説明

コネクタ嵌合治具および低挿入力コネクタ

【課題】複雑なハウジング構造を設けることなく、軽い操作力でコネクタを嵌合できるコネクタ嵌合治具および低挿入力コネクタを提供する。
【解決手段】コネクタ嵌合治具11は、治具本体13と、治具本体13に設けられた第1回転支軸19により基端部21が回転可能に支持され、自由端部に形成された係止突起65が雄コネクタハウジング33に形成された第1係合部59の第1被係止部63に係止可能な第1支持軸15と、治具本体13に設けられた第2回転支軸23により基端部25が回転可能に支持され、自由端部に形成された押圧部73が雌コネクタハウジング37に形成された第2係合部69の第2被押圧部71に当接可能な第2支持軸17と、を備え、第1支軸の係止突起65を支点として第2支持軸17を押し下げ、雌コネクタハウジング37をコネクタ嵌合方向に移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低挿入力でコネクタの嵌合を可能とするコネクタ嵌合治具および低挿入力コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
低挿入力でコネクタ嵌合を可能とする低挿入力コネクタとしては、例えば特許文献1に記載の低挿入力コネクタが知られている。図9に示すように、この低挿入力コネクタ501は、雄コネクタ503と、雌コネクタ505と、回動軸507とからなる。雄コネクタ503は、ハウジングに貫設した軸孔509の出口からコネクタ嵌合方向に向けて突設された左右一対の可撓アーム513と、可撓アーム513に対して直交方向に設けられた前後一対の抜け防止突起515とを備える。可撓アーム513の中間部には、軸孔509の内径よりも幅狭な対向幅を有する括れ部533を形成し、アーム先端には、それぞれ内向きの係止爪部511を設けている。雌コネクタ505には、可撓アーム513の係止爪部511に対する仮係合孔517と、本係合孔519とがコネクタ嵌合方向に順次設けられるとともに、軸孔509の延長上にピン状螺合突起521が設けられている。回動軸507は、ピン状螺合突起521に対する螺旋ねじ部523が細径部525の先端に設けられている。更に、回動軸507は、環状部527と、環状溝529とが細径部525に連成されている。環状部527は、抜け防止突起515に対する挿通溝531を有する。環状溝529は、挿通溝531に連通し、抜け防止突起515と括れ部533とを順次係合可能とする。
【0003】
上記低挿入力コネクタ501は、雄コネクタ503と雌コネクタ505とを仮係合させた状態で、回動軸507の軸先端を雄コネクタ503の軸孔509に挿通させ、抜け防止突起515を挿通溝531に挿通させる。そして、可撓アーム513の括れ部533を環状溝529に係合させる。可撓アーム513の係止爪部511は、雌コネクタ505の仮係合孔517に係合してコネクタ相互の位置合わせを行わせる。
【0004】
次いで、回動軸507の軸先端を押し込むことで、可撓アーム513の括れ部533を外側に押し拡げて係止爪部511の仮係合を解除する。雄コネクタ503の抜け防止突起515は、回動軸507の環状溝529に係合して細径部525を軸方向に固定させる。雌コネクタ505のピン状螺合突起521は、回動軸507の細径部525に位置する。
【0005】
更に、ハンドル535で回動軸507を半回転させ、ピン状螺合突起521を螺旋ねじ部523に沿って引き上げる。ピン状螺合突起521は、半回転した螺旋ねじ部523の挿通切欠部に位置する。雄コネクタ503の抜け防止突起515は、環状部527の挿通溝531に位置させられ、雄コネクタ503の可撓アーム513は、拡開した状態で係止爪部511が雌コネクタ505の本係合孔519に対向して位置させられる。
【0006】
最後に、雄コネクタ503及び雌コネクタ505から回動軸507の細径部525を引き抜く。これにより、係止爪部511が雌コネクタ505の本係合孔519に係合し、雄コネクタ503と雌コネクタ505がロックされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2613998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の低挿入力コネクタ501は、雄コネクタ503に可撓アーム513、係止爪部511、抜け防止突起515及び括れ部533を、雌コネクタ505に仮係合孔517、本係合孔519及びピン状螺合突起521を形成しなければならない。このため、一体成形し難い特殊形状部が多く、ハウジング構造が複雑となり、大型化の要因ともなった。また、限られたスペースにおいては、ピン状螺合突起521に係合する螺旋ねじ部523のリード角を小さくできないため、操作力を十分に軽くすることができなかった。
【0009】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、複雑なハウジング構造を設けることなく、軽い操作力でコネクタを嵌合できるコネクタ嵌合治具および低挿入力コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達成するために、本発明に係るコネクタ嵌合治具及び低挿入力コネクタは、下記(1)〜(7)を特徴としている。
(1) 第1ハウジングと第2ハウジングとを低挿脱力で着脱するためのコネクタ嵌合治具であって、治具本体と、前記治具本体に設けられた第1回転支軸により基端部が回転可能に支持され、自由端部に形成された係止部が前記第1ハウジング及び前記第2ハウジングにそれぞれ形成された第1係合部又は第2係合部の被係止部に対して引き上げ方向に係止可能な第1支持軸と、前記治具本体に設けられた第2回転支軸により基端部が回転可能に支持され、自由端部に形成された押圧部が前記第2ハウジング及び前記第1ハウジングにそれぞれ形成された第2係合部又は第1係合の被押圧部に対して当接可能な第2支持軸と、を備え、前記第1支持軸の係止部を支点として前記第2支持軸を押し下げることにより、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングをコネクタ嵌合方向に沿って相対移動させること。
(2) 上記(1)の構成のコネクタ嵌合治具において、前記治具本体が、前記第2回転支軸を挟んで前記第1回転支軸の反対側に延設された取っ手部を有すること。
(3) 上記(2)の構成のコネクタ嵌合治具において、前記係止部が、前記第2支持軸側の第1支持軸側面に突設された係止突起を有すること。
(4) 第1ハウジングと第2ハウジングとが低挿脱力で着脱される低挿入力コネクタであって、前記第1ハウジングの嵌合面側に突設され、前記第2ハウジングのコネクタ嵌合方向に貫設された軸孔を貫通する貫通軸と、前記貫通軸の貫通先端部に設けられた第1係合部に形成された被係止部と、前記軸孔が開口された前記第2ハウジングの外表面に設けられた第2係合部に形成された被押圧部と、を備え、前記第1係合部の被係止部を支点として前記第2係合部の被押圧部が押し下げられることにより、前記第2ハウジングがコネクタ嵌合方向に移動すること。
(5) 上記(4)の構成の低挿入力コネクタにおいて、前記第2係合部に形成された被係止部が、前記第1係合部に形成された被押圧部を支点として引き上げられることにより、前記第2ハウジングがコネクタ離脱方向に移動すること。
(6) 上記(4)の構成の低挿入力コネクタにおいて、前記第1係合部の被係止部が、前記第2係合部と反対側の第1係合部側面に形成されること。
(7) 上記(5)の構成の低挿入力コネクタにおいて、前記第2係合部の被係止部が、前記第1係合部と反対側の第2係合部側面に形成されること。
【0011】
上記(1)の構成のコネクタ嵌合治具によれば、治具本体を操作することで、第1支持軸の係止部を支点としたてこ作用を利用して第2支持軸を押し下げることができる。これにより、第1ハウジングと第2ハウジングをコネクタ嵌合方向に沿って相対移動させることができるので、軽い操作力で第1ハウジングと第2ハウジングとを嵌合または離脱させることができる。
上記(2)の構成のコネクタ嵌合治具によれば、取っ手部の先端側を下方に押し下げることで、小さい操作力で第2支持軸を容易に押し下げることができる。
上記(3)の構成のコネクタ嵌合治具によれば、第1支持軸の係止部と第2支持軸の押圧部を近接して設けることができ、第1ハウジングと第2ハウジングを嵌合または離脱する際の嵌合方向に対して生じるハウジングの回転モーメントを抑え、抉りを防止できる。
上記(4)の構成の低挿入力コネクタによれば、例えば、上記(1)の構成のコネクタ嵌合治具を用いて、第1ハウジングの貫通軸に設けられた第1係合部の被係止部が支点となり、第2ハウジングに設けられた第2係合部の被押圧部が押し下げられると、第1ハウジングに対して第2ハウジングが下方へ押し下げられ、第1ハウジングと第2ハウジングが嵌合される。
上記(5)の構成の低挿入力コネクタによれば、例えば、上記(1)の構成のコネクタ嵌合治具を用いて、第1ハウジングの貫通軸に設けられた第1係合部の被押圧部が支点となり、第2ハウジングに設けられた第2係合部の被係止部が引き上げられると、第1ハウジングに対して第2ハウジングが上方へ引き上げられ、第1ハウジングと第2ハウジングが離脱する。
上記(6)の構成の低挿入力コネクタによれば、第1係合部の被係止部が、第2係合部と反対側の第1係合部側面に形成されて第2係合部の被押圧部に近接して配置されるので、第1ハウジングと第2ハウジングを嵌合する際の嵌合方向に対して生じるハウジングの回転モーメントを抑え、抉りを防止できる。また、支点である第2係合部の被押圧部と、作用点である第1係合部の被係止部との距離が短くなり、操作力が軽減される。
上記(7)の構成の低挿入力コネクタによれば、第2係合部の被係止部が、第1係合部と反対側の第2係合部側面に形成されて第1係合部の被押圧部に近接して配置されるので、第1ハウジングと第2ハウジングを離脱する際の離脱方向に対して生じるハウジングの回転モーメントを抑え、抉りを防止できる。また、支点である第1係合部の被押圧部と、作用点である第2係合部の被係止部との距離が短くなり、操作力が軽減される。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るコネクタ嵌合治具および低挿入力コネクタによれば、複雑なハウジング構造を設けることなく、軽い操作力でコネクタを嵌合または離脱できる。
【0013】
以上、本発明について簡潔に説明した。さらに、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細はさらに明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係るコネクタ嵌合治具の一部分を切り欠いた側面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る低挿入力コネクタの分解斜視図である。
【図3】図1に示したコネクタ嵌合治具を用いたコネクタの嵌合動作を説明するための嵌合前の低挿入力コネクタの斜視図である。
【図4】図3に示したコネクタ嵌合治具及び低挿入力コネクタの一部分を切り欠いた側面図である。
【図5】図4に示した低挿入力コネクタの要部拡大図である。
【図6】図1に示したコネクタ嵌合治具を用いたコネクタの嵌合動作を説明するための嵌合後の低挿入力コネクタの斜視図である。
【図7】図6に示したコネクタ嵌合治具及び低挿入力コネクタの一部分を切り欠いた側面図である。
【図8】図1に示したコネクタ嵌合治具を用いたコネクタの離脱動作を説明するためのコネクタ嵌合治具及び低挿入力コネクタの一部分を切り欠いた側面図である。
【図9】従来の低挿入力コネクタの分解縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して本発明の一実施形態を詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るコネクタ嵌合治具11は、棒状に形成された治具本体13と、略半円筒状の第1支持軸15と、略円筒状の第2支持軸17と、で構成されている。
【0016】
治具本体13の一端側(図1の左端側)には第1回転支軸19が設けられ、第1回転支軸19により第1支持軸15の基端部21が回転可能に支持されている。第1支持軸15の自由端部には、後述する雄コネクタハウジング33に形成された第1係合部59の第1被係止部(被係止部)63に対して引き上げ方向に係止可能な係止部であるL字形状の係止突起65が形成されている。
【0017】
また、第1回転支軸19より他端側の治具本体13には第2回転支軸23が設けられ、第2回転支軸23により第2支持軸17の基端部25が回転可能に支持されている。第2回転支軸23の自由端部は、後述する雌コネクタハウジング37に形成された第2係合部69の第2被押圧部(被押圧部)71に対して当接可能な押圧部73が形成されている。
【0018】
更に、治具本体13は、第2回転支軸23を挟んで第1回転支軸19の反対側(治具本体13の他端側)に延設された取っ手部27を有する。
そこで、本実施形態に係るコネクタ嵌合治具11は、第1支持軸15の係止突起65を支点として取っ手部27の先端側(図1の右側)を下方に押し下げることで、小さい操作力で第2支持軸17を容易に押し下げることができる。
【0019】
図2に示すように、本実施形態に係る低挿入力コネクタ29は、第1ハウジングとしての雄コネクタハウジング33と、第2ハウジングとしての雌コネクタハウジング37と、からなる。
【0020】
雄コネクタハウジング33は、上面が嵌合開口部39となって開口する四角形のフード部41を有し、フード部41の内方にはフード部41と略相似形の雄コネクタ部43が突設されている。雄コネクタ部43の内部には図示しない複数の接続端子が収容されている。
【0021】
雌コネクタハウジング37は、下方のハウジング周壁47から雄コネクタハウジング33のフード部41に挿入されて嵌合される。ハウジング周壁47の下面側には雄コネクタ部43を受け入れる雌コネクタ部49(図4参照)が形成される。雌コネクタ部49の内部には図示しない複数の接続端子が収容されている。雄コネクタハウジング33と雌コネクタハウジング37とは、雄コネクタハウジング33のフード部41に雌コネクタハウジング37のハウジング周壁47が進入すると、雄コネクタ部43が雌コネクタ部49に嵌合し、接続端子同士が接続される。
【0022】
本実施形態に係る雄コネクタハウジング33には、嵌合面側となる雄コネクタ部43の略中央に、嵌合方向(図2の上方向)に向かって貫通軸53が突設される。本実施形態の貫通軸53は、四角柱状に形成されるがこれに限定されるものではなく、半円柱や六角柱、八角柱等の多角柱であってもよい。この貫通軸53は、雄コネクタハウジング33と雌コネクタハウジング37との嵌合時、雌コネクタハウジング37のコネクタ嵌合方向に貫設された軸孔55を貫通する。この貫通軸53と軸孔55は、嵌合可能に対応する断面形状を有する。
【0023】
貫通軸53の貫通先端部57には、コネクタ嵌合治具11の第1支持軸15又は第2支持軸17と係合する第1係合部59が設けられている。この第1係合部59は、第1支持軸15の係止突起65が引き上げ方向に係止可能となる第1被係止部63と、第2支持軸17の押圧部73が当接可能となる第1被押圧部(被押圧部)70と、を備える。この第1被係止部63は、第1支持軸15に形成されたL字形状の係止突起65が引き上げ方向に係止できるように、第1係合部59の側面に開口する凹部である。
【0024】
雌コネクタハウジング37の外表面67には、貫設された軸孔55に近接して第2係合部69が突設されている。第2係合部69は、四角柱状に形成されるがこれに限定されるものではなく、半円柱や六角柱、八角柱等の多角柱であってもよい。
【0025】
第2係合部69は、コネクタ嵌合治具11の第2支持軸17又は第1支持軸15と係合し、第2支持軸17の押圧部73が当接可能となる第2被押圧部71と、第1支持軸15の係止突起65が引き上げ方向に係止可能となる第2被係止部(被係止部)68と、を備える(図8参照)。
すなわち、第1支持軸15の係止突起65は第2係合部69の側面に開口する凹状の第2被係止部68に対して引き上げ方向に係止可能である。
【0026】
本実施係止に係る低挿入力コネクタ29は、図3及び図4に示すように、嵌合前段階で、貫通軸53が軸孔55に挿通され、第1係合部59が第2係合部69と並んだ状態で雌コネクタハウジング37の外表面67に突出される。コネクタ嵌合治具11は、この状態の第1支持軸15の係止突起65を支点として、第2支持軸17を押し下げることにより、雄コネクタハウジング33と雌コネクタハウジング37とをコネクタ嵌合方向に移動させる。
【0027】
そこで、コネクタ嵌合治具11は、第1支持軸15の係止突起65が、第1係合部59の第1被係止部63に対して引き上げ方向に係止される。ここで、係止突起65は、自由端部における第2支持軸側の第1支持軸側面77に突設されている。一方、第1被係止部63は、第2係合部69と反対側の第1係合部側面79に凹設され、第2被係止部68は、第1係合部59と反対側の第2係合部側面87に凹設されている。
【0028】
すなわち、第1係合部59と第2係合部69とが近接して設けられている。第1係合部59と第2係合部69を近接して設けることで、雄コネクタハウジング33と雌コネクタハウジング37を嵌合または離脱する際の嵌合方向に対して生じる回転モーメントを抑え、抉りを防止している。
【0029】
次に、上記構成を有するコネクタ嵌合治具11および低挿入力コネクタ29の作用を説明する。
コネクタ嵌合治具11を使用して雄コネクタハウジング33と雌コネクタハウジング37とを嵌合するには、先ず、図4に示すように、雄コネクタハウジング33に突設された貫通軸53が、雌コネクタハウジング37の軸孔55に貫通される。この状態で、雄コネクタハウジング33のフード部41に、雌コネクタハウジング37のハウジング周壁47が進入し、途中嵌合の状態となる。途中嵌合状態では、雌コネクタハウジング37の外表面67に、貫通軸53の貫通先端部57が第2係合部69と略同じ高さで突出する。貫通軸53の貫通先端部57には第1係合部59が設けられているので、第1係合部59と第2係合部69とは、略同じ高さで突出した状態で隣接して配置される。
【0030】
そこで、図5に示すように、コネクタ嵌合治具11は、第1支持軸15の係止突起65が、第1係合部59の第1被係止部63に係止され、第2支持軸17の押圧部73が、第2係合部69の第2被押圧部71に上方から当接される。
【0031】
そして、治具本体13の取っ手部27が下方へ回動操作され、第1係合部59の第1被係止部63を支点として第2係合部69の第2被押圧部71が押し下げられると、第1係合部59と第2係合部69とには力F2が逆方向に働く。これにより、雌コネクタハウジング37が雄コネクタハウジング33に対してコネクタ嵌合方向に相対移動する。
この時、低挿入力コネクタ29に取り付けられたコネクタ嵌合治具11は、てこの原理で雄コネクタハウジング33と雌コネクタハウジング37とを簡単に嵌合させることができる。
【0032】
すなわち、図4に示したように、第2回転支軸23を支点75とすると、支点75と取っ手部27の力点81との間の距離L1は、支点75と作用点83である第1回転支軸19との間の距離L2よりも大きく設定されている(L1>L2)。ここで、力点81に加わる力をF1、作用点83で得られる力をF2とすると、てこの原理よりL1・F1=L2・F2となる。従って、L1>L2であるからF1<F2となる。ただし、上式は単純化のため力点81、作用点83にかかる力が平行のときの式である。
【0033】
このように、低挿入力コネクタ29は、コネクタ嵌合治具11によって、第1係合部59の第1被係止部63を支点として第2係合部69の第2被押圧部71が押し下げられることにより、雄コネクタハウジング33と雌コネクタハウジング37とが嵌合される。
【0034】
また、上述したように、第1係合部59の第1被係止部63が、第2係合部69の第2被押圧部71に近接して配置されることで、雄コネクタハウジング33と雌コネクタハウジング37を嵌合する際の嵌合方向に対して生じる回転モーメントを抑え、抉りを防止できる。また、第2被押圧部71と、第1被係止部63との距離が短くなることで、取っ手部27の操作力が軽減される。
このように、本実施形態に係るコネクタ嵌合治具11及び低挿入力コネクタ29では、治具本体13の取っ手部27を下方へ回動操作することにより、軽い操作力で雄コネクタハウジング33と雌コネクタハウジング37とを嵌合できる。
【0035】
次に、コネクタ嵌合治具11を使用して嵌合状態の雄コネクタハウジング33と雌コネクタハウジング37とを離脱する際には、図8に示すように、コネクタ嵌合治具11における第1支持軸15の係止突起65が、第2係合部69の第2被係止部68に係止され、第2支持軸17の押圧部73が、第1係合部59の第1被押圧部70に上方から当接される。
【0036】
そして、治具本体13の取っ手部27を下方へ回動操作すると、第1係合部59の第1被押圧部70が支点となって、第2係合部69が引き上げられる。すると、てこの原理で雄コネクタハウジング33から雌コネクタハウジング37が引き上げられ、雄コネクタハウジング33と雌コネクタハウジング37が離脱されることになる。これにより、雄コネクタハウジング33と雌コネクタハウジング37を軽い操作力で離脱することができる。
このように、本実施形態に係るコネクタ嵌合治具11及び低挿入力コネクタ29では、治具本体13の取っ手部27を下方へ回動操作することにより、軽い操作力で雄コネクタハウジング33と雌コネクタハウジング37とを離脱できる。
【0037】
従って、本実施の形態に係るコネクタ嵌合治具11及び低挿入力コネクタ29によれば、雄コネクタハウジング33、雌コネクタハウジング37に複雑な構造を設けることなく、軽い操作力で雄コネクタハウジング33と雌コネクタハウジング37とを嵌合又は離脱できる。
【0038】
尚、本発明のコネクタ嵌合治具及び低挿入力コネクタに係る治具本体、第1及び第2回転支軸、取っ手部、係止部、押圧部、第1及び第2ハウジング、貫通軸、軸孔、第1及び第2係合部、被係止部、及び被押圧部等の構成部材は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の形態を採りうる。
【0039】
例えば、上記実施形態においては、雄コネクタハウジング33を第1ハウジングとし、雌コネクタハウジング37を第2ハウジングとして説明したが、雌コネクタハウジングを第1ハウジングとし、雄コネクタハウジングを第2ハウジングとすることもできる。
また、上記実施形態においては、治具本体13の一端側に第1支持軸15を回転可能に支持し、治具本体13の他端側に第2支持軸17を回転可能に支持したが、治具本体13の一端側に第2支持軸17を回転可能に支持し、治具本体13の他端側に第1支持軸15を回転可能に支持することもできる。この場合、治具本体13の取っ手部27を上方へ回動操作することにより、軽い操作力で雄コネクタハウジング33と雌コネクタハウジング37とを嵌合方向へ相対移動させることができる。
【符号の説明】
【0040】
11 コネクタ嵌合治具
13 治具本体
15 第1支持軸
17 第2支持軸
19 第1回転支軸
21 基端部
23 第2回転支軸
25 基端部
27 取っ手部
29 低挿入力コネクタ
33 雄コネクタハウジング(第1ハウジング)
37 雌コネクタハウジング(第2ハウジング)
53 貫通軸
55 軸孔
57 貫通先端部
59 第1係合部
63 第1被係止部(被係止部)
65 係止突起(係止部)
67 外表面
68 第2被係止部(被係止部)
69 第2係合部
70 第1被押圧部(被押圧部)
71 第2被押圧部(被押圧部)
73 押圧部
77 第1支持軸側面
79 第1係合部側面
87 第2係合部側面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ハウジングと第2ハウジングとを低挿脱力で着脱するためのコネクタ嵌合治具であって、
治具本体と、
前記治具本体に設けられた第1回転支軸により基端部が回転可能に支持され、自由端部に形成された係止部が前記第1ハウジング及び前記第2ハウジングにそれぞれ形成された第1係合部又は第2係合部の被係止部に対して引き上げ方向に係止可能な第1支持軸と、
前記治具本体に設けられた第2回転支軸により基端部が回転可能に支持され、自由端部に形成された押圧部が前記第2ハウジング及び前記第1ハウジングにそれぞれ形成された第2係合部又は第1係合部の被押圧部に対して当接可能な第2支持軸と、を備え、
前記第1支持軸の係止部を支点として前記第2支持軸を押し下げることにより、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングをコネクタ嵌合方向に沿って相対移動させることを特徴とするコネクタ嵌合治具。
【請求項2】
前記治具本体が、前記第2回転支軸を挟んで前記第1回転支軸の反対側に延設された取っ手部を有することを特徴とする請求項1に記載のコネクタ嵌合治具。
【請求項3】
第1ハウジングと第2ハウジングとが低挿脱力で着脱される低挿入力コネクタであって、
前記第1ハウジングの嵌合面側に突設され、前記第2ハウジングのコネクタ嵌合方向に貫設された軸孔を貫通する貫通軸と、前記貫通軸の貫通先端部に設けられた第1係合部に形成された被係止部と、
前記軸孔が開口された前記第2ハウジングの外表面に設けられた第2係合部に形成された被押圧部と、を備え、
前記第1係合部の被係止部を支点として前記第2係合部の被押圧部が押し下げられることにより、前記第2ハウジングがコネクタ嵌合方向に移動することを特徴とする低挿入力コネクタ。
【請求項4】
前記第2係合部に形成された被係止部が、前記第1係合部に形成された被押圧部を支点として引き上げられることにより、前記第2ハウジングがコネクタ離脱方向に移動することを特徴とする請求項3に記載の低挿入力コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−182019(P2012−182019A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44363(P2011−44363)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】