説明

コンクリート構造物の遊間部に埋設される可撓性ジョイント及びその施工方法

【課題】鉄道高架橋等コンクリート構造物の遊間部に埋設され、熱膨張差を吸収し、且つ、止水効果を奏功する可撓性ジョイントの提供。
【解決手段】EPDEM組成物で、遊間部(63)に埋設される可撓性ジョイント(1)で、小径遊間部(65)に嵌挿される軸部(2)と、大径遊間部(66)に載置され傘部(2)を一体に成形し、軸部(2)の内部に少なくとも1個の中空部(5)を形成し、外周壁(4)の周囲に止水リップ(6,7)を形成し、下底部の長手方向に溝(8)を形成し、傘部(3)を、外周壁(11)により形成し、その内部に少なくとも1個の中空部(12,13,14)を形成し、上底面の長手方向に少なくとも1個の溝(15,16,17)を形成し、下底面の長手方向に少なくとも1個の溝(18,19,20)を形成し、外周壁(11)の周囲に止水リップ(23,24)を設け、全体を一体成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物、主として鉄道高架橋の遊間部に伸縮自在に埋設される可撓性ジョイント及びその施工方法に関する。
【0002】
本発明で使用する用語「コンクリート構造物の遊間部」とは、鉄道高架橋、高速道路橋、一般道路橋、橋脚、トンネル等のコンクリート構造物を、コンクリートの現場打設、プレキャストブロック或いはパネル等で建造する際、熱膨張差を吸収する目的で形成される、接合目地間の空隙と定義する。
【0003】
本発明で使用する用語「熱膨張差」とは、常時温度収縮、乾燥収縮、クリープ、即ち材料に弾性限界内の一定の応力が長時間負荷されたときに生ずる緩慢な永久変形を包含する。
【0004】
鉄道高架橋や高架道路橋を建造する場合は、コンクリートの現場打設により、或いはプレキャストブロック或いはパネル等で、床盤を対向して配設し、床盤と床盤の間に遊間部を設け熱膨張差やクリープによる変形を吸収するようになっている。
【0005】
従来から、このような遊間部には、防水、ゴミの侵入の防止を主たる目的として、伸縮自在なゴム製のジョイントが埋設されている。
【0006】
高架橋の遊間部の断面は、通常、径が小さな小径遊間部と、小径遊間部の上方に一体に形成された径が大きな大径遊間部から構成されていて、T字形をしている。従来、このような形状の遊間部に配設される可撓性ジョイントは、縦断面がU字形をして小径遊間部に完全に嵌挿される小径部と、小径部と一体に成形されていて大径遊間部に埋設される大径部から構成されている。この大径部の断面は、2〜3個の突起と、その間に形成された2〜3個の満を有すW字形または変形W字形をしていて、ゴム自体の弾性と、W字形が形成する2〜3個の溝構造により左右への伸縮を吸収するようになっている。
【0007】
この従来のジョイントのW字形構造は、高さが30mm弱、幅が40〜80mm弱あり、その幅に形成される2〜3個の溝の深さは30mm弱ある。この溝は、床盤から露出した状態になっているので、溝に落ち葉、ゴミ、雨水等が溜まる。従って、それらを除去するための保守・点検作業が負担になるという欠点がある。
【0008】
その他に道路橋の遊間部に埋設される可撓性ジョイントの従来技術の例としては、以下のものがある。たとえば、特開平6−341105号公報明細書(特許文献1)は、概略、「道路橋の継目部の遊間を跨いでその両側の道路等の端部に埋設される舗装部材であって、道路等の継目部の遊間を跨ぐ渡りプレートと、これを中央にして囲む加硫ゴム層とで防水亀裂防止層をなし、これに接して上表面に舗装基層を、下表面に塑性変形層とを一体に形成した道路等の継目部の舗装部材」が開示している。
【0009】
特開平6−341105号公報明細書(特許文献1)に開示されている従来技術は、遊間部を跨ぐ道路舗装に主眼がおかれていて、小径遊間部に埋設されるジョイント自体の形状・構造には特段に改良されている点がない。
【0010】
即ち、遊間部には、単純な円柱形状のシール層が嵌着され、側壁に接着されているだけである。従って、長期間にわたる経時変化により、単純な円柱形状のシール層が小径遊間部内で熱膨張・収縮、クリープにより変形し、側壁との間に空隙が形成される恐れがある。その場合、遊間部を跨ぐ道路舗装が、何らかの衝撃によりずれたり、破壊された場合、小径遊間部に浸水する恐れがあり、熱膨張差の吸収機能が減衰する。
【0011】
特開平6−341104号公報明細書(特許文献2)は、概略、「道路の継目部の遊間を跨ってさし渡される渡りプレートを囲んだ加硫ゴム層と、上表面に基層アスファルト層と、下表面に塑性変形層とを、一体とした舗装部材を予め形成してカセット化し、これを道路の継ぎ目部の遊間に跨って載置し、その後道路の表面と共に舗装部材表面上に表層アスファルトを舗装する道路等の継目部における舗装工法」が開示している。
【0012】
特開平6−341104号公報明細書(特許文献2)に開示されている従来技術は、遊間部を跨ぐ道路の舗装工法に主眼がおかれていて、小径遊間部に埋設されるジョイント自体の形状・構造には特段に改良されている点がない。
【0013】
即ち、小径遊間部には、単純な円柱形状のシール層が嵌着され、側壁に接着されているだけである。従って、長期間にわたる経時変化により、単純な円柱形状のシール層が小径遊間部内で熱膨張・収縮、クリープにより変形し、側壁との間に空隙が形成される恐れがある。その場合、遊間部を跨ぐ道路舗装が、何らかの衝撃によりずれたり、破壊された場合、小径遊間部に浸水する恐れがあり、熱膨張差の吸収機能が減衰する。
【0014】
特開平10−292316号公報明細書(特許文献3)は、概略、「橋梁の桁及び/又は床板からなる橋体の伸縮遊間部の両側上にわたって施設される舗装部の底部と橋体及び/又は陸上道路との間に設けられて、前記舗装部に埋設される埋設ジョイント部材において、埋設ジョイント部材が、水平の長さ方向のみでなく、直角方向及び回転方向(捻れ方向)に作用する変位に追随し得る弾性体である厚手シート状の弾性体層と、弾性体層の端部が橋体及び/又は陸上道路に連結される連結部材と、橋体の伸縮遊間部に跨って、さし渡されて弾性体を支持する荷重支持部材とを有してなる道路橋の埋設ジョイント部材。」を開示している。
【0015】
特開平10−292316号公報明細書(特許文献3)に開示されている従来技術は、遊間部を跨ぐ道路の舗装工法、特に、道路橋の長さ方向、直角方向及び回転方向の変位に追随する埋設ジョイントに主眼がおかれていて、小径遊間部に埋設されるジョイント自体の形状・構造には特段に改良されている点がない。
【0016】
即ち、遊間部の上方には雨水等の漏水防止等のためのバックアップ材及び目地材を介して対向させたに過ぎない。従って、小径遊間部内に埋設されているバックアップ材は、単純な円柱形状である。従って、長期間にわたる経時変化により、単純な円柱形状のバックアップ材が小径遊間部内で熱膨張・収縮、クリープにより変形し、側壁との間に空隙が形成される恐れがある。その場合、遊間部を跨ぐ目地材及び荷重支持部材が、何らかの衝撃によりずれたり、破壊された場合、小径遊間部に浸水する恐れがあり、熱膨張差の吸収機能が減衰する。
【0017】
特開2001−26904号公報明細書(特許文献4)は、走行車両のタイヤ掻き上げによるばたつきを防止した道路橋用埋設ジョイント部材を開示している。
【0018】
特開平2001−26904号公報明細書(特許文献4)に開示されている発明では、小径遊間部に埋設されるジョイント自体の形状・構造には特段に改良されている点がない。
【0019】
即ち、伸縮遊間部の上方には雨水等の漏水防止等のためのバックアップ材及び目地材を設けてあるに過ぎず、小径遊間部内に埋設されているバックアップ材は、単純な円柱形状である。従って、長期間にわたる経時変化により、単純な円柱形状のバックアップ材が小径遊間部内で熱膨張・収縮、クリープにより変形し、側壁との間に空隙が形成される恐れがある。その場合、遊間部を跨ぐ目地材及び荷重支持部材が、何らかの衝撃によりずれたり、破壊された場合、小径遊間部に浸水する恐れがあり、熱膨張差の吸収機能が減衰する。
【特許文献】
【特許文献1】特開平6−341105号公報
【特許文献2】特開平6−341104号公報
【特許文献3】特開平10−292316号公報
【特許文献4】特開平2001−26904号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
発明が解決しようとする課題は、鉄道橋、道路橋等コンクリート構造物の遊間部に埋設され、熱膨張差を吸収し、且つ、止水効果を奏功する可撓性ジョイントに、材料が本質的に有する可撓性だけではなく、それ自体に構造的に伸縮機能と止水機能をもたせることである。
【0021】
発明が解決しようとするより特定的な課題は、鉄道橋、道路橋等コンクリート構造物の遊間部に埋設され、熱膨張差を吸収し、且つ、止水効果を奏功する可撓性ジョイントにおいて、小径遊間部に嵌挿される軸部を、材料が本質的に有する可撓性だけではなく、それ自体に構造的に伸縮機能と止水機能をもたせ、大径遊間部に載置される頭部にも、材料が本質的に有する可撓性だけではなく、それ自体に構造的に伸縮機能と止水機能をもたせ、材料が保持する可撓性と、構造による伸縮機能と止水機能の相乗効果により、可撓性ジョイントの伸縮機能と止水機能を一層向上させることである。
【0022】
発明が解決しようとする別の課題は、鉄道橋、道路橋等コンクリート構造物の遊間部に埋設され、熱膨張差を吸収し、且つ、止水効果を奏功する可撓性ジョイントにおいて、小径遊間部に嵌挿される軸部を、材料が本質的に有する可撓性だけではなく、それ自体に構造的に伸縮機能と止水機能をもたせ、大径遊間部に載置される頭部にも、材料が本質的に有する可撓性だけではなく、それ自体に構造的に伸縮機能と止水機能をもたせ、材料が保持する可撓性と、構造による伸縮機能と止水機能の相乗効果により、伸縮機能と止水機能を一層向上させ、且つ保守・点検が軽減された可撓性ジョイントを提供することである。
【0023】
発明が解決しようとするさらに別の課題は、鉄道橋、道路橋等コンクリート構造物の遊間部に埋設され、熱膨張差を吸収し、且つ、止水効果を奏功する可撓性ジョイントにおいて、小径遊間部に嵌挿される軸部を、材料が本質的に有する可撓性だけではなく、それ自体に構造的に伸縮機能と止水機能をもたせ、大径遊間部に載置される頭部にも、材料が本質的に有する可撓性だけではなく、それ自体に構造的に伸縮機能と止水機能をもたせ、材料が保持する可撓性と、構造による伸縮機能と止水機能の相乗効果により、伸縮機能と止水機能を一層向上させ、且つ保守・点検が軽減された可撓性ジョイントを押出成形法により、製造コストを軽減した製造方法を提供することである。
【0024】
以下、鉄道高架橋の構造の一例を添付図面5,6,及び7を参照して説明する。図5は、鉄道高架橋58の1例の上部工の断面図である。図5に示すように、鉄道高架橋58は、橋脚59に支持された橋桁60の上に厚さ250mmの床盤61として構成されている。外法L13の長さは10,000mm、内法L14の長さは9,600mmである。幅方向の両端は、床盤61からの高さL15が1,000mm、幅L16が200mmの側端壁62として立設されている。
【0025】
図6は、鉄道高架橋58のコンクリート切り欠き平面図、図7は、その側断面図である。図6及び図7に示すように、鉄道高架橋58の主要部は、床盤61と61’が対向して配設された状態になっている。床盤61と61’の継ぎ目は遊間部63(図7)となっている。遊間部63(図7)は、床盤61,61’を、床盤61,61’の継ぎ目である中心線CLから、それぞれ左右に幅が40mm(L17+L18/2)及び深さL19が40mmに切り欠いて形成されている。
【0026】
従って、図7に示した遊間部63の側断面図から分かるように、遊間部63は、小径遊間部65と、小径遊間部65と連接された大径遊間部66から形成されている。小径遊間部65は、幅L17が30mmの側壁64、64’が20mmの空隙L18を形成するように対向して立設されることによって形成されている。一方、大径遊間部66は、高さL19が40mmの側壁65、65’が80mmの空隙L1を形成するように対向して立設されることによって形成されている。従って、小径遊間部65の幅L18は20mm、大径遊間部66の幅L1は80mmとなり、大径遊間部66と小径遊間部65は、一緒になってT字形断面を形成している。小径遊間部65を形成する側壁64、64’、及び大径遊間部66を形成する側壁65,65’の肩部67は5Rとなっている。
【0027】
このような遊間部が、鉄道高架橋30mおきに一カ所形成されている。前述したように、この遊間部63は、熱膨張差やクリープによる変形を吸収するために設けてあるが、このままでは浸水したり、ゴミが入る。遊間部に、一端、浸水したり、ゴミが入ると、除去することが困難であり、その保守・管理にコストを要する。従って、可撓性がある材料、主としてゴムで、伸縮自在のジョイントを遊間部に配設して、熱膨張差やクリープによる変形を吸収する効果と止水効果の両方を奏功させることが必要である。
【0028】
本発明者は、地震等による大きな衝撃力が発生しても、小径遊間部65及び大径遊間部66に載置された可撓性ジョイントが完全に応力を吸収することができるような構造にすることを検討した。その結果、可撓性ジョイントが、小径遊間部65に嵌挿される部分、即ち「軸部」と、大径遊間部66に載置される部分、即ち「傘部」の形状・構造を、従来技術とは根本的に変えることとした。その結果、可撓性ジョイントの軸部と傘部を、中実、即ち、「むく」ではなく、少なくとも1個の空洞を設けることにより、材料が本質的に持つ弾性と、空洞部の伸縮による機械的な復元力の相乗効果により、地震等による大きな衝撃力を吸収し、分散させることができるようにした。さらに、可撓性ジョイントの止水効果を向上させるために、軸部及び傘部の周囲に突起、即ち、止水リップを設けることとした。
【0029】
なお、可撓性ジョイントの各パーツに正式の名称はない。従って、本発明において、「軸部」は、前記定義した「コンクリート構造物の遊間部」に配設される可撓性ジョイントにおいて、小径遊間部に「嵌挿」される部分と定義する。また、「傘部」は、同じく前記定義した「コンクリート構造物の遊間部」に配設される可撓性ジョイントにおいて、大径遊間部に「載置」される部分と定義する。従って、「傘部」は、ボルトに倣って、「頭部」或いは「鍔部」と呼称してもよい。
【0030】
また、可撓性ジョイントに関して、コンクリート構造物の遊間部に「配設」するとは、小径遊間部と大径遊間部から構成されている遊間部を一体としてとらえ、その遊間部に可撓性ジョイントが取り付けられた状態を言う。また、可撓性ジョイントに関して、小径遊間部に「嵌挿」されるとは、軸部の径が、小径遊間部の径より大きいので、小径遊間部に強制的に挿入して、嵌め込むことを意味する。さらに、可撓性ジョイントに関して、大径遊間部に「載置」されるとは、傘部の径が、大径遊間部の径より小さいので、傘部が、あたかも大径遊間部に置かれた状態を意味する。
【課題を解決するための手段】
【0031】
従って、上記課題は下記の手段により解決される。
1.コンクリート構造物(61,61’)が形成する小径遊間部(65)と大径遊間部(66)から構成される遊間部(63)に伸縮自在に埋設される可撓性ジョイント(1)であって、可撓性ジョイント(1)が、小径遊間部(65)に嵌挿される軸部(26)と、大径遊間部(66)に載置され軸部(26)と一体に成形された傘部(3)とを備えていて、(イ)軸部(2)が、外周壁(4)により形成され、その内部に少なくとも1個の中空部(5)を囲繞していて、外周壁(4)の周囲に止水リップ(6,7)が形成され、底部の長手方向に溝(8)を有し、溝(8)を介して脚部(9,10)が形成されていること、(ロ)傘部(3)が、外周壁(11)により形成され、その内部に少なくとも1個の中空部(12,13,14)を囲繞していて、上底面の長手方向に少なくとも1個の溝(15,16,17)が形成され、下底面の長手方向に少なくとも1個の溝(18,19,20)が形成され、溝(18,19,20)を介して脚部(21,22)を有していて、外周壁(11)の周囲に止水リップ(23,24)を備えていて、全体が一体成形されている可撓性ジョイント(1)。
【0032】
2.前記第1項において、全体をソリッドで成形する。
【0033】
3.前記第1または第2項において、コンクリート構造物(61,61’)が鉄道高架橋とする。
【0034】
4.前記第1〜第3項のいずれか1項において、傘部(3)の幅方向の長さが、軸部(2)の幅方向の長さの1.5〜2.5倍とする。
【0035】
5.前記第1〜第4項のいずれか1項に記載した可撓性ジョイント(1)を使用して遊間部(63)を止水施工する方法であって、
(1)小径遊間部(65)の内部にバックアップ材(55)を充填すること、
(2)可撓性ジョイント(1)の軸部(2)を小径遊間部(65)に強制的に嵌挿すること、
(3)可撓性ジョイント(1)の傘部(3)を大径遊間部(66)に載置すること、
(4)可撓性ジョイント(1)の傘部(3)と大径遊間部(66)の幅方向の空隙を接着剤で充填すること、および
(4)可撓性ジョイント(1)の傘部(3)と大径遊間部(66)の高さ方向の空隙をコーキング材で充填して傘部(3)を被覆し、大径遊間部(66)を形成する床盤(65,65’)と同一平面にすること、を含む遊間部(63)を止水施工する方法。
【発明の効果】
【0036】
請求項1に記載した発明により下記の効果を得ることができる。
(イ)可撓性ジョイント(1)が、小径遊間部(65)に嵌挿される軸部(2)と、大径遊間部(66)に載置される軸部(2)とを備えているので、鉄道高架橋のように異径構造から形成される遊間部も完全に適合させることができる。
【0037】
(ロ)軸部(2)が、外周壁(4)により形成され、その内部に少なくとも1個の中空部(5)を囲繞しているので、縦方向及び横方向の振動を吸収するので、特定の箇所への応力集中を防止することができる。
【0038】
(ハ)軸部(2)の外周壁(4)の周囲に止水リップ(6,7)を具備しているので、小径遊間部(65)への止水効果が向上する。
【0039】
(ニ)軸部(2)の下底部の長手方向に溝(8)を有していて、溝(8)を介して脚部(9,10)が形成されているので、小径遊間部(65)へ嵌挿する際に、溝(8)が下方へ圧縮され、左右の脚部(9,10)が上方へ反発し、小径遊間部(65)側壁へ一層強固に密着する。
【0040】
(ホ)傘部(3)が、外周壁(11)により形成され、その内部に少なくとも1個の中空部(12,13,14)を囲繞しているので、縦方向及び横方向の振動を吸収するので、特定の箇所への応力集中を防止することができる。
【0041】
(ヘ)傘部(3)が、上底面の長手方向に少なくとも1個の溝(15,16,17)を備えているので、遊間部(63)を構成するコンクリート構造体(65,65’)の横方向の伸縮を吸収する能力が向上し、緩衝機能が向上する。
【0042】
(ト)傘部(3)が、下底面の長手方向に少なくとも1個の溝(18,19,20)を備えていて、溝(18,19,20)を介して脚部(21,22)を有していているので、大径遊間部(66)に載置し、施工する際に、溝(18,19,20)が下方へ圧縮され、左右の脚部(21,22)が上方へ反発し、大径遊間部(66)の底面へ一層強固に密着し、接着強度が増加し、止水機能も向上する。
【0043】
(チ)傘部(3)が、外周壁(11)の周囲に止水リップ(23,24)を備えているので、大径遊間部(66)への止水効果が向上する。
【0044】
(リ)可撓性ジョイント(1)全体をエンドレスで一体成形することができるので、任意の長さに裁断することができ、従来にような継ぎ目部の接合工程が不要となり、剛性が向上し、繰り返し伸縮による劣化を抑えることができる。
【0045】
請求項2に記載した発明によると、可撓性ジョイント(1)の全体をソリッドで成形したので、硬度、剛性等が維持され、施工時及び施工後も形状が保持される。
【0046】
請求項3に記載した発明によると、コンクリート構造物(61,61’)を鉄道高架橋としたので、従来鉄道高架橋の遊間部の施工に使用されていた表面が露出していた可撓性ジョイントに比べて、保守・点検が不要あるいは低減される。
【0047】
請求項4に記載した発明によると、傘部(3)の幅方向の長さが、軸部(2)の幅方向の長さの1.5〜2.5倍としたので、現行の異径構造の遊間部への応用性がある。
【0048】
請求項5に記載した発明によると、請求項1〜4のいずれか1項に記載した可撓性ジョイント(1)を使用して遊間部(63)を施工するので、(イ)止水効果の向上。(ロ)振動等による遊間部(63)の伸縮吸収能力の向上。(ハ)傘部(3)を大径遊間部(66)から露出するのを防止し、床盤(65,65’)と同一平面にすることにより、ごみ等の堆積の防止による保守・点検の不要或いは低減化を可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
以下、発明を実施するための最良の形態を実施例に基づいて説明する。
[実施例1]
EPDM押し出し成形品の製造
下記の配合によるEPDM組成物によりこのゴム成形品を押し出し成形法により製造した。
成 分 質量%
EPDM 100
カーボン 40
充填材 10
可塑剤 20
老化防止剤 10
加硫促進剤 3
【0050】
このゴム成形品の各種物性を表−1に示す。
【表−1】

【0051】
図1は、上記のEPDM組成物により、押し出し成形法により製造した可撓性ジョイント1の断面図である。この可撓性ジョイント1の1m当たりの質量は1.3kgであった。また、主要部の寸法は下記の通りである。
(一)軸部(2)の各部位の寸法、形状
(1)主要部を構成する壁部の肉厚:3mm。
(2)止水リップ(6,7):縦方向の幅4.5mm、横方向の高さ3mm。
(3)中空部(5):短径8mm、長径20mmの上底面と下底面が曲面になっている 変形馬蹄形アーチ状。
(4)下底面の溝(8):高さ5mm、最大幅8mm。
(5)リップ(6,7)間の長さ:26mm。
(6)最大長さ:23mm。
【0052】
(二)傘部(3)の各部位の寸法、形状
(1)主要部を構成する壁部の肉厚:3mm。
(2)止水リップ(23,24):縦方向の幅4.5mm、横方向の高さ3mm。
(3)中空部(12):短径11mm、長径13mmの上底面と下底面が曲面になって いる変形糸巻き状。
(4)中空部(13):短径11mm、長径14mmの上底面と下底面が曲面になって いる変形糸巻き状。
(5)中空部(14):短径11mm、長径13mmの上底面と下底面が曲面になって いる変形糸巻き状。
(6)上底面の溝(15):深さ5mm、幅7mm。
(7)上底面の溝(16):深さ5mm、幅8mm。
(8)上底面の溝(17):深さ5mm、幅7mm。
(9)下底面の溝(18):高さ5mm、最大幅7mm。
(10)下底面の溝(19):高さ5mm、最大幅8mm。
(11)下底面の溝(20):高さ5mm、最大幅7mm。
(12)リップ(23,24)間の長さ:58mm。
(13)最大高さ:27mm。
【0053】
[施工例1]
図3は、実施例1で製造した可撓性ジョイント(1)を、小径遊間部(65)の幅L18が20mm、大径遊間部(66)の幅L1が80mmの遊間部(63)に施工した状態を示す断面図である。予め、小径遊間部(65)にバックアップ材(55)を充填した。次いで、養生のため、可撓性ジョイント(1)の下部の耳にマスキングテープを貼った。次いで、切り欠き部に、エポキシ樹脂(53)を塗布し、可撓性ジョイント(1)の軸部(2)を小径遊間部(65)に強制的に嵌挿した。この時点で、可撓性ジョイント(1)の傘部(3)は、大径遊間部(66)に載置された状態になった。次いで、可撓性ジョイント(1)の傘部(3)と大径遊間部(66)の高さ方向の空隙をシリコーン系コーキング材(54)で充填して傘部(3)を完全に被覆し、大径遊間部(66)を形成する床盤(65,65’)と同一平面になるようにレベリングした。
【実施例2】
【0054】
図2は、上記のEPDM組成物により、押し出し成形法により製造した可撓性ジョイント25の断面図である。この可撓性ジョイント25の1m当たりの質量は1.84kgであった。主要部の寸法は下記の通りである。
(一)軸部(26)の各部位の寸法、形状
(1)主要部を構成する壁部(28)の肉厚:3.5mm。
(2)止水リップ(30,31):縦方向の幅4.5mm、横方向の高さ3mm。
(3)中空部(29):短径13.5mm、長径33mmで、上底面に2個のアーチを 有し、下底面が曲面になっている変形2重馬蹄形アーチ状。
(4)下底面の溝(32):高さ6mm、最大幅33mm。
(5)リップ(30,31)間の長さ:46mm。
(6)最大高さ:23mm。
【0055】
(二)傘部(27)の各部位の寸法、形状
(1)主要部を構成する壁部の肉厚:3.5mm。
(2)止水リップ(49,50):縦方向の幅4.5mm、横方向の高さ3mm。
(3)中空部(36):短径12.3mm、長径18mmで、上底面に1個の下垂曲面 と、下底面に1個の上方曲面を有している変形糸巻き状。
(4)中空部(37):短径12.3mm、長径33mmで、上底面左右に2個の下垂 曲面と、下底面左右に2個の上方曲面を有している変形ハンマーヘッド状。
(5)中空部(38):短径12.3mm、長径18mmで、上底面に1個の下垂曲面 と、下底面に1個の上方曲面を有している変形糸巻き状。
(6)下底面の溝(39):高さ5mm、幅7mm。
(7)下底面の溝(40):高さ5mm、幅8mm。
(8)下底面の溝(41):高さ5mm、幅7mm。
(9)下底面の溝(42):高さ5mm、最大幅7mm。
(10)上底面の溝(45):深さ5mm、幅7mm。
(11)上底面の溝(46):深さ5mm、幅8mm。
(12)上底面の溝(47):深さ5mm、幅7mm。
(13)上底面の溝(48):深さ5mm、最大幅7mm。
(14)リップ(49,50)間の長さ:78mm。
(15)最大高さ:27mm。
【0056】
[施工例2]
図4は、実施例2で製造した可撓性ジョイント(25)を、小径遊間部(65)の幅が40mm、大径遊間部(66)の幅L7が110mmの遊間部に施工した状態を示す断面図である。予め、小径遊間部(65)にバックアップ材(55)を充填した。次いで、養生のため、可撓性ジョイント(25)の下部の耳にマスキングテープを貼った。次いで、切り欠き部に、エポキシ樹脂(53)を塗布し、可撓性ジョイント(25)の軸部(26)を小径遊間部(65)の深さL12が23mmまで強制的に嵌挿した。この時点で、可撓性ジョイント(25)の傘部(27)は、大径遊間部(66)の底面からの高さL11が27mmの位置に載置された状態になった。次いで、可撓性ジョイント(25)の傘部(27)と大径遊間部(66)の高さ方向の空隙をシリコーン系コーキング材(54)で充填して傘部(27)を完全に被覆し、大径遊間部(66)を形成する床盤と同一平面になるようにレベリングした。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上、詳述したところにより本発明の可撓性ジョイントは、コンクリート構造物が形成する小径遊間部と大径遊間部から構成される遊間部に伸縮自在に埋設される可撓性ジョイントであって、可撓性ジョイントが、小径遊間部に嵌挿される軸部と、大径遊間部に載置され軸部と一体に成形された傘部とを備えていて、軸部が、外周壁により形成され、その内部に少なくとも1個の中空部を囲繞していて、外周壁の周囲に止水リップが形成され、下底部の長手方向に溝を有し、溝を介して脚部が形成されていること、傘部が、外周壁により形成され、その内部に少なくとも1個の中空部を囲繞していて、上底面の長手方向に少なくとも1個の溝が形成され、下底面の長手方向に少なくとも1個の溝が形成され、溝を介して脚部を有していて、外周壁の周囲に止水リップを備えていて、全体が一体成形された特殊な構造をしているので、材料が本質的に有する可撓性だけではなく、構造的に伸縮機能と止水機能をもたせ、大径遊間部に載置される傘部にも、材料が本質的に有する可撓性だけではなく、それ自体に構造的に伸縮機能と止水機能をもたせ、材料が保持する可撓性と、構造による伸縮機能と止水機能の相乗効果により、可撓性ジョイントの伸縮機能と止水機能を一層向上させることができるので、コンクリート構造物、主として鉄道高架橋の遊間部に施工した場合、伸縮機能と止水機能を一層向上させることができ、且つ露出部分が無いので、保守・点検が軽減され、押し出し成形によりエンドレス製造が可能なので、任意の長さに裁断することができ、従来のような継ぎ目部の接合工程が不要となり、剛性が向上し、繰り返し伸縮による劣化を抑えることができ、製造及び施工コストを軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施例1の断面図。
【図2】本発明の実施例2の断面図。
【図3】本発明の実施例1の施工状態を示す断面図。
【図4】本発明の実施例2の施工状態を示す断面図。
【図5】鉄道高架橋の上部断面図。
【図6】図5の平面図。
【図7】コンクリート切り欠き断面図。
【符号の説明】
1,25:可撓性ジョイント
2,26:軸部
3,28:傘部
4:外周壁
5,12,13,14,29,36,37,38:中空部
6,7,23,24:止水リップ
8,15,15,17,18,19,20:溝
9,10,21,22:脚部
11:外周壁
28:壁部
30,31,49,50:止水リップ
32,39,40,41,42,45,46,47,48:溝
53:エポキシ樹脂
54:コーキング材
55:バックアップ材
58:鉄道高架橋
59:橋脚
60:橋桁
61,61’:床盤
62:側端壁
63:遊間部
64,64’:側壁
65:小径遊間部
66:大径遊間部
67:肩部
CL:中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造物(61,61’)が形成する小径遊間部(65)と大径遊間部(66)から構成される遊間部(63)に伸縮自在に埋設される可撓性ジョイント(1)であって、可撓性ジョイント(1)が、小径遊間部(65)に嵌挿される軸部(2)と、大径遊間部(66)に載置され軸部(2)と一体に成形された傘部(3)とを備えていて、
(イ)軸部(2)が、外周壁(4)により形成され、その内部に少なくとも1個の中空部(5)を囲繞していて、外周壁(4)の周囲に止水リップ(6,7)が形成され、下底部の長手方向に溝(8)を有し、溝(8)を介して脚部(9,10)が形成されていること、
(ロ)傘部(3)が、外周壁(11)により形成され、その内部に少なくとも1個の中空部(12,13,14)を囲繞していて、上底面の長手方向に少なくとも1個の溝(15,16,17)が形成され、下底面の長手方向に少なくとも1個の溝(18,19,20)が形成され、溝(18,19,20)を介して脚部(21,22)を有していて、外周壁(11)の周囲に止水リップ(23,24)を備えていて、全体が一体成形されている可撓性ジョイント(1)。
【請求項2】
全体をソリッドで成形した請求項1に記載の可撓性ジョイント(1)。
【請求項3】
コンクリート構造物(61,61’)が鉄道高架橋である請求項1または2に記載の可撓性ジョイント(1)。
【請求項4】
傘部(3)の幅方向の長さが、軸部(2)の幅方向の長さの1.5〜2.5倍である請求項1〜3のいずれか1項に記載の可撓性ジョイント(1)。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載した可撓性ジョイント(1)を使用して遊間部(63)を止水施工する方法であって、
(1)小径遊間部(65)の内部にバックアップ材(55)を充填すること、
(2)可撓性ジョイント(1)の軸部(2)を小径遊間部(65)に強制的に嵌挿すること、
(3)可撓性ジョイント(1)の傘部(3)を大径遊間部(66)に載置すること、
(4)可撓性ジョイント(1)の傘部(3)と大径遊間部(66)の間の空隙にコーキング材(54)を充填して傘部(3)を被覆し、大径遊間部(66)を形成する床盤(65,65’)と同一平面になるようにレベリングすること、を含む遊間部(63)を止水施工する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−312856(P2006−312856A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−166108(P2005−166108)
【出願日】平成17年5月9日(2005.5.9)
【出願人】(000167820)広島化成株式会社 (65)
【Fターム(参考)】