説明

コネクタ付きケーブルとその製造方法

【課題】複数のコネクタユニット間の相対位置の精度を、簡単かつ容易に高めることができ、接続不良の生じないコネクタ付きケーブルとその製造方法を提供する。
【解決手段】複数のコネクタユニット2〜4を共通のコネクタ筐体5により保持した複合コネクタ1を、複合ケーブル9の少なくとも一方の端部に接続したコネクタ付きケーブルである。コネクタ筐体5は、コネクタユニット2〜4のフランジ部15a〜17aを収納保持する凹溝18を備え、該凹溝は、コネクタユニットの接続嵌合の軸方向と直交する方向にコネクタユニットの位置調整が可能なクリアランスを有し、該クリアランスに熱硬化性接着剤19が塗布されて、複数のコネクタユニットが所定の相対位置と間隔でコネクタ筐体に接着固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種類の異なる複数のコネクタを、共通のコネクタ筐体に収納した複合コネクタを複合ケーブルに接続したコネクタ付きケーブルとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パソコン、AV機器等の民生機器で伝送信号の接続に、D−SUBコネクタ、PS/2コネクタ、MDIDコネクタ、USBコネクタ、DVIコネクタ、HDMIコネクタ等の種々のコネクタが用いられる。また、これらのコネクタに加えて電源用のコネクタや光信号用の光コネクタ等が用いられている。これらのコネクタは、それぞれのケーブルに接続されて使用されるが、複数のコネクタ接続の煩わしさや、ケーブルが輻輳して見苦しくかつ扱いづらいなどの問題があった。
【0003】
これに対し、複数の使用形態が異なるコネクタを、共通のコネクタ筐体に集合一体化して、1つの着脱操作で複数のコネクタ接続が可能とする複合コネクタが提案されている。この複合コネクタとしては、電源用のコネクタユニットと電気信号用のコネクタユニットを組み合わせたもの(例えば、特許文献1参照)、光信号用のコネクタユニットと電気信号用のコネクタユニットを組み合わせたもの(例えば、特許文献2参照)など、種々の形態のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−66352号公報
【特許文献2】特開2003−157926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、コネクタは、一方をレセプタクル形状とし他方をプラグ形状として、互いにコネクタ中心位置を一致させることで接続嵌合が行われる。しかしながら、複数のコネクタユニットを集合して複合コネクタとした場合、コネクタユニット間の相対位置や間隔がズレていると、互いのコネクタユニットの中心位置が一致せず、接続嵌合ができなくなったり、無理に接続すると嵌合部やコンタクト端子を変形したり、接続不良などを生じるという問題があった。
【0006】
本発明は、上述した実状に鑑みてなされたもので、複数のコネクタユニット間の相対位置の精度を、簡単かつ容易に高めることができ、接続不良の生じないコネクタ付きケーブルとその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるコネクタ付きケーブルは、複数のコネクタユニットを、共通のコネクタ筐体により保持した複合コネクタを複合ケーブルの少なくとも一方の端部に接続したコネクタ付きケーブルである。コネクタ筐体は、コネクタユニットのフランジ部を収納保持する凹溝を備え、該凹溝は、コネクタユニットの接続嵌合の軸方向と直交する方向にコネクタユニットの位置調整が可能なクリアランスを有し、該クリアランスに熱硬化性接着剤が塗布されて、複数のコネクタユニットが所定の相対位置と間隔でコネクタ筐体に接着固定されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明による上記のコネクタ付きケーブルの製造方法は、コネクタ筐体は、コネクタユニットのフランジ部を収納保持する凹溝を備え、該凹溝はコネクタユニットの接続嵌合の軸方向と直交する方向にコネクタユニットの位置調整が可能なクリアランスを有し、凹溝にコネクタユニットのフランジ部を収納してクリアランスに熱硬化性接着剤を塗布した後、位置決め治具により複数のコネクタユニットを所定の相対位置と間隔で保持し、次いで、熱硬化性接着剤を硬化させてコネクタユニットのフランジ部を接着固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コネクタ筐体にコネクタユニットを接着固定するに際して、複数のコネクタユニットの相対位置および間隔を容易に調整することができ、コネクタ間の位置精度を高めて接続不良の生じないコネクタ付きケーブルを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明によるコネクタ付きケーブルの概略を説明する図である。
【図2】本発明による複数のコネクタユニット間の位置間隔を設定する治具の例を説明する図である。
【図3】図2の治具による位置合わせの状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図により本発明の概略を説明する。図1(A)は本発明によるコネクタ付きケーブルの一例を示し、図1(B)は本発明の要部を示す図である。図において、1は複合コネクタ、2は電源用のコネクタユニット、3は信号用のコネクタユニット、4は光接続用のコネクタユニット、5はコネクタ筐体、6は電源ケーブル、7は信号ケーブル、8は光ケーブル、9は複合ケーブル、10はブーツ、12,13はコンタクト端子、14は光コネクタフェルール、15〜17はユニット筐体、15a〜17aはフランジ部、18は凹溝、19は熱硬化性の接着剤を示す。
【0012】
複合コネクタ1は、複数のコネクタユニットを1つの共通のコネクタ筐体5に収納保持させ、あたかも1つのコネクタのようにして接続するもので、複数のコネクタユニット2〜4は、種類が異なるものであってもよく、同種のものであってもよい。複数のコネクタユニット2〜4用のそれぞれの電気ケーブル6,7あるいは光ケーブル8は、集合されて複合ケーブル9とされ、弾性を有するブーツ10を介して複合コネクタ1に接続される。
【0013】
また、複合コネクタは、一方をプラグコネクタとし、他方をレセプタクルコネクタとし、プラグ側とレセプタクル側とを嵌合させることにより接続が形成される。図では、プラグコネクタ付きケーブルの例で示してあるが、当該プラグコネクタが嵌合接続されるレセプタクルコネクタ付きケーブルとしてもよい。また、複合ケーブル同士を互いに接続する形態としてもよいが、いずれか一方の複合コネクタを通信機器等の筐体内に組み込み、機器とケーブルとの接続形態としてもよい。
【0014】
複合コネクタ1は、図1(A)に示すように、例えば、樹脂成形されたベース部材とカバー部材からなる共通のコネクタ筐体5に、電源用のコネクタユニット2、信号用のコネクタユニット3、光接続用のコネクタユニット4等の複数のコネクタユニットを収納保持して構成することができる。この場合、電源用のコネクタユニット2は、1対の雄型のコンタクト端子12をユニット筐体15に装着して形成され、信号用のコネクタユニット3は、多数の雄型のコンタクト端子13をユニット筐体16に装着して形成される。また、光接続用のコネクタユニット4は、光コネクタフェルール14をユニット筐体17に装着して形成される。
【0015】
コネクタユニット2〜4の各々のユニット筐体15〜17側には、フランジ部15a〜17aが一体または接着等により設けられ、コネクタ筐体5側には、これらフランジ部15a〜17aを収納し保持固定するための凹溝18が設けられている。フランジ部はコネクタユニット端にあってもよい。フランジ部の厚さも任意であり、コネクタユニットに段が付いていれば径の太い部分をフランジ部とする。各コネクタユニットのコネクタ筐体5への装着は、ユニット筐体15〜17のフランジ部15a〜17aを、コネクタ筐体5に設けられたそれぞれの凹溝18に収納し、その収納部分に接着剤19を付与して個別に接着することにより形成される。
【0016】
本発明においては、特に、ユニット筐体15〜17のフランジ部15a〜17aとコネクタ筐体5の凹溝18との間には、コネクタユニット2〜4が相手方コネクタと接続嵌合される軸方向(例えば、矢印Zの方向)と直交する方向(XY方向)に、位置調整が可能なクリアランスが設けられている。また、このクリアランスには、熱硬化性の接着剤19が塗布されることを特徴としている。熱硬化性接着材は粘度が40mPa・s以上のものを使用すると塗布し易い。
熱硬化性接着材の硬化温度は80〜150℃が好ましい。筺体材質例としては、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)があり、熱硬化性接着材の硬化温度で変形しないものを選択して使用する。
【0017】
なお、上述のクリアランスは、複数のコネクタ間での製造上における誤差やズレに起因する位置の変動をカバーする範囲のものであり、0.1mm〜1.0mm位のクリアランスであることが好ましい。熱硬化性の接着剤19が加熱硬化させるまでは、コネクタユニット2〜4をコネクタ筐体5に装着し、熱硬化性の接着剤19を付与した状態で複数のコネクタユニット間の相対位置や間隔を、治具等を用いることで容易に調整することができる。
【0018】
一方、複数のコネクタユニットがコネクタ筐体に対し固定されていると、コネクタユニットやコネクタ筐体の凹溝に製造等における誤差により複数のコネクタユニットの位置間隔にズレが生じることがある。このような場合、接続が困難となるコネクタユニットが生じ、無理に接続しようとするとコンタクト端子やコネクタユニットが変形し接続不良となる。
【0019】
また、複数のコネクタユニットを集合した複合コネクタでは、接続開始時の挿入力を軽減するために、複数のコネクタユニットの接続タイミングを異ならせることがあるが、本例においても、複数のコネクタユニットの突き出し長さを異ならせ、相手方のレセプタクルコネクタとの接続嵌合のタイミングを異なるように形成するようにしてもよい。
また、レセプタクル側の複合コネクタにおいても、プラグ側の複合コネクタと同様に、コネクタユニットの接着固定部分にクリアランスを設けて、位置調整が可能なように構成することができる。
【0020】
図2,3は、複数のコネクタユニット間の位置間隔を調整して位置決めする方法の一例で、位置決め治具20を用いることができる。
図2に示すように、位置決め治具20は、例えば、金属製の治具台20aと押え台20bとで形成され、治具台20aと押え台20bとの間に、コネクタ筐体5の前面から突き出る複数のコネクタユニット2〜4の嵌合部を上下から挟むようにして設置される。
【0021】
治具台20aは、複数のコネクタユニットの嵌合部が接するように押し付けられて位置決めする位置決め壁面21,22,23が形成されている。この位置決め壁面21〜23は、コネクタユニットの形状に応じて形成され、上下方向と横方向の位置を定める少なくとも2面で形成される。例えば、矩形状のコネクタユニット2に対しては、上下方向の位置を設定する水平壁面21aと横方向の位置を設定する垂直壁面21bの2面からなる。また、中央の外形が円形であるコネクタユニット3に対しては、V字状の2つの壁面22a,22bで形成することができる。同じくコネクタユニット4も外形が円形であるが、上下方向の位置を設定する水平壁面23aと横方向の位置を設定する垂直壁面23bの2面で形成することもできる。
【0022】
押え台20bは、治具台20a上に載置され、複数のコネクタユニットを挟んで治具台20aと連結保持される。押え台20bには、その上面側にそれぞれのコネクタユニットの中心位置に対応して、コネクタユニットを治具台20a側に押圧する軸部材26(図3参照)を配するためのネジ孔24等が設けられている。また、両端側にも、コネクタユニットを横方向に押圧する軸部材27(図3参照)を配するためのネジ孔25等が設けられている。
【0023】
図3は、上述した位置決め治具20により、複数のコネクタユニット2〜4の相対位置と間隔を位置決めする状態を示す図である。コネクタユニット2は、押え台20b側の上方からの軸部材26により治具台20aの水平壁面21aに押し付けられ、横方向からの軸部材27により垂直壁面21bに押し付けられて位置決めされる。中央のコネクタユニット3は、押え台20b側の上方からの軸部材26により治具台20aのV字状壁面22a,22bに押し付けられて、上下方向と横方向の位置決めが同時にされる。また、コネクタユニット4は、コネクタユニット2と同様に、押え台20b側の上方からの軸部材26と横方向からの軸部材27により水平壁面23aと23bに押し付けられて位置決めされる。
【0024】
なお、複数のコネクタユニットを位置決め固定する場合、最も基準となる中央に位置するコネクタユニットを最初に位置決めし、次いで、外側に位置するコネクタユニットを位置決めしていくとバランスがとりやすい。図3の例では、コネクタユニット3をV字状壁面22a,22bで位置決めした後、両側のコネクタユニット2またはコネクタユニット4を位置決め固定するのが好ましい。
【0025】
位置決め治具20により、複数のコネクタユニット2〜4の位置決めがされた後、この位置決めの状態を保持してコネクタ筐体5を加熱し、コネクタユニットを保持している凹溝18内のクリアランス部分に塗布されている熱硬化性の接着剤19を硬化させて、コネクタユニットを接着固定する。この結果、複数のコネクタユニット2〜4間の相対位置および間隔は、所定の値に精度よく設定され、複合コネクタとしての接続不良を生じないようにすることができる。
【符号の説明】
【0026】
1…複合コネクタ、2…電源用のコネクタユニット、3…信号用のコネクタユニット、4…光接続用のコネクタユニット、5…コネクタ筐体、6…電源ケーブル、7…信号ケーブル、8…光ケーブル、9…複合ケーブル、10…ブーツ、12,13はコンタクト端子、14…光コネクタフェルール、15〜17…ユニット筐体、15a〜17a…フランジ部、18…凹溝、19…熱硬化性の接着剤、20…位置決め治具、20a…治具台、20b…押え台、21〜22…位置決め壁2〜4面、24,25…ネジ孔、26,27…軸部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコネクタユニットを共通のコネクタ筐体により保持した複合コネクタを、複合ケーブルの少なくとも一方の端部に接続したコネクタ付きケーブルであって、
前記コネクタ筐体は、前記コネクタユニットのフランジ部を収納保持する凹溝を備え、該凹溝は、前記コネクタユニットの接続嵌合の軸方向と直交する方向にコネクタユニットの位置調整が可能なクリアランスを有し、該クリアランスに熱硬化性接着剤が塗布されて、前記複数のコネクタユニットが所定の相対位置と間隔で前記コネクタ筐体に接着固定されていることを特徴とするコネクタ付きケーブル。
【請求項2】
複数のコネクタユニットを共通のコネクタ筐体により保持した複合コネクタを、複合ケーブルの少なくとも一方の端部に接続したコネクタ付きケーブルの製造方法であって、
前記コネクタ筐体は、前記コネクタユニットのフランジ部を収納保持する凹溝を備え、該凹溝は前記コネクタユニットの接続嵌合の軸方向と直交する方向にコネクタユニットの位置調整が可能なクリアランスを有し、前記凹溝に前記コネクタユニットのフランジ部を収納して前記クリアランスに熱硬化性接着剤を塗布した後、位置決め治具により前記複数のコネクタユニットを所定の相対位置と間隔で保持し、次いで、前記熱硬化性接着剤を硬化させて前記コネクタユニットのフランジ部を接着固定することを特徴とするコネクタ付きケーブルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−138244(P2012−138244A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289419(P2010−289419)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】