説明

コイル部品、圧粉インダクタおよびコイル部品の巻回方法

【課題】更なる小型化・低背化が可能なコイル部品を得る。
【解決手段】線材11が整列巻きにより複数層巻回されてなる空芯の巻線部12の内周の巻始端13より延び、巻線部12の軸方向一方側の端面17に接しながら、該端面17に沿って端面17の内縁から外縁に向けて渦状に巻回されてなる渦状巻回部18を備えるように構成する。また、巻線部12の内周の巻始端13および外周の巻終端14が、共に巻線部12の軸方向一方側に位置し、第1のリード部および第2のリード部が、共に巻線部12の軸方向一方側において、巻線部の外方へ延出するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性を有する線材が整列巻きにより複数層巻回されてなる巻線部を有するコイル部品およびこのコイル部品を用いた圧粉インダクタ並びにコイル部品の巻回方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属磁性粉を圧縮形成した圧粉体の中に空芯コイルを埋設してなる構成のインダクタ(以下「圧粉インダクタ」と称する)が知られている(下記特許文献1,2参照)。この圧粉インダクタは、小型、低背でありながら、直流重畳特性に優れ、電流抵抗が低いなどの特徴を備えているため、小型化・薄型化の要求が高いノートパソコン等の携行型電子機器の電源用インダクタなどに利用されている。
【0003】
このような圧粉インダクタに用いられる多層巻きの空芯コイルについても、小型化・低背化が求められている。多層巻きコイルの巻回手法としては、一般に、整列巻きと称される巻回手法と、α巻きと称される巻回手法とが知られている。
【0004】
整列巻きとは、一般に、線材の一方の端側(巻始め側)を巻線機の一方の巻枠の内壁部に留めておきながら線材の他方の端側を順次繰り出し、隣接する線材同士が密着するように巻回する手法とされており、一方の巻枠の内壁部から他方の巻枠の内壁部に亘って線材が巻回されて1層目の巻回層(内周の巻回層)が形成されると、他方の巻枠の内壁部において線材の送り方向が反転されることにより、1層目の巻回層の外周部に線材が乗り上げ、1層目の巻回層の外周部に、他方の巻枠の内壁部から一方の巻枠の内壁部に亘って線材が巻回されて2層目の巻回層が形成される。2層目の巻回層が形成されると、一方の巻枠の内壁部において線材の送り方向が反転されることにより、2層目の巻回層の外周部に線材が乗り上げ、2層目の巻回層の外周部に、一方の巻枠の内壁部から他方の巻枠の内壁部に亘って線材が巻回されて3層目の巻回層が形成され、その後、同様の手順により、最終の巻回層(外周の巻回層)までの各巻回層が形成される。
【0005】
一方、α巻きとは、一般に、線材の長さの中間部分を巻線機の巻軸の中央部に当てながら線材の一方の端側および他方の端側を繰り出しながら巻回する手法とされており(下記特許文献3参照)、巻軸の中央部から一方の巻枠の内壁部および他方の巻枠の内壁部の各々に向かって線材が巻回されて1層目の巻回層が形成されると、一方の巻枠の内壁部および他方の巻枠の内壁部において線材の送り方向がそれぞれ反転されることにより、1層目の巻回層の外周部に線材が乗り上げ、1層目の巻回層の外周部に、一方の巻枠の内壁部および他方の巻枠の内壁部から巻軸の中央部に向かって線材が巻回配列されて2層目の巻回層が形成される。2層目の巻回層が形成されると、巻軸の中央部において線材の送り方向がそれぞれ反転されることにより、2層目の巻回層の外周部に線材が乗り上げ、2層目の巻回層の外周部に、巻軸の中央部から一方の巻枠の内壁部および他方の巻枠の内壁部の各々に向かって線材が巻回されて3層目の巻回層が形成され、その後、同様の手順により、最終の巻回層までの各巻回層が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−229311号公報
【特許文献2】特開2003−168610号公報
【特許文献3】特開昭62−23346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
α巻きにより線材を巻回した場合、線材の両端部が共にコイルの外周部分から外方へと延出することになるので、線材の両端側を各端子に接続する際の取り回しが容易となるという利点がある。しかしながら、α巻きにおいては、巻軸の中央部において線材の送り方向を反転する際に、線材の配列が乱れ易く、このため、α巻きされたコイルでは、占積率(コイルの断面積に占める各線材の断面積の和の割合)が低くなるという傾向がある。
【0008】
一方、整列巻きされたコイルでは、巻回の際に一方の巻枠の内壁部に留められていた線材の一方の端側(巻始め側)が、コイルの内周側からコイルの軸方向一方側の端面上を横切って外周側に引き出されるため、この引き出される線材の直径分だけコイルの高さが高くなるという問題により、整列巻きされたコイルにおいても占積率を高めることが難しくなっている。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、巻回の際に巻軸の一端部に留められている線材の一方の端側を外周へ引き出す際の引出し方を工夫することにより、更なる小型化・低背化が可能となるコイル部品およびこのコイル部品を用いた圧粉インダクタ並びにこのコイル部品の巻回方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るコイル部品は、
導電性を有する線材が整列巻きにより複数層巻回されてなる空芯の巻線部と、
前記巻線部の内周の巻始端より延び、前記巻線部の軸方向一方側の端面に接しながら該端面に沿って該端面の内縁から外縁に向け渦状に巻回されてなる渦状巻回部と、
前記渦状巻回部の終端より前記巻線部の外方へ延出する第1のリード部と、
前記巻線部の外周の巻終端より前記巻線部の外方へ延出する第2のリード部と、
を備えてなることを特徴とする。
【0011】
本発明に係るコイル部品において、前記巻線部の前記内周の巻始端および前記外周の巻終端が、共に前記巻線部の前記軸方向ほぼ一方側に位置しており、前記第1のリード部および前記第2のリード部は、共に前記巻線部の軸方向ほぼ一方側において、前記巻線部の外方へ延出している、とすることができる。
【0012】
また、本発明に係る圧粉インダクタは、
金属磁性粉を圧縮成形してなる圧粉体と、該圧粉体の内部に埋設された、本発明に係るコイル部品と、を備えてなることを特徴とする。
また、本発明に係るコイル部品の巻回方法は、
本発明に係るコイル部品を製造するためのコイル部品の巻回方法であって、
巻回に用いる線材の一方の端側に所定長の当該線材からなる貯蔵線材を確保しておき、
前記線材の一方の端側の、前記貯蔵線材に続く部分を一方の巻枠の内壁部に留めておきながら前記線材の他方の端側を順次繰り出し、隣接する前記線材同士を密着させて巻回する整列巻きにより、複数の巻回層を有する巻線部を形成した後、
前記貯蔵線材を繰り出しながら、繰り出された前記貯蔵線材を、前記巻線部の軸方向一方側の端面に密着させつつ該端面に沿って該端面の内縁から外縁に向けて渦状に巻回することにより渦状巻回部を形成する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るコイル部品によれば、巻線部の内周の巻始端より延び、巻線部の軸方向一方側の端面に沿って該端面の内縁から外縁に向け渦状に巻回される渦状巻回部を有していることにより、この渦状巻回部を巻線部の一部として利用することができるので、従来のものに比べて小型化・低背化を達成し得る。
【0014】
また、本発明に係る圧粉インダクタによれば、圧粉体の内部に埋設するコイルとして、小型化・低背化が可能な本発明のコイル部品を備えていることにより、圧粉体を小型・低背に作成することが可能となり、全体としても小型化・低背化を達成することができる。
また、本発明に係るコイル部品の巻回方法によれば、小型化・低背化が可能な本発明のコイル部品を容易に製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係るコイル部品の全体構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るコイル部品の平面図(A)、正面図(B)および右側面図(C)である。
【図3】本発明に係るコイル部品の小型化・低背化の効果を説明するための概略図((A)は従来のコイル部品、(B)は本発明の第2実施形態に係るコイル部品)である。
【図4】本発明に係るコイル部品の設置安定性の効果を説明するための概略図((A)は本発明の第2実施形態に係るコイル部品、(B)は従来のコイル部品)である。
【図5】本発明に係るコイル部品の巻回方法((A)は第1工程、(B)は第2工程、(C)は第3工程、(D)は第4工程)を説明するための概略図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係るコイル部品の構成を示す断面模式図である。
【図7】本発明の第4実施形態に係るコイル部品の構成を示す断面模式図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る圧粉インダクタの全体構成を示す斜視図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る圧粉インダクタの断面図である。
【図10】本発明に係る圧粉インダクタの製造方法((A)は第1工程、(B)は第2工程、(C)は第3工程)を説明するための概略図である。
【図11】本発明の第5実施形態に係るコイル部品の平面図(A)および正面図(B)である。
【図12】従来のコイル部品の構成を示す平面図(A)、正面図(B)、右側面図(C)および斜視図(D)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、上記図面に基づいて、本発明に係るコイル部品および圧粉インダクタの実施形態について詳細に説明する。
【0017】
〈コイル部品の構成〉
まず、図1および図2を用いて、本発明の第1実施形態に係るコイル部品10の構成について説明するが、このコイル部品10の特徴構成を分かり易くするため、最初に図12を用いて、従来のコイル部品110の構成について説明する。なお、図1および図12(D)において、軸方向(軸線)を1点鎖線で示している。
【0018】
図12に示すコイル部品110は、従来一般的な構成の整列巻きされた空芯コイルを例示するものであり、導電性を有する線材111が整列巻きにより複数層巻回されてなる空芯の巻線部112と、巻線部112の内周の巻始端113から、巻線部112の軸方向一側の端面117を通って巻線部112の外方へ延出する、線材111の一方の端側の部分により構成される第1のリード部115と、巻線部112の外周の巻終端114から巻線部112の外方へ延出する、線材111の他方の端側の部分により構成される第2のリード部116と、を備えてなる。
【0019】
この従来のコイル部品110では、第1のリード部115の、端面117を通る部分(第1のリード部115のうち、端面117と重なる部分。以下「引出部118」と称する)が、端面117上を直線的に横切るように構成されている。
【0020】
一方、図1および図2に示す本発明の第1実施形態に係るコイル部品10は、導電性を有する線材11が整列巻きにより複数層(図1,2に示す例では4層)巻回されてなる空芯の巻線部12と、巻線部12の内周の巻始端13より延び、巻線部12の軸方向一方側の端面17(図2(C)参照)に沿って該端面17の内縁から外縁に向けて渦状に巻回されてなる渦状巻回部18と、この渦状巻回部18の終端19より巻線部12の外方へ延出する第1のリード部15と、巻線部12の外周の巻終端14より巻線部12の外方へと延出する第2のリード部16と、を備えてなる。なお、線材11は、表面が絶縁被膜により覆われる導線により構成されるが、絶縁被膜層と粘着層を有する自己融着線を用いても構わない。
【0021】
この第1実施形態に係るコイル部品10では、巻線部12の内周の巻始端13と第1のリード部15とを繋ぐ部分が、端面17に接しながら、該端面17に沿って該端面17の内縁から外縁に向けて渦状に巻回されてなる渦状巻回部18として構成されており、この点が、図12に示す従来のコイル部品110とは異なる大きな特徴点となっている。また、巻線12の内周の巻始端13および外周の巻終端14が、共に巻線部12の軸方向一方側に位置するように構成されており、第1のリード部15および第2のリード部16は、共に巻線部12の軸方向一方側において、巻線部12の外方へと延出されている。なお、端面17とは、コイル部品10から渦状巻回部18を取り除いた場合に、巻線部12の軸方向一方側に露出する領域を指している。
【0022】
〈コイル部品の効果〉
次に、図3および図4を参照しながら、本発明に係るコイル部品が奏する効果について詳述する。図3および図4では、本発明の第2実施形態に係るコイル部品10Aと従来の別のコイル部品110Aとを対比して示している。どちらの図においても、コイル部品10A,110Aの縦断面を模式的に表しているが、図3においては、線材11A,111Aの巻回順が大略分かるように、断面内にW〜W16の番号を付すとともに、内周の巻回層の巻回状態を破線と実線を用いて模式的に表している。
【0023】
図3および図4に示すコイル部品110Aは、巻線部112Aにおける巻回層の数が2層で、巻回の段数(高さ方向の線材111Aの積層数)が4段(以下、このような状態を「2層、4段の巻回構成」というように、巻回層の数と巻回の段数とを簡略化して表現する)である点を除き、基本的な構成は、上述した従来のコイル部品110と同じである。
【0024】
すなわち、図3に示すようにコイル部品110Aは、線材111Aが、W→W→W→W→W→W→W→Wの順に巻回されることにより、内周(1層目)の巻回層が形成された後、続けて線材111Aが、W→W10→W11→W12→W13→W14→W15→W16の順に巻回されることにより、外周(2層目)の巻回層が形成され、これにより空芯の巻線部112Aが構成される。また、巻線部112Aの内周の巻始端113A(番号Wの断面位置)から、巻線部112Aの軸方向一方側の端面117A(番号W,W,W15,W16の線材111Aの露出した上面により構成される)を通って巻線部112Aの外方へと延出する第1のリード部115Aと、巻線部112Aの外周の巻終端114A(番号W16の断面位置)から巻線部112Aの外方へと延出する第2のリード部116Aと、を備えており、第1のリード部115Aの、端面117Aを通る部分(引出部118A)が、端面117A上を直線的に横切るように構成されている。
【0025】
一方、本発明の第2実施形態に係るコイル部品10Aは、図3および図4に示すように、巻線部12Aが2層、3段の巻回構成である点を除き、他の基本的な構成は、上述の第1実施形態に係るコイル部品10と同じである。
【0026】
すなわち、図3に示すようにコイル部品10Aは、線材11Aが、W→W→W→W→W→Wの順に巻回されることにより、内周(1層目)の巻回層が形成された後、続けて線材11Aが、W→W→W→W10→W11→W12の順に巻回されることにより、外周(2層目)の巻回層が形成され、これにより空芯の巻線部12Aが構成されている。また、巻線部12Aの内周の巻始端13A(番号Wの断面位置)より延び、巻線部12Aの軸方向一方側の端面17A(番号W,W,W11,W12の線材11Aの露出した上面により構成される)に接しながら、該端面17Aに沿って該端面17Aの内縁から外縁に向けて、W13→W14→W15→W16の順に渦状に巻回されてなる渦状巻回部18Aと、この渦状巻回部18Aの終端19Aより巻線部12Aの外方へと延出する第1のリード部15Aと、巻線部12Aの外周の巻終端14A(番号W12の断面位置)より巻線部12Aの外方へと延出する第2のリード部16Aと、を備えている。
【0027】
上記渦状巻回部18Aは、線材11Aが端面17Aに接しながら、該端面17Aに沿って巻回されることにより構成されているので、巻線部12Aの一部として機能する。このため、コイル部品10Aは、従来のコイル部品110Aに対し、全体としての巻回数は同じながら、小型化・低背化を達成している。
【0028】
すなわち、図3に示すように従来のコイル部品110Aでは、上記引出部118Aが、端面117A上を直線的に横切るように構成されているので、全体としての高さが、巻線部112Aの高さHに、線材111Aの直径d分の長さを加えたもの(H+d)になってしまう。これに対し、コイル部品10Aでは、渦状巻回部18Aが巻線部12Aの一部として機能するので、従来のコイル部品110Aに比べて、線材11A(線材111Aでも同じ)の直径dの長さ分だけ小型化・低背化を達成している。
【0029】
また、従来のコイル部品110Aでは、引出部118Aが、端面117A上を直線的に横切るように構成されているので、引出部118Aだけが端面117Aの位置よりも1段高くなっている。これに対し、コイル部品10Aでは、渦状巻回部18Aが、端面17Aに接しながら、該端面17Aに沿って該端面17Aの内縁から外縁に向けて渦状に巻回されて構成されているので、渦状巻回部18Aが全体として1つの端面を構成する。
【0030】
このため、例えば特開平9−35930号公報に示されるような、連続巻線された複数のコイル部品(光ピックアップ用のトラッキングコイル)のうちの1つとしてコイル部品10Aを用いることを想定して、図4に示すように、凸部21を有するような取付面22に対してコイル部品10Aを取り付ける場合、渦状巻回部18Aの側が取付面22に対向するようにしても、コイル部品10Aを水平状態に保ちながら安定して取り付けることが可能となる。
【0031】
これに対し、従来のコイル部品110Aを、図4に示すように、引出部118Aの側が取付面22に対向するように取付面22に取り付けようとすると、引出部118Aが障害となってコイル部品110Aが取付面22に対し斜めとなってしまい、安定した取付けが困難となる。そこで、コイル部品110Aを安定して取り付けるために、引出部118Aの側を図中上方に向けて取り付けることも考えられるが、この場合には、第1のリード部115Aおよび第2のリード部116Aが取付面22から離れてしまうので、第1のリード部115Aおよび第2のリード部116Aを配線する際、空中配線になり、特に線材111Aが細い場合などにおいて、線材111Aが破断し易くなる虞がある。
【0032】
一方、コイル部品10Aでは、上述した第1実施形態のコイル部品10と同様に、第1のリード部15Aおよび第2のリード部16Aが、共に巻線部12Aの軸方向一方側(図4では下側)において、巻線部12Aの外方へと延出されているので、引出部18Aの側を取付面22に対向するように設置しても、第1のリード部15Aおよび第2のリード部16Aを取付面22に沿って配線することが可能となり、線材11Aが破断する可能性を低減することが可能となる。
【0033】
なお、図3に示すコイル部品10Aでは、例えば、巻線部12Aの内周側に位置する番号W,W,Wの各断面に対し、外周側に位置する番号W,W,W11の各断面が、各々径方向において、番号Wの断面は番号Wの断面とのみ接し、番号Wの断面は番号Wの断面とのみ接し、番号W11の断面は番号Wの断面とのみ接しているように表されているが、番号Wの断面が番号W,Wの各断面と接し、番号Wの断面が番号W,Wの各断面と接するというように、いわゆる俵積みの状態で、線材11Aが巻回される場合もある(図1では、そのような巻回状態を表している)。本明細書では、主に前者の態様により巻回された場合を図示して説明するが、本発明の趣旨を損なうことなく、後者すなわち俵積み状態の巻回態様に置き換えることも可能である。
【0034】
〈コイル部品の巻回方法〉
次に、図5を参照しながら、本発明に係るコイル部品の巻回方法について詳述する。なお、以下の説明では、上述した第2実施形態に係るコイル部品10Aを例に挙げているが、他の実施形態のコイル部品についても、同様の巻回方法を用いることが可能である。また、図5中に示す番号W〜W16は、図3においてコイル部品10Aの断面に付した番号W〜W16と対応している。
【0035】
(1)準備段階として、図示せぬ巻線機に、円柱状の巻軸31を設置する。巻軸31には、第1巻枠32および第2巻枠33が配設されており、第1巻枠32は、巻軸31の軸方向(図中上下方向)に移動可能に構成されている(図5(A)参照)。
【0036】
(2)第1巻枠32を移動させて、第1巻枠32と第2巻枠33との間隔を調整する。本例では、第1巻枠32と第2巻枠33との間隔が、線材11Aの直径の略4倍の長さとなるように調整している。
【0037】
(3)図5(A)に示すように、線材11Aの一方の端側に所定長(図3に示す渦状巻回部18Aおよび第1のリード部15Aを構成するのに必要な長さ)の当該線材11Aからなる貯蔵線材11Aaを、図示せぬ貯蔵用部材に確保しておき、線材11Aの一方の端側の、貯蔵線材11Aaに続く部分を第1巻枠32の内壁部に留めておきながら線材11Aの他方の端側を順次繰り出し、隣接する線材11A同士を密着させて巻回する整列巻きにより、巻線部12A(図3参照)の1層目を、番号W→W→W→W→W→Wの順に巻回する。また、線材11Aの番号W,Wの位置と第1巻枠32との間には、所定間隔(例えば、線材11Aの直径分の長さの間隔とすることができるが、それよりも広くすることも可能)の隙間が形成されるようにする。
【0038】
(4)図5(B)に示すように、巻線部12A(図3参照)の1層目の外周部に、巻線部12Aの2層目を、同じく整列巻きにより、番号W→W→W→W10→W11→W12の順に巻回する。この段階で、巻線部12Aおよび第2のリード部16Aが形成される。
【0039】
(5)図5(C)に示すように、第1巻枠32を図中上方に移動させ、線材11Aの番号W11,W12の位置と第1巻枠32との間に巻回スペースを確保し、線材11Aの一方の端側に確保されていた貯蔵線材11Aaを繰り出しながら、繰り出された貯蔵線材11Aaを図3に示す巻回部12Aの軸方向一方側の端面17Aに密着させつつ該端面17Aに沿って貯蔵線材11Aaを渦状に巻回することにより、図3に示す渦状巻回部18Aの1巻目を、番号W13→W14の順に形成する。
【0040】
(6)図5(D)に示すように、貯蔵線材11Aaの残りを繰り出しながら、繰り出された貯蔵線材11Aaを図3に示す巻回部12Aの軸方向一方側の端面17Aに密着させつつ該端面17Aに沿って貯蔵線材11Aaを渦状に巻回することにより、図3に示す渦状巻回部18Aの2巻目を、番号W15→W16の順に形成する。この段階で、渦状巻回部18Aおよび第1のリード部15Aが形成される。その後、巻回された線材11Aを融着させ、巻軸32から取り外すことにより、図3に示すコイル部品10Aが形成される。なお、上記渦状巻回部18Aを形成する際に、第1巻枠32を巻軸31から取り外し、この状態で渦状巻回部18Aを形成してもかまわない。ただし、この場合には、渦状巻回部18Aを形成する際、第1巻枠32が巻回される線材11Aを押える効果がなくなるので、渦状巻回部18Aの巻回状態が乱れ易くなる虞がある。
【0041】
〈コイル部品の別態様〉
図6に示す第3実施形態に係るコイル部品10Bは、線材11Bにより構成され、空芯の巻線部12Bが4層、7段の巻回構成とされ、渦状巻回部18Bの巻回数が4回とされた態様のものである。第1のリード部15Bおよび第2のリード部16Bが、共に巻線部12Bの軸方向一方側(図6では上側)において、巻線部12Bの外方へと延出されている点は、上述した他の実施形態と同様である。
【0042】
図7に示す第4実施形態に係るコイル部品10Cは、線材11Cにより構成され、空芯の巻線部12Cが4層、7段の巻回構成とされ、渦状巻回部18Cの巻回数が4回とされた態様のものであり、この点は、上述の第3実施形態に係るコイル部品10Bと同様である。異なるのは、巻線部12Cの外周の巻回層(4層目)が、隣接する線材間に所定のスペースを設けながら巻回する手法(スペース巻き)により巻回されている点である。このような態様は、巻線部12Cの巻回数を微調整したい場合などに適している。
【0043】
〈圧粉インダクタの構成〉
次に、図8および図9を参照しながら、本発明の一実施形態に係る圧粉インダクタの構成について説明する。なお、以下の説明では、上述した第1実施形態に係るコイル部品10(図1参照)を用いることを前提としているが、他の実施形態のコイル部品を用いることも可能である。
【0044】
図8および図9に示す圧粉インダクタ50は、一般的に金属磁性粉を圧縮成形してなる圧粉体51と、該圧粉体51の内部に埋設されたコイル部品10と、導電性を有する板材で構成された一対の端子52,53(図8では、一方の端子52のみ示す)と、を備えてなる。
【0045】
上記圧粉体51を構成する金属磁性粉としては、純鉄粉、鉄系合金、アモルファス金属等の金属系粉末に、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂、潤滑剤や架橋剤、あるいは無機物等の絶縁物を混合することにより絶縁コーティングされた金属粒子が用いられる。
【0046】
上記コイル部品10は、巻線部12と渦状巻回部18、それに第1のリード部15および第2のリード部16の各根元部分が圧粉体51の内部に埋設されており、第1のリード部15の先端部分と、第2のリード部16の先端部分は、圧粉体51の側面部から外方へと延出している。
【0047】
上記端子52,53は、それぞれ一端部が圧粉体51の内部に埋設されており、圧粉体51の外部に配置される部分は、圧粉体51の側面部および底面部に沿うように断面L字状に屈曲加工されている。また、端子52は第1のリード部15の先端部分に、端子53は第2のリード部16の先端部分に、それぞれ接続されている。
【0048】
なお、端子52,53の配設位置や、次述するように圧粉インダクタ50を製造する際のコイル部品10の金型中での平衡性を考慮した場合、図2(A)に示すように、渦状巻回部18の終端19および巻線部12の外周の巻終端14は、巻線部12の軸線を挟んで互いに対向する位置、すなわち、終端19、巻終端14および軸線の、軸線に対し垂直な平面上への各投影点が略一直線(図中2点鎖線で示す)上に並ぶ位置となるような形態とすることが好ましい。
【0049】
〈圧粉インダクタの製造方法〉
次いで、図10を参照しながら、上記圧粉インダクタ50の製造方法について簡単に説明する。
【0050】
図示せぬ金型に、コイル部品10と、フレーム状に形成された端子母材55を設置するとともに、第1のリード部15および第2のリード部16を加工(図10(A)参照)した後、金型内に金属磁性粉を入れて圧粉体51を形成する(図10(B)参照)。さらに、端子母材55の不要な部分を切除して端子52,53を形成し(図10(C)参照)、その後、端子52,53を屈曲加工することにより、図8に示す圧粉インダクタ50が完成する。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に態様が限定されるものではなく、種々に態様を変更することが可能である。
【0052】
例えば、上記実施形態においては、コイル部品を構成する線材が単線とされているが、複線の線材を用いてコイル部品を構成することも可能である。
【0053】
また、上記実施形態のコイル部品においては、第1のリード部および第2のリード部が、共に巻線部の軸方向一側において巻線部の外方へと延出される態様(この場合、巻線部の巻回層の数は偶数となる)とされているが、第1のリード部は巻線部の軸方向一側において、第2のリード部は巻線部の軸方向他側において、それぞれ巻線部の外方へと延出される態様(この場合、巻線部の巻回層の数は奇数となる)とすることも可能である。
【0054】
また、上記実施形態のコイル部品においては、渦状巻回部が、端面の内縁から外縁に亘って該端面の全領域を覆うように渦状に巻回され、第1のリード部が、端面の外縁から外方へと延出しているが、渦状巻回部が、端面の内縁側の一部領域を覆うように渦状に巻回された後、第1のリード部が、端面の外縁側の領域を直線的に横切って外縁に至り、更に外方へと延出するようにしてもよい。
【0055】
また、本発明に係るコイル部品において、巻線部の巻回層の数や巻回の段数は、上記実施形態の態様に限定されるものではなく、用途に応じて種々の値に設定することが可能である。
【0056】
また、上記実施形態のコイル部品においては、巻線部の外縁形状および空芯部分の形状が共に円形とされているが、これらの形状を、R付きの矩形状あるいは楕円状とすることも可能である。
【0057】
また、上記実施形態のコイル部品においては、渦状巻回部の終端と巻線部の外周の巻終端とが、巻線部を挟んで互いに対向する位置にくるように構成されているが、図11に示す第5実施形態のコイル部品10Dのように、渦状巻回部18Dの終端19Dと巻線部12Dの外周の巻終端14Dとが、共に、巻線部12Dの周方向の同じ位置(巻線部12Dの軸方向から見たとき(図11(A)参照)、渦状巻回部18Dの終端19Dと巻線部12Dの外周の巻終端14Dが互いに重なる位置)にくるようにし、そこから、第1のリード部15Dと第2のリード部16Dとが互いに異なる方向、特に、180°反対の方向に延出するように構成してもよい。
【0058】
また、本発明に係るコイル部品は、圧粉インダクタ以外にも、例えば、光ピックアップや各種のセンサ、または各種のアンテナや無接点エネルギー転送装置など様々な電子部品や電子機器に用いることも好適なものである。
【符号の説明】
【0059】
10,10A,10B,10C,10D,110,110A コイル部品
11,11A,11B,11C,11D,111,111A 線材
11Aa 貯蔵線材
12,12A,12B,12C,12D,112,112A 巻線部
13,13A,113,113A (巻線部の)内周の巻始端
14,14A,14D,114,114A (巻線部の)外周の巻終端
15,15A,15B,15C,15D,115,115A 第1のリード部
16,16A,16B,16C,16D,116,116A 第2のリード部
17,17A,117,117A (巻線部の軸方向一方側の)端面
18,18A,18B,18C,18D 渦状巻回部
19,19D (渦状巻回部の)終端
21 凸部
22 取付面
31 巻軸
32 第1巻枠
33 第2巻枠
50 圧粉インダクタ
51 圧粉体
52,53 端子
55 端子母材
118,118A 引出部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する線材が整列巻きにより複数層巻回されてなる空芯の巻線部と、
前記巻線部の内周の巻始端より延び、前記巻線部の軸方向一方側の端面に接しながら該端面に沿って該端面の内縁から外縁に向け渦状に巻回されてなる渦状巻回部と、
前記渦状巻回部の終端より前記巻線部の外方へ延出する第1のリード部と、
前記巻線部の外周の巻終端より前記巻線部の外方へ延出する第2のリード部と、
を備えてなることを特徴とするコイル部品。
【請求項2】
前記巻線部の前記内周の巻始端および前記外周の巻終端が、共に前記巻線部の前記軸方向一方側に位置しており、前記第1のリード部および前記第2のリード部は、共に前記巻線部の軸方向一方側において、前記巻線部の外方へ延出している、ことを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
金属磁性粉を圧縮成形してなる圧粉体と、該圧粉体の内部に埋設された請求項1または2に記載のコイル部品と、を備えてなることを特徴とする圧粉インダクタ。
【請求項4】
請求項1または2に記載のコイル部品を製造するためのコイル部品の巻回方法であって、
巻回に用いる線材の一方の端側に所定長の当該線材からなる貯蔵線材を確保しておき、
前記線材の一方の端側の、前記貯蔵線材に続く部分を一方の巻枠の内壁部に留めておきながら前記線材の他方の端側を順次繰り出し、隣接する前記線材同士を密着させて巻回する整列巻きにより、複数の巻回層を有する巻線部を形成した後、
前記貯蔵線材を繰り出しながら、繰り出された前記貯蔵線材を、前記巻線部の軸方向一方側の端面に密着させつつ該端面に沿って該端面の内縁から外縁に向けて渦状に巻回することにより渦状巻回部を形成する、ことを特徴とするコイル部品の巻回方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−230972(P2012−230972A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97313(P2011−97313)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【出願人】(000107804)スミダコーポレーション株式会社 (285)
【Fターム(参考)】