コネクタのフローテイング構造
【課題】コネクタ3と相手方コネクタとの嵌合時の位置ずれを吸収するとともに、嵌合解除時に元の位置に戻るコネクタ3のフローティング構造において、小型化を図るとともに、コネクタの位置精度を高めること。
【解決手段】コネクタベース5に固定されたコネクタ3が相手方コネクタと嵌合する嵌合連結部をクレードルケース1の窓孔12に隙間をもって臨ませ、窓孔12内で自由に動くようにしたコネクタ3のフローティング構造において、クレードルケース1に固定されてコネクタベース5を移動可能に保持するベースホルダ7を設け、ベースホルダ7に、コネクタベース5の外周縁に係合してコネクタベース5を所定位置に保持するとともに、コネクタベース5の移動に応じて弾性変形してコネクタ3と相手方コネクタの嵌合時の位置ずれを吸収する複数の弾性係合片76〜76を一体に形成する。
【解決手段】コネクタベース5に固定されたコネクタ3が相手方コネクタと嵌合する嵌合連結部をクレードルケース1の窓孔12に隙間をもって臨ませ、窓孔12内で自由に動くようにしたコネクタ3のフローティング構造において、クレードルケース1に固定されてコネクタベース5を移動可能に保持するベースホルダ7を設け、ベースホルダ7に、コネクタベース5の外周縁に係合してコネクタベース5を所定位置に保持するとともに、コネクタベース5の移動に応じて弾性変形してコネクタ3と相手方コネクタの嵌合時の位置ずれを吸収する複数の弾性係合片76〜76を一体に形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラ、携帯電話機、パーソナルコンピュータ等の電子機器側に設けられたコネクタと、電子機器を載置するクレードル(置き台)側に設けられたコネクタとを嵌合連結する際に、コネクタ間の位置ずれを吸収するためのクレードル側のコネクタのフローテイング構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ、携帯電話機等の電子機器に充電電力を供給したり、相互に情報を送受信するために、電子機器をクレードルに載せてコネクタ同志を嵌合連結する場合がある。
この嵌合連結を容易にするために、クレードルの電子機器を載せる領域を電子機器が占める領域より僅かに広くしている。これに対応して、クレードル側のコネクタは、電子機器側のコネクタとの位置ずれを吸収するために、嵌合方向と略直交する方向に自由度をもったフローテイング構造とする必要がある。
【0003】
例えば、図4(a)(b)に示すように、クレードル100の載置部101にデジタルカメラ200を載せ、デジタルカメラ200側のコネクタ201をクレードル100側のコネクタ102と嵌合連結して情報の送受信や充電等が行われる。
この嵌合連結を容易にするために、クレードル100の載置部101は、デジタルカメラ200を載せたときにデジタルカメラ200の周囲に隙間103ができるように形成されている。これに対応してクレードル100側のコネクタ102は、クレードルケース104の載置面105に形成された窓孔106に隙間をもって臨ませ、コネクタ102を窓孔106の範囲内でコネクタ102の嵌合方向と略直交する方向に自由に動くようなフローテイング構造に形成されている。
図4(a)(b)において、クレードルケース104の内部には可撓性ケーブル107で電気的に接続された固定基板108と可動基板109が設けられ、この可動基板109にはコネクタ102が実装されている。
【0004】
具体的には、図5〜図9に示すような従来例1や、図10及び図11に示すような従来例2(特許文献1参照)が知られている。
【0005】
従来例1では、クレードル110側のコネクタ111が可動基板112に実装され、この可動基板112は、コネクタベース113に固定されるとともに、可撓性ケーブル(図示省略)を介して固定基板115と電気的に接続されている。
コネクタ111は、クレードルケース116の載置面117に形成された窓孔118に隙間119をもって臨んでいる。載置面117はコネクタ111の嵌合方向と略直交する面と平行に形成されている。
【0006】
コネクタベース113には、コネクタ111を貫通する貫通孔121の両側に位置して貫通孔122、122が形成され、この貫通孔122、122には、ベースホルダ123から突出した円筒状のボス125、125が遊嵌されている。
ベースホルダ123は、クレードルケース116の載置面117の裏側に固定され、ボス125、125と貫通孔122、122の間には、ゴムで形成された円筒状の弾性リング126、126が挿嵌されている。
【0007】
そして、ボス125、125の先端面にワッシャ付ねじ127、127を固定することにより、コネクタ111が弾性リング126、126の弾性変形によって窓孔118の範囲内で自由に動くことができる。このため、コネクタ111は、相手方コネクタ(例えば、デジタルカメラ200側のコネクタ201)との嵌合連結時の位置ずれが弾性リング126、126の弾性変形で吸収されるとともに、相手方コネクタとの嵌合連結解除時に弾性リング126、126の復帰力で元の位置に戻される。
【0008】
図5〜図9において、クレードルケース116は上ケース131と下ケース132で形成され、上ケース131の上面の一部に電子機器をのせる載置面117が形成されている。
上ケース131の載置面117と、この載置面117の両側で上ケース131上に立設された側板133、133と、載置面117の背面側で上ケース131上に立設された背板135とによって、電子機器を載せる載置部136が形成されている。
【0009】
従来例2では、図10及び図11に示すように、クレードル150側のコネクタ151が可動基板152に実装され、この可動基板152は、コネクタベース161に固定されるとともに、可撓性ケーブル157を介して固定基板158と電気的に接続されている。
コネクタ151の嵌合連結部は、コネクタベース161のコネクタハウジング部164に遊嵌され、このコネクタハウジング部164は、クレードルケース154の載置面155に形成された窓孔156に隙間をもって遊嵌されている。
クレードルケース154の載置面155の裏面(図10ではクレードルケース154の下面)には、クレードルケース154の両側に位置して円筒状のボス167、167が突設されている。
コネクタベース161には、ボス167、167を隙間をもって遊嵌する円筒部168、168が形成され、この円筒部168、168の外側には、S字弾性部169、169を介して固定用端部171、171が設けられ、この固定用端部171、171の係止用突部172,172、172,172をクレードルケース154の係止孔に係止することによって、コネクタベース161がクレードルケース154に固定されている。
【0010】
そして、ボス167、167の先端面にワッシャ173、173を介してねじ175、175が固定され、コネクタベース161の円筒部168、168が全周囲に隙間をもった状態でボス167、167の外周側に遊嵌されることによって、コネクタベース161のコネクタハウジング部164がS字弾性部169、169の弾性変形によって窓孔156の範囲内で自由に動くことができる。このため、コネクタ151は、相手方コネクタ(例えば図4(a)のコネクタ200)との嵌合連結時の位置ずれがS字弾性部169、169の弾性変形で吸収されるとともに、相手方コネクタとの嵌合連結解除時にS字弾性部169、169の復帰力で元の位置に戻される。
【特許文献1】特開2005ー129454
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来例1では、電子機器側のコネクタ(例えば図4のコネクタ201)とクレードル側のコネクタ(例えば図9、図10のコネクタ111、151)の嵌合連結時の位置ずれを吸収するためにクレードル側のコネクタが一定範囲内で自由に動くことができ、嵌合連結解除されたときに元の位置に戻るようにすることができるが、以下のような問題点があった。
【0012】
従来例1では、高価なワッシャ付ねじ127、127が必要になるため、価格が高くなるという問題点があった。
また、従来例1では、ゴムのような弾性体で形成された円筒状の弾性リング126、126の弾性変形によって、コネクタ間の位置ずれを吸収するとともに、弾性リング126、126の復帰力で元の位置に戻すようにしているので、弾性リング126、126を製作する作業工程数が多くなる(例えば2回の打ち抜き)とともに、正確な形状に形成することが難しく、コネクタ111の位置精度を高めることが難しいという問題点があった。
【0013】
従来例2では、コネクタベース161の円筒部168、168の外側にS字弾性部169、169169、169を介して固定用端部171、171を設け、この固定用端部171、171をクレードルケース154に固定しているので、部品点数が多くなるとともに、コネクタベース161の形状が大きくなり、小型化が難しいという問題点があった。
また、S字弾性部169、169〜169の形状がそのままコネクタ151の位置精度に反映し、S字弾性部169〜169の形状が複雑なため、コネクタ152の位置精度を高めることが難しいという問題点があった。
【0014】
本発明は、上述の問題に鑑みなされたもので、嵌合連結時のコネクタ間の位置ずれを吸収するために一定範囲内で自由に動くことができるとともに、嵌合連結解除時に元の位置に戻ることができ、さらに、小型化を図るとともにコネクタの位置精度を高めることができるコネクタのフローテイング構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1記載の発明は、コネクタが実装された可動基板をコネクタベースに固定し、前記コネクタが相手方コネクタと嵌合する嵌合連結部をクレードルケースの窓孔に隙間をもって臨ませ、前記コネクタを前記窓孔内で自由に動くようにしたコネクタのフローテイング構造であって、前記クレードルケースに固定されて前記コネクタベースを前記コネクタの嵌合方向と略直交する方向に移動可能に保持するベースホルダを設け、前記ベースホルダには、前記コネクタベースの外周縁に係合して前記コネクタベースを所定位置に保持するとともに、前記コネクタベースの移動に応じて弾性変形して前記コネクタと前記相手方コネクタの嵌合時の位置ずれを吸収する複数の弾性係合片が一体に形成されていることを特徴とする。
【0016】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、コネクタベースはコネクタの嵌合方向と略直交する面を板面とする略矩形板状に形成され、前記コネクタベースの対向する一対の外周縁の両側部に弾性係合片の係合部と面接触で係合する係合段部が形成され、前記係合段部の係合面は、前記コネクタベースの前記外周縁を略垂直に二等分するとともに前記コネクタベースの板面に略垂直な中心面に対して対称な傾斜面に形成されていることを特徴とする。
【0017】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、弾性係合片は、半円弧部と、この半円弧部の一端に連結された直線部とからなる板ばねで形成され、前記半円弧部の他端をベースホルダの四隅に連結して固定端とし、前記直線部の先端側自由端を係合部としたことを特徴とする。
【0018】
請求項4記載の発明は、請求項1、2又は3記載の発明において、クレードルケースがコネクタベースと対面する側面には、前記コネクタベースを所定位置に保持する初期状態において弾性係合片を弾性変形させ、前記弾性係合片を所定圧力で前記コネクタベースと係合させる初圧付与リブが形成されていることを特徴とする。
【0019】
請求項5記載の発明は、請求項1、2、3又は4記載の発明において、クレードルケースとベースホルダはそれぞれ合成樹脂で成形され、前記ベースホルダは熱溶着で前記クレードルケースに固定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1記載の発明は、ベースホルダに形成された複数の弾性係合片が、コネクタベースの外周縁に係合してコネクタベースを所定位置に保持するとともに、コネクタベースの移動に応じて弾性変形するので、複数の弾性係合片の弾性変形によって嵌合連結時のコネクタ間の位置ずれを吸収するとともに嵌合連結解除時にコネクタベースを元の位置に戻すことができる。
さらに、コネクタベースの外周縁に係合する複数の弾性係合片によってコネクタベースを所定位置に保持するようにしたので、コネクタベース及びベースホルダの形状を小さくしてフローテイング構造の小型化を図ることができる。
その上、複数の弾性係合片がベースホルダと一体に形成されているので、弾性係合片を成形モールドばねで形成することができ、コネクタの位置精度を高めることができる。
【0021】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、コネクタベースが略矩形板状に形成され、コネクタベースの対向する一対の外周縁の両側部に形成された係合段部が、弾性係合片の係合部と面接触で係合するとともに、中心面に対して対称な傾斜面に形成されているので、コネクタベース及び弾性係合片の形状を簡単にすることができる。
さらに、係合段部の係合面の傾斜角を変えること(この変更に応じて弾性係合片の係合部の係合面の傾斜角も変えることになる。)によって、弾性係合片の水平方向と垂直方向の「ばねの剛さ」を調整することができので、コネクタベースの係合段部と弾性係合片の係合部の形状設計を容易にすることができる。
【0022】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、弾性係合片が半円弧部と直線部からなる板ばねで形成され、半円弧部の端部をベースホルダの四隅に連結して固定端とし、直線部の先端側自由端を係合部としたので、弾性係合片の大きさをそれ程大きくすることなく、弾性係合片のばねスパンを大きくすることができる。
【0023】
請求項4記載の発明は、請求項1、2又は3記載の発明において、クレードルケースがコネクタベースと対面する側面に初圧付与リブを形成し、この初圧付与リブが、コネクタベースを所定位置に保持する初期状態において弾性係合片を弾性変形させて所定圧力でコネクタベースと係合させるようにしたので、コネクタ間の嵌合連結前の初期状態時と、嵌合連結解除後とにおけるコネクタの位置精度をさらに高めることができる。
【0024】
請求項5記載の発明は、請求項1、2、3又は4記載の発明において、クレードルケースとベースホルダが合成樹脂で成形され、ベースホルダが熱溶着でクレードルケースに固定されているので、固定用のワッシャ付止めねじやワッシャ及びねじを不要として部品点数を少なくすることができる。
【実施例】
【0025】
図1〜図3は本発明によるコネクタのフローテイング構造の一実施例を示すもので、これらの図において、1はクレードルケース、3はクレードル側のコネクタ、4は可動基板、5はコネクタベース、7はベースホルダを表わす。
【0026】
クレードルケース1は絶縁性合成樹脂で成形され、クレードルケース1の表面(図2(a)及び図3では上面)の一部には、デジタルカメラや携帯電話機などの電子機器を載せるための載置面11が形成され、この載置面11は、図5〜図8に示した従来例と同様に、クレードルケース1の表面に立設された両側板および背板(いずれも図示省略)とともに、電子機器を載せる載置部を形成している。
クレードルケース1には、その載置面11の一部に位置して表裏を貫通する矩形状の窓孔12が形成されている。
クレードルケース1の裏面(内側面)には、窓孔12の外周を囲む位置に矩形溝状の係合凹部13が凹設されるとともに、この係合凹部13の外周を囲む位置に矩形枠状の初圧付与リブ15が凸設されている。
クレードルケース1の裏面には、係合凹部13と初圧付与リブ15の間に位置して短円柱状の支持リブ16〜16が凸設されるとともに、初圧付与リブ15の3辺の外側に位置して円柱状の固定用ボス17〜17が凸設されている。
【0027】
コネクタ3は可動基板4に実装され、この可動基板4はコネクタベース5に固定されている。
コネクタベース5は絶縁性合成樹脂で略矩形板状に形成されている。
コネクタベース5の対向する長辺側の外周縁のそれぞれには、その両側部に位置して係合段部51、51が形成され、この係合段部51、51には、コネクタベース5の長辺側外周縁の両側部から中央部へ向けて段差状に下がる傾斜状の係合面52、52が形成され、この係合面52、52は、コネクタベース5の長辺側外周縁を略垂直に二等分するとともに、コネクタベース5の板面に略垂直な中心面54に対して対称な略45度の角度で傾斜する傾斜面に形成されている。
【0028】
コネクタベース5には、コネクタ3の嵌合連結側を貫通させて外側へ突出させる貫通孔53が形成されている。
コネクタベース5の表面側には、貫通孔53の外周を囲む位置にクレードルケース1の係合凹部13の外周と遊びをもって係合する係合凸部55が形成されている。
コネクタベース5の裏面側には、可動基板4を収容する収容凹部56が形成されるとともに、この収容凹部56の底面から内側へ突出して可動基板4の係止孔を貫通する円柱状の固定用ボス57〜57が形成されている。
【0029】
ベースホルダ7は絶縁性合成樹脂で成形され、略矩形状の底板71と、この底板71の短辺側の端縁から略垂直に上側へ折り曲げて連設された側板72、72と、この側板72、72の上端縁から略垂直に外側へ折り曲げて連設された水平板73、73と、底板71の一方の長辺側の中央部に連設された垂直部と水平部を有する取付片75と、底板71の略四隅部に位置するとともに側板72、72及び底板71の両側部に連設された弾性係合片76〜76とで一体に形成されている。
【0030】
底板71、側板72、72、取付片75及び弾性係合片76〜76は、コネクタベース5を底板71の板面に沿って移動可能に係合、保持する係合凹部79を形成している。
底板71には、溶融(熔融)前後の固定用ボス57〜57の先端側突出部を遊嵌可能な貫通孔77〜77が形成されている。
水平板73、73と取付片75の水平部とは略同一平面上に形成されている。水平板73、73と取付片75の水平部には、固定用ボス17〜17を係合、係止するための係止孔78〜78が形成され、固定用ボス17〜17を溶融することによってベースホルダ7がクレードルケース1の裏面側に固定されている。
弾性係合片76は、半円弧部81と、この半円弧部81の一端に連結された直線部82とからなる板ばね(成形モールドばね)で形成され、半円弧部81の他端を底板71の隅部に連結して固定端とし、直線部82の先端側自由端を係合部83とし、この係合部83の係合面85は係合段部51〜51の係合面52と面接触で係合する。
【0031】
つぎに、コネクタ3のフローテイング構造の組み立てについて説明する。
コネクタ3を実装した可動基板4の係止孔にコネクタベース5の固定用ボス57〜57を係合し、この固定用ボス57〜57を加熱溶融することによってコネクタ3及び可動基板4をコネクタベース5に固定する。
ついで、コネクタベース5の係合凸部55をクレードルケース1の係合凹部13に係合させるとともに、コネクタベース5に固定されたコネクタ3の嵌合連結側をクレードルケース1の窓孔12から外側へ突出させる。このとき、コネクタ3が窓孔12内で自由に移動できるように、コネクタ3と窓孔12の間に隙間が形成される。
【0032】
ついで、ベースホルダ7の係止孔78〜78にクレードルケース1の固定用ボス17〜17を係合し、この固定用ボス17〜17を加熱溶融することによってベースホルダ7をクレードルケース1に固定する。このとき、コネクタベース5がベースホルダ7の係合凹部79内で円滑に移動できるように、クレードルケース1の支持リブ16〜16の先端面がコネクタベース5の上面に僅かな隙間をもって当接している。また、弾性係合片76〜76は、それぞれの係合部83がクレードルケース1の初圧付与リブ15に係合して図1(d)の二点鎖線で示す状態から実線で示す状態に弾性変形している。
【0033】
可動基板4は、図10及び図11に示す従来例2と同様に、可撓性ケーブルによってクレードルケースに固定された固定基板と電気的に接続されている。
【0034】
つぎに、前記実施例の作用について説明する。
まず、電子機器(例えば図4のデジタルカメラ200)をクレードルケース1の載置面11に載せていない初期状態について説明する。
この初期状態においては、弾性係合片76〜76がクレードルケース1の初圧付与リブ15に係合して図1(d)の二点鎖線で示す状態から実線で示す状態に弾性変形し、その係合面85〜83が所定の初期圧力をもってコネクタベース5の係合段部51〜51に面接触で係合しているので、コネクタベース5をベースホルダ7の係合凹部79の略中央に保持することができるとともに、その位置精度をより高くすることができる。このため、コネクタ3の嵌合連結部を窓孔12の略中央に保持することができるとともに、その位置精度をより高くすることができる。
【0035】
ついで、電子機器の載置状態について説明する。
電子機器(例えば図4のデジタルカメラ)をクレードルケース1の載置面11に載せ、電子機器側のコネクタ(例えば図4のコネクタ201)とクレードル側のコネクタ3とを嵌合連結すると、コネクタ間の位置ずれがコネクタ3の移動によって吸収される。すなわち、コネクタ3に固定したコネクタベース5がベースホルダ7の係合凹部79内で移動することによってコネクタ間の位置ずれが吸収されるが、コネクタベース5の移動方向に応じてベースホルダ7の弾性係合片76〜76が弾性変形する。このとき、弾性係合片76〜76の係合面85と面接触で係合するコネクタベース5の係合段部51〜51の係合面52〜52が、中心面54に対して対称であって、かつ略45度に傾斜した傾斜面なので、コネクタベース5が移動する全方向(水平、垂直、斜めの各方向)についての「ばねの剛さ」が略同一となり、位置ずれ吸収時のコネクタベース5の移動に違和感を与えることがないとともに、弾性係合片76〜76の「へたり」度を均一化して長寿命化を図ることができる。
【0036】
電子機器への充電電力の供給が終了するなどして、電子機器をクレードルケース1の載置面11から取り去ると、コネクタ間の嵌合が解除され、弾性係合片76〜76の復帰力によってコネクタベース5がベースホルダ7の係合凹部79の略中央に戻り、初期状態に戻る。
【0037】
前記実施例では、部品点数を減らすために、クレードルケース1とベースホルダ7が合成樹脂で成形され、ベースホルダ7が熱溶着でクレードルケース1に固定されている場合について説明したが、本発明はこれに限るものでなく、ベースホルダ7がねじでクレードルケース1に固定される場合についても利用することができる。
【0038】
前記実施例では、コネクタの位置精度をより高めるために、クレードルケース1がコネクタベース5と対面する側面に初圧付与リブ15を形成した場合について説明したが、本発明はこれに限るものでなく、初圧付与リブ15を省略した場合についても利用することができる。
【0039】
前記実施例では、ばねスパンを長くするために、弾性係合片76が半円弧部81と直線部82からなる板ばねで形成されている場合について説明したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、弾性係合片が片持ちばね状の板ばねで形成されている場合についても利用することができる。
【0040】
前記実施例では、コネクタベースがベースホルダの係合凹部内で移動する全方向についてばねの剛性が略均一となるように、コネクタベース5の係合段部51、51の係合面52、52が中心面54に対して対称であって、かつ略45度に傾斜した傾斜面で形成されている場合について説明したが、本発明はこれに限るものでなく、コネクタベース5の係合段部51〜51の係合面52〜52が中心面54に対称であって、45度以外の角度に傾斜した傾斜面で形成されている場合についても利用することができる。
【0041】
前記実施例では、コネクタベース及び弾性係合片の形状を簡単にするとともに、コネクタベースの係合段部と弾性係合片の係合部の形状設計を容易にするために、コネクタベースが略矩形板状に形成され、コネクタベースの対向する一対の外周縁の両側部に形成された係合段部が、弾性係合片の係合部と面接触で係合するとともに、中心面に対して対称な傾斜面に形成されている場合について説明したが、本発明はこれに限るものでなく、ベースホルダに形成された複数の弾性係合片が、コネクタベースの外周縁に係合してコネクタベースを所定位置に保持するとともに、コネクタベースの移動に応じて弾性変形してコネクタ間の位置ずれを吸収するものについても利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明によるコネクタのフローテイング構造の一実施例(熱溶着による固定前の実施例)を示すもので、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図、(d)は背面図である。
【図2】図1の断面を示すもので、(a)は図1(b)のA−A線拡大断面図、(b)は図1(b)のB−B線拡大断面図ある。
【図3】図1の分解斜視図である。
【図4】クレードルの載置部にデジタルカメラを載せて、クレードル側のコネクタとデジタルカメラ側のコネクタを嵌合する場合の例を示した説明図で、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図5】従来例1を示す平面図である。
【図6】図5の正面図である。
【図7】図5の右側面図である。
【図8】図6のA−A線断面図である。
【図9】図5〜図8のコネクタ111及びその周辺の拡大断面図である。
【図10】従来例2を示す断面図ある。
【図11】図10のコネクタベース161及びその周辺の平面図である。
【符号の説明】
【0043】
1…クレードルケース
11…クレードルケース1の載置面
12…窓孔
15…初圧付与リブ
3…コネクタ
5…コネクタベース
51…係合段部
54…中心面
7…ベースホルダ
76…弾性係合片
81…半円弧部
82…直線部
83…弾性係合片76の係合部
85…係合部83の係合面
201…相手方コネクタ
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラ、携帯電話機、パーソナルコンピュータ等の電子機器側に設けられたコネクタと、電子機器を載置するクレードル(置き台)側に設けられたコネクタとを嵌合連結する際に、コネクタ間の位置ずれを吸収するためのクレードル側のコネクタのフローテイング構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ、携帯電話機等の電子機器に充電電力を供給したり、相互に情報を送受信するために、電子機器をクレードルに載せてコネクタ同志を嵌合連結する場合がある。
この嵌合連結を容易にするために、クレードルの電子機器を載せる領域を電子機器が占める領域より僅かに広くしている。これに対応して、クレードル側のコネクタは、電子機器側のコネクタとの位置ずれを吸収するために、嵌合方向と略直交する方向に自由度をもったフローテイング構造とする必要がある。
【0003】
例えば、図4(a)(b)に示すように、クレードル100の載置部101にデジタルカメラ200を載せ、デジタルカメラ200側のコネクタ201をクレードル100側のコネクタ102と嵌合連結して情報の送受信や充電等が行われる。
この嵌合連結を容易にするために、クレードル100の載置部101は、デジタルカメラ200を載せたときにデジタルカメラ200の周囲に隙間103ができるように形成されている。これに対応してクレードル100側のコネクタ102は、クレードルケース104の載置面105に形成された窓孔106に隙間をもって臨ませ、コネクタ102を窓孔106の範囲内でコネクタ102の嵌合方向と略直交する方向に自由に動くようなフローテイング構造に形成されている。
図4(a)(b)において、クレードルケース104の内部には可撓性ケーブル107で電気的に接続された固定基板108と可動基板109が設けられ、この可動基板109にはコネクタ102が実装されている。
【0004】
具体的には、図5〜図9に示すような従来例1や、図10及び図11に示すような従来例2(特許文献1参照)が知られている。
【0005】
従来例1では、クレードル110側のコネクタ111が可動基板112に実装され、この可動基板112は、コネクタベース113に固定されるとともに、可撓性ケーブル(図示省略)を介して固定基板115と電気的に接続されている。
コネクタ111は、クレードルケース116の載置面117に形成された窓孔118に隙間119をもって臨んでいる。載置面117はコネクタ111の嵌合方向と略直交する面と平行に形成されている。
【0006】
コネクタベース113には、コネクタ111を貫通する貫通孔121の両側に位置して貫通孔122、122が形成され、この貫通孔122、122には、ベースホルダ123から突出した円筒状のボス125、125が遊嵌されている。
ベースホルダ123は、クレードルケース116の載置面117の裏側に固定され、ボス125、125と貫通孔122、122の間には、ゴムで形成された円筒状の弾性リング126、126が挿嵌されている。
【0007】
そして、ボス125、125の先端面にワッシャ付ねじ127、127を固定することにより、コネクタ111が弾性リング126、126の弾性変形によって窓孔118の範囲内で自由に動くことができる。このため、コネクタ111は、相手方コネクタ(例えば、デジタルカメラ200側のコネクタ201)との嵌合連結時の位置ずれが弾性リング126、126の弾性変形で吸収されるとともに、相手方コネクタとの嵌合連結解除時に弾性リング126、126の復帰力で元の位置に戻される。
【0008】
図5〜図9において、クレードルケース116は上ケース131と下ケース132で形成され、上ケース131の上面の一部に電子機器をのせる載置面117が形成されている。
上ケース131の載置面117と、この載置面117の両側で上ケース131上に立設された側板133、133と、載置面117の背面側で上ケース131上に立設された背板135とによって、電子機器を載せる載置部136が形成されている。
【0009】
従来例2では、図10及び図11に示すように、クレードル150側のコネクタ151が可動基板152に実装され、この可動基板152は、コネクタベース161に固定されるとともに、可撓性ケーブル157を介して固定基板158と電気的に接続されている。
コネクタ151の嵌合連結部は、コネクタベース161のコネクタハウジング部164に遊嵌され、このコネクタハウジング部164は、クレードルケース154の載置面155に形成された窓孔156に隙間をもって遊嵌されている。
クレードルケース154の載置面155の裏面(図10ではクレードルケース154の下面)には、クレードルケース154の両側に位置して円筒状のボス167、167が突設されている。
コネクタベース161には、ボス167、167を隙間をもって遊嵌する円筒部168、168が形成され、この円筒部168、168の外側には、S字弾性部169、169を介して固定用端部171、171が設けられ、この固定用端部171、171の係止用突部172,172、172,172をクレードルケース154の係止孔に係止することによって、コネクタベース161がクレードルケース154に固定されている。
【0010】
そして、ボス167、167の先端面にワッシャ173、173を介してねじ175、175が固定され、コネクタベース161の円筒部168、168が全周囲に隙間をもった状態でボス167、167の外周側に遊嵌されることによって、コネクタベース161のコネクタハウジング部164がS字弾性部169、169の弾性変形によって窓孔156の範囲内で自由に動くことができる。このため、コネクタ151は、相手方コネクタ(例えば図4(a)のコネクタ200)との嵌合連結時の位置ずれがS字弾性部169、169の弾性変形で吸収されるとともに、相手方コネクタとの嵌合連結解除時にS字弾性部169、169の復帰力で元の位置に戻される。
【特許文献1】特開2005ー129454
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来例1では、電子機器側のコネクタ(例えば図4のコネクタ201)とクレードル側のコネクタ(例えば図9、図10のコネクタ111、151)の嵌合連結時の位置ずれを吸収するためにクレードル側のコネクタが一定範囲内で自由に動くことができ、嵌合連結解除されたときに元の位置に戻るようにすることができるが、以下のような問題点があった。
【0012】
従来例1では、高価なワッシャ付ねじ127、127が必要になるため、価格が高くなるという問題点があった。
また、従来例1では、ゴムのような弾性体で形成された円筒状の弾性リング126、126の弾性変形によって、コネクタ間の位置ずれを吸収するとともに、弾性リング126、126の復帰力で元の位置に戻すようにしているので、弾性リング126、126を製作する作業工程数が多くなる(例えば2回の打ち抜き)とともに、正確な形状に形成することが難しく、コネクタ111の位置精度を高めることが難しいという問題点があった。
【0013】
従来例2では、コネクタベース161の円筒部168、168の外側にS字弾性部169、169169、169を介して固定用端部171、171を設け、この固定用端部171、171をクレードルケース154に固定しているので、部品点数が多くなるとともに、コネクタベース161の形状が大きくなり、小型化が難しいという問題点があった。
また、S字弾性部169、169〜169の形状がそのままコネクタ151の位置精度に反映し、S字弾性部169〜169の形状が複雑なため、コネクタ152の位置精度を高めることが難しいという問題点があった。
【0014】
本発明は、上述の問題に鑑みなされたもので、嵌合連結時のコネクタ間の位置ずれを吸収するために一定範囲内で自由に動くことができるとともに、嵌合連結解除時に元の位置に戻ることができ、さらに、小型化を図るとともにコネクタの位置精度を高めることができるコネクタのフローテイング構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1記載の発明は、コネクタが実装された可動基板をコネクタベースに固定し、前記コネクタが相手方コネクタと嵌合する嵌合連結部をクレードルケースの窓孔に隙間をもって臨ませ、前記コネクタを前記窓孔内で自由に動くようにしたコネクタのフローテイング構造であって、前記クレードルケースに固定されて前記コネクタベースを前記コネクタの嵌合方向と略直交する方向に移動可能に保持するベースホルダを設け、前記ベースホルダには、前記コネクタベースの外周縁に係合して前記コネクタベースを所定位置に保持するとともに、前記コネクタベースの移動に応じて弾性変形して前記コネクタと前記相手方コネクタの嵌合時の位置ずれを吸収する複数の弾性係合片が一体に形成されていることを特徴とする。
【0016】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、コネクタベースはコネクタの嵌合方向と略直交する面を板面とする略矩形板状に形成され、前記コネクタベースの対向する一対の外周縁の両側部に弾性係合片の係合部と面接触で係合する係合段部が形成され、前記係合段部の係合面は、前記コネクタベースの前記外周縁を略垂直に二等分するとともに前記コネクタベースの板面に略垂直な中心面に対して対称な傾斜面に形成されていることを特徴とする。
【0017】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、弾性係合片は、半円弧部と、この半円弧部の一端に連結された直線部とからなる板ばねで形成され、前記半円弧部の他端をベースホルダの四隅に連結して固定端とし、前記直線部の先端側自由端を係合部としたことを特徴とする。
【0018】
請求項4記載の発明は、請求項1、2又は3記載の発明において、クレードルケースがコネクタベースと対面する側面には、前記コネクタベースを所定位置に保持する初期状態において弾性係合片を弾性変形させ、前記弾性係合片を所定圧力で前記コネクタベースと係合させる初圧付与リブが形成されていることを特徴とする。
【0019】
請求項5記載の発明は、請求項1、2、3又は4記載の発明において、クレードルケースとベースホルダはそれぞれ合成樹脂で成形され、前記ベースホルダは熱溶着で前記クレードルケースに固定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1記載の発明は、ベースホルダに形成された複数の弾性係合片が、コネクタベースの外周縁に係合してコネクタベースを所定位置に保持するとともに、コネクタベースの移動に応じて弾性変形するので、複数の弾性係合片の弾性変形によって嵌合連結時のコネクタ間の位置ずれを吸収するとともに嵌合連結解除時にコネクタベースを元の位置に戻すことができる。
さらに、コネクタベースの外周縁に係合する複数の弾性係合片によってコネクタベースを所定位置に保持するようにしたので、コネクタベース及びベースホルダの形状を小さくしてフローテイング構造の小型化を図ることができる。
その上、複数の弾性係合片がベースホルダと一体に形成されているので、弾性係合片を成形モールドばねで形成することができ、コネクタの位置精度を高めることができる。
【0021】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、コネクタベースが略矩形板状に形成され、コネクタベースの対向する一対の外周縁の両側部に形成された係合段部が、弾性係合片の係合部と面接触で係合するとともに、中心面に対して対称な傾斜面に形成されているので、コネクタベース及び弾性係合片の形状を簡単にすることができる。
さらに、係合段部の係合面の傾斜角を変えること(この変更に応じて弾性係合片の係合部の係合面の傾斜角も変えることになる。)によって、弾性係合片の水平方向と垂直方向の「ばねの剛さ」を調整することができので、コネクタベースの係合段部と弾性係合片の係合部の形状設計を容易にすることができる。
【0022】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、弾性係合片が半円弧部と直線部からなる板ばねで形成され、半円弧部の端部をベースホルダの四隅に連結して固定端とし、直線部の先端側自由端を係合部としたので、弾性係合片の大きさをそれ程大きくすることなく、弾性係合片のばねスパンを大きくすることができる。
【0023】
請求項4記載の発明は、請求項1、2又は3記載の発明において、クレードルケースがコネクタベースと対面する側面に初圧付与リブを形成し、この初圧付与リブが、コネクタベースを所定位置に保持する初期状態において弾性係合片を弾性変形させて所定圧力でコネクタベースと係合させるようにしたので、コネクタ間の嵌合連結前の初期状態時と、嵌合連結解除後とにおけるコネクタの位置精度をさらに高めることができる。
【0024】
請求項5記載の発明は、請求項1、2、3又は4記載の発明において、クレードルケースとベースホルダが合成樹脂で成形され、ベースホルダが熱溶着でクレードルケースに固定されているので、固定用のワッシャ付止めねじやワッシャ及びねじを不要として部品点数を少なくすることができる。
【実施例】
【0025】
図1〜図3は本発明によるコネクタのフローテイング構造の一実施例を示すもので、これらの図において、1はクレードルケース、3はクレードル側のコネクタ、4は可動基板、5はコネクタベース、7はベースホルダを表わす。
【0026】
クレードルケース1は絶縁性合成樹脂で成形され、クレードルケース1の表面(図2(a)及び図3では上面)の一部には、デジタルカメラや携帯電話機などの電子機器を載せるための載置面11が形成され、この載置面11は、図5〜図8に示した従来例と同様に、クレードルケース1の表面に立設された両側板および背板(いずれも図示省略)とともに、電子機器を載せる載置部を形成している。
クレードルケース1には、その載置面11の一部に位置して表裏を貫通する矩形状の窓孔12が形成されている。
クレードルケース1の裏面(内側面)には、窓孔12の外周を囲む位置に矩形溝状の係合凹部13が凹設されるとともに、この係合凹部13の外周を囲む位置に矩形枠状の初圧付与リブ15が凸設されている。
クレードルケース1の裏面には、係合凹部13と初圧付与リブ15の間に位置して短円柱状の支持リブ16〜16が凸設されるとともに、初圧付与リブ15の3辺の外側に位置して円柱状の固定用ボス17〜17が凸設されている。
【0027】
コネクタ3は可動基板4に実装され、この可動基板4はコネクタベース5に固定されている。
コネクタベース5は絶縁性合成樹脂で略矩形板状に形成されている。
コネクタベース5の対向する長辺側の外周縁のそれぞれには、その両側部に位置して係合段部51、51が形成され、この係合段部51、51には、コネクタベース5の長辺側外周縁の両側部から中央部へ向けて段差状に下がる傾斜状の係合面52、52が形成され、この係合面52、52は、コネクタベース5の長辺側外周縁を略垂直に二等分するとともに、コネクタベース5の板面に略垂直な中心面54に対して対称な略45度の角度で傾斜する傾斜面に形成されている。
【0028】
コネクタベース5には、コネクタ3の嵌合連結側を貫通させて外側へ突出させる貫通孔53が形成されている。
コネクタベース5の表面側には、貫通孔53の外周を囲む位置にクレードルケース1の係合凹部13の外周と遊びをもって係合する係合凸部55が形成されている。
コネクタベース5の裏面側には、可動基板4を収容する収容凹部56が形成されるとともに、この収容凹部56の底面から内側へ突出して可動基板4の係止孔を貫通する円柱状の固定用ボス57〜57が形成されている。
【0029】
ベースホルダ7は絶縁性合成樹脂で成形され、略矩形状の底板71と、この底板71の短辺側の端縁から略垂直に上側へ折り曲げて連設された側板72、72と、この側板72、72の上端縁から略垂直に外側へ折り曲げて連設された水平板73、73と、底板71の一方の長辺側の中央部に連設された垂直部と水平部を有する取付片75と、底板71の略四隅部に位置するとともに側板72、72及び底板71の両側部に連設された弾性係合片76〜76とで一体に形成されている。
【0030】
底板71、側板72、72、取付片75及び弾性係合片76〜76は、コネクタベース5を底板71の板面に沿って移動可能に係合、保持する係合凹部79を形成している。
底板71には、溶融(熔融)前後の固定用ボス57〜57の先端側突出部を遊嵌可能な貫通孔77〜77が形成されている。
水平板73、73と取付片75の水平部とは略同一平面上に形成されている。水平板73、73と取付片75の水平部には、固定用ボス17〜17を係合、係止するための係止孔78〜78が形成され、固定用ボス17〜17を溶融することによってベースホルダ7がクレードルケース1の裏面側に固定されている。
弾性係合片76は、半円弧部81と、この半円弧部81の一端に連結された直線部82とからなる板ばね(成形モールドばね)で形成され、半円弧部81の他端を底板71の隅部に連結して固定端とし、直線部82の先端側自由端を係合部83とし、この係合部83の係合面85は係合段部51〜51の係合面52と面接触で係合する。
【0031】
つぎに、コネクタ3のフローテイング構造の組み立てについて説明する。
コネクタ3を実装した可動基板4の係止孔にコネクタベース5の固定用ボス57〜57を係合し、この固定用ボス57〜57を加熱溶融することによってコネクタ3及び可動基板4をコネクタベース5に固定する。
ついで、コネクタベース5の係合凸部55をクレードルケース1の係合凹部13に係合させるとともに、コネクタベース5に固定されたコネクタ3の嵌合連結側をクレードルケース1の窓孔12から外側へ突出させる。このとき、コネクタ3が窓孔12内で自由に移動できるように、コネクタ3と窓孔12の間に隙間が形成される。
【0032】
ついで、ベースホルダ7の係止孔78〜78にクレードルケース1の固定用ボス17〜17を係合し、この固定用ボス17〜17を加熱溶融することによってベースホルダ7をクレードルケース1に固定する。このとき、コネクタベース5がベースホルダ7の係合凹部79内で円滑に移動できるように、クレードルケース1の支持リブ16〜16の先端面がコネクタベース5の上面に僅かな隙間をもって当接している。また、弾性係合片76〜76は、それぞれの係合部83がクレードルケース1の初圧付与リブ15に係合して図1(d)の二点鎖線で示す状態から実線で示す状態に弾性変形している。
【0033】
可動基板4は、図10及び図11に示す従来例2と同様に、可撓性ケーブルによってクレードルケースに固定された固定基板と電気的に接続されている。
【0034】
つぎに、前記実施例の作用について説明する。
まず、電子機器(例えば図4のデジタルカメラ200)をクレードルケース1の載置面11に載せていない初期状態について説明する。
この初期状態においては、弾性係合片76〜76がクレードルケース1の初圧付与リブ15に係合して図1(d)の二点鎖線で示す状態から実線で示す状態に弾性変形し、その係合面85〜83が所定の初期圧力をもってコネクタベース5の係合段部51〜51に面接触で係合しているので、コネクタベース5をベースホルダ7の係合凹部79の略中央に保持することができるとともに、その位置精度をより高くすることができる。このため、コネクタ3の嵌合連結部を窓孔12の略中央に保持することができるとともに、その位置精度をより高くすることができる。
【0035】
ついで、電子機器の載置状態について説明する。
電子機器(例えば図4のデジタルカメラ)をクレードルケース1の載置面11に載せ、電子機器側のコネクタ(例えば図4のコネクタ201)とクレードル側のコネクタ3とを嵌合連結すると、コネクタ間の位置ずれがコネクタ3の移動によって吸収される。すなわち、コネクタ3に固定したコネクタベース5がベースホルダ7の係合凹部79内で移動することによってコネクタ間の位置ずれが吸収されるが、コネクタベース5の移動方向に応じてベースホルダ7の弾性係合片76〜76が弾性変形する。このとき、弾性係合片76〜76の係合面85と面接触で係合するコネクタベース5の係合段部51〜51の係合面52〜52が、中心面54に対して対称であって、かつ略45度に傾斜した傾斜面なので、コネクタベース5が移動する全方向(水平、垂直、斜めの各方向)についての「ばねの剛さ」が略同一となり、位置ずれ吸収時のコネクタベース5の移動に違和感を与えることがないとともに、弾性係合片76〜76の「へたり」度を均一化して長寿命化を図ることができる。
【0036】
電子機器への充電電力の供給が終了するなどして、電子機器をクレードルケース1の載置面11から取り去ると、コネクタ間の嵌合が解除され、弾性係合片76〜76の復帰力によってコネクタベース5がベースホルダ7の係合凹部79の略中央に戻り、初期状態に戻る。
【0037】
前記実施例では、部品点数を減らすために、クレードルケース1とベースホルダ7が合成樹脂で成形され、ベースホルダ7が熱溶着でクレードルケース1に固定されている場合について説明したが、本発明はこれに限るものでなく、ベースホルダ7がねじでクレードルケース1に固定される場合についても利用することができる。
【0038】
前記実施例では、コネクタの位置精度をより高めるために、クレードルケース1がコネクタベース5と対面する側面に初圧付与リブ15を形成した場合について説明したが、本発明はこれに限るものでなく、初圧付与リブ15を省略した場合についても利用することができる。
【0039】
前記実施例では、ばねスパンを長くするために、弾性係合片76が半円弧部81と直線部82からなる板ばねで形成されている場合について説明したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、弾性係合片が片持ちばね状の板ばねで形成されている場合についても利用することができる。
【0040】
前記実施例では、コネクタベースがベースホルダの係合凹部内で移動する全方向についてばねの剛性が略均一となるように、コネクタベース5の係合段部51、51の係合面52、52が中心面54に対して対称であって、かつ略45度に傾斜した傾斜面で形成されている場合について説明したが、本発明はこれに限るものでなく、コネクタベース5の係合段部51〜51の係合面52〜52が中心面54に対称であって、45度以外の角度に傾斜した傾斜面で形成されている場合についても利用することができる。
【0041】
前記実施例では、コネクタベース及び弾性係合片の形状を簡単にするとともに、コネクタベースの係合段部と弾性係合片の係合部の形状設計を容易にするために、コネクタベースが略矩形板状に形成され、コネクタベースの対向する一対の外周縁の両側部に形成された係合段部が、弾性係合片の係合部と面接触で係合するとともに、中心面に対して対称な傾斜面に形成されている場合について説明したが、本発明はこれに限るものでなく、ベースホルダに形成された複数の弾性係合片が、コネクタベースの外周縁に係合してコネクタベースを所定位置に保持するとともに、コネクタベースの移動に応じて弾性変形してコネクタ間の位置ずれを吸収するものについても利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明によるコネクタのフローテイング構造の一実施例(熱溶着による固定前の実施例)を示すもので、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図、(d)は背面図である。
【図2】図1の断面を示すもので、(a)は図1(b)のA−A線拡大断面図、(b)は図1(b)のB−B線拡大断面図ある。
【図3】図1の分解斜視図である。
【図4】クレードルの載置部にデジタルカメラを載せて、クレードル側のコネクタとデジタルカメラ側のコネクタを嵌合する場合の例を示した説明図で、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図5】従来例1を示す平面図である。
【図6】図5の正面図である。
【図7】図5の右側面図である。
【図8】図6のA−A線断面図である。
【図9】図5〜図8のコネクタ111及びその周辺の拡大断面図である。
【図10】従来例2を示す断面図ある。
【図11】図10のコネクタベース161及びその周辺の平面図である。
【符号の説明】
【0043】
1…クレードルケース
11…クレードルケース1の載置面
12…窓孔
15…初圧付与リブ
3…コネクタ
5…コネクタベース
51…係合段部
54…中心面
7…ベースホルダ
76…弾性係合片
81…半円弧部
82…直線部
83…弾性係合片76の係合部
85…係合部83の係合面
201…相手方コネクタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタ(3)が実装された可動基板(4)をコネクタベース(5)に固定し、コネクタ(3)が相手方コネクタ(201)と嵌合する嵌合連結部をクレードルケース(1)の窓孔(12)に隙間をもって臨ませ、コネクタ(3)を窓孔(12)内で自由に動くようにしたコネクタのフローテイング構造であって、クレードルケース(1)に固定されてコネクタベース(5)をコネクタ(3)の嵌合方向と略直交する方向に移動可能に保持するベースホルダ(7)を設け、ベースホルダ(7)には、コネクタベース(5)の外周縁に係合してコネクタベース(5)を所定位置に保持するとともに、コネクタベース(5)の移動に応じて弾性変形してコネクタ(3)と相手方コネクタ(201)の嵌合時の位置ずれを吸収する複数の弾性係合片(76)が一体に形成されていることを特徴とするコネクタのフローテイング構造。
【請求項2】
コネクタベース(5)はコネクタ(3)の嵌合方向と略直交する面を板面とする略矩形板状に形成され、コネクタベース(5)の対向する一対の外周縁の両側部に弾性係合片(76)の係合部(83)と面接触で係合する係合段部(51)が形成され、係合段部(51)の係合面(52)は、コネクタベース(5)の前記外周縁を略垂直に二等分するとともにコネクタベース(5)の板面に略垂直な中心面(54)に対して対称な傾斜面に形成されていることを特徴とする請求項1記載のコネクタのフローテイング構造。
【請求項3】
弾性係合片(76)は、半円弧部(81)と、半円弧部(81)の一端に連結された直線部(82)とからなる板ばねで形成され、半円弧部(81)の他端をベースホルダ(7)の四隅に連結して固定端とし、直線部(82)の先端側自由端を係合部(83)としたことを特徴とする請求項2記載のコネクタのフローテイング構造。
【請求項4】
クレードルケース(1)がコネクタベース(5)と対面する側面には、コネクタベース(5)を所定位置に保持する初期状態において弾性係合片(76)を弾性変形させ、弾性係合片(76)を所定圧力でコネクタベース(5)と係合させる初圧付与リブ(15)が形成されていることを特徴とする請求項1、2又は3記載のコネクタのフローテイング構造。
【請求項5】
クレードルケース(1)とベースホルダ(7)はそれぞれ合成樹脂で成形され、ベースホルダ(7)は熱溶着でクレードルケース(1)に固定されていることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載のコネクタのフローテイング構造。
【請求項1】
コネクタ(3)が実装された可動基板(4)をコネクタベース(5)に固定し、コネクタ(3)が相手方コネクタ(201)と嵌合する嵌合連結部をクレードルケース(1)の窓孔(12)に隙間をもって臨ませ、コネクタ(3)を窓孔(12)内で自由に動くようにしたコネクタのフローテイング構造であって、クレードルケース(1)に固定されてコネクタベース(5)をコネクタ(3)の嵌合方向と略直交する方向に移動可能に保持するベースホルダ(7)を設け、ベースホルダ(7)には、コネクタベース(5)の外周縁に係合してコネクタベース(5)を所定位置に保持するとともに、コネクタベース(5)の移動に応じて弾性変形してコネクタ(3)と相手方コネクタ(201)の嵌合時の位置ずれを吸収する複数の弾性係合片(76)が一体に形成されていることを特徴とするコネクタのフローテイング構造。
【請求項2】
コネクタベース(5)はコネクタ(3)の嵌合方向と略直交する面を板面とする略矩形板状に形成され、コネクタベース(5)の対向する一対の外周縁の両側部に弾性係合片(76)の係合部(83)と面接触で係合する係合段部(51)が形成され、係合段部(51)の係合面(52)は、コネクタベース(5)の前記外周縁を略垂直に二等分するとともにコネクタベース(5)の板面に略垂直な中心面(54)に対して対称な傾斜面に形成されていることを特徴とする請求項1記載のコネクタのフローテイング構造。
【請求項3】
弾性係合片(76)は、半円弧部(81)と、半円弧部(81)の一端に連結された直線部(82)とからなる板ばねで形成され、半円弧部(81)の他端をベースホルダ(7)の四隅に連結して固定端とし、直線部(82)の先端側自由端を係合部(83)としたことを特徴とする請求項2記載のコネクタのフローテイング構造。
【請求項4】
クレードルケース(1)がコネクタベース(5)と対面する側面には、コネクタベース(5)を所定位置に保持する初期状態において弾性係合片(76)を弾性変形させ、弾性係合片(76)を所定圧力でコネクタベース(5)と係合させる初圧付与リブ(15)が形成されていることを特徴とする請求項1、2又は3記載のコネクタのフローテイング構造。
【請求項5】
クレードルケース(1)とベースホルダ(7)はそれぞれ合成樹脂で成形され、ベースホルダ(7)は熱溶着でクレードルケース(1)に固定されていることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載のコネクタのフローテイング構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−311042(P2008−311042A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−156902(P2007−156902)
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【出願人】(000102500)SMK株式会社 (528)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【出願人】(000102500)SMK株式会社 (528)
【Fターム(参考)】
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