説明

コラーゲン分解酵素を産生する低温細菌、コラーゲン分解酵素、その製造方法、およびその酵素を用いた軟化食肉の製造方法

【課題】本発明の目的は、低温でコラーゲン分解活性を有し、コラーゲンを優先的に分解するコラーゲン分解酵素、それを産生する低温細菌、その製造方法およびそれを用いた軟化食肉の製造方法を提供すること。
【解決手段】 本発明の低温細菌は、運動性の桿菌、大きさ3μm×1μm、グラム陰性、集菌時の菌体色が赤色、生育可能温度4〜37℃、最適生育温度20〜33℃、好気的条件下で、硫化水素を非産生、16S rRNA遺伝子の塩基配列が、配列番号1に記載の塩基配列を有し、SDS−PAGE法による分子量60〜72kDaで、低温でコラーゲン分解活性を有するコラーゲン分解酵素を産生する低温細菌である。この低温細菌の培養により、低温でコラーゲン分解活性を有するコラーゲン分解酵素が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コラーゲン分解酵素を産生する低温細菌、コラーゲン分解酵素、その製造方法、およびその酵素を用いた軟化食肉の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食肉は、家畜や家禽類等の筋肉を食用に加工したものであり、主要なタンパク質摂取源として利用されている。しかし、家畜や家禽類等の筋肉には、スジ肉や乳用牛の肉のように、部位や飼育方法により肉質が硬いために、食肉として利用価値の低いものがある。このような硬い肉を軟らかくできれば、タンパク質資源として有効活用でき、咀嚼しやすい食品の開発等が可能になり、硬い肉の食肉としての商品価値を高められる。
【0003】
一方、食肉に含まれるタンパク質は、ミオシンやアクチン等の筋原線維タンパク質、コラーゲン等の結合組織タンパク質、ミオグロビン等の筋形質タンパク質に大別できる。これらの中でも、筋原線維タンパク質の主成分であるミオシンやアクチンは、食肉のテクスチャー(軟らかさ、風味および多汁性)に関わるタンパク質である。また、結合組織タンパク質の主成分であるコラーゲンは、食肉の硬さに関わるタンパク質である。食肉の硬さは、アルドール縮合やシッフ塩基の形成による、コラーゲン分子間の架橋結合状態の複雑化および増大化が原因である。そこで、従来、食肉を軟らかくする方法(食肉軟化法)として、プロテアーゼ処理が汎用されてきた。前記プロテアーゼとしては、植物由来のパパイン、ブロメライン等が用いられている(非特許文献1)。しかしながら、前記プロテアーゼは、コラーゲンよりも、筋原線維タンパク質に対する基質特異性が高いため、筋原繊維タンパク質を優先的に分解してしまい、食肉のテクスチャーを損ねてしまう。また、前記プロテアーゼは、低温における酵素活性が低く、食肉の熟成や貯蔵を行う4℃以下の環境下では作用しない。したがって、低温条件下での前記プロテアーゼの利用は、多量の酵素が必要となり、効率が低く、かつ呈味も悪化する。また、酵素活性を有する30℃付近での前記プロテアーゼの利用は、微生物が繁殖しやすく、安全性面からも好ましくない。
【0004】
【非特許文献1】Prusa,K.J.et al.、J.Food Sci.、1981、Vol.46、p.1684−1686
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、低温でコラーゲン分解活性を有し、コラーゲンを優先的に分解するコラーゲン分解酵素を産生する低温細菌、その産生されたコラーゲン分解酵素、その製造方法およびそれを用いた軟化食肉の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の低温細菌は、下記(1)〜(8)の形質を有し、下記(9)に示すコラーゲン分解酵素を産生する。
(1)運動性の桿菌
(2)大きさは、約3μm×約1μm
(3)グラム陰性
(4)集菌時の菌体色は、赤色
(5)生育可能温度の範囲は、約4〜約37℃
(6)最適生育温度の範囲は、約20〜約33℃
(7)好気的条件下で、硫化水素を産生しない
(8)16S rRNA遺伝子の塩基配列が、下記(a)または(b)に記載の塩基配列
(a)配列番号1に記載の塩基配列
(b)配列番号1に記載の塩基配列において、1もしくは数個の塩基が、置換、付加、挿入もしくは欠失した塩基配列
(9)SDS−PAGE法による分子量が60〜72kDaであり、
約0〜約50℃の温度範囲でコラーゲン分解活性を有し、最適温度が約20〜約40℃の範囲にあり、
pH約5〜約9のpH範囲でコラーゲン分解活性を有し、最適pHがpH約6〜約8の範囲にあり、
EDTA、EGTAおよび1,10−フェナントロリン一水和物によって、コラーゲン分解活性が阻害され、
(7-メトキシクマリン-4-イル)アセチル-プロリル-ロイシル-グリシル-ロイシル-[Nβ-(2,4-ジニトロフェニル)-2,3-ジアミノプロピオニル]-アラニル-アルギニンアミドを分解するコラーゲン分解酵素
【0007】
本発明のコラーゲン分解酵素は、
SDS−PAGE法による分子量が60〜72kDaであり、
約0〜約50℃の温度範囲でコラーゲン分解活性を有し、最適温度が約20〜約40℃の範囲にあり、
pH約5〜約9のpH範囲でコラーゲン分解活性を有し、最適pHがpH約6〜約8の範囲にあり、
EDTA、EGTAおよび1,10−フェナントロリン一水和物によって、コラーゲン分解活性が阻害され、
(7-メトキシクマリン-4-イル)アセチル-プロリル-ロイシル-グリシル-ロイシル-[Nβ-(2,4-ジニトロフェニル)-2,3-ジアミノプロピオニル]-アラニル-アルギニンアミドを分解するコラーゲン分解酵素である。
【0008】
本発明のコラーゲン分解酵素の製造方法は、本発明のコラーゲン分解酵素を製造する方法であって、本発明の低温細菌を培養して、前記コラーゲン分解酵素を産生させる培養工程を有する。
【0009】
本発明の軟化食肉の製造方法は、酵素処理によって食肉を軟化させる軟化食肉の製造方法であって、酵素として、本発明のコラーゲン分解酵素を使用する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の低温細菌を用いれば、その培養によって容易に本発明のコラーゲン分解酵素を製造できる。そして、本発明のコラーゲン分解酵素を用いれば、低温条件下でも、少ない酵素量で、食肉の軟化が可能である。また、本発明のコラーゲン分解酵素を用いれば、コラーゲンに特異的に作用することから、食肉のテクスチャーを損ねずに、食肉を軟らかくすることができる。さらに、本発明のコラーゲン分解酵素を用いた軟化食肉の製造方法は、低温条件で実施できるため、例えば、微生物の繁殖を抑制でき、食品安全性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
一般に、低温細菌とは、高山、深海、冷蔵庫等の低温環境において増殖可能な細菌をいう。また、Moritaらの定義(Bacteriological Reviews、1975、Vol.39、p.144−167)では、低温細菌は、最適温度が15℃以下かつ生育上限温度が20℃以下の好冷細菌(psychrophile)と、生育上限温度が20℃以上の低温増殖細菌(psychrotrophic)とに分類される。なお、本発明における低温細菌とは、前述の形質を有していればよい。
【0012】
本発明の低温細菌としては、特に限定されず、例えば、菌名が、シュワネラ・エスピー・ストレイン C35(Shewanella sp. strain C35)であり、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターの受託番号が、NITE P−520である低温細菌を用いてもよい。
【0013】
本発明のコラーゲン分解酵素は、特に限定されず、例えば、本発明の低温細菌由来の酵素であってもよい。
【0014】
本発明のコラーゲン分解酵素の製造方法は、特に限定されず、例えば、さらに、前記低温細菌の培養液から前記コラーゲン分解酵素を含む上清を回収する回収工程を有していてもよい。
【0015】
本発明の軟化食肉の製造方法は、特に制限されないが、例えば、0〜37℃の温度条件下で前記酵素処理を行うのが好ましい。
【0016】
以下に、本発明について詳しく説明する。
【0017】
<低温細菌>
本発明の低温細菌は、前記(1)〜(8)の形質を有し、前記(9)に示すコラーゲン分解酵素を産生する細菌であればよく、その種類は、特に限定されない。本発明の低温細菌の具体例としては、受託番号NITE P−520のシュワネラ・エスピー・ストレイン C35(Shewanella sp. strain C35)が挙げられる。この菌体は、後述するように、本発明者らによって単離された新規の菌体であり、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに、受託番号NITE P−520で寄託されている。
【0018】
本発明において、前記シュワネラ属(Shewanella)の種は、特に限定されず、例えば、シュワネラ・プトレファシエンス(Shewanella putrefaciens)種、シュワネラ・バルティカ(Shewanella baltica)種等が挙げられる。また、前記シュワネラ属(Shewanella)の細菌は、前記シュワネラ属(Shewanella)の近縁種であってもよい。
【0019】
本発明の低温細菌の生育可能温度は、前述のように、約4℃〜約37℃の範囲であるが、これには制限されず、例えば、約−5℃〜約50℃の範囲であってもよい。また、本発明の低温細菌は、これらの温度範囲外でも生育可能であってもよい。また、本発明の低温細菌の生育最適温度は、前述のように、約20℃〜約33℃の範囲であるが、これには制限されず、例えば、約10〜約40℃の範囲であってもよい。また、これらの温度範囲外においても、本発明の低温細菌は、生育最適性を示してもよい。
【0020】
<コラーゲン分解酵素>
本発明のコラーゲン分解酵素は、前述の特性を有していればよく、その由来は、特に制限されないが、例えば、本発明の低温細菌由来の酵素が挙げられる。
【0021】
本発明のコラーゲン分解酵素は、前述のように、0〜50℃の温度範囲でコラーゲン分解活性を有する。すなわち、本発明のコラーゲン分解酵素は、一般的な冷蔵温度である2〜10℃の温度範囲において、コラーゲン分解活性を有する。また、本発明のコラーゲン分解酵素は、氷温温度である0〜2℃の温度範囲内においても、コラーゲン分解活性を有する。なお、本発明のコラーゲン分解酵素は、これらの温度範囲外でも活性を有してもよい。
【0022】
また、本発明のコラーゲン分解酵素は、例えば、50℃以下で温度安定性を有し、また、60℃以下でも温度安定性を有してもよい。このため、本発明のコラーゲン分解酵素は、例えば、前記温度範囲に一定時間維持された後にでも、尚、コラーゲン分解活性が残存する。
【0023】
本発明のコラーゲン分解酵素は、例えば、二価カチオンの存在下で反応されることが好ましく、具体例としては、Ca2+、Mg2+等が挙げられる。
【0024】
前述のとおり、本発明のコラーゲン分解酵素のコラーゲン分解活性は、EDTA、EGTAおよび1,10−フェナントロリン一水和物により阻害される。ただし、前記コラーゲン分解活性の阻害は、EDTA、EGTAおよび1,10−フェナントロリン一水和物以外のプロテアーゼ阻害剤で生じてもよい。
【0025】
本発明のコラーゲン分解酵素は、前述のように、(7-メトキシクマリン-4-イル)アセチル-プロリル-ロイシル-グリシル-ロイシル-[Nβ-(2,4-ジニトロフェニル)-2,3-ジアミノプロピオニル]-アラニル-アルギニンアミドを分解する。この基質は、例えば、MOCAc-Pro-Leu-Gly-Leu-A2pr(Dnp)-Ala-Arg-NH2(株式会社ペプチド研究所製)で表わされるが、以下、「PLGL(D)AR」という。前記PLGL(D)ARは、蛍光合成基質であり、(7-メトキシクマリン-4-イル)アセチル基(MOCAc)は蛍光基、Nβ-(2,4-ジニトロフェニル)-2,3-ジアミノプロピオニル基(A2pr(Dnp))は消光基である。そして、テトラペプチドPro-Leu-Gly-LeuのC末端側に、蛍光基MOCAcが、前記テトラペプチドのN末端側に、消光基A2pr(Dnp)を介して、ジペプチドAla-Argがそれぞれ結合している。本発明のコラーゲン分解酵素の前記PLGL(D)ARに対する反応速度定数(kcat/Km)は、特に限定されないが、例えば、150,000〜200,000M−1・s−1の範囲であってもよい。
【0026】
本発明のコラーゲン分解酵素は、例えば、コラーゲン分解活性以外の酵素活性を有していてもよい。また、後述するような食肉の軟化に使用する場合、本発明のコラーゲン分解酵素は、例えば、ミオシンやアクチン等の筋原線維タンパク質に対する分解活性が低いことが好ましく、前記筋原線維タンパク質の分解活性を有さないことがより好ましい。
【0027】
<コラーゲン分解酵素の製造方法>
本発明のコラーゲン分解酵素の製造方法は、特に限定されないが、例えば、前述のように、本発明の低温細菌を培養して、コラーゲン分解酵素を産生させることによって製造できる。
【0028】
前記低温細菌の培養方法は、特に制限されず、従来公知の培養方法に基づいて、適宜実施できる。
【0029】
前記低温細菌の培養に使用する培地の形態は、特に限定されず、例えば、固体培地、液体培地等、従来公知の培地を適宜使用できる。前記培地に含まれる成分は、特に限定されず、例えば、窒素源、糖類、塩類等が挙げられる。前記窒素源としては、特に限定されず、例えば、カゼイン、ゼラチン、魚由来タンパク質、豆由来タンパク質等のタンパク質が挙げられる。また、前記糖類は、特に限定されず、例えば、グルコース、スクロース、フルクトース、ラフィノース等が挙げられる。前記塩類も、特に限定されず、例えば、塩化ナトリウム、リン酸水素二カリウム、塩化マグネシウム等が挙げられる。前記培地は、例えば、市販培地を含んでもよい。前記市販培地としては、特に限定されず、例えば、トリプティックソイブロス(Difco社製)、Bacterio−N KN、Bacterio−N KS、Bacterio−N SH、Bacterio−N PF(マルハ株式会社製)、ポリペプトン(和光純薬株式会社製)、ゼラチンペプトン(ナカライテスク株式会社製)等が挙げられる。これらは、一種類でもよいし、二種類以上を併用してもよい。前記培地のpHは、特に限定されず、例えば、pH3〜11の範囲、好ましくは、pH5〜8の範囲である。
【0030】
前記低温細菌の培養方法は、特に制限されず、前記固体培地を用いた場合には、例えば、平板培養法、斜面培養法等が挙げられる。また、前記液体培地を用いた場合にも、特に限定されず、例えば、静置培養法、通気培養法、振とう培養法等が挙げられる。
【0031】
培養温度は、特に限定されないが、例えば、前述した前記低温細菌の生育可能温度や、前記生育最適温度等が挙げられる。具体的には、例えば、−5〜50℃の範囲、10〜40℃の範囲等で行うことができる。
【0032】
前記低温細菌は、例えば、好気的条件下で培養してもよく、嫌気的条件下で培養してもよい。前記好気的条件または嫌気的条件は、特に制限されず、従来公知の方法を用いて設定できる。
【0033】
本発明のコラーゲン分解酵素の製造方法は、例えば、さらに、コラーゲン分解酵素の回収工程等を有していてもよい。
【0034】
前記回収工程は、特に制限されないが、本発明の低温細菌は、本発明のコラーゲン分解酵素を菌体外に放出することから、例えば、前記低温細菌を培養した培養液から本発明のコラーゲン分解酵素を含む上清(液体画分)を回収する工程を含んでもよい。前記上清の回収方法は、何ら制限されず、例えば、遠心分離やろ過等によって培養細菌を除去することによって、回収できる。前記遠心分離およびろ過処理は、従来公知の方法を用いて適宜実施でき、特に制限されない。
【0035】
前記回収工程は、例えば、さらに、本発明のコラーゲン分解酵素を精製する工程を含んでもよい。酵素の精製は、例えば、部分精製でもよいし、完全な精製であってもよい。本発明のコラーゲン分解酵素の精製方法としては、特に制限されず、従来公知の手法を採用できる。具体例としては、例えば、塩析、限外ろ過、疎水性相互作用クロマトグラフィー、分子篩クロマトグラフィーおよびアフィニティクロマトグラフィー等のクロマトグラフィー、その他従来公知の精製手法が採用できる。本発明のコラーゲン分解酵素を精製する手法としては、一例として、塩析、疎水性相互作用クロマトグラフィー、および、分子篩クロマトグラフィーであるゲルろ過クロマトグラフィーを順次行う方法が挙げられるが、これには何ら制限されない。
【0036】
本発明の製造方法に用いる菌体としては、特に限定されず、本発明の低温細菌の他に、例えば、本発明のコラーゲン分解酵素遺伝子を導入して形質転換させた微生物、植物細胞、動物細胞等も挙げられる。前記形質転換させる微生物および細胞は、特に限定されず、また、形質転換方法も、特に限定されず、遺伝子を導入する宿主の種類等に応じて、適宜決定できる。
【0037】
<軟化食肉の製造方法>
本発明の軟化食肉の製造方法は、食肉の酵素処理に、本発明のコラーゲン分解酵素を使用することが特徴である。このため、本発明のコラーゲン分解酵素を使用する以外は、例えば、その他の工程や条件等は、何ら制限されない。
【0038】
本発明の軟化食肉の製造方法において、前記コラーゲン分解酵素の形態は、特に限定されず、例えば、粉末状、酵素を溶解または分散した液体状等が挙げられる。
【0039】
前記コラーゲン分解酵素の食肉への適用方法は、特に制限されず、例えば、塗布、注入、浸漬等が挙げられる。前記塗布方法としては、特に制限されず、例えば、前記コラーゲン分解酵素を、食肉表面に直接振りかけ、擦り込んでもよい。また、前記注入方法としては、特に制限されず、例えば、注射筒等を用いて、液体状のコラーゲン分解酵素を、食肉内に注入してもよい。そして、前記浸漬方法も、特に制限されず、例えば、本発明のコラーゲン分解酵素を含む溶液中に、前記食肉を浸漬してもよい。なお、前記食肉に対する前記コラーゲン分解酵素の酵素量は、特に制限されない。
【0040】
前記酵素処理の温度は、特に限定されないが、例えば、0〜37℃の範囲、好ましくは、0〜20℃の範囲である。なお、前記酵素処理は、この温度範囲には限られず、例えば、0℃以下、例えば、−5〜0℃でも処理可能である。
【0041】
前記酵素処理の日数は、特に限定されないが、例えば、1〜1000日の範囲であり、好ましくは、1〜10日の範囲である。
【0042】
本発明において、酵素処理する食肉の種類は、特に限定されず、例えば、牛、豚、鶏、羊、鯨等の食用の獣肉およびその臓器、イカ、エビ、マグロ等の食用の魚肉およびその臓器等が挙げられる。前記食肉は、例えば、生肉、冷凍肉、加工肉であってもよく、特に限定されない。前記獣肉の部位は、特に限定されず、例えば、ネック、かた、ばら、ヒレ、リブロース、サーロイン、すねが挙げられる。前記臓器の部位も、特に限定されず、例えば、舌、心臓、横隔膜、アキレス腱、胃、腸、肝臓、子宮、精巣、卵巣、卵、皮等が挙げられる。本発明の軟化食肉の製造方法は、例えば、ローストビーフ等の加工肉、ソーセージのケーシングに用いる羊腸および豚腸等を軟化させ、高品質化する用途で用いることも可能である。
【実施例】
【0043】
つぎに、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0044】
(実施例1)
本例の低温細菌は、以下の手順により作製した。
【0045】
(1)低温細菌の単離
まず、寒冷地の土壌サンプルおよび冷蔵庫中に長期間保存された食品(米飯、南瓜、もやし、栗皮シロップ)を準備した。前記土壌および食品サンプル各約0.5gに、生理食塩水(0.88(w/v)%NaCl)1mLを加えて懸濁後、さらに、生理食塩水を加えて1×10〜1×10倍に希釈した。各希釈溶液を、常法により作製したトリプティックソイ寒天培地(Difco製)に塗抹し、4℃で10日間培養した。培養終了後、形成したコロニーを画線培養で単離した。
【0046】
(2)コラーゲンゲル培地によるスクリーニング
まず、参考文献(Journal of Agricultural and Food Chemistry、2003、Vol.51、No.27、p.8088−8092)記載のコラーゲン調製方法に基づいて、豚皮から調製した酸可溶性コラーゲンを、酢酸溶液(pH4.0)に10mg/mLの濃度で溶解し、コラーゲン溶液を調製した。45mg/mLトリプティックソイブロス溶液および前記コラーゲン溶液を、ペトリ皿または96ウェルプレート内で等量ずつ混合後、37℃で1時間保温し、コラーゲンゲル培地を作製した。前記コラーゲンゲル培地を紫外線(254nm)に1時間照射して殺菌した。そして、前記コラーゲンゲル培地を4℃で一晩静置後、前記単離した低温細菌のコロニーから、少量の菌体をかき取り、前記コラーゲンゲル培地上に移し、4℃で3〜5日間培養した。培養終了後、前記コラーゲンゲル培地の変化を観察した。前記コラーゲンゲル培地を溶解し、透明に変化させた細菌を、本例の低温細菌とした。
【0047】
下記表1に、本例の低温細菌のスクリーニング結果を示す。低温環境から採取した土壌および食品55サンプルから、692コロニーの低温細菌を単離した。これらの単離した低温細菌の内、10コロニーの低温細菌が、培養に用いたコラーゲンゲル培地を透明に液化させ、コラーゲン分解活性を示した。このうち、短期間で、最も広範囲にコラーゲンゲル培地を液化させた低温細菌を、C35株とした。また、集菌した前記C35の菌色は、赤色であった。
【0048】
(表1)
採取源 サンプル数 細菌数 活性を有する細菌数
寒冷地域の土壌1 17 169 8
寒冷地域の土壌2 10 120 0
寒冷地域の土壌3 5 30 0
寒冷地域の土壌4 7 233 2
寒冷地域の土壌5 11 126 0
冷蔵庫内の食品 5 14 0
合計 55 692 10
【0049】
(3)位相差顕微鏡観察
前記C35株を、位相差顕微鏡で観察するために、以下のようにして、寒天コートスライドグラスを作製した。まず、寒天粉末(和光純薬株式会社製)2.2gに、純水200mLを加えて10分間混合後、寒天粉末を沈降させて上清を除去し、寒天に含まれる水溶性不純物を除去した。この除去工程を3回行った後、不純物を除去した寒天粉末に、純水100mLを加えて加熱し、寒天を溶解させた。得られた寒天溶液を、ピペットを用いてスライドグラス上に塗抹後、一晩乾燥させ、寒天コートスライドグラスを作製した。一方、本例の低温細菌を、水溶液中に懸濁し、菌体懸濁液を調製した。前記寒天コートスライドグラス上に、前記菌体懸濁液を滴下し、カバーガラスで覆い、倒立顕微鏡(ECLIPSE TE2000−U、ニコン社製)により観察した。なお、前記観察に用いるレンズ倍率は、接眼レンズを10倍、対物レンズを100倍とした。
【0050】
その結果、前記C35株は、大きさが約3μm×約1μmの桿菌であり、運動性を示すことが確認された。
【0051】
(4)グラム染色観察
C35株のグラム染色は、以下のようにして行った。まず、下記組成のクリスタルバイオレット液およびルゴール液を調製した。また、エタノールにサフラニンを2.5%の濃度で溶解させ、さらに純水で10倍に希釈し、サフラニン溶液を調製した。
【0052】
(クリスタルバイオレット液の組成)
成分 配合量
クリスタルバイオレット 2g
エタノール 20mL
シュウ酸アンモニウム 0.8g
純水 80mL
【0053】
(ルゴール液の組成)
成分 配合量
ヨウ素 1g
ヨウ化カリウム 2g
純水 300mL
【0054】
前記寒天コートスライドグラス上に、前記菌体懸濁液を塗布し、乾燥させた。乾燥後、前記スライドグラスを、ガスバーナーの炎の上方を2〜3度通過させて、前記菌体懸濁液の水分を蒸発させ、菌体を前記スライドグラス上に固定させた。そして、前記スライドグラスに前記クリスタルバイオレット液を滴下し、固定した前記菌体を1分間染色した。つぎに、前記スライドグラスを水洗後、前記菌体に前記ルゴール液を1分間適用し、色素を不溶化させた。さらに、前記スライドグラスを水洗後、95%エタノールを用いて脱色した。再度水洗し、風乾後、前記サフラニン溶液を滴下して1分間染色した。水洗および風乾後、グラム染色した菌体を、倒立顕微鏡(ECLIPSE TE2000−U、ニコン社製)を用いて観察した。なお、前記顕微鏡のレンズ倍率は、接眼レンズを10倍、対物レンズを100倍とした。
【0055】
前記C35株をグラム染色した結果を図1に示す。その結果、前記C35株は、赤色に染色され、グラム陰性菌であることが確認された。
【0056】
(5)DHL培地培養
DHL寒天培地「ダイゴ」(日本製薬社製)64gとグルコース10gを精製水1Lに加熱溶解し、高圧蒸気滅菌後、ペトリ皿または96ウェルプレートに分注して平板に固め、DHLゲル培地を作製した。前記単離した低温細菌のコロニーから、少量の菌体をかき取り、前記DHLゲル培地上に移し、28℃で2日間培養した。培養後、コロニー色を目視観察し、硫化水素産生の有無を確認した。
【0057】
DHL培地を用いて培養した前記C35株は、赤いコロニーを形成した。この結果から、前記C35株は、好気的条件下では硫化水素を産生しないことが確認された。
【0058】
(6)16S rRNA遺伝子配列の解析
本例の低温細菌について、以下のようにして、16S rRNA遺伝子配列を解析した。
【0059】
(6−a)ゲノムDNAの抽出
まず、以下に示す組成のバッファー溶液、RNase溶液、CTAB/NaCl溶液を調製した。また、クロロホルムとイソアミルアルコールを24:1の割合で混合し、CI溶液を調整した。また、トリプティックソイブロス(Difco社製)30gを精製水1Lに溶解し、トリプティックソイブロス培地を調製した。
【0060】
(バッファー溶液の組成)
成分 濃度
トリス塩酸バッファー溶液(pH8.0) 10mM
EDTA 1mM
NaCl 5M
酢酸ナトリウム溶液(pH5.2) 3M
【0061】
(RNase溶液の組成)
成分 濃度
トリス塩酸バッファー溶液(pH7.5) 10mM
NaCl 15mM
RNase(和光純薬株式会社) 10mg/mL
【0062】
(CTAB/NaCl溶液の組成)
成分 濃度
CTAB 10w/v%
NaCl 0.7M
【0063】
本例の低温細菌を、前記トリプティックソイブロス培地を用いて、28℃、110rpm(往復)の条件で12時間振とう培養した。培養後の培養液500μLをマイクロチューブに入れ、遠心分離後、上清を除去した。得られた菌体に、生理食塩水を1mL加えて懸濁し、遠心分離後、上清を除去する工程を3度行い、前記菌体を洗浄した。洗浄後の菌体に滅菌超純水を加え、−20℃で凍結保存した。凍結保存した菌体懸濁液40μLを氷上で融解させ、前記バッファー溶液567μLを添加した。さらに、10w/v%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)30μL、20mg/mLプロテイナーゼK(和光純薬株式会社製)3μLを加え、ボルテックス後、37℃で1時間インキュベートした。
【0064】
インキュベートした菌体懸濁液に、5M NaClを100μL加え、ボルテックスして混合した。さらに、前記CTNB/NaCl溶液80μLを加えて混合し、65℃で10分間インキュベートした。インキュベート後、等量の前記CI溶液を加え、20秒間ボルテックスし、25℃、20000×g(gは重力加速度(9.80665m/sec)を表す。以下同じ。)の条件で5分間遠心分離した。上層の水層を採取し、等量の前記CI溶液を加えて、前記条件でさらに5分間遠心分離した。上層の水層を採取し、1.5倍容量のイソプロパノールを加え、室温で10分間静置した。静置後、前記条件で10分間遠心分離した。上清を除去し、沈殿したDNAに70w/w%エタノール1mLを加え、混合後、さらに、4℃、20000×gの条件で5分間遠心分離した。得られた沈殿物を遠心凍結乾燥機を用いて乾燥し、ゲノムDNAを調製した。前記ゲノムDNAを、前記バッファー溶液100μLに溶解し、前記RNase溶液1μLを加え、37℃で1時間インキュベートした。さらに、等量のCI溶液を添加し、20秒間ボルテックスした後、25℃、20000×gの条件で15秒間遠心分離した。遠心分離後、上層の水層を採取して、別のチューブに移した。下層の沈殿物に、前記バッファー溶液100μLを加え、20秒間ボルテックスした後、25℃、20000×gの条件で15秒間遠心分離した。遠心分離後、上層の水層を採取し、前記別のチューブに移しておいた水層に加えた。得られた水層200μLに、3M 酢酸ナトリウム溶液20μLおよび100%エタノール500μLを加えて混合し、室温で10分間静置した。静置後、4℃、20000×gの条件で10分間遠心分離し、上清を除去した。得られた沈殿物に70w/w%エタノール1mLを添加して混合後、4℃、20000×gの条件で5分間遠心分離した。上清を除去し、得られた沈殿物を乾燥し、前記バッファー溶液100μLに溶解してDNA溶液を調製した。前記DNA溶液は、使用時まで−20℃で凍結保存した。
【0065】
(6−b)アガロースゲル電気泳動
まず、以下に示す組成の泳動バッファーおよびローディングバッファーを調製した。
【0066】
(泳動バッファー(×50TAE)の組成)
成分 配合量
トリス 242g
酢酸 57.1mL
EDTA・2Na(2HO) 18.6g
上記三成分を混合し、純水で1000mLにメスアップした。
【0067】
(ローディングバッファーの組成)
成分 配合量
ブロモフェノールブルー 25mg
キシレンシアノールFF 25mg
グリセロール 3mL
0.5M EDTA水溶液(pH8.0) 100μL
上記四成分を混合し、純水で10mLにメスアップした。
【0068】
アガロース(ナカライテスク社製)に前記泳動バッファーを加えて加熱し、0.6%アガロースゲル溶液を調製した。前記アガロースゲル溶液を、50〜60℃まで冷却後、ゲルトレイとコームをセットしたゲル形成トレイに流し込んだ。アガロースゲルの固化後、コームを除去し、電気泳動槽(製品名「ジーニアス」、エスケーバイオ・インターナショナル株式会社製)に前記アガロースゲルをセットした。前記電気泳動槽に、アガロースゲル表面が浸漬する程度まで前記バッファー溶液を加えた。一方、前記DNA溶液と前記ローディングバッファーを、5:1の割合で混合し、泳動サンプルを調製した。前記泳動サンプルを、ウェルに適用後、100Vの電圧で、ブロモフェノールブルーがゲル長の7割程度移動するまで電気泳動した。
【0069】
電気泳動後、アガロースゲルを、0.5μg/mLのエチジウムブロマイド溶液に30分間浸漬した。浸漬後、紫外線照射装置を用いて、アガロースゲルに302nmの紫外線を照射し、デジタルカメラで撮影した。
【0070】
(6−c)16S rRNA遺伝子の増幅
本例の低温細菌について、以下のようにして、16S rRNA遺伝子の塩基配列を解析した。
【0071】
まず、抽出した前記DNA溶液を用いて、PCR反応を行った。前記PCR反応において、DNAポリメラーゼには、TaKaRa Ex Taq(登録商標、タカラバイオ株式会社製)を用い、プライマーには、以下のプライマーセット(配列番号2〜7)を用いた。また、PCR反応は、サーマルサイクラーを用い、以下のPCR条件で行った。
【0072】
(プライマーセット1)
フォワードプライマー 16s F1−1:5´-agagtttgatcctggctcag-3´(配列番号2)
リバースプライマー 16s r3:5´-ttaccgcggctgctggc-3´(配列番号3)
【0073】
(プライマーセット2)
フォワードプライマー 16s F3:5´-gccagcagccgcggtaa-3´(配列番号4)
リバースプライマー 16s r4:5´-ccgtcaattcctttgagttt-3´(配列番号5)
【0074】
(プライマーセット3)
フォワードプライマー 16s F4:5´-aaactcaaaggaattgacgg-3´(配列番号6)
リバースプライマー 16s r1:5´-aaggaggtgatccagcc-3´(配列番号7)
【0075】
(プライマーセット4)
フォワードプライマー 16s F1−1:5´-agagtttgatcctggctcag-3´(配列番号2)
リバースプライマー 16s r1:5´-aaggaggtgatccagcc-3´(配列番号7)
【0076】
(PCR条件:反応液の組成)
配合物 配合量
10×Reaction buffer 2.5μL
dNTP mixture(各2.5mM) 2.0μL
フォワードプライマー(10pM) 1.25μL
リバースプライマー(10pM) 1.25μL
DNA溶液(0.2875μg/mL) 0.35μL
滅菌超純水 15.45μL
Ex taq DNA polymerase(5U/μL) 0.2μL
MgCl(25mM) 2.0μL
【0077】
(PCR条件:反応条件)
サイクル1:94℃で3分間変性、55℃で1分間アニーリング、72℃で2分間伸長
サイクル2:94℃で1分間変性、55℃で1分間アニーリング、72℃で2分間伸長
サイクル3:94℃で1分間変性、55℃で1分間アニーリング、72℃で10分間伸長
前記サイクル1を1回、前記サイクル2を30回、前記サイクル3を1回の順に、PCR反応を行った。
【0078】
(6−d)16S rRNA遺伝子の精製
前記PCR反応により増幅させたDNA断片を、0.6%アガロースゲル上で電気泳動した。アガロースゲル電気泳動は、アガロースゲル濃度を0.6%としたこと以外は、前述と同様にして行った。泳動後のアガロースゲルは、0.5μg/mLエチジウムブロマイド溶液に30分間浸漬後、302nmの紫外線を照射しながら、目的のバンドを含むゲルを切り出した。切り出したゲルを、パラフィルム(登録商標、Pechiney Plastic Packaging社製)を用いて潰し、DNA溶液を回収した。回収したDNA溶液と等量の前記CI溶液を加えてボルテックス後、4℃、20000×gの条件で1分間遠心分離した。上層の水層を別のチューブに分取し、残った下層に前記バッファー溶液を等量加え、前記条件で1分間遠心分離した。得られた上層の水層を採取し、先に分取した水層に加えた。さらに、全量の1/10量の3M 酢酸ナトリウムおよび3倍量の100%エタノールを加え、−60℃で15分間静置後、前記条件で15分間遠心分離した。遠心分離後、得られた沈殿物を、遠心凍結乾燥機により乾燥し、前記バッファー溶液8μLに溶解させた。前記DNA溶解液1μLを、2%アガロースゲル上で電気泳動し、純度を確認した。前記アガロースゲル電気泳動は、アガロースゲル濃度を2%としたこと以外は、前述と同様にして行った。
【0079】
(6−e)ダイレクトシークエンス反応
前記DNA溶解液および下記反応液を用いて、精製したC35株由来DNAについてダイレクトシークエンス反応を行った。前記シークエンス反応には、BigDye(登録商標) Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit(アプライドバイオシステムズジャパン株式会社製)を用いた。前記反応液におけるプライマーとしては、前記プライマーセット1を用いて増幅したDNAには、前記プライマーセット1を用い、前記プライマーセット2を用いて増幅したDNAには、前記プライマーセット2を用い、前記プライマーセット3を用いて増幅したDNAには、前記プライマーセット3を用いた。前記シークエンス反応は、サーマルサイクラーを用い、以下に示す反応条件で行った。
【0080】
(反応液組成)
配合物 配合量
DNA溶解液 3μL
プライマー(10pM) 2μL
Pre−Mix※ 2.5μL
滅菌超純水 2.5μL
※Big Dye Terminator v3.1
【0081】
(反応条件)
前記反応液を、96℃で1分間処理(変性)した後、5℃で30秒間(変性)、50℃で15秒間(アニーリング)および60℃で4分間(伸長)を1セットとして合計35セット繰り返し、さらに、4℃で冷却した。
【0082】
前記シークエンス反応後、20mg/mLグリコーゲン溶液を1μL添加し、さらに全量の70%濃度になるようエタノールを加え、−20℃で一晩静置した。これを、4℃、20000×gの条件で15分間遠心分離後、回収した沈殿物に70%エタノールを1mL加えて軽く混合し、前記条件で、再度遠心分離した。得られた沈殿物を遠心凍結乾燥機により乾燥させ、オートシークエンサー(ABI PRISM(登録商標)3100−Avant Genetic Analyzer、アプライドバイオシステムズジャパン社製)により、塩基配列を調べた。
【0083】
前記C35株から抽出した16S rRNA遺伝子のDNAをアガロースゲル電気泳動した結果を、図2に示す。同図中のレーン1は、抽出したゲノムDNA、レーン2は、前記プライマーセット1を用いて増幅させたDNA断片、レーン3は、前記プライマーセット2を用いて増幅させたDNA断片、レーン4は、前記プライマーセット3を用いて増幅させたDNA断片、レーン5は、前記プライマーセット4を用いて増幅させたDNA断片の泳動結果である。さらに、レーン6〜9は、前記増幅したDNA断片の精製DNAを、電気泳動した結果である。レーン6は、前記レーン2の精製DNA、レーン7は、前記レーン3の精製DNA,レーン8は、前記レーン4の精製DNA、レーン9は、前記レーン5の精製DNAを、それぞれ泳動した結果である。
【0084】
前記レーン6〜8の精製DNAについて、前記プライマーセット1〜3を用いてダイレクトシークエンスを行い、16S rRNA遺伝子の部分配列(配列番号1)を決定した。前記部分配列の塩基長は、1536塩基であった。
【0085】
前記16S rRNA遺伝子の部分配列(配列番号1)について、日本DNAデータバンクの情報を基にBLAST検索を行い、系統分析を行った結果を図3に示す。なお、図中の0.01で示すバーは、全塩基配列の1%の誤差を示す。同図に示すように、前記C35株は、シュワネラ属(Shewanella)に分類され、シュワネラ・プトレファシエンス(S.putrefaciens)、シュワネラ・ダブリュ3−18−1(S.W3−18−1)、シュワネラ・バルティカ(S.baltica)の近縁種であった。前記C35株を、Shewanella sp. strain C35と命名した。
【0086】
(実施例2)
本例では、前記C35株の生育最適温度を確認した。
【0087】
(培養)
前記C35株を、前記トリプティックソイブロス培地を用いて、28℃、110rpm(往復)の条件で12時間振とう培養した。得られたC35株培養液を、前記トリプティックソイブロス培地25mLに加え、前記培地の600nmにおける吸光度(OD600)を0.360に調整した。前記吸光度を調整したC35株培養液を六つ準備し、各々、所定温度(4、10、20、28、33、37℃)、4時間、110rpm(往復)の条件で振とう培養した。
【0088】
(生育率の測定)
所定温度(4、10、20、28、33、37℃)で培養した各C35株培養液のOD600を、各々測定した。最もOD600値の高い温度条件の生育率を100%として、各温度条件における相対生育率(%)を算出した。
【0089】
各温度条件下におけるC35株の相対生育率の結果を、下記表2および図4に示す。同グラフの横軸は、各培養液の培養温度(℃)であり、縦軸は、相対生育率(%)である。同グラフに示すように、前記C35株の生育最適温度は、28℃であった。また、前記C35株は、4℃から37℃の温度条件で、生育可能であった。
【0090】
【表2】

【0091】
(実施例3)
本例では、前記C35株を、種々の培地を用いて培養し、生育率を確認した。
【0092】
(培地組成)
成分 配合量
基本培地 20.0g
グルコース 2.5g
NaCl 5.0g
HPO 2.5g
純水 1000mL
【0093】
(基本培地)
基本培地(略称、製造会社) 窒素源(タンパク質)の由来
トリプティックソイブロス(TSB、Difco社) カゼイン・動物
ポリペプトン(PP,和光純薬株式会社) カゼイン
ゼラチンペプトン(GP、ナカライテスク株式会社) ゼラチン
Bacterio−N KS(KS、マルハ株式会社) マグロ
Bacterio−N KN(KN、マルハ株式会社) カツオ・マグロ
Bacterio−N SH(SH、マルハ株式会社) ダイズ
Bacterio−N PF(PF、マルハ株式会社) エンドウ
【0094】
(培養)
前記表に示す培地を用いて、前記C35株を、28℃、110rpm(往復)の条件で12時間振とう培養した。得られたC35株培養液を、前記培地を用いて、600nmにおける吸光度(OD600)が、1.000となるように調整した。前記吸光度を調整したC35株培養液50μLを、前記培地25mLに加え、4℃、110rpm(往復)の条件で3日間振とう培養した。
【0095】
(生育率の測定)
得られた各C35株培養液について、OD600を測定した。基本培地としてTSBを用いた際のOD600値を生育率100%とし、各例の相対生育率(%)を算出した。
【0096】
各培養液の相対生育率(%)の算出結果を、下記表3および図5に示す。同図において、グラフの各バーは、基本培地の種類を示し、縦軸は、各培養液の相対生育率(%)を示す。同図に示すように、TSBを基本培地として用いた場合の生育率(100%)に対し、GP、KSおよびKNをそれぞれ用いた場合、2倍以上の高い生育率を示した。一方、PP、SHおよびPFをそれぞれ基本培地として用いた場合、これらの生育率は、TSBを用いた場合の約20%以下であった。これらの結果から、前記C35株の生育に好ましい基本培地は、TSB、GP、KSおよびKNであることがわかった。
【0097】
【表3】

【0098】
(実施例4)
本例では、種々の培地を用いてC35株の培養を行い、コラーゲン分解活性を確認した。
【0099】
(培養)
培養期間を9日間としたこと以外は、実施例3と同様にして、TSB、PP、GP、KS、KN、SHまたはPFを含む培地を使用して前記C35株を培養した。
【0100】
(コラーゲン分解活性測定)
得られた各C35株培養液を遠心分離して。各上清を回収し、以下の手順で、コラーゲン分解活性を測定した。
【0101】
まず、下記表4および5に示す組成のコラーゲン基質液およびSDS溶液を調製した。下記コラーゲン基質液は、前記実施例1の(2)と同様に調製したコラーゲン溶液を使用して調製した。前記コラーゲン基質液30μLに、前記上清10μLを加え、25℃で3時間インキュベートした。さらに、前記SDS溶液8μLおよびメルカプトエタノール2μLを加え、100℃で2分間加熱し、SDS−PAGEサンプルを調製した。なお、コントロールとして、前記上清未添加のサンプルを準備した。
【0102】
(表4)コラーゲン基質液
成分 配合量
10mg/mL コラーゲン溶液 10μL
10mM CaCl含有10mMトリス塩酸バッファー(pH7.5) 20μL
【0103】
(表5)SDS溶液
成分 配合量
SDS 2.5g
グリセロール 15mL
0.2% ブロモフェノールブルー 10mL
50mM トリス塩酸バッファー(pH6.7) 10mL
TEMED(テトラメチルエチレンジアミン) 0.046mL
純水 所定量
計 50mL
【0104】
一方、上層ゲル濃度を4%、下層ゲル濃度を11%とした、ポリアクリルアミドゲルを作製した。前記コントロールおよび前記SDS−PAGEサンプルを、前記ポリアクリルアミドゲルに適用し、Laemmli法により12mAで120分間電気泳動した。泳動終了後、ポリアクリルアミドゲルをCBB染色法により染色した。
【0105】
図6に、各C35株培養液のコラーゲン分解活性を表す電気泳動の結果を示す。同図において、Ctは、コントロール、TSB、PP、GP、KS、KN、SHおよびPFは、それぞれ、各基本培地を使用した培養液の上清についての結果である。コントロールレーンに見られる3つの太いバンドは、上から順に、コラーゲンのγ鎖、β鎖およびα鎖である。前記C35株培養液が、コラーゲン分解活性を有する場合には、前記三つの鎖が分解されるため、各位置のバンドの発色が弱くなり、低分子側(図内下側)に別のバンドが確認される。同図に示すように、前記コラーゲン分解活性は、TSB、KNの順に、特に高い活性が見られた。その他の培地を用いた場合には、活性の高い順に、KS、PF、PP、GP、SHにコラーゲン分解活性が見られた。
【0106】
(実施例5)
本例では、前記C35株が産生するコラーゲン分解酵素を精製した。なお、各精製段階で得られた酵素サンプルは、つぎに示す手順により、タンパク質濃度およびコラーゲン分解活性を測定した。
【0107】
(タンパク質濃度の測定)
Lowry法を用いてタンパク質濃度を測定した。基準のタンパク質は、牛血清アルブミンを用いた。得られたタンパク質濃度および各酵素液量から、各精製段階で得られた酵素サンプルの総タンパク質量(mg)を算出した。
【0108】
(コラーゲン分解活性の測定)
酵素サンプルについて、以下のようにして、SDS−PAGE法によるポリアクリルアミドゲル電気泳動を行った。酵素サンプル10μLに、前記SDSバッファー8μLを加え、100℃で2分間加熱し、SDS−PAGEサンプルを調製した。前記実施例4と同様にして、前記サンプルについて、電気泳動およびCBB染色を行った。得られたゲルを乾燥させ、ゲルをスキャンし、コラーゲンのバンド面積を、Image Quant(GEヘルスケアバイオサイエンス株式会社製)を用いて測定した。あわせて、酵素サンプル未添加のSDS−PAGEサンプルをコントロールとし、同様に測定を行った。コラーゲンのβ鎖のバンド面積を1%減少させる酵素量を、コラーゲン分解活性1Uと定義し、下記式(1)に基づいて算出した。また、比活性は、下記式(2)に基づいて算出した。
【0109】
【数1】

【0110】
【数2】

【0111】
(1)C35株の培養
前記C35株を、前記TSB培地を用いて、28℃、110rpm(往復)の条件で12時間振とう培養した。得られたC35株培養液0.5mLを、前記TSB培地250mLに加え、4℃、110rpm(往復)の条件で、84時間振とう培養した。培養後、4℃、10,000×gの条件で15分間遠心分離し、培養上清液を得た。前記培養上清液について、前述の方法を用いて、タンパク質濃度およびコラーゲン分解活性を測定した。
【0112】
前記培養上清液は、総タンパク質量が13543.549mgであり、4U/mgの比活性を有した。
【0113】
(2)硫酸アンモニウムによる分画
前記培養上清液に、40%濃度になるように硫酸アンモニウムを加え、0%−40%飽和の沈澱物を除去した後、さらに、45%飽和濃度になるまで硫酸アンモニウムを加え塩析させた。4℃、20000×gの条件で15分間遠心分離し、塩析した沈殿物(以下、「40〜45%塩析物」とする)を回収した。前記40〜45%塩析物を、10mM CaClを含む10mMトリス塩酸バッファー(pH7.5)に溶解し、その溶解液を前記CaCl含有トリス塩酸バッファーで透析した。透析後、得られた透析液に、30%濃度になるように硫酸アンモニウムを加え、0%−30%飽和の沈殿物を除去した後、さらに、40%飽和濃度になるまで硫酸アンモニウムを加えて塩析させた。4℃、20000×gの条件で15分間遠心分離し、塩析した沈殿物(以下、「30〜40%塩析物」とする)を回収した。前記30〜40%塩析物を、前記CaCl含有トリス塩酸バッファーに溶解し、粗酵素液を得た。この粗酵素液について、前述の方法を用い、タンパク質濃度およびコラーゲン分解活性を測定した。また、前記40〜45%塩析物についても同様に、タンパク質濃度およびコラーゲン分解活性を測定した。
【0114】
塩析の結果、前記40〜45%塩析物は、総タンパク質量10.847mg、比活性439U/mgであった。また、さらに塩析させた30〜40%塩析物から得られた粗酵素液は、総タンパク質量1.761mg、比活性974U/mgのコラーゲン分解活性であった。
【0115】
(3)疎水性相互作用クロマトグラフィーによる精製
前記粗酵素液に、1M濃度になるように硫酸アンモニウムを加え、HiTrap Butyl−S FF(GEヘルスケアバイオサイエンス株式会社製)を用いた疎水性相互作用クロマトグラフィーにより、さらに精製を行った。前記疎水性相互作用クロマトグラフィーにおいて、タンパク質の溶出操作、280nmにおける吸光度の測定、および伝導度の測定は、AKTA explorer 10S(GEヘルスケアバイオサイエンス株式会社製)を用いて行った。前記タンパク質の溶出は、以下に示す溶出バッファーおよび溶出条件を用いて行った。
【0116】
(溶出バッファー)
(A):1M硫酸アンモニウム、および
10mM CaClを含む10mMトリス塩酸バッファー(pH7.5)
(B):10mM CaClを含む10mMトリス塩酸バッファー(pH7.5)
【0117】
(溶出条件)
カラムサイズ(ゲル容量):1cm
濃度勾配:溶出バッファー(A)100%から溶出バッファー(B)100%へのグラジエントで、合計10mLで溶出
流速:1ml/min
分画量:1mL
【0118】
(タンパク質精製度の確認)
得られた各フラクションについて、SDS−PAGE法を用いてタンパク質の精製度を確認した。まず、各フラクション100μLを遠心濃縮器で濃縮した濃縮フラクション10μLに、前記SDSバッファー8μLを加え、100℃で2分間加熱し、SDS−PAGEサンプルを調製した。そして、前記実施例4と同様にして、前記サンプルについて電気泳動を行った。泳動終了後、ゲルを銀染色法により染色した。
【0119】
(タンパク質濃度およびコラーゲン分解活性の測定)
得られた各フラクションについて、前述の方法を用いて、タンパク質濃度およびコラーゲン分解活性を測定した。
【0120】
疎水性相互作用クロマトグラフィーによるタンパク質溶出パターンおよび各フラクションのコラーゲン分解活性のチャートを、図7に示す。同図において、△のプロットは、280nmにおけるフラクションの吸光度であり、溶出されたタンパク質量を示し、○のプロットは、コラーゲン分解活性であり、□のプロットは、溶出バッファーの伝導率である。その結果、図7に示すように、フラクション1〜8のうち、フラクション2〜8に、コラーゲン分解活性が見られた。また、フラクション1〜8のタンパク質精製度を示すSDS−PAGEの結果を、図8に示す。同図において、レーンMは、分子量マーカー、レーン1からレーン8は、順に、フラクション1からフラクション8の電気泳動結果を示す。その結果、図8に示すように、分子量70kDaの位置に、前記フラクション2〜8に共通するバンドが見られた。さらに、他のフラクションに比べ、フラクション5〜8の精製度が高かった。そこで、前記フラクション5〜8を回収し、次のゲルろ過クロマトグラフィーに用いた。前記フラクション5〜8の分画物は、総タンパク質量0.316mg、比活性1.72×10U/mgであった。
【0121】
なお、図示しないが、塩析工程の途中で得られた前記40〜45%塩析物についても、前記粗酵素液(30〜40%塩析物)と同様に疎水性相互作用クロマトグラフィーを行った。その結果、粗酵素液の図8の結果と比較して、前記タンパク質の溶出位置が、溶出バッファーの硫酸アンモニウム低濃度側(低伝導率側)に移動した。この移動は、前記40〜45%塩析物には、Ca2+が含まれないことが原因と考えられる。すなわち、前記粗酵素液(30〜40%塩析物)の精製では、Ca2+が酵素に作用し、分子表面の疎水性が増大していると推測される。また、Ca2+の存在下では、コラーゲン分解酵素が安定した活性を示した。哺乳類の生体内に存在するコラーゲン分解酵素であるマトリクスメタロプロテナーゼ(MMP)では、Ca2+による酵素の立体構造保持および基質との結合促進による酵素活性の増強が知られている(Archive of Biochemistry and Biophysics、1976、Vol.173、p.355−361)。すなわち、前記Ca2+に対するC35株由来コラーゲン分解酵素の挙動は、前記マトリクスメタロプロテナーゼ(MMP)と類似している。
【0122】
(4)ゲルろ過クロマトグラフィーによる精製
前記工程で回収したコラーゲン分解活性を有するフラクション5〜8を、分画分子量1000のウルトラフィルターユニット(製品名「USY−1」、東ソー株式会社製)により濃縮し、濃縮酵素液200μLを得た。TSKgel(登録商標)SuperSW3000(東ソー株式会社製)を用いたゲルろ過クロマトグラフィーにより、前記濃縮酵素液を精製した。前記ゲルろ過クロマトグラフィーにおいて、タンパク質の溶出操作は、HPLC−system(日本分光株式会社製)を用い、以下に示す条件で行った。得られた各フラクションについて、280nmにおける吸光度を測定した。
【0123】
(溶出条件)
カラムサイズ(ゲル容量):20cm
溶出バッファー:0.1M NaSO、および
10mM CaClを含む0.1Mトリス塩酸バッファー(pH7.5)
流速:0.35mL/min
【0124】
吸光度ピークが確認されたフラクションについて、疎水性相互作用クロマトグラフィーと同様にして、タンパク質精製度の確認、タンパク質濃度およびコラーゲン分解活性の測定を行った。
【0125】
前記ゲルろ過クロマトグラフィーによるタンパク質の溶出パターンの結果を、図9に示す。同図に示すように、高い吸光度を示す三つのピーク(ピーク1〜3)が得られた。これらのピークのうち、ピーク1および3にはコラーゲン分解活性が確認されず、ピーク2には同活性が確認できた。前記ピーク2のタンパク質精製度の確認結果を、図10に示す。同図において、レーン1が分子量マーカーであり、レーン2がピーク2の結果である。同図に示すように、レーン2においては、分子量約70kDaの位置に一本のバンドが確認された。この結果から、C35株由来のコラーゲン分解酵素は、SDS−PAGE法により分子量約70kDaのタンパク質であることが確認できた。前記ピーク2の酵素液は、総タンパク質量0.169mg、比活性879U/mgであった。
【0126】
下記表6に、前記C35株由来コラーゲン分解酵素の各精製工程において得られた酵素サンプルについて、総タンパク質量(mg)、コラーゲン分解活性(U)、比活性(U/mg)、精製度(倍)および収率(%)をあわせて示す。精製度(倍)は、培養上清の比活性を1とした場合の、相対値として求めた。収率(%)は、培養上清のコラーゲン分解活性(U)を100%とした場合の、相対割合(%)として求めた。同表に示すように、前述の精製工程によって、最終的に、0.064%の収率で、精製度52倍のコラーゲン分解酵素を得た。
【0127】
【表6】

【0128】
(実施例6)
実施例5で得られたC35株由来コラーゲン分解酵素について、蛍光合成基質を用いて、基質特異性、最適温度、最適pH、温度安定性、各種プロテアーゼ阻害剤によるコラーゲン分解活性への影響、酵素反応速度、筋肉タンパク質に対する作用を確認した。
【0129】
(1)基質特異性の測定
コラーゲン分解酵素の基質となりうることが報告されている、下記2種類の合成基質を用いて、C35株由来コラーゲン分解酵素の基質特異性を確認した。まず、コラーゲン分解活性を測定するため、合成基質を含む測定用試薬を調製した。具体的に、前記測定用試薬は、合成基質を0.04mMとなるように溶解したDMSO 50μLと、0.1M NaCl、10mM CaClおよび0.05%Brij−35を含有する0.1Mトリス塩酸バッファー(pH7.5)800μLとを混合して調製した。前記合成基質としては、前述のMOCAc−Pro−Leu−Gly−Leu−Apr(Dnp)−Ala−Arg−NH(株式会社ペプチド研究所製)およびGly−Pro−pNA.Tos(株式会社ペプチド研究所製)を使用した。前者は、前述のPLGL(D)ARである。PLGL(D)ARは、MOCAc−Pro−Leu−Gly−Leu−Apr(Dnp)間が分解されることによって発光する。また、後者は、以下、pNATOsとする。後者は、Gly−Pro−pNA.Tosが分解されることによって発色する。そして、前記各測定用試薬に、前記C35株由来コラーゲン分解酵素を加え、25℃で30分間インキュベートして酵素反応を行った。インキュベート後、この反応液に、さらに0.1M EDTA100μLを添加して反応を停止させ、測定液を得た。前記pNATOsを含む前記測定液については、405nmにおける吸光度を測定した。また、前記PLGL(D)ARを含む前記測定液については、分光蛍光光度計(F−2500、HITACHI)を用いて、励起波長328nm、吸収波長393nmの条件で、蛍光強度を測定した。また、コントロールとして、前記C35株由来コラーゲン分解酵素を未添加とした以外は、同様にして酵素反応ならびに蛍光強度または吸光度の測定を行った。そして、前記測定液の蛍光強度または吸光度から、コントロールの対応する値を差し引いて、真の蛍光強度または吸光度を算出した(以下、同様)。
【0130】
その結果、pNATOsを含む測定液には発色が観察されず、C35株由来コラーゲン分解酵素は、pNATOsには作用しないことがわかった。一方、PLGL(D)ARを含む測定液には蛍光が観察され、C35株由来コラーゲン分解酵素は、MOCAc−Pro−Leu−Gly−Leu−Apr(Dnp)に作用することが確認できた。
【0131】
(2)最適温度の測定
酵素反応のインキュベート温度を、所定温度(0、4、10、20、25、30、40、50℃)とし、蛍光合成基質としてPLGL(D)ARを使用した以外は、前記(1)基質特異性の測定と同様にして、測定用試薬の調製、蛍光強度の算出を行った。そして、算出した蛍光強度のうち、最も高い蛍光強度を相対活性率100%として、各測定液の蛍光強度の相対値(%)を求めた(以下、同様)。
【0132】
種々の温度条件における、前記C35株由来コラーゲン分解酵素のコラーゲン分解活性を、下記表7および図11に示す。同図に示すように、前記C35株由来コラーゲン分解酵素は、0〜50℃の温度範囲で、コラーゲン分解活性を示した。前記C35株由来コラーゲン分解酵素が、最も高いコラーゲン分解活性を示す最適温度は、30℃であった。例えば、市販コラーゲン分解酵素のコラゲナーゼN−2(新田ゼラチン株式会社製)の最適温度は、同社の報告によると、37℃である。すなわち、前記C35株由来コラーゲン分解酵素の最適温度は、市販の前記コラゲナーゼN−2と比較して低いことがわかった。また、0℃における前記相対活性率は、6.4%であり、4℃における前記相対活性率は、7.3%であった。この結果から、C35株由来コラーゲン分解酵素によれば、一般的な冷蔵貯蔵の温度範囲においてもコラーゲン活性を有することがわかった。
【0133】
【表7】

【0134】
(3)温度安定性の測定
酵素反応のインキュベート温度を、所定温度(0、10、25、30、35、40、45、50、60℃)とし、蛍光合成基質としてPLGL(D)ARを使用した以外は、前記(1)基質特異性の測定と同様にして、測定用試薬の調製、蛍光強度の算出を行った。そして、算出した蛍光強度のうち、最も高い蛍光強度を相対活性率100%として、各測定液の蛍光強度の相対値(%)を求めた(以下、同様)。
【0135】
前記C35株由来コラーゲン分解酵素の温度安定性の測定結果を、図12に示す。同図に示すように、前記C35株由来コラーゲン分解酵素は、30℃以下の温度範囲で、高い温度安定性を有した。また、前記C35株由来コラーゲン分解酵素は、50℃までは活性が残存し、60℃で完全に失活した。
【0136】
(4)最適pHの測定
前記測定試薬の調製において、0.1M トリス塩酸バッファー(pH7.5)に代えて以下に示す各バッファーを使用し、蛍光合成基質としてPLGL(d)ARを使用した以外は、前記(1)基質特異性の測定と同様にして、測定用試薬の調製、蛍光強度の算出を行った。そして、算出した蛍光強度から、前述と同様にして相対活性率を求めた。
【0137】
(バッファー)
pH : 種類
pH5 :0.1M 酢酸ナトリウム/酢酸バッファー
pH6 :0.1M 酢酸ナトリウム/酢酸バッファー
pH6 :0.1M PIPES−NaOHバッファー
pH7 :0.1M PIPES−NaOHバッファー
pH7 :0.1M トリス塩酸バッファー
pH8 :0.1M トリス塩酸バッファー
pH9 :0.1M トリス塩酸バッファー
【0138】
種々のpH条件における、前記C35株由来コラーゲン分解酵素のコラーゲン分解活性を、図13に示す。同図に示すように、pH5〜9のpH範囲において、前記C35株由来コラーゲン分解酵素は、コラーゲン分解活性を示した。前記C35株由来コラーゲン分解酵素が、最も高いコラーゲン分解活性を示す最適pHは、pH7であった。この結果から、前記C35株由来コラーゲン分解酵素は、中性のコラーゲン分解酵素であるといえる。
【0139】
(5)プロテアーゼ阻害剤の影響
プロテアーゼ阻害剤が、C35株由来コラーゲン分解酵素のコラーゲン分解活性に与える影響を測定した。前記プロテアーゼ阻害剤として、下記表8記載の各種阻害剤を使用した。まず、阻害剤をDMSOに溶解して、阻害剤溶液を調製した。この阻害剤溶液を、阻害剤の最終濃度が下記表に示す濃度、DMSOの最終濃度が2.5%となるように、蛍光合成基質PLGL(D)ARを含む前記測定用試薬に添加した。また、コントロールとしては、前記阻害剤が無添加であり、DMSOを終濃度2.5%で含む前記測定用試薬を調製した。このように前記測定用試薬に前記阻害剤溶液を添加した以外は、前記(1)基質特異性の測定と同様にして、測定用試薬の調製、蛍光強度の算出を行った。そして、算出した蛍光強度から、前述と同様にして相対活性率を求めた。
【0140】
【表8】

【0141】
各プロテアーゼ阻害剤存在下における、前記C35株由来コラーゲン分解酵素の相対活性率の測定結果を、下記表9に示す。同表に示すように、10mM EDTA、EGTAおよび1,10−フェナントロリン一水和物の適用により、前記C35株由来コラーゲン分解酵素の相対活性率は、それぞれ、4.6%、7.7%および23%に減少した。このように、前記C35株由来コラーゲン分解酵素は、メタロプロテアーゼ阻害剤である前記EDTA、EGTAおよび1,10−フェナントロリン一水和物により阻害されたことから、前記C35株由来コラーゲン分解酵素は、メタロプロテアーゼであることが示唆される。
【0142】
【表9】

【0143】
(6)酵素反応速度の解析
基質として、前記PLGL(D)ARを使用し、所定濃度(0.32、0.16、0.08、0.04、0.02、0.01、0.005、0.0025mM)となるように調製した以外は、前記(1)基質特異性の測定と同様にして、測定用試薬の調製を行った。前記C35株由来コラーゲン分解酵素の最終濃度を1.336μg/mLとした以外は、前記(1)基質特異性の測定と同様にして、酵素反応による生成物MOCAc−Pro−Leu−Glyの蛍光強度を測定した。そして、予め作成したMOCAc−Pro−Leu−Glyの濃度と蛍光強度との関係を示す検量線を用いて、前述の測定値から、酵素反応により生成した生成物の濃度を算出した。なお、前記MOCAc−Pro−Leu−Glyの基準物質には、(7-メトキシクマリン-4-イル)アセチル-プロリル-ロイシル-グリシン(MOCAc−Pro−Leu−Gly、株式会社ペプチド研究所製)を用いた。そして、下記式(3)を用いて、各基質濃度における反応速度(mM/mgタンパク質・分)を算出し、得られた反応速度から、Lineweaver−Burkプロットを作成した。得られた直線式の傾きおよび切片から、K、Vmaxを算出し、さらに、kcatおよびkcat/Kを算出した。
【0144】
【数3】

【0145】
前記PLGL(D)ARを基質としたときの、前記C35株由来コラーゲン分解酵素の酵素反応速度を示すグラフを、図14に示す。同図において、横軸は、基質濃度(mM)であり、縦軸は、反応速度(mM/mgタンパク質・分)である。また、Lineweaver−Burkプロットを図15に示す。さらに、前記C35株由来コラーゲン分解酵素と他の酵素のK、kcat、kcat/Kの比較結果を、下記表10に示す。前記他の酵素としては、アルメリシン(Almelysin)、ビメリシン(Vimelysin)およびサーモリシン(Thermolysin)を列挙した。前記アルメリシンおよび前記ビメリシンは、低温で活性を有するメタロプロテナーゼであり、前記サーモリシンは、耐熱性タンパク質分解酵素である。これらの他の酵素は、既に同じ温度条件によるデータが報告されている。前記アルメリシンのデータは、シバタらの報告(Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry、1997、Vol.61、No.4、p.710−715)から引用し、前記ビメリシンおよびサーモリシンのデータは、タカハシらの報告(FEBS Letters、1992、Vol.294、p.263−266)から引用した。下記表に示すように、前記C35株由来コラーゲン分解酵素のkcat/Kは、ビメリシンおよびサーモリシンよりやや大きく、アルメリシンよりかなり大きい値であった。この結果から、前記基質に対する前記C35株由来コラーゲン分解酵素の触媒効率は、他の酵素より高いことがわかった。
【0146】
【表10】

【0147】
(7)筋肉タンパク質(コラーゲン)に対する作用
前記C35株由来コラーゲン分解酵素および市販のタンパク質分解酵素を、コラーゲンと反応させ、前記各酵素のコラーゲンに対する分解活性を測定した。前記市販のタンパク質分解酵素としては、以下に示す3種類を使用した。
【0148】
(市販のタンパク質分解酵素)
コラゲナーゼN−2(ストレプトマイセス・パブラス由来、新田ゼラチン株式会社製)
コラゲナーゼGRADEII(クロストリジウム・ヒストリティキュム由来、和光純薬株式会社製)
パパイン(シグマ社製)
【0149】
実施例4と同じコラーゲン基質液30μLに、0.01mg/mLの各酵素液10μLを添加し、25℃で1時間、または、4℃で24時間反応させた。パパインは、パパイン粉末0.01mgを、予め、5mM L−システインを含む2mM EDTA溶液1mLと混合し、37℃で15分間インキュベートして活性化したものを、前記酵素液として使用した。そして、得られた各反応液に、前記表5記載のSDS溶液8μLおよびメルカプトエタノール2μLを添加し、100℃で2分間加熱して、SDS−PAGEサンプルを調製した。そして、各SDS−PAGEサンプルを、前記実施例4と同様にして、SDS−PAGEに供し、CBB染色を行った。
【0150】
コラーゲンに対する各酵素の分解活性を表す電気泳動写真を図16に示す。同図において、各レーンは、下記表11に示すとおりである。同図に示すように、4℃で24時間反応させた場合、C35株由来コラーゲン分解酵素は、コラーゲンを強く分解した。これに対して、市販のパパイン、コラゲナーゼN−2およびコラゲナーゼGRADEIIは、低い分解活性であった。また、25℃で1時間反応させた場合も、4℃で24時間反応させた場合と同様の結果であった。
【0151】
(表11)
レーン番号 反応温度 反応時間 反応に用いた酵素
1 4℃ 24時間 コントロール(酵素なし)
2 4℃ 24時間 パパイン
3 4℃ 24時間 コラゲナーゼN−2
4 4℃ 24時間 コラゲナーゼGRADEII
5 4℃ 24時間 C35株由来コラーゲン分解酵素
6 25℃ 1時間 パパイン
7 25℃ 1時間 コラゲナーゼN−2
8 25℃ 1時間 コラゲナーゼGRADEII
9 25℃ 1時間 C35株由来コラーゲン分解酵素
【0152】
(8)筋肉タンパク質(アクトミオシン)に対する作用
前記C35株由来コラーゲン分解酵素をアクトミオシンと反応させ、前記各酵素のアクトミオシンに対する分解活性を測定した。具体的には、コラーゲンに代えて、アクトミオシンを用いて前記基質液を調製した以外は、前記(7)筋肉タンパク質(コラーゲン)に対する作用の測定と同様にして行った。なお、アクトミオシンは、参考文献(Journal of Food Science、1986、Vol.51、No.4、p.946−950)に基づいて、自家製造したものを用いた。
【0153】
前記4種類の各酵素のアクトミオシンに対する分解活性を示す電気泳動写真を図17に示す。同図において、各レーンは、前記表11と同様である。同図に示すように、4℃で24時間反応させた場合、全ての酵素について、分解物をほとんど確認できなかった。一方、25℃で1時間反応させた場合、パパインは、アクトミオシンを分解し、特にミオシン重鎖を強く分解した。一方、C35株由来コラーゲン分解酵素、コラゲナーゼ N−2およびコラゲナーゼ GRADEIIは、25℃においても、分解物がほとんど確認できなかった。
【0154】
前記(7)および(8)の結果に示すように、前記C35株由来コラーゲン分解酵素は、筋肉タンパク質のうち、コラーゲンに対しては低温度下でも強く作用し、アクトミオシンに対しては、温度に関わらずほとんど作用しなかった。このことから、前記C35株由来コラーゲン分解酵素は、筋肉タンパク質のなかでも、食肉の硬化に関わるコラーゲンを優先的に分解し、筋繊維を構成するアクトミオシンへの作用活性が低いことがわかった。したがって、前記C35株由来コラーゲン分解酵素を用いれば、肉質のテクスチャーが損なわれず、低温度下で、肉質を軟化させることができるといえる。
【産業上の利用可能性】
【0155】
本発明の低温細菌を用いれば、その培養によって容易に本発明のコラーゲン分解酵素を製造できる。そして、本発明のコラーゲン分解酵素を用いれば、低温条件下で、食肉のテクスチャーを損ねずに、食肉の軟化が可能である。さらに、本発明のコラーゲン分解酵素を用いた軟化食肉の製造方法は、低温条件下で実施できるため、例えば、微生物の繁殖を抑制でき、食品安全性に優れる。本発明のコラーゲン分解酵素の用途は、例えば、獣肉加工、イカや魚卵の皮むき等の魚介類加工、皮革製品加工、コラーゲンペプチドの製造にも利用でき、またこれらに限られず、食品、洗浄剤等の化成品等の幅広い分野に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1】図1は、グラム染色した本発明における低温細菌C35株を、倒立顕微鏡を用いて観察した像の写真である。
【図2】図2は、本発明における低温細菌C35株の16S rRNA遺伝子DNAをアガロースゲル電気泳動したゲルの写真である。
【図3】図3は、本発明における低温細菌C35株の系統分析の結果を示す系統樹である。
【図4】図4は、本発明における低温細菌C35株の生育可能温度範囲を示すグラフである。
【図5】図5は、本発明における低温細菌C35株を、異なる培地を用いて培養したときの生育率を示すグラフである。
【図6】図6は、本発明における低温細菌C35株を、異なる培地を用いて培養したときのコラーゲン分解活性を示す写真である。
【図7】図7は、疎水性相互作用クロマトグラフィーを用いて、本発明における低温細菌C35株由来コラーゲン分解酵素を精製したときのタンパク質の溶出チャートである。
【図8】図8は、疎水性相互作用クロマトグラフィーを用いて精製した、本発明における低温細菌C35株由来コラーゲン分解酵素のタンパク精製度を示す電気泳動写真である。
【図9】図9は、ゲルろ過クロマトグラフィーを用いて、本発明における低温細菌C35株由来コラーゲン分解酵素を精製したときのタンパク質の溶出チャートである。
【図10】図10は、ゲルろ過クロマトグラフィーを用いて精製した、本発明における低温細菌C35株由来コラーゲン分解酵素のタンパク精製度を示す電気泳動写真である。
【図11】図11は、本発明における低温細菌C35株由来コラーゲン分解酵素の異なる温度条件下でのコラーゲン分解活性を示すグラフである。
【図12】図12は、本発明における低温細菌C35株由来コラーゲン分解酵素の温度安定性を示すグラフである。
【図13】図13は、本発明における低温細菌C35株由来コラーゲン分解酵素の異なるpH条件下でのコラーゲン分解活性を示すグラフである。
【図14】図14は、本発明における低温細菌C35株由来コラーゲン分解酵素の酵素反応速度を示すグラフである。
【図15】図15は、本発明における低温細菌C35株由来コラーゲン分解酵素のLineweaver−Burkプロットを示すグラフである。
【図16】図16は、本発明における低温細菌C35株由来コラーゲン分解酵素のコラーゲンに対する作用を示す電気泳動写真である。
【図17】図17は、本発明における低温細菌C35株由来コラーゲン分解酵素のアクトミオシンに対する作用を示す電気泳動写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)〜(8)の形質を有し、下記(9)に示すコラーゲン分解酵素を産生する低温細菌。
(1)運動性の桿菌
(2)大きさは、3μm×1μm
(3)グラム陰性
(4)集菌時の菌体色は、赤色
(5)生育可能温度の範囲は、4〜37℃
(6)最適生育温度の範囲は、20〜33℃
(7)好気的条件下で、硫化水素を産生しない
(8)16S rRNA遺伝子の塩基配列が、下記(a)または(b)に記載の塩基配列
(a)配列番号1に記載の塩基配列
(b)配列番号1に記載の塩基配列において、1もしくは数個の塩基が、置換、付加、挿入もしくは欠失した塩基配列
(9)SDS−PAGE法による分子量が60〜72kDaであり、
0〜50℃の温度範囲でコラーゲン分解活性を有し、最適温度が20〜40℃の範囲にあり、
pH5〜9のpH範囲でコラーゲン分解活性を有し、最適pHがpH6〜8の範囲にあり、
EDTA、EGTAおよび1,10−フェナントロリン一水和物によって、コラーゲン分解活性が阻害され、
(7-メトキシクマリン-4-イル)アセチル-プロリル-ロイシル-グリシル-ロイシル-[Nβ-(2,4-ジニトロフェニル)-2,3-ジアミノプロピオニル]-アラニル-アルギニンアミドを分解するコラーゲン分解酵素
【請求項2】
菌名が、シュワネラ・エスピー・ストレイン C35(Shewanella sp. strain C35)であり、
独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターの受託番号が、NITE P−520である請求項1記載の低温細菌。
【請求項3】
SDS−PAGE法による分子量が60〜72kDaであり、
0〜50℃の温度範囲でコラーゲン分解活性を有し、最適温度が20〜40℃の範囲にあり、
pH5〜9のpH範囲でコラーゲン分解活性を有し、最適pHがpH6〜8の範囲にあり、
EDTA、EGTAおよび1,10−フェナントロリン一水和物によって、コラーゲン分解活性が阻害され、
(7-メトキシクマリン-4-イル)アセチル-プロリル-ロイシル-グリシル-ロイシル-[Nβ-(2,4-ジニトロフェニル)-2,3-ジアミノプロピオニル]-アラニル-アルギニンアミドを分解するコラーゲン分解酵素。
【請求項4】
請求項1または2記載の低温細菌由来の酵素である、請求項3記載のコラーゲン分解酵素。
【請求項5】
請求項3または4記載のコラーゲン分解酵素を製造する方法であって、
請求項1または2記載の低温細菌を培養して、前記コラーゲン分解酵素を産生させる培養工程を有するコラーゲン分解酵素の製造方法。
【請求項6】
さらに、前記低温細菌の培養液から前記コラーゲン分解酵素を含む上清を回収する回収工程を有する請求項5記載のコラーゲン分解酵素の製造方法。
【請求項7】
酵素処理によって食肉を軟化させる軟化食肉の製造方法であって、
酵素として、請求項3または4記載のコラーゲン分解酵素を使用する軟化食肉の製造方法。
【請求項8】
0〜37℃の温度条件下で前記酵素処理を行う請求項7記載の軟化食肉の製造方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図2】
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【図6】
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【図8】
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【図10】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−219383(P2009−219383A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−64984(P2008−64984)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り (1)発表した刊行物 刊行物名:日本農芸化学会2007年度中四国・西日本支部合同大会 講演要旨集 発行者名:日本農芸化学会中四国支部 発行年月日:2007年9月14日 (2)電気通信回線を通じた発表 掲載年月日:2007年 9月25日 掲載アドレス1:http://jsbba−cs.jp/program.html 掲載アドレス2:http://jsbba−cs.jp/meetings/koenkai/2007−19−Yamaguchi.pdf (3)発表した研究集会 研究集会名:第1回 技術シーズ研究発表会 主催者名:独立行政法人 科学技術振興機構、JSTイノベーションサテライト高知、JSTイノベーションサテライト徳島 開催日:2007年10月 3日 (4)発表した研究集会 研究集会名:JST Innovation Bridge四国地区四大学研究発表会 主催者名:徳島大学、香川大学、愛媛大学、高知大学、独立行政法人科学技術振興機構 開催日:2007年12月14日 (5)発表した刊行物 刊行物名:JST Innovation Bridge四国地区四大学研究発表会[資料] 発行者名:独立行政法人 科学技術振興機構 発行年月日:2007年12月14日 (6)発表した刊行物 刊行物名:平成18年度 食肉に関する助成研究調査成果報告書 VOL.25 発行者名:財団法人伊藤記念財団 発行年月:2007年12月 (7)電気通信回線を通じた発表 掲載年月日:2008年 1月10日 掲載アドレス3:http://www.itokinen−zaidan.or.jp/summary/sum0a/josei06a.htm 掲載アドレス4:http://www.itokinen−zaidan.or.jp/summary/d06/d06−11.html (8)発表した研究集会 研究集会名:Educational Research Exchange Joint Symposium(EDUREJS) 主催者名:国立大学法人 香川大学、国立大学法人 三重大学、チェンマイ大学 開催日:2007年12月13−14日 公開日:2007年12月13日 (9)発表した刊行物 刊行物名:PROGRAMS and ABSTRACTS Educational Research Exchange Joint Symp
【出願人】(304028346)国立大学法人 香川大学 (285)
【Fターム(参考)】