、コア12の屈折率のクラッド11の屈折率に対する比が大きくなる。よって、コア12の太い側から入射された光は、一端から他端へ向かうに従い反射角が小さくなっても、クラッド11とコア12との間で全反射され、入射側から出射側まで漏洩することはない。なお、屈折率の変化は、一端から他端へ徐々に、又は段階的に変化してもよい。
【0024】
そして、コア12の屈折率は一定として、クラッド11の屈折率は、コア12の径が小さくなるに従い小さくなるようにしてもよい。つまり、コア12の径が小さくなるに従い、コア12の屈折率のクラッド11の屈折率に対する比が大きくなる。よって、コア12の太い側から入射された光は、一端から他端へ向かうに従い反射角が小さくなっても、クラッド11とコア12との間で全反射され、入射側から出射側まで漏洩することはない。なお、屈折率の変化は、一端から他端へ徐々に、又は段階的に変化してもよい。
【0025】
以下に、クラッド11及びコア12の材質、外形及び屈折率について例示する。材質は、ガラス又はポリマ樹脂を用いるとよい。材質の組み合わせは、クラッド11及びコア12共にガラス、クラッド11及びコア12共にポリマ樹脂、クラッド11にポリマ樹脂、コア12にガラスが例示できる。ガラスを用いた場合の屈折率は1.3〜1.7、ポリマ樹脂を用いた場合の屈折率は1.2〜2.0となる。クラッド11の外径は125μm、コア12の径は大きい側で50μm、小さい側で10μmが例示できる。これらコアとクラッドとの比屈折率差((コアの屈折率−クラッドの屈折率)/コアの屈折率)はコアの径の大きい側で0.1〜2%、小さい側で0.5〜5%が例示できる。そして、コア径変換光ファイバ30の全長は0.01m〜20mが例示できる。
【0026】
さらに、本発明に係るコア径変換光ファイバのクラッド11の外径は、一定の大きさであってもよい。クラッド11の外径の大きさが一定であるため、コア12からクラッド11へ光は漏洩しない。
【0027】
本発明に係るコア径変換光ファイバはコア12の径が小さくなるに従い、クラッドの外径は小さくなってもよい。図2は本発明に係るコア径変換光ファイバ31の断面図である。
【0028】
図2において、13は、一端から他端に向けて外径が徐々に小さくなっているクラッド、12は、一端から他端に向けて径が徐々に小さくなっている形状のコアである。クラッド13の外径は、一端から他端に向けて徐々に小さくなっている。コア12の径は、一端から他端に向けて徐々に小さくなっている。コア12の屈折率のクラッド13の屈折率に対する比が、コア13の径の大きさに対して一定である場合は、コア12の太い側から入射された光は、一端から他端へ徐々に反射角が小さくなるに従い、クラッド13とコア12との間で全反射されなくなり、入射された光はクラッド13へ漏洩する。
【0029】
本発明に係るコア径変換光ファイバ30では、クラッド13の屈折率は一定として、コア12の屈折率は、コア12の径が小さくなるに従い、大きくなる。つまり、コア12の径が小さくなるに従い、コア12の屈折率のクラッド13の屈折率に対する比が大きくなる。よって、コア12の太い側から入射された光は、一端から他端へ向かうに従い反射角が小さくなっても、クラッド13とコア12との間で全反射され、入射側から出射側まで漏洩することはない。また、クラッド13の屈折率を変化させることなく、コア12の屈折率の変化のみで、コア12及びクラッド13の間で光を全反射できるので、クラッド13の製造が容易となる。なお、屈折率の変化は、一端から他端へ徐々に、又は段階的に変化してもよい。
【0030】
また、クラッド13の屈折率を、コア12の径が小さくなるに従い小さく、コア12の屈折率を、コア12の径が小さくなるに従い大きくなるようにしてもよい。つまり、コア12の径が小さくなるに従い、コア12の屈折率のクラッド11の屈折率に対する比が大きくなる。よって、コア12の太い側から入射された光は、一端から他端へ向かうに従い反射角が小さくなっても、クラッド13とコア12との間で全反射され、入射側から出射側まで漏洩することはない。なお、屈折率の変化は、一端から他端へ徐々に、又は段階的に変化してもよい。
【0031】
そして、コア12の屈折率は一定として、クラッド13の屈折率は、コア12の径が小さくなるに従い小さくなるようにしてもよい。つまり、コア12の径が小さくなるに従い、コア12の屈折率のクラッド13の屈折率に対する比が大きくなる。よって、コア12の太い側から入射された光は、一端から他端へ向かうに従い反射角が小さくなっても、クラッド13とコア12との間で全反射され、入射側から出射側まで漏洩することはない。なお、屈折率の変化は、一端から他端へ徐々に、又は段階的に変化してもよい。
【0032】
以下に、クラッド13及びコア12の材質、外形及び屈折率について例示する。材質は、ガラス又はポリマ樹脂を用いるとよい。材質の組み合わせは、クラッド13及びコア12共にガラス、クラッド13及びコア12共にポリマ樹脂、クラッド13にポリマ樹脂、コア12にガラスが例示できる。ガラスを用いた場合の屈折率は1.3〜1.7、ポリマ樹脂を用いた場合の屈折率は1.2〜2.0となる。図2のクラッド13の外径は、大きい側で100μm〜1000μm、小さい側で50μm〜500μm、コア12の径は、大きい側で40μm〜800μm、小さい側で5〜300μmが例示できる。これらコアとクラッドの比屈折率差はコアの径の大きい側で0.1〜2%、小さい側で0.5〜5%が例示できる。そして、コア径変換光ファイバ31の全長は0.01m〜20mが例示できる。ただし、コア12の径が小さくなるに従い、クラッド13の外径は小さくなる。
【0033】
この構成によれば、コア12の径の大きさの変換と共にクラッド13の外径は小さくなるため、コア12の径の小さい部分では、クラッド13と共に曲げることができ、本発明に係るコア径変換光ファイバ31の曲げを容易にすることができる。
【0034】
以上の実施形態では、ステップ型光ファイバについて説明したが、グレーテッド型光ファイバでも同様である。この場合、グレーテッド型でコアの屈折率を大きくすることはコアの中心部の屈折率を大きくすることになる。また、コアの屈折率のクラッドの屈折率に対する比を大きくすることは、コアの中心部の屈折率をクラッドの屈折率よりも大きくすることになる。
【0035】
以下に本発明に係るコア径変換光ファイバの製造方法の概要を説明する。上記説明したいずれの実施形態においても、VAD(Vapor phase axial deposition)法を用いてコア及びクラッドを一括して光ファイバの母材を製造することができる。また、コアの母材及びクラッドの母材を別々に製造し、両者を溶融し一体化して光ファイバの母材としてもよい。コア又はクラッドの屈折率を長軸方向に変化させるにはVAD法で長軸方向の屈折率を制御すればよい。コアとクラッドとの径の比率を変えるには、VAD法で径方向の屈折率を制御すればよい。そして、製造した光ファイバの母材を線引きすれば、本発明に係るコア径変換光ファイバを製造することができる。光ファイバの母材は、コアの径とクラッドの外径との比率が所定の比率になっていれば、線引き速度を調整して太さを決定することができる。外径は線引き速度によって制御できる。即ち、速く線引きすれば細くなり、遅く線引きすれば太くなる。線引き速度を変えれば、外径を変えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明のコア径変換光ファイバは、光パワー伝送光ファイバとして利用することができる。
【符号の説明】
【0037】
11、13:クラッド
12:コア
30、31:本発明に係るコア径変換光ファイバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアよりも低い屈折率のクラッドで半径方向を囲まれた前記コアの径が、一端から他端へ徐々に小さくなっている光ファイバであって、
前記コアの径が小さくなるに従い、前記コアの屈折率の前記クラッドの屈折率に対する比が大きくなることを特徴とする光ファイバ。
【請求項2】
前記クラッドの屈折率は一定であって、
前記コアの径が小さくなるに従い、前記コアの屈折率が大きくなることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項3】
前記コアの径が小さくなるに従い、前記コアの屈折率が大きくなり、前記クラッドの屈折率が小さくなることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項4】
前記クラッドの外径は、一定の大きさであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光ファイバ。
【請求項5】
前記コアの径が小さくなるに従い、前記クラッドの外径は小さくなることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光ファイバ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−237320(P2010−237320A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83464(P2009−83464)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(502191550)フォトニックサイエンステクノロジ株式会社 (24)
【Fターム(参考)】