コンクリート枕木用鋼製型枠とその製造方法
【課題】 コンクリート枕木用鋼製型枠の本体型枠を製造する際、溶接部位及びその研磨仕上げ量を減少して、それらに要する作業時間を短縮し、容易にレール座面成形用底板部の精度を確保し得るようにする。
【解決手段】 本体型枠Aの長手方向両端近傍部に設けられるレール座面成形用底板部Pとその両側に位置する側板部分Qを鋼板の曲げ加工により形成する。本体型枠の製造にあたっては、レール座面成形用底板部と側板部分を鋼板の曲げ加工により形成した溝状部材8の両端に段差部成形用底板部9及びその両側に連設された側板部分10を溶接し、レール座面成形用底板部にレール幅に対応する2個の貫通孔a,bを形成してなる左右一対の端部型枠ユニットU1,U2と、溝状の中央部型枠ユニットU3とを単体として製造し、これらのユニットを組立冶具24に覆い被せた状態に支持させ、突合せ端部外面を溶接して本体型枠を製造する。
【解決手段】 本体型枠Aの長手方向両端近傍部に設けられるレール座面成形用底板部Pとその両側に位置する側板部分Qを鋼板の曲げ加工により形成する。本体型枠の製造にあたっては、レール座面成形用底板部と側板部分を鋼板の曲げ加工により形成した溝状部材8の両端に段差部成形用底板部9及びその両側に連設された側板部分10を溶接し、レール座面成形用底板部にレール幅に対応する2個の貫通孔a,bを形成してなる左右一対の端部型枠ユニットU1,U2と、溝状の中央部型枠ユニットU3とを単体として製造し、これらのユニットを組立冶具24に覆い被せた状態に支持させ、突合せ端部外面を溶接して本体型枠を製造する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細長い底板部と、その幅方向両側に位置する側板部とで溝状に形成された本体型枠と、本体型枠の長手方向両端部に着脱自在に連結される端面型枠とからなり、端面型枠には、プレストレス導入用のアンボンドPC鋼材の保持部が付設され、本体型枠の長手方向両端近傍部には、夫々、長手方向両端側の底板部上面より高い位置に、所定の勾配を付け、且つ、レール幅と対応する2個の貫通孔を設けたレール座面成形用底板部が形成されたコンクリート枕木用鋼製型枠と、その製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリート枕木用鋼製型枠は、特許文献1〜3等に見られるように、既に知られており、広く実用に供されている。この種のコンクリート枕木用鋼製型枠においては、本体型枠の長手方向両端近傍部に設けられるレール座面成形用底板部の精度が特に重要とされている。具体的には、両側のレール座面成形用底板部の勾配が設計どおりに確保されていること、両側のレール座面成形用底板部同士の間に捩れがないこと、レールの間隔である軌間(一方のレール座面成形用底板部に形成された2個の貫通孔間の中央位置と他方のレール座面成形用底板部に形成された2個の貫通孔間の中央位置とを結ぶ距離)が設計どおりに確保されていることが特に重要である。
【0003】
特許文献1〜3にはコンクリート枕木用鋼製型枠の製造方法まで開示されておらず、また、それを記載した他の文献にも心当たりはないが、従来では、概ね次の方法によってコンクリート枕木用鋼製型枠の本体型枠を製造していた。
【0004】
先ず、図17に示すように、本体型枠の内面側断面形状に対応する複数枚の縦板部22とそれらを結合する複数本の横杆23とから成る組立冶具24に、底板部分とその両側に折り曲げ連設された側板部分とからなる複数の溝状部材(コンクリート枕木の長手方向各部位での断面形状の変化に対応して作製され、例えば7個の溝状部材として作製される。)8a,8b,8c,8d,8e,8f,8gを覆い被せた状態に支持させ、溝状部材8a,8b,8c,8d,8e,8f,8g同士の突合せ端部外面を溶接すると共に、両側部下端にフランジ部用のフラットバー25を溶接して、図18に示すように、細長い溝状本体31を製作する。尚、溝状本体31の底面と両側面には、複数枚の補強リブが溶接されるが、図面が煩雑になるため、図示を省略してある。
【0005】
次に、図19に示すように、この溝状本体31を組立冶具24から抜き取って上下に反転させる一方、別途、作製した一対のレール座面成形用底板部Pを別の組立冶具32に保持させて、両側のレール座面成形用底板部P同士の位置関係を一定に維持した状態で、これらのレール座面成形用底板部Pを溝状本体31の内部に組立冶具31ごと仮置きし、レール座面成形用底板部Pの周囲と溝状本体31との当接部を溶接する。
【0006】
しかる後、組立冶具32を取り去り、レール座面成形用底板部Pと溝状本体31の側板部との角部が所定の曲率半径の曲面となるように、溶接部位を研磨仕上げするといった工程を経て、図20に示すような本体型枠Aを製造していた。
【0007】
この製造方法によれば、溝状本体31を製造する工程、溝状本体31の内部にレール座面成形用底板部Pを仮置きして溶接する工程、両者31,Pの溶接部位を研磨仕上げする工程が、この順に必要であるから、製造工程数が多いばかりでなく、レール座面成形用底板部Pと溝状本体31の側板部との溶接部位が長く、研磨仕上げの量が多いため、溶接及び研磨仕上げに長時間を要した。また、溶接部位が長いため、溶接による歪みが大きく、
溶接歪みの修正作業に高度な技術と長時間を要し、レール座面成形用底板部の精度確保が困難であった。
【0008】
【特許文献1】特開平6−262616号公報
【特許文献2】特開平6−328425号公報
【特許文献3】特開2000−117725号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の現状に鑑みてなされたものであって、コンクリート枕木用鋼製型枠の本体型枠を製造する際、溶接部位及びその研磨仕上げ量を減少して、それらに要する作業時間を短縮し、容易にレール座面成形用底板部の精度を確保し得るようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明が講じた技術的手段は、次の通りである。即ち、請求項1に記載の発明によるコンクリート枕木用鋼製型枠は、細長い底板部と、その幅方向両側に位置する側板部とで溝状に形成された本体型枠と、本体型枠の長手方向両端部に着脱自在に連結される端面型枠とからなり、端面型枠には、プレストレス導入用のアンボンドPC鋼材の保持部が付設され、本体型枠の長手方向両端近傍部には、夫々、長手方向両端側の底板部上面より高い位置に、所定の勾配を付け、且つ、レール幅に対応する2個の貫通孔を設けたレール座面成形用底板部が形成されたコンクリート枕木用鋼製型枠であって、前記レール座面成形用底板部とその両側に位置する側板部分とが鋼板の曲げ加工により形成されていることを特徴としている。
【0011】
請求項2に記載の発明によるコンクリート枕木用鋼製型枠の製造方法は、請求項1に記載のコンクリート枕木用鋼製型枠における本体型枠を製造するにあたり、レール座面成形用底板部とその両側に位置する側板部分とを鋼板の曲げ加工により形成してなる溝状部材の両端に、上段部がレール座面成形用底板部と面一の段差部成形用底板部及びその両側に連設された側板部分を溶接し、前記レール座面成形用底板部にレール幅に対応する2個の貫通孔を形成してなる左右一対の溝状の端部型枠ユニットと、左右の端部型枠ユニット間に配置される溝状の中央部型枠ユニットとを分割して製造し、それらの型枠内面側断面形状に対応する複数枚の縦板部とそれらを連結する複数の横杆とを備えた組立冶具に、前記端部型枠ユニット及び中央側型枠ユニットを覆い被せた状態に支持させ、これらの端部型枠ユニットと中央側型枠ユニットとの突合せ端部外面を溶接して、本体型枠を製造することを特徴としている。
【0012】
請求項3に記載の発明によるコンクリート枕木用鋼製型枠の製造方法は、請求項1に記載のコンクリート枕木用鋼製型枠における本体型枠を製造するにあたり、レール座面成形用底板部とその両側に位置する側板部分とを鋼板の曲げ加工により形成してなる溝状部材の両端に、上段部がレール座面成形用底板部と面一の段差部成形用底板部及びその両側に連設された側板部分を溶接し、前記レール座面成形用底板部にレール幅に対応する2個の貫通孔を形成し、且つ、型枠内面側の溶接部位の研磨仕上げを施してある左右一対の溝状の端部型枠ユニットと、左右の端部型枠ユニット間に配置される溝状の中央部型枠ユニットとを分割して製造し、それらの型枠内面側断面形状に対応する複数枚の縦板部とそれらを連結する複数の横杆とを備えた組立冶具に、前記端部型枠ユニット及び中央側型枠ユニットを覆い被せた状態に支持させ、これらの端部型枠ユニットと中央側型枠ユニットとの突合せ端部外面を溶接して、本体型枠を製造することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明の構成によれば、レール座面成形用底板部とその両側に位置する側板部分とが鋼板の曲げ加工により形成されているので、曲げ加工の部位については、溶接が省略され、溶接部位の研磨仕上げが省略されることになる。従って、溝状本体とレール座面成形用底板部とを別々に製作し、レール座面成形用底板部を溝状本体の内部に仮置きして、両者の当接部を溶接していた従来品に比して、溶接部位及びその研磨仕上げ量が減少することになり、また、溶接部位が短くて済むため、溶接による歪みも減少することになり、レール座面成形用底板部の精度確保が容易である。
【0014】
請求項2に記載の発明の構成によれば、レール座面成形用底板部とその両側に位置する側板部分とを鋼板の曲げ加工により形成してなる溝状部材の両端に、上段部がレール座面成形用底板部と面一の段差部成形用底板部及びその両側に連設された側板部分を溶接し、前記レール座面成形用底板部にレール幅に対応する2個の貫通孔を形成してなる左右一対の溝状の端部型枠ユニットを単体として製作し、当該端部型枠ユニットと、左右の端部型枠ユニット間に配置される溝状の中央部型枠ユニットとを、組立冶具上で溶接により相互に連結して本体型枠を製造するので、複数の溝状部材よりなる溝状本体と、レール座面成形用底板部とを別々に製作し、レール座面成形用底板部を溝状本体の内部に仮置きして、両者の当接部を溶接する場合のような両側のレール座面成形用底板部同士の位置関係を一定に維持するための組立冶具が不要である。
【0015】
しかも、端部型枠ユニットにおけるレール座面成形用底板部とその両側に位置する側板部分とが鋼板の曲げ加工により形成されているので、曲げ加工の部位については、溶接が省略され、溶接部位の研磨仕上げが省略されることになる。従って、溝状本体とレール座面成形用底板部とを別々に製作し、レール座面成形用底板部を溝状本体の内部に仮置きして、両者の当接部を溶接する従来の製造方法に比して、溶接部位及びその研磨仕上げ量が減少することになり、また、溶接部位が短くて済むため、溶接による歪みも減少することになり、レール座面成形用底板部の精度確保が容易である。
【0016】
殊に、請求項3に記載の発明の構成によれば、上記の効果に加え、予め、端部型枠ユニットにおける型枠内面側の溶接部位の研磨仕上げを施しておき、当該端部型枠ユニットと、左右の端部型枠ユニット間に配置される溝状の中央部型枠ユニットとの突合せ端部外面を組立冶具上で溶接することにより相互に連結して本体型枠を製造するので、型枠ユニット同士の連結後に溶接部位の研磨仕上げを行う必要がなく、また、端部型枠ユニットの段階(本体型枠に比して小さな部品の段階)で溶接部位の研磨仕上げを行うので、研磨仕上げの作業も容易である等の効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1〜図3は、本発明に係るコンクリート枕木用鋼製型枠の一例を示す。このコンクリート枕木用鋼製型枠は、細長い底板部1と、その幅方向両側に位置する側板部2とでコンクリート枕木に相当する長さの溝状に形成された本体型枠Aと、本体型枠Aの長手方向両端部に着脱自在に連結される端面型枠Bとから構成されている。3は両側の側板部2の上端部外面に溶接されたフラットバーよりなるフランジ部である。4は底板部1及び側板部2の外面に溶接された補強リブである。
【0018】
端面型枠Bには、プレストレス導入用のアンボンドPC鋼材5の保持部6が付設され、本体型枠Aの長手方向両端近傍部には、夫々、長手方向両端側の底板部上面より高い位置に、所定の勾配(レール座面に要求される1:40の勾配)を付け、且つ、レール幅と対応する2個の貫通孔(型枠内にコンクリートを打設する際、図2に示すように、レール固定用の埋め込み栓7を仮固定しておくための貫通孔)a,bを形成したレール座面成形用底板部Pが設けられている。レール座面成形用底板部Pとその両側に位置する側板部分Qとは、鋼板の曲げ加工により形成されており、両者P,Qの角部は所定の曲率半径の曲面
Rとなっている。
【0019】
本体型枠Aは、図4〜図7、図8,9、図10に示すように、レール座面成形用底板部Pを形成した左右一対の端部型枠ユニットU1,U2と、左右の端部型枠ユニット間に配置される中央型枠ユニットU3とを互いに分割された単体として製作し、それらを、図11〜図13に示すように連結することによって製造される。
【0020】
左側の端部型枠ユニットU1は、次の通りに構成されている。即ち、図4〜図7に示すように、レール座面成形用底板部Pとその両側に位置する側板部分Qとを鋼板の曲げ加工により形成してなる溝状部材8を製作し、その両端に、上段部9aがレール座面成形用底板部Pと面一となるようにZ状に曲げ加工された段差部成形用底板部9とそれに連設された側板部分10を溶接してある。この溶接は、突合せ端部外面で行われている。段差部成形用底板部9に連なる側板部分10と底板部分11とは、両者10,11の角部が所定の曲率半径の曲面Rとなるように、鋼板の曲げ加工によって形成された溝状部材12として製作され、当該溝状部材12の底板部分11には、段差部成形用底板部9の下段部9bが面一に嵌り込むように、下段部9bと同一形状の切欠き13を形成してある。
【0021】
段差部成形用底板部9の上段部9aと側板部分10との当接部、立上り部9cと側板部分10との当接部及び立上り部9cの下端と底板部分11との当接部は、型枠内面側から溶接した後、その溶接部位を所定の曲率半径の曲面Rとなるように研磨仕上げしてあるが、レール座面成形用底板部Pとその両側の側板部分Qとの角部は曲げ加工によって所定の曲率半径の曲面Rとなるので溶接や研磨仕上げはされていない。また、一方の溝状部材12の外側端部には、鋼板の曲げ加工によって底板部分14と側板部分15とを形成した同一断面形状の溝状部材16が、突合せ端部外面を溶接することによって連結されている。
【0022】
尚、図示の例では、レール座面成形用底板部Pの裏面に、貫通孔a,bの縁部を補強する角型座金17が溶接されているが、角型座金17は省略してもよい。また、図4〜図7では図示を省略してあるが、レール座面成形用底板部Pの裏面には、必要に応じて、図11に示すように、レール座面成形用底板部P両端の立上り部9c間にわたる長さの補強リブ18が溶接される。
【0023】
右側の端部型枠ユニットU2は、図8、図9に示すように、左側の端部型枠ユニットU1と対称形であり、溝状部材8、段差部成形用底板部9、溝状部材12、溝状部材16等によって構成されるが、詳細な構成は、左側の端部型枠ユニットU1と同じであるから、説明を省略する。
【0024】
中央型枠ユニットU3は、図10、図11に示すように、コンクリート枕木の長手方向各部位での断面形状の変化に対応して作製された3個の溝状部材19,20,21を鋼板の曲げ加工によって製作し、それらを連結することによって構成されている。具体的には、長手方向各部位における断面形状が一定の溝状部材20の両端に、外側に行くほど深さが深くなる断面形状とされた左右一対の溝状部材19,21を配置し、それらの突合せ端部外面を溶接することによって構成されている。
【0025】
次に、コンクリート枕木用鋼製型枠における本体型枠Aの製造方法を、図11〜図13に基づいて説明する。
【0026】
先ず、図11に示すように、左右一対の溝状の端部型枠ユニットU1,U2と、左右の端部型枠ユニットU1,U2間に配置される溝状の中央部型枠ユニットU3を単体として製造する。
【0027】
そして、前記端部型枠ユニットU1,U2及び中央部型枠ユニットU3を、それらの型枠内面側断面形状に対応する複数枚の縦板部22とそれらを連結する複数の横杆23とを備えた組立冶具24に、前記端部型枠ユニットU1,U2及び中央部型枠ユニットU3を、図12に示すように、覆い被せた状態に支持させ、これらの端部型枠ユニットU1,U2と中央部型枠ユニットU3との突合せ端部外面を溶接すると共に、組立冶具24の両側に設置したフランジ部用のフラットバー25と端部型枠ユニットU1,U2及び中央部型枠ユニットU3の側板部との角部を溶接し、さらに、図13に示すように、外面に補強リブ4を溶接することによって、前記本体型枠Aを製造する。
【0028】
組立冶具24には、前記レール座面成形用底板部Pと対応する位置に、図14〜図16に示すように、前記貫通孔a,bの位置を規定するための位置決め用板部26が設けられている。位置決め用板部26には、貫通孔a,bに対応する位置に貫通孔c,dが形成されている。また、位置決め用板部26の上面には、貫通孔a,bに嵌り込む寸法の環状突起27が溶接され、下面には貫通孔c,dと同芯状にナット28が溶接されている。そして、端部型枠ユニットU1,U2のレール座面成形用底板部Pを位置決め用板部26の上に載せることにより、図15に示すように、環状突起27が貫通孔a,bに嵌り込み、この状態で、図16に示すように、押さえ板29の上からボルト30をナット28にねじ込んで、レール座面成形用底板部Pを位置決め用板部26に押し付け、貫通孔a,bの位置を拘束するように構成されている。
【0029】
尚、端部型枠ユニットU1,U2や中央部型枠ユニットU3の製作は、前記組立冶具24と同じ構造の組立冶具を用いて行ってもよく、前記組立冶具24を、両端部と中央部とに3分割した構造の組立冶具を用いて行ってもよい。
【0030】
上記の構成によれば、レール座面成形用底板部Pとその両側に位置する側板部分Qとが鋼板の曲げ加工により形成されているので、曲げ加工の部位については、溶接が省略され、溶接部位の研磨仕上げが省略されることになる。従って、溝状本体とレール座面成形用底板部とを別々に製作し、レール座面成形用底板部を溝状本体の内部に仮置きして、両者の当接部を溶接していた従来品に比して、溶接部位及びその研磨仕上げ量が減少することになり、また、溶接部位が短くて済むため、溶接による歪みも減少することになり、レール座面成形用底板部の精度確保が容易である。
【0031】
また、上記の発明の構成によれば、レール座面成形用底板部Pとその両側に位置する側板部分Qとを鋼板の曲げ加工により形成してなる溝状部材8の両端に、上段部9aがレール座面成形用底板部Pと面一の段差部成形用底板部9及びその両側に連設された側板部分10を溶接し、前記レール座面成形用底板部Pにレール幅に対応する2個の貫通孔a,bを形成してなる左右一対の溝状の端部型枠ユニットU1,U2を単体として製作し、当該端部型枠ユニットU1,U2と、左右の端部型枠ユニットU1,U2間に配置される溝状の中央部型枠ユニットU3とを、組立冶具24上で溶接により相互に連結して本体型枠Aを製造するので、複数の溝状部材よりなる溝状本体と、レール座面成形用底板部とを別々に製作し、レール座面成形用底板部を溝状本体の内部に仮置きして、両者の当接部を溶接する場合のような両側のレール座面成形用底板部同士の位置関係を一定に維持するための組立冶具が不要である。
【0032】
しかも、端部型枠ユニットU1,U2におけるレール座面成形用底板部Pとその両側に位置する側板部分Qとが鋼板の曲げ加工により形成されているので、曲げ加工の部位については、溶接が省略され、溶接部位の研磨仕上げが省略されることになる。従って、溝状本体とレール座面成形用底板部とを別々に製作し、レール座面成形用底板部を溝状本体の内部に仮置きして、両者の当接部を溶接する従来の製造方法に比して、溶接部位及びその研磨仕上げ量が減少することになり、また、溶接部位が短くて済むため、溶接による歪み
も減少することになり、レール座面成形用底板部の精度確保が容易である。
【0033】
殊に、上記の構成によれば、予め、端部型枠ユニットU1,U2における型枠内面側の溶接部位の研磨仕上げを施しておき、当該端部型枠ユニットU1,U2と、左右の端部型枠ユニットU1,U2間に配置される溝状の中央部型枠ユニットU3との突合せ端部外面を組立冶具24上で溶接することにより相互に連結して本体型枠Aを製造するので、型枠ユニット同士の連結後に型枠内面側の溶接部位の研磨仕上げを行う必要がなく、また、端部型枠ユニットU1,U2の段階(本体型枠に比して小さな部品の段階)で溶接部位の研磨仕上げを行うので、研磨仕上げの作業も容易である。
【0034】
尚、図示の例では、段差部成形用底板部9として、立上り部9cが平面視において型枠長手方向に対して傾斜した形状に形成されたものを用いているが、レール取付け金物の形式によっては、立上り部9cが平面視において型枠長手方向に対して直角に形成されたものとすることもある。また、本発明は、例えば、中央部型枠ユニットU3をさらに長手方向複数個に分割して製作する等、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の態様で実施でき、図示の実施形態のみに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】コンクリート枕木用鋼製型枠の斜視図である。
【図2】アンボンドPC鋼材及び埋め込み栓をセットした状態におけるコンクリート枕木用鋼製型枠の縦断側面図である。
【図3】コンクリート枕木用鋼製型枠における本体型枠の平面図である。
【図4】左側の端部型枠ユニットの構成を説明する要部の分解斜視図である。
【図5】左側の端部型枠ユニットの構成を説明する要部の斜視図である。
【図6】左側の端部型枠ユニットの構成を説明する要部の一部破断斜視図である。
【図7】左側の端部型枠ユニットの構成を説明する要部の縦断正面図である。
【図8】右側の端部型枠ユニットの構成を説明する要部の分解斜視図である。
【図9】右側の端部型枠ユニットの構成を説明する要部の斜視図である。
【図10】中央型枠ユニットの構成を説明する要部の分解斜視図である。
【図11】製造方法を説明する斜視図である。
【図12】製造方法を説明する斜視図である。
【図13】製造方法を説明する斜視図である。
【図14】製造方法を説明する要部の縦断側面図である。
【図15】製造方法を説明する要部の縦断側面図である。
【図16】製造方法を説明する要部の縦断側面図である。
【図17】従来の本体型枠の縦断側面図である。
【図18】従来の製造方法を説明する斜視図である。
【図19】従来の製造方法を説明する斜視図である。
【図20】従来の製造方法を説明する斜視図である。
【符号の説明】
【0036】
A 本体型枠
P レール座面成形用底板部
Q 側板部分
U1,U2 端部型枠ユニット
U3 中央部型枠ユニット
a,b 貫通孔
1 底板部
2 側板部
3 フランジ部
4 補強リブ
5 アンボンドPC鋼材
6 保持部
7 埋め込み栓
8 溝状部材
9 段差部成形用底板部
9a 上段部
9b 下段部
9c 立上り部
10 側板部分
11 底板部分
12 溝状部材
13 切欠き
14 底板部分
15 側板部分
16 溝状部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、細長い底板部と、その幅方向両側に位置する側板部とで溝状に形成された本体型枠と、本体型枠の長手方向両端部に着脱自在に連結される端面型枠とからなり、端面型枠には、プレストレス導入用のアンボンドPC鋼材の保持部が付設され、本体型枠の長手方向両端近傍部には、夫々、長手方向両端側の底板部上面より高い位置に、所定の勾配を付け、且つ、レール幅と対応する2個の貫通孔を設けたレール座面成形用底板部が形成されたコンクリート枕木用鋼製型枠と、その製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリート枕木用鋼製型枠は、特許文献1〜3等に見られるように、既に知られており、広く実用に供されている。この種のコンクリート枕木用鋼製型枠においては、本体型枠の長手方向両端近傍部に設けられるレール座面成形用底板部の精度が特に重要とされている。具体的には、両側のレール座面成形用底板部の勾配が設計どおりに確保されていること、両側のレール座面成形用底板部同士の間に捩れがないこと、レールの間隔である軌間(一方のレール座面成形用底板部に形成された2個の貫通孔間の中央位置と他方のレール座面成形用底板部に形成された2個の貫通孔間の中央位置とを結ぶ距離)が設計どおりに確保されていることが特に重要である。
【0003】
特許文献1〜3にはコンクリート枕木用鋼製型枠の製造方法まで開示されておらず、また、それを記載した他の文献にも心当たりはないが、従来では、概ね次の方法によってコンクリート枕木用鋼製型枠の本体型枠を製造していた。
【0004】
先ず、図17に示すように、本体型枠の内面側断面形状に対応する複数枚の縦板部22とそれらを結合する複数本の横杆23とから成る組立冶具24に、底板部分とその両側に折り曲げ連設された側板部分とからなる複数の溝状部材(コンクリート枕木の長手方向各部位での断面形状の変化に対応して作製され、例えば7個の溝状部材として作製される。)8a,8b,8c,8d,8e,8f,8gを覆い被せた状態に支持させ、溝状部材8a,8b,8c,8d,8e,8f,8g同士の突合せ端部外面を溶接すると共に、両側部下端にフランジ部用のフラットバー25を溶接して、図18に示すように、細長い溝状本体31を製作する。尚、溝状本体31の底面と両側面には、複数枚の補強リブが溶接されるが、図面が煩雑になるため、図示を省略してある。
【0005】
次に、図19に示すように、この溝状本体31を組立冶具24から抜き取って上下に反転させる一方、別途、作製した一対のレール座面成形用底板部Pを別の組立冶具32に保持させて、両側のレール座面成形用底板部P同士の位置関係を一定に維持した状態で、これらのレール座面成形用底板部Pを溝状本体31の内部に組立冶具31ごと仮置きし、レール座面成形用底板部Pの周囲と溝状本体31との当接部を溶接する。
【0006】
しかる後、組立冶具32を取り去り、レール座面成形用底板部Pと溝状本体31の側板部との角部が所定の曲率半径の曲面となるように、溶接部位を研磨仕上げするといった工程を経て、図20に示すような本体型枠Aを製造していた。
【0007】
この製造方法によれば、溝状本体31を製造する工程、溝状本体31の内部にレール座面成形用底板部Pを仮置きして溶接する工程、両者31,Pの溶接部位を研磨仕上げする工程が、この順に必要であるから、製造工程数が多いばかりでなく、レール座面成形用底板部Pと溝状本体31の側板部との溶接部位が長く、研磨仕上げの量が多いため、溶接及び研磨仕上げに長時間を要した。また、溶接部位が長いため、溶接による歪みが大きく、
溶接歪みの修正作業に高度な技術と長時間を要し、レール座面成形用底板部の精度確保が困難であった。
【0008】
【特許文献1】特開平6−262616号公報
【特許文献2】特開平6−328425号公報
【特許文献3】特開2000−117725号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の現状に鑑みてなされたものであって、コンクリート枕木用鋼製型枠の本体型枠を製造する際、溶接部位及びその研磨仕上げ量を減少して、それらに要する作業時間を短縮し、容易にレール座面成形用底板部の精度を確保し得るようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明が講じた技術的手段は、次の通りである。即ち、請求項1に記載の発明によるコンクリート枕木用鋼製型枠は、細長い底板部と、その幅方向両側に位置する側板部とで溝状に形成された本体型枠と、本体型枠の長手方向両端部に着脱自在に連結される端面型枠とからなり、端面型枠には、プレストレス導入用のアンボンドPC鋼材の保持部が付設され、本体型枠の長手方向両端近傍部には、夫々、長手方向両端側の底板部上面より高い位置に、所定の勾配を付け、且つ、レール幅に対応する2個の貫通孔を設けたレール座面成形用底板部が形成されたコンクリート枕木用鋼製型枠であって、前記レール座面成形用底板部とその両側に位置する側板部分とが鋼板の曲げ加工により形成されていることを特徴としている。
【0011】
請求項2に記載の発明によるコンクリート枕木用鋼製型枠の製造方法は、請求項1に記載のコンクリート枕木用鋼製型枠における本体型枠を製造するにあたり、レール座面成形用底板部とその両側に位置する側板部分とを鋼板の曲げ加工により形成してなる溝状部材の両端に、上段部がレール座面成形用底板部と面一の段差部成形用底板部及びその両側に連設された側板部分を溶接し、前記レール座面成形用底板部にレール幅に対応する2個の貫通孔を形成してなる左右一対の溝状の端部型枠ユニットと、左右の端部型枠ユニット間に配置される溝状の中央部型枠ユニットとを分割して製造し、それらの型枠内面側断面形状に対応する複数枚の縦板部とそれらを連結する複数の横杆とを備えた組立冶具に、前記端部型枠ユニット及び中央側型枠ユニットを覆い被せた状態に支持させ、これらの端部型枠ユニットと中央側型枠ユニットとの突合せ端部外面を溶接して、本体型枠を製造することを特徴としている。
【0012】
請求項3に記載の発明によるコンクリート枕木用鋼製型枠の製造方法は、請求項1に記載のコンクリート枕木用鋼製型枠における本体型枠を製造するにあたり、レール座面成形用底板部とその両側に位置する側板部分とを鋼板の曲げ加工により形成してなる溝状部材の両端に、上段部がレール座面成形用底板部と面一の段差部成形用底板部及びその両側に連設された側板部分を溶接し、前記レール座面成形用底板部にレール幅に対応する2個の貫通孔を形成し、且つ、型枠内面側の溶接部位の研磨仕上げを施してある左右一対の溝状の端部型枠ユニットと、左右の端部型枠ユニット間に配置される溝状の中央部型枠ユニットとを分割して製造し、それらの型枠内面側断面形状に対応する複数枚の縦板部とそれらを連結する複数の横杆とを備えた組立冶具に、前記端部型枠ユニット及び中央側型枠ユニットを覆い被せた状態に支持させ、これらの端部型枠ユニットと中央側型枠ユニットとの突合せ端部外面を溶接して、本体型枠を製造することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明の構成によれば、レール座面成形用底板部とその両側に位置する側板部分とが鋼板の曲げ加工により形成されているので、曲げ加工の部位については、溶接が省略され、溶接部位の研磨仕上げが省略されることになる。従って、溝状本体とレール座面成形用底板部とを別々に製作し、レール座面成形用底板部を溝状本体の内部に仮置きして、両者の当接部を溶接していた従来品に比して、溶接部位及びその研磨仕上げ量が減少することになり、また、溶接部位が短くて済むため、溶接による歪みも減少することになり、レール座面成形用底板部の精度確保が容易である。
【0014】
請求項2に記載の発明の構成によれば、レール座面成形用底板部とその両側に位置する側板部分とを鋼板の曲げ加工により形成してなる溝状部材の両端に、上段部がレール座面成形用底板部と面一の段差部成形用底板部及びその両側に連設された側板部分を溶接し、前記レール座面成形用底板部にレール幅に対応する2個の貫通孔を形成してなる左右一対の溝状の端部型枠ユニットを単体として製作し、当該端部型枠ユニットと、左右の端部型枠ユニット間に配置される溝状の中央部型枠ユニットとを、組立冶具上で溶接により相互に連結して本体型枠を製造するので、複数の溝状部材よりなる溝状本体と、レール座面成形用底板部とを別々に製作し、レール座面成形用底板部を溝状本体の内部に仮置きして、両者の当接部を溶接する場合のような両側のレール座面成形用底板部同士の位置関係を一定に維持するための組立冶具が不要である。
【0015】
しかも、端部型枠ユニットにおけるレール座面成形用底板部とその両側に位置する側板部分とが鋼板の曲げ加工により形成されているので、曲げ加工の部位については、溶接が省略され、溶接部位の研磨仕上げが省略されることになる。従って、溝状本体とレール座面成形用底板部とを別々に製作し、レール座面成形用底板部を溝状本体の内部に仮置きして、両者の当接部を溶接する従来の製造方法に比して、溶接部位及びその研磨仕上げ量が減少することになり、また、溶接部位が短くて済むため、溶接による歪みも減少することになり、レール座面成形用底板部の精度確保が容易である。
【0016】
殊に、請求項3に記載の発明の構成によれば、上記の効果に加え、予め、端部型枠ユニットにおける型枠内面側の溶接部位の研磨仕上げを施しておき、当該端部型枠ユニットと、左右の端部型枠ユニット間に配置される溝状の中央部型枠ユニットとの突合せ端部外面を組立冶具上で溶接することにより相互に連結して本体型枠を製造するので、型枠ユニット同士の連結後に溶接部位の研磨仕上げを行う必要がなく、また、端部型枠ユニットの段階(本体型枠に比して小さな部品の段階)で溶接部位の研磨仕上げを行うので、研磨仕上げの作業も容易である等の効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1〜図3は、本発明に係るコンクリート枕木用鋼製型枠の一例を示す。このコンクリート枕木用鋼製型枠は、細長い底板部1と、その幅方向両側に位置する側板部2とでコンクリート枕木に相当する長さの溝状に形成された本体型枠Aと、本体型枠Aの長手方向両端部に着脱自在に連結される端面型枠Bとから構成されている。3は両側の側板部2の上端部外面に溶接されたフラットバーよりなるフランジ部である。4は底板部1及び側板部2の外面に溶接された補強リブである。
【0018】
端面型枠Bには、プレストレス導入用のアンボンドPC鋼材5の保持部6が付設され、本体型枠Aの長手方向両端近傍部には、夫々、長手方向両端側の底板部上面より高い位置に、所定の勾配(レール座面に要求される1:40の勾配)を付け、且つ、レール幅と対応する2個の貫通孔(型枠内にコンクリートを打設する際、図2に示すように、レール固定用の埋め込み栓7を仮固定しておくための貫通孔)a,bを形成したレール座面成形用底板部Pが設けられている。レール座面成形用底板部Pとその両側に位置する側板部分Qとは、鋼板の曲げ加工により形成されており、両者P,Qの角部は所定の曲率半径の曲面
Rとなっている。
【0019】
本体型枠Aは、図4〜図7、図8,9、図10に示すように、レール座面成形用底板部Pを形成した左右一対の端部型枠ユニットU1,U2と、左右の端部型枠ユニット間に配置される中央型枠ユニットU3とを互いに分割された単体として製作し、それらを、図11〜図13に示すように連結することによって製造される。
【0020】
左側の端部型枠ユニットU1は、次の通りに構成されている。即ち、図4〜図7に示すように、レール座面成形用底板部Pとその両側に位置する側板部分Qとを鋼板の曲げ加工により形成してなる溝状部材8を製作し、その両端に、上段部9aがレール座面成形用底板部Pと面一となるようにZ状に曲げ加工された段差部成形用底板部9とそれに連設された側板部分10を溶接してある。この溶接は、突合せ端部外面で行われている。段差部成形用底板部9に連なる側板部分10と底板部分11とは、両者10,11の角部が所定の曲率半径の曲面Rとなるように、鋼板の曲げ加工によって形成された溝状部材12として製作され、当該溝状部材12の底板部分11には、段差部成形用底板部9の下段部9bが面一に嵌り込むように、下段部9bと同一形状の切欠き13を形成してある。
【0021】
段差部成形用底板部9の上段部9aと側板部分10との当接部、立上り部9cと側板部分10との当接部及び立上り部9cの下端と底板部分11との当接部は、型枠内面側から溶接した後、その溶接部位を所定の曲率半径の曲面Rとなるように研磨仕上げしてあるが、レール座面成形用底板部Pとその両側の側板部分Qとの角部は曲げ加工によって所定の曲率半径の曲面Rとなるので溶接や研磨仕上げはされていない。また、一方の溝状部材12の外側端部には、鋼板の曲げ加工によって底板部分14と側板部分15とを形成した同一断面形状の溝状部材16が、突合せ端部外面を溶接することによって連結されている。
【0022】
尚、図示の例では、レール座面成形用底板部Pの裏面に、貫通孔a,bの縁部を補強する角型座金17が溶接されているが、角型座金17は省略してもよい。また、図4〜図7では図示を省略してあるが、レール座面成形用底板部Pの裏面には、必要に応じて、図11に示すように、レール座面成形用底板部P両端の立上り部9c間にわたる長さの補強リブ18が溶接される。
【0023】
右側の端部型枠ユニットU2は、図8、図9に示すように、左側の端部型枠ユニットU1と対称形であり、溝状部材8、段差部成形用底板部9、溝状部材12、溝状部材16等によって構成されるが、詳細な構成は、左側の端部型枠ユニットU1と同じであるから、説明を省略する。
【0024】
中央型枠ユニットU3は、図10、図11に示すように、コンクリート枕木の長手方向各部位での断面形状の変化に対応して作製された3個の溝状部材19,20,21を鋼板の曲げ加工によって製作し、それらを連結することによって構成されている。具体的には、長手方向各部位における断面形状が一定の溝状部材20の両端に、外側に行くほど深さが深くなる断面形状とされた左右一対の溝状部材19,21を配置し、それらの突合せ端部外面を溶接することによって構成されている。
【0025】
次に、コンクリート枕木用鋼製型枠における本体型枠Aの製造方法を、図11〜図13に基づいて説明する。
【0026】
先ず、図11に示すように、左右一対の溝状の端部型枠ユニットU1,U2と、左右の端部型枠ユニットU1,U2間に配置される溝状の中央部型枠ユニットU3を単体として製造する。
【0027】
そして、前記端部型枠ユニットU1,U2及び中央部型枠ユニットU3を、それらの型枠内面側断面形状に対応する複数枚の縦板部22とそれらを連結する複数の横杆23とを備えた組立冶具24に、前記端部型枠ユニットU1,U2及び中央部型枠ユニットU3を、図12に示すように、覆い被せた状態に支持させ、これらの端部型枠ユニットU1,U2と中央部型枠ユニットU3との突合せ端部外面を溶接すると共に、組立冶具24の両側に設置したフランジ部用のフラットバー25と端部型枠ユニットU1,U2及び中央部型枠ユニットU3の側板部との角部を溶接し、さらに、図13に示すように、外面に補強リブ4を溶接することによって、前記本体型枠Aを製造する。
【0028】
組立冶具24には、前記レール座面成形用底板部Pと対応する位置に、図14〜図16に示すように、前記貫通孔a,bの位置を規定するための位置決め用板部26が設けられている。位置決め用板部26には、貫通孔a,bに対応する位置に貫通孔c,dが形成されている。また、位置決め用板部26の上面には、貫通孔a,bに嵌り込む寸法の環状突起27が溶接され、下面には貫通孔c,dと同芯状にナット28が溶接されている。そして、端部型枠ユニットU1,U2のレール座面成形用底板部Pを位置決め用板部26の上に載せることにより、図15に示すように、環状突起27が貫通孔a,bに嵌り込み、この状態で、図16に示すように、押さえ板29の上からボルト30をナット28にねじ込んで、レール座面成形用底板部Pを位置決め用板部26に押し付け、貫通孔a,bの位置を拘束するように構成されている。
【0029】
尚、端部型枠ユニットU1,U2や中央部型枠ユニットU3の製作は、前記組立冶具24と同じ構造の組立冶具を用いて行ってもよく、前記組立冶具24を、両端部と中央部とに3分割した構造の組立冶具を用いて行ってもよい。
【0030】
上記の構成によれば、レール座面成形用底板部Pとその両側に位置する側板部分Qとが鋼板の曲げ加工により形成されているので、曲げ加工の部位については、溶接が省略され、溶接部位の研磨仕上げが省略されることになる。従って、溝状本体とレール座面成形用底板部とを別々に製作し、レール座面成形用底板部を溝状本体の内部に仮置きして、両者の当接部を溶接していた従来品に比して、溶接部位及びその研磨仕上げ量が減少することになり、また、溶接部位が短くて済むため、溶接による歪みも減少することになり、レール座面成形用底板部の精度確保が容易である。
【0031】
また、上記の発明の構成によれば、レール座面成形用底板部Pとその両側に位置する側板部分Qとを鋼板の曲げ加工により形成してなる溝状部材8の両端に、上段部9aがレール座面成形用底板部Pと面一の段差部成形用底板部9及びその両側に連設された側板部分10を溶接し、前記レール座面成形用底板部Pにレール幅に対応する2個の貫通孔a,bを形成してなる左右一対の溝状の端部型枠ユニットU1,U2を単体として製作し、当該端部型枠ユニットU1,U2と、左右の端部型枠ユニットU1,U2間に配置される溝状の中央部型枠ユニットU3とを、組立冶具24上で溶接により相互に連結して本体型枠Aを製造するので、複数の溝状部材よりなる溝状本体と、レール座面成形用底板部とを別々に製作し、レール座面成形用底板部を溝状本体の内部に仮置きして、両者の当接部を溶接する場合のような両側のレール座面成形用底板部同士の位置関係を一定に維持するための組立冶具が不要である。
【0032】
しかも、端部型枠ユニットU1,U2におけるレール座面成形用底板部Pとその両側に位置する側板部分Qとが鋼板の曲げ加工により形成されているので、曲げ加工の部位については、溶接が省略され、溶接部位の研磨仕上げが省略されることになる。従って、溝状本体とレール座面成形用底板部とを別々に製作し、レール座面成形用底板部を溝状本体の内部に仮置きして、両者の当接部を溶接する従来の製造方法に比して、溶接部位及びその研磨仕上げ量が減少することになり、また、溶接部位が短くて済むため、溶接による歪み
も減少することになり、レール座面成形用底板部の精度確保が容易である。
【0033】
殊に、上記の構成によれば、予め、端部型枠ユニットU1,U2における型枠内面側の溶接部位の研磨仕上げを施しておき、当該端部型枠ユニットU1,U2と、左右の端部型枠ユニットU1,U2間に配置される溝状の中央部型枠ユニットU3との突合せ端部外面を組立冶具24上で溶接することにより相互に連結して本体型枠Aを製造するので、型枠ユニット同士の連結後に型枠内面側の溶接部位の研磨仕上げを行う必要がなく、また、端部型枠ユニットU1,U2の段階(本体型枠に比して小さな部品の段階)で溶接部位の研磨仕上げを行うので、研磨仕上げの作業も容易である。
【0034】
尚、図示の例では、段差部成形用底板部9として、立上り部9cが平面視において型枠長手方向に対して傾斜した形状に形成されたものを用いているが、レール取付け金物の形式によっては、立上り部9cが平面視において型枠長手方向に対して直角に形成されたものとすることもある。また、本発明は、例えば、中央部型枠ユニットU3をさらに長手方向複数個に分割して製作する等、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の態様で実施でき、図示の実施形態のみに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】コンクリート枕木用鋼製型枠の斜視図である。
【図2】アンボンドPC鋼材及び埋め込み栓をセットした状態におけるコンクリート枕木用鋼製型枠の縦断側面図である。
【図3】コンクリート枕木用鋼製型枠における本体型枠の平面図である。
【図4】左側の端部型枠ユニットの構成を説明する要部の分解斜視図である。
【図5】左側の端部型枠ユニットの構成を説明する要部の斜視図である。
【図6】左側の端部型枠ユニットの構成を説明する要部の一部破断斜視図である。
【図7】左側の端部型枠ユニットの構成を説明する要部の縦断正面図である。
【図8】右側の端部型枠ユニットの構成を説明する要部の分解斜視図である。
【図9】右側の端部型枠ユニットの構成を説明する要部の斜視図である。
【図10】中央型枠ユニットの構成を説明する要部の分解斜視図である。
【図11】製造方法を説明する斜視図である。
【図12】製造方法を説明する斜視図である。
【図13】製造方法を説明する斜視図である。
【図14】製造方法を説明する要部の縦断側面図である。
【図15】製造方法を説明する要部の縦断側面図である。
【図16】製造方法を説明する要部の縦断側面図である。
【図17】従来の本体型枠の縦断側面図である。
【図18】従来の製造方法を説明する斜視図である。
【図19】従来の製造方法を説明する斜視図である。
【図20】従来の製造方法を説明する斜視図である。
【符号の説明】
【0036】
A 本体型枠
P レール座面成形用底板部
Q 側板部分
U1,U2 端部型枠ユニット
U3 中央部型枠ユニット
a,b 貫通孔
1 底板部
2 側板部
3 フランジ部
4 補強リブ
5 アンボンドPC鋼材
6 保持部
7 埋め込み栓
8 溝状部材
9 段差部成形用底板部
9a 上段部
9b 下段部
9c 立上り部
10 側板部分
11 底板部分
12 溝状部材
13 切欠き
14 底板部分
15 側板部分
16 溝状部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長い底板部と、その幅方向両側に位置する側板部とで溝状に形成された本体型枠と、本体型枠の長手方向両端部に着脱自在に連結される端面型枠とからなり、端面型枠には、プレストレス導入用のアンボンドPC鋼材の保持部が付設され、本体型枠の長手方向両端近傍部には、夫々、長手方向両端側の底板部上面より高い位置に、所定の勾配を付け、且つ、レール幅に対応する2個の貫通孔を設けたレール座面成形用底板部が形成されたコンクリート枕木用鋼製型枠であって、前記レール座面成形用底板部とその両側に位置する側板部分とが鋼板の曲げ加工により形成されていることを特徴とするコンクリート枕木用鋼製型枠。
【請求項2】
請求項1に記載のコンクリート枕木用鋼製型枠における本体型枠を製造するにあたり、レール座面成形用底板部とその両側に位置する側板部分とを鋼板の曲げ加工により形成してなる溝状部材の両端に、上段部がレール座面成形用底板部と面一の段差部成形用底板部及びその両側に連設された側板部分を溶接し、前記レール座面成形用底板部にレール幅に対応する2個の貫通孔を形成してなる左右一対の溝状の端部型枠ユニットと、左右の端部型枠ユニット間に配置される溝状の中央部型枠ユニットとを分割して製造し、それらの型枠内面側断面形状に対応する複数枚の縦板部とそれらを連結する複数の横杆とを備えた組立冶具に、前記端部型枠ユニット及び中央側型枠ユニットを覆い被せた状態に支持させ、これらの端部型枠ユニットと中央側型枠ユニットとの突合せ端部外面を溶接して、本体型枠を製造することを特徴とするコンクリート枕木用鋼製型枠の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載のコンクリート枕木用鋼製型枠における本体型枠を製造するにあたり、レール座面成形用底板部とその両側に位置する側板部分とを鋼板の曲げ加工により形成してなる溝状部材の両端に、上段部がレール座面成形用底板部と面一の段差部成形用底板部及びその両側に連設された側板部分を溶接し、前記レール座面成形用底板部にレール幅に対応する2個の貫通孔を形成し、且つ、型枠内面側の溶接部位の研磨仕上げを施してある左右一対の溝状の端部型枠ユニットと、左右の端部型枠ユニット間に配置される溝状の中央部型枠ユニットとを分割して製造し、それらの型枠内面側断面形状に対応する複数枚の縦板部とそれらを連結する複数の横杆とを備えた組立冶具に、前記端部型枠ユニット及び中央側型枠ユニットを覆い被せた状態に支持させ、これらの端部型枠ユニットと中央側型枠ユニットとの突合せ端部外面を溶接して、本体型枠を製造することを特徴とするコンクリート枕木用鋼製型枠の製造方法。
【請求項1】
細長い底板部と、その幅方向両側に位置する側板部とで溝状に形成された本体型枠と、本体型枠の長手方向両端部に着脱自在に連結される端面型枠とからなり、端面型枠には、プレストレス導入用のアンボンドPC鋼材の保持部が付設され、本体型枠の長手方向両端近傍部には、夫々、長手方向両端側の底板部上面より高い位置に、所定の勾配を付け、且つ、レール幅に対応する2個の貫通孔を設けたレール座面成形用底板部が形成されたコンクリート枕木用鋼製型枠であって、前記レール座面成形用底板部とその両側に位置する側板部分とが鋼板の曲げ加工により形成されていることを特徴とするコンクリート枕木用鋼製型枠。
【請求項2】
請求項1に記載のコンクリート枕木用鋼製型枠における本体型枠を製造するにあたり、レール座面成形用底板部とその両側に位置する側板部分とを鋼板の曲げ加工により形成してなる溝状部材の両端に、上段部がレール座面成形用底板部と面一の段差部成形用底板部及びその両側に連設された側板部分を溶接し、前記レール座面成形用底板部にレール幅に対応する2個の貫通孔を形成してなる左右一対の溝状の端部型枠ユニットと、左右の端部型枠ユニット間に配置される溝状の中央部型枠ユニットとを分割して製造し、それらの型枠内面側断面形状に対応する複数枚の縦板部とそれらを連結する複数の横杆とを備えた組立冶具に、前記端部型枠ユニット及び中央側型枠ユニットを覆い被せた状態に支持させ、これらの端部型枠ユニットと中央側型枠ユニットとの突合せ端部外面を溶接して、本体型枠を製造することを特徴とするコンクリート枕木用鋼製型枠の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載のコンクリート枕木用鋼製型枠における本体型枠を製造するにあたり、レール座面成形用底板部とその両側に位置する側板部分とを鋼板の曲げ加工により形成してなる溝状部材の両端に、上段部がレール座面成形用底板部と面一の段差部成形用底板部及びその両側に連設された側板部分を溶接し、前記レール座面成形用底板部にレール幅に対応する2個の貫通孔を形成し、且つ、型枠内面側の溶接部位の研磨仕上げを施してある左右一対の溝状の端部型枠ユニットと、左右の端部型枠ユニット間に配置される溝状の中央部型枠ユニットとを分割して製造し、それらの型枠内面側断面形状に対応する複数枚の縦板部とそれらを連結する複数の横杆とを備えた組立冶具に、前記端部型枠ユニット及び中央側型枠ユニットを覆い被せた状態に支持させ、これらの端部型枠ユニットと中央側型枠ユニットとの突合せ端部外面を溶接して、本体型枠を製造することを特徴とするコンクリート枕木用鋼製型枠の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2006−255904(P2006−255904A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−72358(P2005−72358)
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【出願人】(591149609)戸田工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【出願人】(591149609)戸田工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】
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