説明

コンクリートアーチ橋のアーチリブの構築方法

【課題】コンクリートアーチ橋のアーチリブを構築するに際して、施工の合理化を図ることができるコンクリートアーチ橋のアーチリブの構築方法を提供する。
【解決手段】アーチリブ両端位置からの張出し架設により構築した1対の張出し架設部13の間にメラン材11を架設し、このメラン材11にコンクリートを打設してメラン架設部12を構築することによってアーチリブ10を形成するメラン工法において、メラン材11として、並列配置された突起付きT形鋼の主桁21と、その主桁21の下端に取り付けられた底鋼板22と、底鋼板22の幅端部に取り付けられた側鋼板23とによって構成された鋼製パネル20をアーチ状に組み立てたものを用い、そのメラン材(鋼製パネル)20の主桁21のフランジとウェブの一部分にコンクリート26を打設してメラン架設部28を構築する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートアーチ橋におけるアーチリブの構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリートアーチ橋の建設においては、アーチリブを構築するに際して、架設系における構造的な安定を得ることを目的として、アーチリブ両端位置から1対の張出し架設部を構築し、この1対の張出し架設部の間に鋼製のメラン材を架設した後、このメラン材にコンクリートを打設して、アーチリブを形成するというメラン工法が採用されている(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)。
【0003】
このメラン工法は、元々オーストリアで100年以上前に開発された工法であるが、現在でもコンクリートアーチ橋では採用されており、支間長300mの長大アーチ橋への適用も可能とされている。
【0004】
ここで、図4は、アーチリブの構築方法の一例(特許文献1)を示すものである。
【0005】
図4(a)に示すように、アーチリブ両端位置からの張出し架設により1対の張出し架設部13を構築した後、これら張出し架設部13をアーチリブ中央位置においてメラン材11により閉合し、その後、図4(b)に示すように、このメラン材14に対して、ワーゲン19を用いて、その両端部から順次コンクリートで巻き立てることにより、図4(c)に示すように、メラン架設部12を構築し、これによりアーチリブ10の構築を完了させるようになっている。
【0006】
そして、図3は、メラン架設部12の従来例の横断面図を示すものであり、図4(c)におけるA−A断面図に相当している。
【0007】
図3に示すように、従来のメラン架設部98は、鋼製のメラン材90の4周をコンクリート96で巻き立てた構造になっている。メラン材90は、左右1対の主構91と、これら1対の主構91を連結する架構92とからなっており、各主構91は、ボックス型ガーダからなり、架構92は、複数の対傾構93および横構94等からなっている。
【特許文献1】特開2003−049409号公報
【特許文献2】伊藤稔明 外3名、「頭島大橋(仮称)の施工 −新しいメラン工法を用いた複合アーチ橋― 」、橋梁と基礎、2002年9月、p2−11
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、図3に示した従来のメラン架設部98を形成する際には、鋼製のメラン材90の4周をコンクリート96で巻き立てる必要があるので、鋼製のメラン材90から支保工を組み立ててコンクリート96を打設することになるため、コンクリート96の硬化後の適切な時期において型枠を解体する必要があり、それらの作業は高所作業ということもあり、施工の合理化の観点において一考の余地が有った。
【0009】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、コンクリートアーチ橋のアーチリブを構築するに際して、施工の合理化を図ることができるコンクリートアーチ橋のアーチリブの構築方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は以下の特徴を有する。
【0011】
[1]コンクリートアーチ橋のアーチリブを構築するに際して、アーチリブ両端位置からの張出し架設により1対の張出し架設部を構築し、該1対の張出し架設部の間にメラン材を架設し、該メラン材にコンクリートを打設してメラン架設部を構築することによってアーチリブを形成するアーチリブの構築方法において、
前記メラン材を、並列配置されたT形鋼の主桁と、該主桁の下端に取り付けられた底鋼板と、該底鋼板の幅端部に取り付けられた側鋼板とによって構成し、そのメラン材の主桁のフランジとウェブにコンクリートを打設してメラン架設部を構築することを特徴とするコンクリートアーチ橋のアーチリブの構築方法。
【0012】
[2]コンクリートアーチ橋のアーチリブに架設されるメラン材であって、並列配置されたT形鋼の主桁と、該主桁の下端に取り付けられた底鋼板と、該底鋼板の幅端部に取り付けられた側鋼板とによって構成され、前記主桁のフランジとウェブにコンクリートが打設されてメラン架設部が構築されることを特徴とするコンクリートアーチ橋用メラン材。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、コンクリートアーチ橋のアーチリブを構築するに際して、従来のメラン工法のような、メラン材をコンクリートで巻き立てるということが必要でなくなり、施工の合理化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
本発明の一実施形態においては、コンクリートアーチ橋のアーチリブを構築するに際して、図4に示したような、アーチリブ両端位置からの張出し架設により1対の張出し架設部13を構築し、この1対の張出し架設部13の間にメラン材11を架設し、このメラン材11にコンクリートを打設してメラン架設部12を構築することによってアーチリブ10を形成するというメラン工法において、メラン材11として、図1に横断面図を示すような、並列配置された突起付きT形鋼の主桁21と、その主桁(突起付きT形鋼)21の下端に取り付けられた底鋼板22と、底鋼板22の幅端部に取り付けられた側鋼板23とによって構成された鋼製パネル20をアーチ状に組み立てたものを用い、そのメラン材(鋼製パネル)20の主桁(突起付きT形鋼)21のフランジとウェブの一部分にコンクリート26を打設してメラン架設部28を構築するようにしている。
【0016】
つまり、従来、鋼−コンクリート合成床版橋として実績がある突起付きT形鋼21を用いた鋼板パネル20をアーチ状に組み立てた上で、それにコンクリート26を打ち込み、一体化することによって、鋼−コンクリート合成構造のメラン架設部28を構築して、コンクリートアーチ橋のアーチリブ10を形成するもので、圧縮力はコンクリート26に、曲げモーメントは鋼−コンクリート合成構造(メラン架設部)28によって抵抗させる。これにより、コンクリートアーチ橋のアーチリブを構築する場合においても、鋼−コンクリート合成床版橋の特徴である部材のスリム化、省力化が可能となる。
【0017】
すなわち、以下のような効果が得られる。
(1)メラン材(鋼板パネル)20をコンクリートで巻き立てる必要がないとともに、鋼板パネル20が型枠を兼用するため、支保工の組立・解体作業を省略することができる。
(2)鋼板パネル20を強度部材として使用するため、引張力を受ける部位に対しても鋼部材(T形鋼21、底鋼板22、側鋼板23)が抵抗するので、部材のスリム化が可能となり、合理的な構造とすることができる。
(3)上記のような施工の合理化により、高所での危険な作業を減らすとともに、工期の短縮が可能となる。
【0018】
なお、場合によっては、図2に横断面図を示すように、メラン材(鋼製パネル)20の主桁(突起付きT形鋼)21のフランジとウェブの全体にコンクリート26を打設してメラン架設部29を構築するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態におけるメラン材とメラン架設部を示す横断面図である。
【図2】本発明の一実施形態における他のメラン架設部を示す横断面図である。
【図3】従来のメラン材とメラン架設部を示す横断面図である。
【図4】メラン工法における施工工程の説明図である。
【符号の説明】
【0020】
10 アーチリブ
11 メラン材
12 メラン架設部
13 張出し架設部
20 メラン材
21 主桁(突起付きT形鋼)
22 底鋼板
23 側鋼板
26 コンクリート
28 メラン架設部
29 メラン架設部
90 メラン材
91 主構
92 架構
93 対傾構
94 横構
98 メラン架設部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートアーチ橋のアーチリブを構築するに際して、アーチリブ両端位置からの張出し架設により1対の張出し架設部を構築し、該1対の張出し架設部の間にメラン材を架設し、該メラン材にコンクリートを打設してメラン架設部を構築することによってアーチリブを形成するアーチリブの構築方法において、
前記メラン材を、並列配置されたT形鋼の主桁と、該主桁の下端に取り付けられた底鋼板と、該底鋼板の幅端部に取り付けられた側鋼板とによって構成し、そのメラン材の主桁のフランジとウェブにコンクリートを打設してメラン架設部を構築することを特徴とするコンクリートアーチ橋のアーチリブの構築方法。
【請求項2】
コンクリートアーチ橋のアーチリブに架設されるメラン材であって、並列配置されたT形鋼の主桁と、該主桁の下端に取り付けられた底鋼板と、該底鋼板の幅端部に取り付けられた側鋼板とによって構成され、前記主桁のフランジとウェブにコンクリートが打設されてメラン架設部が構築されることを特徴とするコンクリートアーチ橋用メラン材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−77742(P2010−77742A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−249452(P2008−249452)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】