コンクリート構造物およびコンクリート構造物の連結方法
【課題】複数のプレキャストコンクリート部材を容易に連結できるコンクリート構造物およびコンクリート構造物の連結方法を提供すること。
【解決手段】コンクリート構造物1を構成する2枚のプレキャスト板3は、上面7に凹部9を有する。また、凹部9の垂直面8とプレキャスト板3の側面4との間に、シース管15が水平に設けられる。コンクリート構造物1を構築するには、まず、プレキャスト板3aを所定の位置に配置する。プレキャスト板3aでは、シース管15にPC鋼棒11が挿入され、凹部9内に位置するPC鋼棒11の端部にナット13が設置される。次に、プレキャスト板3bを、シース管15にプレキャスト部材3aから突出したPC鋼棒11を挿通しつつ配置する。プレキャスト板3bを配置した後、プレキャスト板3bの凹部9内に位置するPC鋼棒11の端部にナット13を設置し、PC鋼棒11をプレキャスト板3に固定する。
【解決手段】コンクリート構造物1を構成する2枚のプレキャスト板3は、上面7に凹部9を有する。また、凹部9の垂直面8とプレキャスト板3の側面4との間に、シース管15が水平に設けられる。コンクリート構造物1を構築するには、まず、プレキャスト板3aを所定の位置に配置する。プレキャスト板3aでは、シース管15にPC鋼棒11が挿入され、凹部9内に位置するPC鋼棒11の端部にナット13が設置される。次に、プレキャスト板3bを、シース管15にプレキャスト部材3aから突出したPC鋼棒11を挿通しつつ配置する。プレキャスト板3bを配置した後、プレキャスト板3bの凹部9内に位置するPC鋼棒11の端部にナット13を設置し、PC鋼棒11をプレキャスト板3に固定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物およびコンクリート構造物の連結方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道では、バラスト材を用いるバラスト軌道の他に、軌道スラブと呼ばれるコンクリート等の板上にレールを設けるスラブ軌道が用いられることがあった。スラブ軌道では、軌道スラブを新設する場合や、老朽化した軌道スラブを交換する場合などに、複数のプレキャストコンクリート部材を連結手段によって連結して軌道スラブを構築する方法が提案されてきた。プレキャストコンクリート部材を連結する方法としては、例えば、軌道直角方向にPC鋼棒で締め付ける方法が提案されていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2006−283316号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した連結方法では、長尺のPC鋼棒を用いるため、狭い作業スペースでのPC鋼棒の扱いが困難であった。また、既設の軌道スラブを交換する場合、レール短絡する可能性があった。さらに、軌道スラブの構築に用いられるプレキャストコンクリート部材は断面が薄いため、シース管を通すコンクリートの断面欠損が大きかった。他に、シース管を曲げモーメントが大きいレール下を通す必要がある、シース管全長にグラウト注入するために専門技術者が必要である、PC技術者が必要である等の問題点があった。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、複数のプレキャストコンクリート部材を容易に連結できるコンクリート構造物およびコンクリート構造物の連結方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するための第1の発明は、所定の面に凹部を有し、前記凹部内と部材外部とを結ぶ管部が設けられた複数のプレキャスト部材と、前記複数のプレキャスト部材を連結する連結手段と、を具備し、前記複数のプレキャスト部材が、前記管部同士が連通するように配置され、前記連結手段を用いて連結されたことを特徴とするコンクリート構造物である。
【0007】
連結手段は、例えば、管部に挿通される鋼材と、凹部内に配置され、複数のプレキャスト部材に前記鋼材を固定する固定具とからなる。
【0008】
第2の発明は、所定の面に凹部を有し、前記凹部内と部材外部とを結ぶ管部が設けられた複数のプレキャスト部材を、前記管部同士が連通するように配置し、連結手段を用いて連結することを特徴とするコンクリート構造物の連結方法である。
【0009】
第2の発明では、例えば、連結手段が、管部に挿通される鋼材と、凹部内に配置され、複数のプレキャスト部材に前記鋼材を固定する固定具とからなり、連通した管部に鋼材を挿通し、凹部内に配置された固定具を用いて複数のプレキャスト部材に鋼材を固定することにより、複数のプレキャストコンクリート部材を連結する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数のプレキャストコンクリート部材を容易に連結できるコンクリート構造物およびコンクリート構造物の連結方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面に基づいて、本発明の第1の実施の形態について詳細に説明する。図1は、第1の実施形態に係るコンクリート構造物1の斜視図であり、図2はコンクリート構造物1の断面図である。図2は、図1のA−A断面図である。
【0012】
図1および図2に示すように、コンクリート構造物1は2枚のプレキャスト板3(プレキャスト板3a、プレキャスト板3b)を連結した構造を有している。プレキャスト板3は、いわゆるプレキャストコンクリートである。
【0013】
プレキャスト板3aは、プレキャスト板3bと対向する側面4の両端に扇形形状の切欠き部5aを有する。プレキャスト板3bは、プレキャスト板3aと対向する側面4の両端に扇形形状の切欠き部5bを有する。コンクリート構造物1は、切欠き部5a、切欠き部5bからなる半円形の切欠き部5を有する。
【0014】
プレキャスト板3a、プレキャスト板3bは、それぞれ、上面7に凹部9を有する。また、凹部9の内部と部材の外部とを結ぶ管部であるシース管15を有する。シース管15は、凹部9の垂直面8とプレキャスト板3の側面4との間に水平に設けられる。
【0015】
プレキャスト板3a、プレキャスト板3bは、シース管15同士が連通するように配置される。連通したシース管15には、PC鋼棒11が挿通される。PC鋼棒11は、凹部9内に配置されたナット13を用いてプレキャスト板3a、プレキャスト板3bに固定される。シース管15の内部には、グラウト材17が充填される。また、プレキャスト板3aの側面4とプレキャスト板3bの側面4との間には、エポキシ樹脂19が充填される。凹部9は、無収縮モルタル(図示せず)で埋め戻される。
【0016】
図3は、コンクリート構造物1の載荷実験の概要を示す図である。図4は、PC鋼棒11の軸力と載荷荷重との関係を示す図、図5は、プレキャスト板3の連結部の開口変位と載荷荷重との関係を示す図である。
【0017】
図4、図5は、図3に示すようにコンクリート構造物1に2点載荷を行った場合の実験結果を示す。図4の点線21、実線23、破線25は、それぞれ、PC鋼棒11の初期導入締結力が20kN、120kN、260kNの場合のPC鋼棒11の軸力と載荷荷重との関係を示す。図5の点線27、実線29、破線31は、それぞれ、PC鋼棒11の初期導入締結力が20kN、120kN、260kNの場合のプレキャスト板3の連結部の開口変位と載荷荷重との関係を示す。図4、図5に示すように、PC鋼棒11の初期導入締結力が大きいほど、連結部の開口変位は小さい。
【0018】
次に、コンクリート構造物1を交換用の軌道スラブとして用いる場合の交換方法について説明する。図6から図9は、既設の軌道スラブ33と図1および図2に示すコンクリート構造物1とを交換する際の手順を示す図である。
【0019】
まず、図6を用いてスラブ軌道35の構造を簡単に説明する。スラブ軌道35では、コンクリート路盤36上にCAモルタル37が設けられており、CAモルタル上に軌道スラブ33、軌道スラブ34が設けられている。軌道スラブ33、軌道スラブ34上にはタイプレート41a、タイプレート41b、タイプレート41c、タイプレート41dが設けられており、これらのタイプレート上にはレール43a、レール43bが設けられている。また、コンクリート路盤36は突起39a、突起39bを有しており、軌道スラブ33、軌道スラブ34の水平方向への移動を規制している。軌道スラブ33は1枚のプレキャストコンクリート板からなる。
【0020】
このようなスラブ軌道35において、図6に示すように、経年劣化等で軌道スラブ33が損傷してしまい、交換が必要になったとする。この場合、まず、図7に示すように、若干レール43a、レール43bを持ち上げた後、タイプレート41b、タイプレート41dを軌道スラブ33から外す。そして、軌道スラブ33を切断した後、軌道スラブ33を矢印B方向に移動させてスラブ軌道35から撤去する。なお、この際、軌道スラブ33を粉砕してとりだしてもよい。スラブ軌道33を撤去した後、軌道スラブ33の下部にあるCAモルタル37を撤去する。
【0021】
次に、図8に示すように、コンクリート構造物1のプレキャスト板3aを矢印C方向に移動させ、スラブ軌道35上に配置する。プレキャスト板3aでは、スラブ軌道35上への配置と前後して、シース管15にPC鋼棒11が挿入され、凹部9内に位置するPC鋼棒11の端部にはナット13が設置される(図2)。
【0022】
次に、図9に示すように、コンクリート構造物1のプレキャスト板3bを矢印D方向に移動させ、スラブ軌道35上に配置する。プレキャスト板3bは、シース管15にプレキャスト板3aから突出したPC鋼棒11を挿通しつつ配置される。プレキャスト板3bを配置した後、プレキャスト板3bの凹部9内に位置するPC鋼棒11の端部にナット13を設置し、PC鋼棒11をプレキャスト板3a、プレキャスト板3bに固定する。そして、シース管15の内部にグラウト材17を充填し、凹部9を無収縮モルタル(図示せず)で埋め戻す。また、プレキャスト板3aとプレキャスト板3bとの間にエポキシ樹脂19を充填する(図2)。
【0023】
ここまでの工程では、CAモルタル37が撤去されているため、プレキャスト板3aとプレキャスト板3bとをコンクリート路盤36上で連結し、その後全体を持ち上げる。なお、プレキャスト板3a、プレキャスト板3bとコンクリート路盤36との間に図示しないスペーサ等を設け、全体を持ち上げた状態で作業を行ってもよい。
【0024】
最後に、プレキャスト板3の下にCAモルタル37を注入する。このようにしてコンクリート構造物1が設置される。
【0025】
このように、第1の実施形態によれば、2枚のプレキャスト板3を別々にスラブ軌道上35に設置し、その後連結することにより、突起39a、突起39bがあっても、プレキャスト板3を水平方向から挿入することができる。また、コンクリート構造物1をスラブ軌道35から撤去する場合も、連結を解除してから、2枚のプレキャスト板3を別々にスラブ軌道上から取り外すことにより、突起39a、突起39bがあっても、コンクリート構造物1をスラブ軌道35から容易に撤去することができる。
【0026】
第1の実施の形態のコンクリート構造物1では、プレキャスト板3の全長にわたる長尺のPC鋼棒を用いることなく、中央部のみをPC鋼棒11で連結するため、PC鋼棒の長さが従来よりも短くて済み、扱いが容易となる。また、シース管15の設置長さが短くなり、グラウト材17の注入も容易となる。PC鋼棒11は、ナット13を用いて締め込むため、PC技術者が不要である。
【0027】
さらに、曲げモーメントがほとんど生じない連結部中央にのみシース管15を設けることから、プレキャスト板3の断面欠損の影響が少ないうえ、曲げモーメントが大きいレール下にシース管15を通す必要がない。
【0028】
第1の実施の形態では、連結面全体に圧縮応力が加わり、連結面で曲げモーメントを伝達させることが可能となる。
なお、第1の実施の形態では、PC鋼棒11を用いてプレキャスト板3a、プレキャスト板3bを連結したが、長ボルトを用いて連結してもよい。
【0029】
次に、第2の実施形態について説明する。図10は第2の実施形態に係るコンクリート構造物51の斜視図、図11は、コンクリート構造物51の断面図である。図11は、図10のE−E断面図である。
【0030】
図10、図11に示すように、コンクリート構造物51は、プレキャスト板53a、プレキャスト板53c、プレキャスト板53bを一列に連結した構造を有している。プレキャスト板53a、プレキャスト板53b、プレキャスト板53cはいわゆるプレキャストコンクリートである。
【0031】
プレキャスト板53aは、プレキャスト板53cと対向しない側面54aに、半円形の切欠き部57aを有する。プレキャスト板53bは、プレキャスト板53cと対向しない側面54bに、半円形の切欠き部57bを有する。
【0032】
プレキャスト板53aは、上面に凹部55aを有し、凹部55aの内部と部材の外部とを結ぶ管部であるシース管59を有する。シース管59は、凹部55aの垂直面58aとプレキャスト板53cと対向する側面56aとの間に、上下2段に水平に設けられる。
【0033】
プレキャスト板53bは、上面に凹部55bを有し、凹部55bの内部と部材の外部とを結ぶ管部であるシース管59を有する。シース管59は、凹部55bの垂直面58bとプレキャスト板53cと対向する側面56bとの間に、上下2段に水平に設けられる。
【0034】
プレキャスト板53cは、上面に凹部55cを有し、凹部55cの内部と部材の外部とを結ぶ管部であるシース管59を有する。シース管59は、プレキャスト板53a側の凹部55cの垂直面58cとプレキャスト板53aと対向する側面56cとの間に、上下2段に水平に設けられる。また、プレキャスト板53b側の凹部55cの垂直面58cとプレキャスト板53bと対向する側面56cとの間にも、上下2段に水平に設けられる。
【0035】
プレキャスト板53a、プレキャスト板53c、プレキャスト板53bは、シース管59同士が連通するように配置される。連通したシース管59には、PC鋼棒61が挿通される。PC鋼棒61は、凹部55a、凹部55b、凹部55c内に配置されたナット63を用いてプレキャスト板53a、プレキャスト板53b、プレキャスト板53cに固定される。シース管59の内部には、グラウト材(図示せず)が充填される。また、プレキャスト板53aとプレキャスト板53cとの間、および、プレキャスト板53bとプレキャスト板53cとの間には、エポキシ樹脂(図示せず)が充填される。凹部55a、凹部55b、凹部55cは、無収縮モルタル(図示せず)で埋め戻される。
【0036】
コンクリート構造物51を第1の実施の形態のコンクリート構造物1と同様に交換用の軌道スラブとして用いる場合、3枚のプレキャスト板53a、プレキャスト板53b、プレキャスト板53cからなる構造とすることにより、スラブ軌道に容易に設置・撤去できる。
【0037】
第2の実施の形態のコンクリート構造物51では、PC鋼棒の長さが従来よりも短くて済み、扱いが容易となる。また、シース管59の設置長さが短くなり、グラウト材の注入も容易となる。PC鋼棒61は、ナット63を用いて締め込むため、PC技術者が不要である。
【0038】
なお、第2の実施の形態では、PC鋼棒61を用いてプレキャスト板53a、プレキャスト板53b、プレキャスト板53cを連結したが、長ボルトを用いて連結してもよい。
【0039】
次に、第3の実施形態について説明する。図12は第3の実施形態に係るコンクリート構造物65を示す図である。
【0040】
図12に示すように、コンクリート構造物65は、プレキャスト板67a、プレキャスト板67cおよびプレキャスト板67d、プレキャスト板67bを一列に連結した構造を有し、中央には中空部66がある。プレキャスト板67a、プレキャスト板67b、プレキャスト板67c、プレキャスト板67dはいわゆるプレキャストコンクリートである。
【0041】
プレキャスト板67aは、プレキャスト板67cおよびプレキャスト板67dと対向しない側面70aに、半円形の切欠き部71aを有する。プレキャスト板67bは、プレキャスト板67cおよびプレキャスト板67dと対向しない側面70bに、半円形の切欠き部71bを有する。
【0042】
プレキャスト板67aは、上面に凹部69aを有し、凹部69aの内部と部材の外部とを結ぶ管部であるシース管(図示せず)を有する。シース管(図示せず)は、凹部69aの垂直面72aとプレキャスト板67cおよびプレキャスト板67dと対向する側面68aとの間に水平に設けられる。
【0043】
プレキャスト板67bは、上面に凹部69bを有し、凹部69bの内部と部材の外部とを結ぶ管部であるシース管(図示せず)を有する。シース管(図示せず)は、凹部69bの垂直面72bとプレキャスト板67cおよびプレキャスト板67dと対向する側面68bとの間に水平に設けられる。
【0044】
プレキャスト板67cは、上面に凹部69cを有し、凹部69cの内部と部材の外部とを結ぶ管部であるシース管(図示せず)を有する。シース管(図示せず)は、プレキャスト板67a側の凹部69cの垂直面72cとプレキャスト板67aと対向する側面68cとの間に水平に設けられる。また、プレキャスト板67b側の凹部69cの垂直面72cとプレキャスト板67bと対向する側面68cとの間に水平に設けられる。
【0045】
プレキャスト板67dは、上面に凹部69dを有し、凹部69dの内部と部材の外部とを結ぶ管部であるシース管(図示せず)を有する。シース管(図示せず)は、プレキャスト板67a側の凹部69dの垂直面72dとプレキャスト板67aと対向する側面68dとの間に水平に設けられる。また、プレキャスト板67b側の凹部69dの垂直面72dとプレキャスト板67bと対向する側面68dとの間に水平に設けられる。
【0046】
プレキャスト板67a、プレキャスト板67cおよびプレキャスト板67d、プレキャスト板67bは、シース管(図示せず)同士が連通するように配置される。連通したシース管(図示せず)には、PC鋼棒73a、PC鋼棒73bが挿通される。PC鋼棒73a、PC鋼棒73bは、凹部69a、凹部69b、凹部69c、凹部69d内に配置されたナット75a、ナット75b、ナット75c、ナット75dを用いてプレキャスト板67a、プレキャスト板67b、プレキャスト板67c、プレキャスト板67dに固定される。シース管(図示せず)の内部には、グラウト材(図示せず)が充填される。また、プレキャスト板67aとプレキャスト板67cおよびプレキャスト板67dとの間、および、プレキャスト板67bとプレキャスト板67cおよびプレキャスト板67dとの間には、エポキシ樹脂(図示せず)が充填される。凹部69a、凹部69b、凹部69c、凹部69dは、無収縮モルタル(図示せず)で埋め戻される。
【0047】
コンクリート構造物65を第1の実施の形態のコンクリート構造物1と同様に交換用の軌道スラブとして用いる場合、4枚のプレキャスト板67a、プレキャスト板67b、プレキャスト板67c、プレキャスト板67dからなる構造とすることにより、スラブ軌道に容易に設置・撤去できる。
【0048】
第3の実施の形態のコンクリート構造物65では、PC鋼棒の長さが従来よりも短くて済み、扱いが容易となる。また、シース管の設置長さが短くなり、グラウト材の注入も容易となる。PC鋼棒73a、PC鋼棒73bは、ナット75a、ナット75b、ナット75c、ナット75dを用いて締め込むため、PC技術者が不要である。
【0049】
なお、第3の実施の形態では、PC鋼棒73a、PC鋼棒73bを用いてプレキャスト板67a、プレキャスト板67b、プレキャスト板67c、プレキャスト板67dを連結したが、長ボルトを用いて連結してもよい。
【0050】
次に、第4の実施形態について説明する。図13は第4の実施形態に係るコンクリート構造物77を示す図である。図13に示すように、コンクリート構造物77は、プレキャスト板79a、プレキャスト板79bを連結した構造を有し、連結部は台形状となっている。プレキャスト板79a、プレキャスト板79bは、いわゆるプレキャストコンクリートである。
【0051】
プレキャスト板79aは、プレキャスト板79bと対向しない側面78aに、半円形の切欠き部83aを有する。プレキャスト板79bは、プレキャスト板79aと対向しない側面78bに、半円形の切欠き部83bを有する。
【0052】
プレキャスト板79aは、上面に凹部81aを有し、凹部81aの内部と部材の外部とを結ぶ管部であるシース管(図示せず)を有する。シース管(図示せず)は、凹部81aの垂直面82aとプレキャスト板79bと対向する側面80aとの間に水平に設けられる。
【0053】
プレキャスト板79bは、上面に凹部81bを有し、凹部81bの内部と部材の外部とを結ぶ管部であるシース管(図示せず)を有する。シース管(図示せず)は、凹部81bの垂直面82bとプレキャスト板79aと対向する側面80bとの間に水平に設けられる。
【0054】
プレキャスト板79aとプレキャスト板79bとは、シース管(図示せず)同士が連通するように配置される。連通したシース管(図示せず)には、PC鋼棒85が挿通される。PC鋼棒85は、凹部81a、凹部81b内に配置されたナット87を用いてプレキャスト板79a、プレキャスト板79bに固定される。シース管(図示せず)の内部には、グラウト材(図示せず)が充填される。また、プレキャスト板79aとプレキャスト板79bとの間には、エポキシ樹脂(図示せず)が充填される。凹部81a、凹部81bは、無収縮モルタル(図示せず)で埋め戻される。
【0055】
コンクリート構造物77を第1の実施の形態のコンクリート構造物1と同様に交換用の軌道スラブとして用いる場合、2枚のプレキャスト板79a、プレキャスト板79bからなる構造とすることにより、スラブ軌道に容易に設置・撤去できる。
【0056】
第4の実施の形態のコンクリート構造物77では、PC鋼棒の長さが従来よりも短くて済み、扱いが容易となる。また、シース管の設置長さが短くなり、グラウト材の注入も容易となる。PC鋼棒85は、ナット87を用いて締め込むため、PC技術者が不要である。
【0057】
なお、第4の実施の形態では、PC鋼棒85を用いてプレキャスト部材79aとプレキャスト部材79bとを連結したが、長ボルトを用いて連結してもよい。
【0058】
次に、第5の実施形態について説明する。図14は、第5の実施形態に係るPC枕木93付近の斜視図を、図15は、PC枕木93の平面図を示す。図15は、図14の範囲Fに示す部分を上方から見た図である。
【0059】
図14に示すように、鉄道において、PC枕木93上にレール91を設置する場合、分岐部89のPC枕木93は長尺となる。第5の実施形態では、鉄道の分岐部89を構築する際に、PC枕木93として本発明のコンクリート構造物を使用する。
【0060】
分岐部89のPC枕木93は、図15に示すように、プレキャスト部材93a、プレキャスト部材93bを連結した構造を有する。プレキャスト部材93a、プレキャスト部材93bは、いわゆるプレキャストコンクリートである。
【0061】
プレキャスト部材93aは、上面に凹部95aを有し、凹部95aの内部と部材の外部とを結ぶ管部であるシース管(図示せず)を有する。シース管(図示せず)は、凹部95aの垂直面98aとプレキャスト部材93bと対向する端面100aとの間に水平に設けられる。
【0062】
プレキャスト部材93bは、上面に凹部95bを有し、凹部95bの内部と部材の外部とを結ぶ管部であるシース管(図示せず)を有する。シース管(図示せず)は、凹部95bの垂直面98bとプレキャスト部材93aと対向する端面100bとの間に水平に設けられる。
【0063】
プレキャスト部材93aとプレキャスト部材93bとは、シース管(図示せず)同士が連通するように配置される。連通したシース管(図示せず)には、PC鋼棒97が挿通される。PC鋼棒97は、凹部95a、凹部95b内に配置されたナット99を用いてプレキャスト部材93a、プレキャスト部材93bに固定される。シース管(図示せず)の内部には、グラウト材(図示せず)が充填される。また、プレキャスト部材93aとプレキャスト部材93bとの間には、エポキシ樹脂(図示せず)が充填される。凹部95a、凹部95bは、無収縮モルタル(図示せず)で埋め戻される。
【0064】
図15に示すPC枕木93を設置するには、まず、枕木の設置予定位置に、プレキャスト部材93aを配置する。プレキャスト部材93aでは、設置予定位置への設置と前後して、シース管(図示せず)にPC鋼棒97が挿入され、凹部95a内に位置するPC鋼棒97の端部にはナット99が設置される。
【0065】
次に、プレキャスト部材93bを、シース管(図示せず)にプレキャスト部材93aから突出したPC鋼棒97を挿通しつつ配置する。プレキャスト部材93bを配置した後、プレキャスト部材93bの凹部95b内に位置するPC鋼棒97の端部にナット99を設置し、PC鋼棒97をプレキャスト部材93a、プレキャスト部材93bに固定する。そして、シース管(図示せず)の内部にグラウト材(図示せず)を充填し、凹部95a、凹部95bを無収縮モルタル(図示せず)で埋め戻す。また、プレキャスト部材93aとプレキャスト部材93bとの間にエポキシ樹脂(図示せず)を充填する。
【0066】
第5の実施の形態のPC枕木93では、中央部のみをPC鋼棒97で連結するため、PC鋼棒の長さが短くて済み、扱いが容易となる。また、シース管の設置長さが短くなり、グラウト材の注入も容易となる。PC鋼棒97は、ナット99を用いて締め込むため、PC技術者が不要である。
【0067】
さらに、曲げモーメントがほとんど生じない連結部中央にのみシース管を設けることから、PC枕木93の断面欠損の影響が少ないうえ、曲げモーメントが大きいレール下にシース管を通す必要がない。
【0068】
なお、第5の実施の形態では、PC鋼棒97を用いてプレキャスト部材93aとプレキャスト部材93bとを連結したが、長ボルトを用いて連結してもよい。
【0069】
次に、第6の実施形態について説明する。図16は、第6の実施形態に係る工事桁109付近の斜視図を、図17は、工事桁109の平面図を示す。
【0070】
図16に示すように、既設盛土101上に枕木103が設置され、その上にレール107が敷設された鉄道において、トンネル105を構築する場合、トンネル105構築予定位置の枕木103を撤去して工事桁109を設置し、トンネル105を掘削する。第6の実施形態では、既設盛土101にトンネル105を構築する際に、工事桁109として本発明のコンクリート構造物を使用する。
【0071】
工事桁109は、図17に示すように、プレキャスト板109a、プレキャスト板109bを連結した構造を有する。プレキャスト板109a、プレキャスト板109bは、いわゆるプレキャストコンクリートである。
【0072】
プレキャスト板109aは、上面に凹部111aを有し、凹部111aの内部と部材の外部とを結ぶ管部であるシース管(図示せず)を有する。シース管(図示せず)は、凹部111aの垂直面110aとプレキャスト板109bと対向する側面112aとの間に水平に設けられる。
【0073】
プレキャスト板109bは、上面に凹部111bを有し、凹部111bの内部と部材の外部とを結ぶ管部であるシース管(図示せず)を有する。シース管(図示せず)は、凹部111bの垂直面110bとプレキャスト板109aと対向する側面112bとの間に水平に設けられる。
【0074】
プレキャスト板109aとプレキャスト板109bとは、シース管(図示せず)同士が連通するように配置される。連通したシース管(図示せず)には、PC鋼棒113が挿通される。PC鋼棒113は、凹部111a、凹部111b内に配置されたナット115を用いてプレキャスト板109a、プレキャスト板109bに固定される。シース管(図示せず)の内部には、グラウト材(図示せず)が充填される。また、プレキャスト板109aとプレキャスト板109bとの間には、エポキシ樹脂(図示せず)が充填される。凹部111a、凹部111bは、無収縮モルタル(図示せず)で埋め戻される。
【0075】
図16、図17に示す工事桁109を設置するには、まず、工事桁109の設置予定位置に、プレキャスト板109aを配置する。プレキャスト板109aでは、設置予定位置への配置と前後して、シース管(図示せず)にPC鋼棒113が挿入され、凹部111a内に位置するPC鋼棒113の端部にはナット115が設置される。
【0076】
次に、プレキャスト板109bを、シース管(図示せず)にプレキャスト板109aから突出したPC鋼棒113を挿通しつつ配置する。プレキャスト板109bを配置した後、プレキャスト板109bの凹部111b内に位置するPC鋼棒113の端部にナット115を設置し、PC鋼棒113をプレキャスト板109a、プレキャスト板109bに固定する。そして、シース管(図示せず)の内部にグラウト材(図示せず)を充填し、凹部111a、凹部111bを無収縮モルタル(図示せず)で埋め戻す。また、プレキャスト板109aとプレキャスト板109bとの間にエポキシ樹脂(図示せず)を充填する。
【0077】
第6の実施の形態の工事桁109では、中央部のみをPC鋼棒113で連結するため、PC鋼棒の長さが短くて済み、扱いが容易となる。また、シース管の設置長さが短くなり、グラウト材の注入も容易となる。PC鋼棒113は、ナット115を用いて締め込むため、PC技術者が不要である。
【0078】
さらに、曲げモーメントがほとんど生じない連結部中央にのみシース管を設けることから、工事桁109の断面欠損の影響が少ないうえ、曲げモーメントが大きいレール下にシース管を通す必要がない。
【0079】
なお、第6の実施の形態では、PC鋼棒113を用いてプレキャスト部材109aとプレキャスト部材109bとを連結したが、長ボルトを用いて連結してもよい。
【0080】
次に、第7の実施形態について説明する。図18は、第7の実施形態に係る踏掛版123付近の斜視図を、図19は、踏掛版123の平面図を示す。
【0081】
図18に示すように、橋梁122を構築する場合、地盤117を掘削して橋台119を設置し、橋台119の裏面を埋戻土121で埋め戻す。そして、埋戻土121の上方に踏掛版123を設置する。また、橋台119に橋桁125を架設する。橋梁122では、橋桁125の上面に床版127が設置され、踏掛版123の上方の埋戻し131が行われた後、舗装129が施される。第7の実施形態では、橋梁122を構築する際に、橋台119の裏側の踏掛版123として本発明のコンクリート構造物を使用する。
【0082】
踏掛版123は、図19に示すように、複数のプレキャスト板123aを連結した構造を有する。プレキャスト板123aは、いわゆるプレキャストコンクリートである。
【0083】
プレキャスト板123aは、上面に凹部125を有し、凹部125の内部と部材の外部とを結ぶ管部であるシース管(図示せず)を有する。シース管(図示せず)は、凹部125の垂直面124と他のプレキャスト板123aと対向する側面126との間に水平に設けられる。
【0084】
複数のプレキャスト板123aは、シース管(図示せず)同士が連通するように配置される。連通したシース管(図示せず)には、PC鋼棒127が挿通される。PC鋼棒127は、凹部125内に配置されたナット129を用いてプレキャスト板123aに固定される。シース管(図示せず)の内部には、グラウト材(図示せず)が充填される。また、プレキャスト板123a同士の間には、エポキシ樹脂(図示せず)が充填される。凹部235は、無収縮モルタル(図示せず)で埋め戻される。
【0085】
図18、図19に示す踏掛版123を設置するには、まず、踏掛版123の設置予定位置に、第1のプレキャスト板123aを配置する。第1のプレキャスト板123aでは、設置予定位置への配置と前後して、シース管(図示せず)にPC鋼棒127が挿入され、凹部125内に位置するPC鋼棒127の端部にはナット129が設置される。
【0086】
次に、第2のプレキャスト板123aを、シース管(図示せず)に第1のプレキャスト板123aから突出したPC鋼棒127を挿通しつつ配置する。第2のプレキャスト板123aを配置した後、第2のプレキャスト板123aの凹部125内に位置するPC鋼棒127の端部にナット129を設置し、PC鋼棒127を第1のプレキャスト板123aおよび第2のプレキャスト板に固定する。
【0087】
さらに、第3、第4…のプレキャスト板123aを、シース管にPC鋼棒127を挿通しつつ配置し、ナット129でPC鋼棒127を固定する作業を繰り返し、所定の大きさの踏掛版123を得る。
【0088】
その後、各プレキャスト板123aのシース管(図示せず)の内部にグラウト材(図示せず)を充填し、凹部235を無収縮モルタル(図示せず)で埋め戻す。また、プレキャスト板123a同士の間にエポキシ樹脂(図示せず)を充填する。
【0089】
第7の実施の形態の踏掛版123では、PC鋼棒の長さが短くて済み、扱いが容易となる。また、シース管の設置長さが短くなり、グラウト材の注入も容易となる。PC鋼棒127は、ナット129を用いて締め込むため、PC技術者が不要である。
【0090】
なお、第7の実施の形態では、PC鋼棒127を用いて複数のプレキャスト部材123aを連結したが、長ボルトを用いて連結してもよい。
【0091】
次に、第8の実施形態について説明する。図20は、第8の実施形態に係る鉄筋コンクリート版131付近の断面図を示す。
【0092】
図20に示すように、スラブ軌道139を新設する場合には、鉄筋コンクリート版131を構築した後、鉄筋コンクリート版131の上面にCAモルタル133を設置し、CAモルタル133の上面に軌道スラブ135を設置し、軌道スラブ135の上面にレール137を設置する。第8の実施形態では、スラブ軌道139を新設する際に、鉄筋コンクリート版131として本発明のコンクリート構造物を使用する。
【0093】
鉄筋コンクリート版131は、図19に示すように、複数のプレキャスト板123aを連結した構造を有する。鉄筋コンクリート版131は、第7の実施形態の踏掛版123と同様の手順で構築される。
【0094】
第8の実施の形態の鉄筋コンクリート版131では、PC鋼棒の長さが短くて済み、扱いが容易となる。また、シース管の設置長さが短くなり、グラウト材の注入も容易となる。PC鋼棒127は、ナット129を用いて締め込むため、PC技術者が不要である。
【0095】
なお、第8の実施の形態では、PC鋼棒127を用いて複数のプレキャスト部材123aを連結したが、長ボルトを用いて連結してもよい。
【0096】
以上、添付図面を参照しながら本発明にかかるコンクリート構造物およびコンクリート構造物の連結方法の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】第1の実施形態に係るコンクリート構造物1の斜視図
【図2】コンクリート構造物1の断面図
【図3】コンクリート構造物1の載荷実験の概要を示す図
【図4】PC鋼棒11の軸力と載荷荷重との関係を示す図
【図5】プレキャスト板3の連結部の開口変位と載荷荷重との関係を示す図
【図6】既設の軌道スラブ33とコンクリート構造物1とを交換する際の手順を示す図
【図7】既設の軌道スラブ33とコンクリート構造物1とを交換する際の手順を示す図
【図8】既設の軌道スラブ33とコンクリート構造物1とを交換する際の手順を示す図
【図9】既設の軌道スラブ33とコンクリート構造物1とを交換する際の手順を示す図
【図10】第2の実施形態に係るコンクリート構造物51の斜視図
【図11】コンクリート構造物51の断面図
【図12】第3の実施形態に係るコンクリート構造物65を示す図
【図13】第4の実施形態に係るコンクリート構造物77を示す図
【図14】第5の実施形態に係るPC枕木93付近の斜視図
【図15】PC枕木93の平面図
【図16】第6の実施形態に係る工事桁109付近の斜視図
【図17】工事桁109の平面図
【図18】第7の実施形態に係る踏掛版123付近の斜視図
【図19】踏掛版123の平面図
【図20】第8の実施形態に係る鉄筋コンクリート版131付近の断面図
【符号の説明】
【0098】
1、51、65、77………コンクリート構造物
3、3a、3b、53a、53b、53c、67a、67b、67c、67d、79a、79b、109a、109b、123a………プレキャスト板
9、55a、55b、69a、69b、81a、81b、95a、95b、111a、111b、125………凹部
11、61、73a、73b、85、97、113、127………PC鋼棒
13、63、75a、75b、87、99、115、129………ナット
15、59………シース管
17………グラウト材
19………エポキシ樹脂
33、34………軌道スラブ
89………分岐部
93………PC枕木
93a、93b………プレキャスト部材
109………工事桁
123………踏掛版
131………鉄筋コンクリート版
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物およびコンクリート構造物の連結方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道では、バラスト材を用いるバラスト軌道の他に、軌道スラブと呼ばれるコンクリート等の板上にレールを設けるスラブ軌道が用いられることがあった。スラブ軌道では、軌道スラブを新設する場合や、老朽化した軌道スラブを交換する場合などに、複数のプレキャストコンクリート部材を連結手段によって連結して軌道スラブを構築する方法が提案されてきた。プレキャストコンクリート部材を連結する方法としては、例えば、軌道直角方向にPC鋼棒で締め付ける方法が提案されていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2006−283316号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した連結方法では、長尺のPC鋼棒を用いるため、狭い作業スペースでのPC鋼棒の扱いが困難であった。また、既設の軌道スラブを交換する場合、レール短絡する可能性があった。さらに、軌道スラブの構築に用いられるプレキャストコンクリート部材は断面が薄いため、シース管を通すコンクリートの断面欠損が大きかった。他に、シース管を曲げモーメントが大きいレール下を通す必要がある、シース管全長にグラウト注入するために専門技術者が必要である、PC技術者が必要である等の問題点があった。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、複数のプレキャストコンクリート部材を容易に連結できるコンクリート構造物およびコンクリート構造物の連結方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するための第1の発明は、所定の面に凹部を有し、前記凹部内と部材外部とを結ぶ管部が設けられた複数のプレキャスト部材と、前記複数のプレキャスト部材を連結する連結手段と、を具備し、前記複数のプレキャスト部材が、前記管部同士が連通するように配置され、前記連結手段を用いて連結されたことを特徴とするコンクリート構造物である。
【0007】
連結手段は、例えば、管部に挿通される鋼材と、凹部内に配置され、複数のプレキャスト部材に前記鋼材を固定する固定具とからなる。
【0008】
第2の発明は、所定の面に凹部を有し、前記凹部内と部材外部とを結ぶ管部が設けられた複数のプレキャスト部材を、前記管部同士が連通するように配置し、連結手段を用いて連結することを特徴とするコンクリート構造物の連結方法である。
【0009】
第2の発明では、例えば、連結手段が、管部に挿通される鋼材と、凹部内に配置され、複数のプレキャスト部材に前記鋼材を固定する固定具とからなり、連通した管部に鋼材を挿通し、凹部内に配置された固定具を用いて複数のプレキャスト部材に鋼材を固定することにより、複数のプレキャストコンクリート部材を連結する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数のプレキャストコンクリート部材を容易に連結できるコンクリート構造物およびコンクリート構造物の連結方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面に基づいて、本発明の第1の実施の形態について詳細に説明する。図1は、第1の実施形態に係るコンクリート構造物1の斜視図であり、図2はコンクリート構造物1の断面図である。図2は、図1のA−A断面図である。
【0012】
図1および図2に示すように、コンクリート構造物1は2枚のプレキャスト板3(プレキャスト板3a、プレキャスト板3b)を連結した構造を有している。プレキャスト板3は、いわゆるプレキャストコンクリートである。
【0013】
プレキャスト板3aは、プレキャスト板3bと対向する側面4の両端に扇形形状の切欠き部5aを有する。プレキャスト板3bは、プレキャスト板3aと対向する側面4の両端に扇形形状の切欠き部5bを有する。コンクリート構造物1は、切欠き部5a、切欠き部5bからなる半円形の切欠き部5を有する。
【0014】
プレキャスト板3a、プレキャスト板3bは、それぞれ、上面7に凹部9を有する。また、凹部9の内部と部材の外部とを結ぶ管部であるシース管15を有する。シース管15は、凹部9の垂直面8とプレキャスト板3の側面4との間に水平に設けられる。
【0015】
プレキャスト板3a、プレキャスト板3bは、シース管15同士が連通するように配置される。連通したシース管15には、PC鋼棒11が挿通される。PC鋼棒11は、凹部9内に配置されたナット13を用いてプレキャスト板3a、プレキャスト板3bに固定される。シース管15の内部には、グラウト材17が充填される。また、プレキャスト板3aの側面4とプレキャスト板3bの側面4との間には、エポキシ樹脂19が充填される。凹部9は、無収縮モルタル(図示せず)で埋め戻される。
【0016】
図3は、コンクリート構造物1の載荷実験の概要を示す図である。図4は、PC鋼棒11の軸力と載荷荷重との関係を示す図、図5は、プレキャスト板3の連結部の開口変位と載荷荷重との関係を示す図である。
【0017】
図4、図5は、図3に示すようにコンクリート構造物1に2点載荷を行った場合の実験結果を示す。図4の点線21、実線23、破線25は、それぞれ、PC鋼棒11の初期導入締結力が20kN、120kN、260kNの場合のPC鋼棒11の軸力と載荷荷重との関係を示す。図5の点線27、実線29、破線31は、それぞれ、PC鋼棒11の初期導入締結力が20kN、120kN、260kNの場合のプレキャスト板3の連結部の開口変位と載荷荷重との関係を示す。図4、図5に示すように、PC鋼棒11の初期導入締結力が大きいほど、連結部の開口変位は小さい。
【0018】
次に、コンクリート構造物1を交換用の軌道スラブとして用いる場合の交換方法について説明する。図6から図9は、既設の軌道スラブ33と図1および図2に示すコンクリート構造物1とを交換する際の手順を示す図である。
【0019】
まず、図6を用いてスラブ軌道35の構造を簡単に説明する。スラブ軌道35では、コンクリート路盤36上にCAモルタル37が設けられており、CAモルタル上に軌道スラブ33、軌道スラブ34が設けられている。軌道スラブ33、軌道スラブ34上にはタイプレート41a、タイプレート41b、タイプレート41c、タイプレート41dが設けられており、これらのタイプレート上にはレール43a、レール43bが設けられている。また、コンクリート路盤36は突起39a、突起39bを有しており、軌道スラブ33、軌道スラブ34の水平方向への移動を規制している。軌道スラブ33は1枚のプレキャストコンクリート板からなる。
【0020】
このようなスラブ軌道35において、図6に示すように、経年劣化等で軌道スラブ33が損傷してしまい、交換が必要になったとする。この場合、まず、図7に示すように、若干レール43a、レール43bを持ち上げた後、タイプレート41b、タイプレート41dを軌道スラブ33から外す。そして、軌道スラブ33を切断した後、軌道スラブ33を矢印B方向に移動させてスラブ軌道35から撤去する。なお、この際、軌道スラブ33を粉砕してとりだしてもよい。スラブ軌道33を撤去した後、軌道スラブ33の下部にあるCAモルタル37を撤去する。
【0021】
次に、図8に示すように、コンクリート構造物1のプレキャスト板3aを矢印C方向に移動させ、スラブ軌道35上に配置する。プレキャスト板3aでは、スラブ軌道35上への配置と前後して、シース管15にPC鋼棒11が挿入され、凹部9内に位置するPC鋼棒11の端部にはナット13が設置される(図2)。
【0022】
次に、図9に示すように、コンクリート構造物1のプレキャスト板3bを矢印D方向に移動させ、スラブ軌道35上に配置する。プレキャスト板3bは、シース管15にプレキャスト板3aから突出したPC鋼棒11を挿通しつつ配置される。プレキャスト板3bを配置した後、プレキャスト板3bの凹部9内に位置するPC鋼棒11の端部にナット13を設置し、PC鋼棒11をプレキャスト板3a、プレキャスト板3bに固定する。そして、シース管15の内部にグラウト材17を充填し、凹部9を無収縮モルタル(図示せず)で埋め戻す。また、プレキャスト板3aとプレキャスト板3bとの間にエポキシ樹脂19を充填する(図2)。
【0023】
ここまでの工程では、CAモルタル37が撤去されているため、プレキャスト板3aとプレキャスト板3bとをコンクリート路盤36上で連結し、その後全体を持ち上げる。なお、プレキャスト板3a、プレキャスト板3bとコンクリート路盤36との間に図示しないスペーサ等を設け、全体を持ち上げた状態で作業を行ってもよい。
【0024】
最後に、プレキャスト板3の下にCAモルタル37を注入する。このようにしてコンクリート構造物1が設置される。
【0025】
このように、第1の実施形態によれば、2枚のプレキャスト板3を別々にスラブ軌道上35に設置し、その後連結することにより、突起39a、突起39bがあっても、プレキャスト板3を水平方向から挿入することができる。また、コンクリート構造物1をスラブ軌道35から撤去する場合も、連結を解除してから、2枚のプレキャスト板3を別々にスラブ軌道上から取り外すことにより、突起39a、突起39bがあっても、コンクリート構造物1をスラブ軌道35から容易に撤去することができる。
【0026】
第1の実施の形態のコンクリート構造物1では、プレキャスト板3の全長にわたる長尺のPC鋼棒を用いることなく、中央部のみをPC鋼棒11で連結するため、PC鋼棒の長さが従来よりも短くて済み、扱いが容易となる。また、シース管15の設置長さが短くなり、グラウト材17の注入も容易となる。PC鋼棒11は、ナット13を用いて締め込むため、PC技術者が不要である。
【0027】
さらに、曲げモーメントがほとんど生じない連結部中央にのみシース管15を設けることから、プレキャスト板3の断面欠損の影響が少ないうえ、曲げモーメントが大きいレール下にシース管15を通す必要がない。
【0028】
第1の実施の形態では、連結面全体に圧縮応力が加わり、連結面で曲げモーメントを伝達させることが可能となる。
なお、第1の実施の形態では、PC鋼棒11を用いてプレキャスト板3a、プレキャスト板3bを連結したが、長ボルトを用いて連結してもよい。
【0029】
次に、第2の実施形態について説明する。図10は第2の実施形態に係るコンクリート構造物51の斜視図、図11は、コンクリート構造物51の断面図である。図11は、図10のE−E断面図である。
【0030】
図10、図11に示すように、コンクリート構造物51は、プレキャスト板53a、プレキャスト板53c、プレキャスト板53bを一列に連結した構造を有している。プレキャスト板53a、プレキャスト板53b、プレキャスト板53cはいわゆるプレキャストコンクリートである。
【0031】
プレキャスト板53aは、プレキャスト板53cと対向しない側面54aに、半円形の切欠き部57aを有する。プレキャスト板53bは、プレキャスト板53cと対向しない側面54bに、半円形の切欠き部57bを有する。
【0032】
プレキャスト板53aは、上面に凹部55aを有し、凹部55aの内部と部材の外部とを結ぶ管部であるシース管59を有する。シース管59は、凹部55aの垂直面58aとプレキャスト板53cと対向する側面56aとの間に、上下2段に水平に設けられる。
【0033】
プレキャスト板53bは、上面に凹部55bを有し、凹部55bの内部と部材の外部とを結ぶ管部であるシース管59を有する。シース管59は、凹部55bの垂直面58bとプレキャスト板53cと対向する側面56bとの間に、上下2段に水平に設けられる。
【0034】
プレキャスト板53cは、上面に凹部55cを有し、凹部55cの内部と部材の外部とを結ぶ管部であるシース管59を有する。シース管59は、プレキャスト板53a側の凹部55cの垂直面58cとプレキャスト板53aと対向する側面56cとの間に、上下2段に水平に設けられる。また、プレキャスト板53b側の凹部55cの垂直面58cとプレキャスト板53bと対向する側面56cとの間にも、上下2段に水平に設けられる。
【0035】
プレキャスト板53a、プレキャスト板53c、プレキャスト板53bは、シース管59同士が連通するように配置される。連通したシース管59には、PC鋼棒61が挿通される。PC鋼棒61は、凹部55a、凹部55b、凹部55c内に配置されたナット63を用いてプレキャスト板53a、プレキャスト板53b、プレキャスト板53cに固定される。シース管59の内部には、グラウト材(図示せず)が充填される。また、プレキャスト板53aとプレキャスト板53cとの間、および、プレキャスト板53bとプレキャスト板53cとの間には、エポキシ樹脂(図示せず)が充填される。凹部55a、凹部55b、凹部55cは、無収縮モルタル(図示せず)で埋め戻される。
【0036】
コンクリート構造物51を第1の実施の形態のコンクリート構造物1と同様に交換用の軌道スラブとして用いる場合、3枚のプレキャスト板53a、プレキャスト板53b、プレキャスト板53cからなる構造とすることにより、スラブ軌道に容易に設置・撤去できる。
【0037】
第2の実施の形態のコンクリート構造物51では、PC鋼棒の長さが従来よりも短くて済み、扱いが容易となる。また、シース管59の設置長さが短くなり、グラウト材の注入も容易となる。PC鋼棒61は、ナット63を用いて締め込むため、PC技術者が不要である。
【0038】
なお、第2の実施の形態では、PC鋼棒61を用いてプレキャスト板53a、プレキャスト板53b、プレキャスト板53cを連結したが、長ボルトを用いて連結してもよい。
【0039】
次に、第3の実施形態について説明する。図12は第3の実施形態に係るコンクリート構造物65を示す図である。
【0040】
図12に示すように、コンクリート構造物65は、プレキャスト板67a、プレキャスト板67cおよびプレキャスト板67d、プレキャスト板67bを一列に連結した構造を有し、中央には中空部66がある。プレキャスト板67a、プレキャスト板67b、プレキャスト板67c、プレキャスト板67dはいわゆるプレキャストコンクリートである。
【0041】
プレキャスト板67aは、プレキャスト板67cおよびプレキャスト板67dと対向しない側面70aに、半円形の切欠き部71aを有する。プレキャスト板67bは、プレキャスト板67cおよびプレキャスト板67dと対向しない側面70bに、半円形の切欠き部71bを有する。
【0042】
プレキャスト板67aは、上面に凹部69aを有し、凹部69aの内部と部材の外部とを結ぶ管部であるシース管(図示せず)を有する。シース管(図示せず)は、凹部69aの垂直面72aとプレキャスト板67cおよびプレキャスト板67dと対向する側面68aとの間に水平に設けられる。
【0043】
プレキャスト板67bは、上面に凹部69bを有し、凹部69bの内部と部材の外部とを結ぶ管部であるシース管(図示せず)を有する。シース管(図示せず)は、凹部69bの垂直面72bとプレキャスト板67cおよびプレキャスト板67dと対向する側面68bとの間に水平に設けられる。
【0044】
プレキャスト板67cは、上面に凹部69cを有し、凹部69cの内部と部材の外部とを結ぶ管部であるシース管(図示せず)を有する。シース管(図示せず)は、プレキャスト板67a側の凹部69cの垂直面72cとプレキャスト板67aと対向する側面68cとの間に水平に設けられる。また、プレキャスト板67b側の凹部69cの垂直面72cとプレキャスト板67bと対向する側面68cとの間に水平に設けられる。
【0045】
プレキャスト板67dは、上面に凹部69dを有し、凹部69dの内部と部材の外部とを結ぶ管部であるシース管(図示せず)を有する。シース管(図示せず)は、プレキャスト板67a側の凹部69dの垂直面72dとプレキャスト板67aと対向する側面68dとの間に水平に設けられる。また、プレキャスト板67b側の凹部69dの垂直面72dとプレキャスト板67bと対向する側面68dとの間に水平に設けられる。
【0046】
プレキャスト板67a、プレキャスト板67cおよびプレキャスト板67d、プレキャスト板67bは、シース管(図示せず)同士が連通するように配置される。連通したシース管(図示せず)には、PC鋼棒73a、PC鋼棒73bが挿通される。PC鋼棒73a、PC鋼棒73bは、凹部69a、凹部69b、凹部69c、凹部69d内に配置されたナット75a、ナット75b、ナット75c、ナット75dを用いてプレキャスト板67a、プレキャスト板67b、プレキャスト板67c、プレキャスト板67dに固定される。シース管(図示せず)の内部には、グラウト材(図示せず)が充填される。また、プレキャスト板67aとプレキャスト板67cおよびプレキャスト板67dとの間、および、プレキャスト板67bとプレキャスト板67cおよびプレキャスト板67dとの間には、エポキシ樹脂(図示せず)が充填される。凹部69a、凹部69b、凹部69c、凹部69dは、無収縮モルタル(図示せず)で埋め戻される。
【0047】
コンクリート構造物65を第1の実施の形態のコンクリート構造物1と同様に交換用の軌道スラブとして用いる場合、4枚のプレキャスト板67a、プレキャスト板67b、プレキャスト板67c、プレキャスト板67dからなる構造とすることにより、スラブ軌道に容易に設置・撤去できる。
【0048】
第3の実施の形態のコンクリート構造物65では、PC鋼棒の長さが従来よりも短くて済み、扱いが容易となる。また、シース管の設置長さが短くなり、グラウト材の注入も容易となる。PC鋼棒73a、PC鋼棒73bは、ナット75a、ナット75b、ナット75c、ナット75dを用いて締め込むため、PC技術者が不要である。
【0049】
なお、第3の実施の形態では、PC鋼棒73a、PC鋼棒73bを用いてプレキャスト板67a、プレキャスト板67b、プレキャスト板67c、プレキャスト板67dを連結したが、長ボルトを用いて連結してもよい。
【0050】
次に、第4の実施形態について説明する。図13は第4の実施形態に係るコンクリート構造物77を示す図である。図13に示すように、コンクリート構造物77は、プレキャスト板79a、プレキャスト板79bを連結した構造を有し、連結部は台形状となっている。プレキャスト板79a、プレキャスト板79bは、いわゆるプレキャストコンクリートである。
【0051】
プレキャスト板79aは、プレキャスト板79bと対向しない側面78aに、半円形の切欠き部83aを有する。プレキャスト板79bは、プレキャスト板79aと対向しない側面78bに、半円形の切欠き部83bを有する。
【0052】
プレキャスト板79aは、上面に凹部81aを有し、凹部81aの内部と部材の外部とを結ぶ管部であるシース管(図示せず)を有する。シース管(図示せず)は、凹部81aの垂直面82aとプレキャスト板79bと対向する側面80aとの間に水平に設けられる。
【0053】
プレキャスト板79bは、上面に凹部81bを有し、凹部81bの内部と部材の外部とを結ぶ管部であるシース管(図示せず)を有する。シース管(図示せず)は、凹部81bの垂直面82bとプレキャスト板79aと対向する側面80bとの間に水平に設けられる。
【0054】
プレキャスト板79aとプレキャスト板79bとは、シース管(図示せず)同士が連通するように配置される。連通したシース管(図示せず)には、PC鋼棒85が挿通される。PC鋼棒85は、凹部81a、凹部81b内に配置されたナット87を用いてプレキャスト板79a、プレキャスト板79bに固定される。シース管(図示せず)の内部には、グラウト材(図示せず)が充填される。また、プレキャスト板79aとプレキャスト板79bとの間には、エポキシ樹脂(図示せず)が充填される。凹部81a、凹部81bは、無収縮モルタル(図示せず)で埋め戻される。
【0055】
コンクリート構造物77を第1の実施の形態のコンクリート構造物1と同様に交換用の軌道スラブとして用いる場合、2枚のプレキャスト板79a、プレキャスト板79bからなる構造とすることにより、スラブ軌道に容易に設置・撤去できる。
【0056】
第4の実施の形態のコンクリート構造物77では、PC鋼棒の長さが従来よりも短くて済み、扱いが容易となる。また、シース管の設置長さが短くなり、グラウト材の注入も容易となる。PC鋼棒85は、ナット87を用いて締め込むため、PC技術者が不要である。
【0057】
なお、第4の実施の形態では、PC鋼棒85を用いてプレキャスト部材79aとプレキャスト部材79bとを連結したが、長ボルトを用いて連結してもよい。
【0058】
次に、第5の実施形態について説明する。図14は、第5の実施形態に係るPC枕木93付近の斜視図を、図15は、PC枕木93の平面図を示す。図15は、図14の範囲Fに示す部分を上方から見た図である。
【0059】
図14に示すように、鉄道において、PC枕木93上にレール91を設置する場合、分岐部89のPC枕木93は長尺となる。第5の実施形態では、鉄道の分岐部89を構築する際に、PC枕木93として本発明のコンクリート構造物を使用する。
【0060】
分岐部89のPC枕木93は、図15に示すように、プレキャスト部材93a、プレキャスト部材93bを連結した構造を有する。プレキャスト部材93a、プレキャスト部材93bは、いわゆるプレキャストコンクリートである。
【0061】
プレキャスト部材93aは、上面に凹部95aを有し、凹部95aの内部と部材の外部とを結ぶ管部であるシース管(図示せず)を有する。シース管(図示せず)は、凹部95aの垂直面98aとプレキャスト部材93bと対向する端面100aとの間に水平に設けられる。
【0062】
プレキャスト部材93bは、上面に凹部95bを有し、凹部95bの内部と部材の外部とを結ぶ管部であるシース管(図示せず)を有する。シース管(図示せず)は、凹部95bの垂直面98bとプレキャスト部材93aと対向する端面100bとの間に水平に設けられる。
【0063】
プレキャスト部材93aとプレキャスト部材93bとは、シース管(図示せず)同士が連通するように配置される。連通したシース管(図示せず)には、PC鋼棒97が挿通される。PC鋼棒97は、凹部95a、凹部95b内に配置されたナット99を用いてプレキャスト部材93a、プレキャスト部材93bに固定される。シース管(図示せず)の内部には、グラウト材(図示せず)が充填される。また、プレキャスト部材93aとプレキャスト部材93bとの間には、エポキシ樹脂(図示せず)が充填される。凹部95a、凹部95bは、無収縮モルタル(図示せず)で埋め戻される。
【0064】
図15に示すPC枕木93を設置するには、まず、枕木の設置予定位置に、プレキャスト部材93aを配置する。プレキャスト部材93aでは、設置予定位置への設置と前後して、シース管(図示せず)にPC鋼棒97が挿入され、凹部95a内に位置するPC鋼棒97の端部にはナット99が設置される。
【0065】
次に、プレキャスト部材93bを、シース管(図示せず)にプレキャスト部材93aから突出したPC鋼棒97を挿通しつつ配置する。プレキャスト部材93bを配置した後、プレキャスト部材93bの凹部95b内に位置するPC鋼棒97の端部にナット99を設置し、PC鋼棒97をプレキャスト部材93a、プレキャスト部材93bに固定する。そして、シース管(図示せず)の内部にグラウト材(図示せず)を充填し、凹部95a、凹部95bを無収縮モルタル(図示せず)で埋め戻す。また、プレキャスト部材93aとプレキャスト部材93bとの間にエポキシ樹脂(図示せず)を充填する。
【0066】
第5の実施の形態のPC枕木93では、中央部のみをPC鋼棒97で連結するため、PC鋼棒の長さが短くて済み、扱いが容易となる。また、シース管の設置長さが短くなり、グラウト材の注入も容易となる。PC鋼棒97は、ナット99を用いて締め込むため、PC技術者が不要である。
【0067】
さらに、曲げモーメントがほとんど生じない連結部中央にのみシース管を設けることから、PC枕木93の断面欠損の影響が少ないうえ、曲げモーメントが大きいレール下にシース管を通す必要がない。
【0068】
なお、第5の実施の形態では、PC鋼棒97を用いてプレキャスト部材93aとプレキャスト部材93bとを連結したが、長ボルトを用いて連結してもよい。
【0069】
次に、第6の実施形態について説明する。図16は、第6の実施形態に係る工事桁109付近の斜視図を、図17は、工事桁109の平面図を示す。
【0070】
図16に示すように、既設盛土101上に枕木103が設置され、その上にレール107が敷設された鉄道において、トンネル105を構築する場合、トンネル105構築予定位置の枕木103を撤去して工事桁109を設置し、トンネル105を掘削する。第6の実施形態では、既設盛土101にトンネル105を構築する際に、工事桁109として本発明のコンクリート構造物を使用する。
【0071】
工事桁109は、図17に示すように、プレキャスト板109a、プレキャスト板109bを連結した構造を有する。プレキャスト板109a、プレキャスト板109bは、いわゆるプレキャストコンクリートである。
【0072】
プレキャスト板109aは、上面に凹部111aを有し、凹部111aの内部と部材の外部とを結ぶ管部であるシース管(図示せず)を有する。シース管(図示せず)は、凹部111aの垂直面110aとプレキャスト板109bと対向する側面112aとの間に水平に設けられる。
【0073】
プレキャスト板109bは、上面に凹部111bを有し、凹部111bの内部と部材の外部とを結ぶ管部であるシース管(図示せず)を有する。シース管(図示せず)は、凹部111bの垂直面110bとプレキャスト板109aと対向する側面112bとの間に水平に設けられる。
【0074】
プレキャスト板109aとプレキャスト板109bとは、シース管(図示せず)同士が連通するように配置される。連通したシース管(図示せず)には、PC鋼棒113が挿通される。PC鋼棒113は、凹部111a、凹部111b内に配置されたナット115を用いてプレキャスト板109a、プレキャスト板109bに固定される。シース管(図示せず)の内部には、グラウト材(図示せず)が充填される。また、プレキャスト板109aとプレキャスト板109bとの間には、エポキシ樹脂(図示せず)が充填される。凹部111a、凹部111bは、無収縮モルタル(図示せず)で埋め戻される。
【0075】
図16、図17に示す工事桁109を設置するには、まず、工事桁109の設置予定位置に、プレキャスト板109aを配置する。プレキャスト板109aでは、設置予定位置への配置と前後して、シース管(図示せず)にPC鋼棒113が挿入され、凹部111a内に位置するPC鋼棒113の端部にはナット115が設置される。
【0076】
次に、プレキャスト板109bを、シース管(図示せず)にプレキャスト板109aから突出したPC鋼棒113を挿通しつつ配置する。プレキャスト板109bを配置した後、プレキャスト板109bの凹部111b内に位置するPC鋼棒113の端部にナット115を設置し、PC鋼棒113をプレキャスト板109a、プレキャスト板109bに固定する。そして、シース管(図示せず)の内部にグラウト材(図示せず)を充填し、凹部111a、凹部111bを無収縮モルタル(図示せず)で埋め戻す。また、プレキャスト板109aとプレキャスト板109bとの間にエポキシ樹脂(図示せず)を充填する。
【0077】
第6の実施の形態の工事桁109では、中央部のみをPC鋼棒113で連結するため、PC鋼棒の長さが短くて済み、扱いが容易となる。また、シース管の設置長さが短くなり、グラウト材の注入も容易となる。PC鋼棒113は、ナット115を用いて締め込むため、PC技術者が不要である。
【0078】
さらに、曲げモーメントがほとんど生じない連結部中央にのみシース管を設けることから、工事桁109の断面欠損の影響が少ないうえ、曲げモーメントが大きいレール下にシース管を通す必要がない。
【0079】
なお、第6の実施の形態では、PC鋼棒113を用いてプレキャスト部材109aとプレキャスト部材109bとを連結したが、長ボルトを用いて連結してもよい。
【0080】
次に、第7の実施形態について説明する。図18は、第7の実施形態に係る踏掛版123付近の斜視図を、図19は、踏掛版123の平面図を示す。
【0081】
図18に示すように、橋梁122を構築する場合、地盤117を掘削して橋台119を設置し、橋台119の裏面を埋戻土121で埋め戻す。そして、埋戻土121の上方に踏掛版123を設置する。また、橋台119に橋桁125を架設する。橋梁122では、橋桁125の上面に床版127が設置され、踏掛版123の上方の埋戻し131が行われた後、舗装129が施される。第7の実施形態では、橋梁122を構築する際に、橋台119の裏側の踏掛版123として本発明のコンクリート構造物を使用する。
【0082】
踏掛版123は、図19に示すように、複数のプレキャスト板123aを連結した構造を有する。プレキャスト板123aは、いわゆるプレキャストコンクリートである。
【0083】
プレキャスト板123aは、上面に凹部125を有し、凹部125の内部と部材の外部とを結ぶ管部であるシース管(図示せず)を有する。シース管(図示せず)は、凹部125の垂直面124と他のプレキャスト板123aと対向する側面126との間に水平に設けられる。
【0084】
複数のプレキャスト板123aは、シース管(図示せず)同士が連通するように配置される。連通したシース管(図示せず)には、PC鋼棒127が挿通される。PC鋼棒127は、凹部125内に配置されたナット129を用いてプレキャスト板123aに固定される。シース管(図示せず)の内部には、グラウト材(図示せず)が充填される。また、プレキャスト板123a同士の間には、エポキシ樹脂(図示せず)が充填される。凹部235は、無収縮モルタル(図示せず)で埋め戻される。
【0085】
図18、図19に示す踏掛版123を設置するには、まず、踏掛版123の設置予定位置に、第1のプレキャスト板123aを配置する。第1のプレキャスト板123aでは、設置予定位置への配置と前後して、シース管(図示せず)にPC鋼棒127が挿入され、凹部125内に位置するPC鋼棒127の端部にはナット129が設置される。
【0086】
次に、第2のプレキャスト板123aを、シース管(図示せず)に第1のプレキャスト板123aから突出したPC鋼棒127を挿通しつつ配置する。第2のプレキャスト板123aを配置した後、第2のプレキャスト板123aの凹部125内に位置するPC鋼棒127の端部にナット129を設置し、PC鋼棒127を第1のプレキャスト板123aおよび第2のプレキャスト板に固定する。
【0087】
さらに、第3、第4…のプレキャスト板123aを、シース管にPC鋼棒127を挿通しつつ配置し、ナット129でPC鋼棒127を固定する作業を繰り返し、所定の大きさの踏掛版123を得る。
【0088】
その後、各プレキャスト板123aのシース管(図示せず)の内部にグラウト材(図示せず)を充填し、凹部235を無収縮モルタル(図示せず)で埋め戻す。また、プレキャスト板123a同士の間にエポキシ樹脂(図示せず)を充填する。
【0089】
第7の実施の形態の踏掛版123では、PC鋼棒の長さが短くて済み、扱いが容易となる。また、シース管の設置長さが短くなり、グラウト材の注入も容易となる。PC鋼棒127は、ナット129を用いて締め込むため、PC技術者が不要である。
【0090】
なお、第7の実施の形態では、PC鋼棒127を用いて複数のプレキャスト部材123aを連結したが、長ボルトを用いて連結してもよい。
【0091】
次に、第8の実施形態について説明する。図20は、第8の実施形態に係る鉄筋コンクリート版131付近の断面図を示す。
【0092】
図20に示すように、スラブ軌道139を新設する場合には、鉄筋コンクリート版131を構築した後、鉄筋コンクリート版131の上面にCAモルタル133を設置し、CAモルタル133の上面に軌道スラブ135を設置し、軌道スラブ135の上面にレール137を設置する。第8の実施形態では、スラブ軌道139を新設する際に、鉄筋コンクリート版131として本発明のコンクリート構造物を使用する。
【0093】
鉄筋コンクリート版131は、図19に示すように、複数のプレキャスト板123aを連結した構造を有する。鉄筋コンクリート版131は、第7の実施形態の踏掛版123と同様の手順で構築される。
【0094】
第8の実施の形態の鉄筋コンクリート版131では、PC鋼棒の長さが短くて済み、扱いが容易となる。また、シース管の設置長さが短くなり、グラウト材の注入も容易となる。PC鋼棒127は、ナット129を用いて締め込むため、PC技術者が不要である。
【0095】
なお、第8の実施の形態では、PC鋼棒127を用いて複数のプレキャスト部材123aを連結したが、長ボルトを用いて連結してもよい。
【0096】
以上、添付図面を参照しながら本発明にかかるコンクリート構造物およびコンクリート構造物の連結方法の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】第1の実施形態に係るコンクリート構造物1の斜視図
【図2】コンクリート構造物1の断面図
【図3】コンクリート構造物1の載荷実験の概要を示す図
【図4】PC鋼棒11の軸力と載荷荷重との関係を示す図
【図5】プレキャスト板3の連結部の開口変位と載荷荷重との関係を示す図
【図6】既設の軌道スラブ33とコンクリート構造物1とを交換する際の手順を示す図
【図7】既設の軌道スラブ33とコンクリート構造物1とを交換する際の手順を示す図
【図8】既設の軌道スラブ33とコンクリート構造物1とを交換する際の手順を示す図
【図9】既設の軌道スラブ33とコンクリート構造物1とを交換する際の手順を示す図
【図10】第2の実施形態に係るコンクリート構造物51の斜視図
【図11】コンクリート構造物51の断面図
【図12】第3の実施形態に係るコンクリート構造物65を示す図
【図13】第4の実施形態に係るコンクリート構造物77を示す図
【図14】第5の実施形態に係るPC枕木93付近の斜視図
【図15】PC枕木93の平面図
【図16】第6の実施形態に係る工事桁109付近の斜視図
【図17】工事桁109の平面図
【図18】第7の実施形態に係る踏掛版123付近の斜視図
【図19】踏掛版123の平面図
【図20】第8の実施形態に係る鉄筋コンクリート版131付近の断面図
【符号の説明】
【0098】
1、51、65、77………コンクリート構造物
3、3a、3b、53a、53b、53c、67a、67b、67c、67d、79a、79b、109a、109b、123a………プレキャスト板
9、55a、55b、69a、69b、81a、81b、95a、95b、111a、111b、125………凹部
11、61、73a、73b、85、97、113、127………PC鋼棒
13、63、75a、75b、87、99、115、129………ナット
15、59………シース管
17………グラウト材
19………エポキシ樹脂
33、34………軌道スラブ
89………分岐部
93………PC枕木
93a、93b………プレキャスト部材
109………工事桁
123………踏掛版
131………鉄筋コンクリート版
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の面に凹部を有し、前記凹部内と部材外部とを結ぶ管部が設けられた複数のプレキャスト部材と、
前記複数のプレキャスト部材を連結する連結手段と、
を具備し、
前記複数のプレキャスト部材が、前記管部同士が連通するように配置され、前記連結手段を用いて連結されたことを特徴とするコンクリート構造物。
【請求項2】
前記連結手段が、
前記管部に挿通される鋼材と、
前記凹部内に配置され、前記複数のプレキャスト部材に前記鋼材を固定する固定具と、
からなることを特徴とする請求項1記載のコンクリート構造物。
【請求項3】
所定の面に凹部を有し、前記凹部内と部材外部とを結ぶ管部が設けられた複数のプレキャスト部材を、前記管部同士が連通するように配置し、連結手段を用いて連結することを特徴とするコンクリート構造物の連結方法。
【請求項4】
前記連結手段が、
前記管部に挿通される鋼材と、
前記凹部内に配置され、前記複数のプレキャスト部材に前記鋼材を固定する固定具と、
からなり、
連通した前記管部に鋼材を挿通し、前記凹部内に配置された固定具を用いて前記複数のプレキャスト部材に前記鋼材を固定することを特徴とする請求項3記載のコンクリート構造物の連結方法。
【請求項1】
所定の面に凹部を有し、前記凹部内と部材外部とを結ぶ管部が設けられた複数のプレキャスト部材と、
前記複数のプレキャスト部材を連結する連結手段と、
を具備し、
前記複数のプレキャスト部材が、前記管部同士が連通するように配置され、前記連結手段を用いて連結されたことを特徴とするコンクリート構造物。
【請求項2】
前記連結手段が、
前記管部に挿通される鋼材と、
前記凹部内に配置され、前記複数のプレキャスト部材に前記鋼材を固定する固定具と、
からなることを特徴とする請求項1記載のコンクリート構造物。
【請求項3】
所定の面に凹部を有し、前記凹部内と部材外部とを結ぶ管部が設けられた複数のプレキャスト部材を、前記管部同士が連通するように配置し、連結手段を用いて連結することを特徴とするコンクリート構造物の連結方法。
【請求項4】
前記連結手段が、
前記管部に挿通される鋼材と、
前記凹部内に配置され、前記複数のプレキャスト部材に前記鋼材を固定する固定具と、
からなり、
連通した前記管部に鋼材を挿通し、前記凹部内に配置された固定具を用いて前記複数のプレキャスト部材に前記鋼材を固定することを特徴とする請求項3記載のコンクリート構造物の連結方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2008−248648(P2008−248648A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−94084(P2007−94084)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000173784)財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000173784)財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【Fターム(参考)】
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