説明

コネクタ

【課題】嵌合及び抜去が可能なコネクタと相手方コネクタを備えたコネクタ組立体を使用する際に、再利用可能な相手方コネクタには不要な部材を残さずにコネクタの再利用を確実に防ぐ。
【解決手段】ストッパー36の固定端40はハウジング30の後端33上方に固定され、可動端41が端子収容孔31内の前端32付近で固定端40より下方に位置するように取り付けられている。端子収容孔31内部の幅方向両側には制御部37が設けられ、制御部37は揺動部51と揺動部51を揺動可能に支持する支持部50を有している。揺動部51の最上端には上方を向いた載置面52が設けられ、2つの載置面52上には可動端41の幅方向両端が載置されている。可動端41が載置面52上に載置されている状態では、ストッパー36が弾性的に可動端41を下方に付勢している。当接面53は端子収容孔31の幅方向内側を向く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関し、特に、相手方コネクタとの再嵌合を防止する機能を備えるコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
医療機器などに用いられるコネクタは、衛生上の理由などによって一度使用して抜去した後、再度同じコネクタを嵌合できないようにすることが望ましい場合がある。
【0003】
特許文献1には、再接続できない構造をもったコネクタが開示されている。具体的には、開示されたコネクタは第1のハウジングと第1のハウジングの一部を収容した第2のハウジングとを備え、第1のハウジングと第2のハウジングの間には圧縮したバネ片が挟まれている。嵌合時には第2のハウジングのみが相手方コネクタと係合した状態となる。抜去時には第1のハウジングが第2のハウジングから離脱して第2のハウジングが相手方コネクタ側に残るため再嵌合することができなくなる。更に、第2のハウジングのバネ片が延びることによって第1のハウジングを再度第2のハウジングに結合することができなくなる。
【0004】
【特許文献1】特開2005−150015号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のコネクタでは、相手方コネクタに第2のハウジングが残るため抜去時には、コネクタ及び相手方コネクタの双方が使用不能となる。更に、第1のハウジングと第2のハウジングを予め結合するように製造しておかなければならないため、製造工程が煩雑となる。
【0006】
本発明は、嵌合及び抜去が可能なコネクタと相手方コネクタを備えたコネクタ組立体であって、再利用可能な相手方コネクタには不要な部材を残さずにコネクタの再利用を確実に防ぐことができるコネクタ組立体を提供し、更に、当該コネクタ組立体を構成するコネクタと相手方コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1のコネクタは押圧部を有する相手方コネクタと嵌合するコネクタであって、ハウジングとストッパーと制御部とを備える。ハウジングは、押圧部を受け入れる経路を規定する。ストッパーは、可動端を有し可動端を経路に向かう所定方向に弾性的に付勢する。制御部は、揺動部と支持部とを有する。揺動部は、可動端を載置して経路外に保持する載置面と、押圧部に当接するように経路中に配設された当接面とをもっている。支持部は、当接面が押圧部に押圧されたとき可動端が載置面から外れる位置まで揺動部を移動させるように揺動部を支持する。
【0008】
第2のコネクタは第1のコネクタにおいて支持部が揺動部を弾性的に支持している。
【0009】
第3のコネクタは第1又は第2のコネクタにおいて経路から押圧部が抜去された後、ストッパーの先端部が経路中で停止する。
【0010】
第4のコネクタは第1から第3のコネクタのいずれかにおいて経路を挟むように配設された2つの制御部を備える。
【0011】
第5のコネクタは第4のコネクタにおいて当接面が上位面と上位面より載置面から遠くに配設された下位面とを有し、2つの制御部の並び方向における下位面の間隔が上位面の間隔より広い。
【0012】
第6のコネクタは第5のコネクタにおいて上位面と下位面との間に傾斜面を更に有し、2つの制御部の並び方向における傾斜面の間隔が上位面から下位面に向かうにつれて広くなっている。
【0013】
相手方コネクタは第4から第6のいずれかのコネクタと嵌合し、押圧部が主部と主部から突設され経路に先に挿入される補助部とを有し、経路で2つの制御部の並び方向に沿った補助部の幅が主部の幅よりも狭い。
【0014】
コネクタ組立体は押圧部を有する相手方コネクタと、請求項1から請求項6のいずれかのコネクタとを備え、経路に挿入された押圧部が当接面を押圧すると可動端が載置面から外れて押圧部に当接し、押圧部が経路から抜去されると可動端が経路内に移動する。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、嵌合及び抜去が可能なコネクタと相手方コネクタを備えたコネクタ組立体を使用する際に、再利用可能な相手方コネクタには不要な部材を残さずにコネクタの再利用を確実に防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1の斜視図に示すように本実施形態のコネクタ組立体10は、相手方コネクタ11とコネクタ12で構成されている。なお、本実施形態で用いる各方向は説明の便宜上規定したものである。
【0017】
図2は図1の2−2線に沿って前後方向及び上下方向に広がる平面で切断した相手方コネクタ11の断面図である。図3は図2の3−3線に沿って前後方向及び幅方向に広がる水平面で切断した相手方コネクタ11の断面図である。
【0018】
図3に示すように相手方コネクタ11は相手方ハウジング20によってコネクタ収容孔21を規定している。コネクタ収容孔21は前端22側で幅方向及び上下方向に広がって開口し、後端23に向かって窪んでいる。
【0019】
コネクタ収容孔21の後方の最も奥には、前方に向かって水平に広がる板状の押圧部24が突設されている。押圧部24は、コネクタ収容孔21の幅方向両側及び上下方向両側の内面から離れて配設されている。押圧部24は主部25aと主部25aから前方に向かって突設された補助部25bとを有する。幅方向における補助部25bの幅は主部25aの幅より狭くなっている。
【0020】
主部25aは幅方向両側に前後方向に沿った側面26aを有し、補助部25bは幅方向両側に前後方向に沿った側面26bを有している。更に、主部25aは側面26aから側面26bに向かって幅が狭くなるように傾斜した押圧面26cを更に有している。
【0021】
図2に示すように押圧部24の下面27には相手方端子28が挿入保持される溝が形成され、下方に露出された複数の相手方端子28が保持されている。又、相手方端子28の先端は、押圧部24のコネクタ12との嵌合側端面から少し引っ込んだ位置に配設される。図3に示すように複数の相手方端子28は幅方向に並設されており、更に後端23から突出するように保持されている。図3に示すようにコネクタ収容孔21内には幅方向の両内面の前端にアーム係止用の窪み29が凹設されている。
【0022】
図4は前方からみたコネクタ12の正面図である。図5は図4の5−5線におけるコネクタ12の断面図である。図6は図5の6−6線に沿った水平面で切断したときのコネクタ12の断面図である。
【0023】
図4に示すようにコネクタ12はハウジング30によって端子収容孔31を規定している。端子収容孔31は前端32側で幅方向及び上下方向に広がって開口し、図5に示すように後端33側に向かって窪んだ形状をもつ。
【0024】
図5に示すように端子収容孔31の下方内面34には上方に露出した複数の端子35が保持されている。図6に示すように複数の端子35は下方内面34上で幅方向に並設されており、後端33から突出するように保持されている。
【0025】
図5に示すようにコネクタ12はハウジング30の後端33に固定されて端子収容孔31内に突出したストッパー36を備えている。図7の斜視図に示すようにストッパー36は単一の金属板を打ち抜いて曲げ加工することによって形成されている。ストッパー36は上方からみたとき略長方形状となるように形成されており、後方の平板状の固定端40と僅かに上方に反り返った前方の可動端41とを有し、固定端40を水平に固定したときに可動端41が固定端40より下方に配設されるように固定端40と可動端41の間にスロープ42が設けられている。図5に示すように固定端40はハウジング30の後端33上方に水平に固定されており、可動端41が端子収容孔31内の前端32付近で固定端40より下方に位置するように取り付けられている。
【0026】
図4に示すように端子収容孔31内部の幅方向両側には、ハウジング30と一体形成された制御部37が配設されている。図6に示すように各制御部37は、支持部50と揺動部51とを有する。支持部50は前後方向中央付近に固定された後端から前方に向けて延設されている。揺動部51は、支持部50の前端に形成され、支持部50の後端を支点として幅方向に揺動することができる。
【0027】
図8は揺動部51付近の斜視図である。図8に示すように揺動部51は載置面52と当接面53を有している。載置面52は、揺動部51の最上端で上方を向くように設けられている。2つの載置面52上にはストッパー36の可動端41の幅方向両端が載置されている。可動端41が載置面52上に載置されている状態では、ストッパー36が弾性的に可動端41を下方に付勢している状態となる。従って、揺動部51が動いて載置面52が可動端41から離れると、可動端41は下方に移動する。
【0028】
当接面53は端子収容孔31の幅方向内側を向くように配設されている。当接面53は最上部の上位面54、最下部の下位面55、及び、上位面54と下位面55の間をつなぐ中位面56を有している。2つの制御部37の上位面54の間隔は、下位面55の間隔よりも狭くなるように構成されている。中位面56は上位面54から下位面55に向かって傾斜しており、中位面56間の間隔は上位面54から下位面55に向かうにつれて広がる。
【0029】
図6に示すようにハウジング30の幅方向両外側には前端32から後方に向かって係止アーム38が延設されている。各係止アーム38の幅方向外側には外側に向けて係止突起39が突設されている。
【0030】
コネクタ組立体10の嵌合動作について説明する。図9に示すようにコネクタ12の制御部37の間に規定された経路に相手方コネクタ11の補助部25bのみを嵌合させた状態では揺動部51は動かない。
【0031】
更に嵌合を進めると押圧部24の傾斜した押圧面26cが制御部37の当接面53に当接し、徐々に揺動部51を幅方向外側に押しながら押圧部24が経路に挿入される。押圧された揺動部51が十分に移動してストッパー36の可動端41が載置面52から外れると、図10に示すようにストッパー36の弾性力によって可動端41が経路に向かって下がり相手方コネクタ11の押圧部24上に押し付けられる。補助部25bを設けることによって、可動端41が押圧部24を超えて一気に下方に移動することを防止できる。十分に嵌合すると主部25aの側面26aが当接面53を押した状態で揺動部51が停止する。
【0032】
本実施形態では、押圧部24が当接面53の上位面54を押圧するように構成されている。なお、押圧部24は当接面53の下位面55又は傾斜面56を押圧するように構成されたものであってもよい。嵌合時に載置面52から外れて押圧部24上に移動した可動端41は、嵌合を解除する際に上方に戻らないように当接面53の下位面55又は傾斜面56に配設されることが好ましいが、押圧部24が下位面55のみに当接するように形成されていることがなお好ましい。
【0033】
コネクタ12が相手方コネクタ11に完全に嵌合すると、図9の端子35が相手方端子28に接触した状態となり、係止アーム38の係止突起39が相手方ハウジング20の窪み29に係止される。係止アーム38をつまんで係止突起39を窪み29からはずすと、コネクタ12を相手方コネクタ11から引き抜くことができる。
【0034】
完全に嵌合した後、図11に示すように相手方コネクタ11の押圧部24をコネクタ12の端子収容孔31内の経路から引き抜いて嵌合を解除すると、ストッパー36の弾性力によって可動部41がさらに下がる。可動部41が下方に移動するときに制御部37の傾斜した中位面46が可動部41を確実に下方に案内するため可動部41が上方に戻ることを防ぐことができる。最終的に可動部41は押圧部24の上下方向中心に当接可能な位置まで移動する。従って、嵌合を解除した後にコネクタ12を再び相手方コネクタ11に嵌合させようとすると、押圧部24が経路中のストッパー36に当接するため嵌合することができなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本実施形態のコネクタ組立体の斜視図である。
【図2】図1の相手方コネクタの2−2断面図である。
【図3】図2の相手方コネクタの3−3断面図である。
【図4】図1のコネクタの正面図である。
【図5】図4のコネクタの5−5断面図である。
【図6】図5のコネクタの6−6断面図である。
【図7】図5のストッパーの斜視図である。
【図8】図4のコネクタの部分斜視図である。
【図9】図3の相手方コネクタと図6のコネクタの嵌合途中の断面図である。
【図10】図2の相手方コネクタと図5のコネクタの嵌合完了時の断面図である。
【図11】嵌合を解除した状態における図10のコネクタ組立体の断面図である。
【符号の説明】
【0036】
10 コネクタ組立体
11 相手方コネクタ
12 コネクタ
20 相手方ハウジング
21 コネクタ収容孔
22 前端
23 後端
24 押圧部
25a 主部
25b 補助部
26a 側面
26b 側面
26c 押圧面
27 下面
28 相手方端子
29 窪み
30 ハウジング
31 端子収容孔
32 前端
33 後端
34 下方内面
35 端子
36 ストッパー
37 制御部
38 係止アーム
39 係止突起
40 固定端
41 可動端
42 スロープ
50 支持部
51 揺動部
52 載置面
53 当接面
54 上位面
55 下位面
56 傾斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押圧部を有する相手方コネクタと嵌合するコネクタであって、
ハウジングとストッパーと制御部とを備え、
前記ハウジングは、前記押圧部を受け入れる経路を規定し、
前記ストッパーは、可動端を有し前記可動端を前記経路に向かう所定方向に弾性的に付勢し、
前記制御部は、揺動部と支持部とを有し、
前記揺動部は、前記可動端を載置して前記経路外に保持する載置面と、前記押圧部に当接するように前記経路中に配設された当接面と、をもち、
前記支持部は、前記当接面が前記押圧部に押圧されたとき前記可動端が前記載置面から外れる位置まで前記揺動部を移動させるように前記揺動部を支持する
コネクタ。
【請求項2】
前記支持部は、前記揺動部を弾性的に支持している、
請求項1のコネクタ。
【請求項3】
前記経路から前記押圧部が抜去された後、前記ストッパーの先端部は前記経路中で停止する、
請求項1又は請求項2のコネクタ。
【請求項4】
前記経路を挟むように配設された2つの前記制御部を備える、
請求項1から請求項3のいずれかのコネクタ。
【請求項5】
前記当接面は、上位面と前記上位面より前記載置面から遠くに配設された下位面とを有し、2つの前記制御部の並び方向における前記下位面の間隔が前記上位面の間隔より広い、
請求項4のコネクタ。
【請求項6】
前記上位面と前記下位面との間に傾斜面を更に有し、
2つの前記制御部の並び方向における前記傾斜面の間隔は、前記上位面から前記下位面に向かうにつれて広くなる、
請求項5のコネクタ。
【請求項7】
請求項4から請求項6のいずれかのコネクタと嵌合する前記相手方コネクタであって、
前記押圧部は、主部と前記主部から突設され前記経路に先に挿入される補助部とを有し、
前記経路で2つの前記制御部の並び方向に沿った前記補助部の幅は、前記主部の幅よりも狭い、
相手方コネクタ。
【請求項8】
押圧部を有する相手方コネクタと、請求項1から請求項6のいずれかのコネクタとを備えるコネクタ組立体であって、
前記経路に挿入された前記押圧部が前記当接面を押圧すると前記可動端が前記載置面から外れて前記押圧部に当接し、前記押圧部が前記経路から抜去されると前記可動端が前記経路内に移動する、
コネクタ組立体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−99432(P2009−99432A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−270866(P2007−270866)
【出願日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(000231073)日本航空電子工業株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】