説明

コンクリート打設装置及び該装置を備えたトンネル掘削機

【課題】 コンクリート打設ラインの洗浄が容易で洗浄時間の短縮と再掘削の段取りが短時間で行える打設装置及び該装置を備えたトンネル掘削機を提供する。
【解決手段】 掘削した地山Gの周壁を所定間隔離間して覆う内型枠Sと、該内型枠と地山の周壁との間にコンクリート打設空間Eを形成する妻型枠46とを備え、妻型枠には、コンクリート打設管50における直管部の先端側を挿通・固定し、その基端側から分岐した分岐管部にコンクリート供給源に通じるコンクリート打設配管51を着脱可能に接続する一方、直管部の基端に、ジャッキ62と該ジャッキのロッド先端に付設された棒状ピストン63とを有する塞止弁装置60を連設し、ジャッキの収縮時に棒状ピストンの後退により打設管の分岐管部が直管部に連通する一方、伸長時には前進により分岐管部と直管部との連通が遮断されると共に直管部内の残留コンクリートが打設空間に押し出されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ECL(Excluded Concrete Lining)による覆工方法に用いられるコンクリート打設装置及び該装置を備えたトンネル掘削機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
前記覆工方法を採用したトンネル掘削機として、泥土圧式シールド掘削機等が良く知られている(特許文献1参照)。これは、円筒状の掘削機本体の前面部に設けたカッタヘッドで地盤を掘削しつつ、掘進されたトンネルの内壁面を所定の間隔を空けて内型枠によって覆い、この内型枠と前記内壁面との間に適宜鉄筋を配置するなどして、直打ち(場所打ち)でコンクリートを打設し、その養生・硬化を待って覆工を行うものである。
【0003】
そして、前述したような泥土圧式シールド掘削機等では、前記トンネルの内壁面と内型枠との空間を閉塞するためのリング状の妻型枠(装置)が設けられ、該妻型枠を通して前記コンクリートが打設されると共に、妻型枠ジャッキの伸縮により当該妻型枠が前記空間内を前後方向(トンネルの長手方向)へ摺動可能になっている。
【0004】
また、前記覆工方法に用いられるコンクリート打設装置においては、図7に示すように、コンクリート打設ラインにおけるコンクリート配管(ホース)100の先端はボール弁型等の塞止弁101及びさや管102を介して妻型枠103に接続されていた。尚、図中104は掘削機本体(スキンプレート)、105は内型枠で、Cは打設されたコンクリート、Gは地山をそれぞれ示す。
【0005】
従って、シールド掘削機による掘削下にあっては、塞止弁101が開かれて図示しないコンクリート供給源からコンクリート配管(ホース)100→塞止弁101→さや管102を通って地山Gの周壁と予め組み立てられた内型枠105との間隙にコンクリートCが打設・充填される。
【0006】
一方、点検等でシールド掘削機が停止されると、塞止弁101を閉じた後、塞止弁101からコンクリート配管(ホース)100を取り外して当該コンクリート配管(ホース)100内の残留コンクリートが硬化しない内に当該コンクリート配管(ホース)100内を高圧洗浄水等で洗浄する。一方、さや管102と塞止弁101は、地山Gの周壁と内型枠105との間隙に打設されたコンクリートCの硬化後の清掃となる。つまり、さや管102を塞止弁101毎妻型枠103のさや管挿通孔103aから引き抜き、次いでさや管102と塞止弁101を分離してそれぞれ清掃し、その後両者を再度連結した状態で妻型枠103に取り付け、最後に塞止弁101に洗浄済みのコンクリート配管(ホース)100を接続することになる。
【0007】
【特許文献1】特開2001−173387号公報
【特許文献2】特開2001−090488号公報
【特許文献3】特開平10−115196号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、上述した従来のコンクリート打設装置にあっては、シールド掘削機の停止後再掘削するにあたって、地山Gの周壁と内型枠105との間隙に打設されたコンクリートCの硬化を待って、さや管102と塞止弁101を妻型枠103から取り外して清掃するというステップを必ず踏むことになるため、再掘削の段取りに多大な時間を要する。また、さや管102と塞止弁101の清掃にあたっては、内部に残留しているコンクリートも硬化しているので、清掃作業が面倒であるという問題点があった。
【0009】
尚、特許文献2では、妻型枠に斜めに挿入されたコンクリート供給管を、妻型枠に形成された弁体収容孔内を移動可能なピストン型の弁体で開閉し、シールド掘削機の停止時には弁体の移動によりコンクリート供給管を閉止すると共に弁体収容孔内に残留するコンクリートをコンクリート打設空間に押し出す技術が開示されている。ところが、この特許文献2においても、シールド掘削機の停止時にはコンクリート供給管を妻型枠から取り外して清掃し、清掃後再度妻型枠に取り付けなければならないことから、清掃作業が煩雑になるという不具合がある。
【0010】
また、特許文献3では、充填口を有するケーシングに連通接続されたコンクリートの供給管と洗浄水が流れる洗浄管とが、給水通路を備えたピストンの移動により適宜切り替えられて、コンクリートの打設と各管の洗浄水による洗浄とが交互に行われるようにした技術が開示されている。ところが、この特許文献3においては、配管が煩雑で装置が大掛かりとなってコストアップを招来するという不具合がある。
【0011】
そこで、本発明は、コンクリート打設ラインの洗浄が容易で洗浄時間の短縮と再掘削の段取りが短時間で行えるコンクリート打設装置及び該装置を備えたトンネル掘削機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
斯かる目的を達成するための本発明に係るコンクリート打設装置は、トンネルの内壁面を、該トンネルの内壁面から所定距離離間した位置で覆う内型枠と、該内型枠と掘削機の外郭をなすスキンプレートとの間に配されて前記内型枠とトンネルの内壁面との間にコンクリート打設空間を形成する妻型枠とを備え、
前記妻型枠には、コンクリート打設管における直管部の先端側を挿通・固定し、
前記直管部の基端側から分岐した分岐管部にコンクリート供給源に通じるコンクリート打設配管を着脱可能に接続する一方、前記直管部の基端に塞止弁装置を連設し、
前記塞止弁装置は、ジャッキと該ジャッキのロッド先端に付設された棒状ピストンとを有し、
前記ジャッキの収縮時では、棒状ピストンの後退により前記コンクリート打設管の分岐管部が直管部に連通する一方、前記ジャッキの伸長時では棒状ピストンの前進により前記分岐管部と直管部との連通が遮断されると共に直管部内の残留コンクリートが前記コンクリート打設空間に押し出されることを特徴とする。
【0013】
また、前記棒状ピストンは、その先端に第1パッキンを着脱可能に備えると共に、その中間部外周に第2パッキンを着脱可能に備え、前記ジャッキの伸長時では前記第2パッキン部で前記分岐管部と直管部との連通を遮断することを特徴とする。
【0014】
また、前記塞止弁装置は、前記直管部の基端に連結管を介して連設されることを特徴とする。
【0015】
斯かる目的を達成するための本発明に係るトンネル掘削機は、筒状の掘削機本体と、該掘削機本体を前進させる推進ジャッキと、該掘削機本体の前部に回転駆動可能に支持されたカッタヘッドと、該カッタヘッドを回転させる駆動手段と、を備えたトンネル掘削機において、
前記コンクリート打設装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るコンクリート打設装置によれば、掘削機の点検等における停止後から再掘削の間に、コンクリート打設管及び塞止弁装置を取り外して洗浄する必要がなく、コンクリート打設ラインの洗浄が容易で洗浄時間の短縮と再掘削の段取りが短時間で行える。
【0017】
また、棒状ピストンは、その先端に第1パッキンを着脱可能に備えると共に、その中間部外周に第2パッキンを着脱可能に備え、ジャッキの伸長時では第2パッキン部で分岐管部と直管部との連通を遮断するので、それぞれのパッキンを適宜交換することで、シール性を良好に保持することができる。また、塞止弁装置は、直管部の基端に連結管を介して連設されるので、ジャッキのストロークを任意に選択でき、塞止弁装置の設計自由度が得られる。
【0018】
本発明に係るトンネル掘削機によれば、コンクリート打設ラインの洗浄が容易で洗浄時間の短縮と再掘削の段取りが短時間で行えるコンクリート打設装置を備えるで、トンネル掘削機の掘削能率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係るコンクリート打設装置及び該装置を備えたトンネル掘削機を実施例により図面を用いて詳細に説明する。
【実施例】
【0020】
図1は本発明の一実施例を示すトンネル掘削機の概略断面図、図2はコンクリート打設装置部(塞止弁開時)の拡大断面図、図3は図2のIII-III線断面図、図4は塞止弁の詳細拡大断面図、図5は塞止弁閉時のコンクリート打設装置部の拡大断面図、図6は図5のVI−VI線断面図である。
【0021】
本実施例で説明するトンネル掘削機は、掘削土砂をチャンバに充満させ、チャンバ内を所定の圧力に維持しながら排土することで、切羽の安定化を図りながらトンネルを構築する泥土圧式シールド掘削機である。
【0022】
この泥土圧式シールド掘削機において、図1に示すように、掘削機本体11は、ほぼ同径の円筒形状をなす前胴12と後胴13とが連結軸14によって左右に屈曲自在に連結され、両者の間に架設された複数本の中折ジャッキ15によって屈曲可能となっている。この前胴12の前部には回転リング16が回転自在に支持され、この回転リング16には連結ビーム17を介してカッタヘッド18が連結されている。
【0023】
このカッタヘッド18は、中心部から複数本のカッタスポーク19が放射状をなして配設され、各先端部が外周リング20によって連結されて構成されている。そして、カッタヘッド18の中心部にはフィッシュテールカッタ21が装着される一方、各カッタスポーク19の両側部には複数のカッタビット22がその長手方向に沿って装着され、所定のカッタスポーク19の先端部には余掘りを行うコピーカッタ23aとレスキュービット23bが出没自在に設けられている。
【0024】
また、回転リング16の後部にはリングギア24が固定される一方、掘削機本体11の前胴12には複数のカッタ旋回モータ(駆動手段)25が装着されており、この各カッタ旋回モータ25の駆動ギア26がこのリングギア24にそれぞれ噛み合っている。従って、カッタ旋回モータ25を駆動して駆動ギア26を回転駆動すると、リングギア24、回転リング16、連結ビーム17を介してカッタヘッド18を回転することができる。
【0025】
また、前胴12の前部には、カッタヘッド18の後方に位置してバルクヘッド27が設けられ、カッタヘッド18とこのバルクヘッド27との間に掘削土砂を充満させるチャンバ28が形成されている。バルクヘッド27の前面側には複数本の固定式攪拌棒29が突設される一方、カッタヘッド18の後面側には複数本の旋回式攪拌棒30が突設されている。固定式攪拌棒29の一部にチャンバ28内の掘削土砂に対して加泥材を注入する図示しない加泥材注入口が設けられると共に、薬液(固結材)を注入する図示しない薬液注入管が設けられている。そして、掘削機本体11内には、掘削土砂を外部に搬出するためのスクリューコンベヤ33が配設されており、前部が下方に傾斜してバルクヘッド27を貫通してチャンバ28内に開口している。
【0026】
掘削機本体11の後胴13には、その内周面に沿ってリングガータ34が固定されており、このリングガータ34には複数本のシールドジャッキ(推進ジャッキ)35が後胴13の周方向に沿って装着されており、このシールドジャッキ35を後方に伸長してスプレッダ36を既設の内型枠(型枠)Sに押し付けることで、その反力により掘削機本体11が前進することができる。
【0027】
この内型枠Sは、複数個のものがトンネルの内壁面(地山Gの周壁)に所定の間隔を空けて周方向にリング状に組み付けられるものであり、この組付後に、地山Gの周壁とリング状に組み立てられた内型枠Sの外周面との空間(コンクリート打設空間E)に後述するコンクリート打設装置により直打ち(場所打ち)でコンクリートが打設されることで、トンネルが構築される。また、内型枠Sはトンネルの長手方向へ複数段に亙って組み付けられる。
【0028】
また、リングガータ34には旋回リング38がトンネル内壁面の周方向に沿って旋回自在に支持され、図示しない駆動モータにより駆動旋回可能となっており、この旋回リング38に内型枠Sを組立てる内型枠組立装置39が設けられている。さらに、リングガータ34には左右一対の支柱40が固定され、この支柱40からは後方に向かってほぼ水平な架台41が延設されており、この架台41には内型枠Sの組み立てを補助する前後一対の形状保持装置42が前後方向に移動自在に装着されている。
【0029】
また、架台41の後端には図示しない複数台の搬送台車が連結され、これら搬送台車には後段の内型枠Sを脱型する内型枠脱型装置と、この内型枠脱型装置で脱型された内型枠Sをトンネル前方へ搬送するホイストと、コンクリート打設装置のパワーユニット等が搭載されている。
【0030】
更に、後胴(スキンプレート)13と内型枠Sとの間には同内型枠Sと地山Gの周壁との間にコンクリート打設空間Eを形成するリング状の妻型枠46が配設されると共に、その前方に位置して複数本の妻型枠ジャッキ47が周方向に沿って並設され、ヘッド基端部がリングガータ34を貫通して後胴13内周部に連結される一方、ロッド先端部が前記妻型枠46に連結されている。そして、妻型枠46の外周面にはゴム製のシール部材48(図2参照)が周方向に沿って装着される一方、妻型枠46の内周面には金属製のブラシシール49が周方向に沿って装着されている。
【0031】
従って、この妻型枠ジャッキ47を伸縮することで、リング状の妻型枠46を前後に移動することができ、このとき、シール部材48が後胴13の内周面に押圧すると共に、ブラシシール49がリング状に組み立てられた既設内型枠Sの外周面に押圧することで、掘削機本体11の内部への浸水を防止することができる。
【0032】
そして、この妻型枠46には掘進方向後方に向かってコンクリート打設管50が周方向に所定間隔離間して複数本挿通され、これらのコンクリート打設管50は、後述する塞止弁装置60の切り替えによりコンクリート打設配管(ホース:コンクリート打設ライン)51と連通可能になっている。これらのコンクリート打設配管51は前述した搬送台車上のパワーユニットを介してコンクリート供給源に連通される。
【0033】
従って、塞止弁装置60によりコンクリート打設管50とコンクリート打設配管51とが連通した状態下で、コンクリート供給源から送給された生コンクリートがコンクリート打設配管51、コンクリート打設管50を通って前述したコンクリート打設空間Eに打設される。この際、コンクリート打設空間Eには、各コンクリート打設管50より周方向に順番に打設されるようになっている。
【0034】
また、前記内型枠S、妻型枠46、コンクリート打設管50、コンクリート打設配管51及び塞止弁装置60等でコンクリート打設装置が構成される。
【0035】
前記コンクリート打設管50は、図2及び図3に示すように、直管部50aと分岐管部50bとからなるY管状に形成され、その内の直管部50aの後半部分が妻型枠46内に固定的に挿通される。そして、分岐管部50bの前端に前記コンクリート打設配管51が着脱自在にフランジ結合される一方、直管部50aの前端に連結管61を介して塞止弁装置60が組み付けられる。
【0036】
前記塞止弁装置60は、連結管61の前端に連接された開閉・掃除用のジャッキ62と該ジャッキ62のロッド先端に連接されて連結管61及びコンクリート打設管50の直管部50a内を軸方向に摺動可能な棒状ピストン63とを有し、ジャッキ62の縮限(収縮時)では、棒状ピストン63の後退によりコンクリート打設管50の直管部50aと分岐管部50bとが連通し(図2及び図3参照)、ジャッキ62の伸限(伸長時)では、図5及び図6に示すように、棒状ピストン63の前進によりコンクリート打設管50の直管部50aと分岐管部50bとの連通が遮断されると共に、直管部50a内の残留コンクリートがコンクリート打設空間Eに押し出されるようになっている。
【0037】
前記棒状ピストン63は、図4に示すように、ジャッキ62のロッド先端にねじ結合された中心ロッド64と、該中心ロッド64の先端に第1カラー65を介してボルト66及び押え板66aで結合された第1パッキン67と、同中心ロッド64上に先端側から順次嵌合された第1パイプ(スペーサ)68、第2カラー69、第2パッキン70、第2パイプ(スペーサ)71と、これら嵌合部材の抜け止めを図るべく中心ロッド64の基端部にねじ結合されたナット72とを有し、ジャッキ62の伸限では、図5及び図6に示すように、棒状ピストン63の前進により第2パッキン70でコンクリート打設管50の分岐管部50bが密封状態で閉じられると共に、第1パッキン67でコンクリート打設空間Eが密封されるようになっている。
【0038】
尚、図3中73は連結管61内を洗浄すべく図示しない洗浄水供給用エルボと対をなす洗浄水排出用エルボ、74はコンクリート打設配管51内の圧力を検知する圧力計で、図2中75はコンクリート打設配管51を支持するサポートである。
【0039】
次に、上述した本実施例の泥土圧式シールド掘削機によるトンネル掘削作業について説明する。
【0040】
図1に示すように、カッタ旋回モータ25によりカッタヘッド18を回転させながら、複数のシールドジャッキ35を伸長してスプレッダ36を既設の内型枠Sへ押し付け、その反力によって掘削機本体11を前進させる。すると、カッタヘッド18の各カッタビット22が前方の地盤を掘削し、掘削土砂が各カッタスポーク19の間からチャンバ28内に取り込まれ、スクリューコンベヤ33によって外部に搬出される。
【0041】
そして、内型枠組立装置39では、トンネル内に搬入された内型枠Sを把持してトンネル内壁面に沿って移動し、把持した内型枠Sを所定の位置に固定してリング状に組み立てていく。このとき、前方の形状保持装置42は内型枠組立装置39との干渉を避けながら、内型枠Sを正規の組立位置に矯正すると共に、後方の形状保持装置42はリング状に組み立てられた内型枠Sを真円となるように矯正する。
【0042】
この内型枠組立装置39による内型枠Sの組立に並行して、コンクリート打設装置により掘削地山Gの周壁と既設の内型枠Sの外周面との間のコンクリート打設空間Eに生コンクリートが打設される。
【0043】
即ち、塞止弁装置60のジャッキ62が縮限となって、棒状ピストン63の後退によりコンクリート打設管50の直管部50aと分岐管部50bが連通して(図2及び図3の状態参照)、コンクリート打設配管51に送給された生コンクリートが当該分岐管部50bと直管部50aを通ってコンクリート打設空間Eに供給されるのである。
【0044】
このとき、妻型枠ジャッキ47を伸び側に作動させることで、打設された生コンクリートに対して妻型枠46が押し付けられ、前記コンクリート打設空間Eの隅々まで生コンクリートが充填される。その後、所定時間が経過すると、このコンクリートが養生・硬化してトンネル構造体が強固に構築される。
【0045】
また、掘削機本体11の推進時には、内型枠Sが組み返し組み立てられる。即ち、コンクリート打設空間Eに生コンクリートが連続して注入されてから所定時間が経過すると、このコンクリートは次第に養生・硬化する。そこで、この養生・硬化したコンクリートに対応した後段側の内型枠Sを図示しない内型枠脱型装置により取り外し(脱型し)、同じく図示しないホイストによりトンネル前方に搬送し、内型枠組立装置39による新たな組み立てに供されるのである。
【0046】
一方、泥土圧式シールド掘削機が点検等で停止すると、コンクリート打設装置によるコンクリート打設空間Eへの生コンクリートの打設が停止される。この際、塞止弁装置60のジャッキ62が伸限となり、棒状ピストン63の前進によりコンクリート打設管50の直管部50aと分岐管部50bとの連通が第2パッキン70部により遮断されると共に、直管部50a内の残留コンクリートが第1パッキン67部によりコンクリート打設空間Eに押し出される(図5及び図6の状態参照)。
【0047】
この後、コンクリート打設配管51及びコンクリート打設管50の分岐管部50b内の生コンクリートが硬化しない内にこれらのコンクリート打設ラインを洗浄する。つまり、コンクリート打設配管51はコンクリート打設管50から切り離して高圧の洗浄水で従前通り洗浄する一方、コンクリート打設管50の分岐管部50bは当該コンクリート打設管50を妻型枠46に取り付けた状態で高圧の洗浄水で洗浄するのである。
【0048】
また、本実施例では、図示しない洗浄水供給用エルボと対をなす洗浄水排出用エルボ73を用いて第2パッキン70部から連結管61内に漏出した生コンクリートを高圧の洗浄水で洗浄することもできる。
【0049】
このようにして、本実施例では、泥土圧式シールド掘削機の停止時には、コンクリート打設配管51を介して生コンクリートの供給源に通じるコンクリート打設管50の分岐管部50bが棒状ピストン63の第2パッキン70部により閉止されると共に、コンクリート打設空間Eに通じるコンクリート打設管50の直管部50a内の残留コンクリートが第1パッキン67部によりコンクリート打設空間Eに押し出されるので、泥土圧式シールド掘削機の停止後の清掃時には、塞止弁装置60及びコンクリート打設管50の直管部50a内には残留コンクリートが存在しないので、従来のようにこれらをコンクリート打設空間E内の生コンクリートの硬化を待って取り外し、洗浄するという作業がない。言い換えれば、そのままの状態で再掘削を開始することができるのである。また、コンクリート打設管50の分岐管部50bは短管でもあることから、取外し不能であってもそのままの状態で容易に洗浄することができる。
【0050】
これらの結果、コンクリート打設ラインの洗浄が容易で洗浄時間の短縮が図れると共に、洗浄時の取外し部品の削減により再掘削の段取りが短時間で行える。また、泥土圧式シールド掘削機の掘削下においても、図2及び図3に示す状態での打設待ちの際に、ジャッキ62を適宜伸限まで作動させることで、妻型枠46内、言い換えればコンクリート打設管50の直管部50a内に付着、堆積したデッドコンクリートをコンクリート打設空間Eに押し出して除去することもできる。
【0051】
また、本実施例では、棒状ピストン63は、その先端に第1パッキン67を着脱可能に備えると共に、その中間部外周に第2パッキン70を着脱可能に備え、ジャッキ62の伸長時では第2パッキン70部で分岐管部50bと直管部50aとの連通を遮断するので、それぞれのパッキンを適宜交換することで、シール性を良好に保持することができる。また、塞止弁装置60は、直管部50aの基端に連結管61を介して連設されるので、ジャッキ62のストロークを任意に選択でき、塞止弁装置60の設計自由度が得られる。
【0052】
このようにして、コンクリート打設ラインの洗浄が容易で洗浄時間の短縮と再掘削の段取りが短時間で行えるコンクリート打設装置を備えるで、泥土圧式シールド掘削機の掘削能率を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明に係るトンネル掘削機は、泥土圧式シールド掘削機に限らず、泥水式シールド掘削機、機械式シールド掘削機やトンネルボーリングマシーン(TBM)等にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施例を示すトンネル掘削機の概略断面図である。
【図2】コンクリート打設装置部(塞止弁開時)の拡大断面図である。
【図3】図2のIII-III線断面図である。
【図4】塞止弁の詳細拡大断面図である。
【図5】塞止弁閉時のコンクリート打設装置部の拡大断面図である。
【図6】図5のVI−VI線断面図である。
【図7】従来のコンクリート打設装置の要部説明図である。
【符号の説明】
【0055】
11 掘削機本体
12 前胴
13 後胴
14 連結軸
15 中折ジャッキ
16 回転リング
17 連結ビーム
18 カッタヘッド
19 カッタスポーク
20 外周リング
21 フィッシュテールカッタ
22 カッタビット
23a コピーカッタ
23b レスキュービット
24 リングギア
25 カッタ旋回モータ
26 駆動ギア
27 バルクヘッド
28 チャンバ
29 固定式攪拌棒
30 旋回式攪拌棒
33 スクリューコンベヤ
34 リングガータ
35 シールドジャッキ
36 スプレッダ
38 旋回リング
39 内型枠組立装置
40 支柱
41 架台
42 形状保持装置
46 妻型枠
47 妻型枠ジャッキ
48 シール部材
49 ブラシシール
50 コンクリート打設管
50a 直管部
50b 分岐管部
51 コンクリート打設配管
60 塞止弁装置
61 連結管
62 開閉・掃除用のジャッキ
63 棒状ピストン
64 中心ロッド
65 第1カラー
66 ボルト
66a 押え板
67 第1パッキン
68 第1パイプ(スペーサ)
69 第2カラー
70 第2パッキン
71 第2パイプ(スペーサ)
72 ナット
73 洗浄水排出用エルボ
74 圧力計
75 サポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの内壁面を、該トンネルの内壁面から所定距離離間した位置で覆う内型枠と、該内型枠と掘削機の外郭をなすスキンプレートとの間に配されて前記内型枠とトンネルの内壁面との間にコンクリート打設空間を形成する妻型枠とを備え、
前記妻型枠には、コンクリート打設管における直管部の先端側を挿通・固定し、
前記直管部の基端側から分岐した分岐管部にコンクリート供給源に通じるコンクリート打設配管を着脱可能に接続する一方、前記直管部の基端に塞止弁装置を連設し、
前記塞止弁装置は、ジャッキと該ジャッキのロッド先端に付設された棒状ピストンとを有し、
前記ジャッキの収縮時では、棒状ピストンの後退により前記コンクリート打設管の分岐管部が直管部に連通する一方、前記ジャッキの伸長時では棒状ピストンの前進により前記分岐管部と直管部との連通が遮断されると共に直管部内の残留コンクリートが前記コンクリート打設空間に押し出されることを特徴とするコンクリート打設装置。
【請求項2】
前記棒状ピストンは、その先端に第1パッキンを着脱可能に備えると共に、その中間部外周に第2パッキンを着脱可能に備え、前記ジャッキの伸長時では前記第2パッキン部で前記分岐管部と直管部との連通を遮断することを特徴とする請求項1記載のコンクリート打設装置。
【請求項3】
前記塞止弁装置は、前記直管部の基端に連結管を介して連設されることを特徴とする請求項1又は2記載のコンクリート打設装置。
【請求項4】
筒状の掘削機本体と、該掘削機本体を前進させる推進ジャッキと、該掘削機本体の前部に回転駆動可能に支持されたカッタヘッドと、該カッタヘッドを回転させる駆動手段と、を備えたトンネル掘削機において、
請求項1乃至3のいずれか一つに記載のコンクリート打設装置を備えたことを特徴とするトンネル掘削機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−291636(P2006−291636A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−116470(P2005−116470)
【出願日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【Fターム(参考)】