説明

コネクタ部材、圧電アクチュエータ、および燃料噴射装置

【課題】耐圧力性、耐衝撃性に比較的優れたコネクタ部材を提供する。
【解決手段】柱状の絶縁基体12と、少なくとも一部が絶縁基体の内部を通り、絶縁基体の一方端面12Aおよび絶縁基体の周面に少なくとも一部が露出した導体部と、を備えて構成されたコネクタ部材1であって、絶縁基体は、他方端面12Bの周縁に、他方端面と垂直な内壁面14Cを内面の一部に備える凹部が設けられており、導体部は、凹部に配置された端子と、絶縁基体の内部を通り端子から一方端面に向かって延在し、絶縁基体の一方端面から少なくとも一部が露出した導体ピン13と、を有して構成されており、端子は、絶縁基体の周面に露出した外側面と、凹部の内壁面14Cと対向する内側面とを備え、端子の内側面の周縁部には面取部が形成されており、金属ロウを介して、端子と凹部の内壁面とが接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタ部材、圧電アクチュエータ、および燃料噴射装置に関する。例えば、ディーゼルエンジン等の内燃機関の燃料噴射装置、およびこの燃料噴射装置に用いられる圧電アクチュエータ、および、該圧電アクチュエータに設けられたコネクタ装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の排ガスに含まれる粒子状物質(PM)や窒素酸化物(NOx)等の有害物質が社会問題化する中で、ディーゼルエンジン等の内燃機関の排ガス規制対策として、ディーゼルエンジンの内部に各気筒(シリンダ)の燃料噴射ノズルに接続され、各気筒の燃料噴射ノズルへ均一な量の燃料を供給する、いわゆるコモンレールを備えた燃料噴射装置提案されている。このコモンレールを用いた燃料噴射装置は、燃料噴射の前にコモンレールの中に燃料を圧縮して溜めておき、最も燃焼効率が高まるタイミングでこの燃料をコモンレールからシリンダ内に噴射するように構成されている。コモンレールを用いた燃料噴射装置を用いることで、ディーゼルエンジンの燃焼効率を比較的向上させるとともに、有害排気物質を比較的低減することができる。コモンレールからシリンダ内に燃料を噴射するための燃料噴射ノズルの駆動部には、通電させることによって変位する圧電素子の動作によって、所望のタイミングで燃料を噴射させる構成のものが用いられている。
【0003】
このような、コモンレールからシリンダ内に燃料を噴射する、圧電素子を備えた圧電アクチュエータの一例が、例えば下記特許文献1に記載されている。図8(a)は、例えば下記特許文献1に示される、従来の圧電アクチュエータの一例について説明する概略断面図である。また、図8(b)は、図8(a)に示す従来の圧電アクチュエータ100が備えるコネクタ130の一部を拡大して示す図である。図8では、下記特許文献1に示される圧電アクチュエータ100のうち、複数の圧電素子が積層されてなるスタック部124に電圧を印加するための電気コネクタ130周辺について、拡大して示している。
【0004】
図8に示すコネクタ130は、導体ピン138a、138bが挿通された貫通孔を備える絶縁基体136と、絶縁基体136の他方端面131の側に配置された導体板140a、140bを備えて構成されている。絶縁基体136の他方端面131の周縁には、略矩形状の切欠部139a、139bが設けられている。導体板140aおよび140bは、これら切欠部139aおよび139bに各々配置され、メタライズ層および金属ロウとが積層された接合層を介して、導体板140a、140bと絶縁基体136とが接合されている。
【0005】
導体ピン138a、138bは、導体板140a、140bに各々設けられた貫通孔に挿通されており、導体ピン138aと導体板140a、導体ピン138bと導体板140bと、が夫々電気的に接続されている。導体板140aの側面には電極板126aが接合され、導体板140bの側面には電極板126bが接合されている。各電極板126aおよび126bは、図中上下方向に沿って延在し、同じく図中上下方向に沿って積層された複数の圧電素子(スタック部124を構成する図示しない複数の圧電素子)の内部電極と、電気的に接続されている。アクチュエータ124には、導体ピン138aおよび138bから、導体板140aおよび140bを介して電圧が印加されて、複数の圧電素子が図中上下方向に伸縮する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−283756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
圧電アクチュエータ100では、導体板140aが略矩形状に形成され、導体板140aの、切欠部139aの内側壁面と対向する内側面141aの周縁、および、導体板140aの露出した外側面142aの周縁のいずれにも、特に大きな面取り加工等は施されていない。圧電アクチュエータ100に設けられるコネクタ100は、燃料を噴射する際、絶縁基体136の一方端面131の側から、図中上下方向に沿った比較的大きな圧力を受ける。係る従来の構成のコネクタ130では、係る圧力を繰り返し受けた際、特に導体板140aの内側面141aの側の接合層において、クラック等の不良が比較的生じ易いといった課題があった。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑み完成されたものであり、耐圧力性、耐衝撃性に比較的優れたコネクタ部材、圧電アクチュエータ、および燃料噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本願発明は、柱状の絶縁基体と、少なくとも一部が前記絶縁基体の内部を通り、前記絶縁基体の一方端面および前記絶縁基体の周面に少なくとも一部が露出した導体部と、を備えて構成されたコネクタ部材であって、前記絶縁基体は、他方端面の周縁に、前記他方端面と垂直な内壁面を内面の一部に備える凹部が設けられており、前記導体部は、前記凹部に配置された端子と、前記絶縁基体の内部を通り前記端子から前記一方端面に向かって延在し、前記絶縁基体の前記一方端面から少なくとも一部が露出した導体ピンと、を有して構成されており、前記端子は、前記絶縁基体の前記周面に露出した外側面と、前記凹部の前記内壁面と対向する内側面とを備え、前記端子の前記内側面の周縁部には面取部が形成されており、金属ロウを介して、前記端子と前記凹部の内壁面とが接合されていることを特徴とするコネクタ部材を提供する。
【0010】
また、前記端子の前記外側面と接合する電極板と、前記導体ピンに入力された電気信号を前記電極板を介して受け取り、前記電気信号に応じて動作する圧電素子と、を備えて構成された圧電アクチュエータを、併せて提供する。
【0011】
また、圧電アクチュエータと、前記圧電アクチュエータの動作に応じて開閉する制御弁と、を備え、前記制御弁の開閉によって、圧力容器に貯留された噴射の噴射動作を制御する燃料噴射装置を、併せて提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のコネクタ部材は、比較的大きな圧力を外部から受けた場合であっても、導体と絶縁基体との接合層に生じる、クラック等の破損が比較的少ない。本発明のコネクタ部材は、耐圧力性能、耐衝撃性能が比較的高い。該コネクタ部材を備えた圧電アクチュエータは、比較的大きな圧力を繰り返し発生させた場合においても、比較的高い信頼性を有している。また、該圧電アクチュエータを備えた燃料噴射装置は、噴射する燃料の圧力を比較的高めた状態においても、燃料噴射動作を安定して繰り返し実施することができる。本発明の燃料噴射装置は、耐久性および動作信頼性が比較的高い。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)は、コネクタ部材の実施の形態の一例を示す概略斜視図であり、図1(b)は概略断面図である。
【図2】図1(b)に示す2つの導体板15のうち一方の側の近傍を拡大して示す図である。
【図3】(a)は、本実施形態の導体板15について説明する概略斜視図であり、(b)は導体板15について説明する概略断面図である。
【図4】本発明のコネクタ部材の他の実施形態について説明する断面図である。
【図5】本発明のコネクタ部材の他の実施形態について説明する図であり、(a)は断面図、(b)は(a)に示すコネクタ部材の斜視図、(c)はさらに他の例を示す断面図、(d)(c)に示すコネクタ部材の斜視図である。
【図6】本発明のコネクタ部材の他の実施形態について説明する図であり、(a)は断面図、(b)は(a)に示すコネクタ部材の斜視図、(c)はさらに他の例を示す断面図、(d)(c)に示すコネクタ部材の斜視図である。
【図7】燃料噴射装置の一実施形態について説明する概略断面図である。
【図8】(a)は、従来の圧電アクチュエータの一例について説明する概略断面図、(b)は、図5(a)に示す従来の圧電アクチュエータが備えるコネクタの一部を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のコネクタ部材、圧電アクチュエータ、および燃料噴射装置の実施形態について図面を参照して説明するが、本発明は下記実施形態の範囲に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良および変更を行ってもよいのはもちろんである。
【0015】
図1(a)は、コネクタ部材の実施の形態の一例を示す概略斜視図であり、図1(b)は概略断面図である。図1に示すコネクタ部材1は、絶縁基体12と、一部が絶縁基体12の内部を通過するように設けられた、絶縁基体12の一方端面12Aの側と、絶縁基体12の側面12Cの側と、を電気的に接続するための導体部11とを備える。
【0016】
絶縁基体12は、一方端面12Aから他方端面12Bに向けて延在する貫通孔12bと、他方端面12Bの周縁の少なくとも一部に設けられた切欠部14(凹部)とを有している。絶縁基体12の切欠部14は、略矩形形状の凹部であり、絶縁基体12の他方端面12Bに略平行な底面14Bと、この底面14Bと略垂直な内壁面14Cとを有している。底面14Bには、貫通孔12bの一方端が開口している。
【0017】
絶縁基体12は、例えば、セラミックスを主成分として構成されており、例えば、アルミナ(Al)質セラミックス、窒化珪素(Si)質セラミックス,炭化珪素(SiC)質セラミックス等のセラミックス等が好適である。これらセラミックスは比較的硬度も高く、外部から圧力を受けた場合でも変形し難い。絶縁基体12は、例えばアルミナ(Al)質セラミックスから成る場合、アルミナ(Al)、シリカ(SiO)、カルシア(CaO)、マグネシア(MgO)等の原料粉末を所定形状の金型内に充填するとともにこれを一定圧力で押圧して柱状の生の成形体とし、しかる後、この生の成形体を約1600℃の高温で焼成することによって製作することができる。
【0018】
導体部11は、貫通孔12bに挿通されて、一方端面12Aから一部が露出した導体ピン13と、切欠部14に配置されて導体ピン13と電気的に接続された導体板15(端子)とを備えて構成されている。導体ピン13は、例えばFe−Ni−Co合金やFe−Ni合金等の金属材料を主成分とする。導体ピン13の、一方端面12Aの側の突出部は、絶縁基体12の一方端面12Aの側に設けられた、モリブデン(Mo),マンガン(Mn),タングステン(W)等を含むメタライズ層、および該メタライズ層に積層された銀(Ag)ろうやAg−銅(Cu)ろう等のロウ材によって、絶縁基体12の一方端面12Aと接合されている。本実施形態では、導体ピン13は、切欠部14の底面14Bに開口した貫通孔12Bの一端から一部が突出している。また、導体ピン13の、一方端面12Aから突出した突出部には、端子ブレード17がロウ付け接合されている。なお、導体ピン
13は、例えば銅(Cu)等の電気抵抗値の比較的低い金属材料を主成分としてもよく、この場合、外部からの電気信号のピン部材13における損失が比較的小さい。
【0019】
図2は、図1(b)に示す2つの導体板15のうち一方の側の近傍を拡大して示す図である。また
、図3(a)は、本実施形態の導体板15について説明する概略斜視図であり、図3(b)は、導体板15について説明する概略断面図である。導体板15は、切欠部14に配置されている。導体板15は、切欠部14に対応する略矩形形状であって、他方端面12Bの側に露出する露出側主面15Bと、切欠部14の底面14Bと対向する対向主面15Aと、絶縁基体12の側面12Cの側に露出した第1側面15Cと、切欠部14の内壁面14Cと対向する第2側面15Dとを有している。導体板15は、例えば、鉄(Fe)−ニッケル(Ni)−コバルト(Co)合金等から成る金属板であり、貫通孔15bが設けられている。導体板15の貫通孔15bには、切欠部14の底面14Bの開口から突出した導体ピン13の一部が挿通されている。
【0020】
導体板15は、第2側面15Dを含む表面部分が、メタライズ層19aおよび金属ロウ19bを含んで構成された接合層19を介して、切欠部14の内面と接合されている。より詳しくは、本実施形態では、切欠部14の底面14Bと導体板15の対向主面15Aとが、また、切欠部14の内壁面14Cと導体板15の第2側面15Dとが、モリブデン(Mo),マンガン(Mn),タングステン(W)等のメタライズ層19a、および、このメタライズ層19aの表面に設けられた、銀(Ag)ろうやAg−銅(Cu)ろう等からなる金属ロウ19bを介して接合されている。また、導体板15の貫通孔15Bと、この貫通孔15Bに挿通された導体ピン13の一部とが、上記メタライズ層およびロウ材を介して接合されている。かかる構成とすることで、導体板15と導体ピン13は、比較的強固に接合され、コネクタ部材が外部から圧力を受けた場合であっても、導体ピン13と導体板15との電気的接続を、良好に維持することができる。
【0021】
絶縁基体12にメタライズ層を施す方法としては、例えば、成型体を焼成の後に、W,Mo,Mn等の金属粉末に適当なバインダ,溶剤を混合して成る導体ペーストを、第一の絶縁基体11,第二の絶縁基体12の所定部位にスクリーン印刷法などにより印刷塗布し、約1500℃の温度で焼成することによってメタライズ層を形成する。好ましくは、このメタライズ層に電解メッキ法または無電解メッキ法等によりニッケル(Ni)等の金属から成る金属層を被着させておくのがよく、この構成によりメタライズ層が酸化や腐食等により劣化するのを防止できるとともに、ろう材との接合性を良好にする。
【0022】
本実施形態では、導体板15の第2側面15Dの周縁部に面取領域21を有し、第2側面15Dの面積が、第1側面15Cの面積に比べて小さくされている。本実施形態では、面取り領域21は、露出側主面15Bに沿った周辺部分(面取り領域21b)、対向主面15Aに沿った周辺部分(面取り領域21a)のいずれにも面取り領域が設けられている。一方、本実施形態では、第1側面15Cの周縁部には面取領域は設けられていない。
【0023】
第2の側面15Dの周縁部に面取領域を有するとは、第2の側面15Dから、第2の側面15Dに連なる周面に至るコーナー部分の少なくとも一部が、面取加工されていることをいう。より具体的には、例えば、露出側主面15Bに沿った周辺部分に設けられた面取り領域21bは、第2の側面15Dに平行な方向に沿った断面視において、第2の側面15を含む仮想平面15D´の断面線と、第2の側面15Dに連なる周面を含む仮想平面15B´(ここでは、露出側主面15Bを含む仮想平面15B´のみ例示しておく)の断面線に比べ、導体板15の内側中心により近い位置にある部分をいう。図2において、面取り領域21aおよび面取り領域21bは、図中Xが約260μm、図中Yが約70μmとされている。これらX、Yの大きさについては、特に限定されない。なお、図に示す導体
板15においては、第1側面15Cの周縁部に面取り領域は設けられていないが、第1側面15Cの面取り領域が、第2側面15Dの側の面取り領域よりも小さければ、第1側面15Cの周辺に面取り領域が形成されていてもよい。
【0024】
本実施形態では、露出側主面15Bに面取り領域21bを有し、この面取領域21bを覆うように金属ロウ19bが設けられ、接合層19の表面、すなわち金属ロウ19bの表面が凹状に形成されている。この面取り領域21bを有することで、導体板15の露出側主面15Bの周縁において、接合層19が比較的大きな体積を占めるとともに、表面積も比較的広くなっている。かかる構成のコネクタ部材によれば、絶縁基体12の他方主面12Bの側に圧力や衝撃を受けた際、接合層19がこの力を比較的良好に緩衝することができる。
【0025】
また、本実施形態では、対向主面15Aの側にも面取り領域21aが備えられている。図3に示すように、切欠部14の底面14Bおよび内壁面14Cにわたってメタライズ層19Aを設けた場合、底面14Bと内壁面14Cとのコーナー部に、比較的多くのメタライズ材が溜まって生じるメタライズ溜り19Dが生じ易い。仮に、導体板15が面取り領域21aを有さない場合、このメタライズ溜りの影響で、導体板15をロウ付けする際に
露出側主面15Bの位置が不安定になるといった問題がある。 対向主面15Aに沿った
面取り領域21aを備えることで、ロウ付け部材1の作製時において、導体板15の固定位置、より詳しくは露出側主面15Bの位置を、比較的安定化させることができる。導体板15の第1側面15Cの側は、特に面取領域等は設けられておらず、比較的大きな面積の第1側面15Cが露出している。
【0026】
図7は、本発明のコネクタ部材の他の実施形態について説明する断面図である。以下に示す実施形態では、上記実施形態における絶縁基体12に対応する部材が、第一の絶縁基体31および第2の絶縁基体32との、2つの部材を備えて構成されている。第一の絶縁基体11および第二の絶縁基体12は、セラミックス,樹脂から成る。第一の絶縁基体11は、アルミナ(Al)質セラミックス,窒化珪素(Si)質セラミックス,炭化珪素(SiC)質セラミックス等のセラミックスから成る場合、セラミックスは硬質であることから変形しにくく、圧電素子2を支持する部材としては好適である。特に、Al質セラミックスは、導体ピン13同士および配線導体1c同士の電気的な絶縁を確実なものとし、圧縮応力が加わっても変形し難いことから第一の絶縁基体11には好適であり、他にSi質セラミックス,SiC質セラミックスも大きな圧縮応力に耐え得ることから好適に使用することができる。
【0027】
本実施形態のように、第一の絶縁基体11と第二の絶縁基体12とを別々の部材とし、各基体を組み合わせることで柱状の絶縁部材を構成した場合、柱状部材に比較的大きな圧力が加わったときも、これら部材の分割部分が微小に変位して応力が分散される。かかる実施形態では、絶縁部材にクラック等の破損が生じるのを抑制することができる。これにより、柱状部材自体にコントロールのできないクラックが生じるのを防止し、設計通りに信頼性の高い燃料噴射ノズルを提供することができる。
【0028】
また、図8(a)〜図8(d)は、第一の絶縁基体31の一方主面外周側に凸部31d
を設け、凸部31dの内側で第一の絶縁基体31の第二の絶縁基体32との当接面が凹面になっており、第二の絶縁基体32の当接面がこれと嵌合する凸面になって当接されている
例を示す。なお、図8は本発明のコネクタ部材の他の例を示し、(a)はその断面図、(b)は(a)の第一の絶縁基体11および第二の絶縁基体12の斜視図、(c)はさらに他の例を示す断面図、(d)は(c)の第一の絶縁基体11および第二の絶縁基体12の斜視図である。
【0029】
この構成においても、高圧を支える第一の絶縁基体31の一方主面側の、最もクラック
が生じて破損しやすい部分において、第二の絶縁基体32が予め別体として分割されてい
るために、第一の絶縁基体31と第二の絶縁基体32との間の部分にクラック等の破損が抑制されている。
【0030】
また、第一の絶縁基体31の一方主面側および第二の絶縁基体32の他方主面側の外周部から導体ピン13までの沿面距離を長くすることができる。この結果、第一の絶縁基体31および第二の絶縁基体32の外周部を小さくしても外周部から導体ピン13までの絶縁距離を確保できるようになり、第一の絶縁基体31および第二の絶縁基体32を小型化することができる。
【0031】
また沿面距離を長くできることによって、導体ピン13に高電圧の電気信号を伝送させるということが可能となる。導体ピン13に高電圧の電気信号を伝送させても、第一の絶縁基体31および第二の絶縁基体32の間の沿面で外周部と導体ピン13とが、または一対の導体ピン13の間で電気的短絡するのを防止できる。
【0032】
さらに、第一の絶縁基体31および第二の絶縁基体32の当接面に形成された凸面または凹面によって、第二の絶縁基体32と第一の絶縁基体31とが互いに位置ずれしないように固定できる。その結果、圧電素子や燃料からの高圧な圧力やエンジンからの振動等がコネクタ部材に加わっても、第二の絶縁基体32と第一の絶縁基体31とが互いに位置ずれすることによって導体ピン13がせん断破損等してしまうのが抑制されている。
【0033】
ここで好ましくは、第一の絶縁基体31の凸部31dの内側面は、図5(a)(b)に示すように、全周にわたって曲面状となった第一の曲面部31dとされているとともに、
第二の絶縁基体32の第一の曲面部31dに当接する側の端面も全周にわたって曲面状となった第二の曲面部32dとされているのがよい。この構成により、圧電素子2や燃料から
の高圧やエンジンからの振動等が圧電素子用支持部材1に加わって、第一の絶縁基体31
と第二の絶縁基体32とが当接する面にせん断応力が作用し、第二の絶縁基体12の外周部
が凸部1dの内側面に擦り付けられるようになっても、第二の絶縁基体32の外周部およ
び凸部1dの内側面に応力集中が発生するのを抑制することができる。
【0034】
さらに好ましくは、第二の曲面部32dの曲率半径は第一の曲面部31dの曲率半径よりも若干大きいのがよく、この構成により曲面の加工が容易になり、第二の曲面部32dを
第一の曲面部31dの内側面に容易に嵌め合わせることができ、応力集中の発生も抑制す
ることができる。例えば、第一の曲面部31dの曲率半径が0.8mmである場合には、第二の曲面部32dの曲率半径を1mmとするとよい。
【0035】
また好ましくは、図5(c),(d)に示すように、第二の絶縁基体32の第二の曲面
部32dの起点となる部位には段差部32cが形成されているのがよい。この構成により、段差部32cの外周で第二の絶縁基体32が凸部31dの内側面に当接されて第一の絶縁基体31に対して正確に位置合わせされるとともに、第一の絶縁基体31と第二の絶縁基体32とが多少位置ずれしたとしても、段差部32cによって第二の曲面部32dと第
一の曲面部31dに隙間が形成されるようになるので、第一の絶縁基体31と第二の絶縁基体32との当接部で応力が発生するのを防止でき、応力集中の発生を抑制することができ
る。例えば、段差部32cの段差寸法は0.15mm〜0.3mmとするとよい。
【0036】
この他にも当接面に凹凸面を形成する例として、第一の絶縁基体31の当接面に導体ピ
ン13を取り囲む溝状に形成された凹面を形成し、第二の絶縁基体32の当接面にこれと
嵌合する凸形状の突出部を形成したり、凹凸を逆にしたり、当接面に一対の導体ピン13のそれぞれを取り囲むように凹面および凸面の少なくとも一方を形成したり、これらを組
み合わせて、一対の導体ピン13双方を取り囲むとともに、その内側にそれぞれの導体ピン13を取り囲む凹面や凸面を設けたり、一方の導体ピン13の周囲に凹面を設け、他方の導体ピン13の周囲に凸面を設けたりしてもよい。当接面に一対の導体ピン13のそれぞれの導体ピン13を取り囲むように凹面や凸面を形成する場合は、一対の導体ピン13の間の沿面距離も長くすることができるので、導体ピン13の間に高電圧を印加することができるものとなる。また、第一の絶縁基体31と第二の絶縁基体32との回転ずれを制止する機能を持たせることもできる。
【0037】
また、第二の絶縁基体32の第一の絶縁基体31に対する位置ずれ防止のために、図6(a),(b)に示すように、導体ピン13と圧電素子用支持部材1の外周部との間に点状または部分的な線状に、第一の絶縁基体31の他主面側に凹部または凸部からなる第一の
係止部31aを設けるとともに、第二の絶縁基体32の一主面(第一の絶縁基体31側)に
第一の係止部31aに係合する凸部または凹部からなる第二の係止部32aを設けるという構成としてもよい。この構成により、第二の絶縁基体32の第一の絶縁基体31に対しての水平方向の位置ずれを防止することができる。
【0038】
ここで、第一の係止部31aおよび第二の係止部32aは複数個設けられるのがよく、これにより、第二の絶縁基体32の第一の絶縁基体31に対する水平方向の回転ずれを制止することができる。またこの構成により、間に第一の係止部31aおよび第二の係止部32aが設けられている第一の絶縁基体31の他主面側の外周部から導体ピン13までの絶縁距
離を長くできるという効果もある。
【0039】
また、第二の絶縁基体32の第一の絶縁基体31に対する位置ずれ防止のために、図6(c),(d)に示すように、第一の絶縁基体31の他主面側の中心部に凹部または凸部か
らなる第一の係止部31aを設けるとともに、第二の絶縁基体32の一主面(第一の絶縁基体31)側に第一の係止部31aに係合する凸部または凹部からなる第二の係止部32aを
設けるという構成としてもよい。この構成によって、第二の絶縁基体32の第一の絶縁基
体31に対しての水平方向の位置ずれを防止することができるとともに、第一の係止部31aまたは第二の係止部32aに関して対向する導体ピン13間の絶縁距離を長くできると
いう効果があり、導体ピン13間の距離を短くして第一の絶縁基体11および第二の絶縁基体12を小型化できる、または、導体ピン13に高電圧の電気信号を伝送させても、導体ピン13間で電気的短絡するのを防止できる。
【0040】
なお、図6(a)〜(d)の構成は組み合わせてもよく、この構成によって、第二の絶縁基体32の第一の絶縁基体31に対しての水平方向の位置ずれをより確実に防止することができるとともに、第一の絶縁基体31の他主面側の外周部から導体ピン13までの絶縁
距離を増大できかつ第一の係止部31aまたは第二の係止部32aに関して対向する導体ピン13間の絶縁距離を長くできる。
【0041】
また6(a)〜(d)の構成は5(a)〜(d)の当接面に凹面または凸面を設けた構成の一例等と組み合わせてもよい。
【0042】
好ましくは、第一の絶縁基体31および第二の絶縁基体32のいずれか一方、または両方が体積固有抵抗値10Ω・m〜10Ω・mの低絶縁性材料を用いて作製してもよい。この構成により、圧電素子用支持部材1をケース10に挿入するまでの組立作業中に圧電素子用支持部材1に静電気による電位が溜まったとしても、圧電素子用支持部材1の表面に沿面放電が生じるように漏れ電流が発生し、圧電素子用支持部材1に高い電位が溜まるということを防止でき、導体ピン13を介して圧電素子2へ電圧が加わるのを防止することができる。そして、圧電素子2が静電破損することのない圧電素子用支持部材1を提供することが可能になる。
【0043】
体積固有抵抗値が10Ω・m〜10Ω・mの低絶縁性材料としては、例えば、セラミックスと金属との複合材料,導電性樹脂(樹脂と金属との複合材料)が挙げられる。セラミックスと金属との複合材料としては、Al質セラミックスとチタン(Ti)との複合材料や、Al質セラミックスと酸化クロム(Cr)との複合材料が挙げられる。これらは、Al質セラミックスの原料粉末にTiまたはCrの粉末を混ぜたものを用意し、これを用いて生の成形体を形成し、約1600℃の高温で焼成することによって作製される。Al質セラミックスの原料粉末の量に対し、TiまたはCrの量を適宜調整することによって体積固有抵抗値10Ω・m〜10Ω・mを実現することができる。
【0044】
なお、Al質セラミックスとTiとの複合材料から成る場合、Tiの融点は1675℃であり、融点が焼成温度に近いため、Tiが焼成時に溶融してしまう可能性がある。このため、その製造方法として好ましくは、Al質セラミックスの原料粉末の量に酸化チタン(TiO)の粉末を混ぜたものを用意し、これを用いて生の成形体を形成し、約1600℃の高温で焼成する。しかる後、約1300℃の還元雰囲気炉で焼成することによってTiOをTiに還元させ、Tiを溶融させることなくAl質セラミックスとTiとの複合材料を作製することができる。
【0045】
図4〜図6に示す実施形態のように、柱状の絶縁部材を、2つ以上の絶縁部材組み合わせて構成することで、導体と絶縁基体との接合層に生じる、クラック等の破損をより好適に抑制することができる。耐圧力性能・耐衝撃性能を向上させる点で、複数の絶縁体を組み合わせて柱状部材を構成することが好ましい。
【0046】
図4は、本発明の圧電アクチュエータの一実施形態である圧電アクチュエータ40、および圧電アクチュエータ40を備えて構成された、本発明の燃料噴射ノズルの一実施形態である燃料噴射ノズル50を説明する概略断面図である。
【0047】
圧電アクチュエータ40は、上記コネクタ部材1と、コネクタ部材1の導体板15の第1側面15Cと接合された電極板44と、複数の圧電素子(図示せず)が積層されてなる圧電スタック42と、を備えて構成されている。圧電スタック42は、複数の圧電素子が積層されてなり、最上層に配置されたセラミック基板等の絶縁板を介して、上記絶縁基体12の他方主面12Bと当接している。
【0048】
電極板44は、導体板15の第1側面15Cと溶接接合されている。導体板15の第1側面15Cは、周縁線に面取領域等を備えておらず、第2側面15Dと比較しても面積が比較的大きい。電極板44はこの第1側面15Cと溶接接合されており、接合強度が比較的高く、かつ接合部分の電気抵抗も小さい。
【0049】
電極板44は、絶縁基体12の一方端面12Aの側から他方端面12Bの側に向かう方向に沿って延在し、圧電スタック42を構成する、積層された複数の圧電素子とそれぞれ電気的に接続されている。図の左右に設けられた電極板44をそれがぞれ所定の電位に設定されることで、圧電スタック42を構成する各圧電素子に所定の電圧が印加される。複数の圧電素子は、電極板44から入力された電位に応じて、絶縁基体12の一方端面12Aの側から他方端面12Bの側に向かう方向(図中上下方向)に沿って伸縮する。複数の圧電素子が積層されてなる圧電スタック42では、比較的大きな圧力が発生し、図中上下方向に沿って比較的大きく伸縮する。
【0050】
燃料噴射ノズル50は、例えばSUS等からなる筒状部材50aの内部に、圧電アクチュエータ40、およびピストン部60が収納された構成とされている。筒状部材50aは
、圧電アクチュエータ40における端子ブレード17に対応する部位が開口しており、外部電源と接続された図示しないコネクタが、端子ブレード17と接続される。このコネクタから端子ブレード17に印加された電圧は、導体ピン13、導電板15、および電極板44を介して圧電スタック42に伝わる。
【0051】
筒状部材50aの下方側の端面には、ダイヤフラム66がレーザ溶接等によって接合されている。また、筒状部材50aの内部には、印加する電圧の変化により伸縮する圧電スタック42の下方側の端面に当接して摺動するピストン63が収容されている。ダイヤフラム66に隣接して、中央に貫通穴64aを有する板状のシート部材64が、筒状部材50aの軸芯方向に直交するように接合されている。そして、このシート部材64の貫通穴64aには、ピストン63のロッド部63aが摺動自在に貫通されている。このロッド部63aの端部は、ダイヤフラム66に当接されており、圧電スタック42によって駆動されたピストン63の変位をダイヤフラム66に伝えるように構成されている。また、ロッド部63aの外周側における、ピストン63とシート部材64との間に配置されたバネ56は、ピストン63を圧電スタック42に向けて付勢するように配置されている。
【0052】
かかる燃料噴射ノズル50では、コネクタ部材1を介して圧電スタック42へ通電された電気信号に応じて、圧電スタック42が軸方向に伸縮して、ダイヤフラム6の中央部が上下に変位する。燃料噴射ノズル50は、例えばディーゼルエンジン等のコモンレー装着されて、ダイアフラム6の上下動にともないエンジンシリンダ内に燃料が噴射されるよう構成される。本実施形態の圧電アクチュエータ、および燃料噴射ノズルでは、圧電スタック42の動作によって絶縁基体12の他方端面12Bの側に比較的大きな圧力がかかった場合でも、絶縁基体12と導電板15との接合部分におけるクラック等の発生が、比較的少なくされている。また、導電板15の第1側面15Cと電極板44との接合強度も比較的高く、この導電板15と電極板44との接合不良も発生し難い。本実施形態の燃料噴射ノズルは、蓄圧される燃料が比較的高圧になっても、燃料噴射動作を比較的精確に実施させることが可能になる。
【0053】
なお、本発明は上記の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 コネクタ部材
12 絶縁基体
12 絶縁基体
12A 一方端面
12C 側面
11 導体部
12A 一方端面
12B 他方端面
12C 側面
12b 貫通孔
14 切欠部
14B 底面
14C 内壁面
15 導体板
15A 対向主面
15B 露出側主面
15C 第1側面
15D 第2側面
40 圧電アクチュエータ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状の絶縁部材と、
少なくとも一部が前記絶縁部材の内部を通り、前記絶縁基体の一方端面および前記絶縁基体の周面に少なくとも一部が露出した導体部と、を備えて構成されたコネクタ部材であって、
前記絶縁部材は、他方端面の周縁に、前記他方端面と垂直な内壁面を内面の一部に備える凹部が設けられており、
前記導体部は、前記凹部に配置された端子と、前記絶縁部材の内部を通り前記端子から前記一方端面に向かって延在し、前記絶縁部材の前記一方端面から少なくとも一部が露出した導体ピンと、を有して構成されており、
前記端子は、前記絶縁部材の前記周面に露出した外側面と、前記凹部の前記内壁面と対向する内側面とを備え、
前記端子の前記内側面の周縁部には面取部が形成されており、
金属ロウを介して、前記端子と前記凹部の内壁面とが接合されていることを特徴とするコネクタ部材。
【請求項2】
前記金属ロウは、前記凹部の前記内側面、および前記端子の前記面取部を被覆することを特徴とする請求項1記載のコネクタ部材。
【請求項3】
前記端子の前記外側面の周縁部にも、前記内側面の周縁部の面取部よりも小さい面取部が形成されていることを特徴とする請求項1または2記載のコネクタ部材。
【請求項4】
前記凹部は、前記他方端面と略平行な底面を備えるとともに、前記端子は前記底面と対向する主面を備え、
前記凹部の底面と、前記端子の前記対向面とが、前記金属ロウ層を介して接合されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のコネクタ部材。
【請求項5】
前記凹部の内面に前記貫通孔の開口が形成されており、
前記端子は貫通孔を備え、
前記凹部の内面の前記開口から突出した前記導体ピンの一部が、前記端子の前記貫通孔に挿通されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のコネクタ部材。
【請求項6】
前記絶縁部材は、
前記他方端面を含む第一の絶縁基体と、
前記第一の絶縁基体と当接した、前記一方端面を含む第二の絶縁基体と、
を備えて構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のコネクタ部材。
【請求項7】
前記第一部材は、前記他方端面と反対の側の面に凹部を備え、
前記第二部材の前記一方端面と反対の側の端部の一部が、前記凹部内に配置されていることを特徴とする請求項6記載のコネクタ部材。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のコネクタ部材と、
前記端子の前記外側面と接合する電極板と、
前記導体ピンに入力された電気信号を前記電極板を介して受け取り、前記電気信号に応じて動作する圧電素子と、を備えて構成された圧電アクチュエータ。
【請求項9】
前記電極板が、前記端子の前記外側面と溶接接合されていることを特徴とする請求項8記載の圧電アクチュエータ。
【請求項10】
前記電極板は、前記一方端面から前記他方端面に向かう方向に沿って延在し、
前記圧電素子は、前記電極板の延在方向に沿って複数積層されており、
複数の圧電素子が前記電極板と各々電気的に接続されていることを特徴とする請求8または9記載の圧電アクチュエータ。
【請求項11】
前記絶縁基体の前記他方端面と、前記圧電素子の端面と、が当接されていることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の圧電アクチュエータ。
【請求項12】
請求項8〜11のいずれかに記載の圧電アクチュエータと、
前記圧電アクチュエータの動作に応じて開閉する制御弁と、を備え、
前記制御弁の開閉によって、圧力容器に貯留された噴射の噴射動作を制御する燃料噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−9187(P2011−9187A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38968(P2010−38968)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】