説明

コモンモードノイズフィルタ

【課題】コモンモードノイズの除去特性を向上させることができるコモンモードノイズフィルタを提供する。
【解決手段】絶縁層11bを介して互いに対向する第1の渦巻き状導体12と第2の渦巻き状導体15と、前記絶縁層における第1、第2の渦巻き状導体12、15の渦巻きの内側にそれぞれ形成された磁性材料からなる磁性部21とを備え、前記第1の渦巻き状導体12、第2の渦巻き状導体15をそれぞれ構成する導体は、隣り合う導体間の距離が略同一であり、かつ、外部電極との接続部を除き、前記第1の渦巻き状導体12の最外周と第2の渦巻き状導体15の最外周とが上面視にて重なるように配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル機器やAV機器、情報通信端末等の各種電子機器に使用されるコモンモードノイズフィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のコモンモードノイズフィルタは、図8、図9に示すように、積層された複数の絶縁体層1a〜1gに形成された第1のコイル2と第2のコイル3とを有し、第1のコイル2は第1、第2の渦巻き状導体4a、4bを接続して構成され、第2のコイル3は第3、第4の渦巻き状導体5a、5bを接続して構成され、さらに、第1のコイル2を構成する渦巻き状導体4a、4bと第2のコイル3を構成する渦巻き状導体5a、5bを交互に配置した構成となっていた。
【0003】
このとき、第1、第2の渦巻き状導体4a、4bは第1のビア電極6を介して互いに接続し、第3、第4の渦巻き状導体5a、5bは第2のビア電極7を介して互いに接続しており、上面視にて第1のビア電極6と第2のビア電極7は異なる位置に配置していた。また、最下面に設けられた絶縁層1aと最上面に設けられた絶縁層1gは磁性材料で構成され、他の絶縁層1b〜1fは非磁性材料で構成されていた。そして、他の絶縁層1b〜1fにおける、第1〜第4の渦巻き状導体4a、4b、5a、5bの渦巻きの内側にそれぞれ磁性材料からなる磁性部8が形成されていた。さらに、第1の渦巻き状導体4aと第3の渦巻き状導体5aとを上面視にて重なるようにして磁気結合させ、かつ第2の渦巻き状導体4bと第4の渦巻き状導体5bとを上面視にて重なるようにして磁気結合させて、コモンモードノイズを除去するようにしていた。
【0004】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−373810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した従来のコモンモードノイズフィルタにおいては、互いに磁気結合する第1の渦巻き状導体4aの巻き数と第3の渦巻き状導体5aの巻き数を比較した場合、外部電極に接続される位置の差およびビア電極6、7に接続される位置の差によって、第1の渦巻き状導体4aの巻き数は第3の渦巻き状導体5aの巻き数より少なく、また同様に、第2の渦巻き状導体4bの巻き数が第4の渦巻き状導体5bの巻き数より少なくなるため、第1の渦巻き状導体4aと第3の渦巻き状導体5aとが上面視にて重なる部分、第2の渦巻き状導体4bと第4の渦巻き状導体5bとが上面視にて重なる部分の長さが短くなる。
【0007】
すなわち、図10に示すように、第3の渦巻き状導体5aの巻き数が約3ターンであるのに対し、第1の渦巻き状導体4aの巻き数は約2.5ターンとなっている。その結果、第1の渦巻き状導体4aと第3の渦巻き状導体5aとが上面視にて重なる長さは、巻き数が小さい方の第1の渦巻き状導体4aと略同じの約2.5ターンとなってしまう。ここで、図10の太い直線は第1の渦巻き状導体4aと第3の渦巻き状導体5aとが上面視にて重なる部分、破線は第3の渦巻き状導体5aのみの部分、点線は第1の渦巻き状導体4aのみの部分を示す。このことは、第2の渦巻き状導体4bと第4の渦巻き状導体5bとの関係にも言える。
【0008】
さらに、巻き数の少ない第1の渦巻き状導体4aと第2の渦巻き状導体4bからなる第1のコイル2の長さは、巻き数の多い第3の渦巻き状導体5aと第4の渦巻き状導体5bからなる第2のコイル3の長さより短くなる。これらの結果、コモンモードインピーダンスを大きくすることができないため、コモンモードノイズの除去特性が向上しないという課題を有していた。
【0009】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、コモンモードノイズの除去特性を向上させることができるコモンモードノイズフィルタを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0011】
本発明の請求項1に記載の発明は、絶縁層を介して互いに対向する第1の渦巻き状導体と第2の渦巻き状導体と、前記絶縁層における第1、第2の渦巻き状導体の渦巻きの内側にそれぞれ形成された磁性材料からなる磁性部とを備え、前記第1の渦巻き状導体、第2の渦巻き状導体をそれぞれ構成する導体は、隣り合う導体間の距離が略同一であり、かつ、外部電極との接続部を除き、前記第1の渦巻き状導体の最外周と第2の渦巻き状導体の最外周とが上面視にて重なるように配置したもので、この構成によれば、外部電極との接続部以外のほとんどの箇所で、第1の渦巻き状導体と第2の渦巻き状導体とを上面視にて重なるように位置させることができるため、第1の渦巻き状導体の巻き数と第2の渦巻き状導体の巻き数を略同一にすることができ、これにより、第1の渦巻き状導体と第2の渦巻き状導体とが上面視にて重なる部分の長さを長くすることができるため、第1の渦巻き状導体と第2の渦巻き状導体との磁気結合を強くすることができ、コモンモードノイズの除去特性を向上させることができるという作用効果を有するものである。
【0012】
本発明の請求項2に記載の発明は、第1の渦巻き状導体と直列接続され、前記第1の渦巻き状導体と第1のコイルを構成する第3の渦巻き状導体と、第2の渦巻き状導体と直列接続され、前記第2の渦巻き状導体と第2のコイルを構成する第4の渦巻き状導体を形成し、前記第3の渦巻き状導体と第4の渦巻き状導体を他の絶縁層を介して互いに対向するようにするとともに、前記第1の渦巻き状導体、第2の渦巻き状導体、第3の渦巻き状導体、第4の渦巻き状導体の順に積層する、または前記一方のコイルを他方のコイルを構成する2つの渦巻き状導体で挟むように積層し、前記第1の渦巻き状導体と第2の渦巻き状導体とを磁気結合させ、前記第3の渦巻き状導体と第4の渦巻き状導体とを磁気結合させ、さらに、前記第3の渦巻き状導体、第4の渦巻き状導体をそれぞれ構成する導体は、隣り合う導体間の距離が略同一であり、かつ、外部電極との接続部を除き、前記第3の渦巻き状導体の最外周と第4の渦巻き状導体の最外周とが上面視にて重なるように配置したもので、この構成によれば、第1、第2のコイルの導体長さを長くすることができるため、よりコモンモードノイズの除去特性を向上させることができるという作用効果を有するものである。
【発明の効果】
【0013】
以上のように本発明のコモンモードノイズフィルタは、第1の渦巻き状導体、第2の渦巻き状導体をそれぞれ構成する導体は、隣り合う導体間の距離が略同一であり、かつ、第1の渦巻き状導体の最外周と第2の渦巻き状導体の最外周とが上面視にて略重なるように配置しているため、第1の渦巻き状導体と第2の渦巻き状導体とを上面視にて略重なるように位置させることができ、これにより、第1の渦巻き状導体と第2の渦巻き状導体とが上面視にて重なる部分の長さを長くすることができるため、コモンモードノイズの除去特性を向上させることができるという優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態におけるコモンモードノイズフィルタの分解斜視図
【図2】同コモンモードノイズフィルタの斜視図
【図3】同コモンモードノイズフィルタの等価回路図
【図4】同コモンモードノイズフィルタの主要部(第2の渦巻き状導体)の上面図
【図5】同コモンモードノイズフィルタの主要部(第1の渦巻き状導体)の上面図
【図6】同コモンモードノイズフィルタの主要部(第1、第2の渦巻き状導体)の上面透過図
【図7】同コモンモードノイズフィルタの他の例を示す分解斜視図
【図8】従来のコモンモードノイズフィルタの分解斜視図
【図9】同コモンモードノイズフィルタの積層方向の導体位置及び接続を示す模式図
【図10】同コモンモードノイズフィルタの主要部の上面透過図
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は本発明の一実施の形態におけるコモンモードノイズフィルタの分解斜視図、図2は同コモンモードノイズフィルタの斜視図である。
【0016】
本発明の一実施の形態におけるコモンモードノイズフィルタは、図1に示すように、第1〜第5の絶縁体層11a〜11eと、第1の絶縁体層11aに形成された第1の渦巻き状導体12、および第3の絶縁体層11cに形成された第3の渦巻き状導体13からなる第1のコイル14と、第2の絶縁体層11bに形成された第2の渦巻き状導体15、および第4の絶縁体層11dに形成された第4の渦巻き状導体16からなる第2のコイル17とを備え、前記第1の渦巻き状導体12、第2の渦巻き状導体15、第3の渦巻き状導体13、第4の渦巻き状導体16の順に積層したものである。さらに、第1の渦巻き状導体12、第2の渦巻き状導体15をそれぞれ構成する導体は、隣り合う導体間の距離が略同一であり、かつ、外部電極との接続部を除き、第1の渦巻き状導体12の最外周と第2の渦巻き状導体15の最外周とが上面視にて重なるように配置し、そして、第3の渦巻き状導体13、第4の渦巻き状導体16をそれぞれ構成する導体は、隣り合う導体間の距離が略同一であり、かつ、外部電極との接続部を除き、第3の渦巻き状導体13の最外周と第4の渦巻き状導体16の最外周とが上面視にて重なるように配置している。
【0017】
また、第2の絶縁層11bを介して対向する第1の渦巻き状導体12と第2の渦巻き状導体15とを磁気結合させ、さらに第4の絶縁層11dを介して対向する第3の渦巻き状導体13と第4の渦巻き状導体16とを磁気結合させて、コモンモードノイズを除去するようにしている。
【0018】
上記構成において、第1〜第5の絶縁体層11a〜11eは、下から第1の絶縁体層11a、第2の絶縁体層11b、第3の絶縁体層11c、第4の絶縁体層11d、第5の絶縁体層11eの順に積層され、また、Cu−Znフェライト、ガラスセラミック等の非磁性材料によりシート状に構成されている。
【0019】
さらに、前記第1〜第4の渦巻き状導体12、15、13、16は、それぞれ銀等の導電材料を渦巻状にめっきまたは印刷することにより形成されている。そして、第1の渦巻き状導体12は第1の絶縁体層11aの上面、第2の渦巻き状導体15は第2の絶縁体層11bの上面、第3の渦巻き状導体13は第3の絶縁体層11cの上面、第4の渦巻き状導体16は第4の絶縁体層11dの上面にそれぞれ形成されている。すなわち、第1のコイル14を構成する渦巻き状導体と第2のコイル17を構成する渦巻き状導体を交互に積層し、従来の図8に示された構成と同じ積層構造となっている。
【0020】
また、第1の渦巻き状導体12と第3の渦巻き状導体13とは、第2の絶縁体層11b、第3の絶縁体層11cにそれぞれ形成された2つの第1のビア電極18を介して互いに直列に接続され、第1のコイル14が構成される。さらに、第2の渦巻き状導体15と第4の渦巻き状導体16とは、第3の絶縁体層11c、第4の絶縁体層11dに形成された2つの第2のビア電極19を介して互いに直列に接続され、第2のコイル17が構成される。そして、第1の渦巻き状導体12と第2の渦巻き状導体15は同じ導体間距離を有し、第3の渦巻き状導体13と第4の渦巻き状導体16は同じ導体間距離を有している。
【0021】
なお、第1のビア電極18はそれぞれ上面視にて同じ位置に設けられ、第2のビア電極19もそれぞれ上面視にて同じ位置に設けられている。また、第1のビア電極18、第2のビア電極19は、絶縁体層の所定の箇所に、レーザまたはパンチング機等により孔あけ加工をし、この孔に銀を充填して形成する。このとき、第1のビア電極18と第2のビア電極19は、上面視にて異なる位置に設けられ、第1〜第4の渦巻き状導体12、15、13、16の渦巻きの内側に位置する。
【0022】
そして、第1の絶縁体層11aの下面、第5の絶縁体層11eの上面に、それぞれ第6の絶縁体層20が設けられているもので、この第6の絶縁体層20は、シート状に構成され、Ni−Cu−Znフェライト等の磁性材料で形成されている。なお、第1〜第6の絶縁体層11a〜11e、20の枚数は、図1に示された枚数に限られるものではない。
【0023】
また、第1のコイル14と第2のコイル17の磁気結合をより強くするために、非磁性材料で構成された第1〜第5の絶縁体層11a〜11eにおける、第1〜第4の渦巻き状導体12、15、13、16の渦巻きの内側にそれぞれ磁性材料からなる磁性部21を、上面視にて互いに同じ位置になるように設けるようにする(第5の絶縁体層11eの磁性部21は、上の第6の絶縁体層20に隠れている)。そして、この磁性部21は、第1〜第5の絶縁体層11a〜11eの所定の箇所に、レーザまたはパンチング機等により孔あけ加工をし、この孔にNi−Cu−Znフェライト等の磁性材料を充填して形成する。このとき、第1のビア電極18、第2のビア電極19と磁性部21とは互いに上面視にて接触しないようにするとともに、第1のビア電極18と第2のビア電極19が磁性部21を挟むように位置させる。
【0024】
そして、上記した構成により、コモンモードノイズフィルタの本体部22が形成される。また、この本体部22の両側面には、図2に示すように、第1〜第4の外部電極23〜26が設けられ、そしてこの第1〜第4の外部電極23〜26はそれぞれ第1〜第4の渦巻き状導体12、15、13、16と接続されている。さらに、前記第1〜第4の外部電極23〜26は、本体部22の端面に銀を印刷することにより形成され、またこれらの表面にめっきによってニッケルめっき層を形成するとともに、このニッケルめっき層の表面にめっきによってすずやはんだ等の低融点金属めっき層を形成する。
【0025】
図3は、上記した本発明の一実施の形態におけるコモンモードノイズフィルタの等価回路図である。
【0026】
図3からも明らかなように、第1の外部電極23および第2の外部電極24から入ってくるコモンモードノイズに対して、第1の渦巻き状導体12と第2の渦巻き状導体15とが磁気結合し、第3の渦巻き状導体13と第4の渦巻き状導体16とが磁気結合して、コモンモードノイズを除去できる。
【0027】
ここで、図4は、上面視したときの第2の渦巻き状導体15を示し、図5は、上面視したときの第1の渦巻き状導体12を示し、図6は、上面視したときの第1の渦巻き状導体12および第2の渦巻き状導体15を示している。なお、図6においては、直線は第1の渦巻き状導体12と第2の渦巻き状導体15とが上面視にて重なっている箇所、破線は第2の渦巻き状導体15のみの箇所、点線は第1の渦巻き状導体12のみの箇所を表す。また、上面視にて第1のビア電極18、第2のビア電極19に対応する箇所も同時に示す。
【0028】
このように、外部電極23、24との接続箇所12a、15aを除き、第1の渦巻き状導体12の最外周が第2の渦巻き状導体15の最外周と略重なるようになっている。また、第1の渦巻き状導体12、第2の渦巻き状導体15をそれぞれ構成する導体は、隣り合う導体間の距離が略同一であるため、第1の渦巻き状導体12の外から2周目と、第2の渦巻き状導体15の外から2周目とが上面視にて略重なり、第1の渦巻き状導体12の外から3周目と、第2の渦巻き状導体15の外から3周目とが上面視にて略重なるという具合になっている。
【0029】
なお、図5からも分かるように、第1の渦巻き状導体12の外部電極23との接続箇所12aは、その内側に位置する導体部12bとの距離が近くその形成スペースが限定されてしまうが、この接続箇所12a付近の導体の形状を曲線状にすれば、接続箇所12aを形成できるスペースを確保できる。
【0030】
上記したように本発明の一実施の形態におけるコモンモードノイズフィルタにおいては、第1の渦巻き状導体12、第2の渦巻き状導体15をそれぞれ構成する導体は、隣り合う導体間の距離が略同一であり、かつ、第1の渦巻き状導体12の最外周と第2の渦巻き状導体15の最外周とが上面視にて略重なるように配置しているため、外部電極23、24との接続部12a、15a以外のほとんどの箇所で、第1の渦巻き状導体12と第2の渦巻き状導体15とを上面視にて重なるように位置させることができ、これにより、第1の渦巻き状導体12の巻き数と第2の渦巻き状導体15の巻き数を略同一にすることができるため、第1の渦巻き状導体12と第2の渦巻き状導体15とが上面視にて重なる部分の長さを長くすることができ、これにより、第1の渦巻き状導体12と第2の渦巻き状導体15との磁気結合を強くすることができ、さらに、第1の渦巻き状導体12の長さを第2の渦巻き状導体15の長さと略同一にでき、これらの結果、コモンモードインピーダンスを大きくすることができないため、コモンモードノイズの除去特性を向上させることができるという効果が得られるものである。
【0031】
すなわち、図5に示すように、第1の渦巻き状導体12の最外周を第2の渦巻き状導体15の最外周に重なるように外側に1ターン分ずらし、さらに2つのビア電極18、19に対応する部分のうち、外部電極23との接続部12aと長手方向において近い方と接続させるようにすることにより、第1の渦巻き状導体12の巻き数を、第2の渦巻き状導体15の巻き数と略等しい約3ターンとすることができる。つまり、第1の渦巻き状導体12の巻き数(長さ)は、従来の構成のときの約2.5ターンから約3ターンへと巻き数を多くする(長くする)ことができる。さらに、第1の渦巻き状導体12の巻き数が約2.5ターンの場合では、第2の渦巻き状導体15と上面視にて重なる巻き数は、少ない方の約2.5ターンとなってしまうが、第1の渦巻き状導体12の巻き数を約3ターンへと多くしたことにより、第1の渦巻き状導体12と第2の渦巻き状導体15とが上面視にて重なる部分の長さを約3ターンへと長くすることができる。
【0032】
このとき、図10に示すように、渦巻き状導体4aの長さを長くするために、渦巻き状導体5aと同じように内側にもう1周導体を形成し、さらにビア電極6と延長導体4cで示す経路で接続される場合が考えられる。なお、図10においては、延長導体4cは細い直線で図示され上面視で渦巻き状導体5aと重なっているが、便宜上ずらして図示している。このとき、延長導体4cとビア電極7、磁性部8との距離が狭くなるため、渦巻き状導体4aのパターンずれ等の工程ばらつきによって、内側の延長導体4cは磁性部8やビア電極7と短絡するおそれがあり、そして、渦巻き状導体と磁性部8とが短絡すると、ディファレンシャル信号のインピーダンスが高くなって信号が劣化し、延長導体4c、つまり渦巻き状導体4aとビア電極7とが短絡すると、コモンモードフィルタとして機能しなくなってノイズ除去ができないうえ、ディファレンシャル信号も著しく劣化してしまう。したがって、渦巻き状導体をさらに内側に形成できないという制約条件が存在することになり、渦巻き状導体4aの巻き数を増やし、コモンモードインピーダンスを増やしてコモンモードノイズ除去特性を向上させることができない。これに対し、本発明は、第1の渦巻き状導体12の最外周を第2の渦巻き状導体15の最外周と上面視にて略重なるように配置することで、この制約条件にもかかわらず、第1の渦巻き状導体12の長さを長くすることができ、第1の渦巻き状導体12と第2の渦巻き状導体15とが上面視にて重なる部分の長さを長くなるようにすることができる。
【0033】
また、上記のような構成にすると、第1の渦巻き状導体12と第2の渦巻き状導体15とが上面視にて重なる部分の長さを長くできることから、製品が小型化されてスペースが限られても、渦巻き状導体の巻き数を容易に多くすることができる。
【0034】
そして、第1の渦巻き状導体12と第2の渦巻き状導体15のコイルの線路長を略同じにしているため、第1の渦巻き状導体12と第2の渦巻き状導体15を通過する信号間の位相差が発生し位相バランスが崩れてディファレンシャル信号が劣化するようなこともない。
【0035】
なお、第3の渦巻き状導体13、第4の渦巻き状導体16も、第1の渦巻き状導体12、第2の渦巻き状導体15と同様の構成にしていることによって、第3の渦巻き状導体13と第1の渦巻き状導体12とで形成される第1のコイル14、第4の渦巻き状導体16と第2の渦巻き状導体15とで形成される第2のコイル17についても、上記と同じ効果を得ることができ、さらに、導体長さを長くすることができるため、よりコモンモードノイズの除去特性を向上させることができる。また、第1のコイル14の巻き数と第2のコイル17の巻き数を略同一にすることができるため、導体長の違いにより信号間の位相差が発生し位相バランスが崩れることによるディファレンシャル信号の劣化が発生することはない。
【0036】
そしてまた、第1のコイル14を構成する渦巻き状導体と第2のコイル17を構成する渦巻き状導体を交互に積層するのではなく、図7に示すように、第1のコイル14を構成する第1の渦巻き状導体12と第3の渦巻き状導体13との間に、第2のコイル17を構成する第2の渦巻き状導体15、第4の渦巻き状導体16を積層してもよく、この場合も、第1のコイル14、第2のコイル17の導体長さを長くすることができる。また、積層方向に隣り合うこれらの渦巻き状導体15、16が同電位となるため、積層方向に隣り合う渦巻き状導体15、16間で浮遊容量は発生せず、これにより、浮遊容量によって特性インピーダンスが低下するのを防止できるため、規定の特性インピーダンスが得られるという効果が得られるものである。
【0037】
このとき、第1の渦巻き状導体12と第3の渦巻き状導体13とは、第2の絶縁体層11b〜第4の絶縁体層11dにそれぞれ形成された3つの第1のビア電極18を介して互いに接続し、第1のコイル14を構成する。さらに、第2の渦巻き状導体15と第4の渦巻き状導体16とは、第3の絶縁体層11cに形成された1つの第2のビア電極19を介して互いに接続し、第2のコイル17を構成する。そして、その等価回路は図3と同じになっている。
【0038】
なお、上記した本発明の一実施の形態においては、第1のコイル14、第2のコイル17をそれぞれ1つ設けたものについて説明したが、2つ以上設けてアレイタイプとしてもよい。
【0039】
また、第1、第2のコイル14、17をそれぞれ構成する渦巻き状導体を2つとし、4つの渦巻き状導体を積層したものについて説明したが、第1、第2のコイル14、17をそれぞれ構成する渦巻き状導体を3つ以上とし、6つ以上の渦巻き状導体を積層するようにしてもよい。この場合も、上記実施の形態と同様の構成を採用すれば、コモンモードノイズの除去特性を向上させることができるという効果を得ることができる。
【0040】
さらに、第1〜第4の渦巻き状導体12、15、13、16の巻き数が約3ターンのものについて説明したが、他のターン数のものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明に係るコモンモードノイズフィルタは、コモンモードノイズの除去特性を向上させることができるという効果を有するものであり、特にデジタル機器やAV機器、情報通信端末等の各種電子機器のノイズ対策として使用されるコモンモードノイズフィルタ等において有用となるものである。
【符号の説明】
【0042】
11a〜11e 第1〜第5の絶縁体層
12 第1の渦巻き状導体
13 第3の渦巻き状導体
14 第1のコイル
15 第2の渦巻き状導体
16 第4の渦巻き状導体
17 第2のコイル
21 磁性部
23〜26 第1〜第4の外部電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層を介して互いに対向する第1の渦巻き状導体と第2の渦巻き状導体と、前記絶縁層における第1、第2の渦巻き状導体の渦巻きの内側にそれぞれ形成された磁性材料からなる磁性部とを備え、前記第1の渦巻き状導体、第2の渦巻き状導体をそれぞれ構成する導体は、隣り合う導体間の距離が略同一であり、かつ、外部電極との接続部を除き、前記第1の渦巻き状導体の最外周と第2の渦巻き状導体の最外周とが上面視にて重なるように配置したコモンモードノイズフィルタ。
【請求項2】
第1の渦巻き状導体と直列接続され、前記第1の渦巻き状導体と第1のコイルを構成する第3の渦巻き状導体と、第2の渦巻き状導体と直列接続され、前記第2の渦巻き状導体と第2のコイルを構成する第4の渦巻き状導体を形成し、前記第3の渦巻き状導体と第4の渦巻き状導体を他の絶縁層を介して互いに対向するようにするとともに、前記第1の渦巻き状導体、第2の渦巻き状導体、第3の渦巻き状導体、第4の渦巻き状導体の順に積層する、または前記一方のコイルを他方のコイルを構成する2つの渦巻き状導体で挟むように積層し、前記第1の渦巻き状導体と第2の渦巻き状導体とを磁気結合させ、前記第3の渦巻き状導体と第4の渦巻き状導体とを磁気結合させ、さらに、前記第3の渦巻き状導体、第4の渦巻き状導体をそれぞれ構成する導体は、隣り合う導体間の距離が略同一であり、かつ、外部電極との接続部を除き、前記第3の渦巻き状導体の最外周と第4の渦巻き状導体の最外周とが上面視にて重なるように配置した請求項1記載のコモンモードノイズフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−248917(P2012−248917A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116574(P2011−116574)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】