説明

コンクリート打設用内型枠及び内型枠移動設置工法

【課題】コンクリート打設用内型枠に内型枠支持装置を設けて、作業者が安全に作業し易く、且つ完成後のコンクリート構造体の強度を損なわない装置及び工法を提供する。
【解決手段】コンクリート構造体のコンクリート打設時に用いられる筒状に形成された内型枠1において、前記内型枠に内型枠支持装置3,4を設け、前記内型枠支持装置で前記内型枠の上部に上部支持装置3を設け、前記内型枠支持装置で前記内型枠の下部に下部支持装置4を設ける。作業者が作業するために乗る作業用足場6を内型枠1の下側に設け、コンクリート構造体の内面の作業ができ、内型枠1の上側の角には吊上げワイヤーが連結されて、内型枠1の吊上げワイヤー7をクレーンで吊上げ、内型枠1を所定の位置に移動すると共に、作業者をコンクリート構造体内面の所定の位置に運ぶ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンクリート打設時に用いられる内型枠を固定する内型支持装置を有するコンクリート打設用内型枠、及びこのコンクリート打設用内型枠を用いてコンクリート構造体中を移動して作業をする内型枠移動設置工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ケーソンなどのような大型のコンクリート構造体を構築する場合、ある高さ毎に鉄筋を継ぎ足してコンクリートを打設し、その上に積み上げて規定の高さまで構築していく方法が用いられていた。この際、このコンクリート構造体を構築するために、外側には外型枠を設け、内側には内型枠を設けて、外型枠と内型枠との間のスペースにコンクリートを流し込み、所定時間が経過すると第1段コンクリート構造体が構築されるという方法が用いられていた。
【0003】
ここで、上記第1段コンクリート構造体の上に新に第2段コンクリート構造体を積み上げるとき、第1段コンクリート構造体の上にコンクリートを流し込むための外型枠と内型枠とを設ける必要がある。この外型枠は流し込んだコンクリートが固まり、第2段コンクリート構造体となった後に取外される。この際、完成した第1段コンクリート構造体の外側に外型枠設置用ブラケット(図示せず)を設け、外型枠設置用ブラケットに外型枠を仮置きし、第2段のコンクリート構造体が完成した時点で外型枠を取外し、続けて第3段コンクリート構造体を積み上げていくことが出来るようになっている。一方、内型枠は第1段コンクリート構造体の内側に位置する場所に設けられているため、このままの状態で第2段、第3段と積み上げていくと、規定の高さ(例えば、第3段)までコンクリート構造体が完成したとき、内型枠を取外すのが非常に困難となる。そこで、通常は第1段コンクリート構造体が完成した後、内型枠を取外し、第2段コンクリート構造体を構築するために、この下準備として完成した第1段コンクリート構造体の内側に内型枠設置用ブラケット(アジャストベース)を設け、この内型枠設置用ブラケットに内型枠を仮置きすることで各段のコンクリート構造体が完成した時点で内型枠を容易に取外すことが出来るようになっている。しかし、この内型枠設置用ブラケットは第2コンクリート構造体が出来るまでの内型枠を仮置きするためのものであるため、第2コンクリート構造体が完成後撤去しなければならない。また、内型枠設置用ブラケットの取付及び取外し時には、内型枠に吊下げられた作業用足場の上に作業者が乗らなければならなかったため、作業者が作業用足場に乗った状態で内型枠と一緒に吊上げる状態になる場合があり、危険を伴なう作業になっていた。この内型枠設置用ブラケットの取付け、取外し作業を容易に且つ安全に作業をするための工法は既に考案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平10−61177号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1では、上記内型枠設置用ブラケットの代りにコンクリート構造体にほぞ穴を設ける方法が用いられているため、このほぞ穴によって完成後のコンクリート構造体の強度に影響がでる可能性がある。本発明は作業者が作業しやすく、且つ安全に、また完成後のコンクリート構造体の強度を損なわない装置及び工法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本願発明のコンクリート打設用内型枠及びコンクリート打設方法は、コンクリート構造体のコンクリート打設時に用いられる筒状に形成された内型枠において、前記内型枠の上部に、前記内型枠を上方へ移動させたときに最初に前記内型枠を支えることができるように上部支持装置を設け、前記内型枠の下部に、前記内型枠を上方へ移動させコンクリート構造体から前記内型枠が離れたときに前記内型枠を支えることができるように下部支持装置を設けたにより、クレーンを用いることなく、内型枠をコンクリート構造体に固定することができる。
【0006】
また、前記内型枠の中心軸から放射線状外側に向って、前記内型枠支持装置を前記内型枠の上部および下部に設けたことにより、内型枠をコンクリート構造体に安定して固定することができる。
【0007】
また、前記上部支持装置は支持材とガイドとを有し、前記支持材を前記ガイドの中で鉛直方向に移動可能に設けたことにより所定の位置に内型枠を固定させることができる。
【0008】
また、前記ガイドを貫通して前記支持材に至る固定ピンを前記ガイドの後方から設け、前記固定ピンが前記ガイドの後方から前記支持材の方向に力が加わるように、前記固定ピンに弾性手段を設け、前記固定ピンを水平方向に移動できるように設けたことにより、クレーンで吊上げただけで、所定の位置に内型枠を固定させることができる。
【0009】
また、前記下部支持装置はスライドビームとケーシングとを有し、前記スライドビームを前記ケーシングの中で水平方向に移動可能に設けたことにより、コンクリート構造体の上面でも内型枠を固定することができる。
【0010】
また、前記下部支持装置に前記スライドビームを突出または後退させるための、突出用ワイヤーと後退用ワイヤーとを設け、前記突出用ワイヤー及び前記後退用ワイヤーと前記スライドビームとの間に付勢手段を設け、前記ケーシングの内側の上面にプーリーを設け、前記突出用ワイヤーを前記プーリーに当てて引く方向を変えられるようにしたことにより、外部からの付加が加わっているときは突出状態または後退状態を維持し、外部からの付加が除かれたときは後退また突出させることができると共に、突出用ワイヤーまたは後退用ワイヤーを同じ方向に引くだけで、スライドビームを突出方向または後退方向に引張力を加えることができる。
【0011】
さらに、コンクリート構造体のコンクリート打設時に用いられる筒状に形成された内型枠を用いる内型枠移動設置工法において、前記コンクリート構造体に取付けられたアジャストベースに内型枠を設置するステップと、前記内型枠を上方へ移動させたときに前記上部支持装置で支持するステップと、前記上部支持装置が支持しているときに、前記内型枠の下側に取付けられた作業用足場に作業者が乗って前記アジャストベースを取外すステップと、前記内型枠を上方へ移動させコンクリート構造体から前記内型枠が離れたときに前記内型枠を前記下部支持装置が支えるステップと、前記下部支持装置が支持しているときに、前記内型枠の下側に取付けられた作業用足場に作業者が乗って前記アジャストベースを取付けるステップとを設けたことにより、作業用足場に乗っている作業者がクレーンで吊られながら移動または作業をしないようにすることができる。
【0012】
また、前記内型枠に取付けられた作業用足場の足場ワイヤーを前記コンクリート構造体との間で架けかえるステップを設けたことにより、作業者がクレーンで吊られながら作業用足場を取付けなくてもよくなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の内型枠支持装置を用いることにより、コンクリート構造体上に新に内型枠設置用ブラケットを形成することなく、容易にコンクリート構造体を構築することができると共に、安全に作業者が作業することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本願発明の一実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0015】
図1は、本願発明の一実施形態にかかる内型枠の構成を示す斜視図である。
【0016】
図1に示すように、内型枠1は中空な略四角柱状(筒状)に形成されており、この略四角柱状の外壁は剛性のある鉄等のメタルフォーム2で形成されている。また、この内型枠1には、中心軸から放射線状に、その上端の角及び下端の角で内型枠支持装置を有し、それぞれ上部支持装置3及び下部支持装置4として設けられており、内型枠1を支えることができるようになっている。そして、内型枠1の内側には内型枠1を補強するためのサポート5が設けられており、コンクリートが固まるまでのコンクリートから受ける圧力から内型枠1を支えることができるようになっている。そして、作業者が作業するために乗る作業用足場6を内型枠1の下側に設け、後述するコンクリート構造体の内面の作業ができるようになっている。また、内型枠1の上側の角には吊上げワイヤー7が連結されており、内型枠1の吊上げワイヤー7をクレーンで吊上げられるようになっている。このような構成により、内型枠1を所定の位置に移動させることができると共に、作業者をコンクリート構造体内面の所定の位置に運ぶことができる。
【0017】
次に内型枠1を所定の位置に固定するための上部支持装置3及び下部支持装置4について説明する。
【0018】
図2は、本願発明の一実施形態にかかる上部支持装置3の構成を示す斜視図であり、(a)はM部の前から見た拡大図であり、(b)はM部の後から見た拡大図である。
【0019】
図2に示すように、上部支持装置3は、メタルフォーム2に固定するためのメタルフォーム2の形状に合うように屈折した上部固定材8と、内型枠1の落下を防止するためにその外側に設けられた柱状の支持材9とを有し、この支持材9の動きを規制するために支持材9の外側には支持プレート10が設けられ、内側にはガイド11が設けられている。このガイド11は支持プレート10にボルトやナット等で取付けられており、地面に対して鉛直方向になるように設置されており、上部固定材8に取付けられたガイド11は、上部固定材8と共に、メタルフォーム2に取付けられている。ここで、この支持材9は断面がコの字の柱状に形成され、その下端には略長方形状で厚みが約10〜20mmの接地プレート12が、その中央部近傍で支持材9に取付けられている。また、支持材9の鉛直方向の中央部近傍には、平リブ13が支持材のコの字状のところに嵌め込まれるように取付けられているのと共に、接地プレート12上の支持材9の外側には略三角形状の角リブ14が地面に対し鉛直方向に形成され、支持材9の剛性を高めるように形成されている。また、ガイド11を貫通して支持材9に至る固定ピン35がガイド11の後方から挿設され、この固定ピン35がガイド11の後方から支持材9の方向に付勢されているバネ37によって形成されている。そして、この支持材9の上端にはUボルト15が支持材9と平行に形成され、固定ピン35をこのUボルト15に通すことにより、支持材9が自重によって下方に落下することを防止することができると共に、Uボルト15にワイヤー等を通して、クレーン等で吊上げて所定の位置に移動させることもできる。また、内型枠1をこの上部支持装置3で支えるときは、ガイド9の上端に設けられた半円形状の凹部36に固定ピン35を嵌め込むことにより、ガイド9が上方に移動するのを停め、固定ピン35で内型枠1の荷重を支えることができるようになっている。
【0020】
図3−1は、下部支持装置4の構成を示す斜視図であり、(a)はN部の前から見た拡大図であり、(b)はN部の後から見た拡大図である。
【0021】
図3−1に示すように、下部支持装置4は、メタルフォーム2に固定するためのメタルフォーム2の形状に合うように屈折した下部固定材16と、内型枠の落下を防止するため断面が略コの字状のスライドビーム17とを有し、このスライドビーム17の動きを規制するためにスライドブーム17を覆うようにケーシング18が設けられている。このケーシング18は、下部固定材16に取付けられるのと共に、ケーシング18とメタルフォーム2とを結ぶ連結材19によって地面に対し平行になるようにメタルフォーム2に取付けられている。そして、内型枠1がコンクリート構造体の上側に吊上げられると、スライドビーム17が外側に突き出るように構成されている。このスライドビーム17の突き出る構成を次に説明する。
【0022】
図3−2(a)(b)はそれぞれ下部支持装置4の平面図、側面図である。図3−3は、下部支持装置4のスライドビーム17の突出及び後退の機構を示す図であり、(a)は突出状態を示す平面図、(b)は後退状態を示す平面図である。
【0023】
図3−2、図3−3に示すように、スライドビーム17はケーシング18の中に設けられており、スライドビーム17には突出用ワイヤー20及び後退用ワイヤー21がボルト等で取付けられている。この突出用ワイヤー20は一端を手で引っ張ることができるように環状に形成されていると共に、他端を付勢手段であるバネ38、39と連結されている。そして、突出用ワイヤー20はケーシング18の内部の外側近傍に鉛直方向に取付けられたプーリー22の周りを約半周することにより、スライドビーム17に対する力の伝達方向を、突出用ワイヤー20の引っ張る方向とは逆方向にすることができる。ここで、スライドビーム17が外部から圧力がかけられた状態(ケーシング18の外側から内側に向かって力を加える)で突出用ワイヤー20を引っ張ると、突出用ワイヤー20に連結されたバネ38が伸び、スライドビーム17はケーシング18の中に留っている状態になる。この状態でスライドビーム17にかけられた外部からの圧力を無くすと、スライドビーム17は外側に向って突出するようになる。一方、スライドビーム17が突出した状態で外部から引張力等(摩擦力を含む)が加えられたときに、後退用ワイヤー21を引っ張ると、後退用ワイヤー21に連結されたバネ39が伸びた状態でスライドビーム17はケーシング18の外に留っている状態になる。この状態でスライドビーム17にかけられた外部からの引張力等を無くすと、スライドビーム17は内側のケーシング18に向って収納されるようになる。また、作業者が内型枠1の内側で作業を行うため、この突出用ワイヤー20及び後退用ワイヤー21をプーリー22により同じ方向に引いても相反する方向にスライドビーム17が作動するように形成されている。
【0024】
上記構成を有する内型枠支持装置(上部支持装置3及び下部支持装置4)を内型枠1に備えることにより、コンクリート構造体(ケーソン等)のコンクリート打設時に安全に作業をすることができるようになる。この作業方法について次に説明する。
【0025】
図4は、本願発明の一実施形態にかかる内型枠支持装置を備えた内型枠1を用いて、ケーソン23のコンクリートを打設していく工程を模式的に示した図であり、(a)及び(b)はアジャストベース24が内型枠1を支えている図、(c)及び(d)は上部支持装置3が内型枠1を支えている図、(e)及び(f)は下部支持装置4が内型枠1を支えている図である。
【0026】
図4(a)に示すように、地面にコンクリート構造体であるケーソン23の第1段目を形成した後に、その鉛直方向に第2段目を形成する場合、第1段目の上端に第2段目のケーソン23のコンクリートを打設するために、まず、鉄筋等を第1段目の上端に取付ける(図示せず)。その後、クレーンなどを用いて内型枠1を第1段目のケーソン23の上方から投入し、第1段目の上方の開口近傍に設けられたアジャストベース24に内型枠1を置く。そして、図4(b)に示すように、その外側には第2段目のケーソン23のコンクリートを打設するために外型枠25が設けられ、内型枠1と外型枠25との間にコンクリートを流し込むことにより、第2段目のケーソン50が形成される。この第2段目のケーソン50が形成された後、内型枠1の4角に上部支持装置3を、支持材9が鉛直方向に移動可能に取付ける。その後、内型枠1を鉛直上方に移動(約30cm〜100cm)させる。
【0027】
図4(c)に示すように、図4(b)で示された状態から内型枠1を鉛直上方に移動させた場合、上部支持装置3が作動することにより、内型枠1は上部支持装置3によって支えられるようになる。このとき、作業者は第2段目の上端からハシゴ26などを使って、内型枠1に設けられた作業用足場6に降りて行く。このとき、図4(d)に示すように、作業者は第1段目のケーソン23に残っているアジャストベース24の取外し作業、取外した後の穴を埋める作業等を行う。この作業が終了した後、作業者は一度内型枠1の外側にハシゴ26等で退去し、クレーン等を用いて第2段目のケーソン50の上端に内型枠1の下端がくるまで内型枠1を移動させる(図4(e))。
【0028】
図4(e)に示すように、この場合クレーンにより第2段目のケーソン50の上端を通過したと同時に、下部支持装置4のスライドビーム17が突出し、スライドビーム17で内型枠1を支えられるように構成されている。スライドビーム17が内型枠1を支えている状態で、再び作業者はハシゴ26等を用いて作業用足場6に降りて行き、新に打設する第3段目のケーソンの準備として、第2段目の上端近傍にアジャストベース24を固定する作業等を行う。その後、作業用足場6を内型枠1から取外し、アジャストベース24に作業用足場6を取付け、作業者が内型枠1の内側から外側に退去した後、クレーン等で内型枠1を、作業用足場6を第2段目のケーソン50の上端に残した状態で、ケーソン50から離れた位置に移動させ、第3段目の打設準備を行う。
【0029】
ここで、内型枠1の内側で作業者が作業を行うための作業足場6は、作業によってその位置を変更する必要があるため、内型枠1と共に移動する場合と、打設後のケーソン23、50に残した状態にする場合とがある。次にこの内型枠1とケーソン23との間の作業用足場6の付替え(足場ワイヤーの架けかえ)について説明する。
【0030】
図5は、内型枠1の作業用足場6をケーソン23に取付けた状態の斜視図である。
【0031】
図5に示すように、作業用足場6は足場ワイヤーである第1足場ワイヤー27と、第2足場ワイヤー28と、第3足場ワイヤー29とを作業用足場6のコーナー部に有しており、作業用足場6が内型枠1から分離された状態では、ケーソン23の4角に取付けられた足場固定用フック30に、第3足場ワイヤー29が取付けられている。また、この各足場固定用フック30の間にはそれぞれ断面が略逆L字形で柱状のアジャストベース24が2つ設けられており、内型枠1がアジャストベース24上に置けるように形成されている。そして、作業用足場6は、略正方形状に形成されており、その各辺には作業者が作業をすることができるように長方形状の板31が設けられている。また、この板31に囲まれた内側の部分にはネット32が形成され、作業者が板31を踏み外した際に落下しないようになっている。この作業用足場6を用いて、メタルフォーム2とケーソン23との間の足場ワイヤーの架けかえの方法を説明する。
【0032】
図6は、内型枠1でメタルフォーム2と作業用足場6とが分離している状態から結合される状態までを示した作業用足場6のコーナー部の拡大図であり、(a)及び(b)は作業用足場6が第3足場ワイヤー29によってケーソン23に固定されている状態を示した図、(c)及び(d)は作業用足場6が第1足場ワイヤー27によってメタルフォーム2に固定されている状態を示した図である。
【0033】
図6(a)に示すように、作業用足場6が第3足場ワイヤー29によってケーソン23に固定されている場合、その他の足場ワイヤーである第1足場ワイヤー27及び第2足場ワイヤー28は、一端を作業用足場6の固定用フック33に固定され、他端を何も固定されていない状態にされている。これは、図4(b)に示す状態と同じである。この状態で、作業者は作業用足場6に乗り、足場ワイヤーの架けかえ作業を行う。まず、メタルフォーム2がアジャストベース24に置かれている状態で、作業用足場6に乗った作業者は第1足場ワイヤー27をメタルフォーム2にかける。この際、当然のことながら、図6(b)に示すように、第3足場ワイヤー29に作業用足場6の荷重がかかっているため、第1足場ワイヤー27は緩んだ状態でメタルフォーム2の固定用フック34にかかることになる。この状態から、クレーン等でメタルフォーム2を吊上げると、図6(c)に示すように、第1足場ワイヤー27が第3足場ワイヤー29に取って替わって作業用足場6の荷重を支えることになるため、第3足場ワイヤー29は第1足場ワイヤー27が伸びると同時に緩んで行く。これは、図4(b)に示す状態と同じである。また、このとき、上部支持装置3が働くように設定されているため、この位置で内型枠1はケーソン23、50に対して停止することができる。そして、図6(d)に示すように、この緩んだ第3足場ワイヤー29を作業用足場6に乗った作業者が取外すことにより、図6(e)に示すように、第1足場ワイヤー27がメタルフォーム2と一体となって、クレーン等により鉛直方向に移動することができるようになる。次にこれとは逆の第1足場ワイヤー27を第3足場ワイヤー29に架けかえる作業を説明する。
【0034】
図7は、内型枠1でメタルフォーム2と作業用足場6とが結合している状態から分離される状態までを示した作業用足場6のコーナー部の拡大図であり、(a)及び(b)は作業用足場6が第1足場ワイヤー27によってメタルフォーム2に固定されている状態を示した図、(c)は作業用足場6が第2足場ワイヤー28によってケーソン23に固定されている状態を示した図、(d)は作業用足場が第3足場ワイヤー29によってケーソン23に固定されている状態を示した図である。
【0035】
図7(a)に示すように、作業用足場6が第1足場ワイヤー27によって内型枠1に固定されている場合、その他の足場ワイヤーである第2足場ワイヤー28及び第3足場ワイヤー29は、一端を作業用足場6の固定用フック33に固定され、他端を何も固定されていない状態にされている。これは、図4(c)に示す状態と同じである。この状態で、作業者は作業用足場6に乗り、ケーソン23に取付けられたアジャストベース24を取外す作業を行う。そして、作業者がハシゴ等で内型枠1の外側に出た後、クレーン等で内型枠1を上方に移動させ、下部支持装置4が作動する位置でクレーンを停止させ、作業者が再びハシゴ等を使って作業用足場6に降りて行く。図7(b)に示すように、下部支持装置4が作動している状態では、第1足場ワイヤー27がメタルフォーム2と作業用足場6とを連結している。この状態から第3足場ワイヤー29への架けかえ作業を行う。まず、メタルフォーム2が下部支持装置4(図3−1参照)でケーソン50に固定されている状態で、作業用足場6に乗った作業者は、第2足場ワイヤー28をケーソン50にかける。この際、当然のことながら、第1足場ワイヤー27に作業用足場6の荷重がかかっているため、第2足場ワイヤー28は緩んだ状態でケーソン50の固定用フック30にかかることになる。次に、第2足場ワイヤー28を第1足場ワイヤー27が緩むまで締めていく。つまり、作業用足場6の荷重を第2足場ワイヤー28で支えられるまで締めていく。この時、図7(c)に示すように、作業者は第3足場ワイヤー29をケーソン50にかけると共に、緩んだ第1足場ワイヤー27をメタルフォーム2から取外す。そして、第2足場ワイヤー28を緩めていき、図7(d)に示すように、第3足場ワイヤー29が作業用足場6の荷重を支えられる状態になったとき、第2足場ワイヤー28を固定用フック30から取外す。これは、図4(f)の状態と同じである。後は、作業者が第3段目のケーソンの打設のために、アジャストベース24を取付けるだけである。この一連の作業を繰り返すことにより、ケーソン23を所望の高さまで形成していくことができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
海岸や河川の護岸のために用いるケーソンなどのコンクリート構想体を形成するための内型枠に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本願発明の一実施形態にかかる内型枠の構成を示す斜視図である。
【図2】本願発明の一実施形態にかかる上部支持装置の構成を示す斜視図であり、(a)はM部の前から見た拡大図であり、(b)はM部の後から見た拡大図である。
【図3−1】下部支持装置の構成を示す斜視図であり、(a)はN部の前から見た拡大図であり、(b)はN部の後から見た拡大図である。
【図3−2】(a)(b)はそれぞれ下部支持装置の平面図、側面図である。
【図3−3】下部支持装置4のスライドビーム17の突出及び後退の機構を示す図であり、(a)は突出状態を示す平面図、(b)は後退状態を示す平面図である。
【図4】本願発明の一実施形態にかかる内型枠支持装置を備えた内型枠を用いて、ケーソンのコンクリートを打設していく工程を模式的に示した図であり、(a)及び(b)はアジャストベースが内型枠を支えている図、(c)及び(d)は上部支持装置が内型枠を支えている図、(e)及び(f)は下部支持装置が内型枠を支えている図である。
【図5】内型枠の作業用足場をケーソンに取付けた状態の斜視図である。
【図6】内型枠でメタルフォームと作業用足場とが分離している状態から結合される状態までを示した作業用足場のコーナー部の拡大図であり、(a)及び(b)は作業用足場が第3足場ワイヤーによってケーソンに固定されている状態を示した図、(c)及び(d)は作業用足場が第1足場ワイヤーによってメタルフォームに固定されている状態を示した図である。
【図7】内型枠でメタルフォームと作業用足場とが結合している状態から分離される状態までを示した作業用足場のコーナー部の拡大図であり、(a)及び(b)は作業用足場が第1足場ワイヤーによってメタルフォームに固定されている状態を示した図、(c)は作業用足場が第2足場ワイヤーによってケーソンに固定されている状態を示した図、(d)は作業用足場が第3足場ワイヤーによってケーソンに固定されている状態を示した図である。
【図8】従来の支持装置を備えていない内型枠を用いて、ケーソンのコンクリートを打設していく工程を模式的に示した図であり、(d)(e)(f)は作業者がクレーンで吊られながら移動または作業をしている図である。
【符号の説明】
【0038】
1 内型枠
2 メタルフォーム
3 上部支持装置
4 下部支持装置
6 作業用足場
7 吊上げワイヤー
9 支持材
11 ガイド
17 スライドビーム
18 ケーシング
20 突出用ワイヤー
21 後退用ワイヤー
22 プーリー
23、50 ケーソン
24 アジャストベース
27 第1足場ワイヤー
28 第2足場ワイヤー
29 第3足場ワイヤー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造体のコンクリート打設時に用いられる筒状に形成された内型枠において、
前記内型枠の上部に、前記内型枠を上方へ移動させたときに最初に前記内型枠を支えることができるように上部支持装置を設け、かつ、
前記内型枠の下部に、前記内型枠を上方へ移動させコンクリート構造体から前記内型枠が離れたときに前記内型枠を支えることができるように下部支持装置を設けたことを特徴とするコンクリート打設用内型枠。
【請求項2】
前記内型枠の中心軸から放射線状外側に向って、前記内型枠支持装置を前記内型枠の上部および下部に設けたことを特徴とする請求項1に記載のコンクリート打設用内型枠。
【請求項3】
前記上部支持装置は支持材とガイドとを有し、
前記支持材を前記ガイドの中で鉛直方向に移動可能に設けた請求項1または2に記載のコンクリート打設用内型枠。
【請求項4】
前記ガイドを貫通して前記支持材に至る固定ピンを前記ガイドの後方から設け、
前記固定ピンが前記ガイドの後方から前記支持材の方向に力が加わるように前記固定ピンに付勢手段を設け、
前記固定ピンを水平方向に移動できるように設けた請求項3に記載のコンクリート打設用内型枠。
【請求項5】
前記下部支持装置はスライドビームとケーシングとを有し、
前記スライドビームを前記ケーシングの中で水平方向に移動可能に設けた請求項1乃至4のいずれか1項に記載のコンクリート打設用内型枠。
【請求項6】
前記下部支持装置に前記スライドビームを突出または後退させるための、突出用ワイヤーと後退用ワイヤーとを設け、
前記突出用ワイヤー及び前記後退用ワイヤーと前記スライドビームとの間に付勢手段を設け、
前記ケーシングの内側の上面にプーリーを設け、
前記突出用ワイヤーを前記プーリーに当てて引く方向を変えられるようにした請求項5に記載のコンクリート打設用内型枠。
【請求項7】
コンクリート構造体のコンクリート打設時に用いられる筒状に形成された内型枠を用いる内型枠移動設置工法において、
前記コンクリート構造体に取付けられたアジャストベースに内型枠を設置するステップと、
前記内型枠を上方へ移動させたときに前記上部支持装置で支持するステップと、
前記上部支持装置が支持しているときに、前記内型枠の下側に取付けられた作業用足場に作業者が乗って前記アジャストベースを取外すステップと、
前記内型枠を上方へ移動させコンクリート構造体から前記内型枠が離れたときに前記内型枠を前記下部支持装置が支えるステップと、
前記下部支持装置が支持しているときに、前記内型枠の下側に取付けられた作業用足場に作業者が乗って前記アジャストベースを取付けるステップとを設けたことを特徴とする内型枠移動設置工法。
【請求項8】
前記作業用足場に取付けられた足場ワイヤーを前記コンクリート構造体との間で架けかえるステップを設けた請求項7に記載の内型枠移動設置工法。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−214158(P2006−214158A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−27818(P2005−27818)
【出願日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(592244022)大谷建設株式会社 (1)
【Fターム(参考)】