説明

コネクタ構造

【課題】レバーを取り外すことなくリテーナを仮係止位置まで引き出すことができることにより、端子交換作業能率の向上とコストの低減化を図り得るコネクタ構造を提供する。
【解決手段】雌コネクタ2に嵌合する雄コネクタと、雌コネクタのハウジングの外周に回動自在に保持されて、前記両コネクタを結合させる方向へ付勢力を付与するレバー4と、ハウジングの内部に形成されたリテーナ収容孔18内に係脱可能に設けられたリテーナ3と、を備え、前記レバーのリテーナ収容孔18の開口端18aと対向する位置に、リテーナの仮係止位置方向への移動を許容する移動用凹部27を形成する一方、リテーナ収容孔の開口端に、本係止位置にあるリテーナを、移動用凹部を介して仮係止位置まで引き出すリテーナ操作治具28が挿入される作業用凹部29を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車内に配設されたワイヤーハーネスの接続に用いられるコネクタ構造に関し、とりわけ、コネクタハウジング内に挿入された複数の端子を係止するリテーナを備えたコネクタ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の電気機器類にワイヤーハーネスを接続したり、ワイヤーハーネス同士を分岐接続するために用いられるコネクタ構造としては、以下の特許文献1に記載されているものが知られている。
【0003】
概略を説明すれば、このコネクタは、複数の雌端子を収容可能な雌コネクタと、この雌コネクタの雌端子と対応する雄端子が内部に収容されて、前記雌コネクタに嵌合される雄コネクタと、を備えている。
【0004】
前記雌コネクタのハウジングの外周には、これら雌コネクタと雄コネクタとを低荷重で容易に嵌合することができるレバーが回動自在に保持されている。このレバーは、前記ハウジングを覆うようにほぼU字形状に形成されて、基端部が前記ハウジングの左右の外面に回転可能に連結されており、梃子の原理によって雌コネクタを雄コネクタに嵌合方向への荷重を付与して互いに結合させるようになっている。
【0005】
また、前記ハウジングの内部には、ハウジング内に差し込まれた雌端子を確実に係止して抜け止め保持するためのリテーナが設けられている。このリテーナは、ほぼ矩形枠状のブロック体に形成されて、前記ハウジングに形成された複数の雌端子保持孔に対応する複数の端子挿通孔が並設されていると共に、前記レバーの内側位置で前記ハウジングの内部に形成されたリテーナ収容孔に挿脱可能に収容されている。
【0006】
そして、このリテーナを、前記リテーナ収容孔に押し込み前記各端子挿通孔が各雌端子保持孔と連続した位置で仮係止位置に一旦保持し、この状態で各雌端子をリテーナ挿通孔に貫通させて雌端子保持孔に差し込む。その後、前記リテーナをリテーナ収容孔内へさらに押し込むと、前記各端子挿通孔がそれぞれ各雌端子保持孔とずれて、その内縁が前記各雌端子に係止して、該雌端子の抜け止めを行うようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−300236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記従来のコネクタ構造にあっては、例えば前記各端子を交換する場合などには、前記リテーナを前記仮係止位置まで引き出して本係止状態を一旦解除しなければならないが、前記レバーが前記ハウジングのリテーナ収容孔の開口まで覆うように配置されているため、前記仮係止位置とするためには、前記レバーを予め取り外さなければならないと共に、端子を交換した後は、再びレバーを元の位置に取り付けなければならない。
【0009】
したがって、かかるレバーの取り外し、取り付け作業が煩雑になり、結果的に端子の交換作業能率の低下とコストの高騰が余儀なくされている。
【0010】
本発明は、前記従来のコネクタ構造の技術的課題に鑑みて案出されたもので、前記レバーを取り外すことなくリテーナを仮係止位置まで引き出すことができることにより、端子交換作業能率の向上とコストの低減化を図り得るコネクタ構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、内部に雌雄いずれか一方の端子が挿通保持された一方側コネクタと、内部に前記雌雄いずれか他方の端子が挿通保持され、前記一方側コネクタに嵌合して前記一方の端子に他方の端子を接続する他方側コネクタと、前記他方側コネクタの外周に可動自在に保持されて、可動操作されることによって前記両コネクタを結合させる方向へ付勢力を付与するレバーと、前記他方側コネクタの内部に形成されたリテーナ収容孔内に係脱可能に設けられ、仮係止位置に移動された状態で前記他方の端子を他方側コネクタ内に挿入可能とすると共に、本係止位置に移動された状態で前記他方の端子を他方側コネクタ内に係止するリテーナと、を備えたコネクタ構造であって、前記レバーにおける前記他方側コネクタのリテーナ収容孔の開口端と対向する位置に、前記リテーナの仮係止位置方向への移動を許容する移動用凹部を形成する一方、前記リテーナ収容孔の開口端に、本係止位置にある前記リテーナを、前記移動用凹部を介して仮係止位置まで引き出す係止解除手段が挿入される作業用凹部を形成したことを特徴としている。
【0012】
請求項2に記載の発明は、前記レバーの前記他方側コネクタの作業用凹部と対応した位置に、切欠部を形成したことを特徴としている。
【0013】
請求項3に記載の発明は、前記リテーナの前記他方側コネクタの作業用凹部側の端部に、前記係止解除手段の先端部が係止される係止部を設けたことを特徴としている。
【0014】
請求項4に記載の発明は、前記係止解除手段を、ピン軸の先端部がテーパ状に形成されたリテーナ操作治具によって構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、係止解除手段の先端部を前記他方側コネクタの作業用凹部に挿入しつつ操作してリテーナをリテーナ収容孔から引き出すことによって、本係止位置に保持されたリテーナを仮係止位置に容易に移動させることができる。したがって、従来技術のようにレバーを、その都度取り外す必要がなくなるので、端子の交換作業能率の向上と作業コストの低減化が図れる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、レバーにも係止解除手段の作業用の切欠部を設けたため、係止解除手段をさらに容易に操作することが可能になり、端子交換作業能率が一層向上する。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、係止解除手段の先端部を、リテーナの係止部に係止させることによって係止解除手段による操作を確実に行うことができ、リテーナの仮係止位置までの引き出し作業性が良好になる。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、係止解除手段を単純なピン形状によって形成したことによって、コストの低減化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るコネクタ構造の一実施形態を分解して示す斜視図である。
【図2】本実施形態に供される雌コネクタとリテーナ及びレバーの分解斜視図である。
【図3】本実施形態に供されるリテーナがリテーナ収容孔に仮係止位置に保持された状態を示し、Aはハウジングとリテーナの要部横断面図、BはAのA−A線断面図である。
【図4】本実施形態に供されるリテーナがリテーナ収容孔に本係止位置に保持された状態を示し、Aはハウジングとリテーナの要部横断面図、BはAのB−B線断面図である。
【図5】レバーが取り付けられた雌コネクタにカバーを取り付ける状態を示す平面図である。
【図6】レバーが取り付けられた雌コネクタにカバーを取り付けられた状態を示す平面図である。
【図7】雌コネクタにレバーとカバーが取り付けられた状態を示す断面図である。
【図8】雌雄コネクタにレバーとカバーが取り付けられた状態を示す平断面図である。
【図9】本係止状態にあるリテーナにリテーナ操作治具の先端部を押し当てた状態を示す断面図である。
【図10】リテーナ操作治具によってリテーナを仮係止状態まで引き下げた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るコネクタ構造の実施形態を図面に基づいて説明する。この実施形態も従来技術と同じく自動車の電気機器類に接続されるワイヤーハーネスを接続するコネクタに適用したものである。
【0021】
具体的に説明すれば、コネクタ構造は、図1に示すように、図外の車体パネルに固定される一方側コネクタである雄コネクタ1と、該雄コネクタ1の一端側に嵌合して電気的に接続される他方側コネクタである雌コネクタ2と、該雌コネクタ2の内部に下方から係脱自在に収容されたリテーナ3と、前記雄コネクタ1と雌コネクタ2とを梃子作用を利用して低荷重で結合させるレバー4と、該レバー4の内側に配置されて雌コネクタ2から引き出されて一方向へ折曲された複数本のワイヤーハーネスHを覆うカバー5と、から主として構成されている。
【0022】
前記雄コネクタ1は、ボックス枠状に形成されたコネクタ本体6と、該コネクタ本体6の後端側に一体的に設けられて、内部に複数の雄端子の大きさに合わせて複数の図外の端子キャビティを有するコネクタ部7とから構成されている。
【0023】
前記コネクタ本体6は、図1にも示すように、内部が空洞状に形成され、上壁6aと下壁6bの各内面対向位置に、前記レバー4の後述する作動ボス部23a、23bの外側面に押圧案内されるほぼL字形状の引き込み用ボス部8a、8bが一体に突設されている。また、コネクタ本体6の一側壁の内側先端には、前記レバー4に係止するフック部6cが突設されていると共に、該フック部6cを挟んだ内部上下位置には一対の第1ガイド溝6d、6eが前後方向に沿って形成されている。一方、他側壁側の内部上下位置には、一対の第2ガイド溝6f、6gが前後方向に沿って形成されている。
【0024】
前記コネクタ部7は、先端縁が前記車体パネルに形成された長方形状の嵌合孔の孔縁に当接すると共に、内部の各雄端子には、図外のワイヤーハーネスがそれぞれ接続されている。
【0025】
前記雌コネクタ2は、図2にも示すように、雄コネクタ1の外形よりも小さい矩形枠状に形成されて、内部に前記雄コネクタ1のコネクタ本体6内に前方向から嵌合可能なハウジング9と、該ハウジング9の内部に一体に形成されて、左右方向のほぼ中央に一体に有する隔壁部10を介して左右に分離された端子収容部11と、から構成されている。
【0026】
前記ハウジング9は、上壁9aの上面と下壁9bの下面には、前記レバー4の回動支点となる円形状の支点ボス部12と、作動案内用の案内ボス部13がそれぞれ一体に設けられている。前記各支点ボス部12は、ほぼ円形突状に形成されている一方、各案内ボス部13は、ほぼ円弧状に形成されて各壁9a、9bと一体の円柱部の各先端に円弧状のガイド部13aを有している。
【0027】
前記各端子収容部11は、図3及び図4に示すように、内部に断面ほぼ矩形状の複数の端子収容孔11aが多段状に並設されていると共に、両側部には下面側から上方へ向かって穿たれた一対の係合用孔14が形成されている。この両係合用孔14は、前記リテーナ3を本係止位置と仮係止位置に係止させるもので、各内面に上下2段の凸部14a、14bが一体に設けられていると共に、該両凸部14a、14bの間に凹溝14cがそれぞれ形成されている。
【0028】
前記ハウジング9は、図1に示すように、上壁9aと下壁9bの各前端縁一側部の対向位置に、中央に係合溝15a、15aを有するほぼ矩形状の一対の係合片15、15がほぼ水平方向に突設されていると共に、一側壁の上下端に、前記雄コネクタ1の第2ガイド溝6f、6gに嵌合して内部に摺動案内される上下一対のガイド片2a、2aが一体に設けられている一方、他側壁の後端側には、前記第1ガイド溝6d、6eに摺動案内される一対のガイド突起2b、2bが一体に設けられている。
【0029】
前記各端子収容孔11aは、図3及び図4にも示すように、内部底面から傾斜状に立ち上がったランス17がそれぞれ突設されていると共に、複数のワイヤーハーネスHの先端にそれぞれ固定された雌端子16がそれぞれ挿通保持されている。前記各ランス17は、ほぼコ字形状に形成された先端部が、各端子収容部11に最大に差し込まれた状態で前記雌端子16の切欠溝16aに係止して該雌端子16の不用意な抜けを規制するようになっている。
【0030】
また、前記雌コネクタ2のハウジング9は、前後方向のほぼ中央位置の内部にリテーナ3を収容する矩形状のリテーナ収容孔18が形成されている。
【0031】
このリテーナ収容孔18は、図2〜図4に示すように、肉厚矩形板状に形成されて、前記雌コネクタ2を横断する形で前記ハウジング9の下壁9bの下面から上方に沿って切欠形成されて、上端が前記上壁9aの下面まで達していると共に、開口端18aの前端側にはリテーナ3の後述する突起片19が嵌合保持される長方形状の嵌合溝18bが形成されている。
【0032】
一方、前記リテーナ3は、図1〜図4に示すように、合成樹脂材によって肉厚矩形板状に一体に形成され、長手方向のほぼ中央位置に形成された凹部3aを介して左右に分離された一対の矩形枠部3b、3bを有し、この両矩形枠部3b、3bに前記各雌端子16が挿通する複数の端子挿通孔3cが貫通形成されている。この各端子挿通孔3cは、ほぼ矩形状に形成されて下面の一部が前記雌端子16を挿通案内するテーパ状に形成されている。
【0033】
また、このリテーナ3は、図3及び図4に示すように、長手方向の両側部、つまり前記各矩形枠部3b、3bの各外側部に前記突起片19と同方向に突出した係止片20、20が一体に設けられている。この両係止片20は、前記ハウジング9の両係合用孔14,14に下方から係入するようになっており、各内側面に一体にそれぞれ設けられた係止突起20aが前記上側凸部14aに係止してリテーナ3を本係止位置に保持し、前記凹溝14cに係止して仮係止位置の保持するようになっている。
【0034】
前記リテーナ3は、下端に係止部であるプレート状の前記突起片19が長手方向に沿って一体に設けられている。この突起片19は、平面からみて長方形状に形成され、垂直なリテーナ本体に対してほぼ水平状に延設されていると共に、リテーナ3が前記リテーナ収容孔18に最大に押し込まれて両係止突起20が各上側凸部14aに係止した本係止位置で、前記嵌合溝18bに嵌合保持されるようになっている。
【0035】
前記レバー4は、図1及び図2に示すように、ほぼコ字形状に形成されて、ほぼ異形プレート状の一対のレバー片4a、4aと、該各レバー片4a、4aの一端部に跨設された連結把持部4bと、から構成されている。前記両レバー片4a、4aの長手方向のほぼ中央位置には、前記ハウジング9の支点ボス部12と案内ボス部13のそれぞれに上下方向から嵌着する支点用孔21、21とガイド用孔22、22がそれぞれ穿設されていると共に、前記各支点用孔21の外側近傍には、前記雄コネクタ1の各引き込み用ボス8a、8bの外側面に当接するほぼ円弧状の作動ボス部23、23が一体に突設されている。
【0036】
また、前記連結把持部4bの内部には、図8に示すように、前記雄コネクタ1のコネクタ本体6に設けられた前記フック部6cに係止するフック状の係止爪24が一体に設けられている。この係止爪24は、前記各レバー片4aが前記ハウジング9の上下壁9a、9bの各外面を摺接しながら回動して雌雄コネクタ1,2が最終的に嵌合した時点で前記フック部6cに係止することによって雌雄コネクタ1,2の結合力を強化するものである。
【0037】
前記カバー5は、図1,図2に示すように、合成樹脂材によって断面ほぼほぼU字形状に折曲形成され、それぞれほぼ扇状の両側片5a、5aと、該両側片5a、5aを連結する湾曲状の連結部5bとから構成されている。このカバー5は、前記ハウジング9とレバー4との間に配置されて、ハウジング9の上下壁9a、9bを覆うように配置されていると共に、前記雌コネクタ2から引き出された前記複数のワイヤーハーネスHを、内部で左右の一方向へ折曲状に案内保持するようになっている。
【0038】
また、このカバー5は、連結部5bの一端側に前記ハウジング9の一側壁の内端部に一体に有するフック部25に係止するフック爪26が一体に形成されていると共に、両側片5a、5aの他端側に突設された係合片5d、5dの対向内面には、前記ハウジング9の各係合片15に有する係止溝15aにそれぞれ係止する一対の爪部5eが一体に設けられている。
【0039】
そして、前記レバー4は、図2〜図4に示すように、前記ハウジング9のリテーナ収容孔18の開口端18aに対向した内面に、前記リテーナ3の突起片19を前記仮係止位置まで移動を許容する移動用凹部27が切欠形成されている。すなわち、この移動用凹部27は、レバー4の一方のレバー片4aの内面に形成されて、リテーナ3の移動分を許容する深さDに形成されている。
【0040】
また、前記ハウジング9の下壁9bにおける前記リテーナ収容孔18の開口端18a付近には、図9、図10に示す係止解除手段であるリテーナ操作治具28が挿入される作業用凹部29が形成されている。
【0041】
この作業用凹部29は、下壁9bの下面から前記リテーナ収容孔18に向かって傾斜状に立ち上がり形成されて断面ほぼへ字形状に形成され、ほぼ水平状に折曲された小巾の先端部29aが本係止位置にある前記リテーナ3の突起片19の上面よりも上方まで延長形成されている。したがって、前記先端部29aに挿入された前記リテーナ操作治具28のテーパ状先端部28aが前記突起片19の上面先端縁に当接するようになっている。
【0042】
なお、前記リテーナ操作治具28は、図外の把持部の先端から突出した小径なピン軸の先端部28aが前記テーパ状に形成されている。
【0043】
さらに、前記レバー4は、図2〜図4に示すように、前記作業用凹部29と対向する部位に、前記リテーナ操作治具28の先端部28aの作業用凹部29への挿通性を容易にする矩形状の切欠凹部30が形成されている。この切欠凹部30は、その形成位置が雌コネクタ2に組み付けた時点での状態、つまり、雌雄コネクタ1,2を結合するために回動させる前の状態で前記作業用凹部29の位置と合致する位置となるように設定されている。
【0044】
以下、本実施形態のコネクタ構造における作用を説明するが、まず、最初に雄コネクタ1と雌コネクタ2を結合する基本動作を説明する。
【0045】
すなわち、図3に示すように、前記雌コネクタ2の前記リテーナ収容孔18内に予めリテーナ3を、リテーナ収容孔18の開口端18aから押し込むと共に、前記各係止片20が各係合用孔14にそれぞれ係入しつつ各係止片20の係止突起20aが各係止片20の弾性変形を得ながら係合用孔14の下側凸部14bを乗り越えて凹溝14cに係止して仮係止位置に保持される。この状態で、各ワイヤーハーネスHに接続された各雌端子16を端子保持孔11aとリテーナ3の挿通孔3cに挿通する。
【0046】
その後、前記リテーナ3をさらにリテーナ収容孔18内に押し込むと、図4に示すように、前記各係止突起20aがハウジング9の上側凸部14aを乗り越えて該上側凸部14aに係止して本係止位置に保持される。
【0047】
続いて、前記雌コネクタ2(ハウジング9)の外面に上下の支点ボス部12と案内ボス部13に、前記レバー4の支点用孔21とガイド用孔22にそれぞれ嵌合させつつ該レバー4をハウジング9に対して挟み込むように組み付ける。この状態で前記カバー5を、図5の矢印方向からハウジング9に装着して前記係合片15やフック部25にとフック爪26や各爪部5eをそれぞれ係止して図6に示すように接続する。
【0048】
その後、雌コネクタ2を雄コネクタ1に、前記ガイド片2aやガイド突起2bなどを介して初期セットした後、前記レバー4を、図6に示す位置から前記支点ボス部12を支点として一方向(矢印方向)へ回動させると、同時に前記案内ボス部13の外周面に引き込み用ボス部8bの外周面が当接しつつ手前に案内される。つまり、この梃子作用により雌雄コネクタ1を互いに引き付ける方向の付勢力が作用して各雌雄コネクタ1,2の各雌雄端子が容易に接続されると共に、最終的にレバー4の係止爪24が雄コネクタ1のフック爪6cに係止して両コネクタ1,2の確実な結合状態が得られる。
【0049】
なお、図7は前記レバー4を、図6の位置から矢印方向へ回動させて雌雄コネクタ1,2を結合させた状態における雌コネクタ2とレバー4及びカバー5の断面図である。
【0050】
次に、雌コネクタ2に接続されたワイヤーハーネスHを交換する場合について説明する。
【0051】
まず、前記レバー4を他方向に回動させて前記係止爪24とフック爪6cとの係止状態を解除すると共に、初期の回転位置に戻す。この時点では、図3及び図4に示すように、レバー4の切欠凹部30が作業用凹部29に合致することから、リテーナ操作治具28の先端部28aを、図9に示すように、前記作業用凹部29内に挿通して前記先端部28aのテーパ面を前記リテーナ3の突起片19の端縁に当接させる。その後、図10に示すように、リテーナ操作治具28の後端部を押し下げると梃子作用が働いて先端部28aが前記突起片19を引き下ろす。つまり、係止突起20aが上側凸部14aに係止して本係止位置にあるリテーナ3を、凹溝14cまで引き下げることによってリテーナ3を仮係止位置に移動させる。これによって各雌端子16の係止状態が解除される。その後、前記ワイヤーハーネスHを介して各雌端子16を各端子収容孔11aから各ランス17の係止力に抗して引き出すことが可能になる。
【0052】
その後、新たな雌端子16を端子収容孔11aに挿入した後、前記リテーナ3の突起片19の露出している下面を指などでリテーナ収容孔18内に再び押し込めば、前述のように、各係止突起20aがハウジング9の上側凸部14aに係止して本係止位置に保持されると共に、前記各雌端子16の所定端縁がリテーナ3の挿通孔3cの孔縁に係止して抜け出しが規制される。
【0053】
続いて、前記レバー4を元の位置に回動させることによって雌雄コネクタ1が確実に結合され、これによって端子交換作業が完了する。
【0054】
以上のように、本実施形態のコネクタ構造によれば、雌コネクタ2内の各雌端子16を交換する際には、前記レバー4を取り外すことなく、前記リテーナ操作治具28を作業用凹部29から挿入して操作することにより、前記リテーナ3を移動用凹部27を介して仮係止位置に移動させることができるため、雌端子16の交換作業能率の向上と作業コストの低減化が図れる。
【0055】
特に、前記作業用凹部29は、全体が傾斜状のへ字形状に形成されて先端部28aがほぼ水平に屈曲していることから、前記リテーナ操作治具28の先端部28aのリテーナ3の突起片19上面までの挿入性や操作性が良好になる。
【0056】
しかも、前記レバー4にも作業用の切欠凹部30を設け、この切欠凹部30を利用することによってリテーナ操作治具28をさらに容易に操作することが可能になることから、前記端子交換作業能率を一層向上させることができなど、前記作用効果をさらに促進できる。
【0057】
また、前記リテーナ3の突起片19に、リテーナ操作治具28の先端部28aを当接係止させることによってリテーナ操作治具28による操作が確実となって、リテーナ3の仮係止位置までの引き出し作業性が良好になる。また、前記リテーナ操作治具28の先端部28aをテーパ状に形成したことから、該先端部28aのリテーナ3の突起片19への当接性が良好になり、前記操作性がさらに向上する。
【0058】
さらに、前記リテーナ操作治具28を単純なピン軸によって形成したことによって、コストの低減化が図れる。
【0059】
本発明は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、対象のコネクタとしては前記雌コネクタ2に限定されるものではなく、コネクタの仕様によってはレバー4との関係で雄コネクタ1に適用することも可能である。また、作業用凹部29の断面形状もリテーナ操作治具28の挿入と操作が確保できる形状であればよく、コネクタの形状などに応じて任意に形成することができる。
【0060】
また、前記リテーナ3に突起片19を有さないものにも適用でき、この場合は、例えば、リテーナ3の本体の下部一側面に係止用溝を形成し、この係止用溝に前記リテーナ操作治具28の先端部28aを係止させて引き下げることも可能である。
【0061】
さらに、前記レバー4側に形成された切欠凹部30は必ずしも必要ではなく、例えば前記作業用凹部29の入口の開口面積を大きく形成することによって、前記リテーナ操作治具28の先端部28aの挿入性や操作性に大きな支障はない。
【0062】
また、リテーナ操作治具28の構造もコネクタの仕様や形状などに応じて任意に変更することも可能である。
【0063】
また、前記レバー4の構造もコネクタの仕様やレイアウトなどに応じて任意に変更することが可能である。
【符号の説明】
【0064】
1…雄コネクタ
2…雌コネクタ
3…リテーナ
4…レバー
5…カバー
6…コネクタ本体
7…コネクタ部
9…ハウジング
11…端子収容部
11a…端子収容孔
12…支点ボス部
13…案内ボス部
14…係合用孔
14a…上側凸部
14b…下側凸部
14c…凹溝
16…雌端子
18…リフト収容孔
18a…開口端
18b…嵌合溝
19…突起片
20…係止片
20a…係止突起
27…移動用凹部
28…リテーナ操作治具(係止解除手段)
28a…先端部
29…作業用凹部
29a…先端部
30…切欠凹部(切欠部)
H…ワイヤーハーネス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に雌雄いずれか一方の端子が挿通保持された一方側コネクタと、
内部に前記雌雄いずれか他方の端子が挿通保持され、前記一方側コネクタに嵌合して前記一方の端子に他方の端子を接続する他方側コネクタと、
前記他方側コネクタの外周に可動自在に保持されて、可動操作されることによって前記両コネクタを結合させる方向へ付勢力を付与するレバーと、
前記他方側コネクタの内部に形成されたリテーナ収容孔内に係脱可能に設けられ、仮係止位置に移動された状態で前記他方の端子を他方側コネクタ内に挿入可能とすると共に、本係止位置に移動された状態で前記他方の端子を他方側コネクタ内に係止するリテーナと、を備えたコネクタ構造であって、
前記レバーにおける前記他方側コネクタのリテーナ収容孔の開口端と対向する位置に、前記リテーナの仮係止位置方向への移動を許容する移動用凹部を形成する一方、
前記リテーナ収容孔の開口端に、本係止位置にある前記リテーナを、前記移動用凹部を介して仮係止位置まで引き出す係止解除手段が挿入される作業用凹部を形成したことを特徴とするコネクタ構造。
【請求項2】
前記レバーの前記他方側コネクタの作業用凹部と対応した位置に、切欠部を形成したことを特徴とする請求項1に記載のコネクタ構造。
【請求項3】
前記リテーナの前記他方側コネクタの作業用凹部側の端部に、前記係止解除手段の先端部が係止される係止部を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載のコネクタ構造。
【請求項4】
前記係止解除手段を、先端テーパ状のピン状の治具によって構成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のコネクタ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−69306(P2012−69306A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211528(P2010−211528)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】