説明

コイル

【課題】巻き線作業を必要とせず、製造が容易で安定した発電出力が得られるコイルを提供する。
【解決手段】円板状の銅薄板の周方向に複数の矩形透過孔部を一定の間隔で形成し、該矩形透過孔部を回避して環状の波型コイルパターンを形成すると共に、中央部に透孔孔部を形成し電気絶縁性樹脂を塗布して複数積層させて積層板とし、該積層板の前記コイルパターンの端部をそれぞれ積層方向で接続すると共に、この積層板をそれぞれ所定の角度となるように回転させてさらに三層に積層し、該三層の積層板の表裏の積層板に形成された矩形透過孔部の周方向に接する波型コイルパターンをそれぞれ中央積層板の矩形透過孔部位置へ垂直方向に窪ませて同一平面状に形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルに関しとくにコアレス発電機用或いはモーター用のコイルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、風力発電等に使用されるコアレス発電機や各種のモーター用のコイルとして、棒状のコア(鉄芯)にコイルを長い円筒状に巻いた電機子コイルを有するものが多用されている。しかし、コア入りの電機子コイルは、コアと永久磁石との間において互いに引き合う力が生じ、回転に必要なトルクが大きくなり、低風速時には発電出力が低下する問題点が有った。
【0003】
そこで、風車の回転軸部側に結合され、前記波形部に対応する複数組の平板形状の界磁石と対向し、波形部をもつ様に環状の平板形状に巻かれたコアレスの電機子コイルからなるアウターロータ形コアレス発電機用コイルが提案されている(特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】特願2000−287426号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に提案されているコアレス発電機用コイルは、コア(鉄芯)よるトルクの増大や、低風速時における発電出力の低下は解消されるものの、電機子コイルが環状の平板形状に巻かれて作成されているため、コイルの品質にバラツキがあるという問題点があった。しかも、発電出力を増大させるためには、前記平板形状の界磁石の径を大きくする必要があり、必然的にコアレス発電機用コイルが大型化しコストアップとなるという問題点もあった。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みなされたもので、円板状の銅薄板を金型によるプレス加工によって波型コイルパターンを形成し、電気絶縁性樹脂を塗布して複数積層させて積層板とし、さらにこの積層板を所定の角度に回転させて更に積層し、プレス加工によって電機子を成形することで品質が安定すると共に、界磁極間で挟持される隙間を狭くすることができ、しかも小型で発電効率を向上させることが可能となるコイルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため本発明のコイルは、円板状の銅薄板の周方向に複数の矩形透過孔部を一定の間隔で形成し、該矩形透過孔部を回避して環状の波型コイルパターンを形成すると共に、中央部に透孔孔部を形成し電気絶縁性樹脂を塗布して複数積層させて積層板とし、該積層板の前記波型コイルパターンの端部を積層方向で接続して連続するコイルパターとすると共に、この積層板をそれぞれ所定の角度となるように回転させてさらに三層に積層し、該三層の積層板の表裏の積層板に形成された波型コイルパターンの矩形透過孔部の周方向に接する波型コイルパターンを、中央層の積層板の矩形透過孔部位置へ夫々垂直方向に窪ませて同一平面状に形成したことを第一の特徴とする。
【0008】
また、前記円板状の銅薄板に成形した複数の矩形透過孔部と、該透過孔部の周囲に形成した波型コイルパターンは、金型によるプレス加工によって形成して構成したことを第二の特徴とする。
【0009】
そして、前記積層板は、環状の波型コイルパターンを形成した複数の銅薄板を表裏逆に交互に積層したことを第三の特徴とする。
【0010】
さらに、前記複数の積層板を積層して形成した積層体を耐熱樹脂にて封止したことを第四の特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のコイルによれば、、円板状の銅薄板の周方向に複数の矩形透過孔部を形成し、該透過孔部を回避して環状の波型コイルパターンを形成し、さらに中央部に透孔孔部を形成した前記銅薄板に電気絶縁性樹脂を塗布して複数積層するため、従来の銅線を使用するコイル巻き作業を全く必要とせず、しかも均一な品質のコイルが作成できるという優れた効果を有する。
【0012】
しかも、前記複数の積層板に形成した波型コイルパターンをそれぞれ前記矩形透過孔部において垂直方向に窪ませて同一平面状に形成し、さらに形成した積層体を耐熱樹脂にて封止したため、コイルを挟んで対向する界磁極間を狭くすることが可能となり、発電効率が向上するという優れた効果を有する。
【0013】
そして、環状の波型コイルパターンを形成した複数の銅薄板を表裏逆に交互に積層しているため、電流の流れ方向が一定となるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明のコイルを一実施例に基づいて説明するが、本発明が本実施例に限定されないことは言うまでもない。図1は本発明のコイルの一実施例を示す説明図、図2は本発明のコイルに使用する銅薄板の製造工程を示す説明図、図3は図2の裏面図、図4は本発明のコイルの製造工程を説明する説明図である。
【実施例1】
【0015】
図1は、本発明のコイル1を示す説明図であり、図1aは側面図、図1bは平面図である。図に示すように本発明のコイル1は平面視ドーナツ状に形成されており、3枚の積層板2を積層して構成され、中央には円形の透過孔部3が形成されている。この積層板2は後述する複数の銅薄板を積層して構成されており、金型によって波型コイルパターンが形成されている。またコイル1は耐熱樹脂4によって封止され、コイル1の外周面からは接続用端子(図示せず)が設けられている。そして、表裏2枚の積層板2の表面には周方向に環状に窪み部5が形成され、この窪み部5と中央の積層板2とが同一平面になるように構成されている。
【0016】
この構成からなるコイル1をインナーロータ型発電機に使用すると、コイル1を表裏から挟持して配置する永久磁石を上記窪み部5の位置において回動させることができるため、コイル1を挟んで対向する界磁極間を狭くすることが可能となり、発電効率を向上させることができる。また、コイル1を構成する積層板2は金型による打ち抜きによって形成された複数の銅薄板で構成されているため、常に一定の品質が得られる。
【0017】
次に、図1乃至図4を使用してコイル1の製造工程を説明する。図2は電気絶縁樹脂(図示せず)を塗布した銅薄板6を示しており、図2aは平面図、図2bは側面図、図3は図2の裏面を示し、図4は3枚の積層板2を夫々一定の角度を付けた状態を示している。まず厚さ0.5mmの銅板を金型を使用して打ち抜き、円板形状の銅薄板6とする。この際、予め周方向に複数の矩形透過孔7と、中央に円形の透過孔部3と、矩形透過孔7を回避して環状の波型コイルパターン8とが金型にて同時に形成される。次に電気絶縁樹脂を銅薄板6の表面全体に塗布し乾燥させる。尚、銅薄板6に形成された波形コイルパターン8の末端位置の表裏には接合部9が夫々形成され、後述する積層板2の作成の際に使用される。
【0018】
この銅薄板6を表裏逆に複数交互に積層して耐熱接着剤(図示せず)によって接合し、接合部9同士を圧着して、上述した積層板2が形成される。この工程によって、波型コイルバターン8は銅薄板6の積層方向に対して連続した回路が形成される。尚、本実施例においては10枚の銅薄板6を積層した。
【0019】
次に図4を使用して積層板2によるコイル1の製造工程を説明する。図4a、図4b、図4cは夫々積層板2の平面図、また図4A、図4B、図4Cは側面図を示しており、積層板2を夫々一定の角度で回転させた状態を示している。まず図4aと図4cの積層板2の矩形透過孔7の周方向に接する波型コイルパターン8をプレス金型によって上下方向に窪ませる。この際プレス金型による窪み深さは、夫々積層板2の厚みと同一とされる。そして図4bの積層板2を中央に配置して図4aと図4cの積層板2を夫々上下に積層して耐熱接着剤(図示せず)によって接合し、3枚の積層板2の矩形透過孔7の周方向に接する波型コイルパターン8が矩形透過孔7の位置で周方向で同一平面となるコイル1が形成される。さらに、コイル1は耐熱樹脂4によって封止される。
【実施例2】
【0020】
次に図5乃至図7に従って、本発明のコイルを使用したインナーロータ型コアレス発電機を説明する。図5は本発明のコイルを使用した発電機の一実施例を示す斜視図、図6(a)は図5の平面図、図6(b)は図5の縦断面説明図、図7は図5の構成を説明する断面構成説明図である。図に示すように、発電機11は、回転軸12を嵌入し回転可能に保持した円板形状を有する一対の外側界磁極13と、一対の外側界磁極13に挟持された3個の中孔円板形状を有する電機子14と、電機子14と交互に配置され回転軸12を嵌入する2個の内側界磁極15と、回転軸12を挿通し電機子14を外周面で保持するする外ケース16とから構成され、回転軸12の回転による界磁極13、15の回転によって電機子14のコイル17に誘導電流が発生し発電する。
【0021】
外側界磁極13・13は、回転軸12を嵌入する中央孔部18を有する段付き円板形状のホルダー19と、ホルダー19の片面の外縁近傍に周方向に磁極を交互に入れ替えて配置された複数の永久磁石20と、永久磁石20をホルダー19と接続する磁石ホルダー21とからなり、夫々永久磁石20を対向して配置され、対向する永久磁石20の磁極はそれぞれ逆とされる。また、内側界磁極15・15は、回転軸12を嵌入する中央孔部18を有する段付き円板形状のホルダー22と、ホルダー22の両面の外縁近傍に周方向に磁極を交互に入れ替えて配置された複数の永久磁石20と、から構成され、電機子14と交互に積層されて回転軸12を嵌入される。さらに、電機子14の外周部は2枚のアルミ製ホルダー26によって挟持して保持されている。尚、ホルダー19、22はいずれもアルミ若しくはアルミ合金にて形成されている。
【0022】
外ケース16は、中央部に回転軸12を回転可能に保持するベアリング23が設けられ、上記した界磁極13、15及び電機子14をスペーサー24を介して挟持する。また、回転軸12は円筒状に成形された鋼製部材からなり、外ケース16のベアリング23及び上記界磁極13、14を嵌入して保持される。そして、外ケース16の外縁部に設けられた取り付け孔にボルトによって、上記した磁極13,15及び電機子14が積層して取り付けられる。
【0023】
上記の構成からなる本発明のコイルを使用する発電機によれば、複数の界磁極と電機子を回転軸方向に交互に積層して構成するため、高出力の発電を行なうことが可能となり、しかも界磁極の径を大きくすることがないため小型化が図れ、さらに界磁極と電機子を規格化することで、コストを軽減することができる。しかも平板上に成形した電機子表面の永久磁石と対向する部分が周方向で窪ませてあり、永久磁石からなる界磁極同士の間隔を狭くすることが可能となり、発電効率が向上する。さらに平板上に形成した電機子と、平板状のホルダーに永久磁石を配置した界磁極を回転軸方向に複数積層して発電機を構成することができ、小型で低コストであり、しかも出力の大きな発電機が得られる。
【0024】
以上本発明によるコイルは、環状の波型コイルパターンを形成した複数の銅薄板を積層して構成したため、コイル巻き作業を全く必要とせず、均一な品質のコイルが作成できる。しかも矩形透過孔部において複数の積層板に形成した波型コイルパターンをそれぞれ垂直方向に窪ませて同一平面状に形成し、さらに形成した積層板を耐熱樹脂にて封止したため、コイルを挟んで対向する界磁極間を狭くすることが可能となり、発電効率が向上する
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のコイルの一実施例を示す説明図である。
【図2】本発明のコイルに使用する銅薄板の製造工程を示す説明図である。
【図3】図2の裏面図である。
【図4】本発明のコイルの製造工程を説明する説明図である。
【図5】本発明のコイルを使用した発電機の一実施例を示す斜視図である。
【図6】図5の平面図及び縦断面説明図である。
【図7】図5の構成を説明する断面構成説明図である。
【符号の説明】
【0026】
1 コイル
2 積層板
3 透過孔部
4 耐熱樹脂
5 窪み部
6 銅薄板
7 矩形透過孔
8 波型コイルバターン
9 接合部
11 発電機
12 回転軸
13 外側界磁極
14 電機子
15 内側界磁極
16 外ケース
17 コイル
18 中央孔部
19、22、26 ホルダー
20 永久磁石
21 磁石ホルダー
23 ベアリング
24 スペーサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円板状の銅薄板の周方向に複数の矩形透過孔部を一定の間隔で形成し、該矩形透過孔部を回避して環状の波型コイルパターンを形成すると共に、中央部に透孔孔部を形成し電気絶縁性樹脂を塗布して複数積層させて積層板とし、該積層板の前記波型コイルパターンの端部を積層方向で接続して連続したコイルパターンとすると共に、この積層板をそれぞれ所定の角度となるように回転させてさらに三層に積層し、該三層の積層板の表裏の積層板に形成された波型コイルパターンの矩形透過孔部の周方向に接する波型コイルパターンを、中央層の積層板の矩形透過孔部位置へ夫々垂直方向に窪ませて同一平面状に形成したことを特徴とするコイル。
【請求項2】
前記円板状の銅薄板に成形した複数の矩形透過孔部と、該透過孔部を回避して形成した環状の波型コイルパターンは、金型によるプレス加工によって形成したことを特徴とする請求項1記載のコイル。
【請求項3】
前記積層板は、環状の波型コイルパターンを形成した複数の銅薄板を表裏逆に交互に積層したことを特徴とする請求項1又は2に記載のコイル。
【請求項4】
前記複数の積層板を積層して形成した積層体を耐熱樹脂にて封止したことを特徴とする請求項1又は3に記載のコイル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−171798(P2009−171798A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−9923(P2008−9923)
【出願日】平成20年1月19日(2008.1.19)
【出願人】(508014718)A−WINGインターナショナル株式会社 (4)
【Fターム(参考)】