説明

コックピットモジュールの床支持部構造

【課題】主に、サブステーをなくして、車体強度部材の重量低下を図ることや、サブステーの分の部品コストや、溶接点数や、取付点数などを低減することが可能となるようにする。
【解決手段】車室前部にコックピットモジュール1が設置され、コックピットモジュール1が、その内部にほぼ車幅方向Xへ延びる車体強度部材2を備え、車体強度部材2が、その車幅方向Xの中間部にほぼ下方へ延びて車体のフロアパネル17に支持可能なステー18を備え、ステー18が、その下端部にフロアパネル17に取付可能な取付部26を有するコックピットモジュール1の床支持部構造であって、ステー18に、車載用機器を搭載可能な機器搭載用ブラケット31”が取付けられ、機器搭載用ブラケット31”が、フロアパネル17に支持可能な床支持部51を備え、床支持部51が、フロアパネル17に対して取付可能な床取付部52を有するようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コックピットモジュールの床支持部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両には、車室の前部にコックピットが備えられている。このようなコックピットには、コックピットモジュールで構成されたものが存在している。このコックピットモジュールは、コックピット廻りの部品を予め組立てて一部品化しておくことにより、車体に対し一度に搭載設置可能となるようにしたものである。このようなコックピットモジュールを用いることにより、車両の製造期間を大幅に短縮することや、コストダウンを図ることなどが可能となる。
【0003】
図8は、従来のコックピットモジュール1の断面を示すものである。このコックピットモジュール1は、中核部品として車体強度部材2を備えている。そして、コックピットモジュール1は、以下のような構成を備えている。
【0004】
即ち、上記した車体強度部材2に対し、最初に、内側に設置されるべき各種機器類(内側設置型機器類3)や部品類(内側設置型部品類5)が組付けられる。ここで、内側設置型機器類3には、例えば、空調ユニット4などがある。また、内側設置型部品類5には、例えば、メインハーネス6やダクト類7,8などがある。
【0005】
次いで、これらを覆うようにインストルメントパネル9が取付けられる。その後、外側から設置されるべき各種車載用機器類(外側設置型機器類11)や部品類(外側設置型部品類14)が、車体強度部材2やインストルメントパネル9などに対して組付けられる。ここで、外側設置型機器類11には、例えば、車載用オーディオユニット12やパネル型表示装置13などがある。また、外側設置型部品類14には、例えば、空調用エア吹出装置15などがある。更に、これらの外側から設置されるべき各種車載用機器類や部品類などに対し、必要に応じて、適宜化粧パネル(センタークラスターやオーディオフィニッシャー16など)が取付けられる。
【0006】
そして、コックピットモジュール1は、上記したように、その内部にほぼ車幅方向(紙面と直角方向)へ延びる車体強度部材2を備えている。この車体強度部材2は、その車幅方向の中間部に、ほぼ下方へ延びて、車体のフロアパネル17に対する支持・取付が可能なステー18を備えている。このステー18は、車体強度部材2に対して溶接固定されることなどにより一体化されるものである。
【0007】
一方、車体強度部材2またはステー18(この場合には、車体強度部材2となっている)に対して、上記した車載用機器(この場合には、外側設置型機器類11としての車載用オーディオユニット12)を搭載可能な機器搭載用ブラケット19(この場合には、オーディオユニット取付ブラケット21)などを取付けることなどが行われている(例えば、特許文献1なども参照のこと)。
【0008】
このような構成においては、コックピットモジュール1は、ステー18を介してフロアパネル17に支持されている。即ち、コックピットモジュール1は、ステー18によってフロアパネル17に支えられている。
【0009】
また、車載用機器(車載用オーディオユニット12)は、機器搭載用ブラケット19(オーディオユニット取付ブラケット21)を介して車体強度部材2またはステー18に支持されている。この場合には、車載用機器(車載用オーディオユニット12)は、車体強度部材2に対し、車両前後方向後方に離して設置されているので、車両前後方向の後方へ張出すアーム状の機器搭載用ブラケット19(オーディオユニット取付ブラケット21)を介して、ほぼ片持状態で車体強度部材2に支持されている。
【特許文献1】特開2005−97733
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記コックピットモジュールの床支持部構造では、コックピットモジュール1を、ステー18のみにてフロアパネル17に支えさせるようにしているので、ステー18に掛る荷重負担が大きくなるなどの問題があった。
【0011】
また、車載用機器(車載用オーディオユニット12)を、車両前後方向の後方へ張出すアーム状の機器搭載用ブラケット19(オーディオユニット取付ブラケット21)を介して、ほぼ片持状態で車体強度部材2に支持させるようにしているので、車載用機器(車載用オーディオユニット12)に対する支持剛性が弱くなるなどの問題があった。
【0012】
そこで、図9に示すように、ステー18の上下方向の中間部に、側面視ほぼL字型をしたサブステー25を、全体が側面視ほぼh字状となるように取付けて、コックピットモジュール1の荷重をサブステー25にも分担させるようにすることにより、ステー18に作用する荷重負担を低減させることなどが行われている。
【0013】
ここで、ステー18は、車体強度部材2に対し、ほぼ真下へ延びるものとされている。サブステー25は、ステー18に対して、車両前後方向の後方部分に取付けられる。また、サブステー25は、ステー18に対して溶接固定されることなどにより、車体強度部材2と一体化されるようにしている。この場合、ステー18は、車体強度部材2に対し、ほぼ車幅方向に間隔を有して一対設けられており、サブステー25も、各ステー18に対してそれぞれ取付けられている。ステー18およびサブステー25は、その下端部に、フロアパネル17に対して取付可能な取付部26,27を有している。この場合、取付部26,27は、ネジ止め部28,29とされている。このネジ止め部28,29は、車幅方向外方から内方へ向けてネジ止めするものなどとされている。
【0014】
同時に、車載用機器(車載用オーディオユニット12)の近くに位置するサブステー25に対して、図10に示すような枠状の機器搭載用ブラケット31’(オーディオユニット取付ブラケット32)を取付けるようにすることにより、車体強度部材2から車両前後方向の後方へ向けて、上記アーム状をした機器搭載用ブラケット31’を張出す必要をなくして、車載用機器(車載用オーディオユニット12)に対する支持剛性を向上させることが行われている。
【0015】
しかし、このようにサブステー25を設けた場合、部品点数が増えるため、車体強度部材2自体の重量増加を招くと共に、サブステー25の部品コストや、サブステー25のステー18に対する溶接点数や、サブステー25のフロアパネル17に対する取付点数などが増加するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、請求項1に記載された発明は、車室前部にコックピットモジュールが設置され、該コックピットモジュールが、その内部にほぼ車幅方向へ延びる車体強度部材を備え、該車体強度部材が、その車幅方向の中間部にほぼ下方へ延びて車体のフロアパネルに支持可能なステーを備え、該ステーが、その下端部にフロアパネルに取付可能な取付部を有するコックピットモジュールの床支持部構造において、前記ステーに、車載用機器を搭載可能な機器搭載用ブラケットが取付けられ、該機器搭載用ブラケットが、前記フロアパネルに支持可能な床支持部を備え、該床支持部が、フロアパネルに対して取付可能な床取付部を有することを特徴としている。
【0017】
請求項2に記載された発明は、前記ステーが、車体強度部材に対し、ほぼ車幅方向に間隔を有して一対設けられ、前記床支持部が、機器搭載用ブラケットに対し、一箇所設けられることにより、三点でフロアパネルに支持可能とされたことを特徴としている。
【0018】
請求項3に記載された発明は、前記床支持部が、前記床取付部の近傍に、コックピットモジュールの荷重を分担支持可能な荷重受部を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の発明によれば、車室前部にコックピットモジュールが設置され、該コックピットモジュールが、その内部にほぼ車幅方向へ延びる車体強度部材を備え、該車体強度部材が、その車幅方向の中間部にほぼ下方へ延びて車体のフロアパネルに支持可能なステーを備え、該ステーが、その下端部にフロアパネルに取付可能な取付部を有するコックピットモジュールの床支持部構造において、前記ステーに、車載用機器を搭載可能な機器搭載用ブラケットが取付けられ、該機器搭載用ブラケットが、前記フロアパネルに支持可能な床支持部を備え、該床支持部が、フロアパネルに対して取付可能な床取付部を有することにより、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、機器搭載用ブラケットに備えられた床支持部が、コックピットモジュールの荷重を分担支持することにより、ステーに作用する荷重負担を低減することができる。同時に、床支持部は、機器搭載用ブラケットに作用する車載用機器の荷重を支持することができる。これにより、フロアパネルに対するコックピットモジュールの支持剛性を上げることと、車体強度部材に対する車載用機器の取付剛性を上げることを、一度に同時に達成することが可能となる。以て、サブステーが不要化され、車体強度部材の重量低下を図ることや、サブステーの分の部品コストや、溶接点数や、取付点数などを低減することが可能となる。
【0020】
請求項2の発明によれば、前記ステーが、車体強度部材に対し、ほぼ車幅方向に間隔を有して一対設けられ、前記床支持部が、機器搭載用ブラケットに対し、一箇所設けられることにより、三点でフロアパネルに支持可能とされたことにより、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、床支持部を一箇所として、三点支持させるようにしたことにより、支持の安定性を確保しつつ、フロアパネルに対する取付点数を減らすことができる。
【0021】
請求項3の発明によれば、前記床支持部が、前記床取付部の近傍に、コックピットモジュールの荷重を分担支持可能な荷重受部を備えたことにより、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、床支持部に備えられた荷重受部が、荷重を受けることにより、床取付部が荷重に対してフリーな状態となるので、床取付部のフロアパネルに対する取付性を向上することが可能となる。また、荷重受部によって荷重を支持させるようにしたことにより、床支持部を一箇所に減らした場合であっても、機器搭載用ブラケットの自重による倒れを防止させるようにすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を具体化した実施例について、図示例と共に説明する。
【実施例】
【0023】
図1〜図7は、この発明の実施例を示すものである。なお、コックピットモジュールなどの構成については、図8〜図10を用いて説明したものと基本的にほぼ同様なので、必要に応じてこれらの図面を参照すると共に、これらに対する記載を以てこの実施例の説明とすることができる。この際、同一ないし均等な部分については、同一の符号を付すようにしている。但し、構成の異なる部分については、図1〜図7に拠るものとする。
【0024】
まず、構成について説明する。
【0025】
自動車などの車両には、車室の前部にコックピットが備えられている。このようなコックピットには、コックピットモジュール1で構成されたものが存在している。このコックピットモジュール1は、コックピット廻りの部品を予め組立てて一部品化しておくことにより、車体に対し一度期に搭載設置可能となるようにしたものである。このようなコックピットモジュール1を用いることにより、車両の製造期間を大幅に短縮することや、コストダウンを図ることなどが可能となる。
【0026】
図8は、コックピットモジュール1の断面を示すものである(この実施例では、図1、図2がこれに相当するので、これらも併せて参照のこと)。このコックピットモジュール1は、中核部品として車体強度部材2を備えている。そして、コックピットモジュール1は、以下のような構成を備えている。
【0027】
即ち、上記した車体強度部材2に対し、最初に、内側に設置されるべき各種機器類(内側設置型機器類3)や部品類(内側設置型部品類5)が組付けられる。ここで、内側設置型機器類3には、例えば、空調ユニット4などがある。また、内側設置型部品類5には、例えば、メインハーネス6やダクト類7,8などがある。
【0028】
次いで、これらを覆うようにインストルメントパネル9が取付けられる。その後、外側から設置されるべき各種車載用機器類(外側設置型機器類11)や部品類(外側設置型部品類14)が、車体強度部材2やインストルメントパネル9などに対して組付けられる。ここで、外側設置型機器類11には、例えば、車載用オーディオユニット12やパネル型表示装置13などがある。また、外側設置型部品類14には、例えば、空調用エア吹出装置15などがある。更に、これらの外側から設置されるべき各種車載用機器類や部品類などに対し、必要に応じて、適宜化粧パネル(センタークラスターやオーディオフィニッシャー16など)が取付けられる。
【0029】
そして、上記したように、コックピットモジュール1は、その内部に、図3などに示すような、ほぼ車幅方向Xへ延びる車体強度部材2を備えている。この車体強度部材2は、その車幅方向Xの中間部に、ほぼ下方へ延びて、車体のフロアパネル17(図2参照)に支持・取付可能なステー18を備えている。このステー18は、車体強度部材2に対して溶接固定されることなどにより一体化されるものである。
【0030】
一方、車体強度部材2またはステー18(この場合には、ステー18となっている)に対して、上記した車載用機器(この場合には、外側設置型機器類11としての車載用オーディオユニット12。以下同様)を搭載可能な機器搭載用ブラケット31”(この場合には、オーディオユニット取付ブラケット32。以下同様)などを取付けることなどが行われている。車載用機器、および、機器搭載用ブラケット31”は、車載用オーディオユニット12、および、オーディオユニット取付ブラケット32とするのが、構成上、配置上は最適であるが、必ずしも、これに限るものではない。
【0031】
ここで、ステー18は、車体強度部材2に対し、ほぼ車幅方向Xに間隔を有して一対設けられている。ステー18は、その下端部に、フロアパネル17に対して取付可能な取付部26を有している。この場合、取付部26は、ネジ止め部28とされている。また、機器搭載用ブラケット31”(オーディオユニット取付ブラケット32)は、枠状のものとされている。この機器搭載用ブラケット31”(オーディオユニット取付ブラケット32)は、ステー18の下側で且つ車両前後方向Yの後方部分に設置され、取付けられている。
【0032】
なお、以上の構成は、上記した従来例のものとほぼ同様である。
【0033】
更に補足すると、上記した車体強度部材2および機器搭載用ブラケット31”(オーディオユニット取付ブラケット32)は、それぞれ金属製とされている。
【0034】
上記した車体強度部材2は、クロスカービーム、或いは、ステアリングコラムを支持することによってステアリングサポートメンバなどと呼ばれている。車体強度部材2は、車幅方向Xへ延びる車体強度部材本体35の両端部に、車体の図示しないサイドパネルに対して取付可能なサイドブラケット36を備えている。この場合、車体強度部材本体35は、金属製の丸パイプで構成されている。この車体強度部材本体35は、要求される強度の違いにより、運転席側が太くなり(大径部37)、助手席側と中央部とが細くなる(小径部38)ように、太さの異なる金属パイプを接合して構成されている。なお、大径部37と小径部38との間には、両者の段差をならしてスムーズに接続するためのテーパ状接合部39が介在されている。
【0035】
また、一対のステー18は、下方へ進むに従って間隔が狭くなる下狭まり(または上拡がり)に設置されている。左右一対のステー18間には、平面視ほぼコ字状の互いにほぼ相似形状をした上下一対のステー連結ブラケット41,42が、上下に間隔を有してほぼ平行に架設されている。この平面視ほぼコ字状のステー連結ブラケット41,42は、一対のステー18間を連結するだけでなく、上記したインストルメントパネル9および化粧パネルなどの取付けや、車載用オーディオユニット12およびそれ以外の車載用機器(外側設置型機器類11)などの取付けなど、多目的に用いることができるものである。この平面視ほぼコ字状のステー連結ブラケット41,42は、それぞれ金属板材を曲げ加工することによって形成されている。このステー連結ブラケット41,42の板面は、ここでは特に詳細には説明しないが、図示の通りとされている。
【0036】
そして、枠状の機器搭載用ブラケット31”(オーディオユニット取付ブラケット32)は、図3、図4に示すように、ほぼ車幅方向Xに対して互いにほぼ平行に延びる一対の上枠部45および下枠部46と、これら上枠部45と下枠部46との両端部間を連結する左右の側板47とを備えている。上枠部45および下枠部46は、その板面が若干前傾しているもののほぼ車両前後方向Yへ向くように配置されている。また、左右の側板47は、その板面がほぼ車幅方向Xへ向くように配置されている。この上枠部45が、下側のステー連結ブラケット42に対して当接状態で、ネジ止め(ネジ48、図2参照)などによって固定される。この際、この平面視ほぼコ字状のステー連結ブラケット42の中間連結部分を、機器搭載用ブラケット31”の上枠部45に当接(面接触)させた状態で、ネジ止めができるように、両者の板面が揃えられている。
【0037】
以上のような基本構成に対し、この実施例のものでは、上記したように、ステー18に、車載用機器(車載用オーディオユニット12)を搭載可能な機器搭載用ブラケット31”が取付けられている場合において、図5〜図7(主に図5参照)に示すように、機器搭載用ブラケット31”が、フロアパネル17に支持可能な床支持部51を備えるようにする。そして、この床支持部51が、フロアパネル17に対して取付可能な、上記とは床取付部取付部52を有するようにする。
【0038】
より具体的には、この床支持部51は、機器搭載用ブラケット31”の下枠部46に設けられている。この床支持部51は、下枠部46からほぼ下方へ向けて、フロアパネル17にほぼ達する長さとなるように一体に突設された突起状物とされている。また、床取付部52は、床支持部51に設けられたネジ穴53などとされている。また、フロアパネル17からは、床支持部51と対応させて、床支持部51に当接可能な床側受部55が突設されている。この床側受部55は、金属製の小突片などで構成され、所要の強度を得るようにするため、フロアパネル17の上面に溶接固定される。この床側受部55は、平面視ほぼコ字状を呈しており、そのコ字状の中間連結部分が床支持部51の背面側の少なくとも下部に当接(面接触)されるように設置されている。この床側受部55の床支持部51と当接する部分には、床取付部52のネジ穴53と対応する位置に、対応するネジ穴57が設けられている。このネジ穴57は、丸穴とされている。このネジ穴57(図7参照)の反当接面(背面)側の部分には、ネジ穴57と同心にナット58が予め溶接されている(ウェルドナット)。そして、これらのネジ穴53、ネジ穴57、ナット58にネジ59(図7参照)を螺着することにより、床支持部51と床側受部55とを締結固定し得るように構成されている。
【0039】
また、上記したように、ステー18が、車体強度部材2に対し、ほぼ車幅方向Xに間隔を有して一対設けられている場合において、床支持部51が、機器搭載用ブラケット31”に対し、一箇所設けられることにより、三点でフロアパネル17に支持可能とされるようにする。
【0040】
この場合、床支持部51は、一対のステー18に対し、車幅方向Xに対してはそのほぼ中央に位置し、且つ、車両前後方向Yに対してはその後方に位置するように設置されることにより、一対の取付部26および床取付部52が、平面視でほぼ二等辺三角形状となるように配置されるのが好ましい。そのために、床支持部51は、下枠部46の車幅方向Xの中央部に形成される。
【0041】
更に、図6、図7に示すように、床支持部51が、その床取付部52の近傍に、コックピットモジュール1の荷重を分担支持可能な荷重受部61を備えるようにする。
【0042】
ここで、この荷重受部61は、床取付部52の上部に設けられている。この荷重受部61は、下枠部46と、この下枠部46から下方へ延びる床支持部51との間に跨がった部分などに設けられている。この荷重受部61は、床支持部51の背面に対する取付部62と、床側受部55の上部に載置可能な受部63とを有する側面視ほぼL字状の金属板で構成されている。この荷重受部61は、背面視で、頂角部が下に位置し、底辺部が上に位置する、ほぼ三角形状などを呈しており、両側片部には、車両前後方向Yの前方へ向けてフランジ部などが曲げ形成されている。受部63は、下側の頂角部の位置に設けられている。この荷重受部61は、溶接などによって床支持部51に固定される。
【0043】
これに対応させて、床側受部55の上部には、受部63を載置保持可能な載置部64が設けられる。この載置部64は、床側受部55の(平面視ほぼコ字状の中間連結部分の)上端部を曲げ加工することによって形成されている。受部63および載置部64は、ほぼ車両前後方向Yの前方へ向けてほぼ水平方向に向くように形成されている。また、受部63および載置部64は、十分な荷重支持面積を確保し得るよう、車幅方向Xおよび車両前後方向Yに対し可能な限り延ばすようにするのが好ましい。この場合には、受部63および載置部64は、車幅方向Xに対しては、床側受部55の平面視ほぼコ字状の中間連結部分とほぼ等しいか、それよりも若干短い幅寸法に形成されている。また、受部63および載置部64は、車両前後方向Yに対しては、荷重受部61の両側のフランジ部または床側受部55の平面視ほぼコ字状の両腕部とほぼ等しい長さ寸法に形成されている。
【0044】
このように荷重受部61を設けたことに伴い、床取付部52のネジ穴53を、ほぼ上下方向に延びて、上下方向の位置の位置調整が可能な長穴66などの位置調節部とする。
【0045】
なお、図5に示すように、上記した一対の取付部26および床取付部52は、フロアパネル17の車幅方向Xの中央部に設けられたフロアトンネル67の部分(側部および上部)に、それぞれネジ止め部28されるようにしている。この場合、一対の取付部26は、ほぼ車幅方向Xへ延びるネジによって、フロアトンネル67の側部(上方)に、ほぼ車幅方向X外方から内方へ向けて取付けられ、床取付部52は、ほぼ車両前後方向Yへ延びるネジ59によって、フロアトンネル67の上部に、ほぼ車両前後方向Y後方から前方へ向けて取付けられるようにしている。これに伴い、下方へ進むに従って間隔が狭くなる下狭まり(または上拡がり)に設置された一対のステー18の下端部間の間隔は、フロアトンネル67の上部の幅寸法とほぼ等しく設定されている。
【0046】
更に、一対のステー18は、図2に示すように、側方から見て、車体強度部材本体35の直下部よりも若干車両前後方向Y後方の位置でフロアパネル17に取付けられるように、傾斜形成されている。
【0047】
また、図4中、符号68は、機器搭載用ブラケット31”(の側板47)の、インストルメントパネル9に対する取付点(ネジ止点)である。
【0048】
次に、この実施例の作用について説明する。
【0049】
コックピットモジュール1は、ステー18を介してフロアパネル17に支持されている。
【0050】
また、車載用機器(車載用オーディオユニット12)は、機器搭載用ブラケット31”(オーディオユニット取付ブラケット21)を介してステー18(のステー連結ブラケット42)に支持されている。
【0051】
この実施例によれば、車室前部にコックピットモジュール1が設置され、コックピットモジュール1が、その内部にほぼ車幅方向Xへ延びる車体強度部材2を備え、車体強度部材2が、その車幅方向Xの中間部にほぼ下方へ延びて車体のフロアパネル17に支持可能なステー18を備え、ステー18が、その下端部にフロアパネル17に取付可能な取付部26を有するコックピットモジュール1の床支持部51構造において、ステー18に、車載用機器を搭載可能な機器搭載用ブラケット31”が取付けられ、機器搭載用ブラケット31”が、フロアパネル17に支持可能な床支持部51を備え、床支持部51が、フロアパネル17に対して取付可能な床取付部52を有することにより、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、機器搭載用ブラケット31”に備えられた床支持部51が、コックピットモジュール1の荷重を分担支持することにより、ステー18に作用する荷重負担を低減することができる。同時に、床支持部51は、機器搭載用ブラケット31”に作用する車載用機器の荷重を支持することができる。これにより、フロアパネル17に対するコックピットモジュール1の支持剛性を上げることと、車体強度部材2に対する車載用機器の取付剛性を上げることを、一度に同時に達成することが可能となる。以て、サブステー18が不要化され、車体強度部材2の重量低下を図ることや、サブステー18の分の部品コストや、溶接点数や、取付点数などを低減することが可能となる。
【0052】
また、ステー18が、車体強度部材2に対し、ほぼ車幅方向Xに間隔を有して一対設けられ、床支持部51が、機器搭載用ブラケット31”に対し、一箇所設けられることにより、三点でフロアパネル17に支持可能とされたことにより、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、床支持部51を一箇所として、三点支持させるようにしたことにより、支持の安定性を確保しつつ、フロアパネル17に対する取付点数を減らすことができる。
【0053】
更に、床支持部51が、床取付部52の近傍に、コックピットモジュール1の荷重を分担支持可能な荷重受部61を備えたことにより、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、床支持部51に備えられた荷重受部61が、荷重を受けることにより、床取付部52が荷重に対してフリーな状態となるので、床取付部52のフロアパネル17に対する取付性を向上することが可能となる。また、荷重受部61によって荷重を支持させるようにしたことにより、床支持部51を一箇所に減らした場合であっても、機器搭載用ブラケット31”の自重による倒れを防止させるようにすることが可能となる。
【0054】
この際、例えば、受部63および載置部64を、車幅方向Xおよび車両前後方向Yに対し可能な限り延ばすようにすることにより、十分な荷重支持面積を確保することができるので、より効率的に荷重を受けると共に、より効果的に機器搭載用ブラケット31”の自重による倒れを防止させるようにすることが可能となる。
【0055】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、実施例はこの発明の例示にしか過ぎないものであるため、この発明は実施例の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。また、例えば、各実施例に複数の構成が含まれている場合には、特に記載がなくとも、これらの構成の可能な組合せが含まれることは勿論である。また、複数の実施例や変形例が示されている場合には、特に記載がなくとも、これらに跨がった構成の組合せのうちの可能なものが含まれることは勿論である。また、図面に描かれている構成については、特に記載がなくとも、含まれることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施例にかかるコックピットモジュールの正面図である。
【図2】図1の側方断面図である。
【図3】図2の車体強度部材および機器搭載用ブラケットの部分的に分解した斜視図である。
【図4】図3の機器搭載用ブラケットを背面側から見たコックピットモジュールの部分拡大斜視図である。
【図5】図2の車体強度部材および機器搭載用ブラケットにおける床支持部構造を示す部分拡大斜視図である。
【図6】図5を背面側から見たコックピットモジュールの部分拡大斜視図である。
【図7】図6の側方右断面図である。
【図8】従来例にかかるコックピットモジュールの床支持部構造の側方断面図である。
【図9】図8の車体強度部材および機器搭載用ブラケットの斜視図である。
【図10】図9の床支持部構造を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0057】
1 コックピットモジュール
2 車体強度部材
17 フロアパネル
18 ステー
26 取付部
31” 機器搭載用ブラケット
51 床支持部
52 床取付部
61 荷重受部
X 車幅方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室前部にコックピットモジュールが設置され、該コックピットモジュールが、その内部にほぼ車幅方向へ延びる車体強度部材を備え、該車体強度部材が、その車幅方向の中間部にほぼ下方へ延びて車体のフロアパネルに支持可能なステーを備え、該ステーが、その下端部にフロアパネルに取付可能な取付部を有するコックピットモジュールの床支持部構造において、
前記ステーに、車載用機器を搭載可能な機器搭載用ブラケットが取付けられ、
該機器搭載用ブラケットが、前記フロアパネルに支持可能な床支持部を備え、該床支持部が、フロアパネルに対して取付可能な床取付部を有することを特徴とするコックピットモジュールの床支持部構造。
【請求項2】
前記ステーが、車体強度部材に対し、ほぼ車幅方向に間隔を有して一対設けられ、前記床支持部が、機器搭載用ブラケットに対し、一箇所設けられることにより、三点でフロアパネルに支持可能とされたことを特徴とする請求項1記載のコックピットモジュールの床支持部構造。
【請求項3】
前記床支持部が、前記床取付部の近傍に、コックピットモジュールの荷重を分担支持可能な荷重受部を備えたことを特徴とする請求項1または2記載のコックピットモジュールの床支持部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−101820(P2009−101820A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−274796(P2007−274796)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】