説明

コネクタ

【課題】高周波信号に対するグランドとしての効果を高めることができるコネクタを提供すること。
【解決手段】相手コネクタ2Aに嵌合して接続されるコネクタ3Aにおいて、グランド層111A、絶縁層112A、及び導電層113Aを順次有する回路基板11Aを備える。導電層113Aは、相手コネクタ2Aの信号回路SC2と接触可能な信号回路SC1と、相手コネクタ2Aのグランド回路GC2と接触可能なグランド回路GC1とを備える。グランド回路GC1とグランド層111Aとを導通する導通層114A−1が、グランド回路GC1の相手コネクタ2A側に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相手コネクタに嵌合して接続されるコネクタに関し、特に平衡伝送用コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
データの伝送の方式としては、データ毎に一本の電線を使用する通常の伝送方式と、データ毎に対をなす二本の電線を使用して、伝送すべき+信号とこの+信号とは大きさが等しく逆向きの−信号とを同時に伝送する平衡伝送方式がある。平衡伝送方式は、通常の伝送方式に比べてノイズの影響を受けにくいという利点を有しており、信号を高速で伝送する分野において多く採用されている。
【0003】
図1は、従来の平衡伝送用コネクタ装置を概略的に示す斜視図である。図2は、プラグコネクタ2とジャックコネクタ3との対向する面の構造を概略的に示す図である。平衡伝送用コネクタ装置1は、プラグコネクタ2とジャックコネクタ3とよりなる。プラグコネクタ2は、バックプレーン(外部基板)4に実装してあり、ジャックコネクタ3は、ドータボード(外部基板)5の端に実装してある。プラグコネクタ2とジャックコネクタ3とが接続されて、コネクタ装置1によってバックプレーン4とドータボード5とが電気的に接続される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
プラグコネクタ2は、図1、図2に示すように、複数の信号コンタクト対252と、信号コンタクト対252毎に設けられる逆L字状の複数のグランドコンタクト258と、複数の信号コンタクト対252及び複数のグランドコンタクト258を支持するU字状の絶縁性ハウジング8とを備える。複数の信号コンタクト対252は、行方向(X1−X2方向)及び列方向(Z1−Z2方向)に格子状に整列されている。各信号コンタクト対252は、正負対称波形の信号を伝えるための信号コンタクト254、256から構成され、その信号コンタクト254、256は列方向に並んでいる。各グランドコンタクト258は、水平板部258−1と垂直板部258−2とから構成され、対応する信号コンタクト対252のX1側とZ1側を覆っている。各水平板部258−1はハウジング8の裏側まで延在しており、端子部となっている。
【0005】
ジャックコネクタ3は、図1、図2に示すように、絶縁性ハウジング6と、複数のモジュール10と、複数のグランド板(シールド板)111とを備える。絶縁性ハウジング6は、プラグコネクタ2の信号コンタクト254、256に対応する開口62−1、62−2と、プラグコネクタ2のグランドコンタクト258に対応する逆L字形状のスリット62−3とを備える。複数のモジュール10は行方向に並んでいる。各モジュール10は、4つの信号コンタクト対152を備える。4つの信号コンタクト対152は、列方向に並んでいる。各信号コンタクト対152は、正負対称波形の信号を伝えるための信号コンタクト154、156から構成され、その信号コンタクト154、156は列方向に並んでいる。隣り合うモジュール10の間には、複数のグランド板111が1つずつ配置される。
【0006】
図3は、プラグコネクタ2とジャックコネクタ3との電気的接続部分を概略的に示す断面図である。プラグコネクタ2とジャックコネクタ3とは、ハウジング8がハウジング6に嵌合され、信号コンタクト254、256が開口62−1、62−2からハウジング6の内部に挿入され信号コンタクト154、156と接触されることによって、電気的に接続される。このとき、グランドコンタクト258がスリット62−3からハウジング6の内部に挿入され、垂直板部258−2が一方の信号コンタクト対252と他方の信号コンタクト対152との電気的接続部分のX1側に配置され、水平板部258−1が電気的接続部分のZ1側に配置される。
【0007】
この構成によれば、プラグコネクタ2とジャックコネクタ3との接続部分において、隣り合う信号対()の間にグランドコンタクト258又はグランド板111が配置されるので、隣り合う信号の間のクロストークを抑制することができ、信号を高速で伝送することができる。
【特許文献1】特開平5−275139号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1記載の構成では、プラグコネクタ2とジャックコネクタ3とを接続した場合に、グランドコンタクト258とグランド板111とが互いに接触されないので、グランドコンタクト258の先端側やグランド板111の先端側が伝送経路の行き止まりの部分(スタブ)となる。従って、高周波信号に対するグランドとしての効果が弱く、グランド電位の変動などの問題が生じることがある。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、高周波信号に対するグランドとしての効果を高めることができるコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、本発明は、相手コネクタに嵌合して接続されるコネクタにおいて、
グランド層、絶縁層、及び導電層を順次有する回路基板を備え、
前記導電層は、前記相手コネクタの信号回路と接触可能な信号回路と、前記相手コネクタのグランド回路と接触可能なグランド回路とを備え、
前記グランド回路と前記グランド層とを導通する導通層が、前記グランド回路の前記相手コネクタ側に設けられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高周波信号に対するグランドとしての効果を高めることができるコネクタを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【0013】
図4は、本発明の平衡伝送用コネクタ装置の一実施例を示す斜視図である。実施例の各図において、Y1−Y2はプラグコネクタ2Aとジャックコネクタ3Aとの接続方向、Z1−Z2はジャックコネクタ3Aのドータボード5Aへの実装方向、X1−X2はY1−Y2方向及びZ1−Z2方向に直交する方向を示す。尚、実施例の各図において、図1−図3に示す構成と対応する構成には添え字を付した同一の符号を付す。
【0014】
平衡伝送用コネクタ装置1Aは、プラグコネクタ2Aとジャックコネクタ3Aとからなる。プラグコネクタ2Aはバックプレーン(外部基板)4Aに実装してあり、ジャックコネクタ3Aはドータボード(外部基板)5Aの端に実装してある。プラグコネクタ2Aとジャックコネクタ3Aとが接続されて、コネクタ装置1Aによってバックプレーン4Aとドータボード5Aとが電気的に接続される。
【0015】
以下、各コネクタ2A、3Aの構成について説明していくが、先ず、ジャックコネクタ3Aの構成について説明し、次いで、プラグコネクタ2Aの構成について説明し、最後に、プラグコネクタ2Aとジャックコネクタ3Aとの接続部分について説明する。
【0016】
図5は、ジャックコネクタ3Aを分解して示す斜視図である。ジャックコネクタ3Aは、第1絶縁性ハウジング6Aと、第2絶縁性ハウジング7Aと、複数のモジュール10Aとを備える。
【0017】
第1絶縁性ハウジング6Aは、相手コネクタ2Aの絶縁性ハウジング8Aを嵌合するものである。第1絶縁性ハウジング6Aには、相手コネクタ2Aの複数の回路基板21Aに対応する複数の開口部62Aが形成してある。ジャックコネクタ3Aと相手コネクタ2Aとは、ハウジング6Aがハウジング8A内に嵌合され、相手コネクタ2Aの各回路基板21Aが対応する開口部62Aからハウジング6Aの内部に挿入されてジャックコネクタ3Aの対応する回路基板11Aと接触されることによって、電気的に接続される。
【0018】
第2絶縁性ハウジング7Aは、第1絶縁性ハウジング6Aを支持すると共に、複数のモジュール10Aを互いに平行に支持するものである。第2絶縁性ハウジング7Aは、複数のスリット72Aを備え、複数のスリット72Aは、X1−X2方向に並ぶように形成される。各スリット72Aには、複数のモジュール10Aが1つずつ組み込まれる。
【0019】
各モジュール10Aは、複数の接続パッド16Aを備える回路基板11Aと、複数のリード12Aと、複数の半田層17Aと、絶縁性のスペーサ13Aとを備える。複数のリード12Aは、回路基板11Aを外部基板5Aに電気的に接続可能なものである。各リード12Aと対応する接続パッド16Aとの間には、複数の半田層17Aが1つずつ配置されており、半田層17Aを介して、各リード12Aが対応する接続パッド16Aに固定されている。尚、回路基板11Aの詳細については、後述する。
【0020】
図6は、リード12Aと回路基板11Aとの接続部分を示す断面図である。回路基板11A上には、スペーサ13Aが固定されている。スペーサ13Aは、回路基板11Aと対向する面に、複数のガイド溝132Aを備える。各リード12は、対応するガイド溝132A内に収容されており、半田層17Aが溶融したとき、対応するガイド溝132A内を移動可能となる。半田層17Aには、例えば、Sn−Bi合金(融点約140℃)やSn−In合金(融点約190℃)が用いられる。
【0021】
図7は、ジャックコネクタ3Aの外部基板5Aへの載置状態を示す断面図であり、(A)は正面から見た断面図、(B)は(A)のA−A線に沿った断面図である。外部基板5A上には、複数のリード12Aを接着するための半田ペースト19Aが塗布されている。図7に示す例では、外部基板5Aの面歪みに起因して、複数のリード12Aの一部と半田ペースト19Aとの間に間隙がある。半田ペースト19Aには、半田層17Aより高融点の材料が用いられてよく、例えば、Sn−Ag−Cu合金(融点約220℃)が用いられてよい。
【0022】
図8は、図7の熱処理後の状態を示す断面図であり、(A)は正面から見た断面図、(B)は(A)のA−A線に沿った断面図である。加熱により各半田層17Aが溶融すると、各リード12Aが外部基板5Aの面歪みを吸収するように対応するガイド溝132A内を移動する。よって、熱処理後にリード12Aを外部基板5Aに確実に接続することができる。
【0023】
図9は、回路基板11Aの構成を示す斜視図であり、(A)は全体図、(B)は(A)の領域Tの拡大図である。回路基板11Aは、図6、図9に示すように、グランド層111A、絶縁層112A、導電層113Aを順次備える。グランド層111A及び絶縁層112Aは、導電層113Aを略全面的に覆っており、グランド層111Aと導電層113Aとは、基本的に絶縁層112Aによって絶縁されている。尚、導電層113Aの詳細については後述する。回路基板11Aの製造方法は、一般的なものであってよく、フォトリソグラフィ技術やエッチング技術を用いる方法であってよい。
【0024】
図10は、回路基板11Aの製造方法を示す工程図である。図11は、図10の工程に続いて、回路基板11Aの製造方法を示す工程図である。図10、図11に示す例では、最初に、リン青銅製の金属板111A上に感光性のポリイミドインクを塗布、乾燥して絶縁層112Aを形成する(図10(A))。次いで、フォトマスクを用いて絶縁層112Aを露光し、現像する(図10(B))。次いで、スパッタリングによりNi−W膜51Aを積層し(図10(C))、電解めっきによりCu膜52Aを積層する(図10(D))。次いで、フォトレジストパターン53Aを形成する(図11(E))。このフォトレジストパターン53Aを用いてCu膜52A及びNi−W膜51Aをエッチングする(図11(F))。最後に、フォトレジストパターン53Aを除去し、Cu膜52A及びNi−W膜51Aからなる導電層113A及び後述の導通層114Aを形成する(図11(G))。
【0025】
尚、本実施例の回路基板11Aは、金属板111A上に絶縁層112A、導電層113A等が順次形成された3層構造であるが、絶縁基板112Aの一方の主面にグランド層111Aを形成し絶縁基板112Aの他方の主面に導電層113Aを形成した3層構造であってもよい。いずれの場合であっても、フォトリソグラフィ技術やエッチング技術を用いる方法によって導電層113Aを形成することにより、導電層113Aの微細化、薄肉化をすることができ、ひいてはコネクタ3Aを小型化することができる。
【0026】
導電層113Aは、図9に示すように、相手コネクタ2Aの信号回路SC2(図16参照)と接触可能な信号回路SC1と、相手コネクタ2Aのグランド回路GC2(図16参照)と接触可能なグランド回路GC1とを備える。
【0027】
信号回路SC1は、相手コネクタ2A側(Y1側)にZ1−Z2方向に一列に並ぶように形成される4つの信号用接続パッド対152Aと、外部基板5A側(Z2側)にY1−Y2方向に一列に並ぶように形成される4つの信号用接続パッド対162Aと、両者をつなぐ4つの信号用配線対142Aとを備える。
【0028】
各信号用接続パッド対152Aは、正負対称波形の信号を伝送する一対の信号用接続パッド154A、156Aからなる。一対の信号用接続パッド154A、156Aは、Z1−Z2方向に並ぶように形成されている。各信号用接続パッド154A、156Aは、先端が二叉に分岐したフォーク形状である。
【0029】
各信号用接続パッド対162Aは、正負対称波形の信号を伝送する一対の信号用接続パッド164A、166Aからなる。一対の信号用接続パッド164A、166Aは、Y1−Y2方向に並ぶように形成されている。各信号用接続パッド164A、166Aは、矩形状である。
【0030】
各信号用配線対142Aは、正負対称波形の信号を伝送する一対の信号用配線144A、146Aからなる。一方の信号用配線144Aは、Y1側の信号用接続パッド154AとZ2側の信号用接続パッド164Aとの両者をつなぎ、他方の信号用配線146Aは、Y1側の信号用接続パッド156AとZ2側の信号用接続パッド166Aとの両者をつなぐ。
【0031】
一方、グランド回路GC1は、相手コネクタ2A側(Y1側)にZ1−Z2方向に一列に並ぶように形成される4つのグランド用接続パッド158Aと、外部基板5A側(Z2側)にY1−Y2方向に一列に並ぶように形成される4つのグランド用接続パッド168Aとを備える。
【0032】
4つのグランド用接続パッド158Aは、隣り合う信号用接続パッド対152Aの間に1つずつ形成され、信号用接続パッド対152A毎にZ1側(又はZ2側)に1つずつ形成される。各グランド用接続パッド158Aは、信号用接続パッド154A、156Aと略同一形状であって、先端が二叉に分岐したフォーク形状である。
【0033】
4つのグランド用接続パッド168Aは、隣り合う信号用接続パッド対162Aの間に1つずつ形成され、信号用接続パッド対162A毎にY1側(又はY2側)に1つずつ形成される。各グランド用接続パッド168Aは、信号用接続パッド164A、166Aと略同一形状であって、矩形状である。
【0034】
尚、本実施例の説明において、相手コネクタ2A側(Y1側)に設置される、信号用接続パッド154A、156A及びグランド用接続パッド158Aを特に区別しない場合には、接続パッド15Aと称す。また、外部基板5A側(Z2側)に設置される、信号用接続パッド164A、166A及びグランド用接続パッド168Aを特に区別しない場合には、接続パッド16Aと称す。
【0035】
図12は、グランド回路GC1とグランド層111Aとの伝送経路を示す断面図であって、(A)は図9のA−A線に沿った断面図、(B)は図9のB−B線に沿った断面図である。図12において、矢印F1は伝送経路を示し、矢印S1、S2は伝送経路F1の行き止まりの部分(スタブ)を示す。図12に示すように、グランド回路GC1とグランド層111Aとの間には、導通層114Aが設けられる。この導通層114Aは、図12に示すように、絶縁層112Aの外縁に設けられてもよいし、絶縁層112Aを貫通して設けられてもよい。
【0036】
導通層114Aは、その特徴的な構成として、グランド回路GC1の相手コネクタ2A側(Y1側)に設けられる。例えば、導通層114A−1は、図12に示すように、グランド用接続パッド158Aの相手コネクタ2A側(Y1側)に設けられる。これにより、伝送経路F1の相手コネクタ2A側(Y1側)のスタブS1を狭めることができる。その結果、高速伝送においても、グランド電位の変動などを抑制することができ、高周波信号に対するグランドとしての効果を高めることができる。
【0037】
また、導通層114Aは、グランド回路GC1の相手グランド回路GC2(相手コネクタ2Aのグランド回路GC2)との接触部位C1又はその近傍に更に設けられてもよい。例えば、導通層114A−2は、図12に示すように、グランド用接続パッド158Aの相手グランド用接続パッド258Aとの接触部位C1近傍に設けられる。これにより、接触部位C1(相手コネクタ2A)とグランド層111Aとの間の伝送経路を短くすることができる。その結果、高速伝送においても、グランド電位の変動などを抑制することができ、高周波信号に対するグランドとしての効果を高めることができる。
【0038】
この導通層114A−2は、図12に示すように、接触部位C1近傍であって、接触部位C1を基準として相手コネクタ2Aとは反対側(Y2側)に設けられてもよい。これにより、接触部位C1(相手コネクタ2A)とグランド層111Aとの間の最短伝送経路の伝送方向を順方向に(一方向に)することができ、伝送特性を高めることができる。
【0039】
更に、導通層114Aは、グランド回路GC1の外部基板側5A(Z2側)に設けられてもよい。例えば、導通層114A−3は、図12に示すように、グランド用接続パッド168Aの外部基板5A側(Z2側)に設けられる。これにより、伝送経路F1の外部基板5A側のスタブS2を狭めることができ、高周波信号に対するグランドとしての効果を高めることができる。
【0040】
更にまた、導通層114Aは、グランド回路GC1のリード12Aとの接触部位C2又はその近傍に設けられてもよい。例えば、導通層114A−4は、図12に示すように、グランド用接続パッド168A近傍に設けられる。これにより、接触部位C2(リード12A)とグランド層111Aとの最短伝送経路を増やすことができ、高周波信号に対するグランドとしての効果を高めることができる。
【0041】
次に、プラグコネクタ2Aの構成について説明する。図13は、プラグコネクタ2Aの構成を概略的に示す断面図である。図14は、図13の領域Tの拡大図である。図15は、絶縁性ハウジング8Aの構成を示す斜視図である。図16は、回路基板21Aの構成を示す図であり、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【0042】
プラグコネクタ2Aは、絶縁性ハウジング8Aと、複数の接続パッド26Aをそれぞれ備える複数の回路基板21Aと、複数のリード22Aとを備える。絶縁性ハウジング8Aには、図13−図15に示すように、複数のスリット82AがX1−X2方向に並ぶように形成され、各スリット82Aには、複数の回路基板21Aが互いに平行に1つずつ組み込まれる。
【0043】
複数のリード22Aは、回路基板21Aを外部基板4Aに電気的に接続可能なものである。各リード22Aと対応する接続パッド26Aとの間には、複数の半田層27Aが1つずつ配置されており、半田層27Aを介して、各リード22Aが対応する接続パッド26Aに固定されている。
【0044】
ハウジング8Aは、図13−図15に示すように、スリット82Aの内面に、複数のガイド溝84Aを備える。各リード22Aは、対応するガイド溝84A内に収容されており、対応する半田層27Aが溶融したとき、対応するガイド溝84A内を移動可能となる。よって、相手コネクタ3Aの場合と同様に、加熱により各半田層27Aが溶融すると、各リード22Aが外部基板4Aの面歪みを吸収するように対応するガイド溝84A内を移動する。よって、熱処理後にリード22Aを外部基板4Aに確実に接続することができる。
【0045】
回路基板21Aは、図14、図16に示すように、グランド層211A、絶縁層212A、導電層213Aを順次備える。グランド層211A及び絶縁層212Aは、導電層213Aを略全面的に覆っており、グランド層211Aと導電層213Aとは、基本的に絶縁層212Aによって絶縁されている。尚、導電層213Aの詳細については後述する。回路基板21Aの製造方法は、回路基板11Aと同様に、フォトリソグラフィ技術やエッチング技術を用いる方法であってよい。
【0046】
導電層213Aは、図16に示すように、相手コネクタ3Aの信号回路SC1(図9参照)と接触可能な信号回路SC2と、相手コネクタ3Aのグランド回路GC1(図9参照)と接触可能なグランド回路GC2とを備える。
【0047】
信号回路SC2は、相手コネクタ3A側(Y2側)にZ1−Z2方向に一列に並ぶように形成される4つの信号用接続パッド対252Aと、外部基板4A側(Y1側)にZ1−Z2方向に一列に並ぶように形成される4つの信号用接続パッド対262Aと、両者をつなぐ4つの信号用配線対242Aとを備える。
【0048】
各信号用接続パッド対252Aは、正負対称波形の信号を伝送する一対の信号用接続パッド254A、256Aからなる。一対の信号用接続パッド254A、256Aは、Z1−Z2方向に並ぶように形成されている。各信号用接続パッド254A、256Aは、矩形状である。
【0049】
各信号用接続パッド対262Aは、正負対称波形の信号を伝送する一対の信号用接続パッド264A、266Aからなる。一対の信号用接続パッド264A、266Aは、Z1−Z2方向に並ぶように形成されている。各信号用接続パッド264A、266Aは、矩形状である。
【0050】
各信号用配線対242Aは、正負対称波形の信号を伝送する一対の信号用配線244A、246Aからなる。一方の信号用配線244Aは、Y2側の信号用接続パッド254AとY1側の信号用接続パッド264Aとの両者をつなぎ、他方の信号用配線246Aは、Y2側の信号用接続パッド256AとY1側の信号用接続パッド266Aとの両者をつなぐ。
【0051】
一方、グランド回路GC2は、相手コネクタ3A側(Y2側)にZ1−Z2方向に一列に並ぶように形成される4つのグランド用接続パッド258Aと、外部基板4A側(Y1側)にZ1−Z2方向に一列に並ぶように形成される4つのグランド用接続パッド268Aと、両者をつなぐ4つのグランド用配線248Aとを備える。
【0052】
4つのグランド用接続パッド258Aは、隣り合う信号用接続パッド対252Aの間に1つずつ形成され、信号用接続パッド対252A毎にZ1側(又はZ2側)に1つずつ形成される。各グランド用接続パッド258Aは、信号用接続パッド254A、256Aよりも相手コネクタ3A側(Y2側)に突出する矩形状である。
【0053】
4つのグランド用接続パッド268Aは、隣り合う信号用接続パッド対262Aの間に1つずつ形成され、信号用接続パッド対262A毎にZ1側(又はZ2側)に1つずつ形成される。各グランド用接続パッド268Aは、信号用接続パッド264A、266Aと略同一形状であって、矩形状である。
【0054】
尚、本実施例の説明において、相手コネクタ3A側(Y2側)に設置される、信号用接続パッド254A、256A及びグランド用接続パッド258Aを特に区別しない場合には、接続パッド25Aと称す。また、外部基板4A側(Y1側)に設置される、信号用接続パッド264A、266A及びグランド用接続パッド268Aを特に区別しない場合には、接続パッド26Aと称す。
【0055】
図17は、グランド回路GC2とグランド層211Aとの伝送経路を示す断面図であって、(A)は図16のA−A線に沿った断面図、(B)は図16のB−B線に沿った断面図である。図17において、矢印F2は伝送経路を示し、矢印S3、S4は伝送経路F2の行き止まりの部分(スタブ)を示す。図17に示すように、グランド回路GC2とグランド層211Aとの間には、導通層214Aが設けられる。この導通層214Aは、図17に示すように、絶縁層212Aの外縁に設けられてもよいし、絶縁層212Aを貫通して設けられてもよい。
【0056】
導通層214Aは、その特徴的な構成として、グランド回路GC2の相手コネクタ3A側(Y2側)に設けられる。例えば、導通層214A−1は、図17に示すように、グランド用接続パッド258Aの相手コネクタ3A側(Y2側)に設けられる。これにより、伝送経路F2の相手コネクタ3A側(Y2側)のスタブS3を狭めることができる。その結果、高速伝送においても、グランド電位の変動などを抑制することができ、高周波信号に対するグランドとしての効果を高めることができる。
【0057】
また、導通層214Aは、グランド回路GC2の相手グランド回路GC1(相手コネクタ3Aのグランド回路GC1)との接触部位C3又はその近傍に更に設けられてもよい。例えば、導通層214A−2は、図17に示すように、グランド用接続パッド258Aの相手グランド用接続パッド158Aとの接触部位C3近傍に設けられる。これにより、接触部位C3(相手コネクタ3A)とグランド層211Aとの間の伝送経路を短くすることができる。その結果、高速伝送においても、グランド電位の変動などを抑制することができ、高周波信号に対するグランドとしての効果を高めることができる。
【0058】
この導通層214A−2は、図17に示すように、接触部位C3近傍であって、接触部位C3を基準として相手コネクタ3Aとは反対側(Y1側)に設けられてもよい。これにより、接触部位C3(相手コネクタ3A)とグランド層211Aとの間の最短伝送経路の伝送方向を順方向に(一方向に)することができ、伝送特性を高めることができる。
【0059】
更に、導通層214Aは、グランド回路GC2の外部基板側4A(Y1側)に設けられてもよい。例えば、導通層214A−3は、図17に示すように、グランド用接続パッド268Aの外部基板4A側(Y1側)に設けられる。これにより、伝送経路F2の外部基板4A側のスタブS4を狭めることができ、高周波信号に対するグランドとしての効果を高めることができる。
【0060】
更にまた、導通層214Aは、グランド回路GC2のリード22Aとの接触部位C4又はその近傍に設けられてもよい。例えば、導通層214A−4は、図17に示すように、グランド用接続パッド268A近傍に設けられる。これにより、接触部位C4(リード22A)とグランド層211Aとの最短伝送経路を増やすことができ、高周波信号に対するグランドとしての効果を高めることができる。
【0061】
最後に、プラグコネクタ2Aとジャックコネクタ3Aとの接続部分について図18を参照して説明する。図18は、プラグコネクタ2Aとジャックコネクタ3Aとの接続部分を概略的に示す断面図である。プラグコネクタ2Aとジャックコネクタ3Aとは、プラグコネクタ2Aの接続パッド25Aがジャックコネクタ3Aの対応する接続パッド15Aと接触されることによって、電気的に接続される。
【0062】
このとき、信号用接続パッド154Aと相手信号用接続パッド254Aとが接触され、信号用接続パッド156Aと相手信号用接続パッド256Aとが接触され、グランド用接続パッド158Aと相手グランド用接続パッド258Aとが接触される。そして、隣り合う信号対(信号用接続パッド対152Aと相手信号用接続パッド対252Aとの各電気的接続部分)の間には、グランド用接続パッド158A、258Aやグランド層111A、211Aが配置される。これにより、隣り合う信号対の間のクロストークを抑制することができ、信号を高速で伝送することができる。
【0063】
更に、図16に示したように、グランド用接続パッド258は、信号用接続パッド254A、256Aよりも相手コネクタ3A側(Y2側)に突出する矩形状である。従って、プラグコネクタ2Aとジャックコネクタ3Aとを接続する際に、グランド用接続パッド258を信号用接続パッド254A、256Aよりも先に接触させることができる。これにより、静電気を先に放電することができるので、コネクタ装置1Aが搭載される機器システムを保護することができる。
【0064】
以上説明したように、本実施例のコネクタ3A(2A)によれば、グランド層111A(211A)とグランド回路GC1(GC2)とを導通する導通層114A−1(214A−1)がグランド回路GC1(GC2)の相手コネクタ2A(3A)側に設けられるので、伝送経路F1(F2)のスタブS1(S2)を狭めることができる。これにより、高速伝送においても、グランド電位の変動などを抑制することができ、高周波信号に対するグランドとしての効果を高めることができる。
【0065】
また、本実施例のコネクタ3A(2A)によれば、導通層114A−2(214A−2)がグランド回路GC1(GC2)の相手グランド回路GC2(GC1)との接触部位C1(C3)又はその近傍に更に設けられるので、相手コネクタ2A(3A)とグランド層111A(211A)との間の伝送経路を短くすることができる。これにより、高速伝送においても、グランド電位の変動などを抑制することができ、高周波信号に対するグランドとしての効果を高めることができる。
【0066】
更に、本実施例のコネクタ3A(2A)によれば、導通層114A−2(214A−2)が接触部位C1(C3)近傍であって接触部位C1(C3)を基準として相手コネクタ2A(3A)とは反対側に設けられるので、相手コネクタ2A(3A)とグランド層111A(211A)との間の最短伝送経路の伝送方向を順方向に(一方向に)することができ、伝送特性を高めることができる。
【0067】
更に、また、本実施例のコネクタ3A(2A)によれば、導通層114A−3(214A−3)がグランド回路GC1(GC2)の外部基板5A(4A)側に設けられるので、伝送経路の外部基板5A(4A)側のスタブを狭めることができる。これにより、高速伝送においても、グランド電位の変動などを抑制することができ、高周波信号に対するグランドとしての効果を高めることができる。
【0068】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0069】
例えば、上述した実施例では、導通層114A(214A)は、グランド回路GC1(GC2)の4箇所に設けられるとしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、導通層114A(214A)は、グランド回路GC1(GC2)の相手コネクタ2A(3A)側とグランド回路GC1(GC)の外部基板5A(4A)側との2箇所に設けられてもよい。
【0070】
また、上述した実施例において、グランド層111A(211A)から外部基板5A(4A)に向けて突出し、グランド層111A(211A)を外部基板5A(4A)に電気的に接続可能な端子部(図示せず)を設けてもよい。この場合、導通層114A(214A)は、グランド回路GC2の相手コネクタ2A側にのみ設けられてもよい。
【0071】
また、上述した実施例では、図7、図8に示したように、加熱により各半田層17A(27A)が溶融すると、各リード12A(22A)が外部基板5A(4A)の面歪みを吸収するように対応するガイド溝132A(84A)内を移動するとしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、コネクタ3A(2A)を外部基板5A(4A)に実装する際に、各半田層17A(27A)が溶融せずともよい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】従来の平衡伝送用コネクタ装置を概略的に示す斜視図である。
【図2】プラグコネクタ2とジャックコネクタ3との対向する面の構造を概略的に示す図である。
【図3】プラグコネクタ2とジャックコネクタ3との電気的接続部分を概略的に示す断面図である。
【図4】本発明の平衡伝送用コネクタ装置の一実施例を示す斜視図である。
【図5】ジャックコネクタ3Aを分解して示す斜視図である。
【図6】リード12Aと回路基板11Aとの接続部分を示す断面図である。
【図7】ジャックコネクタ3Aの外部基板5Aへの載置状態を示す断面図である。
【図8】図7の熱処理後の状態を示す断面図である。
【図9】回路基板11Aの構成を示す斜視図である。
【図10】回路基板11Aの製造方法を示す工程図である。
【図11】図10の工程に続いて、回路基板11Aの製造方法を示す工程図である。
【図12】グランド回路GC1とグランド層111Aとの伝送経路を示す断面図である。
【図13】プラグコネクタ2Aの構成を概略的に示す断面図である。
【図14】図13の領域Tの拡大図である。
【図15】絶縁性ハウジング8Aの構成を示す斜視図である。
【図16】回路基板21Aの構成を示す図である。
【図17】グランド回路GC2とグランド層211Aとの伝送経路を示す断面図である。
【図18】プラグコネクタ2Aとジャックコネクタ3Aとの接続部分を概略的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0073】
2A、3A コネクタ
4A、5A 外部基板
11A、21A 回路基板
12A、22A リード
111A、211A グランド層
112A、212A 絶縁層
113A、213A 導電層
114A、214A 導通層
15A、25A 接続パッド
152A、252A 信号用接続パッド対
154A、254A 信号用接続パッド
156A、256A 信号用接続パッド
158A、258A グランド用接続パッド
16A、26A 接続パッド
162A、262A 信号用接続パッド対
164A、264A 信号用接続パッド
166A、266A 信号用接続パッド
168A、268A グランド用接続パッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手コネクタに嵌合して接続されるコネクタにおいて、
グランド層、絶縁層、及び導電層を順次有する回路基板を備え、
前記導電層は、前記相手コネクタの信号回路と接触可能な信号回路と、前記相手コネクタのグランド回路と接触可能なグランド回路とを備え、
前記グランド回路と前記グランド層とを導通する導通層が、前記グランド回路の前記相手コネクタ側に設けられるコネクタ。
【請求項2】
前記導通層が、前記グランド回路の前記相手コネクタの前記グランド回路との接触部位又は前記接触部位近傍に更に設けられる請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記導通層が、前記接触部位近傍であって、前記接触部位を基準として前記相手コネクタとは反対側に設けられる請求項2記載のコネクタ。
【請求項4】
前記回路基板を外部基板に電気的に接続可能なリードを備え、
前記導通層が、前記グランド回路の前記外部基板側に更に設けられる請求項1〜3いずれか一項記載のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−272318(P2010−272318A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−122494(P2009−122494)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(501398606)富士通コンポーネント株式会社 (848)
【Fターム(参考)】