説明

コネクタ

【課題】電気的に接続不良が発生し難い接続構造を有するコネクタを提供する。
【解決手段】接続部材9の頭部9bを隣接する絶縁プレート8aに押圧させるために、接続部材9の頭部9bを回動させるレバー52を有するレバー機構51を備え、レバー機構51は、オス側ターミナルハウジング5とメス側ターミナルハウジング7とを嵌合させる際に、オス側ターミナルハウジング5とメス側ターミナルハウジング7とが所定の嵌合状態に達したとき、接続部材9に対する複数の第1接続端子4a〜4c及び複数の第2接続端子6a〜6cを各接点にて一括して固定するための操作を許容する操作許容手段60を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ハイブリッド車、電気自動車などのエコカーに用いられ、特に、大容量の電力を伝達する際に用いられる電力ハーネスの接続部に採用される可能性があるコネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、著しい進歩を遂げている、例えば、ハイブリッド車、電気自動車などにおいて、モータとインバータとの間、又はインバータとバッテリとの間のように、機器間を接続する大容量の電力を伝達する際に用いられる電力ハーネスは、その一端側には、例えば、オス端子と該オス端子を収容する第1ターミナルハウジングを備えるオス側コネクタ部と、前記オス端子と接続されるメス端子と該メス端子を収容する第2ターミナルハウジングを備えるメス側コネクタ部との2分割構成のコネクタが備えられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
近年、こうしたエコカーは、省エネの性能を向上させることを目的に、全ての部品において軽量化が図られているが、軽量化を図る上で有効な手段の1つに、小型化を図るという目的に突き当たる。
【0004】
そこで、公知技術として、例えば、特許文献2のような技術がある。
【0005】
特許文献2に示された技術は、車両駆動用のモータから引き出される複数相の導電性部材の接続端子と、モータを駆動するインバータから引き出される複数相の電力線ケーブルの接続端子とを接続する車両用電気接続構造において、導電性部材の各相の接続端子と、対応する電力線ケーブルの各相の接続端子とが重合されると共に、接続端子の重合面とは反対側の面に絶縁部材が配置され、これら重合された各相の接続端子と絶縁部材とがこれらを貫く位置に設けられた単一のボルトで重合方向に締結固定される技術である。
【0006】
即ち、特許文献2の技術は、単一のボルトを重合方向に締め付けることで、接続端子の重合面である接続端子同士の接点を、複数点、一括して挟み込むことにより、接続端子同士を接点にて固定し電気的に接続される接続構造であるが、この様な構成は、特許文献1のような技術に比べ、小型化を図り易いという点において有効である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−070754号公報
【特許文献2】特許第4037199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2のような構造には、以下の問題があった。
【0009】
特許文献2のような構造では、接続端子が所定の位置に挿入されていない状態においても、ボルトで締め付けることができるため、電気的に接続不良が発生する可能性があった。特に、大容量の電力を伝達する際に用いられる電力ハーネスにおいては、こうした接続不良は安全性の面からも無くすべきであり、対策が望まれていた。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑み為されたもので、複数の第1接続端子と複数の第2接続端子と複数の絶縁プレートとが積層状態となるように配置される接続構造を有するコネクタにおいて、接続端子同士が所定の位置に配置されたときにしか、容易に接続部材によって各接点を押圧することができないようにすることで、電気的に接続不良が発生し難い接続構造を有するコネクタの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、複数の第1接続端子が整列されて収納されるオス側ターミナルハウジングと、複数の第2接続端子が整列されて収納されるメス側ターミナルハウジングと、前記オス側ターミナルハウジング内に整列されて収納される複数の絶縁プレートとを備え、前記オス側ターミナルハウジングと前記メス側ターミナルハウジングとを嵌合させると、前記複数の第1接続端子のそれぞれと前記複数の第2接続端子のそれぞれとが対となるように対面すると共に、複数の第1接続端子と複数の第2接続端子と複数の絶縁プレートとが積層状態となるように配置される接続構造を有するコネクタにおいて、頭部によって隣接する前記絶縁プレートを押圧することで、前記複数の第1接続端子及び前記複数の第2接続端子を各接点にて一括して固定し電気的に接続させる接続部材と、該接続部材の頭部を隣接する前記絶縁プレートに押圧させるために、前記接続部材の頭部を回動させるレバーを有するレバー機構とを備え、前記レバー機構は、前記オス側ターミナルハウジングと前記メス側ターミナルハウジングとを嵌合させる際に、前記オス側ターミナルハウジングと前記メス側ターミナルハウジングとが所定の嵌合状態に達したとき、前記接続部材に対する前記複数の第1接続端子及び前記複数の第2接続端子を各接点にて一括して固定するための操作を許容する操作許容手段を含むコネクタである。
【0012】
前記複数の第1接続端子及び前記複数の第2接続端子を各接点にて一括して固定する操作が、前記レバーを解除位置から固定位置に一の回動方向に回動させる操作であり、前記操作許容手段は、前記オス側ターミナルハウジングに形成されたレバー係合用リブと、前記レバーに形成され、前記解除位置にて前記レバー係合用リブに係合し、前記レバーの前記解除位置から一の回動方向への回動を規制するランスと、前記メス側ターミナルハウジングに形成され、前記オス側ターミナルハウジングと前記メス側ターミナルハウジングとを嵌合させ、前記オス側ターミナルハウジングと前記メス側ターミナルハウジングとが所定の嵌合状態に達した際に、前記レバー係合用リブに係合している前記ランスを押し上げて、前記レバー係合用リブと前記ランスの係合を解除し、前記レバーを解除位置から固定位置に一の回動方向に回動させる操作を許容する係合解除用リブとからなってもよい。
【0013】
前記レバーには、前記解除位置にて前記レバー係合用リブに当接し、前記レバーの解除位置から他の回動方向への回動を規制する第1回り止めリブが形成されてもよい。
【0014】
前記メス側ターミナルハウジングには、前記固定位置にて前記レバーに当接し、前記レバーの前記固定位置から一の回動方向への回動を規制する第2回り止めリブが形成されてもよい。
【0015】
前記メス側ターミナルハウジングには、前記レバーを前記固定位置にて固定するロック機構が設けられてもよい。
【0016】
前記レバーは、前記接続部材と一体に回動する板状の部材からなり、前記接続部材を回動軸として、前記オス側ターミナルハウジングの一側に回動自在に設けられてもよい。
【0017】
前記オス側ターミナルハウジングには、前記レバーの前記オス側ターミナルハウジングと反対側の面に当接し、前記レバーと前記接続部材が前記オス側ターミナルハウジングから抜けてしまうことを防止する抜け防止用リブが形成されてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、複数の第1接続端子と複数の第2接続端子と複数の絶縁プレートとが積層状態となるように配置される接続構造を有するコネクタにおいて、接続端子同士が所定の位置に配置されたときにしか、容易に接続部材によって各接点を押圧することができないので、電気的に接続不良が発生し難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施の形態に係るコネクタを示す図であり、(a)はレバーを解除位置としたときの斜視図、(b)はその平面図、(c)はその側断面図である。
【図2】(a)は図1のコネクタにおいてレバーを固定位置としたときの斜視図、(b)は平面図、(c)は側断面図である。
【図3】図1のコネクタにおける第1コネクタ部を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は側断面図である。
【図4】図3の第1コネクタ部における第1接続端子を示す図であり、(a)は側面図、(b)は下面図である。
【図5】図3の第1コネクタ部の要部拡大側面図であり、接続部材の頭部に形成された突起が螺旋溝にガイドされることを説明する図である。
【図6】図1のコネクタにおける第2コネクタ部を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は側断面図である。
【図7】第2接続端子を示す図であり、(a)は側面図、(b)は下面図である。
【図8】第2接続端子を示す図であり、(a)は側面図、(b)は下面図である。
【図9】図1のコネクタの分解斜視図である。
【図10】図1のコネクタにおけるレバーを示す図であり、(a)は表面側から見た斜視図、(b)は裏面側から見た斜視図である。
【図11】図3の第1コネクタ部の要部拡大正面図であり、レバーを解除位置としたときに、レバーのランスがレバー係合用リブに係合することを説明する図である。
【図12】図1のコネクタの要部拡大側面図である。
【図13】(a),(b)は、図1のコネクタの要部拡大側面図であり、係合解除用リブがレバー係合用リブとランスの係合を解除する様子を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0021】
図1,2は本実施の形態に係るコネクタを示す図であり、図1(a)〜(c)は、レバーを解除位置としたときの斜視図、平面図、および側断面図、図2(a)〜(c)は、レバーを固定位置としたときの斜視図、平面図、および側断面図である。
【0022】
図1,2に示すように、本実施の形態に係るコネクタ1は、第1コネクタ部2と第2コネクタ部3とで構成され、これらコネクタ部2,3を嵌合させることで、複数の電源ラインを一括して接続するためのものである。
【0023】
より具体的には、コネクタ1は、複数(3つ)の第1接続端子(オス端子)4a〜4cが整列されて収納されるオス側ターミナルハウジング5を有する第1コネクタ部2と、複数(3つ)の第2接続端子(メス端子)6a〜6cが整列されて収納されるメス側ターミナルハウジング7を有する第2コネクタ部3と、オス側ターミナルハウジング5内に整列されて収納される複数の絶縁プレート8a〜8dとを備え、第1コネクタ部2のオス側ターミナルハウジング5と第2コネクタ部3のメス側ターミナルハウジング7とを嵌合させると、複数の第1接続端子4a〜4cのそれぞれと複数の第2接続端子6a〜6cのそれぞれとが対(第1接続端子4aと第2接続端子6a、第1接続端子4bと第2接続端子6b、第1接続端子4cと第2接続端子6cの各対)となるように対面すると共に、複数の絶縁プレート8a〜8dが対となる第1接続端子4a〜4c及び第2接続端子6a〜6cを挟むように配置される積層状態となるものである。即ち、本実施の形態に係るコネクタ1は、第1コネクタ部2のオス側ターミナルハウジング5と第2コネクタ部3のメス側ターミナルハウジング7とを嵌合させると、複数の第1接続端子4a〜4cと複数の第2接続端子6a〜6cと複数の絶縁プレート8a〜8dとが積層状態となるように配置されるコネクタである。
【0024】
このコネクタ1は、例えば、車両駆動用のモータと該モータを駆動するインバータとの接続に用いられる。
【0025】
より具体的には、第1コネクタ部2のオス側ターミナルハウジング5(図1(c)で言えば、左側の部分)がモータのシールドケースと嵌合すると共にオス側ターミナルハウジング5から露出している第1接続端子4a〜4cの部分がモータのシールドケース内に設置される端子台の各端子に接続される。この第1コネクタ部2にインバータと電気的に接続されている第2コネクタ部3を嵌合させることで、モータとインバータとが電気的に接続されることになる。以上がモータ側の接続に関してだが、インバータ側の接続に関しても、同様である。
【0026】
以下、コネクタ部2,3のそれぞれの構成について詳述する。
【0027】
[第1コネクタ部]
まず、第1コネクタ部2について説明する。
【0028】
図3(a),(b)に示すように、第1コネクタ部2は、内部に3つの第1接続端子4a〜4cを所定間隔で離間された状態で整列させて保持しており、3つの第1接続端子4a〜4cが整列されて収納するオス側ターミナルハウジング5と、オス側ターミナルハウジング5内に設けられ第1接続端子4a〜4cのそれぞれを絶縁する略直方体形状の複数の絶縁プレート8a〜8dと、頭部9bによって隣接する絶縁プレート8aを押圧することで、複数の第1接続端子4a〜4c及び複数の第2接続端子6a〜6cを各接点にて一括して固定し電気的に接続させる接続部材9とを備える。
【0029】
第1接続端子4a〜4cは、板状の端子であり、絶縁性樹脂(例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、PPA(ポリフタルアミド)樹脂、PA(ポリアミド)樹脂、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、エポキシ系樹脂)からなり、オス側ターミナルハウジング5の一部である樹脂成形体10に所定間隔で離間されて整列保持される。樹脂成形体10に第1接続端子4a〜4cを保持させる方法としては、例えば、樹脂成形体10の成形時に第1接続端子4a〜4cをインサートしてから樹脂を硬化させて保持させる方法や、予め成形した樹脂成形体10に第1接続端子4a〜4cを圧入して保持させる方法がある。
【0030】
第1接続端子4a〜4cのそれぞれには、異なる電圧及び/又は電流の電気が送電される。例えば、本実施の形態においては、モータ、インバータ間用の三相交流の電源ラインを想定しており、第1接続端子4a〜4cのそれぞれには、120°位相の異なる交流が送電される。第1接続端子4a〜4cのそれぞれは、コネクタ1での送電ロスを低減するなどの目的のために、導電率の高い銀、銅、アルミニウムなどの金属で構成されると良い。また、第1接続端子4a〜4cのそれぞれは、多少の可撓性を有する。
【0031】
複数の絶縁プレート8a〜8dは、オス側ターミナルハウジング5内に整列されて収納されると共に複数の第1接続端子4a〜4cの一面(第2接続端子6a〜6cと接合される面と反対側の面)のそれぞれに一体的に固定される複数の第1絶縁プレート8a〜8cと、オス側ターミナルハウジング5の内面に一体的に固定されて設けられると共に複数の第1接続端子4a〜4cと複数の第2接続端子6a〜6cとが積層状態となったときに最外に位置する第2接続端子6cの一面(第1接続端子4cと接合される面と反対側の面)と対向するように設けられる第2絶縁プレート8dとからなる。
【0032】
複数の絶縁プレート8a〜8dは、第1接続端子4a〜4cの先端側に突出するような位置に固定される。これら絶縁プレート8a〜8dのそれぞれは、第2接続端子6a〜6cが挿抜される側の角部のそれぞれが面取り加工されている。
【0033】
また、図4(a),(b)に示すように、複数の第1絶縁プレート8a〜8cの第1接続端子4a〜4cに固定される面のそれぞれには、第1接続端子4a〜4cとの段差を補う突起部(肉盛り面)11が形成され、複数の第1絶縁プレート8a〜8cの下面(図示下側の面)が第1接続端子4a〜4cの下面(図示下側の面)と同一面となるようにされる。これらの構成により、第1コネクタ部2と第2コネクタ部3とを嵌合する際、第1接続端子4a〜4cの先端部が挿入される第2接続端子6a〜6cの先端部と接触しないため、第2接続端子6a〜6cにおける挿入性が向上するという効果がある。なお、図4(a)では、第1絶縁プレート8aの構造を簡略化し、第1絶縁プレート8a〜8cを同じように描いている。
【0034】
再び図3を参照し、接続部材9は、隣接する第1絶縁プレート8aを押圧する押圧部としての円柱状の頭部9bと、頭部9bと一体に形成され、頭部9bの第1絶縁プレート8aと反対側の面(以下、単に上面という)から上方に突出するレバー取り付け部9aとを備える。
【0035】
接続部材9としては、例えば、SUS、鉄、銅合金などの金属からなるものを用いるとよい。なお、接続部材9として樹脂製のものを用いてもよいが、強度の観点からは、金属製のものを用いることが好ましい。
【0036】
レバー取り付け部9aは、頭部9bの上面の略中央部から上方に突出する断面視で長円形状(2つの直線と、両直線の端部同士を繋ぐ円弧状の2つの曲線とからなる形状)の基端部9cと、その基端部9cからさらに上方に突出する円柱状の軸部9dとからなる(図9参照)。軸部9dには、Cリング57を嵌め込むための溝9eが周方向に沿って形成される。
【0037】
頭部9bは円柱状に形成され、頭部9bの側面には、径方向外側に突出する2つの突起9fが形成される(図2(c)、図5参照)。2つの突起9fは、頭部9bの側面の対向した位置に形成される。この突起9fは、後述する接続部材挿入孔26の螺旋溝26aに挿入される。
【0038】
接続部材9の頭部9bの外周には、オス側ターミナルハウジング5内に水が浸入するのを防止するパッキン14が設けられる。また、接続部材9の頭部9bの下面とその直下の第1絶縁プレート8aの上面との間には、第1絶縁プレート8aに所定の押圧力を付与する弾性部材15が設けられる。本実施の形態では、頭部9bの下面に凹部9gを形成し、この凹部9gに弾性部材15の上部を収納するようにした。これは、弾性部材15の長さがある程度長い場合であっても、頭部9bと第1絶縁プレート8a間の間隔を短くし、コネクタ1を小型化するための工夫である。弾性部材15は、金属(例えば、SUSなど)製のバネで構成される。なお、本実施の形態において、弾性部材15は、接続部材9の一部という位置付けである。
【0039】
弾性部材15の下部が当接する第1絶縁プレート8aの上面には、弾性部材15の下部を覆う(収納する)凹部16が形成され、凹部16の底部(即ち、弾性部材15の下部が当接する座の部分)には、弾性部材15を受けて絶縁性樹脂からなる第1絶縁プレート8aの損傷を防止する金属(例えば、SUSなど)製の受け部材17が設けられる。
【0040】
受け部材17は、弾性部材15から第1絶縁プレート8aの上面に加わる応力を分散することで第1絶縁プレート8aの損傷を防止する。そのため、受け部材17と第1絶縁プレート8aとの接触面積をできるだけ大きくすることが好ましい。本実施の形態では、受け部材17と第1絶縁プレート8aとの接触面積を大きくすべく、凹部16の底部全面に亘って接触するような形状の受け部材17を設けた。
【0041】
オス側ターミナルハウジング5は、横断面が略矩形状の中空の筒状体20からなる。メス側ターミナルハウジング7と嵌合される筒状体20の一端側(図3(b)では右側)の外周部は、第2コネクタ部3との嵌合性を考慮してテーパ形状に形成されている。また、筒状体20の一端側の外周部には、第1コネクタ部2と第2コネクタ部3との間をシールするターミナルハウジング防水構造21が設けられる。ターミナルハウジング防水構造21は、筒状体20の開口側の外周部に形成された凹部22と、凹部22に設けられたOリングなどのパッキン23とからなる。
【0042】
筒状体20内の他端側(図3(b)では左側)には、第1接続端子4a〜4cのそれぞれが整列保持された樹脂成形体10が収納される。筒状体20の他端側の外周には、第1コネクタ部2を機器などの筐体(例えば、モータのシールドケース)に固定するためのフランジ24が形成される。フランジ24は、四隅に取付孔24aを有しており、取付孔24aに図示しないボルトを挿入し機器などの筐体に固定される。フランジ24の縁周部25には、機器などの筐体と第1コネクタ部2との間をシールするパッキンなどを設けるようにしても良い。なお、このフランジ24という構成は、第1コネクタ部2が機器などの筐体に固定されることを前提とするものではなく、フランジ24は第2コネクタ部3に設けられていても良いし、第1コネクタ部2と第2コネクタ部3の両方に設けられていても良い。また、第1コネクタ部2と第2コネクタ部3のどちらも機器などの筐体に固定されないフリーの状態としても良い。
【0043】
また、このフランジ24は、放熱性を向上させる点においても有効である。つまり、フランジ24を形成することによりオス側ターミナルハウジング5の表面積を大きくすることができ、第1コネクタ部2の内部で発生した熱(例えば、各接点で発生した熱)をオス側ターミナルハウジング5を介して外部に放熱する際において、放熱性を向上させることができる。
【0044】
筒状体20は、シールド性能、放熱性、及びコネクタ1の軽量化のために、導電率、熱伝導率が高く軽量なアルミニウムなどの金属で形成されることが好ましいが、樹脂などにより形成するようにしても良い。オス側ターミナルハウジング5を絶縁性樹脂で形成する場合には、第2絶縁プレート8dとオス側ターミナルハウジング5を絶縁性樹脂により一体成形してもよい。なお、本実施の形態においては、筒状体20をアルミニウムで形成した。この様に、筒状体20をアルミニウムで形成することにより、接続部材9をネジ穴19に螺合させる際、筒状体20を絶縁性樹脂で形成する場合と比べ、強固に締め付けることができるという効果がある。
【0045】
筒状体20の上部(図3(b)では上側)には、接続部材9を挿入するための接続部材挿入孔26が形成される。接続部材挿入孔26の周縁のオス側ターミナルハウジング5は筒状(中空円筒状)に形成されており、その筒状のオス側ターミナルハウジング5を貫通するように、接続部材9の頭部9bの突起9fをガイドする螺旋状の螺旋溝26aが形成される。
【0046】
図5に示すように、接続部材9は、図示上側(第1絶縁プレート8a〜8cが固定される第1接続端子4a〜4cの面側)からオス側ターミナルハウジング5内に挿入される。頭部9bの突起9fを螺旋溝26aに収容した状態で、頭部9bを回動させると、突起9fが螺旋溝26aにガイドされて頭部9bの回動と共に頭部9bが下方に移動し、接続部材9の頭部9bが弾性部材15を介して隣接する絶縁プレート8aを押圧(図3(b)で言えば、上方から下方に向けて押圧)し、複数の第1接続端子4a〜4c及び複数の第2接続端子6a〜6cを各接点にて一括して固定し電気的に接続させる。
【0047】
本実施の形態では、頭部9bを接続部材挿入孔26に挿入(突起9fを螺旋溝26aに挿入)した後、頭部9bを上面視で反時計回り方向に90度回動させることで、複数の第1接続端子4a〜4c及び複数の第2接続端子6a〜6cを各接点にて一括して固定するように構成している。つまり、コネクタ1では、頭部9bを90度回動させることで、各接点を固定・解除することができる。詳細は後述するが、接続部材9を接続部材挿入孔26に挿入した状態(図1(a)〜(c)の状態)が各接点を固定しない解除位置、その解除位置から頭部9bを90度回動させた状態(図2(a)〜(c)の状態)が各接点を一括して固定する固定位置に対応する。
【0048】
[第2コネクタ部]
次に、第2コネクタ部3について説明する。
【0049】
図6(a),(b)に示すように、第2コネクタ部3は、内部に複数(3つ)の第2接続端子(メス端子)6a〜6cが整列されて収納されるメス側ターミナルハウジング7を有する。
【0050】
第2接続端子6a〜6c一端側のそれぞれには、インバータ側からのびたケーブル27a〜27cが接続されている。これらケーブル27a〜27cのそれぞれは、第1接続端子4a〜4cのそれぞれに第2接続端子6a〜6cを介して電気的に接続されるため、第1接続端子4a〜4cのそれぞれに対応する電圧及び/又は電流の電気がそれぞれ送電される。ケーブル27a〜27cは、導体28の外周に絶縁層29を形成してなる。本実施の形態においては、断面積が20mm2の導体28を用いた。
【0051】
ケーブル27a〜27cのそれぞれは、多連筒状(複数の筒が連なっている状態のこと)のケーブル保持部材30によって所定間隔で離間されて整列保持される。このケーブル保持部材30によって第2接続端子6a〜6cのそれぞれは、第1コネクタ部2と第2コネクタ部3とを嵌合させたときに、第2接続端子6a〜6cのそれぞれと対となるように対面する(即ち、接続対象の)第1接続端子4a〜4cのそれぞれの下方に位置するように位置決めして保持される。
【0052】
ケーブル保持部材30は、第2接続端子6a〜6cのそれぞれを互いに絶縁して短絡を防止すべく、絶縁性樹脂などからなる。このケーブル保持部材30により、第2接続端子6a〜6cのそれぞれに接続されたケーブル27a〜27cのそれぞれが可撓性に優れたケーブルであっても、第2接続端子6a〜6cのそれぞれを所定の位置に保持することができる。つまり、本実施の形態では、ケーブル27a〜27cとして可撓性に優れたケーブルを用いることができるので、ケーブル27a〜27cを敷設する際の配線自由度を向上できる。
【0053】
なお、ケーブル保持部材30は、ケーブル27a〜27cを保持することで、より詳しくは、第2接続端子6a〜6cに近い位置であってケーブル27a〜27cの端部側を保持することで、第2接続端子6a〜6cを所定の位置に保持するべく、第2接続端子6a〜6cの位置決めを行っているが、ケーブル27a〜27cを保持すると共に第2接続端子6a〜6cも直接保持して、第2接続端子6a〜6cの位置決めを行っても良い。また、ケーブル保持部材30に変えて、ケーブル27a〜27cを保持しないで、第2接続端子6a〜6cを直接保持する接続端子保持部材であっても良い。
【0054】
ケーブル保持部材30に関し、第2接続端子6a〜6cを直接保持しないで、ケーブル27a〜27cを保持することで、第2接続端子6a〜6cの位置決めを行っている場合、即ち、本実施の形態のような場合、ケーブル27a〜27cを可撓性があるものにすることにより、第2接続端子6a〜6cの先端側がメス側ターミナルハウジング7に対して柔軟性を持たせることができるようになる。このように構成することにより、第1コネクタ部2において、接続部材9の押圧により、第1接続端子4a〜4cが変形し、たとえ、第2接続端子6a〜6cが挿入する部分が変わっても、柔軟に対応することができる。
【0055】
また、メス側ターミナルハウジング7から引き出されたケーブル27a〜27cの部分には、シールド性能の向上を目的とした図示しない編組シールドが巻き付けられている。この編組シールドは、後述する筒状シールド体41と接触され、筒状シールド体41を介してオス側ターミナルハウジング5に電気的に接続されている(同電位(GND)とされている)。
【0056】
第2接続端子6a〜6cのそれぞれは、図7,8に示すように、ケーブル27a〜27cの先端部から露出された導体28をかしめるためのかしめ部32と、かしめ部32と一体に形成された板状接点33とを有する。
【0057】
本実施の形態においては、コネクタ1の小型化のためにケーブル27a〜27cのそれぞれができるだけ隙間無く整列保持される構成としている。そのため、図8に示すように、整列時に中央に配置されるケーブル27bに接続される第2接続端子6bの胴部35を折り曲げることにより、第2接続端子6a〜6cを同じ間隔で離間させて配置するようにした。
【0058】
第2接続端子6a〜6cのそれぞれは、コネクタ1での送電ロスを低減するなどの目的のために、導電率の高い銀、銅、アルミニウムなどの金属で構成されると良い。また、第2接続端子6a〜6cのそれぞれは、多少の可撓性を有する。
【0059】
再び図6を参照し、メス側ターミナルハウジング7は、横断面が略矩形状の中空の筒状体36からなる。メス側ターミナルハウジング7内にオス側ターミナルハウジング5が嵌合されるため、オス側ターミナルハウジング5と嵌合される筒状体36の一端側(図6(b)では左側)の内周部は、オス側ターミナルハウジング5との嵌合性を考慮してテーパ形状に形成されている。
【0060】
筒状体36の他端側(図6(b)では右側)には、ケーブル27a〜27cのそれぞれを整列保持するケーブル保持部材30が収納される。ケーブル保持部材30のケーブル挿入側には図示しないパッキンレス気密部が形成され、ケーブル27a〜27cを伝ってメス側ターミナルハウジング7内に水が浸入するのを防止するようになっている。ケーブル保持部材30の外周部には、オス側ターミナルハウジング5の内周面に当接するパッキン38が設けられる。つまり、コネクタ1は、ターミナルハウジング防水構造21のパッキン23とケーブル保持部材30の外周部に設けられたパッキン38による二重防水構造となっている。
【0061】
さらに、ケーブル27a〜27cが引き出される筒状体36の他端側の外周には、図示していないが、筒状体36内への水の浸入を防止するゴムブーツが被せられている。
【0062】
また、筒状体36の上部(図6(b)では上側)には、第2コネクタ部3と第1コネクタ部2とを嵌合させたときに、第1コネクタ部2に設けられる接続部材9を避けるための切欠き40が形成される。切欠き40は、筒状体36の一端側が開口するU字状に形成され、第2コネクタ部3と第1コネクタ部2とを嵌合させたときに、接続部材9の頭部9bが切欠き40内に収容される。
【0063】
筒状体36は、シールド性能、放熱性、及びコネクタ1の軽量化のために、導電率、熱伝導率が高く軽量なアルミニウムなどの金属で形成されることが好ましいが、樹脂などにより形成するようにしても良い。本実施の形態においては、筒状体36を絶縁性樹脂により形成したため、そのシールド性能、放熱性を向上させるために筒状体36の他端側の内周面にアルミニウム製の筒状シールド体41を設けている。
【0064】
筒状シールド体41は、第1コネクタ部2と第2コネクタ部3とを嵌合させたときにアルミニウム製のオス側ターミナルハウジング5の外周に接触する接触部42を有し、この接触部42を介してオス側ターミナルハウジング5と熱的及び電気的に接続される。これにより、シールド性能と放熱性を向上させている。特に、放熱性については、放熱性に優れるオス側ターミナルハウジング5側に積極的に熱を逃がすことで著しい向上が見込まれる。
【0065】
[レバー機構]
次に、本発明の特徴部分であるレバー機構について説明する。
【0066】
図9に示すように、本実施の形態に係るコネクタ1は、接続部材9の頭部9bを隣接する絶縁プレート8aに押圧させるために、接続部材9の頭部9bを回動させるレバー52を有するレバー機構51を備えている。
【0067】
レバー52は、接続部材9と一体に回動する板状の部材からなり、接続部材9を回動軸として、オス側ターミナルハウジング5の一側(図9では上側)に回動自在に設けられる所謂片持ちのレバーである。レバー52を片持ちのレバーとすることで、コネクタ1全体を挟むようにして2箇所の回動軸で支持される所謂両持ちのレバーと比較して、レバー52の占有するスペースをより小さくでき、コネクタ1全体の小型化が可能となる。
【0068】
図10(a),(b)に示すように、レバー52の裏面には、接続部材9のレバー取り付け部9aの基端部9cを嵌合する長円形状の凹部53が形成され、その凹部53の底壁には、軸部9dを通すための貫通孔54が形成される。本実施の形態では、凹部53を形成する位置のレバー52の表面側から突出するように凸部55を形成し、その凸部55の内部にまで凹部53を形成することで、凹部53の深さを深くし、レバー52を基端部9cにしっかりと嵌合させるようにしている。
【0069】
なお、基端部9cと凹部53とを長円形状に形成するのは、レバー52を回動させたときに、接続部材9をレバー52と一体に回動させるための工夫であるが、基端部9cと凹部53の形状は長円形状に限られず、レバー52と接続部材9とが一体に回動可能であればどのような形状でもよく、例えば楕円形や多角形状など、任意の形状としてもよい。レバー52の貫通孔54から上方に突出した軸部9dの溝9eには、レバー52が接続部材9から抜けてしまうことを防ぐためのCリング57が取り付けられる。
【0070】
レバー52は、上面視で略長方形状(四隅を丸めた長方形状)に形成されており、凹部53および貫通孔54は、その長方形状の短辺と平行な方向(図10(a)では右手前から左奥の方向;以下、短辺方向という)における略中央部で、かつ、長辺と平行な方向(図10(a)では左手前から右奥の方向;以下、長辺方向という)における一端側(図10(a)では右奥側)に偏った位置に形成される。つまり、レバー52の回動軸となる接続部材9の軸部9dは、レバー52に対して長辺方向に偏心した位置に取り付けられる。
【0071】
接続部材9は、レバー52を、図1(a)〜(c)に示す解除位置から、図2(a)〜(c)に示す固定位置に一の回動方向(ここでは反時計回りに方向)に90度回動させることにより、これに伴って接続部材9の頭部9bを90度回動させ、複数の第1接続端子4a〜4c及び複数の第2接続端子6a〜6cを各接点にて一括して固定するようにされる。
【0072】
図1(a)〜(c)に示すように、レバー52は、解除位置においては、その短辺方向が嵌合方向(図1(b)では左右方向)と揃うようにされ、長辺方向における他端部(凹部53と貫通孔54が形成された一端側と反対側の端部、図1(b)では下側の部分)が、上面視でメス側ターミナルハウジング7の側方に突出するようにされている。
【0073】
レバー52の回動操作は、この突出した部分のレバー52を指などで押し、レバー52を一の回動方向(反時計回り方向)に回動させることで行われる。レバー52は、フランジ24とレバー52との間に指を入れ易くしレバー52を操作し易くするために、レバー52の解除位置における長辺方向の他端側で、かつ短辺方向におけるフランジ24側の隅部を斜めに切り取ったような形状に形成され、その斜めに切り取った傾斜部56を指などで押すようにされている。
【0074】
図2(a)〜(c)に示すように、レバー52は、固定位置においては、その長辺方向が嵌合方向(図2(b)では左右方向)と揃うようにされる。つまり、固定位置は、図1(a)〜(c)の解除位置からレバー52を一の回動方向(反時計回り方向)に90度回動させた位置である。
【0075】
レバー52は、固定位置においては、上面視でメス側ターミナルハウジング7の側方に突出しないようにされている。つまり、本実施の形態では、レバー52は、その短辺方向の長さが、メス側ターミナルハウジング7の筒状体36の幅(図2(b)では上下方向の長さ)よりも小さくなるように形成されている。これにより、固定位置においてはメス側ターミナルハウジング7の側方にレバー52が突出しないので、コネクタ1全体の小型化に寄与する。また、レバー52がメス側ターミナルハウジング7の側方に突出しているか否かで、レバー52が固定位置にあるのか解除位置にあるのかを容易に判断できる。
【0076】
さて、本実施の形態に係るレバー機構51は、オス側ターミナルハウジング5とメス側ターミナルハウジング7とを嵌合させる際に、オス側ターミナルハウジング5とメス側ターミナルハウジング7とが所定の嵌合状態に達したとき、接続部材9に対する複数の第1接続端子4a〜4c及び複数の第2接続端子6a〜6cを各接点にて一括して固定するための操作(つまり、レバー52を解除位置から固定位置に回動させる操作)を許容する操作許容手段60を含む。
【0077】
操作許容手段60は、オス側ターミナルハウジング5に形成されたレバー係合用リブ61と、レバー52に形成され、解除位置にてレバー係合用リブ61に係合し、レバー52の解除位置から一の回動方向(ここでは反時計回り方向)への回動を規制するランス58と、メス側ターミナルハウジング7に形成され、オス側ターミナルハウジング5とメス側ターミナルハウジング7とを嵌合させ、オス側ターミナルハウジング5とメス側ターミナルハウジング7とが所定の嵌合状態に達した際に、レバー係合用リブ61に係合しているランス58を押し上げて、レバー係合用リブ61とランス58の係合を解除し、レバー52の解除位置から一の回動方向(反時計回り方向)への回動を許容する係合解除用リブ62とからなる。
【0078】
図10(b)に示すように、ランス58は、レバー52の裏面側に長辺方向に沿って形成された舌片58aと、その舌片58aの先端から下方(図10(b)では上方)に突出する突起58bとからなる。ランス58の突起58bは、レバー52の長辺方向における一端部(凹部53と貫通孔54を形成した側の端部)の周縁に位置するように形成される。このランス58では、突起58bをレバー52の裏面側から表面側(下方から上方)に押圧すると、舌片58aがしなって突起58bが上方に移動するようにされている。
【0079】
図5、図9、および図11に示すように、レバー係合用リブ61は、フランジ24と筒状体20に一体に固定される板状の基端部61aと、その基端部61aの上部(筒状体20と反対側の部分)をレバー52の裏面に沿って嵌合方向に延長した係合部61bとからなる。レバー係合用リブ61は、フランジ24や筒状体20と一体に形成されてもよいし、別体で形成し、その基端部61aをフランジ24と筒状体20に接合するようにしてもよい。図11に示すように、レバー52を解除位置とすると、レバー係合用リブ61の係合部61bには、ランス58の突起58bが係合される。
【0080】
レバー52には、図9〜12に示すように、解除位置にてレバー係合用リブ61の係合部61bに当接し、レバー52の解除位置から他の回動方向(ここでは時計回り方向)への回動を規制する第1回り止めリブ59が形成される。第1回り止めリブ59は、レバー52の裏面側から突出するように短辺方向に沿って形成されており、レバー52を解除位置としたときに、ランス58が係合する側と反対側の係合部61bに当接する。これにより、レバー係合用リブ61の係合部61bは、レバー52の裏面側から突出するランス58と第1回り止めリブ59で挟み込まれる形となり、レバー52は、解除位置から時計回り方向・反時計回り方向のどちらの方向にも回動できないように規制される。
【0081】
さらに、本実施の形態に係るコネクタ1では、解除位置においては接続部材9がオス側ターミナルハウジング5の上方に抜けてしまうので、この対策として、図9および図12に示すように、オス側ターミナルハウジング5に、レバー52の表面(オス側ターミナルハウジング5と反対側の面)に当接して、レバー52と接続部材9がオス側ターミナルハウジング5から抜けてしまうことを防止する抜け防止用リブ63を形成している。抜け防止用リブ63は、フランジ24の第2コネクタ部3側の面(図9では右手前側の面)から突出するように、フランジ24と一体に形成される。抜け防止用リブ63は、レバー52を固定位置から解除位置に回動させたときにレバー52に干渉しないよう、その側部(図9では左手前側の側部)がテーパ状に形成されている。
【0082】
図6(a),(b)に示すように、係合解除用リブ62は、メス側ターミナルハウジング7の筒状体36に形成された切欠き40の周縁に嵌合方向に沿って形成され、メス側ターミナルハウジング7から上方に突出するように、メス側ターミナルハウジング7と一体に形成される。係合解除用リブ62は、その一端部(図6(b)では左側の端部)に、ランス58を持ち上げ易いよう斜めに形成された斜面62aを有する。また、係合解除用リブ62の高さ(突出長)は、オス側ターミナルハウジング5とメス側ターミナルハウジング7とを嵌合させた際に、レバー係合用リブ61の係合部61aと同じかそれよりも高くなるようにされる。
【0083】
図9に示すように、メス側ターミナルハウジング7には、レバー52を固定位置にて固定するロック機構としてのCPA(Connector Position Assurance)64が設けられている。レバー52には、CPA64を嵌合するための嵌合溝65が形成されており、レバー52を固定位置に回動させた後、CPA64をレバー52側に押し込み嵌合溝65に嵌合させることで、レバー52は固定位置でロックされる(図2(a)参照)。
【0084】
さらに、図9に示すように、メス側ターミナルハウジング7には、固定位置にてレバー52に当接し、レバー52の固定位置から一の回動方向(ここでは反時計回り方向)への回動を規制する第2回り止めリブ66が形成される。第2回り止めリブ66は、CPA64の図示右奥側の一部を上方に突出させて形成される。第2回り止めリブ66は、レバー52の側面に当接することにより、レバー52の回動しすぎを規制し、さらには、CPA64に対する嵌合溝65の位置合せを容易とする役割も有する。
【0085】
[第1コネクタ部と第2コネクタ部との嵌合]
第1コネクタ部2と第2コネクタ3とを嵌合させない状態においては、レバー52は解除位置に位置するようにされる。解除位置においては、レバー52は、ランス58がレバー係合用リブ61に係合し、かつ、第1回り止めリブ59がレバー係合用リブ61に当接しているため、時計回り方向・反時計回り方向のどちらの方向にも回動できないように規制されている。
【0086】
第1コネクタ部2と第2コネクタ部3とを嵌合させると、第2接続端子6a〜6cのそれぞれが対となる第1接続端子4a〜4cのそれぞれと絶縁プレート8a〜8dとの間に挿入される。そして、該挿入により、複数の第1接続端子4a〜4cの一面のそれぞれと複数の第2接続端子6a〜6cの一面のそれぞれとが対となるように対面すると共に、第1接続端子4a〜4c、第2接続端子6a〜6c、及び絶縁プレート8a〜8dとが交互に配置される、即ち、絶縁プレート8a〜8dが対となる第1接続端子4a〜4c及び第2接続端子6a〜6cを挟むように配置される積層状態となる。
【0087】
このとき、第1コネクタ部2の内部において、絶縁プレート8a〜8cのそれぞれが、所定間隔で離間させた状態で整列させて保持されている第1接続端子4a〜4cの先端側に固定されているため、各絶縁プレート8a〜8cの間隔を保持するための保持用治具(特許文献2参照)を別途設けなくても、各絶縁プレート8a〜8cの間隔を保持することができるようになる。これにより、第2接続端子6a〜6cのそれぞれを、対となる第1接続端子4a〜4cのそれぞれと絶縁プレート8a〜8dとの間に容易に挿入することができる。即ち、第2接続端子6a〜6cの挿抜性を低下させることがない。また、絶縁プレート8a〜8cの間隔を保持するための保持用治具を設けなくてもよい分、従来に比べて更なる小型化を実現できる点において、非常に有効である。
【0088】
また、第1接続端子4a(又は4b)と第2接続端子6a(又は6b)に係る接点が、接点を構成する第1接続端子4a(又は4b)に固定された第1絶縁プレート8a(又は8b)と他の接点を構成する第1接続端子4b(又は4c)に固定された第1絶縁プレート8b(又は8c)とにより挟み込まれる。同様に、第1接続端子4cと第2接続端子6cに係る接点が、接点を構成する第1接続端子4cに固定された第1絶縁プレート8cとオス側ターミナルハウジング5の内面に固定された第2絶縁プレート8dとにより挟み込まれる。
【0089】
他方、図13(a),(b)に示すように、オス側ターミナルハウジング5とメス側ターミナルハウジング7とを嵌合させると、係合解除用リブ62は、レバー係合用リブ61の係合部61bに沿って移動し、その斜面62aでランス58の突起58bを上方に持ち上げる。さらにオス側ターミナルハウジング5とメス側ターミナルハウジング7とが所定の嵌合状態に達すると、係合解除用リブ62により、ランス58の突起58bがさらに上方に(レバー係合用リブ61の係合部61bよりも上方に)持ち上げられ、レバー係合用リブ61とランス58の係合が解除される。これにより、レバー52の解除位置から一の回動方向(反時計回り方向)への回動が許容される。
【0090】
その後、レバー52を一の回動方向(反時計回り方向)へ90度回動させて、レバー52を解除位置から固定位置に(第2回り止めリブ66に当接するまで)回動させる。すると、これに伴って接続部材9も回動され、頭部9bの突起9fが螺旋溝26aにガイドされて頭部9bが回動しながら押し込まれると共に、弾性部材15によって第1絶縁プレート8a、第1絶縁プレート8b、第1絶縁プレート8c、第2絶縁プレート8dの順に押圧されていき、接点のそれぞれが絶縁プレート8a〜8dのいずれか2つによって挟み込むように押圧され、接点のそれぞれが互いに絶縁された状態で接触される。このとき、第1接続端子4a〜4cのそれぞれと第2接続端子6a〜6cのそれぞれは、絶縁プレート8a〜8dからの押圧によって多少撓み広範囲で接触されることとなる。これにより、車両などの振動を発生させる環境においても、接点のそれぞれが強固に接触して固定される。レバー52を固定位置とした後、CPA64を嵌合溝65に嵌合させ、レバー52を固定位置でロックする。
【0091】
なお、本実施の形態では、図2(b)に示されるように、固定位置においてはレバー52は抜け防止用リブ63の下方から外れることになるが、レバー52が解除位置から回動されると、接続部材9の頭部9bに形成された突起9fが螺旋溝26aに係合することになるので、レバー52と接続部材9がオス側ターミナルハウジング5から抜けてしまうことはない。
【0092】
[本実施の形態の作用]
本実施の形態の作用を説明する。
【0093】
本実施の形態に係るコネクタ1では、接続部材9の頭部9bを隣接する絶縁プレート8aに押圧させるために、接続部材9の頭部9bを回動させるレバー52を有するレバー機構51を備え、レバー機構51は、オス側ターミナルハウジング5とメス側ターミナルハウジング7とを嵌合させる際に、オス側ターミナルハウジング5とメス側ターミナルハウジング7とが所定の嵌合状態に達したとき、接続部材9に対する複数の第1接続端子4a〜4c及び複数の第2接続端子6a〜6cを各接点にて一括して固定するための操作を許容する操作許容手段60を含んでいる。
【0094】
オス側ターミナルハウジング5とメス側ターミナルハウジング7とを完全に嵌合させる前に接続部材9を操作してしまうと、第1接続端子4a〜4cと第2接続端子6a〜6cとが完全に接触せず接続不良を起こす可能性があるが、本実施の形態に係るコネクタ1によれば、不完全な嵌合状態においては、複数の第1接続端子4a〜4c及び複数の第2接続端子6a〜6cを各接点にて一括して固定するための操作(ここでは、レバー52を解除位置から固定位置に回動させる操作)が許容されず、接続端子4a〜4c,6a〜6c同士が所定の位置に配置されたときにしか、接続部材9によって各接点を押圧することができないようにすることができる。よって、電気的に接続不良が発生し難いコネクタ1を実現できる。
【0095】
換言すれば、コネクタ1では、両コネクタ部2,3の嵌合が不完全な状態では接続部材9を締め付ける操作ができないようにし、両コネクタ部2,3の嵌合が完全な場合のみに接続部材9を締め付けることができるようにしているため、第1接続端子4a〜4cと第2接続端子6a〜6cの接続不良を防止することができる。
【0096】
また、コネクタ1では、レバー52に、解除位置にてレバー係合用リブ61に当接し、レバーの解除位置から他の回動方向(時計回り方向)への回動を規制する第1回り止めリブ59を形成し、さらに、メス側ターミナルハウジング7に、固定位置にてレバー52に当接し、レバー52の固定位置から一の回動方向(反時計回り方向)への回動を規制する第2回り止めリブ66を形成しているため、レバー52が解除位置から固定位置の範囲を外れて回動してしまうことがなくなり、レバー52の回動しすぎによる不具合を抑制できる。
【0097】
さらに、コネクタ1では、メス側ターミナルハウジング7に、レバー52を固定位置にて固定するロック機構としてのCPA64を設けているため、レバー52が意図せず固定位置から解除位置に回動してしまい、接続部材9の締め付けが弛んでしまうといった不具合を防止できる。
【0098】
さらにまた、コネクタ1では、レバー52として、接続部材9と一体に回動する板状の部材からなり、接続部材9を回動軸としてオス側ターミナルハウジング5の一側に回動自在に設けられる所謂片持ちのレバーを用いているため、レバー52が占有するスペースを小さくでき、コネクタ1全体の小型化に寄与する。
【0099】
また、コネクタ1では、オス側ターミナルハウジング5に、レバー52の表面に当接するように抜け防止用リブ63を形成しているため、レバー52と接続部材9がオス側ターミナルハウジング5から抜けてしまうことを防止できる。
【0100】
また、コネクタ1では、第1絶縁プレート8aの上面に、弾性部材15の下部を覆う(収納する)凹部16を形成し、さらに、接続部材9の頭部9bの下面に、弾性部材15の上部を収納する凹部9gを形成しているため、第1絶縁プレート8aと頭部9bとの間で露出する弾性部材15の高さを、凹部16,9gに収納された分だけ低くすることができ、従来に比べてコネクタ1のスリム化を図ることができる。つまり、たとえ、押圧力の付与のための弾性部材15を備えても、スリム化を図ることができる。
【0101】
また、弾性部材15の押圧力を凹部16の底部に設けられた金属製の受け部材17によって受けることで、弾性部材15が第1絶縁プレート8aの上面に小さな接触面積で当接して樹脂からなる第1絶縁プレート8aに過剰な応力が加わるのを防止でき、第1絶縁プレート8aに損傷を与える可能性を低減することができる。つまり、コネクタとしての信頼性、耐久性をより向上させることができる。
【0102】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0103】
例えば、上記実施の形態においては、三相交流の電源ラインを想定していたが、本発明の技術思想によれば、例えば、自動車用のコネクタであって、モータ、インバータ間用の三相交流の電源ライン、エアコン用の直流二相の電源ラインなど異なる用途のラインを一括して接続するような構成としても良い。このように構成することにより、1つのコネクタで複数の用途の電源ラインを一括して接続することができるため、用途毎に異なるコネクタを用意する必要がなく、省スペース化や低コスト化などに貢献することができる。
【0104】
また、第1接続端子4a〜4cのそれぞれと第2接続端子6a〜6cのそれぞれの端子表面をローレット加工などにより荒らし、摩擦力を大きくさせ、端子同士を動きづらくして接点のそれぞれでの固定を強固にするようにしても良い。
【0105】
また、本実施の形態においては、第1接続端子4a〜4cの一端側には、第2接続端子6a〜6cとは違って、ケーブルが接続されない場合を説明したが、このような構造に限定されない。即ち、本実施の形態におけるコネクタは、ケーブル同士を接続する場合にも利用することができる。
【0106】
また、本実施の形態においては、ケーブル27a〜27cとして可撓性に優れたケーブルを用いていたが、リジッドなケーブルでも良い。
【0107】
また、本実施の形態においては、コネクタの使用状態における向きは、接続部材9が略水平状態であっても、略垂直状態であっても良い。即ち、本実施の形態におけるコネクタの使用条件に、使用状態における向きは要件としない。
【0108】
また、本実施の形態においては、接続部材9の一部である弾性部材15を介して接続部材9の頭部9bによって隣接する第1絶縁プレート8aを押圧しているが、弾性部材15を介さずに直接、頭部9bによって隣接する第1絶縁プレート8aを押圧しても良い。
【符号の説明】
【0109】
1 コネクタ
2 第1コネクタ部
3 第2コネクタ部
4a〜4c 第1接続端子
5 オス側ターミナルハウジング
6a〜6c 第2接続端子
7 メス側ターミナルハウジング
8a〜8c 第1絶縁プレート
8d 第2絶縁プレート
9 接続部材
9a レバー取り付け部
9b 頭部
51 レバー機構
52 レバー
57 Cリング
58 ランス
60 操作許容手段
61 レバー係合用リブ
62 係合解除用リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1接続端子が整列されて収納されるオス側ターミナルハウジングと、
複数の第2接続端子が整列されて収納されるメス側ターミナルハウジングと、
前記オス側ターミナルハウジング内に整列されて収納される複数の絶縁プレートとを備え、
前記オス側ターミナルハウジングと前記メス側ターミナルハウジングとを嵌合させると、前記複数の第1接続端子のそれぞれと前記複数の第2接続端子のそれぞれとが対となるように対面すると共に、複数の第1接続端子と複数の第2接続端子と複数の絶縁プレートとが積層状態となるように配置される接続構造を有するコネクタにおいて、
頭部によって隣接する前記絶縁プレートを押圧することで、前記複数の第1接続端子及び前記複数の第2接続端子を各接点にて一括して固定し電気的に接続させる接続部材と、
該接続部材の頭部を隣接する前記絶縁プレートに押圧させるために、前記接続部材の頭部を回動させるレバーを有するレバー機構とを備え、
前記レバー機構は、
前記オス側ターミナルハウジングと前記メス側ターミナルハウジングとを嵌合させる際に、前記オス側ターミナルハウジングと前記メス側ターミナルハウジングとが所定の嵌合状態に達したとき、前記接続部材に対する前記複数の第1接続端子及び前記複数の第2接続端子を各接点にて一括して固定するための操作を許容する操作許容手段を含むことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記複数の第1接続端子及び前記複数の第2接続端子を各接点にて一括して固定する操作が、前記レバーを解除位置から固定位置に一の回動方向に回動させる操作であり、
前記操作許容手段は、
前記オス側ターミナルハウジングに形成されたレバー係合用リブと、
前記レバーに形成され、前記解除位置にて前記レバー係合用リブに係合し、前記レバーの前記解除位置から一の回動方向への回動を規制するランスと、
前記メス側ターミナルハウジングに形成され、前記オス側ターミナルハウジングと前記メス側ターミナルハウジングとを嵌合させ、前記オス側ターミナルハウジングと前記メス側ターミナルハウジングとが所定の嵌合状態に達した際に、前記レバー係合用リブに係合している前記ランスを押し上げて、前記レバー係合用リブと前記ランスの係合を解除し、前記レバーを解除位置から固定位置に一の回動方向に回動させる操作を許容する係合解除用リブとからなる請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記レバーには、前記解除位置にて前記レバー係合用リブに当接し、前記レバーの解除位置から他の回動方向への回動を規制する第1回り止めリブが形成される請求項2記載のコネクタ。
【請求項4】
前記メス側ターミナルハウジングには、前記固定位置にて前記レバーに当接し、前記レバーの前記固定位置から一の回動方向への回動を規制する第2回り止めリブが形成される請求項2または3記載のコネクタ。
【請求項5】
前記メス側ターミナルハウジングには、前記レバーを前記固定位置にて固定するロック機構が設けられる請求項2〜4いずれかに記載のコネクタ。
【請求項6】
前記レバーは、
前記接続部材と一体に回動する板状の部材からなり、
前記接続部材を回動軸として、前記オス側ターミナルハウジングの一側に回動自在に設けられる請求項1〜5いずれかに記載のコネクタ。
【請求項7】
前記オス側ターミナルハウジングには、前記レバーの前記オス側ターミナルハウジングと反対側の面に当接し、前記レバーと前記接続部材が前記オス側ターミナルハウジングから抜けてしまうことを防止する抜け防止用リブが形成される請求項6記載のコネクタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2011−159512(P2011−159512A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−20687(P2010−20687)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】