コルゲートクランプ
【課題】高精度な位置決めを行うことなくコルゲートチューブの最適な箇所をクランプできるコルゲートクランプを提供する。
【解決手段】コルゲートクランプ1は、コルゲートチューブ2が移動自在に挿通される挿通穴41とブラケット3が挿入される挿入空間42とが設けられたコルゲートクランプ本体4と、クランプ部材5とで構成されている。クランプ部材5は、コルゲートチューブ2の溝21に巻き付けられる紐50と、紐50の一端部に取り付けられコルゲートクランプ本体4に固定された固定部材51と、紐50の他端部に取り付けられ挿入空間42に移動自在に収容された移動部材52とで構成されている。移動部材52は、ブラケット3が挿入空間42に挿入されることで、紐50がコルゲートチューブ2の移動を許容する位置から紐50がコルゲートチューブ2の溝21に巻き付けられてコルゲートチューブ2の移動を規制する位置に移動される。
【解決手段】コルゲートクランプ1は、コルゲートチューブ2が移動自在に挿通される挿通穴41とブラケット3が挿入される挿入空間42とが設けられたコルゲートクランプ本体4と、クランプ部材5とで構成されている。クランプ部材5は、コルゲートチューブ2の溝21に巻き付けられる紐50と、紐50の一端部に取り付けられコルゲートクランプ本体4に固定された固定部材51と、紐50の他端部に取り付けられ挿入空間42に移動自在に収容された移動部材52とで構成されている。移動部材52は、ブラケット3が挿入空間42に挿入されることで、紐50がコルゲートチューブ2の移動を許容する位置から紐50がコルゲートチューブ2の溝21に巻き付けられてコルゲートチューブ2の移動を規制する位置に移動される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線の保護材であるコルゲートチューブをクランプし、ブラケット等の被取付部に固定するコルゲートクランプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車に配索されるワイヤハーネスの電線には、この電線を保護するコルゲートチューブが被せられる。また、コルゲートチューブが被せられたワイヤハーネスの電線を車体に設けられたブラケット等の被取付部に固定するために、例えば図10及び図11に示すコルゲートクランプが用いられている(特許文献1を参照。)。図10は従来のコルゲートクランプを示す斜視図であり、コルゲートチューブをクランプする前の状態を示す図である。図11は図10に示されたコルゲートクランプがコルゲートチューブをクランプした状態を示す斜視図である。
【0003】
図10及び図11に示すコルゲートクランプ210は、合成樹脂により構成されており、コルゲートチューブ213の配索経路を規制する曲部211と、コルゲートチューブ213の外周面をクランプするクランプ部214と車体に設けられた板状のブラケット203が挿入されて取り付けられる取付部215とが設けられた固定部212と、により構成されている。
【0004】
また、固定部212は、ヒンジを介して互いに回動自在に連結され、コルゲートチューブ213を互いの間に位置付ける2つの半割れ部材212a,212bと、これら2つの半割れ部材212a,212b同士を固定するロック212cと、により構成されている。また、半割れ部材212a,212bの内周面には、コルゲートチューブ213の外周面に設けられた溝に嵌まるリブ212dが設けられている。このリブ212dは、前記溝に嵌まることでコルゲートチューブ213が軸方向に位置ずれすることを防止する。
【0005】
このようなコルゲートクランプ210を用いてコルゲートチューブ213を車体のブラケット203に固定する際は、まず、図10に示すように、ロック212cを解除して半割れ部材212a,212b同士を離間させた後、コルゲートチューブ213を曲部211の内面及び一方の半割れ部材212bの内周面に沿わせ、次に、図11に示すように、他方の半割れ部材212aを一方の半割れ部材212bに近付けて、ロック212cにより2つの半割れ部材212a,212b同士を固定するとともにリブ212dをコルゲートチューブ213の溝に嵌め込んで、クランプ部214によりコルゲートチューブ213の外周面をクランプする。そして、コルゲートチューブ213をクランプしたコルゲートクランプ210をブラケット203に近付け、このブラケット203を取付部215に挿入して取り付けることによりコルゲートチューブ213を車体のブラケット203に固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−82813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のコルゲートクランプ210においては、以下に示す問題があった。即ち、従来のコルゲートクランプ210は、コルゲートチューブ213をクランプした状態で保管・出荷され、コルゲートチューブ213をクランプした状態でブラケット203に取り付けられていた。また、このコルゲートクランプ210は、一度コルゲートチューブ213をクランプすると、取り外して再度クランプし直すことが困難であった。このため、コルゲートチューブ213の所定の箇所をブラケット203に固定するためには、コルゲートクランプ210のクランプ作業の際にコルゲートチューブ213の所定の箇所を高精度に位置決めして当該箇所を正確にクランプする必要があり、この作業が作業者にとって大きな負荷になっているという問題があった。また、コルゲートチューブ213の所定の箇所をブラケット203に固定するためには、コルゲートチューブ213やワイヤハーネス自体も厳しい公差要件を満たしている必要があることから、これら部品の製造コストが高くなってしまうという問題があった。
【0008】
したがって、本発明は、コルゲートチューブの所定の箇所への高精度な位置決めを行わずともコルゲートチューブの最適な箇所をクランプして被取付部に固定することができるコルゲートクランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために請求項1に記載された発明は、円筒状に形成され、外周面に複数の環状の溝が設けられたコルゲートチューブを被取付部に固定するコルゲートクランプにおいて、(イ)前記コルゲートチューブが挿通される当該コルゲートチューブの外径よりも大径に形成された挿通穴と、前記被取付部が挿入されて取り付けられる挿入空間と、が設けられたコルゲートクランプ本体と、(ロ)前記コルゲートチューブの前記挿通穴内に位置付けられた部分の前記溝に巻き付けられる紐と、前記紐の一端部に取り付けられかつ前記コルゲートクランプ本体に固定された固定部材と、前記紐の他端部に取り付けられかつ前記紐が前記コルゲートチューブの移動を許容する位置と前記紐が前記コルゲートチューブの前記溝に巻き付けられて当該コルゲートチューブの移動を規制する位置とに亘って前記挿入空間に移動自在に収容された移動部材と、により構成されたクランプ部材と、により構成され、かつ、(ハ)前記移動部材が、前記被取付部が前記挿入空間に挿入されていない状態で前記紐が前記コルゲートチューブの移動を許容する位置に位置付けられ、そして、前記被取付部の前記挿入空間への挿入時に当該被取付部に押されることにより、前記紐が前記コルゲートチューブの移動を許容する位置から前記紐が前記コルゲートチューブの前記溝に巻き付けられて当該コルゲートチューブの移動を規制する位置に移動されることを特徴とするコルゲートクランプである。
【0010】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記コルゲートクランプ本体には、前記紐が前記コルゲートチューブの前記溝に巻き付けられて当該コルゲートチューブの移動を規制する位置に位置付けられた前記移動部材が、前記紐が前記コルゲートチューブの移動を許容する位置に移動することを規制する規制手段が設けられていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項3に記載された発明は、請求項1または請求項2に記載された発明において、前記コルゲートクランプ本体には、前記挿通穴の内部と当該コルゲートクランプ本体の外部とに連通した開口が設けられ、かつ、前記コルゲートクランプ本体の外部から前記開口を介して前記紐の少なくとも一部が視認可能に形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項4に記載された発明は、請求項1ないし請求項3のうち1項に記載された発明において、前記コルゲートクランプ本体が、前記挿通穴に挿通される前記コルゲートチューブを互いの間に位置付ける2つの半割れ部材と、これら2つの半割れ部材同士を回動自在に連結したヒンジと、これら2つの半割れ部材同士を前記コルゲートチューブを互いの間に位置付ける位置に固定する固定手段と、により構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載された発明によれば、コルゲートクランプ本体にコルゲートチューブが挿通される当該コルゲートチューブの外径よりも大径に形成された挿通穴が設けられているので、この挿通穴にコルゲートチューブを挿通させることでコルゲートクランプ本体をコルゲートチューブに移動自在かつ回転自在に仮固定することができ、そのために、コルゲートクランプ本体をコルゲートチューブに仮固定した状態でこのコルゲートチューブを保管したり、該コルゲートチューブを出荷したり、該コルゲートチューブを車体等の構造物に配索したりすることができる。また、コルゲートチューブが車体等の構造物に配索された後に、該コルゲートチューブに仮固定されたコルゲートクランプ本体を、コルゲートチューブ上をずらすようにして被取付部に近付けることができる。即ち、コルゲートチューブに仮固定されたコルゲートクランプ本体を被取付部に位置合わせした後にクランプ部材によってコルゲートチューブの最適な箇所をクランプすることができる。よって、コルゲートチューブの所定の箇所への高精度な位置決めを行わずともコルゲートチューブの最適な箇所をクランプして被取付部に固定することができるコルゲートクランプを提供することができる。また、本コルゲートクランプは、コルゲートチューブに若干の寸法誤差が生じている場合においても、前記寸法誤差を吸収してコルゲートチューブの最適な箇所をクランプすることができるので、コルゲートチューブの公差要件を緩和することができ、コルゲートチューブの製造コストを低くすることができる。さらに、コルゲートクランプ本体が被取付部に取り付けられるのと同時にコルゲートチューブをクランプするクランプ部材が設けられているので、容易にコルゲートチューブをクランプすることができるコルゲートクランプを提供することができる。
【0014】
請求項2に記載された発明によれば、前記コルゲートクランプ本体には、前記紐が前記コルゲートチューブの前記溝に巻き付けられて当該コルゲートチューブの移動を規制する位置に位置付けられた前記移動部材が、前記紐が前記コルゲートチューブの移動を許容する位置に移動することを規制する規制手段が設けられているので、コルゲートチューブをクランプした後にこのコルゲートチューブが位置ずれすることを確実に防止することができる。
【0015】
請求項3に記載された発明によれば、前記コルゲートクランプ本体には、前記挿通穴の内部と当該コルゲートクランプ本体の外部とに連通した開口が設けられ、かつ、前記コルゲートクランプ本体の外部から前記開口を介して前記紐の少なくとも一部が視認可能に形成されているので、クランプ部材がコルゲートチューブを確実にクランプしているか否か、即ち紐がコルゲートチューブの溝に確実に巻き付けられているか否か、を容易に目視確認することができる。
【0016】
請求項4に記載された発明によれば、前記コルゲートクランプ本体が、前記挿通穴に挿通される前記コルゲートチューブを互いの間に位置付ける2つの半割れ部材と、これら2つの半割れ部材同士を回動自在に連結したヒンジと、これら2つの半割れ部材同士を前記コルゲートチューブを互いの間に位置付ける位置に固定する固定手段と、により構成されているので、挿通穴にコルゲートチューブを挿通させること、及び、コルゲートチューブの挿通穴内に位置付けられた部分の溝に紐を巻き付けること、を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態に係るコルゲートクランプを示す斜視図である。
【図2】図1中のA−A線に沿った断面図である。
【図3】図1中のB−B線に沿った断面斜視図である。
【図4】図1中のC−C線に沿った断面斜視図である。
【図5】図1に示されたコルゲートクランプを構成するクランプ部材を示す斜視図である。
【図6】図1に示されたコルゲートクランプを構成するコルゲートクランプ本体を示す斜視図であり、2つの半割れ部材同士が互いに離された状態を示す図である。
【図7】図6に示されたコルゲートクランプ本体に設けられたクランプ部材の固定部を示す平面図である。
【図8】図2に示されたコルゲートクランプの移動部材が、被取付部がコルゲートクランプ本体の挿入空間に挿入されていない状態で、紐がコルゲートチューブの移動を許容する許容位置に位置付けられている状態を示す断面図である。
【図9】図4に示されたコルゲートクランプの移動部材が、被取付部がコルゲートクランプ本体の挿入空間に挿入されていない状態で、紐がコルゲートチューブの移動を許容する許容位置に位置付けられている状態を示す断面斜視図である。
【図10】従来のコルゲートクランプを示す斜視図であり、コルゲートチューブをクランプする前の状態を示す図である。
【図11】図10に示されたコルゲートクランプがコルゲートチューブをクランプした状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態に係るコルゲートクランプを図1ないし図9を用いて説明する。
【0019】
本発明の図1に示すコルゲートクランプ1は、ワイヤハーネスの電線が挿通されたコルゲートチューブ2をクランプして「被取付部」としてのブラケット3に固定する部品である。また、コルゲートチューブ2は、合成樹脂により円筒状に形成され、外周面に複数の環状の溝21が設けられた蛇腹状の電線保護材である。また、複数の溝21は、コルゲートチューブ2の軸方向に等間隔に配置されており、各溝21は、コルゲートチューブ2の周方向全体に環状に設けられている。なお、図1ないし図9においては、コルゲートチューブ2に挿通されたワイヤハーネスの電線の図示を省略している。また、ブラケット3は、自動車の車体に設けられており、板状に形成されている。
【0020】
上記コルゲートクランプ1は、図2ないし図4に示すように、コルゲートチューブ2が軸方向に移動自在かつ軸を中心として回転自在に挿通される挿通穴41とブラケット3が挿入されて取り付けられる挿入空間42とが設けられたコルゲートクランプ本体4と、コルゲートチューブ2をクランプするクランプ部材5と、により構成されている。
【0021】
上記コルゲートクランプ本体4は、合成樹脂により構成されており、図6に示すように、コルゲートチューブ2を互いの間に位置付ける、即ち互いに重ね合わせられることで挿通穴41を形成する、2つの半割れ部材6,7と、これら2つの半割れ部材6,7同士を回動自在に連結したヒンジ8と、これら2つの半割れ部材6,7同士をコルゲートチューブ2を互いの間に位置付ける位置に固定する固定手段11と、により構成されている。
【0022】
上記2つの半割れ部材6,7のうちの一方の半割れ部材6は、図6に示すように、コルゲートチューブ2の外周面に沿うように湾曲した板状の底板61と、底板61の外縁から立設し、コルゲートチューブ2の軸方向に沿って互いに相対する一対の側板62と、一対の側板62同士を連結した連結板63と、により構成されている。また、他方の半割れ部材7は、コルゲートチューブ2の外周面に沿うように湾曲した板状の上板71と、上板71の外縁から立設し、コルゲートチューブ2の軸方向に沿って互いに相対する一対の第2側板72と、一対の第2側板72同士を連結した第2連結板73と、により構成されている。また、上記ヒンジ8は、底板61の一端部61aと上板71の一端部71aとを連結している。このヒンジ8は、厚みが薄く形成されることで変形自在に形成されており、2つの半割れ部材6,7と一体成形されている。
【0023】
また、一対の側板62は、底板61のヒンジ8から離れた他端部61b側に配置されている。また、一対の第2側板72は、上板71のヒンジ8から離れた他端部71b側に配置されている。これら一対の側板62と一対の第2側板72とは、図1及び図4に示すように、ヒンジ8を中心に2つの半割れ部材6,7が回動されて互いに近付けられることで互いに重なる。また、各側板62には、上記固定手段11を構成する係止穴10が設けられている。また、各第2側板72の一部は、それぞれ、上記固定手段11を構成する係止アーム9を構成している。係止アーム9は、一端が第2側板72に連なり他端が自由端とされた片持ち板状のアーム部91と、アーム部91の他端に設けられ、前記係止穴10に嵌まる突起92と、により構成されている。この突起92が係止穴10に嵌まることにより、2つの半割れ部材6,7同士がコルゲートチューブ2を互いの間に位置付ける位置に固定される。
【0024】
また、2つの半割れ部材6,7同士は、コルゲートチューブ2を互いの間に位置付ける位置に固定された状態において、底板61の一端部61a側の部分と上板71の一端部71a側の部分とが互いに重ね合わせられて、これら底板61の一端部61a側の部分と上板71の一端部71a側の部分との間に円柱状の空間、即ち「挿通穴41」、を形成する。この挿通穴41は、コルゲートチューブ2の外径よりも大径に形成されている。即ち、挿通穴41は、コルゲートチューブ2を軸方向に移動自在かつ軸を中心として回転自在に位置付ける。
【0025】
また、2つの半割れ部材6,7同士は、コルゲートチューブ2を互いの間に位置付ける位置に固定された状態において、底板61の他端部61b側の部分と上板71の他端部71b側の部分とが互いに相対し、一対の側板62と一対の第2側板72とが重ねられ、連結板63と第2連結板73とが重ねられて、これら底板61の他端部61b側の部分、上板71の他端部71b側の部分、一対の側板62、一対の第2側板72、連結板63、第2連結板73が「挿入空間42」を形成する。
【0026】
また、挿入空間42を形成する上板71の他端部71b側の部分には、ブラケット3の挿入口42aが設けられている。また、挿入空間42を形成する第2連結板73の一部は、ブラケット3に設けられた係止穴30に係止する係止アーム48を構成している。係止アーム48は、一端が上板71の他端部71bに連なり、底板61側に位置する他端が自由端とされた片持ち板状のアーム部48aと、アーム部48aの他端に設けられ、ブラケット3の係止穴30に嵌まる突起48bと、により構成されている。また、ブラケット3は、上板71に設けられた挿入口42aから挿入空間42の奥側、即ち底板61側に挿入されることにより、係止アーム48に係止されて挿入空間42に取り付けられる。
【0027】
上記クランプ部材5は、金属により弾性変形自在に形成され、コルゲートチューブ2の挿通穴41内に位置付けられた部分の溝21に巻き付けられてコルゲートチューブ2を移動不能かつ回転不能に締め付ける2本の紐50と、合成樹脂により構成され、各紐50の一端部50aに取り付けられた固定部材51と、合成樹脂により構成され、各紐50の他端部50bに取り付けられた移動部材52と、により構成されている。また、前記「コルゲートチューブ2の挿通穴41内に位置付けられた部分」とは、コルゲートチューブ2のうち底板61と上板71との間に位置付けられた部分を意味する。
【0028】
上記2本の紐50は、図4、図5などに示すように、コルゲートチューブ2の軸方向に沿って互いに間隔をあけて配置されている。また、各紐50は、コルゲートチューブ2の溝21に容易に沿うように、予め側面視C字状に癖付けされている。
【0029】
上記固定部材51は、図5に示すように、円柱状に形成された円柱部51aと、円柱部51aの両端部からそれぞれ円柱状に突出した一対の第2円柱部51bと、により構成されている。一対の第2円柱部51bは、円柱部51aよりも小径に形成されている。また、2本の紐50の一端部50aは、円柱部51aの外周面に取り付けられている。このような固定部材51は、円柱部51a及び一対の第2円柱部51bの軸がコルゲートチューブ2の軸と平行になる向きで、コルゲートクランプ本体4の一対の側板62各々に設けられた一対の固定溝47に固定される。
【0030】
上記固定溝47は、図2、図7に示すように、側板62が、底板61の他端部61b側から一端部61a側に向かう方向に切り欠かれて形成され、かつ、底板61の他端部61b側、即ちヒンジ8と反対側、に開口した溝である。この固定溝47には、上記第2円柱部51bの直径よりもわずかに大きい幅に形成された幅広部47bと、幅広部47bよりもヒンジ8から離れた位置に配置され、幅広部47bよりも小さい幅に形成された狭小部47aと、幅広部47bに連なりヒンジ8側に延びかつ幅広部47bよりも小さい幅に形成された第2狭小部47cと、が設けられている。また、上記固定部材51は、一対の第2円柱部51bそれぞれが一対の固定溝47の狭小部47a側から幅広部47bに押し込まれることで幅広部47bに位置付けられてこれら一対の固定溝47に固定される。また、クランプ部材5は、固定部材51が一対の固定溝47に固定された状態で、2本の紐50が挿通穴41内、即ち底板61と上板71との間、にC字状の状態で配置されるとともにコルゲートチューブ2の軸方向に沿って並んだ状態で配置され、移動部材52が挿入空間42に配置される。
【0031】
上記移動部材52は、図4、図5に示すように、板状に形成され、2本の紐50の他端部50bが取り付けられた板部52aと、板部52aの両端部から互いに離れる方向に突出した一対の突出部52bと、により構成されている。このような移動部材52は、図6に示すコルゲートクランプ本体4の一対の固定溝47に固定部材51が固定され、そして、2つの半割れ部材6,7同士がコルゲートチューブ2を互いの間、即ち挿通穴41、に位置付けて互いに固定された状態において、底板61と上板71とが相対する方向に沿って挿入空間42内に移動自在に収容される。また、移動部材52は、板部52aと一対の突出部52bとがコルゲートチューブ2の軸方向に沿って並ぶ向きで挿入空間42内に移動自在に収容される。
【0032】
また、移動部材52は、図8及び図9に示すように、ブラケット3が挿入空間42に挿入されていない状態において、係止アーム48の突起48bよりも上板71側に位置付けられている。このように移動部材52が挿入空間42の突起48bよりも上板71側に位置付けられている状態においては、図8に示すように、2本の紐50がコルゲートチューブ2の外周面から離れた状態となっており、この状態でコルゲートチューブ2は軸方向に移動自在となっているとともに軸を中心として回転自在となっている。即ち、2本の紐50がコルゲートチューブ2の軸方向の移動及び軸を中心とした回転を許容している状態となっている。
【0033】
また、図2ないし図4に示すように、ブラケット3が挿入空間42に挿入され、係止アーム48に係止されて挿入空間42に取り付けられた状態において、板部52aの表面にはブラケット3の先端部3aが当接しており、この板部52a即ち移動部材52は係止アーム48の突起48bよりも底板61側に位置付けられている。このように移動部材52が挿入空間42の突起48bよりも底板61側に位置付けられている状態においては、図2に示すように、2本の紐50各々の一端部50aと他端部50bとが近付けられて輪を作るとともに、これら2本の紐50各々がコルゲートチューブ2の溝21に巻き付けられてコルゲートチューブ2を締め付けた状態、即ち溝21に密着した状態、となっており、この状態でコルゲートチューブ2は軸方向に移動することが不可能になっているとともに軸を中心として回転することが不可能になっている。即ち、2本の紐50がコルゲートチューブ2の軸方向の移動及び軸を中心とした回転を規制している状態となっている。本発明では、コルゲートチューブ2の軸方向の移動及び軸を中心とした回転を規制することを、「コルゲートチューブ2をクランプする」と表現する。
【0034】
このように、本発明では、移動部材52が、ブラケット3が挿入空間42に挿入されていない状態で、挿入空間42の突起48bよりも上板71側の位置、即ち「2本の紐50がコルゲートチューブ2の軸方向の移動及び軸を中心とした回転を許容する位置」、に位置付けられ、そして、当該移動部材52が、ブラケット3の挿入空間42への挿入時にこのブラケット3の先端部3aに押されることにより、係止アーム48のアーム部48aを撓ませるとともに突起48bを乗り越えて挿入空間42の突起48bよりも底板61側の位置、即ち「2本の紐50がコルゲートチューブ2の軸方向の移動及び軸を中心とした回転を規制する位置」、に移動される。即ち、本発明のコルゲートクランプ1は、ブラケット3に取り付けられるまでは、コルゲートチューブ2に対して移動可能であるとともに回転可能であり、ブラケット3に取り付けられるのと同時にコルゲートチューブ2をクランプする。
【0035】
また、コルゲートクランプ本体4には、「2本の紐50がコルゲートチューブ2の軸方向の移動及び軸を中心とした回転を規制する位置」に位置付けられた移動部材52が「2本の紐50がコルゲートチューブ2の軸方向の移動及び軸を中心とした回転を許容する位置」に移動すること、即ち「係止アーム48の突起48bよりも底板61側の位置」に位置付けられた移動部材52が「係止アーム48の突起48bよりも上板71側の位置」に移動すること、を規制する「規制手段」としての一対のロック部46が設けられている。
【0036】
これら一対のロック部46は、図2、図3、図6などに示すように、それぞれ、底板61の他端部61bから上板71側に立設した立設部46aと、立設部46aの先端部に設けられ、連結板63側に突出したロック突起46bと、により構成されている。また、一対のロック部46は、挿通穴41内に位置付けられるコルゲートチューブ2の軸方向に沿って間隔をあけて配置されている。
【0037】
このような一対のロック部46は、ブラケット3の先端部3aに押されることにより係止アーム48の突起48bを乗り越えてこの突起48bよりも底板61側の位置に移動された移動部材52の一対の突出部52bを、ロック突起46bよりも底板61側の位置に位置付けることにより、上述したように、移動部材52が「2本の紐50がコルゲートチューブ2をクランプする位置からクランプを解除する位置」に移動すること、即ち移動部材52が「係止アーム48の突起48bよりも底板61側の位置から突起48bよりも上板71側の位置」に移動すること、を規制する。
【0038】
このように、本発明では、コルゲートクランプ本体4に一対のロック部46が設けられているので、コルゲートチューブ2をクランプした後に紐50の締め付けが緩んでコルゲートチューブ2が位置ずれすることを確実に防止することができる。
【0039】
さらに、コルゲートクランプ本体4の底板61及び上板71には、図1、図6などに示すように、底板61及び上板71を貫通した複数の開口43,44,45が設けられている。これら複数の開口43,44,45は、挿通穴41の内部とコルゲートクランプ本体4の外部とに連通している。このことから、本発明のコルゲートクランプ1は、コルゲートクランプ本体4の外部から複数の開口43,44,45を介して2本の紐50の一部を視認することが可能となっている。
【0040】
このように、本発明では、コルゲートクランプ本体4に複数の開口43,44,45が設けられているので、クランプ部材5がコルゲートチューブ2を確実にクランプしているか否か、即ち紐50がコルゲートチューブ2の溝21に確実に巻き付けられているか否か、を容易に目視確認することができる。
【0041】
続いて、上述したコルゲートクランプ1を用いてコルゲートチューブ2をクランプして車体のブラケット3に固定する手順を説明する。
【0042】
まず、予めクランプ部材5をコルゲートクランプ本体4に組み付けておく。次に、固定手段11の係止アーム9と係止穴10との係止を解除して、コルゲートクランプ本体4の2つの半割れ部材6,7同士を離間させた後、コルゲートチューブ2を一方の半割れ部材6の内周面及び2本の紐50の上に沿わせ、2本の紐50の他端部50b側の部分と移動部材52と他方の半割れ部材7を一方の半割れ部材6に近付けて、移動部材52を挿入空間42の突起48bよりも上板71側の位置、即ち「2本の紐50がコルゲートチューブ2の軸方向の移動及び軸を中心とした回転を許容する位置」、に収容しかつ固定手段11により2つの半割れ部材6,7同士を固定する。こうして挿通穴41内にコルゲートチューブ2を移動自在かつ回転自在に位置付けてコルゲートチューブ2とコルゲートクランプ本体4とを仮固定する(図8及び図9を参照。)。
【0043】
その後、コルゲートクランプ本体4と仮固定されたコルゲートチューブ2を含むワイヤハーネスが車体の所定の位置に配索された後に、コルゲートクランプ本体4を、挿通穴41内にコルゲートチューブ2を位置付けた状態のままコルゲートチューブ2上をずらすようにしてブラケット3に近付けてブラケット3に取付ける。即ち、挿入空間42にブラケット3を位置付けて係止アーム48を係止穴30に係止させる。このことにより、移動部材52がブラケット3に押されて挿入空間42の突起48bよりも底板61側の位置に移動され、2本の紐50がコルゲートチューブ2の溝21に巻き付けられてこのコルゲートチューブ2をクランプする。このようにしてコルゲートチューブ2をクランプして車体のブラケット3に固定する。
【0044】
このように、本発明では、コルゲートクランプ本体4にコルゲートチューブ2が挿通される当該コルゲートチューブ2の外径よりも大径に形成された挿通穴41が設けられているので、この挿通穴41にコルゲートチューブ2を挿通させることでコルゲートクランプ本体4をコルゲートチューブ2に移動自在かつ回転自在に仮固定することができる。よって、コルゲートクランプ本体4をコルゲートチューブ2に仮固定した状態でこれらコルゲートクランプ本体4及びコルゲートチューブ2を含むワイヤハーネスを保管したり、該ワイヤハーネスを出荷したり、該ワイヤハーネスを車体に配索したりすることができる。また、前記ワイヤハーネスが車体に配索された後に、コルゲートチューブ2に仮固定されたコルゲートクランプ本体4を、2つの半割れ部材6,7同士を離間させることなくコルゲートチューブ2上をずらすようにしてブラケット3に近付けることができる。
【0045】
このような本発明のコルゲートクランプ1は、コルゲートチューブ2に仮固定されたコルゲートクランプ本体4をブラケット3に近付けた後、即ちブラケット3に位置合わせした後にクランプ部材5によってコルゲートチューブ2の最適な箇所をクランプすることができるので、従来のコルゲートクランプのようにコルゲートチューブの所定の箇所を高精度に位置決めして当該箇所をクランプする必要がない。よって、本コルゲートクランプ1を扱う作業者の負荷を軽減することができる。また、従来のコルゲートクランプとコルゲートチューブとは、コルゲートクランプがコルゲートチューブの所定の箇所を正確にクランプしているか否かの寸法検査が必要であったが、本発明のコルゲートクランプ1を用いることにより、前述した寸法検査が不要になるので、前述した寸法検査に要するコストを削減することができる。
【0046】
また、本発明のコルゲートクランプ1は、ブラケット3の位置またはワイヤハーネスの寸法に若干の誤差が生じている場合においても、前述した取り付け手順を実行することにより、前記誤差を吸収してコルゲートチューブ2の最適な箇所をクランプすることができるので、ワイヤハーネス及びコルゲートチューブ2の公差要件を緩和することができ、これらワイヤハーネス及びコルゲートチューブ2の製造コストを低くすることができる。また、ワイヤハーネスの不良率を低減することができる。
【0047】
また、本発明では、コルゲートクランプ本体4がブラケット3に取り付けられるのと同時にコルゲートチューブ2をクランプする、即ち本固定する、クランプ部材5が設けられているので、容易にコルゲートチューブ2をクランプすることができる。
【0048】
また、本発明のコルゲートクランプ1は、専用治具を用いることなく容易にコルゲートチューブ2をクランプしてブラケット3に固定することができるので、治具コストを削減することができる。
【0049】
また、上述したように、本発明では、コルゲートクランプ本体4が、挿通穴41に挿通されるコルゲートチューブ2を互いの間に位置付ける2つの半割れ部材6,7と、これら2つの半割れ部材6,7同士を回動自在に連結したヒンジ8と、これら2つの半割れ部材6,7同士をコルゲートチューブ2を互いの間に位置付ける位置に固定する固定手段11と、により構成されているので、挿通穴41にコルゲートチューブ2を挿通させること、及び、コルゲートチューブ2の挿通穴41内に位置付けられた部分の溝21に紐50を巻き付けること、を専用治具を用いることなく容易に行うことができる。
【0050】
また、上述した実施形態では、紐50が金属で構成されていたが、本発明では、前記紐50が合成樹脂で構成されていても良い。また、上述した実施形態では、紐50が2本設けられていたが、本発明では、紐50の本数は2本に限らず、1本であっても良く、3本であっても良い。
【0051】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 コルゲートクランプ
2 コルゲートチューブ
3 ブラケット(被取付部)
4 コルゲートクランプ本体
5 クランプ部材
6,7 半割れ部材
8 ヒンジ
11 固定手段
21 溝
41 挿通穴
42 挿入空間
43,44,45 開口
46 ロック部(規制手段)
50 紐
51 固定部材
52 移動部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線の保護材であるコルゲートチューブをクランプし、ブラケット等の被取付部に固定するコルゲートクランプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車に配索されるワイヤハーネスの電線には、この電線を保護するコルゲートチューブが被せられる。また、コルゲートチューブが被せられたワイヤハーネスの電線を車体に設けられたブラケット等の被取付部に固定するために、例えば図10及び図11に示すコルゲートクランプが用いられている(特許文献1を参照。)。図10は従来のコルゲートクランプを示す斜視図であり、コルゲートチューブをクランプする前の状態を示す図である。図11は図10に示されたコルゲートクランプがコルゲートチューブをクランプした状態を示す斜視図である。
【0003】
図10及び図11に示すコルゲートクランプ210は、合成樹脂により構成されており、コルゲートチューブ213の配索経路を規制する曲部211と、コルゲートチューブ213の外周面をクランプするクランプ部214と車体に設けられた板状のブラケット203が挿入されて取り付けられる取付部215とが設けられた固定部212と、により構成されている。
【0004】
また、固定部212は、ヒンジを介して互いに回動自在に連結され、コルゲートチューブ213を互いの間に位置付ける2つの半割れ部材212a,212bと、これら2つの半割れ部材212a,212b同士を固定するロック212cと、により構成されている。また、半割れ部材212a,212bの内周面には、コルゲートチューブ213の外周面に設けられた溝に嵌まるリブ212dが設けられている。このリブ212dは、前記溝に嵌まることでコルゲートチューブ213が軸方向に位置ずれすることを防止する。
【0005】
このようなコルゲートクランプ210を用いてコルゲートチューブ213を車体のブラケット203に固定する際は、まず、図10に示すように、ロック212cを解除して半割れ部材212a,212b同士を離間させた後、コルゲートチューブ213を曲部211の内面及び一方の半割れ部材212bの内周面に沿わせ、次に、図11に示すように、他方の半割れ部材212aを一方の半割れ部材212bに近付けて、ロック212cにより2つの半割れ部材212a,212b同士を固定するとともにリブ212dをコルゲートチューブ213の溝に嵌め込んで、クランプ部214によりコルゲートチューブ213の外周面をクランプする。そして、コルゲートチューブ213をクランプしたコルゲートクランプ210をブラケット203に近付け、このブラケット203を取付部215に挿入して取り付けることによりコルゲートチューブ213を車体のブラケット203に固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−82813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のコルゲートクランプ210においては、以下に示す問題があった。即ち、従来のコルゲートクランプ210は、コルゲートチューブ213をクランプした状態で保管・出荷され、コルゲートチューブ213をクランプした状態でブラケット203に取り付けられていた。また、このコルゲートクランプ210は、一度コルゲートチューブ213をクランプすると、取り外して再度クランプし直すことが困難であった。このため、コルゲートチューブ213の所定の箇所をブラケット203に固定するためには、コルゲートクランプ210のクランプ作業の際にコルゲートチューブ213の所定の箇所を高精度に位置決めして当該箇所を正確にクランプする必要があり、この作業が作業者にとって大きな負荷になっているという問題があった。また、コルゲートチューブ213の所定の箇所をブラケット203に固定するためには、コルゲートチューブ213やワイヤハーネス自体も厳しい公差要件を満たしている必要があることから、これら部品の製造コストが高くなってしまうという問題があった。
【0008】
したがって、本発明は、コルゲートチューブの所定の箇所への高精度な位置決めを行わずともコルゲートチューブの最適な箇所をクランプして被取付部に固定することができるコルゲートクランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために請求項1に記載された発明は、円筒状に形成され、外周面に複数の環状の溝が設けられたコルゲートチューブを被取付部に固定するコルゲートクランプにおいて、(イ)前記コルゲートチューブが挿通される当該コルゲートチューブの外径よりも大径に形成された挿通穴と、前記被取付部が挿入されて取り付けられる挿入空間と、が設けられたコルゲートクランプ本体と、(ロ)前記コルゲートチューブの前記挿通穴内に位置付けられた部分の前記溝に巻き付けられる紐と、前記紐の一端部に取り付けられかつ前記コルゲートクランプ本体に固定された固定部材と、前記紐の他端部に取り付けられかつ前記紐が前記コルゲートチューブの移動を許容する位置と前記紐が前記コルゲートチューブの前記溝に巻き付けられて当該コルゲートチューブの移動を規制する位置とに亘って前記挿入空間に移動自在に収容された移動部材と、により構成されたクランプ部材と、により構成され、かつ、(ハ)前記移動部材が、前記被取付部が前記挿入空間に挿入されていない状態で前記紐が前記コルゲートチューブの移動を許容する位置に位置付けられ、そして、前記被取付部の前記挿入空間への挿入時に当該被取付部に押されることにより、前記紐が前記コルゲートチューブの移動を許容する位置から前記紐が前記コルゲートチューブの前記溝に巻き付けられて当該コルゲートチューブの移動を規制する位置に移動されることを特徴とするコルゲートクランプである。
【0010】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記コルゲートクランプ本体には、前記紐が前記コルゲートチューブの前記溝に巻き付けられて当該コルゲートチューブの移動を規制する位置に位置付けられた前記移動部材が、前記紐が前記コルゲートチューブの移動を許容する位置に移動することを規制する規制手段が設けられていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項3に記載された発明は、請求項1または請求項2に記載された発明において、前記コルゲートクランプ本体には、前記挿通穴の内部と当該コルゲートクランプ本体の外部とに連通した開口が設けられ、かつ、前記コルゲートクランプ本体の外部から前記開口を介して前記紐の少なくとも一部が視認可能に形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項4に記載された発明は、請求項1ないし請求項3のうち1項に記載された発明において、前記コルゲートクランプ本体が、前記挿通穴に挿通される前記コルゲートチューブを互いの間に位置付ける2つの半割れ部材と、これら2つの半割れ部材同士を回動自在に連結したヒンジと、これら2つの半割れ部材同士を前記コルゲートチューブを互いの間に位置付ける位置に固定する固定手段と、により構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載された発明によれば、コルゲートクランプ本体にコルゲートチューブが挿通される当該コルゲートチューブの外径よりも大径に形成された挿通穴が設けられているので、この挿通穴にコルゲートチューブを挿通させることでコルゲートクランプ本体をコルゲートチューブに移動自在かつ回転自在に仮固定することができ、そのために、コルゲートクランプ本体をコルゲートチューブに仮固定した状態でこのコルゲートチューブを保管したり、該コルゲートチューブを出荷したり、該コルゲートチューブを車体等の構造物に配索したりすることができる。また、コルゲートチューブが車体等の構造物に配索された後に、該コルゲートチューブに仮固定されたコルゲートクランプ本体を、コルゲートチューブ上をずらすようにして被取付部に近付けることができる。即ち、コルゲートチューブに仮固定されたコルゲートクランプ本体を被取付部に位置合わせした後にクランプ部材によってコルゲートチューブの最適な箇所をクランプすることができる。よって、コルゲートチューブの所定の箇所への高精度な位置決めを行わずともコルゲートチューブの最適な箇所をクランプして被取付部に固定することができるコルゲートクランプを提供することができる。また、本コルゲートクランプは、コルゲートチューブに若干の寸法誤差が生じている場合においても、前記寸法誤差を吸収してコルゲートチューブの最適な箇所をクランプすることができるので、コルゲートチューブの公差要件を緩和することができ、コルゲートチューブの製造コストを低くすることができる。さらに、コルゲートクランプ本体が被取付部に取り付けられるのと同時にコルゲートチューブをクランプするクランプ部材が設けられているので、容易にコルゲートチューブをクランプすることができるコルゲートクランプを提供することができる。
【0014】
請求項2に記載された発明によれば、前記コルゲートクランプ本体には、前記紐が前記コルゲートチューブの前記溝に巻き付けられて当該コルゲートチューブの移動を規制する位置に位置付けられた前記移動部材が、前記紐が前記コルゲートチューブの移動を許容する位置に移動することを規制する規制手段が設けられているので、コルゲートチューブをクランプした後にこのコルゲートチューブが位置ずれすることを確実に防止することができる。
【0015】
請求項3に記載された発明によれば、前記コルゲートクランプ本体には、前記挿通穴の内部と当該コルゲートクランプ本体の外部とに連通した開口が設けられ、かつ、前記コルゲートクランプ本体の外部から前記開口を介して前記紐の少なくとも一部が視認可能に形成されているので、クランプ部材がコルゲートチューブを確実にクランプしているか否か、即ち紐がコルゲートチューブの溝に確実に巻き付けられているか否か、を容易に目視確認することができる。
【0016】
請求項4に記載された発明によれば、前記コルゲートクランプ本体が、前記挿通穴に挿通される前記コルゲートチューブを互いの間に位置付ける2つの半割れ部材と、これら2つの半割れ部材同士を回動自在に連結したヒンジと、これら2つの半割れ部材同士を前記コルゲートチューブを互いの間に位置付ける位置に固定する固定手段と、により構成されているので、挿通穴にコルゲートチューブを挿通させること、及び、コルゲートチューブの挿通穴内に位置付けられた部分の溝に紐を巻き付けること、を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態に係るコルゲートクランプを示す斜視図である。
【図2】図1中のA−A線に沿った断面図である。
【図3】図1中のB−B線に沿った断面斜視図である。
【図4】図1中のC−C線に沿った断面斜視図である。
【図5】図1に示されたコルゲートクランプを構成するクランプ部材を示す斜視図である。
【図6】図1に示されたコルゲートクランプを構成するコルゲートクランプ本体を示す斜視図であり、2つの半割れ部材同士が互いに離された状態を示す図である。
【図7】図6に示されたコルゲートクランプ本体に設けられたクランプ部材の固定部を示す平面図である。
【図8】図2に示されたコルゲートクランプの移動部材が、被取付部がコルゲートクランプ本体の挿入空間に挿入されていない状態で、紐がコルゲートチューブの移動を許容する許容位置に位置付けられている状態を示す断面図である。
【図9】図4に示されたコルゲートクランプの移動部材が、被取付部がコルゲートクランプ本体の挿入空間に挿入されていない状態で、紐がコルゲートチューブの移動を許容する許容位置に位置付けられている状態を示す断面斜視図である。
【図10】従来のコルゲートクランプを示す斜視図であり、コルゲートチューブをクランプする前の状態を示す図である。
【図11】図10に示されたコルゲートクランプがコルゲートチューブをクランプした状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態に係るコルゲートクランプを図1ないし図9を用いて説明する。
【0019】
本発明の図1に示すコルゲートクランプ1は、ワイヤハーネスの電線が挿通されたコルゲートチューブ2をクランプして「被取付部」としてのブラケット3に固定する部品である。また、コルゲートチューブ2は、合成樹脂により円筒状に形成され、外周面に複数の環状の溝21が設けられた蛇腹状の電線保護材である。また、複数の溝21は、コルゲートチューブ2の軸方向に等間隔に配置されており、各溝21は、コルゲートチューブ2の周方向全体に環状に設けられている。なお、図1ないし図9においては、コルゲートチューブ2に挿通されたワイヤハーネスの電線の図示を省略している。また、ブラケット3は、自動車の車体に設けられており、板状に形成されている。
【0020】
上記コルゲートクランプ1は、図2ないし図4に示すように、コルゲートチューブ2が軸方向に移動自在かつ軸を中心として回転自在に挿通される挿通穴41とブラケット3が挿入されて取り付けられる挿入空間42とが設けられたコルゲートクランプ本体4と、コルゲートチューブ2をクランプするクランプ部材5と、により構成されている。
【0021】
上記コルゲートクランプ本体4は、合成樹脂により構成されており、図6に示すように、コルゲートチューブ2を互いの間に位置付ける、即ち互いに重ね合わせられることで挿通穴41を形成する、2つの半割れ部材6,7と、これら2つの半割れ部材6,7同士を回動自在に連結したヒンジ8と、これら2つの半割れ部材6,7同士をコルゲートチューブ2を互いの間に位置付ける位置に固定する固定手段11と、により構成されている。
【0022】
上記2つの半割れ部材6,7のうちの一方の半割れ部材6は、図6に示すように、コルゲートチューブ2の外周面に沿うように湾曲した板状の底板61と、底板61の外縁から立設し、コルゲートチューブ2の軸方向に沿って互いに相対する一対の側板62と、一対の側板62同士を連結した連結板63と、により構成されている。また、他方の半割れ部材7は、コルゲートチューブ2の外周面に沿うように湾曲した板状の上板71と、上板71の外縁から立設し、コルゲートチューブ2の軸方向に沿って互いに相対する一対の第2側板72と、一対の第2側板72同士を連結した第2連結板73と、により構成されている。また、上記ヒンジ8は、底板61の一端部61aと上板71の一端部71aとを連結している。このヒンジ8は、厚みが薄く形成されることで変形自在に形成されており、2つの半割れ部材6,7と一体成形されている。
【0023】
また、一対の側板62は、底板61のヒンジ8から離れた他端部61b側に配置されている。また、一対の第2側板72は、上板71のヒンジ8から離れた他端部71b側に配置されている。これら一対の側板62と一対の第2側板72とは、図1及び図4に示すように、ヒンジ8を中心に2つの半割れ部材6,7が回動されて互いに近付けられることで互いに重なる。また、各側板62には、上記固定手段11を構成する係止穴10が設けられている。また、各第2側板72の一部は、それぞれ、上記固定手段11を構成する係止アーム9を構成している。係止アーム9は、一端が第2側板72に連なり他端が自由端とされた片持ち板状のアーム部91と、アーム部91の他端に設けられ、前記係止穴10に嵌まる突起92と、により構成されている。この突起92が係止穴10に嵌まることにより、2つの半割れ部材6,7同士がコルゲートチューブ2を互いの間に位置付ける位置に固定される。
【0024】
また、2つの半割れ部材6,7同士は、コルゲートチューブ2を互いの間に位置付ける位置に固定された状態において、底板61の一端部61a側の部分と上板71の一端部71a側の部分とが互いに重ね合わせられて、これら底板61の一端部61a側の部分と上板71の一端部71a側の部分との間に円柱状の空間、即ち「挿通穴41」、を形成する。この挿通穴41は、コルゲートチューブ2の外径よりも大径に形成されている。即ち、挿通穴41は、コルゲートチューブ2を軸方向に移動自在かつ軸を中心として回転自在に位置付ける。
【0025】
また、2つの半割れ部材6,7同士は、コルゲートチューブ2を互いの間に位置付ける位置に固定された状態において、底板61の他端部61b側の部分と上板71の他端部71b側の部分とが互いに相対し、一対の側板62と一対の第2側板72とが重ねられ、連結板63と第2連結板73とが重ねられて、これら底板61の他端部61b側の部分、上板71の他端部71b側の部分、一対の側板62、一対の第2側板72、連結板63、第2連結板73が「挿入空間42」を形成する。
【0026】
また、挿入空間42を形成する上板71の他端部71b側の部分には、ブラケット3の挿入口42aが設けられている。また、挿入空間42を形成する第2連結板73の一部は、ブラケット3に設けられた係止穴30に係止する係止アーム48を構成している。係止アーム48は、一端が上板71の他端部71bに連なり、底板61側に位置する他端が自由端とされた片持ち板状のアーム部48aと、アーム部48aの他端に設けられ、ブラケット3の係止穴30に嵌まる突起48bと、により構成されている。また、ブラケット3は、上板71に設けられた挿入口42aから挿入空間42の奥側、即ち底板61側に挿入されることにより、係止アーム48に係止されて挿入空間42に取り付けられる。
【0027】
上記クランプ部材5は、金属により弾性変形自在に形成され、コルゲートチューブ2の挿通穴41内に位置付けられた部分の溝21に巻き付けられてコルゲートチューブ2を移動不能かつ回転不能に締め付ける2本の紐50と、合成樹脂により構成され、各紐50の一端部50aに取り付けられた固定部材51と、合成樹脂により構成され、各紐50の他端部50bに取り付けられた移動部材52と、により構成されている。また、前記「コルゲートチューブ2の挿通穴41内に位置付けられた部分」とは、コルゲートチューブ2のうち底板61と上板71との間に位置付けられた部分を意味する。
【0028】
上記2本の紐50は、図4、図5などに示すように、コルゲートチューブ2の軸方向に沿って互いに間隔をあけて配置されている。また、各紐50は、コルゲートチューブ2の溝21に容易に沿うように、予め側面視C字状に癖付けされている。
【0029】
上記固定部材51は、図5に示すように、円柱状に形成された円柱部51aと、円柱部51aの両端部からそれぞれ円柱状に突出した一対の第2円柱部51bと、により構成されている。一対の第2円柱部51bは、円柱部51aよりも小径に形成されている。また、2本の紐50の一端部50aは、円柱部51aの外周面に取り付けられている。このような固定部材51は、円柱部51a及び一対の第2円柱部51bの軸がコルゲートチューブ2の軸と平行になる向きで、コルゲートクランプ本体4の一対の側板62各々に設けられた一対の固定溝47に固定される。
【0030】
上記固定溝47は、図2、図7に示すように、側板62が、底板61の他端部61b側から一端部61a側に向かう方向に切り欠かれて形成され、かつ、底板61の他端部61b側、即ちヒンジ8と反対側、に開口した溝である。この固定溝47には、上記第2円柱部51bの直径よりもわずかに大きい幅に形成された幅広部47bと、幅広部47bよりもヒンジ8から離れた位置に配置され、幅広部47bよりも小さい幅に形成された狭小部47aと、幅広部47bに連なりヒンジ8側に延びかつ幅広部47bよりも小さい幅に形成された第2狭小部47cと、が設けられている。また、上記固定部材51は、一対の第2円柱部51bそれぞれが一対の固定溝47の狭小部47a側から幅広部47bに押し込まれることで幅広部47bに位置付けられてこれら一対の固定溝47に固定される。また、クランプ部材5は、固定部材51が一対の固定溝47に固定された状態で、2本の紐50が挿通穴41内、即ち底板61と上板71との間、にC字状の状態で配置されるとともにコルゲートチューブ2の軸方向に沿って並んだ状態で配置され、移動部材52が挿入空間42に配置される。
【0031】
上記移動部材52は、図4、図5に示すように、板状に形成され、2本の紐50の他端部50bが取り付けられた板部52aと、板部52aの両端部から互いに離れる方向に突出した一対の突出部52bと、により構成されている。このような移動部材52は、図6に示すコルゲートクランプ本体4の一対の固定溝47に固定部材51が固定され、そして、2つの半割れ部材6,7同士がコルゲートチューブ2を互いの間、即ち挿通穴41、に位置付けて互いに固定された状態において、底板61と上板71とが相対する方向に沿って挿入空間42内に移動自在に収容される。また、移動部材52は、板部52aと一対の突出部52bとがコルゲートチューブ2の軸方向に沿って並ぶ向きで挿入空間42内に移動自在に収容される。
【0032】
また、移動部材52は、図8及び図9に示すように、ブラケット3が挿入空間42に挿入されていない状態において、係止アーム48の突起48bよりも上板71側に位置付けられている。このように移動部材52が挿入空間42の突起48bよりも上板71側に位置付けられている状態においては、図8に示すように、2本の紐50がコルゲートチューブ2の外周面から離れた状態となっており、この状態でコルゲートチューブ2は軸方向に移動自在となっているとともに軸を中心として回転自在となっている。即ち、2本の紐50がコルゲートチューブ2の軸方向の移動及び軸を中心とした回転を許容している状態となっている。
【0033】
また、図2ないし図4に示すように、ブラケット3が挿入空間42に挿入され、係止アーム48に係止されて挿入空間42に取り付けられた状態において、板部52aの表面にはブラケット3の先端部3aが当接しており、この板部52a即ち移動部材52は係止アーム48の突起48bよりも底板61側に位置付けられている。このように移動部材52が挿入空間42の突起48bよりも底板61側に位置付けられている状態においては、図2に示すように、2本の紐50各々の一端部50aと他端部50bとが近付けられて輪を作るとともに、これら2本の紐50各々がコルゲートチューブ2の溝21に巻き付けられてコルゲートチューブ2を締め付けた状態、即ち溝21に密着した状態、となっており、この状態でコルゲートチューブ2は軸方向に移動することが不可能になっているとともに軸を中心として回転することが不可能になっている。即ち、2本の紐50がコルゲートチューブ2の軸方向の移動及び軸を中心とした回転を規制している状態となっている。本発明では、コルゲートチューブ2の軸方向の移動及び軸を中心とした回転を規制することを、「コルゲートチューブ2をクランプする」と表現する。
【0034】
このように、本発明では、移動部材52が、ブラケット3が挿入空間42に挿入されていない状態で、挿入空間42の突起48bよりも上板71側の位置、即ち「2本の紐50がコルゲートチューブ2の軸方向の移動及び軸を中心とした回転を許容する位置」、に位置付けられ、そして、当該移動部材52が、ブラケット3の挿入空間42への挿入時にこのブラケット3の先端部3aに押されることにより、係止アーム48のアーム部48aを撓ませるとともに突起48bを乗り越えて挿入空間42の突起48bよりも底板61側の位置、即ち「2本の紐50がコルゲートチューブ2の軸方向の移動及び軸を中心とした回転を規制する位置」、に移動される。即ち、本発明のコルゲートクランプ1は、ブラケット3に取り付けられるまでは、コルゲートチューブ2に対して移動可能であるとともに回転可能であり、ブラケット3に取り付けられるのと同時にコルゲートチューブ2をクランプする。
【0035】
また、コルゲートクランプ本体4には、「2本の紐50がコルゲートチューブ2の軸方向の移動及び軸を中心とした回転を規制する位置」に位置付けられた移動部材52が「2本の紐50がコルゲートチューブ2の軸方向の移動及び軸を中心とした回転を許容する位置」に移動すること、即ち「係止アーム48の突起48bよりも底板61側の位置」に位置付けられた移動部材52が「係止アーム48の突起48bよりも上板71側の位置」に移動すること、を規制する「規制手段」としての一対のロック部46が設けられている。
【0036】
これら一対のロック部46は、図2、図3、図6などに示すように、それぞれ、底板61の他端部61bから上板71側に立設した立設部46aと、立設部46aの先端部に設けられ、連結板63側に突出したロック突起46bと、により構成されている。また、一対のロック部46は、挿通穴41内に位置付けられるコルゲートチューブ2の軸方向に沿って間隔をあけて配置されている。
【0037】
このような一対のロック部46は、ブラケット3の先端部3aに押されることにより係止アーム48の突起48bを乗り越えてこの突起48bよりも底板61側の位置に移動された移動部材52の一対の突出部52bを、ロック突起46bよりも底板61側の位置に位置付けることにより、上述したように、移動部材52が「2本の紐50がコルゲートチューブ2をクランプする位置からクランプを解除する位置」に移動すること、即ち移動部材52が「係止アーム48の突起48bよりも底板61側の位置から突起48bよりも上板71側の位置」に移動すること、を規制する。
【0038】
このように、本発明では、コルゲートクランプ本体4に一対のロック部46が設けられているので、コルゲートチューブ2をクランプした後に紐50の締め付けが緩んでコルゲートチューブ2が位置ずれすることを確実に防止することができる。
【0039】
さらに、コルゲートクランプ本体4の底板61及び上板71には、図1、図6などに示すように、底板61及び上板71を貫通した複数の開口43,44,45が設けられている。これら複数の開口43,44,45は、挿通穴41の内部とコルゲートクランプ本体4の外部とに連通している。このことから、本発明のコルゲートクランプ1は、コルゲートクランプ本体4の外部から複数の開口43,44,45を介して2本の紐50の一部を視認することが可能となっている。
【0040】
このように、本発明では、コルゲートクランプ本体4に複数の開口43,44,45が設けられているので、クランプ部材5がコルゲートチューブ2を確実にクランプしているか否か、即ち紐50がコルゲートチューブ2の溝21に確実に巻き付けられているか否か、を容易に目視確認することができる。
【0041】
続いて、上述したコルゲートクランプ1を用いてコルゲートチューブ2をクランプして車体のブラケット3に固定する手順を説明する。
【0042】
まず、予めクランプ部材5をコルゲートクランプ本体4に組み付けておく。次に、固定手段11の係止アーム9と係止穴10との係止を解除して、コルゲートクランプ本体4の2つの半割れ部材6,7同士を離間させた後、コルゲートチューブ2を一方の半割れ部材6の内周面及び2本の紐50の上に沿わせ、2本の紐50の他端部50b側の部分と移動部材52と他方の半割れ部材7を一方の半割れ部材6に近付けて、移動部材52を挿入空間42の突起48bよりも上板71側の位置、即ち「2本の紐50がコルゲートチューブ2の軸方向の移動及び軸を中心とした回転を許容する位置」、に収容しかつ固定手段11により2つの半割れ部材6,7同士を固定する。こうして挿通穴41内にコルゲートチューブ2を移動自在かつ回転自在に位置付けてコルゲートチューブ2とコルゲートクランプ本体4とを仮固定する(図8及び図9を参照。)。
【0043】
その後、コルゲートクランプ本体4と仮固定されたコルゲートチューブ2を含むワイヤハーネスが車体の所定の位置に配索された後に、コルゲートクランプ本体4を、挿通穴41内にコルゲートチューブ2を位置付けた状態のままコルゲートチューブ2上をずらすようにしてブラケット3に近付けてブラケット3に取付ける。即ち、挿入空間42にブラケット3を位置付けて係止アーム48を係止穴30に係止させる。このことにより、移動部材52がブラケット3に押されて挿入空間42の突起48bよりも底板61側の位置に移動され、2本の紐50がコルゲートチューブ2の溝21に巻き付けられてこのコルゲートチューブ2をクランプする。このようにしてコルゲートチューブ2をクランプして車体のブラケット3に固定する。
【0044】
このように、本発明では、コルゲートクランプ本体4にコルゲートチューブ2が挿通される当該コルゲートチューブ2の外径よりも大径に形成された挿通穴41が設けられているので、この挿通穴41にコルゲートチューブ2を挿通させることでコルゲートクランプ本体4をコルゲートチューブ2に移動自在かつ回転自在に仮固定することができる。よって、コルゲートクランプ本体4をコルゲートチューブ2に仮固定した状態でこれらコルゲートクランプ本体4及びコルゲートチューブ2を含むワイヤハーネスを保管したり、該ワイヤハーネスを出荷したり、該ワイヤハーネスを車体に配索したりすることができる。また、前記ワイヤハーネスが車体に配索された後に、コルゲートチューブ2に仮固定されたコルゲートクランプ本体4を、2つの半割れ部材6,7同士を離間させることなくコルゲートチューブ2上をずらすようにしてブラケット3に近付けることができる。
【0045】
このような本発明のコルゲートクランプ1は、コルゲートチューブ2に仮固定されたコルゲートクランプ本体4をブラケット3に近付けた後、即ちブラケット3に位置合わせした後にクランプ部材5によってコルゲートチューブ2の最適な箇所をクランプすることができるので、従来のコルゲートクランプのようにコルゲートチューブの所定の箇所を高精度に位置決めして当該箇所をクランプする必要がない。よって、本コルゲートクランプ1を扱う作業者の負荷を軽減することができる。また、従来のコルゲートクランプとコルゲートチューブとは、コルゲートクランプがコルゲートチューブの所定の箇所を正確にクランプしているか否かの寸法検査が必要であったが、本発明のコルゲートクランプ1を用いることにより、前述した寸法検査が不要になるので、前述した寸法検査に要するコストを削減することができる。
【0046】
また、本発明のコルゲートクランプ1は、ブラケット3の位置またはワイヤハーネスの寸法に若干の誤差が生じている場合においても、前述した取り付け手順を実行することにより、前記誤差を吸収してコルゲートチューブ2の最適な箇所をクランプすることができるので、ワイヤハーネス及びコルゲートチューブ2の公差要件を緩和することができ、これらワイヤハーネス及びコルゲートチューブ2の製造コストを低くすることができる。また、ワイヤハーネスの不良率を低減することができる。
【0047】
また、本発明では、コルゲートクランプ本体4がブラケット3に取り付けられるのと同時にコルゲートチューブ2をクランプする、即ち本固定する、クランプ部材5が設けられているので、容易にコルゲートチューブ2をクランプすることができる。
【0048】
また、本発明のコルゲートクランプ1は、専用治具を用いることなく容易にコルゲートチューブ2をクランプしてブラケット3に固定することができるので、治具コストを削減することができる。
【0049】
また、上述したように、本発明では、コルゲートクランプ本体4が、挿通穴41に挿通されるコルゲートチューブ2を互いの間に位置付ける2つの半割れ部材6,7と、これら2つの半割れ部材6,7同士を回動自在に連結したヒンジ8と、これら2つの半割れ部材6,7同士をコルゲートチューブ2を互いの間に位置付ける位置に固定する固定手段11と、により構成されているので、挿通穴41にコルゲートチューブ2を挿通させること、及び、コルゲートチューブ2の挿通穴41内に位置付けられた部分の溝21に紐50を巻き付けること、を専用治具を用いることなく容易に行うことができる。
【0050】
また、上述した実施形態では、紐50が金属で構成されていたが、本発明では、前記紐50が合成樹脂で構成されていても良い。また、上述した実施形態では、紐50が2本設けられていたが、本発明では、紐50の本数は2本に限らず、1本であっても良く、3本であっても良い。
【0051】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 コルゲートクランプ
2 コルゲートチューブ
3 ブラケット(被取付部)
4 コルゲートクランプ本体
5 クランプ部材
6,7 半割れ部材
8 ヒンジ
11 固定手段
21 溝
41 挿通穴
42 挿入空間
43,44,45 開口
46 ロック部(規制手段)
50 紐
51 固定部材
52 移動部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状に形成され、外周面に複数の環状の溝が設けられたコルゲートチューブを被取付部に固定するコルゲートクランプにおいて、
(イ)前記コルゲートチューブが挿通される当該コルゲートチューブの外径よりも大径に形成された挿通穴と、前記被取付部が挿入されて取り付けられる挿入空間と、が設けられたコルゲートクランプ本体と、
(ロ)前記コルゲートチューブの前記挿通穴内に位置付けられた部分の前記溝に巻き付けられる紐と、前記紐の一端部に取り付けられかつ前記コルゲートクランプ本体に固定された固定部材と、前記紐の他端部に取り付けられかつ前記紐が前記コルゲートチューブの移動を許容する位置と前記紐が前記コルゲートチューブの前記溝に巻き付けられて当該コルゲートチューブの移動を規制する位置とに亘って前記挿入空間に移動自在に収容された移動部材と、により構成されたクランプ部材と、
により構成され、かつ、
(ハ)前記移動部材が、前記被取付部が前記挿入空間に挿入されていない状態で前記紐が前記コルゲートチューブの移動を許容する位置に位置付けられ、そして、前記被取付部の前記挿入空間への挿入時に当該被取付部に押されることにより、前記紐が前記コルゲートチューブの移動を許容する位置から前記紐が前記コルゲートチューブの前記溝に巻き付けられて当該コルゲートチューブの移動を規制する位置に移動される
ことを特徴とするコルゲートクランプ。
【請求項2】
前記コルゲートクランプ本体には、前記紐が前記コルゲートチューブの前記溝に巻き付けられて当該コルゲートチューブの移動を規制する位置に位置付けられた前記移動部材が、前記紐が前記コルゲートチューブの移動を許容する位置に移動することを規制する規制手段が設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載のコルゲートクランプ。
【請求項3】
前記コルゲートクランプ本体には、前記挿通穴の内部と当該コルゲートクランプ本体の外部とに連通した開口が設けられ、かつ、前記コルゲートクランプ本体の外部から前記開口を介して前記紐の少なくとも一部が視認可能に形成されている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコルゲートクランプ。
【請求項4】
前記コルゲートクランプ本体が、前記挿通穴に挿通される前記コルゲートチューブを互いの間に位置付ける2つの半割れ部材と、これら2つの半割れ部材同士を回動自在に連結したヒンジと、これら2つの半割れ部材同士を前記コルゲートチューブを互いの間に位置付ける位置に固定する固定手段と、により構成されている
ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のうち1項に記載のコルゲートクランプ。
【請求項1】
円筒状に形成され、外周面に複数の環状の溝が設けられたコルゲートチューブを被取付部に固定するコルゲートクランプにおいて、
(イ)前記コルゲートチューブが挿通される当該コルゲートチューブの外径よりも大径に形成された挿通穴と、前記被取付部が挿入されて取り付けられる挿入空間と、が設けられたコルゲートクランプ本体と、
(ロ)前記コルゲートチューブの前記挿通穴内に位置付けられた部分の前記溝に巻き付けられる紐と、前記紐の一端部に取り付けられかつ前記コルゲートクランプ本体に固定された固定部材と、前記紐の他端部に取り付けられかつ前記紐が前記コルゲートチューブの移動を許容する位置と前記紐が前記コルゲートチューブの前記溝に巻き付けられて当該コルゲートチューブの移動を規制する位置とに亘って前記挿入空間に移動自在に収容された移動部材と、により構成されたクランプ部材と、
により構成され、かつ、
(ハ)前記移動部材が、前記被取付部が前記挿入空間に挿入されていない状態で前記紐が前記コルゲートチューブの移動を許容する位置に位置付けられ、そして、前記被取付部の前記挿入空間への挿入時に当該被取付部に押されることにより、前記紐が前記コルゲートチューブの移動を許容する位置から前記紐が前記コルゲートチューブの前記溝に巻き付けられて当該コルゲートチューブの移動を規制する位置に移動される
ことを特徴とするコルゲートクランプ。
【請求項2】
前記コルゲートクランプ本体には、前記紐が前記コルゲートチューブの前記溝に巻き付けられて当該コルゲートチューブの移動を規制する位置に位置付けられた前記移動部材が、前記紐が前記コルゲートチューブの移動を許容する位置に移動することを規制する規制手段が設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載のコルゲートクランプ。
【請求項3】
前記コルゲートクランプ本体には、前記挿通穴の内部と当該コルゲートクランプ本体の外部とに連通した開口が設けられ、かつ、前記コルゲートクランプ本体の外部から前記開口を介して前記紐の少なくとも一部が視認可能に形成されている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコルゲートクランプ。
【請求項4】
前記コルゲートクランプ本体が、前記挿通穴に挿通される前記コルゲートチューブを互いの間に位置付ける2つの半割れ部材と、これら2つの半割れ部材同士を回動自在に連結したヒンジと、これら2つの半割れ部材同士を前記コルゲートチューブを互いの間に位置付ける位置に固定する固定手段と、により構成されている
ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のうち1項に記載のコルゲートクランプ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−74942(P2011−74942A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−224326(P2009−224326)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】
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