説明

コンクリート構造物の補強構造

【課題】本発明は、十分な補強効果によって、コンクリート構造物の耐力を向上させることができるとともに、経済効果の高いコンクリート構造物の補強構造を提供することを目的とする。
【解決手段】貯水空間1aへ出入りする普通人の通過を許容するマンホール部40を備えた天井部10と、側壁部20と、底盤部30とで構成され、地下に設置された円形防火水槽1の補強構造であって、天井部10の天井下面10aに貼り付ける天井用補強シート60aと、側壁部20の内側面20aに貼り付ける側壁用補強シート60bと、底盤部30に固着する補強コンクリート80と、天井部10を底盤部30から支持する補強支柱70とで構成し、補強支柱70を、マンホール部40を通過可能な形状で形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、底盤部と、側壁部と、天井部とで構成されたコンクリート構造物の補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、底盤部と、側壁部と、天井部とで構成するコンクリート構造物の補強構造として、特許文献1に示すように、躯体内部側の面、すなわち底盤部の上面と、側壁部の内側面と、天井部の底面とに繊維シートを貼り付けて補強する補強構造が提案されている。
【0003】
しかし、老朽化したコンクリート構造物の耐力を向上するための補強をすべて繊維シートで行うと、繊維シートが非常に高価であるため、補強に係る費用が高額になる。
【0004】
そこで、上記特許文献1では、躯体内部側の面に繊維シートを貼り付けるとともに、せん断力が大きく係る隅角部の内面側にモルタルを塗布することで、貼り付ける繊維シートの層数を低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−48399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上載荷重が作用する天井部への曲げの影響が小さい小断面のコンクリート構造物であれば、上記特許文献1での補強構造によって十分に補強効果を得ることができるが、上載荷重が作用する天井部への曲げの影響が大きい大断面のコンクリート構造物の場合、殊に天井部の中央部には大きな曲げ荷重が作用するため、上記特許文献1での補強構造では十分に耐力向上を図ることはできなかった。
【0007】
そこで、本発明は、十分な補強効果によって、コンクリート構造物の耐力を向上させることができるとともに、経済効果の高いコンクリート構造物の補強構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、底盤部と、側壁部と、天井部とで構成されたコンクリート構造物の補強構造であって、前記天井部の下面に貼り付ける天井部補強シートと、前記側壁部の躯体内部側の側面に貼り付ける側壁部補強シートと、前記底盤部の上面に固着する補強コンクリートと、前記天井部を前記底盤部から支持する支柱とで構成することを特徴とする。
【0009】
上記天井部補強シート及び側壁部補強シートは、補強繊維シートであることをいい、さらに詳しくは、炭素繊維シートあるいはアラミド繊維シートであることを含む。
【0010】
上記構成により、十分な補強効果によって、コンクリート構造物の耐力を向上することができる。
詳しくは、天井部及び側壁部を施工容易な補強シートで補強し、前記底盤部を施工容易な補強コンクリートで補強するとともに、上載荷重及び自重によってもっとも曲げ加重が作用する天井部を支柱で支持しているため、天井部、側壁部及び底盤部のそれぞれを施工容易な補強方法で確実に補強でき、さらに、天井部に作用する負荷を底盤部に分散できるため、確実にコンクリート構造物の耐力を向上することができる。
【0011】
また、天井部を支柱で支持していない場合と比較して、天井部に作用する曲げ応力が低減できるとともに、隅角部に作用するせん断力も低減できるため、天井部の下面に貼り付ける天井部補強シートの層数を低減でき、補強に係る費用を低減することができるとともに、補強シート貼り付けのための工期及び工数を低減できる。
【0012】
また、天井部及び側壁部を補強シートで補強しているため、例えば、コンクリート等を増打ちして天井部及び側壁部の壁厚を増加させる補強方法と比較して、自重増加による補強効果の低減を防止するとともに、コンクリート等を増打ちするための困難な型枠設置等の手間も省けるため、より効率的な補強を実現することができる。
【0013】
また、湿潤状態である可能性が高く、自重増加による補強効果の低下が極めて少ない底盤部を補強コンクリートで補強したことによって、補強シートを底盤部の上面に貼り付けて補強する場合と比較して、確実に補強できるとともに、補強に係る費用を低減することができる。
【0014】
詳しくは、底盤部が湿潤状態である場合、湿潤状態での貼り付けができない補強シートの場合、一旦底盤部を加熱等して乾燥させてから補強シートを貼り付ける必要がある。さらに、補強シートを貼り付け後の接着剤が硬化するまでの養生中も底盤部を乾燥状態に保つ必要がある。この補強シートの貼り付けにおける底盤部の乾燥状態が不十分であれば、底盤部の上面と補強シートとの接着強度が確保できず、十分な補強効果を得ることはできない。また、コンクリート構造物の躯体内部が略閉鎖空間である場合、底盤部の乾燥のために、バーナー等の火気を使用すると略閉鎖空間である躯体内部の酸素濃度が低下し、酸欠状態となる危険性も生じてくる。
【0015】
これに対し、底盤部を補強コンクリートで補強する場合、生コンクリートを打設した後、硬化するまでの養生期間は湿潤状態が適しており、十分な強度を発揮できる補強コンクリートを構築することができる。
【0016】
さらにまた、天井部と側壁部とに補強シートを貼り付け、底盤部に補強コンクリートを構築してコンクリート構造物を補強できるため、例えば、既に設置されている既設のコンクリート構造物を補強する場合、既設のコンクリート構造物を有効活用しながら補強することができる。したがって、例えば、既設のコンクリート構造物を撤去して新たにコンクリート構造物を構築する場合に発生する廃棄物が生じることなく、環境に優しい補強構造を実現することができる。
【0017】
この発明の態様として、前記コンクリート構造物を、前記天井部に、前記躯体内部へ出入りする普通人の通過を許容するマンホールを備え、地下に設置された地下コンクリート構造物とし、前記支柱を前記マンホールを通過可能な形状で形成することができる。
上記地下コンクリート構造物は、コンクリート製防火水槽、あるいはコンクリート製人孔であることを含む。
【0018】
これにより、地上のマンホール付近を占用し、マンホールから材料投入等を行って施工できるため、地下コンクリート構造物を掘り出す開削工法による補強や新設の場合と比較して、小規模な施工で確実に補強できる。
【0019】
したがって、大規模な占用作業を不要とするとともに、大規模に占用することによって生じやすい交通渋滞や、オープンで施工することによって生じやすい騒音問題等も低減でき、補強工事に伴う周辺環境への影響が少なくなり、補強工事に関係する周辺住民を含めた関係者の満足度を向上することができる。
【0020】
また、この発明の態様として、前記支柱を、前記底盤部の上面から前記天井部の下面までの躯体内空高さより低く、前記補強コンクリートの上面から前記天井部の下面までの補強後躯体内空高さより高い高さで構成し、前記支柱の上端を前記天井部の下面に固定するとともに、前記支柱の下端を前記底盤部の上面から離間させた位置で固定することができる。
【0021】
上記構成により、容易に支柱を設置することができるともに、十分の支持効果を得ることができる。
詳しくは、前記支柱を、前記底盤部の上面から前記天井部の下面までの躯体内空高さと同じ高さで形成した場合、コンクリート構造物の変形や、天井部の下面及び底盤部の上面の不陸によって所望の位置に支柱を設置できないおそれがある。
【0022】
逆に、前記支柱の高さが補強後躯体内空高さより低い場合、支柱が補強コンクリート及び天井部のうち少なくとも一方から離れてしまい、底盤部から天井部を十分に支持できない。
【0023】
これに対し、前記支柱の高さを、前記躯体内空高さより低く、前記補強後躯体内空高さより高く構成し、前記支柱上端を前記天井部の下面に固定するとともに、前記支柱下端を前記底盤部の上面から離間させた位置で固定することによって、支柱を容易に所望の箇所に設置するとともに、補強コンクリートを介して底盤部から天井部を支柱によって確実に支持することができる。
【0024】
また、この発明の態様として、前記側壁部補強シートを、前記側壁部に貼り付けた状態において、下端が前記補強コンクリートの上面より下方となる高さで形成することができる。
【0025】
上記構成により、側壁部を補強する側壁部補強シートと、底盤部を補強する補強コンクリートとを一体化することができ、それぞれが一体化しない補強構造と比べて、補強効果を向上することができる。
【0026】
また、補強前のコンクリート構造物の躯体内部の面が、補強後の躯体内部に露出しないため、補強後の躯体内部に貯留する液体や気体等によってコンクリート構造物の躯体内部の表面の劣化が促進し、補強したコンクリート構造物の耐力を低下するおそれを防止することができる。
【0027】
また、この発明の態様として、前記補強コンクリートにかかる負荷を前記底盤部に伝達する負荷伝達手段を備えることができる。
上記負荷伝達手段は、せん断伝達筋であることをいう。
これにより、底盤部と補強コンクリートとの一体化を高めることができ、補強コンクリートと、補強コンクリートによって補強された底盤部との耐久性を向上することができる。
【0028】
また、この発明は、底盤部と、側壁部と、天井部とで構成するとともに、地下に設置され、前記天井部に、躯体内部へ出入りする普通人の通過を許容するマンホールを備えたコンクリート構造物の補強構造であって、前記底盤部の上面に固着する補強コンクリートと、前記天井部の下面に貼り付ける天井部補強シートと、下端が前記補強コンクリートの上面より下方となる高さで形成し、前記側壁部の前記躯体内部側の側面に貼り付ける側壁部補強シートと、前記天井部を前記底盤部から支持する支柱とで構成し、該支柱の上端に、前記天井部の下面に固定する固定ボルトの貫通を許容する所定数の貫通孔を有し、前記マンホールの内径以下の径で形成する上フランジを備えるとともに、該支柱の下端に、前記上フランジと同形状で形成する下フランジを備え、前記支柱の高さを、前記底盤部の上面から前記天井部の下面までの躯体内空高さより低く、前記補強コンクリート上面から前記天井部の下面までの補強後躯体内空高さより高い高さで構成し、前記支柱を、前記上フランジを前記天井部の下面に前記所定本数の固定ボルトで固定するとともに、前記下フランジを前記底盤部の上面から離間させた位置で、前記所定本数以下の本数の固定ボルトで固定して、前記補強コンクリートで前記下フランジを巻き込んで設置し、前記天井部補強シートの表面、及び前記側壁部補強シートにおける前記補強コンクリートの上面より下方に位置する被露出部を除く側壁部補強シートの表面に表面皮膜を塗布し、前記被露出部に止水手段を備えることを特徴とする。
【0029】
上記表面皮膜は、エポキシ樹脂やアクリル樹脂等の樹脂塗装による単層又は複層の皮膜であることを含む。
上記構成により、天井部、側壁部及び底盤部のそれぞれを施工容易な補強方法で確実に補強でき、さらに、天井部に作用する負荷を底盤部に分散できるため、十分な補強効果によって、確実にコンクリート構造物の耐力を向上することができる。
【0030】
また、天井部を支柱で支持していない場合と比較して、天井部に作用する曲げ応力が低減できるとともに、隅角部に作用するせん断力も低減できるため、天井部の下面に貼り付ける天井部補強シートの層数を低減でき、補強に係る費用を低減することができるとともに、補強シート貼り付けのための工期及び工数を低減できる。
【0031】
また、天井部及び側壁部を補強シートで補強しているため、コンクリート等を増打ちして天井部及び側壁部の壁厚を増加させる補強方法と比較して、自重増加による補強効果の低減を防止するとともに、コンクリート等を増打ちするための困難な型枠設置等の手間も省けるため、より効率的な補強を実現することができる。
【0032】
また、湿潤状態である可能性が高く、自重増加による補強効果の低下が極めて少ない底盤部を補強コンクリートで補強したことによって、底盤部の上面に補強シートを貼り付けて補強する場合と比較して、十分な強度を発揮できる補強コンクリートを構築することによって、安全且つ確実に補強できるとともに、補強に係る費用をさらに低減することができる。
【0033】
また、前記天井部に備えた、前記躯体内部へ出入りする普通人の通過を許容するマンホールを通過可能な形状で支柱を形成しているため、地上のマンホール付近を占用し、マンホールから材料投入等を行って施工できるため、地下コンクリート構造物を掘り出す開削工法による補強や新設の場合と比較して、小規模な施工で確実に補強できる。
【0034】
したがって、大規模な占用作業を不要とするとともに、大規模に占用することによって生じやすい交通渋滞や、オープンで施工することによって生じやすい騒音問題等も低減でき、補強工事に伴う周辺環境への影響が少なくなり、補強工事に関係する周辺住民を含めた関係者の満足度を向上することができる。
【0035】
また、前記支柱を、前記底盤部の上面から前記天井部の下面までの躯体内空高さより低く、前記補強コンクリートの上面から前記天井部の下面までの補強後躯体内空高さより高い高さで構成し、前記支柱上端を前記天井部の下面に固定するとともに、前記支柱下端を前記底盤部の上面から離間させた位置で固定するため、支柱を容易に所望の箇所に設置するとともに、補強コンクリートを介して底盤部から天井部を支柱によって確実に支持することができる。
【0036】
また、前記側壁部補強シートを、前記側壁部に貼り付けた状態において、下端が前記補強コンクリートの上面より下方となる高さで形成しているため、側壁部を補強する側壁部補強シートと、底盤部を補強する補強コンクリートとを一体化することができ、それぞれが一体化しない補強構造と比べて、確実な補強効果を得ることができる。
【0037】
また、補強前のコンクリート構造物の躯体内部の面が、補強後の躯体内部に露出しないため、躯体内部に貯留する液体や気体等によってコンクリート構造物の躯体内部の面の劣化が促進し、補強したコンクリート構造物の耐力を低下するおそれを防止することができる。
【0038】
また、前記補強コンクリートにかかる負荷を前記底盤部に伝達する負荷伝達手段を備えているため、底盤部と補強コンクリートとの一体化を高めることができ、補強コンクリートと、補強コンクリートによって補強された底盤部との耐久性を向上することができる。
また、支柱の固定を、支柱の上下端のそれぞれに備えたフランジに有する貫通孔に固定ボルトを貫通させて固定するため、確実に固定することができる。
【0039】
また、上フランジと下フランジとを、前記マンホールの内径以下の径で形成しているため、容易に、マンホールを通過させて躯体内部に支柱を投入することができる。
【0040】
また、上フランジと下フランジとを、同数の貫通孔を有する同形状で構成したため、支柱は上下対称形状となる。例えば、上下非対称形状の支柱の場合、狭い閉鎖空間である躯体内部への支柱の投入方向が上下逆さまになると再度搬出して、正規の投入方向で再度投入し直す必要があるが、上下対称形状である支柱の場合は上下の投入方向を関係なく、支柱の投入施工が容易となる。
【0041】
また、下フランジは補強コンクリートに巻き込まれて設置されるため、上フランジの固定ボルトより少ない本数で確実に固定することができる。また、上フランジより少ない本数の固定ボルトで確実に固定できる下フランジにも、上フランジと同数の貫通孔を有しているため、下フランジを固定するための所定本数の固定ボルトをセットする貫通孔を選択でき、コンクリート構造物の底盤部に内在する鉄筋が支障する貫通孔を回避して固定ボルトをセットすることができる。
【0042】
また、上述したように、上フランジより少ない本数の固定ボルトで確実に固定できる下フランジにも、上フランジと同数の貫通孔を有しているため、固定ボルトによる下フランジ固定後であっても、貫通状態の貫通孔が残り、補強コンクリートを構築するための生コンクリート打設時において、貫通孔からエアが抜け、補強コンクリートに空気溜まり等の未充填部分の発生を防止することができる。
【0043】
また、天井部補強シートの表面、及び側壁部補強シートにおける補強コンクリートの上面より下方に位置する被露出部を除く側壁部補強シートの表面に表面皮膜を塗布することにより、補強後の躯体内部に貯留する液体や気体に対する耐候性を向上させ、コンクリート構造物の耐久性を向上することができる。
【0044】
また、側壁部補強シートにおける補強コンクリートの上面より下方に位置する被露出部に表面皮膜を塗布しないため、表面皮膜による側壁部補強シートと補強コンクリートとの一体性が低減することを防止できる。
【0045】
また、被露出部に止水手段を備えているため、補強後の躯体内部に貯留する液体や気体等による躯体内部劣化の促進を抑制し、補強したコンクリート構造物の耐力を低下するおそれをさらに防止することができる。
【0046】
この発明の態様として、前記コンクリート構造物を、底盤部に、躯体内部に貯水した水を吸い上げるポンプの設置を許容するピットを有し、前記ピットの躯体内面に貼り付けるピット補強シートを備えることができる。
【0047】
これにより、底盤部を補強する補強コンクリートの打設の際に、閉鎖空間である躯体内部における左官作業の待避場所としてピットを利用することができるため、確実な左官を行うことができる。したがって、例えば、待避場所のない閉鎖空間での補強コンクリート打設の場合と比較して、均一な表面仕上げが施された補強コンクリートを構築することができる。
【発明の効果】
【0048】
この発明によれば、十分な補強効果によって、コンクリート構造物の耐力を向上させることができるとともに、経済効果の高いコンクリート構造物の補強構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】補強前の円形防火水槽についての説明図。
【図2】補強前の円形防火水槽についての説明図。
【図3】補強後の円形防火水槽についての説明図。
【図4】補強後の円形防火水槽についての説明図。
【図5】補強構造における詳細部分についての説明図。
【図6】補強構造における詳細部分についての説明図。
【図7】円形防火水槽の補強構造による補強効果についての説明図。
【図8】円形防火水槽の補強方法を示したフローチャート。
【図9】円形防火水槽の補強方法についての説明図。
【図10】円形防火水槽の補強方法についての説明図。
【図11】円形防火水槽の補強方法についての説明図。
【図12】円形防火水槽の補強方法についての説明図。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
図1,2は本発明の補強構造による補強を実施する前の円形防火水槽1についての説明図を示し、図3,4は本発明の補強構造によって補強した円形防火水槽1についての説明図を示し、図5,6は補強構造における詳細部分についての説明図を示し、図7は円形防火水槽の補強構造による補強効果についての説明図を示している。
【0051】
詳しくは、図1は、補強前の円形防火水槽1の中央付近で分断した状態での奥側部分についての斜視図を示す図1(a)と、補強前の円形防火水槽1の中央より手前側部分を透過状態とした斜視図を示す図1(b)とで構成している。
図2は、補強前の円形防火水槽1の中央付近で分断した状態の断面図を示す図2(a)と、補強前の円形防火水槽1の高さ方向中央付近で分断した状態での平面図を示す図2(b)とで構成している。
【0052】
詳しくは、図3は、補強後の円形防火水槽1の中央付近で分断した状態での奥側部分についての斜視図を示す図3(a)と、補強後の円形防火水槽1の中央より手前側部分を透過状態とした斜視図を示す図3(b)とで構成している。
図4は、補強後の円形防火水槽1の中央付近で分断した状態の断面図を示す図4(a)と、補強後の円形防火水槽1の高さ方向中央付近で分断した状態での平面図を示す図4(b)とで構成している。
【0053】
図5は、固定状態にある補強支柱70の高さ方向中央付近で分断した状態における平面図である図5(a)と、図4(a)のa部拡大図を示す図5(b)とで構成している。
図6は、図4(a)のb部拡大図を示す図6(a)と、図4(a)のc部拡大図を示す図6(b)とで構成している。
【0054】
図7は、耐力が低下していない健全な状態の円形防火水槽1の断面モデル図を示す図7(a)と、同状態の円形防火水槽1の構造計算モデル図を示す図7(b)と、耐力が低下したにもかかわらず補強せずに使用し続けた場合の円形防火水槽1の断面モデル図を示す図7(c)と、同状態の円形防火水槽1の構造計算モデル図を示す図7(d)と、耐力が低下したが補強した場合の円形防火水槽1の断面モデル図を示す図7(e)と、同状態の円形防火水槽1の構造計算モデル図を示す図7(f)とで構成している。
【0055】
円形防火水槽1は、鉄筋コンクリート製であり、図1に示すように、天井部10と、側壁部20と、底盤部30と、天井部10に備えたマンホール部40と、底盤部30におけるマンホール部40の真下位置に配置した底設ピット50とで構成している。
【0056】
また、マンホール部40と底設ピット50との間の側壁部20には、等間隔を隔てて複数配置されたステップ21を有している(図2参照、図1では省略)。なお、マンホール部40は貯水空間1aを出入りする普通人の通過を許容する内径で形成している。
【0057】
上記構成で構成された円形防火水槽1は、地下に設置された略円筒形の防火水槽であり、天井部10、側壁部20及び底盤部30で囲まれた躯体内部を、内空高さH1の貯水空間1aとし、貯水空間1aに貯水した水を、地上と貯水空間1aとを連通するマンホール部40を介して、底設ピット50にセットする水中ポンプ(図示省略)で地上にポンプアップして、消火活動等に使用することができる。
なお、上記内空高さH1は、底盤部30の底盤上面30aから天井部10の天井下面10aまでの高さを示している。
【0058】
このような円形防火水槽1は、設置されてからの年数が経過すると、鉄筋1dの劣化による鉄筋量不足に起因するクラック1cが隅角部1bの外側や天井下面10a、底盤部30の上面の中央付近に生じ、耐力が低下する。
【0059】
このような耐力が低下した円形防火水槽1を、このまま使用すると、図7(c)に示すように、上記クラック1cによる隅角部1bの鉄筋破断が生じ、図7(d)に示すように、鉄筋破断による天井部10や底盤部30のたわみが増大し、最悪の事態として崩落するおそれがある。
【0060】
なお、健全な状態における構造計算では隅角部1bを剛結合として計算できるが、隅角部1bの鉄筋1dが破断している図7(d)の構造計算においては、鉄筋破断した隅角部1bをピン結合1eとして計算することとなる。
【0061】
したがって、耐力の低下した円形防火水槽1の場合、撤去してから新設するか、補強する必要がある。しかし、地下に設置されている円形防火水槽1を撤去してから新設する場合、開削によって円形防火水槽1を一旦露出させ、解体して撤去し、設置場所を敷き均して、型枠を組み、コンクリートを打設して養生した上で、強度発生後に型枠を脱型して、埋め戻すといった大規模な施工が必要となり、費用が高額になるといった問題がある。また、解体した円形防火水槽を廃棄物として処分する必要がある。
【0062】
また、貯水空間1aに貯水した水を消火のために用いる円形防火水槽1は、通常、車道や歩道等の公道に設置されることが多く、上記大規模な施工をするためには、施工箇所を含む周辺を占用する必要があり、交通渋滞を引き起こす可能性もある。また、解体作業を開削してオープンな状態で作業する場合、大きな音が発生し、近隣住民に対する騒音問題も生じる可能性がある。
【0063】
上述したように、地下に設置されている円形防火水槽1を撤去してから新設すると、費用は高額になるとともに、周辺環境への施工による影響が大きいため、耐力が低下した円形防火水槽1に対する最適な対策とは言い難い。
【0064】
このような円形防火水槽1を補強する補強構造は、図3乃至図6に示すように、天井部10、側壁部20及び底設ピット50に貼り付ける補強シート60と、底盤部30から天井部10を支持する補強支柱70と、底盤部30に固着させる補強コンクリート80とで構成している。
【0065】
補強シート60は、エポキシパテによって下地処理された天井部10の天井下面10a、側壁部20の貯水空間1a側の内側面20a及び底設ピット50の内面に、貼り付ける炭素繊維シート61と、該炭素繊維シート61の表面に塗布する表面塗装膜62とで構成している(図5(b)参照)。
【0066】
なお、補強シート60は天井下面10aに貼り付ける天井用補強シート60aと、内側面20aに貼り付ける側壁用補強シート60bと、底設ピット50の内側に貼り付けるピット用補強シート60cで構成し、側壁用補強シート60b及びピット用補強シート60cは1枚の炭素繊維シート61を用いているのに対し、天井用補強シート60aは繊維方向が直交する方向に貼り付けた2枚の炭素繊維シート61を重ね合わせて構成している。
【0067】
また、表面塗装膜62は、側壁用補強シート60bにおける下端付近であって、後述する補強コンクリート80に埋もれる部分、すなわち補強後の貯水空間1aに露出しない被露出部60baには施さず、被露出部60baの高さ方向中央付近に、水分によって膨張する止水テープ63を周方向略連続する状態で貼り付けている。
【0068】
さらに、表面塗装膜62は、炭素繊維シート61の表面の直接塗布するエポキシ樹脂塗料による中塗層62aと、硬化した中塗層62aの表面に塗布するアクリル樹脂塗料による上塗層62bとで構成している。
【0069】
中塗層62aを構成するエポキシ樹脂塗料は、硬化速度が速く、硬化後の硬度も高い塗料であるのに対し、上塗層62bを構成する塗布するアクリル樹脂塗料は、エポキシ樹脂塗料と比べて硬化後の硬度が低いが、耐候性が高い塗料である。
【0070】
補強支柱70は、亜鉛メッキ及びエポキシ樹脂塗装がされた鋼管71と、該鋼管71の上下端に配置された円形フランジ73と、鋼管71の周面と円形フランジ73との角部に固定され、鋼管71の周方向に等間隔で配置された8枚のリブ72とで構成している。
【0071】
補強支柱70は、上述の内空高さH1より低く、後述する補強後内空高さH2より高い高さで構成している。なお、上記補強後内空高さH2は、底盤部30に固着した補強コンクリート80の補強上面80aから天井下面10aまでの高さを示している。
【0072】
円形フランジ73は、貯水空間1aを出入りする普通人の通過を許容するマンホール部40の内径より小さな径の平面視円形形状であり、図5(a)に示すように、8枚のリブ72の間に固定用の固定ボルト77の貫通を許容するボルト貫通孔74を形成している。
【0073】
また、円形フランジ73における鋼管71の平面視内側には、補強支柱70にどぶ漬けによる亜鉛メッキを施す際に、鋼管71内部まで亜鉛メッキするための内側貫通孔75を備えている。
なお、ボルト貫通孔74及び内側貫通孔75は、後述する補強コンクリート80を構成するコンクリート82の最大骨材寸法以上の径で構成している。
【0074】
また、円形フランジ73は、鋼管71の上端に備えた上フランジ73aと、下端に備えた下フランジ73bとで構成し、上フランジ73aと下フランジ73bとは同形状で形成している。
【0075】
上述の構成の補強支柱70は、図4(b)に示すように、円形防火水槽1の径に対して1/3程度の径の同心円上に等間隔で4本配置している。
そして、各補強支柱70は、天井下面10aに装着したコンクリートアンカー76に螺合させた8本の固定ボルト77で上フランジ73aが固定され、また、底盤上面30aに設置したコンクリートアンカー76に螺合させた4本の固定ボルト77で下フランジ73bが底盤上面30aから離間した上方位置で固定され、設置される(図4(a)参照)。
【0076】
さらに詳しくは、固定ボルト77は、コンクリートアンカー76に螺入する全ネジボルト78と、全ネジボルト78に螺合するナット79とで構成している(図6参照)。
また、天井下面10aに固定する上フランジ73aは、図6(a)に示すように、天井下面10aに装着されたコンクリートアンカー76に螺入された全ネジボルト78をボルト貫通孔74に挿通し、底面側(図6(a)の下側)から2つのナット79を重ねて螺合し、いわゆるダブルナット状に固定している。
【0077】
これに対し、底盤上面30aに固定する下フランジ73bは、図6(b)に示すように、底盤上面30aに装着されたコンクリートアンカー76に螺入された全ネジボルト78にまず下ナット79bを螺合してからボルト貫通孔74に挿通し、上面側(図6(b)の上側)から上ナット79aを螺合させて固定される。
【0078】
上記構成により、全ネジボルト78に螺合された上ナット79aと下ナット79bとは下フランジ73bを上下から挟み込むようにして、底盤上面30aから離間した位置で下フランジ73bを固定している。なお、下フランジ73bは、補強コンクリート80によって固定されるため、上記上フランジ73aにおける2つのナット79によるダブルナットは必要とせず、シングルナットで固定している。
【0079】
底盤部30の底盤上面30aに固着させる補強コンクリート80は、内部に略格子状に配筋した補強鉄筋81と、現場打ちのコンクリート82と、底盤上面30aから突出するように略格子状に配置したせん断伝達筋83とで、底盤部30の厚みの半分の厚みに構成している。
【0080】
なお、せん断伝達筋83は、底盤上面30aに設けたコンクリートアンカー83aに、所定の長さの鉄筋83bを差し込んで構成し、鉄筋83bの上部がコンクリート82に巻き込まれた状態で付着し、底盤部30と補強コンクリート80とを一体化している。
【0081】
上述したように、補強シート60、補強支柱70及び補強コンクリート80を用いて円形防火水槽1を補強することによって、補強後の円形防火水槽1は、図7(e)に示すように、補強シート60によって天井部10及び側壁部20自体の強度が向上するとともに、補強コンクリート80によって底盤部30自体の強度が向上する。
【0082】
さらに、補強後の円形防火水槽1は強度が向上した底盤部30から強度が向上した天井部10を補強支柱70で支持している。したがって、例えば、図7(d)の構造計算と同様に、鉄筋破断した隅角部1bをピン結合1eとして計算したとしても図7(f)に示すように、補強後の円形防火水槽1の天井部10及び底盤部30には、大きなたわみは生じない。
【0083】
このように、耐力が低下した円形防火水槽1であっても、補強シート60、補強支柱70及び補強コンクリート80を用いて補強することで、大きなたわみが生じる等の危険な状態となることを防止して、安全に使用続けることができる。
【0084】
なお、天井下面10aと、上フランジ73aとの間にエポキシパテ等の樹脂製パテを充填してから、上フランジ73aを天井下面10aに固定してもよい。これにより、天井下面10aと上フランジ73aとの密着性を向上させ、天井部10の荷重をより確実に、補強支柱70に伝達することができる。
【0085】
次に、補強シート60、補強支柱70及び補強コンクリート80を用いた円形防火水槽1の補強方法について、図8乃至図12とともに説明する。なお、図8は円形防火水槽1の補強方法についてのフローチャートを示し、図9乃至図12は円形防火水槽1の補強方法についての説明図を示している。
【0086】
まず、補強シート60、補強支柱70及び補強コンクリート80を用いて補強する円形防火水槽1は、貯水空間1aに貯水した使用状態であるため、補強のための施工ができる状態とするための準備工を実施する(ステップs1)。
【0087】
詳しくは、図9(a)に示すように、水中ポンプ100を用いて、貯水空間1aの水をマンホール部40を介して地上に排水し、地上に駐車したトラック200に車載したハイウォッシャー装置201を用いて、円形防火水槽1の内部を洗浄する。そして、洗浄したあと、貯水空間1aにたまった土砂やゴミを撤去し、貯水空間1aで今後の高所での作業用の足場101を組み立てる。
【0088】
また、マンホール部40と底設ピット50との間の側壁部20に、もともと複数配置されていたステップ21がさびや腐食によって危険な状態であれば、この状態でステップ21を撤去しておく。
【0089】
そして、補強のための準備が完了した状態になってから、補強シート60を貼り付ける補強シート設置工を実施する(ステップs2)。
詳しくは、ステップs1で洗浄された天井下面10a及び内側面20aに、サンダー(図示省略)を用いたケレンを行って下地処理し、プライマーを塗布し、炭素繊維シート61を不陸無く貼り付けるためエポキシパテによる不陸修正を実施する。
【0090】
不陸修正が完了した後、図9(b)に示すように、マンホール部40の内径以下の径で所定長さの炭素繊維シート61を巻いた繊維シートロール61aを、マンホール部40から投入する。そして貯水空間1aで受け取った繊維シートロール61aを、エア溜りが生じることなく、天井下面10a、内側面20a及び底設ピット50の内面に貼り付ける。
なお、上述したように、内側面20a及び底設ピット50の内面には一枚の炭素繊維シート61を貼り付けるが、天井下面10aには2枚の炭素繊維シート61を、繊維方向が交差するように貼り付ける。
【0091】
そして、貼り付けした炭素繊維シート61の接着剤が硬化したのち、図10(a)に示すように、貼り付けた炭素繊維シート61の表面に表面塗装膜62を構築する補強シート樹脂塗装工を実施する(ステップs3)。
詳しくは、エポキシ樹脂塗料による中塗層62aを炭素繊維シート61の表面に直接塗布し、塗布した中塗層62aのエポキシ樹脂塗料が硬化した後に、アクリル樹脂塗料による上塗層62bを中塗層62aの表面に塗布する。
【0092】
なお、この補強シート樹脂塗装工では、ステップs2の補強シート設置工で内側面20aに貼り付けた炭素繊維シート61のうち、後で施工する補強コンクリート80の補強上面80a(図10(a)において点線で示す)より低い部分、すなわち、補強コンクリート80によって隠れる被露出部60ba(図5(b)参照)より上の部分に表面塗装膜62を形成する。
【0093】
より具体的には、底盤上面30aから15cmの厚みで補強コンクリート80が構成されるため、2cmのラップ代を設けて、底盤上面30aから13cmより低い位置を被露出部60baとしている。
【0094】
ステップs3の補強シート樹脂塗装工が完了したのち、天井部10及び底盤部30に内在する鉄筋を、図10(b)に示すような鉄筋探査装置102を用いて探査する(ステップs4)。なお、この鉄筋探査工は、ステップs1の準備工以降であって、次のステップs5の支柱設置工までの間であれば、どのタイミングで行ってもよい。
【0095】
次に、補強支柱70を建て込む支柱設置工を実施する(ステップs5)。図11(a)に示すように、地上に駐車したクレーン付トラック202を用いて、マンホール部40から貯水空間1aに補強支柱70に吊り降ろす。
【0096】
地上から吊り降ろされた補強支柱70を受け取った作業者Mは台車103を用いて補強支柱70を所定の位置まで運搬し、設置する。
なお、補強支柱70の設置は、天井下面10a及び底盤上面30aに装着したコンクリートアンカー76に螺合させた固定ボルト77で円形フランジ73を固定しておこなう。このとき、ステップs4の鉄筋探査工で探査した天井部10と底盤部30に内在する鉄筋が支障しない方向で、円形フランジ73のボルト貫通孔74の間隔に沿うようコンクリートアンカー76を装着する。
【0097】
また、上フランジ73aは、上フランジ73aに備えた8個のすべてのボルト貫通孔74に固定ボルト77が挿入されて8本の固定ボルト77で固定されるのに対し、補強コンクリート80に巻き込まれる下フランジ73bは、半分の4本の固定ボルト77で固定される(図5(a)参照)。
【0098】
したがって、下フランジ73bを固定する4本の固定ボルト77が螺合するコンクリートアンカー76は、8個のボルト貫通孔74に対して、2通りの角度で挿入固定ができるため、例えば、天井部10に内在する鉄筋配置に合わせて、天井下面10aに8本のコンクリートアンカー76を設置することで、下フランジ73bのボルト貫通孔74の回転位置によっては底盤部30に内在する鉄筋に支障する場合であっても、残る角度パターンでの固定ができる。
【0099】
なお、内空高さH1より低い高さで構成している補強支柱70の固定方法について詳述すると、まず、天井下面10a及び底盤上面30aに装着したコンクリートアンカー76に全ネジボルト78を螺入する。
【0100】
そして、底盤上面30aのコンクリートアンカー76に螺入した全ネジボルト78に下ナット79bを螺合し、下フランジ73bのボルト貫通孔74に全ネジボルト78を挿入する。そして、下ナット79bを螺出して、補強支柱70をジャッキアップし、天井下面10aのコンクリートアンカー76に螺入した全ネジボルト78を上フランジ73aのボルト貫通孔74に挿入する。
【0101】
さらに、上フランジ73aの上面が天井下面10aに略密着するまで下ナット79bを螺出し、上フランジ73aのボルト貫通孔74に挿入した全ネジボルト78にナット79を螺合して、上フランジ73aを天井部10に固定する。
【0102】
天井部10への上フランジ73aの固定ボルト77による固定が完了すると、補強支柱70の貯水空間1a内での設置高さが確定するため、下フランジ73bのボルト貫通孔74に挿入された全ネジボルト78に上ナット79aを螺合して、底盤部30への下フランジ73bの固定を完了させる。
このとき、内空高さH1より低い高さで構成している補強支柱70の下フランジ73bは、底盤上面30aから離間した状態、すなわち底盤上面30aから浮かせた位置で固定される。
【0103】
そして、天井下面10aに固定した上フランジ73aの固定ボルト77のボルト頭部を含む周辺を一体的にエポキシ樹脂で防護塗装して、この支柱設置工は完了する。なお、これまでの作業で貯水空間1aの上部での作業は完了するため、ここで、足場101を解体して、搬出すると、今後の作業空間が広がるため、作業性を向上することができる。
【0104】
支柱の建て込みが完了すると、補強コンクリート80を構築するための準備のひとつであるせん断伝達筋83を設置するせん断伝達筋設置工を実施する(ステップs6)。
【0105】
せん断伝達筋設置工は、図11(b)に示すように、コンクリートドリル104により底盤上面30aにコンクリートアンカー83aを挿入するための穴を設け、その穴にコンクリートアンカー83aを挿入して固定し、該コンクリートアンカー83aに、所定の長さの鉄筋83bを差し込んで構成する。
なお、せん断伝達筋83は、図4(b)に示すように、下フランジ73bを除く底盤上面30aに格子状に設置する。
【0106】
そして、補強コンクリート80を構築するための続く準備である補強鉄筋81の配筋及び円形型枠105を組み立て、さらに止水テープ63の貼り付けを実施する(ステップs7)。
【0107】
詳しくは、図12(a)に示すように、地上に駐車したクレーン付トラック202によって補強鉄筋81を、マンホール部40から吊り降ろし、格子状に配筋する。なお、下フランジ73b部分には配筋できず、配筋上の開口となるため、開口補強筋(図示省略)も配筋する。
【0108】
そして、補強コンクリート80を構成する生コンクリート状態のコンクリート82を打設するための円形型枠105を底設ピット50の上方に設置するとともに、図5(b)に示すように、被露出部60baの高さ方向中央付近に、周方向に略連続するように止水テープ63を貼り付ける。
【0109】
ステップs7での補強鉄筋81の配筋及び円形型枠105を組み立て、止水テープ63の貼り付けが完了すると、補強コンクリート80を構成するコンクリート82を打設する(ステップs8)。
図12(b)に示すように、地上にミキサー車203を配置するとともに、垂直方向のホッパー106をマンホール部40に設置して、ミキサー車203から搬出された生コンクリート状のコンクリート82を、ホッパー106を介して、貯水空間1aで作業者Mが一輪車107で受け取り、ステップs7で配筋した補強鉄筋81の上に敷き均し、図示省略するバイブレータで締め固める。
【0110】
そして、締め固めた生コンクリート状のコンクリート82の表面を左官ゴテで押さえて、表面仕上げを行う。このとき、底設ピット50から遠い箇所のコンクリート82の表面から仕上げていくことで、最終の表面仕上げにおいて作業者Mは、補強シート60で補強された底設ピット50に入って仕上げることができる。
【0111】
コンクリート82の打設が完了すると、湿潤状態を保ちながら、コンクリート82に所定の強度が発現するまで養生し、コンクリート82に所定の強度が発現すると、底設ピット50の上部に設けた円形型枠105を脱型して(ステップs9)、円形防火水槽1の補強は完了する。
なお、最初にステップ21を撤去していた場合は、脱型後に、新たなステップ21を設置して、円形防火水槽1の補強を完了する。
【0112】
このような施工フローで補強する、補強シート60、補強支柱70及び補強コンクリート80を用いた円形防火水槽1の補強構造は、天井部10、側壁部20及び底盤部30のそれぞれを施工容易な補強方法で確実に補強でき、さらに、天井部10に作用する負荷を底盤部30に分散できるため、十分な補強効果によって、確実に円形防火水槽1の耐力を向上することができる。
【0113】
したがって、上述したように、図7(d)の構造計算と同様に、鉄筋破断した隅角部1bをピン結合1eとして計算したとしても図7(f)に示すように、補強後の円形防火水槽1の天井部10及び底盤部30には、大きなたわみは生じない。
【0114】
また、天井部10を補強支柱70で支持していない場合と比較して、天井部10に作用する曲げ応力が低減できるとともに、隅角部1bに作用するせん断力も低減できるため、天井下面10aに貼り付ける天井用補強シート60aの炭素繊維シート61の層数を低減でき、補強に係る費用を低減することができるとともに、炭素繊維シート61貼り付けのための工期及び工数を低減できる。
【0115】
また、天井部10を天井用補強シート60aで補強し、前記側壁部20を側壁用補強シート60bで補強しているため、コンクリート82等を増打ちして壁厚を増加させる補強方法と比較して、自重増加による補強効果の低減を防止するとともに、コンクリート82等を増打ちするための困難な型枠設置等の手間も省けるため、より効率的な補強を実現することができる。
【0116】
また、湿潤状態である可能性が高く、自重増加による補強効果の低下が極めて少ない底盤部30を補強コンクリート80で補強したことによって、炭素繊維シート61を底盤上面30aに貼り付けて補強する場合と比較して、十分な強度を発揮できる補強コンクリート80を構築することによって、安全且つ確実に補強できるとともに、補強にかかる費用を低減することができる。
【0117】
また、前記補強コンクリート80にかかる負荷を前記底盤部30に伝達するせん断伝達筋83を備えているため、底盤部30と補強コンクリート80との一体化を高めることができ、補強コンクリート80と、補強コンクリート80によって補強された底盤部30との耐久性を向上することができる。
【0118】
また、地下に設置された円形防火水槽1は、前記天井部10に、前記貯水空間1aへ出入りする普通人の通過を許容するマンホール部40を備え、前記補強支柱70を前記マンホール部40を通過可能な形状で形成しているため、マンホール部40から材料投入等を行って、地上のマンホール部40付近を占用するだけで施工できるため、円形防火水槽1を掘り出す開削工法による補強や新設の場合と比較して、小規模な施工で確実に補強できる。
【0119】
したがって、大規模な占用作業を不要とするとともに、大規模に占用することによって生じやすい交通渋滞や、オープンで施工することによって生じやすい騒音問題等も低減でき、補強工事に伴う周辺環境への影響が少なくなり、補強工事に関係する周辺住民を含めた関係者の満足度を向上することができる。
【0120】
また、補強シート60、補強支柱70及び補強コンクリート80を用いた円形防火水槽1の補強構造の場合、既設の構造部材を撤去することなく補強することができるため、例えば、円形防火水槽1を撤去して新設する場合に発生する廃棄物が生じることなく、環境に優しい補強を実現することができる。
【0121】
また、前記補強支柱70を、前記底盤上面30aから前記天井下面10aまでの内空高さH1より低く、前記補強コンクリート80の補強上面80aから前記天井下面10aまでの補強後内空高さH2より高い高さで構成し、補強支柱70の上端となる上フランジ73aを天井下面10aに固定し、補強支柱70の下端となる下フランジ73bを補強コンクリート80で固定しているため、補強支柱70を容易に所望の箇所に設置するとともに、補強コンクリート80を介して底盤部30から天井部10を補強支柱70によって確実に支持することができる。
【0122】
また、補強支柱70の固定を、補強支柱70の上下端のそれぞれに備えた円形フランジ73に有するボルト貫通孔74に固定ボルト77を貫通させて固定するため、確実に固定することができる。
【0123】
また、上フランジ73aと下フランジ73bとを、前記マンホール部40の内径以下の径で形成しているため、容易に、マンホール部40を通過させて貯水空間1aに補強支柱70を投入することができる。
【0124】
また、上フランジ73aと下フランジ73bとを、同数のボルト貫通孔74を有する同形状で構成したため、補強支柱70は上下対称形状となる。例えば、上下非対称形状の補強支柱の場合、狭い閉鎖空間である貯水空間1aへの補強支柱70の投入方向が上下逆さまになると再度搬出して、正規の投入方向で再度投入し直す必要があるが、上下対称形状である補強支柱70の場合は上下の投入方向を関係なく、補強支柱70の投入施工が容易となる。
【0125】
また、下フランジ73bは補強コンクリート80に巻き込まれて設置されるため、上フランジ73aの固定ボルト77より少ない本数で確実に固定することができる。また、上フランジ73aより少ない本数の固定ボルト77で確実に固定できる下フランジ73bにも、上フランジ73aと同数のボルト貫通孔74を有しているため、下フランジ73bを固定するための所定本数の固定ボルト77をセットするボルト貫通孔74を選択できるため、円形防火水槽1の底盤部30に内在する鉄筋が支障するボルト貫通孔74を回避して固定ボルト77をセットすることができる。
【0126】
また、上述したように、上フランジ73aより少ない本数の固定ボルト77で確実に固定できる下フランジ73bにも、上フランジ73aと同数のボルト貫通孔74を有しているため、固定ボルト77による下フランジ73bを固定した後であっても、貫通状態のボルト貫通孔74が残り、補強コンクリート80を構築するための生コンクリート82打設時において、固定ボルト77が設置されず貫通状態にあるボルト貫通孔74からエアが抜け、補強コンクリート80に空気溜まり等の未充填部分の発生を防止することができる。
【0127】
また、内空高さH1より低い高さで構成している補強支柱70の固定方法において、底盤上面30aのコンクリートアンカー76に螺入した全ネジボルト78に螺合する下ナット79bを螺することで補強支柱70をジャッキアップして、補強支柱70の設置高さを調整する、すなわち補強部材である補強支柱70を構成する固定ボルト77で高さ調整するため、例えば、ジャッキ等の別の治具を用いル場合と比較して、施工性が向上し、施工者の満足度を向上することができる。
【0128】
また、ボルト貫通孔74及び内側貫通孔75は、後述する補強コンクリート80を構成するコンクリート82の最大骨材寸法以上の径で構成しているため、生コンクリート状態のコンクリート82がボルト貫通孔74及び内側貫通孔75を通過できるため、より確実にコンクリート82を充填でき、密実な補強コンクリート80を構成することができる。
【0129】
また、前記側壁用補強シート60bを、前記側壁部20に貼り付けた状態において、下端が前記補強コンクリート80の補強上面80aより下方となる高さで形成しているため、側壁部20を補強する側壁用補強シート60bと、底盤部30を補強する補強コンクリート80とを一体化することができ、それぞれが一体化しない補強構造と比べて、確実な補強効果を得ることができる。
【0130】
また、補強前の円形防火水槽1の側壁部20の内側面20aが、補強後の貯水空間1aに露出しないため、貯水空間1aに貯留する液体や気体等によって内側面20aの劣化が促進し、補強した円形防火水槽1の耐力を低下するおそれを防止することができる
また、天井用補強シート60aの表面、及び側壁用補強シート60bにおける補強コンクリート80の補強上面80aより下方に位置する被露出部60baを除く側壁用補強シート60bの表面に表面塗装膜62を塗布することにより、補強後の貯水空間1aに貯留する液体や気体に対する耐候性を向上させ、円形防火水槽1の耐久性を向上することができる。
【0131】
また、側壁用補強シート60bにおける補強コンクリート80の補強上面80aより下方に位置する被露出部60baに表面塗装膜62を塗布しないため、表面塗装膜62による側壁用補強シート60bと補強コンクリート80との一体性の低下を防止することができる。
【0132】
なお、中塗層62aを構成するエポキシ樹脂塗料は、硬化速度が速く、硬化後の硬度も高い塗料であるのに対し、上塗層62bを構成する塗布するアクリル樹脂塗料は、エポキシ樹脂塗料と比べて硬化後の硬度が低いが、耐候性が高い塗料であるため、エポキシ樹脂塗料やアクリル樹脂塗料をそれぞれ2層重ねて塗布した場合と比較して耐久性のある補強シート60を構成することができる。
【0133】
また、被露出部60baに止水テープ63を備えているため、補強後の貯水空間1aに貯留する液体や気体等による貯水空間1a劣化の促進を抑制し、補強した円形防火水槽1の耐力を低下するおそれをさらに防止することができる。
【0134】
また、底盤部30に備え、貯水空間1aに貯水した水を吸い上げるポンプの設置する底設ピット50の貯水空間1a側の面に貼り付けるピット用補強シート60cを備えているため、底盤部30を補強する補強コンクリート80の打設の際に、閉鎖空間である貯水空間1aにおける左官作業の待避場所として、ピット用補強シート60cで補強された底設ピット50を利用することができるため、確実な左官を確実に行うことができる。したがって、例えば、待避場所のない閉鎖空間での補強コンクリート80を打設する場合と比較して、均一な表面仕上げが施された補強コンクリート80を構築することができる。
【0135】
なお、上述したような補強シート60、補強支柱70及び補強コンクリート80を用いた補強構造の場合、補強後の貯水空間1aの容量の低下を最低限に抑制することができる。
【0136】
以上、この発明の構成と前述の実施形態との対応において、
この発明のコンクリート構造物は、円形防火水槽1に対応し、
以下、同様に、
天井部の下面は、天井下面10aに対応し、
天井部補強シートは、天井用補強シート60aに対応し、
側壁部の躯体内部側の側面は、内側面20aに対応し、
側壁部補強シートは、側壁用補強シート60bに対応し、
底盤部の上面は、底盤上面30aに対応し、
支柱は、補強支柱70に対応し、
躯体内部は、貯水空間1aに対応し、
マンホールは、マンホール部40に対応し、
躯体内空高さは、内空高さH1に対応し、
補強後躯体内空高さは、補強後内空高さH2に対応し、
負荷伝達手段は、せん断伝達筋83に対応し、
貫通孔は、ボルト貫通孔74に対応し、
表面皮膜は、表面塗装膜62に対応し、
止水手段は、止水テープ63に対応し、
ピットは、底設ピット50に対応し、
ピット補強シートは、ピット用補強シート60cに対応するも、
この発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、あらゆるコンクリート構造物の補強構造に適用する実施形態を含むものである。
【0137】
なお、円形防火水槽1は、円形の防火水槽で構成したが、平面視四角形の防火水槽であってもよい。
また、円形の円形防火水槽1に対して、4本の補強支柱70を同心円上に配置したが、例えば、3本の補強支柱70であってもよく、さらには側壁部20の中心に1本の補強支柱70を配置してもよい。
また、円形防火水槽1に対して、複数組のマンホール部40及び底設ピット50を備えた構成であってもよい。
【0138】
また、上記実施例では、支柱設置工(ステップs5)において、地上に駐車したクレーン付トラック202を用いて、地上から吊り降ろされた補強支柱70を台車103を用いて補強支柱70を所定の位置まで運搬したが、補強支柱70を傾け、下フランジ73bの周縁部で底盤上面30a上を転がすようにして、所定の場所まで運搬してもよい。
【0139】
また、上記実施例では、コンクリート82の打設において、図12(b)に示すように、地上に配置したミキサー車203から搬出された生コンクリート状のコンクリート82を、ホッパー106を介して、作業者Mが一輪車107で受け取って補強鉄筋81の上に敷き均したが、一輪車107を用いずとも、断面U字状のシュートを用い、所望の場所にコンクリート82を敷き均す方法であってもよい。
【符号の説明】
【0140】
1…円形防火水槽
1a…貯水空間
10…天井部
10a…天井下面
20…側壁部
20a…内側面
30…底盤部
30a…底盤上面
40…マンホール部
50…底設ピット
60a…天井用補強シート
60b…側壁用補強シート
60ba…被露出部
60c…ピット用補強シート
62…表面塗装膜
63…止水テープ
70…補強支柱
73a…上フランジ
73b…下フランジ
74…ボルト貫通孔
77…固定ボルト
80…補強コンクリート
83…せん断伝達筋
H1…内空高さ
H2…補強後内空高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底盤部と、側壁部と、天井部とで構成されたコンクリート構造物の補強構造であって、
前記天井部の下面に貼り付ける天井部補強シートと、
前記側壁部の躯体内部側の側面に貼り付ける側壁部補強シートと、
前記底盤部の上面に固着する補強コンクリートと、
前記天井部を前記底盤部から支持する支柱とで構成する
コンクリート構造物の補強構造。
【請求項2】
前記コンクリート構造物を、前記天井部に、前記躯体内部へ出入りする普通人の通過を許容するマンホールを備え、地下に設置された地下コンクリート構造物とし、
前記支柱を、前記マンホールを通過可能な形状で形成した
請求項1に記載のコンクリート構造物の補強構造。
【請求項3】
前記支柱を、
前記底盤部の上面から前記天井部の下面までの躯体内空高さより低く、前記補強コンクリートの上面から前記天井部の下面までの補強後躯体内空高さより高い高さで構成し、
前記支柱の上端を前記天井部の下面に固定するとともに、前記支柱の下端を前記底盤部の上面から離間させた位置で固定した
請求項1又は2に記載のコンクリート構造物の補強構造。
【請求項4】
前記側壁部補強シートを、
前記側壁部に貼り付けた状態において、下端が前記補強コンクリートの上面より下方となる高さで形成した
請求項1乃至3のうちいずれかに記載のコンクリート構造物の補強構造。
【請求項5】
前記補強コンクリートにかかる負荷を前記底盤部に伝達する負荷伝達手段を備えた
請求項1乃至4のうちいずれかに記載のコンクリート構造物の補強構造。
【請求項6】
底盤部と、側壁部と、天井部とで構成するとともに、地下に設置され、前記天井部に、躯体内部へ出入りする普通人の通過を許容するマンホールを備えたコンクリート構造物の補強構造であって、
前記底盤部の上面に固着する補強コンクリートと、
前記天井部の下面に貼り付ける天井部補強シートと、
下端が前記補強コンクリートの上面より下方となる高さで形成し、前記側壁部の前記躯体内部側の側面に貼り付ける側壁部補強シートと、
前記天井部を前記底盤部から支持する支柱とで構成し、
該支柱の上端に、前記天井部の下面に固定する固定ボルトの貫通を許容する所定数の貫通孔を有し、前記マンホールの内径以下の径で形成する上フランジを備えるとともに、該支柱の下端に、前記上フランジと同形状で形成する下フランジを備え、
前記支柱の高さを、前記底盤部の上面から前記天井部の下面までの躯体内空高さより低く、前記補強コンクリート上面から前記天井部の下面までの補強後躯体内空高さより高い高さで構成し、
前記支柱を、前記上フランジを前記天井部の下面に前記所定本数の固定ボルトで固定するとともに、前記下フランジを前記底盤部の上面から離間させた位置で、前記所定本数以下の本数の固定ボルトで固定して、前記補強コンクリートで前記下フランジを巻き込んで設置し、
前記天井部補強シートの表面、及び前記側壁部補強シートにおける前記補強コンクリートの上面より下方に位置する被露出部を除く側壁部補強シートの表面に表面皮膜を塗布し、
前記被露出部に止水手段を備えた
コンクリート構造物の補強構造。
【請求項7】
前記コンクリート構造物を、
底盤部に、躯体内部に貯水した水を吸い上げるポンプの設置を許容するピットを有し、
前記ピットの躯体内面に貼り付けるピット補強シートを備えた
請求項6に記載のコンクリート構造物の補強構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−189857(P2010−189857A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−32646(P2009−32646)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(508098316)
【Fターム(参考)】